JP4779177B2 - 非線形光デバイスとそれを用いた応用機器 - Google Patents
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Description
(ISBTは、いろいろな半導体材料をベースに研究されている。例えば、非特許文献1、2および3参照。)
ところが、ISBTは、光の偏光が量子井戸の平面に対して垂直な直線偏光(TMモード)に対して生じるが、TMモードに垂直な直線偏光(TEモード)に対しては、ほとんど遷移が起こらない。このことは、原理的に、この光デバイスは、入射光がTMモードのみの単一偏光に対してしか動作しないことを意味する。光通信などで用いられている光信号は光ファイバ中を伝搬する過程でランダムな偏光状態になる上、経時変化を伴うため、光デバイスへの入射偏光状態も不確定となる。したがって、光デバイスが偏光依存性を有すると安定した動作が得られず問題である。
ISBTの偏光依存性を解消するために、ISBT導波路を2つ縦列に接続し間に2分の1波長板を挿入する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法は、ISBTを光スイッチに応用する限られた使い方においてのみ可能である。すなわち、光スイッチ動作における制御光の偏光状態は光デバイスに対してきちんと制御・管理されることと、制御光の入力パワーが一定で信号光に対しては近似的に線形動作することを前提としている。さらに、直列な2つのISBT導波路の特性は、所望の動作を得るために正確に設計・実現されなければならないため、製造歩留まりの観点から問題がある。
一方、ISBTとは全く異なるが、SESAMと呼ばれる半導体量子井戸可飽和吸収ミラーの偏光依存性を解消するために、偏波ダイバーシティに類似した方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、しかしながら、偏波分離した2つの信号間の干渉効果を考慮しておらず、動作が安定しない懸念がある。また、この方式は、ミラー構造を想定しており、ISBTのような導波路構造を有するデバイスに単純に応用することはできない。
一般に、多くの可飽和吸収体は偏光依存性が見られており、本発明は、ISBTを用いたデバイスに限らず、可飽和吸収体を用いた非線形光導波路デバイス全般に関する発明でもある。
また、従来の偏波ダイバーシティは、入射光に対して線形動作するデバイスのみに適用していたのだが、本発明では、入射光の非線形動作にも偏光無依存化が実現できる構成を有するISBTを用いた非線形光デバイスとそれを用いた応用機器を提供することを目的とする。
(1)非線形光デバイスは、偏光ビームスプリッタと可飽和吸収体とを有し、入射光を分離する偏光ビームスプリッタの両端と偏光依存性を有する可飽和吸収体の両端を偏波保持ファイバと結合光学系でそれぞれ光路として結合し、前記偏光ビームスプリッタの両端から出力されるそれぞれの直線偏光が前記可飽和吸収体に対して両方ともTMモード又はTEモード、すなわち、同一の直線偏波モードに揃うように調整され、入射光が前記偏光ビームスプリッタで分離されてから前記可飽和吸収体に結合するまでの損失は、2つの経路同士で等しくなるように、前記偏波保持ファイバと前記可飽和吸収体の結合を調整し、前記偏光ビームスプリッタから前記可飽和吸収体導波路までの前記それぞれの光路の光路長を等しくなるように構成し、
光パルスが入射すると、前記偏光ビームスプリッタで2つに分かれ、互いに逆方向から同時に前記可飽和吸収体へ到達するように構成され、前記可飽和吸収体の応答時間又は光パルスの時間幅のいずれか一方が、光パルスの前記可飽和吸収体の通過時間と同じかそれ以上であることを満たすように構成したことを特徴とする。
(2)上記(1)記載の非線形光デバイスは、前記偏光ビームスプリッタに光サーキュレータ又はカプラーを設け、該光サーキュレータ又はカプラーを介して光を入射および出射するようにしたことを特徴とする。
(3)非線形光デバイスは、上記(1)又は(2)記載の非線形光デバイス2つを前記可飽和吸収体を共通にしてカプラー又はWDMカプラーを介して連結し、一方の前記偏光ビームスプリッタの入力端子を制御光用とし、他方の前記偏光ビームスプリッタの入力端子を信号光用とすると供に、前記制御光と前記信号光が両方とも前記可飽和吸収体に入射するようにしたことを特徴とする。
(4)上記(3)記載の制御信号供給型非線形光デバイスは、一方の前記偏光ビームスプリッタを偏波保持スプリッタとし、該偏波保持スプリッタの入力端子を制御光用としたことを特徴とする。
