JP4800074B2 - 光造形物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトニッククリスタル、フォトニックフラクタル、マイクロタービン等の、セラミックスからなる光造形物の製造方法に関する。
近年、成形用の型を用いずに、複雑な立体形状を有する造形物を製造する技術の一つとして、光造形法が開発されている。
光造形法の典型的な例として、液状の光硬化性組成物を収容した液槽内に、液面からわずかな距離だけ下方の地点に上面が位置するように、鉛直方向に移動可能なテーブルを配設した後、このテーブル上の液状の光硬化性組成物の薄層に、紫外線レーザを所定のパターンで走査して、所定の形状を有する第一の硬化薄層を形成させ、次いで、テーブルの位置をわずかな距離だけ下方に移動させることによって、第一の硬化薄層の上に液状の光硬化性組成物の薄層を形成させた後、この薄層に紫外線レーザを所定のパターンで走査して、所定の形状を有する第二の硬化薄層を形成させ、以後、同様の操作を繰り返して、最終的に、複数の硬化薄層の集合体である所定の立体形状を有する光造形物を得る方法が挙げられる。
光造形法は、微細な形状の設計の自由度が大きいなどの利点があるため、利用分野の拡大が検討されている。例えば、無機系微粒子を含む光硬化性液状組成物を用いて、光造形を行なった後、得られた立体造形物を焼成して、セラミックス成形体を製造することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2004−143247号公報 特開平8−91940号公報
無機系微粒子を含む光硬化性液状組成物を用いて、光造形を行なう場合、無機系微粒子の含有率が大きいと、光硬化性液状組成物の粘度が大きくなり、上述の光造形法で用いるテーブルの上に光硬化性液状組成物を導いて一定の厚さを有する薄層を形成させることが困難なことがある。
特に、光造形物が、複雑で高い精度を要求されるものである場合、光硬化性液状組成物の薄層の厚さを小さくすることが必要になる。この場合、光硬化性液状組成物の粘度が大きいと、薄層を形成させることが非常に困難になる。このため、無機系微粒子を高い含有率で含む光硬化性液状組成物を用いて、光造形を行ない、複雑で高い精度を有する光造形物を製造することは、従来、行なわれていなかった。
一方、光硬化性液状組成物中の無機系微粒子の含有率を大きくしても、上述の製造上の困難を生じずに、複雑で高い精度を有する光造形物を製造することが可能になれば、フォトニッククリスタル、フォトニックフラクタル、マイクロタービン等の、複雑で高い精度を要求されるセラミックス成形体への応用の途を開くことができる。
そこで、本発明は、無機系微粒子を含む光硬化性液状組成物を用いて光造形物を製造する方法であって、無機系微粒子の含有率が大きくても、製造上の困難を生じずに、複雑で高い精度を有する光造形物を製造することのできる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、無機系微粒子を高い含有率で含む光硬化性液状組成物を、高速で撹拌すれば、この液状組成物の粘度を、無撹拌時よりも低下させることができること、及び、粘度が低下した状態を保ったまま、光造形を行なえば、光造形時の薄層の厚さを小さくすることができ、複雑な形状の光造形物を高い精度で製造しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[]を提供するものである。
[1](A)重合性モノマー、光重合開始剤、及び無機系微粒子を含むチクソトロピー性を有する光硬化性液状組成物を撹拌して、該光硬化性液状組成物の粘度を、無撹拌時よりも低下させる工程と、(B)工程(A)で得られた粘度の低下した光硬化性液状組成物を、粘度が低下した状態を保ったまま、光造形装置に導く工程と、(C)該光造形装置内において、光照射前の未硬化の薄層の形成時まで粘度が低下した状態を保つようにして、上記光硬化性液状組成物に光照射して光造形を行ない、硬化した薄層が積層してなる光造形物を得る工程、を含み、かつ、上記無機系微粒子の粒径が、動的光散乱法による数平均粒径として5〜300nmであり、かつ、上記光硬化性液状組成物中の上記無機系微粒子の含有率が、60〜95質量%であることを特徴とする光造形物の製造方法。
[2]上記無機系微粒子が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化チタン、及び窒化ケイ素からなる群より選択される1種以上を含む上記[1]に記載の光造形物の製造方法。
[3]光造形物に対して高圧ガスを吹き付け、光造形物の表面に残存している未硬化の光硬化性液状組成物を除去する工程を含む上記[1]又は[2]に記載の光造形物の製造方法。
[4]得られた光造形物を焼成する工程を含む上記[1]〜[]のいずれかに記載の光造形物の製造方法。
本発明の光造形物の製造方法によれば、光硬化性液状組成物中の無機系微粒子の含有率が大きくても、撹拌することによって、無撹拌時よりも液状組成物の粘度が低下しているため、光造形時の薄層の厚さを小さくすることができ、それゆえ、複雑な形状を有する光造形物を高い精度で製造することができる。
本発明の光造形物の製造方法の一例は、(A)重合性モノマー、光重合開始剤、無機系微粒子、及び必要に応じて配合される他の材料を含むチクソトロピー性を有する光硬化性液状組成物を撹拌して、該光硬化性液状組成物の粘度を、無撹拌時よりも低下させる工程と、(B)工程(A)で得られた粘度の低下した光硬化性液状組成物を、粘度が低下した状態を保ったまま、光造形装置に導く工程と、(C)光造形装置内において、光照射前の未硬化の薄層の形成時まで粘度が低下した状態を保つようにして、光硬化性液状組成物に光照射して光造形を行ない、硬化した薄層が積層してなる光造形物を得る工程と、(D)工程(C)で得られた光造形物に対して高圧ガスを吹き付け、光造形物の表面に残存している未硬化の光硬化性液状組成物を除去する工程と、(E)工程(D)で得られた光造形物を焼成する工程を含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。
[工程(A)]
工程(A)は、(a)重合性モノマー、(b)光重合開始剤、(c)無機系微粒子、及び(d)必要に応じて配合される他の材料を含むチクソトロピー性を有する光硬化性液状組成物を撹拌して、該光硬化性液状組成物の粘度を、無撹拌時よりも低下させる工程である。
[(a)成分;重合性モノマー]
(a)重合性モノマー(以下、(a)成分)として用いられる化合物には、(a1)ラジカル重合性化合物及び(a2)カチオン重合性化合物がある。
(a1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、具体的には、(メタ)アクリル系モノマー等を含む。
