JP4798246B2 - 4値psk光信号発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は4値PSK光信号発生装置に関し、例えば、長距離大容量光ファイバ通信等に利用される4値PSK方式による光信号を、制御光によって被制御光を光信号化することで発生する装置に適用し得る。
インターネットの普及などに伴い、光ファイバ通信の通信容量の大容量化並びに長距離化への要求は近年ますます高まってきている。近年の光ファイバ通信の通信容量の大容量化は、送受信可能な波長チャンネル数を増やすこと(波長多重通信、WDM:Wave length Division Multiplexing)、及び、各波長チャンネル当たりの通信速度を高速化することの両面から進められてきた。
一方、光ファイバ通信の更なる大容量化・長距離化の一手段として、近年、多値変調方式が注目を集めている。この多値変調方式は、従来、移動体通信方式などで用いられてきた方式であるが、近年、この技術を光ファイバ通信方式に応用しようとの試みが各所でなされている。
多値変調方式の代表的な方式は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)フォーマットと呼ばれる方式である。QPSK方式は、一つのタイムスロットに対して、位相が、0を基準として、π/2ラジアン、πラジアン、3/2πラジアンだけ変移した信号を割り当てる通信方式であり、一度に2ビット(4値)の信号を送ることが可能な通信方式である。従来、実用化若しくは実用化が検討されてきた主たる光通信方式の一つは、一つのタイムスロットに対して、信号強度が弱い「0」信号、若しくは、信号強度が強い「1」信号を割り当てる、いわゆるASK(Amplitude Shift Keying)方式若しくはOOK(On−Off Keying)方式であり、実用化若しくは実用化が検討されてきた主たる光通信方式の他の一つは、位相が0若しくはπラジアンの光信号を割り当てるBinary PSK方式(以下、BPSK方式と呼ぶ)であり、いずれも、一つのタイムスロットに対して、2値のデジタル変調値を割り当てる通信方式であった。
QPSK方式を光ファイバ通信に応用した場合、以下のようなメリットがある。
すなわち、QPSK方式を、従来のOOK方式やBPSK方式と比較した場合、その占有する周波数帯域は同一ながら、QPSK方式は2倍の量のデータを送ることができる。すなわち、通信容量を大容量化でき、周波数利用効率を向上できるというメリットがある。また、このことは逆に言えば、同じデータ容量のOOK方式やBPSK方式と比較して、QPSK方式は半分の占有周波数帯域しか有さないため、WDM方式との併用を考えた場合、より波長チャンネル間隔を狭めることができ、その結果、通信容量を大容量化でき、周波数利用効率を向上できるというメリットをさらに享受することができる。さらにまた、占有する周波数帯域が狭いということは、信号伝送路である光ファイバの有する群速度分散による波形歪みの影響を受け難いことを意味し、すなわち、長距離化の点でもメリットがある。
以上のようなQPSK光信号を発生するQPSK光信号発生装置若しくは発生回路として従来検討が進められてきたのは、主として、非特許文献1に示すような、電気変調信号を光変調信号に変換して光信号を発生させる、いわゆるE/O型光変調器をベースとした装置であった。
非特許文献1においては、LiNbO結晶におけるポッケルス効果を利用した、マッハツェンダ干渉計型LiNbO変調器を用いたQPSK光変調器について述べられている。非特許文献1の記載技術では、MZA及びMZBで示される2台のマッハツェンダ干渉計型LiNbO変調器を用いて、それぞれ40GbpsのBPSK信号を発生し、その後、MZCで示される光カプラを用いてこれらのBPSK信号を合波することで、80GbpsのQPSK信号を発生させている。
非特許文献1などに示されるE/O型光変調器をベースとしたQPSK光信号発生装置において、その発生し得るQPSK信号のデータビットレートは、E/O型光変調器の動作速度によって制限される。その高速化のためには、電気変調信号を発生する電子デバイス、並びに、E/O型光変調器自体の電気−光変換の高速化が必要である。その動作速度は、現状の市販品の技術レベルとしては50Gbps程度のビットレートが現状の限界である。すなわち、QPSK信号のデータレートとしては100Gbps程度が限界である。
電子デバイス並びにE/O型光変調器の動作速度限界を超えて、さらに高速のQPSK信号を発生するには、制御光信号となる光変調信号を用いて被制御光信号である信号光を変調する、全光学信号制御技術をベースとした、全光型光変調器を利用することが望ましい。
光ファイバにおいて発現する光カー効果を利用する方法は、その好ましい一例である。光ファイバにおいて発現する光カー効果は、光ファイバを強度の強い光が伝播することにより光ファイバの屈折率が変化する現象であり、その応答速度は数フェムト秒(fs)である。
上記で述べたような、光ファイバ中での光カー効果を利用して、超高速光スイッチを作成した例が、例えば、非特許文献2に開示の方法などで実現されている。非特許文献2の記載技術において、光カー効果を発現させる光ファイバとして偏波保存単一モード光ファイバ(以下、「偏波面保存光ファイバ」(あるいは単に「光ファイバ」)と呼ぶ)が利用されている。偏波面保存光ファイバは、このファイバの光の伝播方向(以後「光ファイバの光軸方向」ということもある)に対して垂直な面内に設定された遅相軸あるいはスロー(slow)軸と呼ばれる光学軸の方向と、slow軸と直交する進相軸あるいはファスト(fast)軸と呼ばれる光学軸の方向とでは、導波される光に対する等価屈折率が異なる構造のものである。
そして、非特許文献2に開示されている光スイッチに利用されている光ファイバは、2本の偏波保存単一モード光ファイバの光学軸を直交させて融着された面を有し、偏波面保存型の単一モード光ファイバの有する複屈折性を相殺できる構造を有している。この光スイッチには、偏波面保存光ファイバの光学軸と平行な偏波面を有する直線偏波の制御光と、偏波面保存光ファイバの光学軸から45°だけ傾いた偏波面を有する直線偏波の信号光(被制御光)が入力される。なお、この明細書において、「偏波」を「偏光」と同意語として用いている。
この光スイッチに信号光を構成する光パルスのみが入力された場合には、信号光の光パルスは、この光スイッチへの入力時と同一の直線偏波状態で出力される。一方、信号光と共に制御光の光パルスが、信号光の光パルスと同期して入力された場合には、信号光の光パルスの偏波成分のうち制御光の光パルスの偏波方向と平行な偏波成分に対して、制御光の光パルスによって光カー効果が誘起される。すなわち、光カー効果によって、信号光の光パルスと制御光の光パルスとの間で発現する相互位相変調効果によって、信号光の光パルスに位相シフトが生じる。
この位相シフト量φがπに等しいとき、信号光の光パルスの偏波方向が、この光スイッチへの入力時に対して90°だけ回転する。すなわち、信号光の光パルスの偏波方向が、光ファイバの光学軸に対して−45°の方向になる。光スイッチの出力側に検光子を配置することで、制御光により信号光の光パルスを通過させたり、遮断したりすることができる。すなわち、検光子の光学軸の方向を、信号光の光パルスの偏波方向がこの光スイッチへの入力時に対して90°だけ回転している場合には透過し、入力時と同一の偏波方向である場合には遮断する向きに設定して配置すれば、制御光によって偏波面が回転された光パルスのみがこの光スイッチを透過できるので、制御光によって、信号光の光パルスをスイッチできる。
非特許文献2に開示の技術で用いられているように、光ファイバ中の光カー効果に基づく相互位相変調効果を用いれば、OOK若しくはASK信号とした制御光の信号パターンを、被制御光である信号光に光位相変調パターンという形で転化できる。すなわち、光ファイバの光カー効果を利用することで、数百ギガビット毎秒(Gbit/s)以上のビットレートで動作する全光型BPSK変調器を実現できることが、上述した従来技術から容易に類推できる。
上記の方式で発生されたBPSK信号を、非特許文献1におけるMZCのような光カプラで合波することで、QPSK光信号を発生することは原理的には可能であることが容易に類推できる。
T.Kawanishi et al.,"80Gb/s DQPSK modulator",Technical Digest of OFC 2007,paper OWH5,2007 T.Moriokaet al.,"Ultrafast optical multi/demultiplexer utilising optical Kerr effect in polarisation−maintaining single−mode fibres",Electronic Letters,Vol.23,No.9,pp.453−454,1987
しかしながら、二つの光BPSK信号を合波してQPSK光信号を発生する際には、光BPSK信号間の光位相差を精密に制御する必要がある。例えば、二つの光BPSK信号がそれぞれ「0」、「π」と位相変調された信号である場合、その間に精密にπ/2の光位相差を与えて合波しなければ、理想的なQPSK信号とはならない。
個々の光BPSK信号の光位相は、非特許文献1の場合には電気変調信号によって与えた光位相に加えて、若しくは、上述した光ファイバの光カー効果に基づく方式の場合には光変調信号によって与えられた光位相に加えて、その光信号が通過してきた光経路の光路長によって決まる光位相シフトによって決定される。
一方、非特許文献2に示すような光ファイバを用いた全光学的な位相変調の場合、用いる光ファイバのファイバ長は、実用的な制御光強度でもって十分な光変調効果を得るための相互作用長を確保するために、数十mから数kmという長さが必要となる。すなわち、光波長の数十万倍以上の長さとなる。そのような長尺な光ファイバを伝播してくる光信号の光位相を正確に制御するのは非常に困難である。また、実現するには、精密で、かつ十分な応答速度を有する高価な制御機能が必要となる。さらに加えて、環境温度の変化などにより光ファイバの屈折率が変化すると、光位相も変化してしまうため、その補償までを含めた、複雑で高価な制御機能が必要となる。