(5)上記(4)記載の非線形光デバイスは、前記可飽和吸収体を偏波依存性を有する可飽和吸収体としたことを特徴とする。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか1項記載の非線形光デバイスは、
前記可飽和吸収体を可飽和吸収体導波路としたことを特徴とする。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか1項記載の非線形光デバイスは、光パルスが上記可飽和吸収体を通過する時間をTとし、光パルスの時間幅をΔtとするとき、T≦Δtとなるように構成したことを特徴とする。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか1項記載の非線形光デバイスは、光パルスが上記可飽和吸収体を通過する時間をTとし、可飽和吸収体の応答時間をΔTとするとき、T≦ΔTとなるように構成したことを特徴とする。
(9)雑音フィルタは、上記(1)乃至(8)のいずれか1項記載の非線形光デバイスを用い、前記可飽和吸収体の光強度の大きい光信号に比べて小さい光信号を透過しにくい性質を利用したことを特徴とする。
(10)光スイッチは、上記(1)乃至(8)のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、制御光パルスと信号光パルスとを所定のタイミングで同期して入射し、前記可飽和吸収体の動作により、制御光パルスと信号光パルスが時間的に重なるときにはトータルで大きな光強度となるので吸収係数が十分に小さくなり、信号光パルスが出力され、制御光が不在の時は、可飽和吸収体を通過する信号光だけでは吸収係数が小さくならないため大きな損失を受け、ほとんど出射されない性質を利用したことを特徴とする。
(11)光位相比較器は、上記(1)乃至(8)のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、前記可飽和吸収体の動作によって、2つの光パルス列が同じ繰り返し周波数で、同じタイミングで入射した際に、出力の平均光パワーが最大になり、周波数やタイミングがずれると平均パワーが低下する性質を利用したことを特徴とする。
(12)光時分割多重分離器は、上記(1)乃至(8)のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、光信号を2つに分岐する第1分岐器と、光クロック発生器と、該光クロック発生器の出力を2つに分岐する第2分岐器と、上記(11)記載の光位相比較器と、上記(10)記載の光スイッチを備え、
前記光クロック発生器と前記光位相比較器と前記第2分岐器によりフェーズロックトループを構成し、前記光スイッチで前記両分岐器の出力を入力し、入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光として、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように入射し、任意数のチャンネルの時分割多重光信号の1つのチャンネルのみを選択的に切り出すことを特徴とする。
(13)上記(12)記載の光時分割多重分離機は、前記第1分岐器と前記光スイッチとの間に遅延時間を可変できる遅延回路を介在し、該遅延時間を変化させて信号光と光クロックパルスのタイミングをずらして任意のチャンネルを選択することを特徴とする。
(14)上記(13)記載の光3R再生中継器は、前記光クロックの繰り返し周波数を、前記光信号のビットレートと等しくしたことを特徴とする。
図1の基本概念に加え、図7、図8に示すような構成も可能である。図7、図8の構成は、信号光と制御光がWDMカプラーを介して、両方とも共通の可飽和吸収体にそれぞれ同一直線偏光状態で入射する。(WDMカプラーとは、異なる波長の光を効率よく同一ファイバに結合する光部品である。)この構成では、ISBT導波路に信号光と制御光が入射するまでに異なるファイバを伝搬しているので、両者のファイバ中での非線形相互作用を受けにくいというメリットがある。ただし、制御光と信号光が所望のタイミングでISBT導波路に入射するように設計される必要がある。図8は、制御光が単一偏光である特別な場合で、制御光の入射側にPBSを設置する必要が無く、代わりに偏波保持スプリッタを用いている。
これらの発明では、可飽和吸収体材料としてISBT導波路を中心として説明してきたが、ISBT導波路に限らず偏波依存性を有する可飽和吸収体であればすべてに適用できる。
図5の光時分割多重(OTDM)分離器は、制御信号供給型非線形光デバイスを用い、光信号を2つに分岐する第1分岐器と、光クロック発生器と、該光クロック発生器の出力を2つに分岐する第2分岐器と、上記実施例3記載の光位相比較器と、上記実施例2記載の光スイッチを備え、