エチレン性不飽和モノマーとしては、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下、「単官能性モノマー」ともいう。)と、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下、「多官能性モノマー」ともいう。)のいずれか一方または両方を用いることができる。
エチレン性不飽和モノマーとして好適に使用できる単官能性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及び下記一般式(1)〜(3)で表される化合物を例示することができる。
Figure 0004800074
(式中、R21は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R22は、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R23は、水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、R24は、炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示す。uは、0〜12、好ましくは1〜8の整数であり、vは、1〜8、好ましくは1〜4の整数である。)
これらの単官能性モノマーのうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
エチレン性不飽和モノマーとして好適に使用できる多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート等を例示することができる。
これらの多官能性モノマーのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキシド(EO)等の変性物が特に好ましい。
上記の単官能性モノマーの市販品としては、例えば、ACMO(興人製)、アロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、IBXA(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート160、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート320、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700、ビスコート3PA(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
本発明では、エチレン性不飽和モノマーの少なくとも一部が、1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマー(3官能以上の多官能性モノマー)であることが好ましい。該多官能性モノマーの好ましい例としては、1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。
3官能以上の多官能性モノマーの含有率は、エチレン性不飽和モノマー全体を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。該含有率が10質量%未満であると、本組成物の光硬化性が低下すると共に、光造形物の機械的強度が低下することがある。
単官能性モノマー及び多官能性モノマーは、各々を一種単独で又は二種以上組み合わせるか、あるいは単官能性モノマーの少なくとも一種と多官能性モノマーの少なくとも一種とを組み合わせて、エチレン性不飽和モノマーを構成することができる。
(a2)カチオン重合性化合物は、カチオン性光重合開始剤の存在下で光照射することにより重合反応や架橋反応を起こす有機化合物である。(a2)成分としては、エポキシ化合物、オキセタニル基含有化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等を挙げることができる。
(a2)成分として好適に使用できるエポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基含有化合物及びグリシジル基含有化合物が好ましい。
シクロヘキセンオキシド基含有化合物はカチオン重合性に優れている。また、グリシジル基含有化合物は、得られる重合体に柔軟性を付与し、重合系のモビリティを増加させ、硬化性を一層向上させることができる。
(a2)成分として好適に使用できるシクロヘキセンオキシド基含有化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を例示することができ、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートが好ましい。
シクロヘキセンオキシド基含有化合物の市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6199、UVR−6200、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
(a2)成分として好適に使用できるグリシジル基含有化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を例示することができ、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジル基含有化合物の市販品としては、エポライト1600(共栄社化学(株)製)、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
(a2)成分として好適に使用できるオキセタニル基含有化合物(以下「オキセタン化合物」という。)は、下記式(4)で表されるオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物である。
分子内に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004800074
Figure 0004800074
上記式(5)において、Zは酸素原子又は硫黄原子を示す。Rは水素原子;フッ素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6のフルオロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基;フリル基又はチエニル基である。
