JP4800212B2 - 新規な味覚異常検査法 - Google Patents

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Description

本発明は、呈味性物質反応性組成物(味覚受容体)の発現量を指標に用いる味覚異常検査方法に関する。また本発明は、味覚受容体を増幅するためのプライマー及び当該プライマーを含む味覚異常検査用のキットに関する。
味覚は、生活上重要な感覚である。そのため、味覚の異常は、患者の精神に強いストレスを与える。しかし、味覚は、それを感じる本人にしか認識できない主観的なものであるため、その病態を客観的にとらえることは難しく、現状では味覚異常に対して有効な治療が施されているとは言い難い。さらに、味覚障害はヒトの生死に直接結びつくものではないため、研究者の興味の対象になることが多くない。これまでに、味覚異常の検査は大きく分けて2種類の方法で行われている。1つは、電気味覚検査と呼ばれるものであり、舌に弱い電流を流し、味に似た電気刺激を与えたときの感じ方の程度で味覚障害を判定するという方法である。しかし、この方法は、甘味、苦みといったそれぞれの味質についての異常を検出することは困難である。もう1つは、濾紙ディスク法と呼ばれる方法である。濾紙ディスク法では、種々の濃度の呈味物質をしみこませた濾紙を舌の各所に乗せて、被験者に味の有無を聴取する方法がとられており、甘味、塩味、酸味、苦みといった4基本味の感じ方の程度や正しさを検出することが可能である。しかし、この検査を理解できる年齢や知識がないとよい結果を得ることができないことが問題である。さらに味を感じてもどのように表現すればよいか分からないときなども、また同様に問題である。このことから乳幼児を対象とする場合、あるいは高齢で耳に障害がある患者を対象とする場合は、このような検査はほとんど意味をなさない。
また、上記の方法を用いると、味覚の異常の有無を検出することが可能であるが、味覚異常の原因を明らかにすることはできない。
ところで、哺乳動物の味覚は、甘味、苦味、旨味、酸味及び塩味の5つに分類されると考えられている。そして、それぞれの味質は異なる情報伝達系を介すると考えられており、甘味、苦味、旨味はGタンパク質共役型受容体(G protein−coupled receptors,GPCR)が関与し、塩味、酸味はイオンチャネルが深く関与すると言われているが、受容体と呈味物質との関連は未だに明らかにされていない。外界からの化学刺激に対して、これらの味覚受容体(GPCR又はチャネルタンパク質)が選択的に活性化又は不活性化すると、受容体を発現する舌の細胞(味覚細胞)が応答を発信し、呈味性物質に対する情報が中枢神経へと伝達されると考えられている。
前述の通り、いくつかの味覚受容体は7回膜貫通型構造を有するGタンパク質共役受容体に属している。呈味性物質のGタンパク質共役受容体についての研究が近年進んでおり、現在T1R、T2R、THTR、ファミリー(Takeda et al.FEBS Lett.520,97−101,2002)が味覚受容体として同定されている(特表2003−530098号公報、特表2003−510037号公報)。しかし、これらの受容体、特にTHTRファミリーがどのような物質をリガンド(アゴニスト)としているかはほとんど不明である。
従って、味覚受容体を解明し、呈味性物質としてのリガンドを探索することが望まれている。また、被験者の主観に依存しない新しい味覚異常の検査法の開発が望まれている。
本発明は、味覚異常を検出するための方法、及び味覚異常を検出するためのキットを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複数の味覚受容体の舌上での発現を確認することによって、舌痛症などの味覚異常を検査する方法を完成するに至った。即ち本発明は以下の通りである。
(1)口腔由来のサンプルからTHTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子及びT2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子の少なくとも一部を増幅することを特徴とする、味覚異常検査方法。
(2)口腔由来のサンプルからTHTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子及びT2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子の少なくとも一部を増幅することを特徴とする、舌痛症の検査方法。
(3)口腔由来のサンプルからTHTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子及びT2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子の少なくとも一部を増幅することを特徴とする、ストレス検査方法。
(4)THTRファミリーに属する味覚受容体が、THTR1,2,3,4,5,6,7,9,11,12および14からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)〜(3)のいずれか1項記載の方法。
(5)THTRファミリーに属する味覚受容体が、以下の(a)又は(b)のポリペプチドである(4)記載の方法。
(a)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド
(6)THTRファミリーに属する味覚受容体が、以下の(a)又は(b)のDNAによりコードされるポリペプチドである(4)記載の方法。
(a)配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19若しくは21で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19若しくは21で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ味覚受容体として機能するポリペプチドをコードするDNA
(7)T2Rファミリーに属する味覚受容体が、T2R1,3,4,5,7,8,9,10,13,14および16からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)〜(3)のいずれか1項記載の方法。
(8)T2Rファミリーに属する味覚受容体が、以下の(a)又は(b)のポリペプチドである(7)記載の方法。
(a)配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド
(9)T2Rファミリーに属する味覚受容体が、以下の(a)又は(b)のDNAによりコードされるポリペプチドである(7)記載の方法。
(a)配列番号23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは43で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは43で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ味覚受容体として機能するポリペプチドをコードするDNA