以上のような状況を鑑みたとき、非特許文献2に開示の技術で発生させた光BPSK信号を二つ用意して、これを非特許文献1におけるMZCのような光カプラで合波することで、QPSK光信号を発生する方式は、現実的な実用レベルで考えた場合、非常に実現が困難である。若しくは、実現のためには高精度で、従って高価かつ複雑な光位相制御回路が必要となる。
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、複雑で高精度な制御技術を不要としながら、動作安定に、超高速4値PSK光信号を発生可能な、全光型の4値PSK光信号発生装置を提供することを目的とする。
本発明の4値PSK光信号発生装置は、(1)偏波面保存の閉ループ光路を形成させている閉ループ光路部と、(2)ピーク強度の揃った光パルスが等時間間隔に並んだ光パルス列である直線偏波の第1波長を有する信号光を2つの直線偏波の第1成分及び第2成分に分ける信号光成分分割部と、(3)信号の「0」及び「1」の並びに応じた第1の強度パターンを有する強度変調光であって、第2波長を有する直線偏波の第1の制御光信号と、信号の「0」及び「1」の並びに応じた第2の強度パターンを有する強度変調光であって、上記第2波長若しくはその近傍波長を有し、偏波面が上記第1の制御光信号の偏波面と直交している第2の制御光信号とを出力する制御光発生部と、(4)上記閉ループ光路への上記信号光の入出力を行うものであって、上記第1成分及び第2成分を、巡回方向が逆になるように上記閉ループ光路へ入力する閉ループ信号光入出力部と、(5)上記閉ループ光路への上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号の入出力を行うものであって、上記第1の制御光信号の巡回方向が上記第1成分と同じになると共に、上記第2の制御光信号の巡回方向が上記第2成分と同じになるように、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号を上記閉ループ光路へ入力する閉ループ制御光入出力部と、(6)同一方向に進行する上記第1の制御光信号及び逆方向に進行する上記第2の制御光信号に応じ、上記第1成分の光位相を変化させる、上記閉ループ光路に介在されている第1成分光位相シフト部と、(7)同一方向に進行する上記第2の制御光信号及び逆方向に進行する上記第1の制御光信号に応じ、上記第2成分の光位相を変化させる、上記閉ループ光路に介在されている第2成分光位相シフト部と、(8)上記閉ループ光路から出力された上記第1成分及び上記第2成分を、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号から分離する信号光抽出部と、(9)上記閉ループ信号光入出力部へ向かう信号光と、上記閉ループ信号光入出力部から出力された戻り光の上記第1成分及び第2成分との光路を分離する正逆光路分離部と、(10)上記信号光の第1成分及び第2成分が進行するいずれかの箇所に設けられ、上記第1成分及び第2成分に相対的な光位相差を付与する光位相差付与部とを備え、(11)上記閉ループ光路以外の光路にも偏波面保存光路を適用すると共に、上記正逆光路分離部によって光路分離がなされた光信号を、光多値変調信号として出力し、(12)上記閉ループ信号光入出力部は、偏光ビームスプリッタ又は偏光プリズムでなる、上記信号光成分分割部及び上記閉ループ制御光入出力部の機能を兼ねたものであり、上記閉ループ光路部は、上記第1成分及び上記第2成分の偏波面を90°だけ回転させるループ内偏波面変換部を含むことを特徴とする。
本発明によれば、複雑で高精度な制御技術を不要としながら、動作安定に、超高速4値PSK光信号を発生可能な、全光型の4値PSK光信号発生装置を提供することができる。
実施形態のQPSK光信号発生装置の構成を示す配置図である。 実施形態における光位相バイアス回路の構成例を示す説明図である。 偏波面保存光ファイバであるパンダ型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的構造を示す断面図である。 実施形態における第1偏波面変換部の構成例を示す説明図である。 実施形態における第2偏波面変換部の構成例を示す説明図である。 実施形態における第1偏波面変換部での信号光の偏波状態の説明図である。 実施形態における第1偏波面保存光ファイバの右端の端面図と、第1偏波分離合成モジュールの第3入出力端に出力される偏波方向、ならびに、第1偏波面保存光ファイバの右端に到達した信号光のS1、S2成分の偏波状態の関係を模式的に示した説明図である。
(A)主たる実施形態
以下、本発明による4値PSK光信号発生装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。この実施形態の4値PSK光信号発生装置は、例えば、QPSK光信号を発生する全光型の発生装置に適用できる。
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の全光型のQPSK光信号発生装置の構成を示す配置図である。
実施形態のQPSK光信号発生装置1は、第1偏波分離合成モジュール10と、第1偏波面保存光ファイバ12と、第1偏波面変換部14と、第2偏波面保存光ファイバ16と、第2偏波分離合成モジュール18と、第3偏波面保存光ファイバ22と、第2偏波面変換部24と、第4偏波面保存光ファイバ26と、光位相バイアス回路40と、第3偏波分離合成モジュール50と、第1光バンドパスフィルタ51と、第5偏波面保存光ファイバ52とを少なくとも備えている。
第1偏波分離合成モジュール10は、信号光を入力するための入力用光ファイバ32−2の一端が結合されている第1入出力端10−1と、第1入出力端10−1に対向する側に第1偏波面保存光ファイバ12の一端が結合されている第2入出力端10−2と、変調された信号光(以下、変調光信号と呼ぶ)を出力する第3入出力端10−3とを備えている。
第2偏波分離合成モジュール18は、第2偏波面保存光ファイバ16の一端を結合する第1入出力端18−1と、第1入出力端18−1に対向する側に第3偏波面保存光ファイバ22の一端を結合する第2入出力端18−2と、第4偏波面保存光ファイバ26の一端を結合する第3入出力端18−3と、第3入出力端18−3に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端18−4を備えている。なお、第4入出力端18−4は、そこからの光の入出力を行うことはないので、例えば、光ファイバピグテール、光コネクタなどの光信号の入出力インタフェースのための光部品を接続する必要はない。第4入出力端18−4は、後に詳細に述べるように、第3偏波面保存光ファイバ22において生じる偏波クロストークの除去が如何になされるかを説明するために、専ら便宜上設けているだけのものであり、それ自体は、この実施形態における必須構成要素ではない。
第3偏波分離合成モジュール50は、第1の制御光信号を入力するための入力用光ファイバ31の一端が結合されている第1入出力端50−1と、第1入出力端50−1に対向する側に第5偏波面保存光ファイバ52の一端が結合されている第2入出力端50−2と、第2の制御光信号を入力するための入力用光ファイバ33の一端が結合されている第3入出力端50−3とを備えている。
第1偏波面保存光ファイバ12は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に一端が結合されており、第2偏波面保存光ファイバ16は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に一端が結合されており、第1偏波面保存光ファイバ12の他端と第2偏波面保存光ファイバ16の他端とは第1偏波面変換部14(図1では、Aと示されている位置に設定されている)を介して接続されている。
また、第3偏波面保存光ファイバ22は、波長λpの制御光信号による光カー効果により、波長λsの被制御光である信号光に対して相互位相変調効果による位相シフトが生じる、いわゆる非線形光ファイバである。第3偏波面保存光ファイバ22は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2に一端が結合されている。
第4偏波面保存光ファイバ26は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に一端が結合されており、第3偏波面保存光ファイバ22の他端と第4偏波面保存光ファイバ26の他端とは、第2偏波面変換部24(図1ではBと示されている位置に設定されている)を介して接続されている。
光位相バイアス回路40は、第3偏波面保存光ファイバ22若しくは第4偏波面保存光ファイバ26の途中の任意の場所に挿入される(図1中では第4偏波面保存光ファイバ26の途中に挿入されている)。図2は、光位相バイアス回路40の構成例を示す説明図である。
光位相バイアス回路40は、例えば、直線偏波の偏波面を+45°だけ回転する第1ファラデー回転子278、直線偏波の偏波面を−45°だけ回転する第2ファラデー回転子280、光軸X、Yを有する1/4波長板282を有する。図2においては、便宜上、光位相バイアス回路40は、第4偏波面保存光ファイバ26の中途に挿入されているが、上述のように挿入箇所はここに限定されるものではない。1/4波長板282の光軸方向は後述するように設定されている。
今、図2中右側の第4偏波面保存光ファイバ26の左端276から、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸方向に平行な直線偏波が出力され、光位相バイアス回路40に入射されたとする(図2では、このときの入射光をS1成分と記載している)。この場合、まず、第2ファラデー回転子280を通過して、偏波方向が−45°だけ回転される。偏波回転された直線偏波の偏波方向が、その光軸方向の一つ(図2では、Y軸)と一致するように、1/4波長板282が配置されている。この光は、1/4波長板282を、そのY軸と平行な直線偏波として通過した後、第1ファラデー回転子278に入力される。そして、第1ファラデー回転子278において、偏波方向が+45°だけ回転される。そして、この光は、その偏波方向が図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26の右端274に結合(入射)され、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