は、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素原子数2〜6のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントニル基、フェナントリル基等の炭素原子数6〜18のアリール基;ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、エトキシベンジル基等の置換又は非置換の炭素原子数7〜18のアラルキル基;フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等のアリーロキシアルキル等のその他の芳香環を有する基;エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素原子数2〜6のアルキルカルボニル基;エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基;エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素原子数2〜6のN−アルキルカルバモイル基等である。
分子内に2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(6)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0004800074
上記式(6)において、Rは、上記式(5)における定義に同じである。
は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状或いは分枝状の、炭素原子数1〜20のアルキレン基;ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状の、炭素原子数1〜120のポリ(アルキレンオキシ)基;プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状或いは分枝状の不飽和炭化水素基;カルボニル基;カルボニル基を含むアルキレン基;分子鎖の途中にカルボキシル基を含むアルキレン基;分子鎖の途中にカルバモイル基を含むアルキレン基である。また、Rは、下記式(7)、式(8)及び式(9)の何れかで示される基から選択される多価の基でもよい。
Figure 0004800074
上記式(7)において、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;低級アルキルカルボキシル基;カルボキシル基又はカルバモイル基であり、xは1〜4の整数である。
Figure 0004800074
上記式(8)において、Rは、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO−、−C(CF−又は−C(CH−である。
Figure 0004800074
上記式(9)において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。yは、0〜200の整数である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基、又は下記式(10)で示される基である。
Figure 0004800074
上記式(10)において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。zは、0〜100の整数である。
分子内に2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(11)、式(12)及び式(13)の何れかで示される化合物等が挙げられる。
Figure 0004800074
Figure 0004800074
Figure 0004800074
上記式(13)において、Rは、上記式(5)における定義と同じである。
分子内に3個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(14)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 0004800074
上記式(14)において、Rは、上記式(5)における定義と同じである。Rは、3〜10価の有機基を示し、例えば下記式(15)〜(17)の何れかで示される基等の炭素原子数1〜30の分枝状又は線状のアルキレン基、下記式(18)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、下記式(19)又は式(20)で示される線状又は分枝状ポリシロキサン含有基等が挙げられる。jは、Rの価数に等しい3〜10の整数を示す。
Figure 0004800074
上記式(15)において、R10は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基である。
Figure 0004800074
Figure 0004800074
Figure 0004800074
上記式(18)において、Lは同一又は異なる、1〜10の整数である。
Figure 0004800074
Figure 0004800074
分子内に3個以上のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(21)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 0004800074
下記式(22)で表される化合物は、分子内に1〜10個のオキセタン環を有し得る。
Figure 0004800074
上記式(22)において、Rは、上記式(5)における定義と同じであり、R11は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基(ここで、アルキル基は同一又は異なり、炭素原子数3〜12のアルキル基である。トリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基等を挙げることができる。)であり、rは1〜10の整数を示す。
さらに、オキセタン化合物としては、上述の例以外にも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量1,000〜5,000程度の高分子量を有する化合物も挙げられる。このような例として、下記式(23)、式(24)、式(25)の何れかで表される化合物が挙げられる。
Figure 0004800074
(ここで、pは20〜200の整数である。)
Figure 0004800074
(ここで、qは15〜100の整数である。)
Figure 0004800074
(ここで、sは20〜200の整数である。)
以上説明したオキセタン化合物の具体例は次の通りである。
〔分子内にオキセタン環を1個有する化合物〕
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等。
〔分子内にオキセタン環を2個以上有する化合物〕
3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等。
これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、(a2)成分として好適に使用できるオキセタン化合物は、分子内に有するオキセタン環の数が1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは2の化合物である。具体的には、下記式(26)で示される(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、下記式(27)で示される1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、下記式(28)で示される1,2−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エタン、下記式(29)で示されるトリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、下記式(30)で示される3−エチル−3−オキセタニルメトキシベンゼン及び上記式(22)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004800074
Figure 0004800074
Figure 0004800074
Figure 0004800074
Figure 0004800074
これらのオキセタン化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
光硬化性液状組成物中のエチレン性不飽和モノマーの含有率は、好ましくは1〜39質量%、より好ましくは5〜39質量%、特に好ましくは10〜39質量%である。該含有率が1質量%未満であると、無機系微粒子同士を結合させる成分が少なくなり、光造形物に欠損が生じるおそれがある。該含有率が39質量%を超えると、無機系微粒子の含有率が小さくなるため、光硬化性液状組成物のチクソトロピー性(高速撹拌によって粘度が低下する性質)が得られ難くなったり、あるいは、光造形物の機械的強度の低下や、光造形物の脱脂時または焼成時のひび割れの発生等を招くおそれがある。
[(b)成分;光重合開始剤]
(b)光重合開始剤(以下、(b)成分)は、(a)成分として(a1)ラジカル重合性化合物を用いる場合には、(b1)ラジカル性光重合開始剤であり、(a2)カチオン重合性化合物を用いる場合には、(b2)カチオン性光重合開始剤である。
(b1)ラジカル性光重合開始剤は、光等のエネルギー線を受けることにより分解し、発生するラジカルによって、ラジカル重合反応を開始させる化合物である。ここで、光等のエネルギー線とは可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、γ線等を意味する。(b1)成分の具体例としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、及びBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が特に好ましい。これらは、一種単独又は二種以上を組み合わせて、(b1)成分を構成することができる。
(b2)カチオン性光重合開始剤は、光等のエネルギー線を受けることによって、前記(a2)成分のカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。
(b2)成分の化合物の例として、下記式(31)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光を受けることによりルイス酸を放出する化合物(光酸発生剤)である。
[R01 02 03 04 W]m+[MXn+mm− (31)
〔式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O,I、Br、Cl又は−N≡Nであり、R01、R02、R03及びR04は同一又は異なる有機基であり、a、b、c及びdは各々0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mはハロゲン化物錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属又はメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。〕
上記式(31)に示されるオニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
上記式(31)中におけるアニオン[MXn+m]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF )、ヘキサフルオロアルセネート(AsF )、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl )等が挙げられる。
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO )、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO )、フルオロスルフォン酸イオン(FSO )、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
このようなオニウム塩のうち、(b2)成分として特に有効な化合物は芳香族オニウム塩である。例えば特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報等に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩等が好ましい。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げることができる。
(b2)成分として好適に使用できる化合物の市販品としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)等を挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−171、SP−172、CD−1012、MPI−103は、これらを含有してなる樹脂組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。
上記の光酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて(b2)成分を構成することができる。