(10)口腔由来のサンプルが、擦過法で採取される舌組織サンプルである(1)〜(3)のいずれか1項記載の方法。
(11)味覚異常が、味覚障害、舌痛症、金属アレルギー、口腔扁平苔癬、口腔乾燥症、口腔乾燥味覚障害、舌炎、口内痛、頬部蜂窩織炎、および舌痛炎からなる群から選択される少なくとも1つである(1)記載の方法。
(12)味覚異常がストレスに関連するものである、(1)記載の方法。
(13)増幅が、(4)又は(7)に記載の味覚受容体の全長をRT−PCRにより増幅するものである(1)〜(3)のいずれか1項記載の方法。
(14) (5)又は(8)に記載のポリペプチドをコードするDNAとその相補的な塩基配列からなるDNAから設計される、18〜27塩基長を有するプライマー。
(15) (6)又は(9)に記載のDNAとその相補的な塩基配列からなるDNAから設計される、18〜27塩基長を有するプライマー。
(16)以下の(a)又は(b)のDNAから設計されるプライマー。
(a)配列番号45〜88で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号45〜88で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
(17)増幅に用いるプライマーが、(14)〜(16)のいずれか1項に記載のプライマーである(13)記載の方法。
(18) (14)〜(16)のいずれか1項に記載のプライマーを含むことを特徴とする味覚異常、舌痛症又はストレスを検査するためのキット。
図1は、味覚に関与するチャネルと受容体を示す図である。
図2は、擦過法に使用するエッペンドルフチューブを示す図である。
図3は、ヒト舌の各部の名称を示す図である。
図4は、PCRのサイクル数とPCR産物生成の関係を示す図である。
図5は、定量化PCRの原理を示す図である。
図6は、外科的手法によって採取した組織を用いて解析した、舌各部位における味覚受容体の発現を示す図である。
図7は、擦過法によって採取した組織を用いて解析した、舌各部位における味覚受容体の発現を示す図である。
図8は、味覚受容体の検査対象となった患者における味覚受容体(THTRファミリー)の発現を示す図である。
図9は、味覚受容体の検査対象となった患者における味覚受容体(T2Rファミリー)の発現を示す図である。
図10は、舌痛症回復時の味覚受容体発現の変化を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の実施の形態は本発明を説明するための例示であり、本発明はその要旨を逸脱しない限りさまざまな形態で実施することができる。なお、本明細書において引用した文献、特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
本発明は、甘味、苦味、旨味を受容すると言われるGPCR型の複数の受容体の舌組織における発現量の変化と、舌痛症などの味覚異常の程度との関連性に基づいた味覚異常の検査方法、および当該受容体の発現量と、味覚異常の原因の一つであるストレスの程度との関連性に基づいたストレスの検査方法を提供する。本発明は、従来のようにヒトの感覚を判断の指標にした味覚検査ではなく、口腔由来のサンプルを用いたRT−PCR法により複数の味覚受容体の発現を確認することによって行う、味覚異常の検査方法、ストレスの検査方法を提供する。
本発明者は、味覚受容体としてすでに報告された11種類の受容体(T2R1,3,4,5,7,8,9,10,13,14,16)、そしてTakedaら(Takeda et al.FEBS Lett.520,97,2002)が味覚受容体の候補としてあげている11種類の受容体(THTR1,2,3,4,5,6,7,9,11,12,14)についてヒト舌組織における発現量をRT−PCR法で検出し、味覚異常と関連させて、従来のようなヒトの感覚に頼らない味覚異常検査方法およびストレス検査方法を開発した。下記の表1に、検査に用いる22種類の受容体名、並びにその塩基配列及びアミノ酸配列を示す配列番号を示す。
Figure 0004800212
表1の受容体名中、TAS2RX(Xは任意の番号)はGenBankにおける登録名を意味する。
呈味性物質による情報の受け口である受容体の発現量の変化は、舌痛症などの味覚異常に結びつくことが予想され、受容体の発現量の変化を検査することにより味覚異常の有無とその原因、さらには治療ターゲットを知ることが可能となる。また、味覚異常、特に舌痛症は、ストレスに関連することが知られていることから、味覚受容体の発現量の変化を調べることにより、ストレスの程度の変化を知ることが可能になる。
さらに、本発明は味覚異常の検査を実施するにあたり、口腔由来の組織の採取方法が、メスを用いた組織採取によるのではなく、ほとんど無痛で非観血的な採取による点(被験者の負担が少ない点)で有用である。
1.呈味性物質反応性組成物(味覚受容体)
本発明の呈味性物質反応性組成物(以下、味覚受容体とも称する。)は、呈味性物質を受容し、呈味性物質による情報を体内に発信する機能を有する。本発明で用いる味覚受容体は、味覚受容体の中でもGPCRに含まれるTHTRとT2Rのファミリーに属するものであ.る。特に、THTRファミリーには、THTR1,2,3,4,5,6,7,9,11,12,14(アミノ酸配列:配列番号1〜22(偶数番号のみ)、(2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22))を、また、T2Rファミリーには、T2R 1,3,4,5,7,8,9,10,13,14,16(アミノ酸配列:配列番号23〜44(偶数番号のみ)、(24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44))を用いることができる。その際、上記のTHTRファミリーに属する味覚受容体、若しくはTHTRファミリーに属する味覚受容体とT2Rファミリーに属する味覚受容体の22個の全ての受容体を用いてもよいし、又はその複数を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明で用いる上記の受容体の名前と塩基配列、及びアミノ酸配列を示す配列番号の一覧を上述の表1に示す。また、GPCRタイプの上記味覚受容体は、甘味、苦味、旨味に関する受容体であるが、これらの受容体の中には、リガンドである呈味性物質が未同定であるために、そのアミノ酸配列の相同性から味覚受容体として推定されているものも含まれている。
さらに、本発明で用いる味覚受容体は、味覚受容体として機能する限り、上記の配列番号1〜44(1〜44のうち、偶数番号のもの)に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドのうち複数個、好ましくは1個若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じているものであってもよい。
アミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換又は付加されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987−1997);特にSection8.1−8.5)、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92、等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。また、ポリヌクレオチドに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
「味覚受容体としての機能」としては、例えば、呈味性物質との結合活性、呈味性物質を介したシグナル情報伝達作用などが挙げられる。「味覚受容体として機能する」とは、例えばそれぞれの配列番号に示すアミノ酸配列からなるタンパク質とほぼ同等の機能を有することを指す。従って、配列番号1〜44(1〜44のうち、偶数番号のもの)に示すアミノ酸配列のうち、複数個、好ましくは1個若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異を含むタンパク質の活性が、それぞれの配列番号に示すアミノ酸配列からなるタンパク質と同等又はそれ以上(0.5〜1.5倍程度)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
また、本発明において使用する味覚受容体としては、当該受容体の部分ペプチドも包含される。そのような部分ペプチドとしては、例えば、受容体分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、受容体結合活性を有するものなどが用いられる。具体的には、受容体の部分ペプチドとしては、ヒドロパシープロット解析において細胞外領域(親水性部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用いることもでき、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでもよい。本発明において、当該部分ペプチドには、アミノ酸配列に、前述の欠失、置換、付加等の変異が生じているものであってもよい。
本発明で用いる味覚受容体をコードするDNAは、配列番号1〜44(1〜44のうち偶数番号のもの)に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド若しくはその上記変異体、またはその部分をコードするものであればよい。そのようなDNAには、例えば配列番号1〜44(1〜44のうち奇数番号のもの(1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,41,43))で示す塩基配列を有するDNAを挙げることができる。さらに、味覚受容体として機能するものであれば、配列番号1〜44(1〜44のうち奇数番号のもの)で示す塩基配列のうち、1塩基以上の欠失、置換、付加等の変異が生じているものであってもよい。さらに、本発明で用いる味覚受容体ポリペプチドをコードするDNAには、配列番号1〜44(1〜44のうち奇数番号のもの)で示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできるDNAであって、味覚受容体として機能するポリペプチドをコードするものも含まれる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高いDNA、すなわち60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNAの相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。具体的なストリンジェントな条件としては、例えばナトリウム濃度が、10〜300mM、好ましくは20〜100mMであり、温度が25〜70℃、好ましくは42〜55℃における条件が挙げられる。
上記の味覚受容体ポリペプチドをコードするDNA量を検出するためには、それぞれに特異的なDNAを用いるPCR法を用いることができる。
本発明で用いる味覚受容体の塩基配列及びアミノ酸配列は、GenBank等のデータベース上で公開されており、この遺伝子情報を用いて本発明のプライマーを設計することができる。プライマーは、PCR法に用いたときに、目的の受容体のみを増幅できるように設計するべきである。本発明は、味覚受容体発現量の変化の検出に使用するDNAとして、味覚受容体ポリペプチドをコードするDNAのうち、PCR法により当該味覚受容体を特異的に増幅することのできる前記部分配列(プライマー)の他、当該味覚受容体に特異的にハイブリダイズする部分配列(プローブ)を含むDNAも含むことができる。高感度に受容体遺伝子の発現を検査するには、PCR法によって受容体遺伝子を増幅することが好ましい。このような部分配列は、THTRファミリー、T2Rファミリーの全長を増幅するものであってもよい。また、例えばこのような部分配列は、本発明で用いる味覚受容体ポリペプチド(例えば配列番号1〜44(偶数番号のもの)とその変異体)をコードするDNAと、その相補的な塩基配列からなるDNAのそれぞれから設計されるものであってもよい。あるいは、本発明で用いる味覚受容体をコードするDNA(例えば配列番号1〜44(奇数番号のもの)とその変異体)と、その相補的な塩基配列からなるDNAのそれぞれから設計される部分配列であってもよい。本発明において、プライマーは、18〜27の塩基長のいずれかであることが好ましい。いずれの場合も、増幅部分として、全長の他、300〜1000塩基長、好ましくは500〜900塩基長、より好ましくは700〜800塩基長の部分配列を設計できる。
さらに、本発明の部分配列、特にプライマーには、例えば、後に示す表2に挙げた味覚受容体を増幅するためのプライマー、配列番号45〜88又は配列番号45〜88で示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることのできるDNAを挙げることができる。ここで、ストリンジェントな条件とは前述の通りである。
配列番号(2n+43)(nは1〜22までの整数を表す)に示す塩基配列(配列番号45,47,・・・,85,87)は、配列番号(2n−1)(nは1〜22までの整数を表す)に示す塩基配列(配列番号1,3,・・・,41,43)のうち1番目の塩基から18〜26番目の塩基までの配列を表す。配列番号(2n+44)(nは1〜22までの整数を表す)(配列番号46,48,・・・,86,88)は、配列番号(2n−1)に示す塩基配列のうち最後の18〜26塩基の相補配列を示す。従って、配列番号(2n+43)と(2n+44)とはペアプライマーであり、PCR法により配列番号(2n−1)に示す塩基配列を有するDNAの全長を増幅することができる。
本発明のプライマーは、目的受容体の特異的増幅を示す限り、タグや制限酵素認識配列等を適宜その5’末端側に付加することができる。
本発明のプライマーで増幅されるDNAの長さは、味覚受容体ポリペプチド全長又は一部分をコードするDNAであるが、検出の感度と増幅の特異性から、増幅するDNAは味覚受容体DNAの全長であることが望ましい。さらに、本発明で用いられる味覚受容体を増幅するためのDNAは、その5’末端側に必要な配列を付加することもできる。そのような配列としては、制限酵素認識配列等を挙げることができる。
