JP4797243B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まず、難燃性、高温保管特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、主にエポキシ樹脂組成物で封止されている。これらのエポキシ樹脂組成物中には、難燃性を付与するためにハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物が配合されている。ところが、環境・衛生の点からハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を使用しないで、難燃性に優れたエポキシ樹脂組成物の開発が求められている。
又ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含むエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を高温下で保管した場合、これらの難燃剤成分から熱分解したハロゲン化物が遊離し、半導体素子の接合部を腐食し、半導体装置の信頼性を損なうことが知られており、難燃剤としてハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物を使用しなくても難燃グレードがUL−94のV−0を達成できるエポキシ樹脂組成物が要求されている。
【0003】
このように、半導体装置を高温下(例えば、185℃等)に保管した後の半導体素子の接合部(ボンディングパッド部)の耐腐食性のことを高温保管特性といい、この高温保管特性を改善する手法としては、五酸化二アンチモンを使用する方法(特開昭55−146950号公報)や、酸化アンチモンと有機ホスフィンとを組み合わせる方法(特開昭61−53321号公報)等が提案され、効果が確認されているが、最近の半導体装置に対する高温保管特性の高い要求レベルに対して、エポキシ樹脂組成物の種類によっては不満足なものもある。
又難燃剤として赤燐系難燃剤が提案されており、多量に添加することにより難燃グレードV−0を達成でき、高温保管特性も問題ないが、副生成物の燐酸イオンが多量に含まれる場合には耐湿信頼性、成形性、耐半田クラック性が低下するという問題がある。
前記欠点を改良した技術として、特定の金属水酸化物の使用或いは特定の金属水酸化物と特定の金属酸化物の複合化金属水酸化物を用いることにより、難燃性と耐湿信頼性を解決する提案(特開平10−251486号公報、特開平11−11945号公報等)がされているが、十分な難燃性を発現させるためには、多量の添加を必要とする。難燃剤を多量添加するため、成形性、耐半田クラック性の低下を引きおこす問題がある。更に難燃剤の多量添加による成形性を改善すべく金属水和物の粒度を特定の範囲に限定した提案(特開2000−109647号公報)がされているが成形性、耐湿信頼性を、より向上させるため難燃剤としての添加量を極力抑えることのできる難燃剤が必要である。
即ち、難燃性を維持し、成形性、高温保管特性、耐湿信頼性及び耐半田クラック性に優れ、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を使用しないエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含まず成形性、難燃性、高温保管特性、耐湿信頼性及び耐半田クラック性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)水酸化アルミニウムを除く無機充填材、(E)水酸化アルミニウムを必須成分とし、該水酸化アルミニウムが平均粒径0.5〜5μm、最大粒径100μm以下であり、かつ粒径10μm以下が90重量%以上、5μm以下が40重量%以上、1μm以下が50重量%以下であり、比表面積が0.2〜20m 2 /g、真円度が0.4〜1であり、該水酸化アルミニウム及び該無機充填材との合計配合量が全エポキシ樹脂組成物中に84〜95重量%であり、該水酸化アルミニウムの配合量が全エポキシ樹脂組成物中に3〜10重量%であり、
ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物及び酸化鉄を含まないことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
(2)第(1)項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格又はジフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0007】
本発明に用いるフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格又はジフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。これらの内では特に、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が好ましい。
これらの配合量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3が好ましい。
【0008】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0009】
本発明に用いる無機充填材としては、一般に封止材料に使用されているものを使用することができる。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。無機充填材の配合量としては、水酸化アルミニウム及び無機充填材との合計量が、成形性と耐半田クラック性のバランスから、全エポキシ樹脂組成物中に60〜95重量%含有することが好ましい。60重量%未満だと、吸水率の上昇に伴う耐半田クラック性が低下し、95重量%を越えると、ワイヤースィープ及びパッドシフト等の成形性の問題が生じ、好ましくない。
【0010】
本発明に用いる水酸化アルミニウムは、難燃剤として作用する。その難燃機構は公知であるが、実際に有効な難燃性を発現させるためには多量の添加が必要である。その結果として流動性の低下がある。本発明では、水酸化アルミニウムの粒径を微細にし、難燃性を向上させることで添加量を低減することができた。又粒径を細かくすることにより流動性の低下が懸念されるが、形状をより真球に近づけ、粒度分布を調整することにより流動性の低下を防止することができた。
水酸化アルミニウムは、平均粒径0.5〜14μm、最大粒径100μm以下であり、かつ粒径10μm以下が30重量%以上、5μm以下が5重量%以上、1μm以下が50重量%以下である。更に好ましくは、平均粒径0.5〜5μm、最大粒径100μm以下であり、かつ粒径10μm以下が90重量%以上、5μm以下が40重量%以上、1μm以下が50重量%以下のものが望ましい。