(b)成分の含有割合は、(b1)成分、(b2)成分のいずれを用いるかを問わず、光硬化性液状組成物全体に対して、通常、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜8重量%である。(b)成分の含有割合が過小である場合には、本組成物のラジカル重合反応速度(硬化速度)が低くなるため、造形に時間を要したり、解像度が低下したりする。一方、(b)成分の含有割合が過大である場合には、過剰量の本成分が、本組成物の硬化特性をかえって低下させたり、立体形状物の強度を低下させたりする。また、(a)成分として、(a1)成分と(a2)成分を併用する場合には、(b)成分として、(b1)成分と(b2)成分を併用することができる。
[(c)成分;無機系微粒子]
無機系微粒子の材質は、照射波長の光を実質的に吸収しないものであれば特に制限されない。
無機系微粒子の材質の例としては、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、フェライト、チタン酸バリウム、アパタイト、シリカ等の酸化物や、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素等の炭化物や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、サイアロン(SiAlON)等の窒化物や、これらの混合物等が挙げられる。中でも、アルミナ、ジルコニア、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、又はこれらの混合物が好適に用いられる。
無機系微粒子の数平均粒径は、動的光散乱法による測定値として、好ましくは5〜300nm、より好ましくは5〜250nm、特に好ましくは5〜200nmである。該数平均粒径が5〜300nmの範囲内であることにより、無機系微粒子を所定量配合することによって、液状組成物に良好なチクソトロピー性を付与することができる。該数平均粒径が5nm未満では、粒子の二次凝集が激しいために、粒子を分散することが困難になる。該数平均粒径が300nmを超えると、液状組成物に十分なチクソトロピー性を付与することが困難になる。
無機系微粒子の含有率は、組成物全量(100質量%)中、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、特に好ましくは60〜85質量%である。該含有率が60質量%未満では、液状組成物に十分なチクソトロピー性を付与することが困難になる。該含有率が95質量%を超えると、液状組成物中に無機系微粒子を均一に混合させることが困難になるばかりか、重合性モノマーの含有率が小さくなる等のため、光造形物の諸物性が低下することがある。
[(d)成分;他の材料]
必要に応じて配合される他の材料の例としては、光吸収剤、ポリマーまたはオリゴマー、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料・染料(ただし、光吸収剤と重複するものを除く。)、光増感剤(重合促進剤)、反応性希釈剤等が挙げられる。
ポリマーまたはオリゴマーの例としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等が挙げられる。
重合禁止剤の例としては、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
光増感剤(重合促進剤)の例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系化合物、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
反応性希釈剤の例としては、ビニルエーテル類、ビニルスルフィド類、ビニルウレタン類、ウレタンアクリレート類、ビニルウレア類等が挙げられる。
[光硬化性液状組成物の調製]
光硬化性液状組成物は、重合性モノマー、光重合開始剤、無機系微粒子、及び必要に応じて配合される他の材料を、均一に混合することによって製造することができる。
このようにして得られる光硬化性液状組成物の粘度は、外力によって流動する範囲であれば特に限定しないが、外力が加わらない状態では流動せず、外力が加わることで流動するチクソトロピックな特性を有することが好ましい。
光硬化性液状組成物の撹拌は、例えば、図1に示すように、タンク1内の光硬化性液状組成物1に筒状の管路3を差し込んだ状態で、モーター4によってタンク1を所定の回転速度で回転させることにより行なわれる。ここで、タンク1内の光硬化性液状組成物の量は、例えば、0.1〜30リットルである。タンク1の回転速度は、好ましくは5〜200rpm、より好ましくは70〜150rpmである。管路3は、光硬化性液状組成物1を吸引して光造形装置6に導くとともに、光硬化性液状組成物1の撹拌棒として作用するものであり、タンク1の中心の軸線よりも適宜の距離(例えば、タンク1の円形の水平断面の半径の1/3以上)だけ隔てた位置にて鉛直方向に差し込まれていることが望ましい。
なお、撹拌手段としては、図1に示すもの以外に、例えば、光硬化性液状組成物を収容したタンク内に撹拌翼を設けて、光硬化性液状組成物を撹拌するとともに、撹拌翼の近傍に、光硬化性液状組成物を吸引するための管路の端部を位置させてなるものが挙げられる。
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得られた粘度の低下した光硬化性液状組成物を、粘度が低下した状態を保ったまま、光造形装置に導く工程である。
光硬化性液状組成物を光造形装置に導くための手段としては、図1に示すタンク1を用いる場合、光硬化性液状組成物2をタンク1から光造形装置6に導くための管路3と、管路3の途中に配設される輸送ポンプ5とを含むものが挙げられる。
[工程(C)]
工程(C)は、前記工程(B)により光造形装置内に導かれた未硬化の光硬化性液状組成物をリコータ等により薄膜に成形した後、光照射して光造形を行い、硬化した薄膜層が積層してなる光造形物を得る工程である。
光造形物は、光硬化性液状組成物の薄層を光照射して得られる硬化薄層の積層体からなる。
この積層体の各層は、光硬化性液状組成物の液面に光を照射することにより得られる。なお、液面は、リコーター等で均すことができる。このとき、光を選択的に照射すると、所望のパターンの断面を有する硬化薄層(断面硬化層)を得ることができる。
光硬化性液状組成物の薄層に光を照射して、該組成物の硬化薄層(断面硬化層)を形成し、この硬化薄層(断面硬化層)の上に、液状組成物を再度供給し、光を照射して、液状組成物の硬化薄層(断面硬化層)をさらに形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化薄層(断面硬化層)を積層し一体化してなる光造形物を得ることができる。
光照射の対象となる未硬化の薄層の厚さは、好ましくは5〜400μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは5〜100μmである。該厚さが5μm未満では、未硬化の薄層を形成することが困難なことがある。該厚さが400μmを超えると、積層間の密着力が弱くなるため光造形物の諸物性が低下することがある。