本発明の上記プライマー又はプローブは、公知の方法に従って、あるいは市販のDNA合成装置を使用して製造することができる。
Figure 0004800212
2.口腔由来組織の採取方法
本発明において、味覚受容体の発現量の変化は、被験者の口腔由来組織、例えば舌組織サンプルから抽出したDNAを用いて検出することができる。前述のとおり、本発明は味覚異常の検査を実施するにあたり、メスを用いて舌組織を採取するのではなく、ほとんど無痛で非観血的に(出血させることなく)採取できるという特徴をもつ。
舌組織の採取は、図2に示すように通常エッペンドルフチューブといわれる、滅菌済みの使い捨て微量高速遠沈管を用いる。図2の(*)で示したフタのエッジの部分を利用して、図3(医学書院、系統看護学講座 専門基礎1 人体の構造と機能[1]解剖生理学 日野原重明著より)中の舌背部、茸状乳頭組織、葉状乳頭付近又はほおの裏側の口腔内粘膜組織を1〜10回、好ましくは2〜7回、より好ましくは3〜5回程度擦過して、舌表層又はほおの組織を得る。採取部位は好ましくは、葉状乳頭付近である。なお、一度擦過した後は、2〜3日の間、同じ擦過部位から組織を採取せずに放置しておくことが好ましい。微量高速遠沈管は市販されており、例えば、エッペンドルフ社、アシスト社などから購入することができる。遠沈管は、未滅菌の状態のものを購入し、オートクレーブで滅菌したものを用いても、滅菌済みのものを購入して用いてもよい。一度使用した遠沈管は、廃棄し、舌組織の採取の目的で再使用しないことが好ましい。
舌組織サンプルの採取にあたっては、口腔内を水などでよく洗浄してから採取する。そして、組織サンプルを採取した直後に、RNA抽出試薬、例えばTRIzolをチューブに0.5mL加え、撹拌混和した後、−20℃で使用まで保存することができる。
3.味覚受容体の検出方法
上記「2.口腔由来組織の採取方法」で採取された組織からtotal RNA又はmRNAを抽出し、RT−PCRを施行する。このとき、組織からのRNA抽出方法は例えばTRIzol(Invitrogen)、Quick Prep Total RNA Extraction Kit(Amersham Biosciences)、RNeasy Kit(QIAGEN)を用いることができる。得られたRNAは、適宜DEPC処理水(例えばDEPC treated Water(Invitrogen))に溶解し、濃度を測定し、−80℃で保存することもできる。
また、逆転写反応には逆転写酵素としてSuperScript III(Invitrogen)、プライマーとしてランダムプライマー、Oligo dTプライマー、配列特異的プライマー等を利用できる。逆転写反応は、酵素に添付されたマニュアルに従って行えばよい。
PCR反応にはDNAポリメラーゼとしてEx Taqを用いることができる。PCR反応に用いるプライマーは、上記「1.呈味性物質反応性組成物(味覚受容体)」に記載したプライマー(例えば表2)を用いることができる。PCRは、当業者であれば公知の方法に従い適宜設定することができるが、例えば、94℃に3分間処置した後、94℃で30秒、59℃で30秒、72℃で1分のセットを35サイクル行い、72℃で7分間処置し、4℃で反応を終了させる条件で実施することができる。
本発明におけるRT−PCRの実施方法は2つの特徴を有する。一つはPCRのサイクルを35回以上とすること、そしてもう一つはPCRによって、増幅対象の受容体を特異的に確実に増幅して検出することである。
PCRのサイクル数については、PCRのサイクル数とPCR産物の生成量との関係が図4(秀潤社 バイオ実験イラストレイテッド3本当にふえるPCR中山広樹著より)のように変化し、35サイクル付近では、PCR産物はすでにプラトーに達することが知られている。本発明において、35サイクル以上でPCRを行うことは、図5(秀潤社 バイオ実験イラストレイテッド3本当にふえるPCR中山広樹著より)に示すように初期のテンプレート量に関わらず(図5の矢印部分、PCRサイクル数0の位置)、反応生成物(PCR産物)がプラトーに達し、一定の値を取るようになることから、組織内の味覚受容体RNAの発現量の多寡を検討することよりも、むしろ、発現する味覚受容体RNAの有無を検討することになる。すなわち、味覚受容体の発現については定量性はあまり考慮せず、主として定性的な検出を考慮する。そのため、PCR反応産物の検出段階(例えばアジレント社の2100 Bioanalyzerを用いたPCR産物の検出段階)において、薄いバンドとして見えるPCR産物は、ほとんど発現していないと解釈できる。つまり、PCR生成量がプラトーに達した反応生成物を用いて、味覚受容体の発現を定性的に検討することが本発明の特徴の1つである。以上より、本発明において、PCRのサイクル数は35〜50サイクル、好ましくは35〜40サイクル、より好ましくは35サイクルである。
次に、増幅対象の受容体を特異的に確実に増幅して検出することは、相同性の高い受容体ファミリーの発現の有無をPCR法によって検出する場合には必要不可欠である。増幅産物が対象とする受容体であり、他の受容体ではないことを確実にするには、増幅産物の塩基配列を解析すること、対象とする受容体の全長をPCR法で増幅すること、又は増幅される塩基長を受容体毎に異なものとすることなどの方法が考えられる。味覚受容体をコードする遺伝子の少なくとも一部を増幅してもよいが、なかでも、プライマー設計の簡便性点、あるいは類似塩基配列の増幅防止の点から、全長をPCR法で増幅することが望ましい。対象とする味覚受容体の全長をRT−PCR法で増幅する意義は、PCRで増幅する場合、増幅されたPCR産物そのものをチェックすることは困難を伴うため、増幅されたPCR産物の大きさを指標に正常な増幅が行われ、増幅対象である味覚受容体を確実に増幅したことを確認することにある。また、全長を増幅する場合、サンプルRNA中に検出対象の味覚受容体の全長に相当するRNAが存在しなければ増幅されないことから、味覚受容体遺伝子の少なくとも一部を増幅する場合よりもより確実にチェックを行うことができる。さらに、味覚受容体の全長をPCR法で増幅する利点には、ごく少量の、検出対象以外の味覚受容体のRNAがサンプル中に存在する場合、当該他の受容体遺伝子の増幅は多量に発現している検出対象の味覚受容体よりも困難になるため、本発明の目的である舌における味覚受容体の定性的な観測にとって、より有利である点が挙げられる。そこで、PCR用プライマーは、受容体のコード領域全部を増幅できるように設計することが好ましい(前述)。
PCR産物の大きさや量を測定するには、アガロースゲル電気泳動でPCR産物を泳動し、その大きさ毎に分離してバンドの濃さによって測定する方法や、DNA LabChip(Agilent Technologies)を用いて、PCR産物に含まれるフラグメントの分子量を測定する方法を用いることができる。中でも、PCR産物の大きさを正確に、かつ高感度に測定できるアジレント社の2100 Bioanalyzerが本発明の検査には有効である。このようにして得られたPCR産物のバンドの濃さ及び/又は数を指標として、味覚受容体が発現しないことによる味覚異常の有無等を検討するのが本発明である。すなわち、複数のTHTR受容体およびT2R受容体のうち、例えば、異なる10個受容体の発現を検討した場合、PCR産物の濃いバンドが所定数出現したときを、味覚異常、舌痛症、又はストレスの状態と判断する。本発明はPCR反応生成物がプラトーに達するまでPCRを行うことから、薄いバンドとして見えるPCR産物はほとんど受容体が発現していないと考えられる。したがって、このような薄いバンドは出現したバンドの数には加算しない。