平均粒径が0.5μm未満、もしくは粒径が1μm以下のものが50重量%を越えると、細かい粒径のものが多くなり過ぎ流動性が低下し、更に硬化物の抽出時の不純物量が増加するために耐湿信頼性の低下が生じるとともに、水酸化アルミニウムの脱水温度が低下し、耐半田クラック性が低下する。平均粒径が14μmを越え、もしくは10μm以下が30重量%未満、5μm以下のものが5重量%未満であると十分な難燃性が得られない。本発明の粒径については、レーザー回折法で測定した値を用いている。平均粒径は、50重量%の累積になった時の粒径である。又比表面積としては、0.2〜20m2/gが好ましく、20m2/gを越えると硬化性が低下するおそれがあり好ましくない。比表面積は、BET法で窒素ガスを用いて測定したものである。
【0011】
次に粒形については、粒子の形状が球形に近いほど流動性向上の点で望ましい。下記式で示される真円度が0.4〜1であることが望ましく、真円度が0.4未満だと流動性が低下するおそれがあり好ましくない。
真円度=α/α’=α・4π/(PM)2
ここで、αは、真円度算出の対象となる対象物の投影像の実面積を示す。α’は、上記の投影像の周囲の長さ(=PM)とした場合、周囲の長さがPMとなる真円の面積を指す。従って、真円度が1の場合、その対象物は真円である。そして対象物に凸凹があると、真円度は低下する。真円度の測定には、東亜医用電子(株)製・FPIA−1000を用いた。
本発明に用いる水酸化アルミニウムの配合量としては、全エポキシ樹脂組成物中に0.1〜20重量%が好ましく、更に好ましくは3〜10重量%が望ましい。0.1重量%未満だと難燃性が不足し、20重量%を越えると耐半田クラック性、成形性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてシランカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、及びシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤等の種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
又本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0013】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
配合割合は重量部とする。
を常温でスーパーミキサーを用いて混合し、70〜100℃でロール混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0014】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間120秒で測定した。
硬化性:(株)オリエンテック・製、JSRキュラストメーターIVPSを用いて、ダイスの直径35mm、振幅角1°、成形温度175℃、成形開始90秒後のトルク値を測定した。数値が小さいほど硬化が遅い。単位はkgf・cm。
難燃性:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間120秒で試験片(127mm×12.7mm×3.2mm)を成形し、後硬化として175℃、8時間処理した後、UL−94垂直法に準じてΣF、Fmaxを測定し、難燃性を判定した。
耐半田クラック性:80ピンQFP(パッケージサイズは14mm×20mm、厚み2.7mm、シリコンチップのサイズは、9.0mm×9.0mm、リードフレームは42アロイ製)を、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分でトランスファー成形し、175℃、8時間で後硬化した。85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後240℃の半田槽に10秒間浸漬した。顕微鏡で観察し、クラック発生率[(外部クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を%で表示した。又チップとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率[(剥離面積)/(チップ面積)×100]を%で表示した。
高温保管特性:模擬素子を25μm径の金線で配線した16ピンSOPを、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分でトランスファー成形し、175℃、8時間で後硬化した。185℃の恒温槽で処理し、一定時間毎にピン間の抵抗値を測定した。初期の抵抗値から10%以上抵抗値が増大したパッケージ数が、15個中8個以上になった恒温槽処理時間を高温保管特性として表示した。この時間が長いと、高温安定性に優れていることを示す。単位は時間。
耐湿信頼性:低圧トランスファー成形機を用いて成形温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間120秒で16pDIP(チップサイズ3.0mm×3.5mm)を成形し、後硬化として175℃、8時間処理した後、20Vのバイアスをかけながら125℃、200時間の処理を行った。配線間の導通を確認し、導通がなくなった状態を不良と判定した。15個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0015】
実施例2、参考例3、比較例1〜4
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
なお、実施例、参考例、比較例に用いた水酸化アルミニウムの特性は、表1に示す。
比較例4に用いた臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、365g/eq.である。
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】
本発明に従うと、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含まず、成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は難燃性、高温保管特性、耐湿信頼性及び耐半田クラック性に優れている。
Claims (2)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)水酸化アルミニウムを除く無機充填材、(E)水酸化アルミニウムを必須成分とし、該水酸化アルミニウムが平均粒径0.5〜5μm、最大粒径100μm以下であり、かつ粒径10μm以下が90重量%以上、5μm以下が40重量%以上、1μm以下が50重量%以下であり、比表面積が0.2〜20m 2 /g、真円度が0.4〜1であり、該水酸化アルミニウム及び該無機充填材との合計配合量が全エポキシ樹脂組成物中に84〜95重量%であり、該水酸化アルミニウムの配合量が全エポキシ樹脂組成物中に3〜10重量%であり、
ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物及び酸化鉄を含まないことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 - 請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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