光硬化性液状組成物に光を選択的に照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、(a)レーザー光、又はレンズ、ミラー等を用いて得られた収束光等を走査させながら組成物に照射する手段、(b)所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を組成物に照射する手段、(c)多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して、光を組成物に照射する手段、(d)一定の領域毎に一括露光を繰り返し実行する手段、等を採用することができる。
また、上記(b)のマスクを用いる手段においては、マスクとして、液晶表示装置と同様の原理により、所定のパターンに従って、光透過領域と光不透過領域とからなるマスク像を電気光学的に形成するものを用いることもできる。
目的とする光造形物が、微細な部分を有するもの、または高い寸法精度が要求されるものである場合には、光硬化性液状組成物に選択的に光を照射する手段として、スポット径の小さいレーザー光を走査する手段を採用することが好ましい。
なお、容器内に液状組成物が収容されている場合、光の照射面(例えば、収束光の走査平面)は、組成物の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。液状組成物の液面又は器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接又は器壁を介して光を照射することができる。
光造形物は、上述したように、光積層造形法等の光学的立体造形法により製造することができる。光学的立体造形法においては、通常、光硬化性液状組成物の特定部分を硬化させた後、光の照射位置(照射面)を、既硬化部分から未硬化部分に連続的に又は段階的に移動させることにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とする。ここで、照射位置の移動は、種々の方法によって行なうことができ、例えば、光源、組成物の収容容器、組成物の既硬化部分の何れかを移動させたり、収容容器に組成物を追加供給したりする等の方法が挙げられる。
光学的立体造形装置の代表的な例を、図2〜図3を用いて説明する。図2は、光積層造形法を用いた装置(光積層造形装置)の一例を示す図であり、図3は、マイクロ光造形法を用いた装置(マイクロ光造形装置)の一例を示す図である。
[光積層造形装置]
光積層造形法により造形される光造形物の大きさは、通常、数mmから数m、典型的には数cmから数十cmのスケールである。
図2中、(a)に示すように、光硬化性液状組成物11を収容した容器12内に、昇降自在に設けられた支持ステージ13を、組成物11の液面14から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ13上に、組成物11を供給して、組成物11の薄層を形成する。次いで、この薄層に対して、マスク15を介して選択的に光18を照射し、組成物11の硬化薄層16を形成する。
次に、(b)に示すように、支持ステージ13を微小量降下(沈降)させて、この硬化物16の上に、組成物11を供給して、組成物の薄層を再度形成する。次いで、この薄層に対して、マスク15を介して選択的に光18を照射し、硬化薄層16の上に、これと連続して一体的に積層するように新しい硬化薄層17をさらに形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら又は変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化薄層16、17・・・が一体的に積層させてなる光造形物が造形される。
[マイクロ光造形装置]
マイクロ光造形装置により造形される光造形物の大きさは、通常、数μmから数cm、典型的には、数十μmから数mmのスケールである。
マイクロ光造形法において、光の照射は、光線を走査して硬化させる必要がある部分に対してのみ行なうのではなく、一定の領域(投影領域)毎に一括露光を繰り返すことにより行なわれる。このような一括露光は、例えば、ディジタルミラーデバイス(DMD)を用いて行なわれる。
図3中、光硬化造形装置(以下、光造形装置ともいう。)100は、光源21、ディジタルミラーデバイス(DMD)22、レンズ23、造形テーブル24、ディスペンサ25、リコータ26、制御部27、記憶部28を備えている。
光源21は、レーザ光線を発生させるための手段である。光源21には、例えば、405nmのレーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)や紫外線(UV)ランプが用いられる。
ディジタルミラーデバイス(DMD)22は、テキサス・インスツルメンツ社によって開発されたデバイスであり、CMOS半導体上に独立して動くマイクロミラーが数十万〜数百万個、例えば、48万〜131万個敷き詰められている。かかるマイクロミラーは、静電界作用によって対角線を軸に約±10度、例えば、±12度程度傾けることが可能である。マイクロミラーは、各マイクロミラーのピッチの1辺の長さが約10μm、例えば、13.68μmの四角形の形状を有している。隣接するマイクロミラーの間隔は、例えば1μmである。DMD22の全体は、40.8×31.8mmの四角形状(このうち、ミラー部は、14.0×10.5mmの四角形状を有する。)を有し、1辺の長さが13.68μmのマイクロミラー786,432個により構成されている。
DMD22は、光源21から出射されたレーザ光線を個々のマイクロミラーによって反射させ、制御部27によって所定の角度に制御されたマイクロミラーによって反射されたレーザ光のみを、集光レンズ23を介して造形テーブル24上の液状組成物層29に照射する。
レンズ23は、DMD22によって反射されたレーザ光線を液状組成物層29上に導き、投影領域を形成する。レンズ23は、凸レンズを用いた集光レンズであってもよいし、凹レンズを用いてもよい。凹レンズを用いると、DMDの実サイズよりも大きな投影領域を得ることができる。レンズ23は、集光レンズであって、入射光を約15倍縮小し、液状組成物層29上に集光している。
造形テーブル24は、液状組成物層29を硬化させてなる硬化層を順次堆積させて載置するための平板状の台である。造形テーブル24は、図示しない駆動機構、すなわち移動機構によって、水平移動及び垂直移動が可能である。この駆動機構により、所望の範囲に亘って光造形を行なうことができる。
ディスペンサ25は、光硬化性液状組成物30を収容し、予め定められた量の液状組成物30を造形テーブル上の所定位置に供給するための手段である。