薄いバンドとはピークエリア数値(ピーク面積)が10以下のものをさす。本発明ではPCR産物の塩基の長さと増幅された遺伝子産物量の測定にはアジレント社の2100Bioanalyzerを用いた。2100Bioanalyzerは、PCR等で増幅した産物をはじめ、遺伝子産物に対し電気泳動を行い、その量と塩基の長さを測定する装置である。この測定装置は、電気的な力によってキャピラリー中を泳動する遺伝子産物が検出器を通過するまでの時間から塩基の長さ(大きさ)を求め、また検出器が検出するシグナルの強さを表すピークエリアの面積の大小をバンドの濃淡として示すものである。2100Bioanalyzerは遺伝子産物シグナルのピークエリアの大きさを味覚受容体遺伝子発現パターンの擬似電気泳動像として示している。この擬似電気泳動像測定時に記録されているピークエリアの数値が20以上の場合、濃いくっきりしたバンドで表されるため、本発明ではこれを「濃いバンド」として示し、舌上皮組織における味覚受容体遺伝子が発現しているものと判断する。一方、このピークエリアの値が5以下の場合は非常に薄いバンドとして表現され、本件では味覚受容体遺伝子がほとんど発現していないことを示している。5以上10以下の数値が得られた場合は、「わずかに発現」としているが、発現はあるものの組織中に発現する受容体数が少ないため、味覚受容体として機能していないと想像される。2100Bioanalyzerを構成する解析ソフトが認識しないほどの小さなピークでは味覚受容体遺伝子の発現がないと判断する。本件を味覚検査の集団検診に用いた場合ピークエリア数値が10以下のものは「味覚受容体遺伝子発現がない(遺伝子発現はあっても味覚を感じるほどの機能はない)」と判断してもよい。
味覚障害患者治療時に、ピークエリアの数値が5−10程度の「わずかな発現」と判断されるようなバンドの濃さでも、これらバンドを経時的に検討し、それを患者に示したときにバンドの濃さ(ピークエリア数値の増加)が治療の目標や、患者の治療への動機付けとして有用に働く場合には、患者に対して「味覚受容体がわずかに発現」または「味覚受容体遺伝子発現はない」のように、ネガティブな意見又は判断を示すことは、患者の治療意欲を減退させる可能性がある。そこで、味覚受容体発現量の表現に関し「わずかな発現」と判断されるようなバンドのときは、患者の治療意欲を考慮して、単に数値的に割り切らないほうがよい治療結果を生み出すものと考える。これは実施例4の5回目の検査(2005年2月14日)にあらわれている。
実施例4における5回目の回復期にある結果において、舌右側から得られた組織中に発現する味覚受容体遺伝子のピークエリアの数値は6以上10以下であり、この結果からは組織中の味覚受容体発現がほとんどないものとされる数値となった。しかしこの実施例4では薄いながらも、T2R8−16の大部分でバンドが認められる特徴的なパターンであり、今まで示してきた味覚障害患者ではほとんど見られないものであった。このように6以上10以下のピークエリア数値であっても、4−6つ以上の味覚受容体遺伝子が同時にほぼ同じような発現量と認められる場合、味覚を以前にもまして感じるようになったという患者の感覚も考慮して、味覚異常の診断を行うことが好ましい。
本発明によって検査される味覚異常には、例えば、味覚障害、舌痛症、金属アレルギー、口腔扁平苔癬、口腔乾燥症、口腔乾燥味覚障害、舌炎、口内痛、頬部蜂窩織炎、舌痛炎等からなる群から選択される1以上を挙げることができる。特に本発明の方法によって、味覚障害、舌痛症の有無を検査することが可能となる。ストレスに関連して発症する味覚異常も、本発明によって検査することができる。
舌痛症は、「心理情動因子に起因し、舌に表在性の異常感を訴えるが、それに見合うだけの器質的(肉眼的)変化がないもの」と定義される場合もある。しかし、本発明は、舌痛症の患者において味覚受容体の発現量の低下が認められ、症状の改善に伴って受容体の発現量が上昇することを明らかにした。したがって、味覚受容体の発現量を検出することによって、舌痛症の有無を検査をすることができる。
また、本発明者は、舌痛症患者のストレスのあった時期と、味覚受容体遺伝子の発現量減少の時期が重なること、および、ストレスからの解放に伴って味覚受容体遺伝子の発現量が増大し、舌痛症の症状も改善することを明らかにした。すなわち、舌痛症の原因の一つであるストレスと味覚受容体の発現量とは関連するといえるため、味覚受容体の発現量を調べることによりストレス負荷状態を明らかにすることができる。
4.キット
本発明のプライマーは、味覚異常を検査するためのキット、舌痛症を検査するためのキット、ストレスを検査するためのキットとして提供することができる。本発明の検査用キット(以下、「本キット」という)は、当該プライマーの他、本発明の検査方法を実施するために有用な成分を含むものである。そのような成分としては、例えば、以下の(a)〜(c)のものを挙げることができる。
(a)組織からtotal RNAを抽出する際に使用する器具又は試薬
TRIzol溶液、1mL針付きディスポーザブルシリンジ(例えば、トップ、ディスポーザブルトッププラスチックシリンジ25G×1”R.B.)、イソプロパノール、リンス用70%エタノール、及びRNase free DEPC treated Water
上記(a)の試薬、器具の使用方法は、以下のとおりである。1サンプルあたり0.5〜1ml(好ましくは、0.5ml)のTRIzol溶液を、口腔内サンプルを採取したチューブに入れて激しく攪拌することによって、チューブのフタに付着した口腔内サンプルとTRIzolを混和する。そして、このシリンジを使ってTRIzol中の口腔内サンプルをチューブ中で20〜30回程度、強く吸引、吐出することによって、サンプルからRNAを抽出しやすくすることができる。イソプロパノールは、使用したTRIzolの半量を用いて、RNA沈殿に使用する。RNA沈殿で使うチューブはRNase freeであることが望ましい。リンス用70%エタノールは、イソプロパノールで沈殿させたtotal RNAをリンスするために使用する。RNase free DEPC treated Waterは、得られたtotal RNAを溶解するために使用する。
(b)total RNAを逆転写するための器具・試薬
反応用チューブ(DNase RNase free tube)、dNTP、Random primer混合液、逆転写用バッファー、RNase Inhibitor、DTT、逆転写反応酵素(SuperScript III(Invitrogen)が好ましい)、RNase H
(c)PCR反応を行うための器具・試薬
反応用チューブ(DNase RNase free tube)、PCR反応用バッファー、dNTP溶液、DNase−RNase free water、DNA polymerase(Ex Taq,Takaraが好ましい)
上記のバッファーには、例えば、pH4〜10のリン酸バッファー、トリス塩酸バッファーなどが挙げられ、SDSなどの界面活性剤を含んでいてもよい。さらに本キットには、口腔内サンプルを擦過法にて採取するための微量高速遠沈管、サンプルからRNAを抽出するためのカラム、バッファー、界面活性剤等を含んでもよい。