前記光クロック発生器と前記光位相比較器と前記第2分岐器によりフェーズロックトループを構成し、前記光スイッチで前記両分岐器の出力を入力し、入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光として、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように入射し、任意数のチャンネルの時分割多重光信号の1つのチャンネルのみを選択的に切り出すように構成する。前記第1分岐器と前記光スイッチとの間に遅延時間を可変できる遅延回路(「Δτ」と表示した)を介在する。光スイッチの出力側に必要に応じてBPF(帯域通過フィルタ)を設ける。
この実施例では、光スプリッタなどの光を分岐する部品を介して、光信号を2つに分岐し、その一方を、光信号と光信号のビットレートのN分の1の繰り返し周波数を有する光クロックとともに、第三の実施例に挙げた光位相比較器へ入射する。ここで得られた位相エラー信号を光クロックの周波数にフィードバックをかけることで、光信号と光クロックの同期(フェーズ・ロックト・ループ:PLL)が得られる。入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光として、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように、第二の実施例に挙げた光スイッチに入射する。これにより、NチャンネルOTDMされた光信号の一つのチャンネルのみを選択的に切り出すことができる(OTDM分離器)。なお、図中遅延回路の遅延量Δτを変化させて信号光と光クロックパルスのタイミングをずらすことによって、任意のチャンネルを選択することができる。
前記光クロック発生器と前記光位相比較器と前記第2分岐器によりフェーズロックトループを構成し、前記光スイッチで前記両分岐器の出力を入力し、入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光として、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように入射し、波形やタイミングが乱れた入射光信号が、整形されタイミング補正を受けるように構成する。前記第1分岐器と前記光スイッチとの間に遅延時間を可変できる遅延回路(「Δτ」と表示した)を介在する。光スイッチの出力側に必要に応じてBPF(帯域通過フィルタ)を設ける。
この実施例では、第四の実施例において、光クロックの繰り返し周波数を、光信号のビットレートと等しくしたものに相当する。すなわち、光スプリッタなどの光を分岐する部品を介して、光信号を2つに分岐し、その一方を、光信号のビットレートと同じ繰り返し周波数を有する光クロックとともに、第三の実施例に挙げた光位相比較器へ入射する。ここで得られた位相エラー信号を光クロックの周波数にフィードバックをかけることで、光信号と光クロックの同期(PLL)が得られる。入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光として、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように遅延Δτ(図中)を調整し、第二の実施例に挙げた光スイッチに入射する。これにより、純度の高い光クロックに光信号のデータがコピーされ、光信号は波形とタイミングを整えられて再生する(光3R再生:3Rとは、Re−amplify、re−shape、re−timeの頭文字をとったもの)。
2 可飽和吸収体
3 偏光ビームスプリッタ
4 光サーキュレータ
5 WDMカプラー
6 偏波無依存可飽和吸収デバイス
7 偏波保持WDMカプラー
8 偏波保持スプリッタ
9、14 スプリッタ
10 遅延回路
11 光位相比較器
12 光スイッチ
13 光クロック発生器
WDM 波長部分割多重
BPF 帯域通過フィルタ
PD 受光素子
Claims (14)
- 偏光ビームスプリッタと半導体量子井戸のサブバンド間遷移ISBTを応用した可飽和吸収体とを有し、入射光を分離する偏光ビームスプリッタの両端と偏光依存性を有する前記可飽和吸収体の両端を偏波保持ファイバと結合光学系でそれぞれ光路として結合し、前記偏光ビームスプリッタの両端から出力されるそれぞれの直線偏光が前記可飽和吸収体に対して両直線偏光とも同一の直線偏波モードに揃うように調整され、入射光が前記偏光ビームスプリッタで分離されてから前記可飽和吸収体に結合するまでの損失が、2つの経路同士で等しくなるように、前記偏波保持ファイバと前記可飽和吸収体の結合を調整し、前記偏光ビームスプリッタから前記可飽和吸収体導波路までの前記それぞれの光路の光路長を等しくなるように構成し、光パルスが入射すると、前記偏光ビームスプリッタで2つに分かれ、互いに逆方向から同時に前記可飽和吸収体へ到達するように構成され、前記可飽和吸収体の応答時間又は光パルスの時間幅のいずれか一方が、光パルスの前記可飽和吸収体の通過時間と同じかそれ以上であることを満たすように構成したことを特徴とする非線形光デバイス。