一方、図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26の右端274から、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸方向に平行な直線偏波が出力され、光位相バイアス回路40に入射されたとする(図2では、このときの入射光をS2成分と記載している)。この場合、この光は、まず、第1ファラデー回転子278を通過して、偏波方向が+45°だけ回転される。このとき、偏波回転された直線偏波の偏波方向は、1/4波長板282のX軸方向と一致する。この光は、1/4波長板282を、そのX軸と平行な直線偏波として通過した後、第2ファラデー回転子280に入力される。そして、第2ファラデー回転子280において、偏波方向が−45°だけ回転される。この光は、その偏波方向が図中右側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図中右側の第4偏波面保存光ファイバ26の左端276に結合(入射)され、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
第1光バンドパスフィルタ51は、第2偏波面保存光ファイバ16の光路途中の任意の箇所に挿入される。第1光バンドパスフィルタ51は、少なくとも3つの光入出力端を有する。すなわち、波長λsである信号光は第1入出力端51−1と第2入出力端51−2を双方向に通過する。一方、波長λpである第1の制御光信号及び第2の制御光信号は、第2入出力端51−2と第3入出力端51−3を双方向に通過する。そして、第1入出力端51−1と第2入出力端51−2とを結ぶ光路は、第2偏波面保存光ファイバ16の光路の一部を構成する。一方、第3入出力端51−3には、第5偏波面保存光ファイバ52の他端が接続される。
第1光バンドパスフィルタ51として、例えば、誘電体多層膜を用いた光バンドパスフィルタを適用できる。すなわち、透過中心波長がλsであって所定の透過帯域を有する誘電体多層膜光バンドパスフィルタを用意し、その透過光が通過する光路に第1入出力端51−1と第2入出力端51−2を用意し、また、その反射光が通過する光路に第3入出力端51−3を用意すれば良い。ここでいう所定の透過帯域とは、その透過帯域が、信号光の有する波長帯域に比べて十分広く、かつ、制御光信号が有する波長帯域にオーバーラップしない程度に十分狭い帯域を意味する。
第5偏波面保存光ファイバ52は、後述する第3偏波分離合成モジュール50の第2入出力端50−2に一端が結合されており、第1光バンドパスフィルタ51の第3入出力端51−3にその他端が接続されている。
第1〜第5偏波面保存光ファイバ12、16、22、26、52として利用して好適な偏波面保存光ファイバとして、図3に示すようなパンダ型光ファイバを挙げることができる。このパンダ型光ファイバは、コアの近傍に応力付与部を形成し、コアに強い応力を加えることにより偏波保持性を得ている。
図3は、パンダ型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的構造を示す断面図である。
光が導波されるコア142を取り囲むクラッド140に、コア142を挟む形で2つの応力付与部144が形成されている。例えば、クラッド140はSiO、コア142はGeOがドープされたSiOで形成され、応力付与部144はBがドープされたSiOから形成される。
このように形成することによって、図3中で、パンダ型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直な面内に設定されたslow軸との方向と、slow軸と直交するfast軸の方向では、コア142を導波される光に対する等価屈折率が異なる。すなわち、コア142の近くに、クラッド140の屈折率より高い屈折率を有する応力付与部144がおかれているために、光の電場ベクトルの振動方向がslow軸の方向に平行な光に対する等価屈折率が、光の電場ベクトルの振動方向がfast軸の方向に平行な光に対する等価屈折率よりも高くなる。このような等価屈折率の非対称性があるために、パンダ型光ファイバに入力される光の偏波面は保存されて伝播されるようになる。
すなわち、パンダ型光ファイバでは、直線偏波の偏波面を、図3に示すslow軸(若しくはfast軸)に合わせて入力すると、偏波状態が保たれたままパンダ型光ファイバ中を伝播し、出射端においても、偏波面が、slow軸(若しくはfast軸)に一致した直線偏波の光成分のみを得ることが可能である。
以下の説明において、便宜のために、第1偏波分離合成モジュール10、第2偏波分離合成モジュール18等の偏波分離合成モジュールへ光が入射する場合、入射光の偏波分離合成モジュールの偏波面選択反射面に対する電場ベクトルの振動方向に対応する成分を次のように定義する。すなわち、偏波面選択反射面へ入射する入射光の入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分をp成分(p偏波成分、p波とも呼ぶ)、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分をs成分(s偏波成分、s波とも呼ぶ)と呼ぶこととする。
例えば、第1偏波分離合成モジュール10へ光が入射する場合、第1偏波分離合成モジュールを構成している偏波分離合成素子の偏波面選択反射面10Rに対する入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分はp成分、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分はs成分である。第2偏波分離合成モジュール18や第3偏波分離合成モジュール50においても同様である。
第1偏波分離合成モジュール10においては、第1入出力端10−1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端10−2に出力され、第2入出力端10−2から入力されたs偏波成分は、第3入出力端10−3に出力される。また、第2入出力端10−2から入力されたp偏波成分は、第1入出力端10−1に出力される。
第1偏波分離合成モジュール10等の偏波分離合成モジュールには、例えば、市販されている偏光ビームスプリッタの中から好適なものを選んで利用することができる。また、上述した説明で想定している薄膜を用いたタイプの偏光ビームスプリッタに限定されず、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを用いることもできる。
また、第1偏波分離合成モジュール10等の偏波分離合成モジュールの各入出力端と、それと結合する第1〜第5偏波面保存光ファイバ等の偏波面保存光ファイバの入出力端とは、偏波分離合成モジュールのp波ないしはs波の偏波方向と、偏波面保存光ファイバのslow軸ないしはfast軸の方向とが合致するように接合されているものとする。以下の説明では、便宜のために、各偏波分離合成モジュールのp波の偏波方向と、各偏波面保存光ファイバのslow軸の方向とが合致するように接合されているものとして説明する。なお、本発明はそれには限定されず、何箇所かの接合個所が、偏波分離合成モジュールのp波の偏波方向と、偏波面保存光ファイバのfast軸の方向とが合致するように接合されていたとしても、本発明の効果を実現することができる。
また、第1偏波面保存光ファイバ12の他端と第2偏波面保存光ファイバ16の他端とを接続する第1偏波面変換部14は、入力された直線偏波光に対して、その偏波方向が45°だけ回転された直線偏波光を出力させる機能を有するものである。このような機能は、具体的には、図4(A)に示すように、第1及び第2偏波面保存光ファイバ12及び16の互いに対面する他端の端面74、76において、互いのslow軸同士が45°だけ回転される形で融着接続されている構造で実現できる。また、図4(B)に示すように、互いのslow軸同士が一致するようにすると共に、接合部に1/2波長板114を挿入して実現するようにしても良い。1/2波長板114の光軸方向を、互いのslow軸から22.5°だけ回転される形になるように配置することで上述した機能を実現できる。以下では、便宜上、第1偏波面変換部14には、図4(B)に示すような1/2波長板114が挿入されているものとして説明する。
また、第3偏波面保存光ファイバ22の他端と第4偏波面保存光ファイバ26の他端とを接続する第2偏波面変換部24は、入力された直線偏波光に対して、その偏波方向が90°だけ回転された直線偏波光を出力させる機能を有するものである。このような機能は、図5に示すように、第3及び第4偏波面保存光ファイバ22及び26の互いに対面する他端の端面174、176において、互いのslow軸同士が90°だけ回転される形で融着接続されている、言い換えれば、互いのslow軸とfast軸が平行になるように融着接続されている構造で実現できる。また、第1偏波面変換部14の場合と同様に、互いのslow軸同士が一致するようにすると共に、接合部に、その光軸方向が互いのslow軸から45°だけ回転された1/2波長板を挿入して実現することもできる。
以下の説明においては、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から第1偏波面変換部14に至る経路の長さ、すなわち、第1偏波面保存光ファイバ12の長さをL1(経路L1ということもある)、第1偏波面変換部14から第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に至る経路の長さ、すなわち、第2偏波面保存光ファイバ16の長さをL2(経路L2ということもある)、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から第2偏波面変換部24に至る経路の長さ、すなわち、第3偏波面保存光ファイバ22の長さをL3(経路L3ということもある)、第2偏波面変換部24から第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に至る経路の長さ、すなわち、第4偏波面保存光ファイバ26の長さをL4(経路L4ということもある)とする。