本キットを利用することにより、本発明の味覚異常検査方法、舌痛症の検査方法、ストレス検査方法を簡便に行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
味覚受容体遺伝子の増幅
(1)組織採取方法
本実施例において採取部位等を検討するためにa)メスによる外科的採取法、b)擦過による組織採取法の2種類の採取方法を実施した。但し、図8、図9に示す味覚障害患者からの組織採取はb)の擦過法による組織採取を実施した。これらの採取法においては口腔内を水等でよく洗浄してから、組織を採取した。
a)メスによる組織採取方法
図3に示すように、舌背部の茸状乳頭(目視で確認)、舌尖部から3センチ離れた部位の舌側面の茸状乳頭、葉状乳頭よりメスで2mm角の組織を採取した。
b)擦過法による組織採取方法
舌背部、茸状乳頭組織、そして葉状乳頭付近、ほおの裏側の口腔内粘膜組織を図2に示したエッペンドルフチューブのフタのエッジ部分で3−5回擦過して採取した。
上記のように採取した直後に、これら組織にインビトロゲン社のTRIzolを0.5ml加え、よく攪拌混和し、−20℃で保存した後使用した。
(2)RNA抽出方法
採取した組織からtotal RNAを抽出した。抽出方法はTRIzolに添付された説明書に従った。得られたTotal RNAは10μlのDEPC treated Water(Invitrogen)に溶かし、得られたtotalRNA濃度を測定した後、−80℃で保存した。
(3)RT−PCR実施方法
得られたTotal RNA 0.65μgをrandom primer(Invitrogen)とともにSuper Script III(Invitrogen)で逆転写反応を行った。ここで得られた反応液0.5μlをテンプレートにしてEx Taq(Takara)を用いて、50μlの系でPCRを行った。用いたプライマーを表2に示す。逆転写反応もPCR反応も添付されたマニュアルに従って行った。PCRはアプライドバイオシステムズ社のGeneAmp PCR System 9700を用いた。PCRの条件は94℃で3分間反応させた後、94℃−30秒、59℃−30秒、72℃−1分を35サイクル、そして、72℃−7分処置した後、4℃でアジレント社の2100 Bioanalyzerで測定するまで保存した。
(4)PCR産物の検討
上記の条件で得られたPCR産物をアジレント社の2100 Bioanalyzerを用いて検討した。
採取場所及び採取方法の検討
本実施例の検討には、健常者の舌組織を用いた。図6は実施例1(1)a)に示す外科的手法により組織を採取したときの舌組織各所における味覚受容体の発現を示した。図6のA〜CはTHTRファミリーの発現を示し、D〜FはT2Rファミリーの発現を示している。図6のA,Dは舌背部より得られた組織、B,Eは舌尖部から3センチ離れた部位の舌側面より得られた茸状乳頭組織、C,Fは葉状乳頭組織より得られた組織よりRT−PCRを施行した結果である。舌背部より得られた組織からは味覚受容体はほとんど発現していないのに対し、茸状乳頭組織、葉状乳頭組織にはTHTR,T2Rファミリーの味覚受容体の発現が認められた(図6)。
しかしながら、これらの組織の採取にはメスを用いた外科的な手法を用いるため、痛みや出血を伴い、多数の味覚障害患者の検査に用いるのには問題が多い。
そこで、次に出血や痛みを伴わない擦過による組織採取の方法(実施例1(1)b)に示す)を施行した。その結果を図7に示す。図7のA〜DはTHTRファミリーの発現を、E〜HはT2Rファミリーの発現を示している。A,Eは舌背部、B,Fは茸状乳頭組織、C,Gは葉状乳頭組織、D,Hはほおの裏側の口腔内粘膜組織における味覚受容体の発現を示している。これらの組織でRT−PCRを施行した結果、葉状乳頭組織を擦過したときに、もっとも多くの味覚受容体を得られた。この結果から、本発明では、ヒトの舌組織total RNAは葉状乳頭組織を擦過して得ることがより好ましいといえる。
味覚障害患者の味覚受容体発現
本実施例は、味覚障害患者における味覚受容体の発現パターンを検討したものである。組織の採取は、非観血的な、葉状乳頭組織を擦過する方法(実施例1(1)b)に示す)を用いた。
図8(THTRファミリー)と図9(T2Rファミリー)に、味覚障害を含むのべ17人の味覚受容体の発現パターンを示した。図8、図9ともに16,17,20は組織からtotal RNAをほとんど抽出できなかったため、欠番となっている。これら被験者の診断等の詳細は表3に示した。
Figure 0004800212
表3には患者の番号、性別、診断結果、合併症、現在飲んでいる薬、唾液分泌試験の結果、血中の亜鉛と鉄の濃度を示した。また、1,3,4,5,7,8,9,10,17,19番の患者の備考欄には、従来、味覚異常の診断に用いられる濾紙ディスク法による味覚検査の結果を示した。
血清中の亜鉛は65〜110が正常である。亜鉛の不足は味覚異常をもたらすと言われているが、本件の結果から血清中の亜鉛濃度と味覚受容体発現には大きな関連はないと思われる。
備考欄に記載されている味覚検査の数値は3を基準とし、数字が大きくなると味を感じにくいと判断され、3以下であれば正常と判断される。例えば番号5は甘味2.0,塩味2.0,酸味3.0,苦味3.0というスコアを得ている。そして、味覚受容体の発現は図7のC,Gで示した発明者由来のサンプルとほぼ同じ結果を得ていることから(図8、図9の5)、味覚受容体の発現は正常と判断した。また番号4を見ると、本人からは味覚異常を訴えることはなくとも、味覚受容体発現は非常に悪く(図8、図9の4)、また味覚検査の結果も非常に悪いという結果を得ている。このことから本人の自覚がなくとも、味覚受容体発現の低下が起こるものと考えられる。
味覚障害と診断され(表3「診断」欄)、かつ、味覚検査を実施された(表3「備考」欄)患者1,3,8,9のいずれもが、味覚受容体の発現が非常に低かった(図8、図9)。この結果から、味覚障害と診断された患者における舌葉状乳頭組織中に発現する味覚受容体は非常に少ないことが明らかとなった。患者11と15は味覚障害と診断されていない5歳と7歳の子供であるが、彼らは味覚が未発達であると推測された。患者8と13は同一の患者であり、口腔内乾燥からカンジタ症を発症したものであり、8は治療前、13は治療中の結果である。図8、図9の8と13を比較するとT2Rファミリーでやや発現パターンが異なるものの、治療による味覚受容体発現に対する大きな影響は認められない(図9)。また、図8、図9の12と19は、同一患者における食道癌に対する化学療法を行う前と、治療中の結果である。化学療法による治療によって味覚受容体は治療前と比較して発現が増加している。この味覚受容体の発現増加は、おそらく、癌に対する化学療法により、全身症状が回復したことに起因すると考えられる。いずれにしても、正常の味覚受容体発現レベルと比較すると、発現量は化学療法によって良好になったものの、かなり低いレベルのままである。そのため、19に示す化学療法中に行われた味覚検査結果においても、よい結果を得ることができないと予想できる。
以上の結果から、本発明は味覚障害患者の一次スクリーニングに非常に有用なツールであると言える。