- 前記偏光ビームスプリッタに光サーキュレータ又はカプラーを設け、該光サーキュレータ又はカプラーを介して光を入射および出射するようにしたことを特徴とする請求項1記載の非線形光デバイス。
- 請求項1又は2記載の非線形光デバイス2つを前記可飽和吸収体を共通にしてカプラー又はWDMカプラーを介して連結し、一方の前記偏光ビームスプリッタの入力端子を制御光用とし、他方の前記偏光ビームスプリッタの入力端子を信号光用とすると供に、前記制御光と前記信号光が両方とも前記可飽和吸収体に入射するようにしたことを特徴とする制御信号供給型非線形光デバイス。
- 一方の前記偏光ビームスプリッタを偏波保持スプリッタとし、該偏波保持スプリッタの入力端子を制御光用としたことを特徴とする請求項3記載の制御信号供給型非線形光デバイス。
- 前記可飽和吸収体を、偏波依存性を有する可飽和吸収体としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の非線形光デバイス。
- 前記可飽和吸収体を可飽和吸収体導波路としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれ
か1項記載の非線形光デバイス。 - 光パルスが上記可飽和吸収体を通過する時間をTとし、光パルスの時間幅をΔtとするとき、T≦Δtとなるように構成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の非線形光デバイス。
- 光パルスが上記可飽和吸収体を通過する時間をTとし、可飽和吸収体の応答時間をΔTとするとき、T≦ΔTとなるように構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の非線形光デバイス。
- 請求項1乃至8のいずれか1項記載の非線形光デバイスを用い、前記可飽和吸収体の光強度の大きい光信号に比べて小さい光信号を透過しにくい性質を利用したことを特徴とする雑音フィルタ。
- 請求項1乃至8のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、制御光パルスと信号光パルスとを所定のタイミングで同期して入射し、前記可飽和吸収体の動作により、制御光パルスと信号光パルスが時間的に重なるときにはトータルで大きな光強度となるので吸収係数が十分に小さくなり、信号光パルスが出力され、制御光が不在の時は、可飽和吸収体を通過する信号光だけでは吸収係数が小さくならないため大きな損失を受け、ほとんど出射されない性質を利用したことを特徴とする光スイッチ。
- 請求項1乃至8のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、前記可飽和吸収体の動作によって、2つの光パルス列が同じ繰り返し周波数で、同じタイミングで入射した際に、出力の平均光パワーが最大になり、周波数やタイミングがずれると平均パワーが低下する性質を利用したことを特徴とする光位相比較器。
- 請求項1乃至8のいずれか1項記載の制御信号供給型非線形光デバイスを用い、光信号を2つに分岐する第1分岐器と、光クロック発生器と、該光クロック発生器の出力を2つに分岐する第2分岐器と、請求項11記載の光位相比較器と、請求項10記載の光スイッチを備え、
前記光クロック発生器と前記光位相比較器と前記第2分岐器によりフェーズロックトループを構成し、前記光スイッチで前記両分岐器の出力を入力し、入射時に分岐したもう一方の光信号を制御光とし、同期した光クロックを被制御光として、両者が時間的に重なるように入射し、任意数のチャンネルの時分割多重光信号の1つのチャンネルのみを選択的に切り出すことを特徴とする光時分割多重分離器。 - 前記第1分岐器と前記光スイッチとの間に遅延時間を可変できる遅延回路を介在し、該遅延時間を変化させて信号光と光クロックパルスのタイミングをずらして任意のチャンネルを選択することを特徴とする請求項12記載の光時分割多重分離機。
- 前記光クロックの繰り返し周波数を、前記光信号のビットレートと等しくしたことを特徴とする請求項13記載の光3R再生中継器。
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