リコータ26は、液状組成物30を均一に塗布して、液状組成物層29を形成させるための手段であり、例えば、ブレード機構と移動機構を備えている。
制御部27は、露光データを含む制御データに応じて、光源21、DMD22、造形テーブル24、ディスペンサ25及びリコータ26を制御する。制御部27は、典型的には、コンピュータに所定のプログラムをインストールすることによって構成することができる。典型的なコンピュータの構成は、中央処理装置(CPU)とメモリとを含んでいる。CPUとメモリは、バスを介して、補助記憶装置としてのハードディスク装置などの外部記憶装置に接続されている。この外部記憶装置が、制御部27の記憶部28として機能する。
フレキシブルディスク装置、ハードディスク装置、CD−ROMドライブ等の記憶媒体駆動装置は、各種コントローラを介してバスに接続されている。フレキシブルディスク装置等の記憶媒体駆動装置には、フレキシブルディスク等の可搬型記憶媒体が挿入される。
記憶媒体は、オペレーティングシステムと協働してCPUなどに命令を与えて、本システムを稼動するための所定のコンピュータプログラムを記憶することができる。
記憶部28には、造形しようとする立体モデルを複数の層にスライスして得られる断面群の露光データを含む制御データが格納されている。
制御部27は、記憶部28に格納された露光データに基づいて、主としてDMD22における各マイクロミラーの角度制御、造形テーブル24の移動(即ち、立体モデルに対するレーザ光の照射範囲の位置)を制御し、立体モデルの造形を実行する。
コンピュータプログラムは、メモリにロードされることによって実行される。コンピュータプログラムは圧縮し、又、複数に分割して記憶媒体に記憶することができる。さらに、ユーザ・インターフェース・ハードウエアを備えることができる。ユーザ・インターフェース・ハードウェアとしては、例えば、マウスなどの入力をするためのポインティング・デバイス、キーボード、あるいは視覚データをユーザに提示するためのディスプレイなどがある。
液状組成物30としては、上述のチクソトロピー性を有する光硬化性の液状樹脂組成物を使用することができる。
次に、光造形装置100の光造形動作について説明する。
まず、タンク1から液状組成物30をポンプ5を用いてディスペンサ25に導く。ディスペンサ25は、収容された液状組成物30を所定量だけ造形テーブル24上に供給する。リコータ26は、液状組成物30を引き伸ばすようにして掃引し、硬化させる一層分の液状組成物層29を形成する。
光源21から出射したレーザ光線は、DMD22に入射する。DMD22は、記憶部28に格納された露光データに応じて制御部27により制御され、レーザ光線を液状組成物層29に照射する部分である一部のマイクロミラーの角度を調整する。これにより、一部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線が、集光レンズ23を介して液状組成物層29に照射される一方、残部のマイクロミラーで反射されたレーザ光線は、液状組成物層29に照射されないことになる。
液状組成物層29へのレーザ光線の照射は、例えば0.4秒間行なわれる。このとき、液状組成物層29への投影領域は、例えば、1.3mm×1.8mm程度であり、0.6mm×0.9mm程度まで縮小することもできる。投影領域の面積は、100mm以下であることが望ましい。
レンズ23に、凹レンズを用いることにより、投影領域を6cm×9cm程度まで拡大することもできる。投影領域をこのサイズを超えて拡大すると、投影領域に照射されるレーザー光線のエネルギー密度が低くなるため、液状組成物層29の硬化が不十分となることがある。
レーザ光線の投影領域のサイズよりも大きい立体サイズを形成する場合には、例えば造形テーブル24を移動機構によって水平移動させることにより、レーザ光線の照射位置を移動させて、全造形領域を照射する必要がある。投影領域毎に1ショットずつレーザ光線の照射を実行していく。各投影領域に対するレーザ光線の照射の制御については、後に詳述する。
このようにして、投影領域を移動させて、各投影領域を単位としてレーザ光線の照射、即ち露光を実行することによって、液状組成物層29が硬化し、第1層目の硬化層が形成される。
続いて、同様の工程で、所望形状の立体モデルの2層目を形成する。具体的には、第1層目として形成された硬化層の外側に、ディスペンサ25より供給された液状組成物30を、リコータ26によって立体モデルを越えて引き伸ばされるように均一な厚さに塗布する。そして、レーザ光線を照射することにより、第2層目の硬化層を第1層目の硬化層の上に形成する。
以後、同様にして、第3層目以降の硬化樹脂層を順次堆積させる。そして、最終層の堆積が終了すると、造形テーブル24上に形成された光造形物を取り出す。
[工程(D)]
工程(D)は、工程(C)で得られた光造形物に対して高圧ガスを吹き付け、光造形物の表面に残存している未硬化の光硬化性液状組成物を除去する工程である。
高圧ガスの噴射の圧力は、好ましくは0.1〜0.5MPaである。
本発明において、光造形物の表面に残存する未反応の光硬化性液状組成物は、高圧ガスの圧力によって流動して粘度が低下するため、短時間で容易に除去することができる。
[工程(E)]
工程(E)は、工程(D)で得られた光造形物を焼成する工程である。
焼成温度及び焼成時間は、光造形物を構成する無機系微粒子の材質の種類によって定めればよい。ここで用いる焼成方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、無機系微粒子がアルミナを主体とするものである場合、焼成温度は、好ましくは1300〜1700℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜3時間である。
焼成によって、目的とするセラミック成形体が得られる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に記載の態様に限定されるものではない。なお、以下の「部」は質量部を示す。
[製造例1;FM0411−THの合成]
撹拌機を備えた反応容器に2,4−トリレンジイソシアネート10.4部、ジブチルスズジラウレート0.08部および2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02部を仕込み、15℃以下に冷却した。撹拌しながら温度を30℃以下に保ちつつ、新中村化学社製のNKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%からなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)37.5部を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。