舌痛症と味覚受容体遺伝子の発現
(1)対象と検査方法
本実施例において、検査の対象は69歳の舌痛症と診断された女性であり、舌痛症は舌の左側に顕著に出現している。検査は2004年10月18日から2005年2月14日までの間、5回施行した。
図10左端の各電気泳動図には、実施日時(月/日/年)、血清亜鉛濃度(μg/100ml)(正常範囲 69−79μg/100ml、Zn:で表示)、被験者が感じる痛みの程度を本人の感覚で示した数値(VAS,Visual Analogue Scale、P:で表示)を示した。VASについて、「初診の時の症状の程度を10とすると、今はいくつ位ですか?」と問診した結果、患者から得た程度が3以下の場合に、舌痛症の治療は成功と判断する。
RT−PCR用のサンプルの採取はひどい舌痛が発症している左側と舌痛症がない右側から同時に採取した。採取したサンプルからのRNAの抽出は、逆転写反応には逆転写酵素としてSuperScript III(Invitrogen)を用いて行った。増幅対象の味覚受容体は、THTR5、11、4、9、およびT2R3、8、9、10、13、16の10種を用いた。RT−PCRには、表2に記載したプライマーを使用し、反応は実施例1(3)と同様の条件で行った。舌上皮から得られた組織中に発現する味覚受容体遺伝子は電気泳動の結果の一部を切り抜いて表示した(図10、味覚受容体発現の量が増加するとRT−PCRの結果であるPCR産物のバンドが濃く太くなっていく)。
被験者の感覚を元にした電気刺激法(舌に電極を押し当て通電し、電気刺激を感じる値を表示する方法。E:と表示し、−6〜36までの数値で表し、数値が小さくなるにしたがって味覚は良好である)、濾紙ディスク法(異なる濃度の甘味、塩味、酸味、苦味物質を舌に載せた円形の濾紙に滴下し、呈味物質刺激を感じる濃度をスコア化する方法。D:と表示。−1〜6までの数値で表し、数値が減少するに従って、良好な味覚と判断する、平均は3。)を味覚受容体の遺伝子増幅と同時に施行した。電気刺激法(E)、濾紙ディスク法(D)の結果は電気泳動の結果の下段に示した(図10)。
(2)結果と考察
(i)被験者が感じる痛みの程度(Pで示した値)は10/18/04に10であったのが、時間経過に伴い7,5,2,1−2と減少していることから、初診時の痛みは検査5回目にはかなり減少したことがわかる。したがって上記判断基準から、本実施例の患者は舌痛症治療に成功したといえる。
(ii)血清中の亜鉛濃度(Znで示した値)は一回目、三回目、五回目の検査時に測定され、回数をかさねるごとに73,102,105μg/100mlと増加することがわかる。亜鉛は初診時から経口投与されていた。
(iii)図10左は左側の葉状乳頭組織から擦過して得られた組織中に発現する味覚受容体遺伝子のパターンである。10/18/04のとき、舌痛を有する左側葉状乳頭組織ではPCR産物のバンドは認められなかった。このとき濾紙ディスク法による味覚検査は4味のすべてでスコア6を示し(Dで示した値)、電気刺激法による味覚検査でも舌に対する電気刺激がスケールオーバーして(Eで示した値)いた。すなわち、遺伝子発現で見ても呈味物質、電気による刺激に対してもまったく反応しなかった。
一方、右側葉状乳頭組織内の味覚受容体発現はTHTR11は明瞭なPCR産物のバンドが見える他はT2R8,9にややPCR産物のバンドが見えるだけで、塩味の他は濾紙ディスク法も、電気刺激法でも良好な結果は得られていない。
(iv)一段目からほぼ一ヶ月が経過した二段目の11/15/04でも左側には味覚受容体の発現は認められず、また一ヶ月前と比較するとやや味覚に対する感覚が増してきたもののあまり良好な結果は得られていない(D値)。
右側はT2R3,9,10,13の発現が認められるが、塩味、酸味、苦みに対する良好な応答は認められなかった(D値)。しかし電気刺激に対する応答は良好な結果であった(E値)。
(v)図3段目の12/13/04ではTHTR11,T2R8のPCR産物のバンドがわずかながら認められた。T2R3のバンドは本来の位置とは異なるためT2R3は発現していないと思われる。しかし濾紙ディスク法による味覚検査(D値)、電気刺激に対する応答(E値)は10/18/04と比較するとかなり良好なものとなった。このとき抑鬱傾向を判定するため日本版SDS検査を施行した。これは被験者が正常、神経症状、精神病を判断するための検査である。このとき患者は神経症状であるという結果が得られた。
同日の右側葉状組織における発現はTHTR11,4,T2R3,9,10,16がかろうじてバンドが視認された。T2R8はかなり明瞭なバンドが確認された。
(vi)1/17/05は左側のみ検査が行われたが、味覚受容体の発現はわずかであった。このとき甘み、塩味に対する応答は良好であったものの、患者はこの検査中、甘味と苦味を取り違えた(D値)。
(vii)5回目の検査(2/14/05)時、患者は家庭内の問題が解決し、気持ちも楽になり、食事の味がよくわかると担当歯科医に説明した。すなわち、5回目の検査時には、患者はストレスから解放されていたといえる。VASは4回目の検査とほぼ同様の1−2と舌痛からの痛みはかなり消失している(P値)。濾紙ディスク法による味覚検査は酸味は4とやや不良ではあるが、甘味、塩味、苦味は3であり、ほぼ正常である(D値)。また電気刺激による味覚検査は左右とも−4であり、初回の検査でスケールオーバーしても電気刺激に応答しなかった状態と比較すると、ほとんど正常に近い結果が得られた(E値)。
舌痛症を発症していない右側でも濾紙ディスク法も電気刺激法もほぼ正常なスコアを得た(D値、E値)。
味覚受容体遺伝子発現を検討したところ、左右ともこの5回の検査の中でもっとも発現しており、患者本人からの自発的な感覚とも一致する。ストレスのあった1回目の検査から4回目の検査に比べて、5回目の検査では味覚受容体遺伝子発現量が増大しており、濾紙ディスク法、電気刺激法の結果も良好であった。。
(viii)患者本人によると、3年以上前に配偶者と死別以降、やや抑鬱傾向が認められ、同時期に入歯の治療から舌痛症を発症し、発症とほぼ同時期から味覚を感じなくなったということである。二回目の検査時に抑鬱傾向を検査したところ抑鬱傾向が認められた。本人の表情が明るくなり、また本人から家庭内のトラブル(娘との同居等)が円満に解決したとの説明、さらに最近は食事の味がよくわかると報告した5回目の検査(2/14/05)以前は、持続的に抑鬱的な状況にあったものと思われる。
上記のように、狭義の舌痛症は「心理情動因子に起因し、舌に表在性の異常感を訴えるが、それに見合うだけの器質的(肉眼的)変化がないもの」と定義されているが、この舌痛症の検査基準の一つとしてこの味覚受容体発現の検査を加えることにより、遺伝子発現の変化がない心因性の舌痛症なのか、あるいは味覚異常も併発した舌痛症なのか、という舌痛症の新たな判断基準を作り出す可能性が考えられる。すなわち、本発明により、舌痛症は患者本人の気持ちの問題、心気症的なものとして分類されているが、この心気症的なものとして分類される舌痛症を、遺伝子発現の有無という具体的にスコア化が可能な指標をもとに検査することが可能である。