なお、光カー効果の発現による位相シフトの発生に特段の寄与をしない、第1偏波面保存光ファイバ12、第2偏波面保存光ファイバ16、第4偏波面保存光ファイバ26及び第5偏波面保存光ファイバ52の全て若しくは一部は、光ファイバではなく、空間光学系で実現するようにしても、同様な効果を得ることができる。
第1及び第2の制御光信号はそれぞれ、第1の制御光入力用光ファイバ31、第2の制御光入力用光ファイバ33を介して、第3偏波分離合成モジュール50の第1入出力端50−1、第3入出力端50−3に入力される。
上述した偏波分離合成モジュールの偏波分離合成特性から、第3偏波分離合成モジュール50における制御光信号の光損失を最小限にするために、第1の制御光信号がp偏波方向に偏波した直線偏波光とし、第2の制御光信号がs偏波方向に偏波した直線偏波光とすることが望ましい。また、それを実現するためには、上述した第1の制御光入力用光ファイバ31、第2の制御光入力用光ファイバ33もまた偏波面保存光ファイバとすることが望ましい。あるいは、第1及び第2の制御光信号のそれぞれが、第3偏波分離合成モジュール50の第1入出力端50−1、第3入出力端50−3に至る光路(入力用光ファイバ31、33を含む)のいずれかの箇所に、偏波面コントローラを挿入して、それぞれの制御光信号の偏波状態を所望の偏波状態になるように調整するようにしても良い。
第3偏波分離合成モジュール50内に導入された第1及び第2の制御光信号は、第3偏波分離合成モジュール50の第2入出力端50−2から合波出力される。その際、偏波分離合成モジュールの性質から、合波出力における第1及び第2の制御光信号は、それぞれが直線偏波光の状態で、かつ、互いに偏波直交した状態で出力される。
この合波出力光は、第5偏波面保存光ファイバ52に結合され、互いに直交した偏波の直線偏波光状態を維持した上で、第1光バンドパスフィルタ51の第3入出力端51−3に入力され、第1光バンドパスフィルタ51の第2入出力端51−2から出力され、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へ入力される。
第1の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へp偏波方向の直線偏波光として入力されるために、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から出力され、その後、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22へと至り、第3偏波面保存光ファイバ22を伝播していく。
一方、第2の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へs偏波方向の直線偏波光として入力されるために、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3から出力され、その後、第4偏波面保存光ファイバ26、光位相バイアス回路40を介し、第2偏波面変換部24でその偏波面が90°だけ回転された後、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22へと至り、第1の制御光信号に逆行して第3偏波面保存光ファイバ22を伝播していく。
上述したように、第1及び第2の制御光信号は、第3偏波面保存光ファイバ22中を互いに逆行しつつも、同じ偏波方向で伝播していく。また、それらは共に、第3偏波面保存光ファイバ22中を互いに逆行して伝播していく、動作の項で後述する二つの信号光の成分(S1成分、S2成分)の偏波方向とも合致している。例えば、それらは共に、第3偏波面保存光ファイバ22のslow軸に平行な直線偏波光として、第3偏波面保存光ファイバ22中を伝播していく。
光サーキュレータ30は、第1入出力端30−1に接続されている入力用光ファイバ32−2から入力された信号光を、第2入出力端30−2に接続されている入力用光ファイバ32−2に出力して、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に入射させるものである。また、光サーキュレータ30は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1から出力され、入力用光ファイバ32−2を介して第2入出力端30−2に入力された光を、第3入出力端30−3に接続されている出力用光ファイバ37に出力するものである。
第3光バンドパスフィルタ38は、光サーキュレータ30の第3入出力端30−3から出力用光ファイバ37に出力された光の所定帯域(中心波長は信号光の波長λsと一致している)だけを濾波し、言い換えると、波長λpの制御光成分などを遮断し、出力用光ファイバ39に出力するものである。
第2光バンドパスフィルタ28は、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力用光ファイバ27に出力された光の所定帯域(中心波長は信号光の波長λsと一致している)だけを濾波し、言い換えると、波長λpの制御光成分などを遮断し、出力用光ファイバ29に出力するものである。
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する実施形態のQPSK光信号発生装置1の動作を説明する。
波長λsの被制御光である信号光が、入力用光ファイバ32−2に入力され、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する。ここで、信号光は、ピーク強度の揃った光パルスが等時間間隔に並んだ、いわゆる光パルス列である。パルス時間間隔は、所望とするQPSK信号のデータビットレートの逆数の2倍と一致する。すなわち、10ギガビット毎秒のデータレートのQPSK光信号を最終的に所望する場合、光パルス列である信号光のパルス時間間隔は200ピコ秒であり、繰り返し周波数で言えば5ギガヘルツである。
第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する信号光は、p偏波成分に平行な直線偏波となるようにその偏波方向が調整されているものとする。その結果、信号光は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から直線偏波として出力される。その後、信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12中を、そのslow軸と平行な直線偏波として伝播し、図1中左側の経路から第1偏波面変換部14に至る。
第1偏波面変換部14への入出力ポートとなる、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16の、対向するファイバ端面74、76は、上述したように、第1偏波面変換部14に1/2波長板114が挿入されているとした場合(図4(B)参照)、以下のように調整されている。
すなわち、ファイバ端面74及び76の互いのslow軸方向が一致するように調整されている(図6(A))。さらにまた、第1偏波面変換部14のいずれか一方の光学軸を、第1偏波面保存光ファイバ12のslow軸から、22.5°だけ傾ける(図6)。
このとき、第1偏波面変換部14を経由して第2偏波面保存光ファイバ16に結合された信号光の偏波方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のslow軸に対して45°だけ傾いた直線偏波光となる(図6(A))。その後、信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのslow軸と平行な直線偏波光成分と、そのfast軸方向に平行な直線偏波光成分とに分かれて伝播し、途中、第1光バンドパスフィルタ51の第1入出力端51−1及び第2入出力端51−2を入出力した後、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。ここで、信号光は、第1光バンドパスフィルタ51を通過した前後でもなんらの偏波変換を生じないものとする。すなわち、図1中で第1光バンドパスフィルタ51よりも左側の第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのslow軸と平行な直線偏波光成分として伝播してきた信号光の成分は、第1光バンドパスフィルタ51を通過した後、図1中で第1光バンドパスフィルタ51よりも右側の第2偏波面保存光ファイバ16中を、やはりそのslow軸方向に平行な直線偏波光成分として伝播していく。同様に、図1中で第1光バンドパスフィルタ51よりも左側の第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのfast軸と平行な直線偏波光成分として伝播してきた信号光の成分は、第1光バンドパスフィルタ51を通過した後、図1中で第1光バンドパスフィルタ51よりも右側の第2偏波面保存光ファイバ16中を、やはりそのfast軸方向に平行な直線偏波光成分として伝播していく。
上述したように、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16の互いのファイバ端面を、互いのslow軸方向が相対的に45°だけ回転した状態で融着接続することでも、これらのことは代用できる。このような融着接続を用いた場合、1/2波長板114は不要である。またこのとき、上述の場合と同様に、第2偏波面保存光ファイバ16に結合される信号光の偏波方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のslow軸と45°だけ傾いた方向となる(図6(A))。その後、信号光は、上述の場合と同様に、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのslow軸方向に平行な直線偏波成分と、そのfast軸方向に平行な直線偏波成分とに分かれて伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。