次に、水酸基当量1,000のα−[3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル]−ω−トリメチルシリルオキシポリジメチルシロキサン(チッソ社製のサイラプレーンFM−0411)52.1部を添加し、20〜55℃で撹拌した。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。
得られた生成物の数平均分子量(東ソー社製のAS−8020を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算数平均分子量を測定した。以下の「数平均分子量」も同じである。)を測定したところ、数平均分子量が1,600である両末端反応性ポリジメチルシロキサン化合物の他に、生成物全量の20質量%の含有率でトリレンジイソシアネート1モルとヒドロキシエチルアクリレート2モルの結合物が存在することが認められた。この手法により得られた液状の末端反応性ポリジメチルシロキサン化合物をFM0411−THとする。
[実施例1]
[光硬化性液状組成物の調製]
撹拌装置を備えた容器に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート24.7質量部(組成物100質量部中の配合量;以下、同じ)と、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート6.2質量部と、「CGI403」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.9質量部と、2,4−ジエチルチオキサントン0.6質量部と、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル0.2質量部と、「Yellow6G Gran」0.6質量部と、「SH28PA」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.02質量部と、「FM0411−TH」(上述の製造例1を参照)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1質量部と、アリルエーテルコポリマー(マリアリムAAB−0851;日本油脂社製)2.0質量部を添加し、60℃で1時間撹拌した後に、アルミナ粒子(TM−DAR:大明化学工業社製;数平均粒径:170nm)64.7質量部を添加して、特殊機化工業社製のT.K.HOMODISPERを用い、均一に分散することによって、光硬化性液状組成物を調製した。
なお、「CGI403」は、化合物名がビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、405nmのモル吸光係数が575L/mol・cmである。
「SH28PA」の化合物名は、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体である。
[光造形物の製造]
得られた光硬化性液状組成物を、図1に示すタンク1(容量:10リットル)内に投入した後、モーター4によって100rpmの回転速度でタンク1を回転させ、光硬化性液状組成物2を高速撹拌した。撹拌開始から30分を経過した後、輸送ポンプ5によって、タンク1内の液状組成物2を管路3内に吸い上げ、図3に示す光造形装置6に導いた。この光造形装置6を用いて、厚さ10μmの薄層を積層してなる光造形物を製造した。
次いで、高圧ガス(0.2MPaの噴射圧力を有する窒素ガス)を用いて、光造形物の表面の未硬化の光硬化性液状組成物を除去した。その後、光造形物を1500℃の温度で2時間焼成し、セラミックス成形体を得た。
なお、脱脂後及び焼成後の光造形物の線収縮率は各々、23%、13%であった。セラミックス成形体の相対密度は97%以上であった。
[比較例1]
タンク1内で光硬化性液状組成物を撹拌しないこと以外は実施例1と同様にして実験したところ、タンク1内の光硬化性液状組成物が流動化しない為、光造形装置6へポンプ5で安定して供給することができず、光造形物を製造することができなかった。
本発明の方法によれば、CADで設計した複雑な形状のセラミックス成形体を、必要に応じてコンピュータで適宜設計変更しながら、鋳型を用いずに高い精度で短時間に製造することができる。本発明の方法は、例えば、人工歯根、人工骨、マイクロ流路、マイクロタービン、フォトニッククリスタル、フォトニックフラクタルの他、合金の精密な鋳造に用いるセラミックスからなる鋳型等の作製に適用することができる。
光硬化性液状組成物の粘度を低下させる装置の一例を概念的に示す図である。 光積層造形装置の一例を概念的に示す図である。 マイクロ光造形装置の一例を概念的に示す図である。
符号の説明
1 タンク
2 光硬化性液状組成物
3 管路(円筒状のパイプ)
4 モーター(タンクの回転駆動手段)
5 輸送ポンプ
6 光造形装置
11 光硬化性液状組成物
12 容器
13 支持ステージ
14 光硬化性液状組成物の液面
15 マスク
16,17 硬化薄層
18 光
21 光源
22 ディジタルミラーデバイス(DMD)
23 集光レンズ
24 造形テーブル
25 ディスペンサ
26 リコータ
27 制御部
28 記憶部
29 液状組成物層
30 光硬化性液状組成物
100 光造形装置

Claims (4)

  1. (A)重合性モノマー、光重合開始剤、及び無機系微粒子を含むチクソトロピー性を有する光硬化性液状組成物を撹拌して、該光硬化性液状組成物の粘度を、無撹拌時よりも低下させる工程と、
    (B)工程(A)で得られた粘度の低下した光硬化性液状組成物を、粘度が低下した状態を保ったまま、光造形装置に導く工程と、
    (C)該光造形装置内において、光照射前の未硬化の薄層の形成時まで粘度が低下した状態を保つようにして、上記光硬化性液状組成物に光照射して光造形を行ない、硬化した薄層が積層してなる光造形物を得る工程、
    含み、かつ、
    上記無機系微粒子の粒径が、動的光散乱法による数平均粒径として5〜300nmであり、かつ、上記光硬化性液状組成物中の上記無機系微粒子の含有率が、60〜95質量%であることを特徴とする光造形物の製造方法。
  2. 上記無機系微粒子が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化チタン、及び窒化ケイ素からなる群より選択される1種以上を含む請求項に記載の光造形物の製造方法。
  3. 光造形物に対して高圧ガスを吹き付け、光造形物の表面に残存している未硬化の光硬化性液状組成物を除去する工程を含む請求項1又は2に記載の光造形物の製造方法。
  4. 得られた光造形物を焼成する工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の光造形物の製造方法。
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