本実施例では、舌痛症の痛みがなくなることによって、味覚受容体遺伝子発現の増加と濾紙ディスク、電気刺激法による味覚検査の良好な結果がパラレルに起きた。したがって、舌痛症の患者に患者でも理解できる具体的な治療結果として味覚受容体遺伝子発現の程度を示すことが可能である。 また、舌痛症、抑鬱などを包括したストレスという事象は、現代の我々に日常茶飯事に向き合うものである。しかしながらその実態は明らかではなく、結果的に高血圧、生活習慣病、胃潰瘍などの病気を発症することはあっても、ストレスの程度を具体的に表した信頼できる指標は多くない。本実施例の結果から、大きなストレスによって舌上皮中の味覚受容体遺伝子発現が抑えられることから、味覚受容体遺伝子発現の検討は、ストレスのスコア化に寄与する可能性が高いといえる。
本実施例は、舌痛症と診断された患者において以下の事項を示している。
1)舌痛症とともに味覚異常を併発していることがわかる。また、濾紙ディスク法の検査結果が不良な味覚異常時には舌上皮の味覚受容体遺伝子発現が抑制されていることが明らかである。
2)患者の舌痛症が改善するに従い、味覚受容体遺伝子発現が認められ、それにともなって濾紙ディスク法による味覚検査も良好な結果が得られている。このことから味覚受容体遺伝子発現と濾紙ディスク法による検査結果に関連があることがわかる。味覚受容体遺伝子の発現量を舌痛症の診断基準の一つに加え得るといえる。
3)一般的に舌痛症はストレスと関連することから、味覚受容体遺伝子の発現量を測定することによって、味覚と遺伝子発現の関連のみならず、ストレスの程度と舌味覚受容体遺伝子発現との関連が推測可能である。すなわち、本発明により、スコア化が困難なストレスの程度を味覚受容体遺伝子発現で表現することができる。
本発明によれば、非観血的な方法で採取する口腔由来サンプルを用いた味覚異常の検査方法が提供される。当該方法により、味覚異常を認識しない初期段階においても異常を見つけることが可能となる。また、本発明により新たな舌痛症の検査方法およびストレスの検査方法が提供される。
配列番号45〜配列番号88:プライマー

Claims (10)

  1. 葉状乳頭由来のサンプルからTHTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子及びT2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子を増幅し、得られる増幅産物の発現パターンを比較検討することを特徴とする味覚異常の検査方法であって、THTRファミリーに属する味覚受容体が以下の(a)又は(b)のポリペプチドであり、T2Rファミリーに属する味覚受容体が以下の(c)又は(d)のポリペプチドである前記方法。
    (a) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド
    (c) 配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (d) 配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド
  2. 葉状乳頭由来のサンプルからTHTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子及びT2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子を増幅し、得られる増幅産物の発現パターンを比較検討することを特徴とする舌痛症の検査方法であって、THTRファミリーに属する味覚受容体が以下の(a)又は(b)のポリペプチドであり、T2Rファミリーに属する味覚受容体が以下の(c)又は(d)のポリペプチドである前記方法。
    (a) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b) 配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20若しくは22で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド
    (c) 配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (d) 配列番号24,26,28,30,32,34,36,38,40,42若しくは44で表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ味覚受容体として機能するポリペプチド。
  3. THTRファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAからなるものである請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
    (a) 配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19若しくは21で表される塩基配列からなるDNA
    (b) 配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19若しくは21で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ味覚受容体として機能するポリペプチドをコードするDNA
  4. T2Rファミリーに属する味覚受容体をコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAからなるものである請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
    (a) 配列番号23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは43で表される塩基配列からなるDNA
    (b) 配列番号23,25,27,29,31,33,35,37,39,41若しくは43で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ味覚受容体として機能するポリペプチドをコードするDNA
  5. 葉状乳頭由来のサンプルが、擦過法で採取される舌組織サンプルである請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  6. 味覚異常が、味覚障害、舌痛症、金属アレルギー、口腔扁平苔癬、口腔乾燥症、口腔乾燥味覚障害、舌炎、口内痛、頬部蜂窩織炎、および舌痛炎からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1記載の方法。
  7. 味覚異常がストレスに関連するものである、請求項1記載の方法。
  8. 以下の(a)のDNAから設計される、味覚異常又は舌痛症検査用プライマー。
    (a) 配列番号45〜88で表される塩基配列からなるDNA
  9. 増幅に用いるプライマーが、請求項8に記載のプライマーである請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  10. 請求項8に記載のプライマーを含むことを特徴とする、味覚異常又は舌痛症を検査するためのキット。
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