以下では、第1偏波面変換部14から第2偏波面保存光ファイバ16に結合された、slow軸と平行な信号光の直線偏波光成分をS1成分、そのfast軸方向に平行な信号光の直線偏波光成分をS2成分と定義する。S1成分とS2成分の強度比は、第2偏波面保存光ファイバ16に結合される、直線偏波光である信号光の偏波方向が、第2偏波面保存光ファイバ16のslow軸に対して45°だけ傾いているため1:1となる。
以下では、光信号の偏波方向及び光位相状態を便宜的に表すために、図6(A)〜(E)に例示するようなベクトル表記を用いることとする。
すなわち、信号光が、第1偏波面保存光ファイバ12から第2偏波面保存光ファイバ16へ入力するときの信号光の偏波状態は、図6(A)のように表される。第1偏波面保存光ファイバ12を伝播する信号光は、slow軸に平行な直線偏波光で、これを図6(A)中上向きの矢印と示す。この信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16へ入力するとき、その偏波方向が第2偏波面保存光ファイバ16のslow軸に対して時計方向に45°だけ回転している。従って、S1成分は、図6(A)中上向きの矢印、S2成分は図6(A)中右向きの矢印として示させる。S1成分及びS2成分の振幅は等しい。また、この段階では、それらの間に相対的な位相差も生じない。
信号光のS1成分及びS2成分は、その後、共に第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力され、それぞれ入出力端18−2、18−3に分岐出力される。すなわち、S1成分は入出力端18−2に出力され、S2成分は入出力端18−3に出力される。
第1及び第2の制御光信号は、波長がλp、データビットレートが所望するQPSK信号のデータビットレートの半分であるOOK若しくはASK光信号であるとする。例えば、10ギガビット毎秒のデータレートのQPSK光信号を最終的に所望する場合であれば、第1及び第2の制御光信号は、ビットレートが5ギガビット毎秒のOOK若しくはASK光信号である。
第1の制御光信号は、入力用光ファイバ31を介して、第3偏波分離合成モジュール50の第1入出力端50−1に入力される。第1の制御光信号としてはp偏波方向に偏波した直線偏波光とすることが望ましい。それを実現するためには、入力用光ファイバ31を偏波面保存光ファイバとするのが望ましい。あるいは、第1の制御光信号が、第3偏波分離合成モジュール50の第1入出力端50−1に至る光経路(入力用光ファイバ31を含む)のいずれかの箇所に、偏波面コントローラを挿入して、偏波状態をp偏波状態になるように調整するようにしても良い。
また、第1の制御光信号が有する一つの光パルス信号が、第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光のS1成分が有する一つの光パルスと時間的に一致するように、第1の制御光信号若しくは信号光の遅延時間が調整されて入力される。あるいはまた、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22において、群速度分散による第1の制御光信号と信号光間のウォークオフの効果が存在するときには、光カー効果による相互位相変調効果を最大化するために、第1の制御光信号の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力する場合もある。
一方、第2の制御光信号は、入力用光ファイバ33を介して、第3偏波分離合成モジュール50の第3入出力端50−3に入力される。第2の制御光信号としては、s偏波方向に偏波した直線偏波光とすることが望ましい。それを実現するためには、入力用光ファイバ33を偏波面保存光ファイバとするのが望ましい。あるいは、第2の制御光信号が、第3偏波分離合成モジュール50の第3入出力端50−3に至る光経路(入力用光ファイバ33を含む)のいずれかに、偏波面コントローラを挿入して、偏波状態をs偏波状態になるように調整するようにしても良い。
また、第2の制御光信号が有する一つの光パルス信号が、第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光のS2成分が有する一つの光パルスと時間的に一致するように、第2の制御光信号若しくは信号光の遅延時間が調整されて入力される。あるいはまた、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22において、群速度分散による第2の制御光信号と信号光間のウォークオフの効果が存在するときには、光カー効果による相互位相変調効果を最大化するために、第2の制御光信号の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力する場合もある。
第1及び第2の制御光信号は、その後、第3偏波分離合成モジュール50の第2入出力端50−2から合波出力される。その際、偏波分離合成モジュールの性質から、合波出力においては第1及び第2の制御光信号は、それぞれが直線偏波の状態で、かつ、互いに偏波直交した状態で出力される。
この合波出力は、第5偏波面保存光ファイバ52に結合され、互いに直交した偏波の直線偏波状態を維持した上で、第1光バンドパスフィルタ51の第3入出力端51−3に入力され、第2入出力端51−2へと出力される。その後、これら二つの制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へと入力される。
そして、第1の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へp偏波方向の直線偏波光として入力されるために、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2へ出力され、その後、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22へと至り、第3偏波面保存光ファイバ22を伝播していく。
一方、第2の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1へs偏波方向の直線偏波光として入力されるために、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3へ出力され、その後、第4偏波面保存光ファイバ26、光位相バイアス回路40を介し、第2偏波面変換部24でその偏波面が90°だけ回転された後、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22へと至り、第1の制御光信号とは逆行して第3偏波面保存光ファイバ22を伝播していく。
すなわち、第1及び第2の制御光信号は、第3偏波面保存光ファイバ22中を互いに逆行しつつも、同じ偏波方向で伝播していく。また、第1及び第2の制御光信号は共に、第3偏波面保存光ファイバ22中を互いに逆行して伝播していく、二つの信号光(S1成分、S2成分)の偏波方向とも合致している。すなわち、第1の制御光信号と信号光のS1成分は、共に第3偏波面保存光ファイバ22のslow軸に平行な直線偏波光として、第3偏波面保存光ファイバ22中を同一方向に伝播していく。また、第2の制御光信号と信号光のS2成分は、共に第3偏波面保存光ファイバ22のslow軸に平行な直線偏波光として、第3偏波面保存光ファイバ22中を同一方向に伝播していく。そして、第1の制御光信号及び信号光のS1成分の第3偏波面保存光ファイバ22中での進行方向は、第2の制御光信号及び信号光のS2成分の第3偏波面保存光ファイバ22中での進行方向と逆行している。
次に、具体的な変調動作を説明する。
ここで、便宜のために、所望とする位相変調光信号が、信号「0」が光位相「0」、信号「1」が光位相「π」に対応する位相変調信号として、以下説明する。また、便宜のために、ASK光信号である制御光信号が、信号「1」に対応するピーク強度が1に対して、信号「0」に対応するピーク強度が限りなく0に近い、消光比が無限大の振幅変調信号であるとする。このような振幅変調信号はOOK信号と呼ばれることもある。制御光信号が「0」である場合、信号光は何ら相互位相変調による位相シフトを受けない。この状態を、光位相「0」の位相変調信号であるとする。
まず始めに、第1及び第2の制御光信号の入力がない場合を考える。あるいは、第1及び第2の制御光信号が「0」であり、信号光は何ら相互位相変調による位相シフトを受けない場合を考える。また、便宜上、当面は、光位相バイアス回路40における、後述する光位相バイアス効果を考慮しないで議論を進める。
第1偏波面変換部14から出力された信号光のS1成分及びS2成分は、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第2偏波面変換部24、第4偏波面保存光ファイバ26、光位相バイアス回路40で構成される閉ループを時計回り若しくは反時計回りに通過し、第2偏波面保存光ファイバ16を経由し、再度、第1偏波面変換部14に入力される。
ここで、S1成分及びS2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端、すなわち図4に示す端面76から入力され、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第2偏波面変換部24、光位相バイアス回路40、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端(すなわち、端面76)に再度到達するまでの光路長を考える。光路長とは、光ファイバなどの光学媒体の物理長に屈折率を掛けた値である。
S1成分は、第2偏波面保存光ファイバ16をまずそのslow軸方向に平行な直線偏波として伝播し、次に、第3偏波面保存光ファイバ22をそのslow軸方向に平行な直線偏波として伝播する。さらに、第2偏波面変換部24を通過した後、第4偏波面保存光ファイバ26をそのfast軸方向に平行な直線偏波として伝播する。そして、第2偏波面保存光ファイバ16をそのfast軸方向に平行な直線偏波として伝播し、第1光バンドパスフィルタの第2入出力端51−2から第1入出力端51−1を通過した後、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達する。
従って、S1成分の通過する全光路長は、(1)式で表すことができる。ここで、各偏波面保存光ファイバのslow軸の屈折率をn、fast軸の屈折率をnとしている。
L2+nL3+nL4+nL2 …(1)
一方、S2成分は、第2偏波面保存光ファイバ16をまずそのfast軸方向に平行な直線偏波として伝播し、次に、第4偏波面保存光ファイバ26をそのfast軸方向に平行な直線偏波として伝播する。さらに、第2偏波面変換部24を通過した後、第3偏波面保存光ファイバ22をそのslow軸方向に平行な直線偏波として伝播する。そして、第2偏波面保存光ファイバ16をそのslow軸方向に平行な直線偏波として伝播し、第1光バンドパスフィルタの第2入出力端51−2から第1入出力端51−1を通過した後、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達する。
従って、S2成分の通過する全光路長は、(2)式で表すことができる。
L2+nL4+nL3+nL2 …(2
(1)式及び(2)式から、S1成分、S2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端より第2偏波面保存光ファイバ16へ入力され、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの光路長は、全く同じであることが分かる。すなわち、第1及び第2の制御光信号の入力がない、若しくは、共に「0」信号である場合、S1成分とS2成分との間には、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの間に相対的な光位相の差は生じない。従って、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分、S2成分のベクトル表現は、図6(B)及び図6(D)に示すようになる。すなわち、図6(A)の場合と同様に、上向きの矢印、右向きの矢印として表現される。但し、S1成分の偏波方向はfast軸平行方向、S2成分の偏波方向はslow軸平行となるため、図6(A)に示す、第2偏波面保存光ファイバ16の左端入力時の状態に比較して、互いに入れ替えた状態となる。光位相バイアス回路40における、光位相バイアス効果を考慮しない場合、これらS1成分及びS2成分は同じ光路を通過するので、この段階で相対的な光位相差は生じない。
これらS1成分及びS2成分が再び、第1偏波面変換部14を逆方向に通過する。その結果、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に再度結合するときのS1成分及びS2成分はそれぞれ、第1偏波面保存光ファイバ12のslow軸方向からそれぞれ反時計回りに45°(−45°とする)、時計回りに45°(+45°とする)だけ傾いた直線偏波となる。すなわち、ベクトルで表記すれば、S1成分は左斜め45°方向の上向きの矢印、S2成分は右斜め45°方向の上向きの矢印として表される。
次に、第1及び第2の制御光信号が信号「1」である場合を考える。この場合、信号光に対して光カー効果に基づく相互位相変調による位相シフトが生じる。
制御光信号による相互位相変調による位相シフトの効果は、信号光と同一方向に伝播する制御光信号からの効果と、逆行する制御光信号からの効果の2つの寄与が存在する。すなわち、信号光のS1成分に対しては、同一方向に伝播する第1の制御光信号からの寄与と、逆行する第2の制御光信号からの寄与が存在する。一方、信号光のS2成分に対しては、同一方向に伝播する第2の制御光信号からの寄与と、逆行する第1の制御光信号からの寄与が存在する。
第1及び第2の制御光信号の信号「1」のピーク強度を、それによってそれぞれ同一方向に伝播するS1成分、S2成分に対する相互位相変調による位相シフトの総量がπであるように設定する。
光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22が長手方向に対称な構造を有するとする。また、第1及び第2の制御光信号が同じデューティ比、同じ波長、同じマーク率の光信号であるとする。なお、このようなことは、本発明を適用する多くの実現例の中で、最も多く使われる実現例の条件に該当すると考えられる。
上述のような場合、πシフトに必要な第1及び第2の制御光信号の信号「1」のピーク強度は同一であるだけでなく、第1及び第2の制御光信号の平均強度も同一である。
第3偏波面保存光ファイバ22のファイバ長が、数十m〜数kmの実用的な長さであるとき、逆行する制御光信号からの相互位相変調による位相シフトの効果は、それぞれの信号光の光パルスに対して同量だけ与えられる時間無依存の連続的な位相シフトとなり、かつ、その量は逆行する制御光信号の平均強度で決定されることが、下記の参照文献などで明らかにされている。
「参照文献」 M. Jinno and T. Matsumoto,”Nonlinear Sagnac interferometer switch and its applications”, IEEE J. Quantum Electron., Vol.28, No.4, pp.875−882, 1992
すなわち、上述したように、第1及び第2の制御光信号が同じデューティ比、同じ波長、同じマーク率の光信号であり、また、第3偏波面保存光ファイバ22のファイバ長が十分長いような、実際上のアプリケーションで多く生じるような状況においては、S1成分、S2成分に対する逆行制御光信号による相互位相変調による位相シフトは、同量である。また、この位相シフトは、S1成分、S2成分を構成する個々の光パルスに対して、制御光信号の信号が「1」か「0」かに拘わらず常に同量だけ与えられる。
従って、逆行制御光信号による相互位相変調による位相シフトの効果は、上記で想定したような状況下においては、S1成分、S2成分を構成する個々の光パルスに対して、全く同量だけ与えられるので、これを位相シフトとして考慮する必要がない。すなわち、相互位相変調による位相シフトは、同一方向に伝播する制御光信号(S1成分の場合には第1の制御光信号、S2成分の場合には第2の制御光信号)からの寄与のみを考慮すれば良い。
なお、第1及び第2の制御光信号が同じデューティ比、同じ波長、同じマーク率の光信号ではなく、従って、逆行制御光信号による相互位相変調による位相シフトの効果がS1成分及びS2成分に対して同量でないような場合においても、後述する光位相バイアス回路40において付与する光位相バイアス量を適宜調整することで、その効果を相殺することができる。
S1成分及びS2成分のそれぞれに対して、それらと同一方向に伝播する第1及び第2の制御光信号によって、π位相シフトが与えられた場合の、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分及びS2成分のベクトル表現は、図6(C)、図6(E)に示されるようになる。すなわち、位相が反転するために、S1成分は左向きの矢印、S2成分は下向きの矢印として表される。
これらのS1成分及びS2成分が再び、第1偏波面変換部14を通過した後、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に再度結合するとき、S1成分は右斜め45°方向の下向きの矢印、S2成分は左斜め45°方向の下向きの矢印として表される。
第1偏波面変換部14を通過し、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に再度結合された信号光(S1成分及びS2成分)は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、そのs偏波成分のみが、第3入出力端10−3に出力される。
第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力されるs偏波成分とは、図6(A)〜(E)に示す第1偏波面保存光ファイバ12の右端74の端面図において、そのfast軸と平行な偏波成分を意味する。
図7は、第1偏波面保存光ファイバ12の右端の端面図と、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に出力される偏波方向、並びに、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に到達した信号光のS1、S2成分の偏波状態の関係を模式的に示した説明図である。
S1成分に着目すると、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に出力されるS1成分の光位相は、第1の制御光信号の信号「1」、「0」に応じて反転する(位相がπ変化する)ことが分かる。すなわち、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3からは、S1成分が、OOK信号である第1の制御光信号の強度パターンで位相変調された、BPSK信号が発生していることが分かる。
S2成分についても同様で、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3からは、S2成分が、OOK信号である第2の制御光信号の強度パターンで位相変調された、BPSK信号が発生していることが分かる。
すなわち、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3からは、第1の制御光信号の強度パターンで位相変調されたBPSK信号と、第2の制御光信号の強度パターンで位相変調されたBPSK信号の二つのBPSK信号が同じ偏波方向で出力される。
次に、これら二つのBPSK信号間の位相差を考える。
先に詳細に述べた理由によって、第1偏波面変換部14を通過し、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に再度結合された状態でのS1成分及びS2成分間には、制御光信号による相互位相変調によって生じたπの光位相差しか生じない。これらが、第1偏波面保存光ファイバ12を通過し、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、第3入出力端10−3に出力されるまでに生じる位相変化は、結果として、第1偏波面保存光ファイバ12をそのfast軸に平行な直線偏波として伝播したときの光学長による位相変化であり、これは常に同量である。すなわち、この経路で二つのBPSK信号間に位相差を生じさせることができない。
すなわち、二つのBPSK信号間に位相差が生じ得ない。この状態で生じるのは、位相(0、π)と位相(0、π)を組み合わせた4値の多値変調信号である。
QPSK信号化するには、二つのBPSK信号間にπ/2の位相差を与える必要がある。第3偏波面保存光ファイバ22若しくは第4偏波面保存光ファイバ26の中途に、図2に示すような光位相バイアス回路40を挿入することで、これら二つのBPSK信号間にπ/2の位相差を与えることができる。
図2を参照して、S1成分及びS2成分間にπ/2の位相差を与える動作を説明する。ここでは、光位相バイアス回路40が、第4偏波面保存光ファイバ26の中途に挿入されているとする。
まず、S1成分は、上述したように、図2中右側の第4偏波面保存光ファイバ26の左端276から、そのfast軸に平行な直線偏波光として出力され、光位相バイアス回路40に結合される。光位相バイアス回路40において、まず、第2ファラデー回転子280を通過して、偏波方向が−45°だけ回転する。偏波回転されたS1成分の偏波方向が、その光軸方向の一つ(図2では、Y軸)と一致するように、複屈折媒体である1/4波長板282を配置されている。S1成分は、1/4波長板282を、そのY軸と平行な直線偏波光として通過した後、第1ファラデー回転子278に入力される。そして、第1ファラデー回転子278において、+45°だけ偏波回転される。その結果、S1成分は、その偏波方向が図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26の右端274に結合され、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
一方、S2成分は、上述したように、図2中左側の第4偏波面保存光ファイバ26の右端274から、そのfast軸に平行な直線偏波光として出力され、光位相バイアス回路40に結合される。光位相バイアス回路40において、まず、第1ファラデー回転子278を通過して、偏波方向が+45°だけ回転する。このとき、偏波回転されたS2成分の偏波方向は、1/4波長板282のX軸方向と一致する。従って、S2成分は、1/4波長板282を、そのX軸と平行な直線偏波光として通過する。その後、第2ファラデー回転子280に入力される。そして、第2ファラデー回転子280において、−45°だけ偏波回転される。その結果、S2成分は、その偏波方向が図2中右側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図2中右側の第4偏波面保存光ファイバ26の左端276に結合され、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
すなわち、S1成分及びS2成分は、光位相バイアス回路40の挿入にも拘わらず、当該箇所以外は、上述したのと同じ偏波状態で、各光経路を通過していく。すなわち、光位相バイアス回路40挿入箇所以外での信号光のS1成分、S2成分の光位相の変化や偏波方向の変化の様相に変化はない。
一方、光位相バイアス回路40の挿入によって、S1成分及びS2成分は、光位相バイアス回路40内に配置された複屈折媒体である1/4波長板282を、互いに直交する光軸(X軸、Y軸)に平行な直線偏波の状態で通過する。そのため、S1成分及びS2成分間に、複屈折媒体である1/4波長板282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
ここで、複屈折媒体が1/4波長板282であるために、その光位相差をπ/2とすることができる。
従って、光位相バイアス回路40を挿入することにより、結果的に、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に出力されるときの信号光のS1成分及びS2成分間にπ/2の位相差を付与して出力させることができる。その結果、出力される二つのBPSK信号間の位相組み合わせを、位相{0、π}と位相{π/2、3π/2}との組み合わせとすることができ、すなわち、QPSK信号化することができる。
第3偏波面保存光ファイバ22を通過した後の第1の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3にs偏波の偏波光として入力され、結果、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に出力される。一方、第3偏波面保存光ファイバ22を通過した後の第2の制御光信号は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2にp偏波の偏波光として入力され、結果、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に出力される。
その後、第1及び第2の制御光信号は、第1光バンドパスフィルタ51の第2入出力端51−2に入力され、第3入出力端51−3に出力される。ここで、第1光バンドパスフィルタ51の透過特性が理想的である場合、すなわち、第1光バンドパスフィルタ51の透過率が波長λpについて0%である場合、制御光信号が第1光バンドパスフィルタ51の第1入出力端51−1へと出力されることはなく、結果、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3へと出力されることもない。
また、第1光バンドパスフィルタ51の第3入出力端51−3に出力された制御光信号は、その後、第5偏波面保存光ファイバ52、第3偏波分離合成モジュール50を介して、元の制御光入力用光ファイバ31、33へと逆行し、装置の安定動作や、あるいは装置外部の機器あるいは伝送システムに悪影響を及ぼす恐れがある。これを抑制するためには、第5偏波面保存光ファイバ52の途中に光アイソレータ60を挿入して、このような逆行する制御光信号をカットするのが好適である。
一方、QPSK信号化された光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に結合された出力用光ファイバ27を経由し、所望とされるQPSK光信号として外部へと出力される。第1光バンドパスフィルタ51の透過特性が理想的である場合、出力用光ファイバ27からの出力光に制御光信号の成分が含まれることはないため、これを最終的に所望とするQPSK光信号として実用に供することができる。
一方、第1光バンドパスフィルタ51の透過特性が不十分である場合、第1及び第2の制御光信号の漏れ光が、第1光バンドパスフィルタ51の第1入出力端51−1へと出力され、結果、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3、さらには出力用光ファイバ27から出力される。
このような場合、出力用光ファイバ27の出力端に、透過中心波長がλsである第2光バンドパスフィルタ28を接続させ、波長λsの信号光の波長成分のみを選択的に通過させ、波長λpの制御光信号の成分を遮断する。第2光バンドパスフィルタ28を通過した波長λsの光成分は、出力用光ファイバ29に結合され、最終的に所望とされるQPSK光信号が出力される。
また、このQPSK光信号発生装置1においては、出力用光ファイバ29から出力される、所望するQPSK光信とは論理反転したQPSK光信号が、入力用光ファイバ32−2から、信号光と逆行して伝播する形で出力される。この論理反転信号を、所望する正論理QPSK光信号の信号品質モニタ等として使用することもできる。
この場合において、入力用光ファイバ32−2の信号光入力端に、光サーキュレータ30を接続する。光サーキュレータ30は、それぞれの入出力ポートに接続された光ファイバ32−1、32−2、37を有する。光ファイバ32−1から入力された信号光は、光ファイバ32−2から出力される。光ファイバ32−2の他端は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に接続される。第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に入力される信号光は、p偏波成分に平行な直線偏波光となるように、その偏波方向が調整されているものとする。論理反転した多値変調光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1から出力され、光ファイバ32−2に入力され、光サーキュレータ30を経由して光ファイバ37から出力される。所望する正論理多値変調光信号の場合と同様に、制御光信号除去用の第3光バンドパスフィルタ38を透過する信号光の波長成分のみを、論理反転した多値変調光信号として、出力用光ファイバ39を介して出力させる。
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態によれば、光ファイバ中での超高速な光カー効果に基づく相互位相変調効果を用いて、電子デバイスの速度制限を越えた超高速QPSK光信号を発生することができる。
また、装置を構成する主要素である偏波面保存光ファイバの複屈折は、(1)式、(2)式に示すように、自動的にキャンセルされる構造を有している。すなわち、複屈折をキャンセルするための偏波面保存光ファイバ長の高精度な調整など、複雑かつ高精度な制御が不要である。言い換えれば、非特許文献1や非特許文献2に開示の技術における、干渉計の光路調整のための格別の制御手段を必要とせずに、より簡便かつ安定な構成が可能となる。
さらにまた、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる偏波クロクトーク成分は、全て第2偏波分離合成モジュール18の、光ファイバ等への結合を必要としない第4入出力端18−4に出力される。従って、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に、第3偏波面保存光ファイバ22で生じる偏波クロクトーク成分が、所望するQPSK光信号に混在して出力されることはない。
従って、必要な制御光信号のピーク強度を低減するために、長尺な第3偏波面保存光ファイバ22を用いても、そのファイバで生じる偏波クロストークによる動作不安定性の発現を抑制することができる。
以上のことから、偏波面保存光ファイバの使用による複屈折の影響や、また、偏波クロストークの発生による、光変調動作の動作不安定性を抑制できる。このことから、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化せず、また、高安定な動作特性を担保した装置を提供することができる。
また、出力用光ファイバ29から出力される所望するQPSK光信号とは論理反転したQPSK光信号を、所望する正論理QPSK光信号の信号品質モニタ等として使用することもできる。
上述した実施形態による効果を要約すると、以下の通りである。
光ファイバ中での超高速な光カー効果に基づく相互位相変調効果を用いて、電子デバイスの速度制限を越えた超高速QPSK光信号を発生することができる全光型QPSK光信号発生装置を提供することができる。その際、複雑かつ高精度な光路長調整が不要である。さらにまた、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化しない、高安定な動作特性を担保することができる。
(B)他の実施形態
上記実施形態では、光位相(0、π)で変調されたBPSK信号と、光位相(π/2、3π/2)で変調されたBPSK信号の合波による、光位相(0、π/2、π、3π/2)の4値QPSK信号を発生するものを示したが、本発明で実現できる光信号の信号フォーマットは上記に限定されない。例えば、第2の制御光信号の信号「1」のピーク強度を、相互位相変調効果による位相シフトがπ/3となるように調整すれば、光位相(0、π/3、2π/3、π)の4値PSK信号の発生も可能となる。この際、S1成分とS2成分に対する逆行制御光信号による位相シフトに違いは生じるが、これを加味して、光位相バイアス回路40で生じさせる光位相差の調整をすれば良い。その際、光位相バイアス回路40に内在させる複屈折媒体として、バビネソレイユ補償板のような、光位相差可変の媒体を用いれば、様々な多値変調フォーマットにフレキシブルに対処できる装置の提供が可能となる。
上記実施形態では、光カー効果に基づき相互位相変調効果を発現する媒体として光ファイバを考慮したが、本発明で得られる効果は、このような光ファイバの使用に限定されるものではない。制御光信号により被制御光の光位相を変化させる効果を有する光デバイスであれば、その応用形態に応じて、多種多様なデバイスを用いて、本発明の効果を生じることができる。例えば、動作するビットレートが、1Gb/sなど比較的低ビットレートであれば、半導体光増幅器や電界吸収型光変調器を用いることもできる。また、Siをコアとし、SiOをクラッドとして形成した、いわゆるシリコン細線導波路を用いることもできる。
また、第1の制御光信号と第2の制御光信号は、その波長が同一波長(λp)であるものと想定して説明したが、本発明で得られる効果はこれに限定されるものではない。具体的には、第1の制御光信号と第2の制御光信号の波長をλp1、λp2とした場合、それらが、第1光バンドパスフィルタ51の透過波長帯域に掛からない程度に十分に、信号光波長λsから離れていれば、λp1とλp2が一致していなくても、本発明の効果を奏することができる。
また、第1光バンドパスフィルタ51として信号光波長を透過波長としたものを想定したが、制御光波長を透過波長としたものとしても本発明で得られる効果を実現できる。
1…QPSK光信号発生装置、10…第1偏波分離合成モジュール、12…第1偏波面保存光ファイバ、14…第1偏波面変換部、16…第2偏波面保存光ファイバ、18…第2偏波分離合成モジュール、22…第3偏波面保存光ファイバ、24…第2偏波面変換部、26…第4偏波面保存光ファイバ、40…光位相バイアス回路、50…第3偏波分離合成モジュール、51…第1光バンドパスフィルタ、52…第5偏波面保存光ファイバ。

Claims (7)

  1. 偏波面保存の閉ループ光路を形成させている閉ループ光路部と、
    ピーク強度の揃った光パルスが等時間間隔に並んだ光パルス列である直線偏波の第1波長を有する信号光を2つの直線偏波の第1成分及び第2成分に分ける信号光成分分割部と、
    信号の「0」及び「1」の並びに応じた第1の強度パターンを有する強度変調光であって、第2波長を有する直線偏波の第1の制御光信号と、信号の「0」及び「1」の並びに応じた第2の強度パターンを有する強度変調光であって、上記第2波長若しくはその近傍波長を有し、偏波面が上記第1の制御光信号の偏波面と直交している第2の制御光信号とを出力する制御光発生部と、
    上記閉ループ光路への上記信号光の入出力を行うものであって、上記第1成分及び第2成分を、巡回方向が逆になるように上記閉ループ光路へ入力する閉ループ信号光入出力部と、
    上記閉ループ光路への上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号の入出力を行うものであって、上記第1の制御光信号の巡回方向が上記第1成分と同じになると共に、上記第2の制御光信号の巡回方向が上記第2成分と同じになるように、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号を上記閉ループ光路へ入力する閉ループ制御光入出力部と、 同一方向に進行する上記第1の制御光信号及び逆方向に進行する上記第2の制御光信号に応じ、上記第1成分の光位相を変化させる、上記閉ループ光路に介在されている第1成分光位相シフト部と、
    同一方向に進行する上記第2の制御光信号及び逆方向に進行する上記第1の制御光信号に応じ、上記第2成分の光位相を変化させる、上記閉ループ光路に介在されている第2成分光位相シフト部と、
    上記閉ループ光路から出力された上記第1成分及び上記第2成分を、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号から分離する信号光抽出部と、
    上記閉ループ信号光入出力部へ向かう信号光と、上記閉ループ信号光入出力部から出力された戻り光の上記第1成分及び第2成分との光路を分離する正逆光路分離部と、
    上記信号光の第1成分及び第2成分が進行するいずれかの箇所に設けられ、上記第1成分及び第2成分に相対的な光位相差を付与する光位相差付与部とを備え、
    上記閉ループ光路以外の光路にも偏波面保存光路を適用すると共に、上記正逆光路分離部によって光路分離がなされた光信号を、光多値変調信号として出力し、
    上記閉ループ信号光入出力部は、偏光ビームスプリッタ又は偏光プリズムでなる、上記信号光成分分割部及び上記閉ループ制御光入出力部の機能を兼ねたものであり、上記閉ループ光路部は、上記第1成分及び上記第2成分の偏波面を90°だけ回転させるループ内偏波面変換部を含む
    ことを特徴とする4値PSK光信号発生装置。
  2. 上記閉ループ光路は、上記第1の制御光信号若しくは上記第2の制御光信号による光カー効果により、上記閉ループ光路を巡回する上記第1成分若しくは上記第2成分に対して相互位相変調効果による位相シフトを生じさせる位相シフト用非線形光ファイバを含み、
    上記位相シフト用非線形光ファイバが、上記第1成分光位相シフト部と上記第2成分光位相シフト部とを構成している
    ことを特徴とする請求項1に記載の4値PSK光信号発生装置。
  3. 上記閉ループ信号光入出力部へ向かう信号光と、上記閉ループ信号光入出力部から出力された戻り光とが通過する位置に設けられたループ外偏波面変換部を有し、
    上記ループ外偏波面変換部が、上記閉ループ信号光入出力部へ向かう信号光の偏波面を、偏光ビームスプリッタ又は偏光プリズムでなる上記閉ループ信号光入出力部の偏波面選択反射面を通過する上記第1成分と反射される上記第2成分とが生じる角度の偏波面に変換すると共に、上記閉ループ信号光入出力部から出力された戻り光の上記第1成分及び上記第2成分の偏波面を揃える
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の4値PSK光信号発生装置。
  4. 上記光位相差付与部は、上記閉ループ光路に介挿されたものであり、上記第1成分及び上記第2成分の偏波面を保持したまま位相差を付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の4値PSK光信号発生装置。
  5. 上記閉ループ信号光入出力部及び上記閉ループ制御光入出力部として同一の入出力用光学部材を適用すると共に、上記信号光、並びに、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号を合波して上記入出力用光学部材に与えると共に、上記入出力用光学部材からの戻り光を、上記信号光、並びに、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号に分波する信号光・制御光合分波部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の4値PSK光信号発生装置。
  6. 上記信号光・制御光合分波部は、分波された信号光から、上記第1の制御光信号及び上記第2の制御光信号の波長成分を濾波するバンドパスフィルタ機能をも担っていることを特徴とする請求項に記載の4値PSK光信号発生装置。
  7. 上記正逆光路分離部として、上記閉ループ信号光入出力部を構成している偏光ビームスプリッタ又は偏光プリズムとは異なる、偏光ビームスプリッタ又は偏光プリズムでなるものを適用し、その偏波面選択反射面を反射若しくは直進した戻り光を上記光多値変調信号として出力すると共に、偏波面選択反射面を直進若しくは反射した戻り光を、上記閉ループ信号光入出力部へ向かう信号光の経路から分離し、上記光多値変調信号の論理反転信号として取り出す論理反転信号取出部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の4値PSK光信号発生装置。
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