JP4796701B2 - 生分解性造花を用いた造花型加湿用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリ乳酸で保形性を付与した生分解性造花を用いた造花型加湿用具に関し、良好な加湿性能を有するとともに、優れた生分解性により環境に負荷をかけることなく土壌中に簡便に廃棄できるものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
湿気や水分を利用した造花の従来技術としては、下記のものなどがある。
(1)特開平10−140412号公報
人造の花の茎を中空として水の流入路を形成し、当該流入路を萼を介して花冠部に連結し、茎内への水分の流入、並びに水分の乾燥若しくは流出を駆動源として開花と閉花の動的変化を行わせるように構成した造花が開示されている。
【0003】
(2)特開平9−105012号公報
松の実を横に切って塩化カルシウムを含浸し、松ぼっくりの上部の作動部に通気性布を接着して連動可能にし、作動部分の上の通気性布に花冠部を付設して、通気性布で松ぼっくりを囲繞し、通気性布を茎部の上部で固定することにより、実内の湿気の増減や日光や風により、花が開いたり萎んだりするように構成した自動乾湿運動造花が開示されている。
【0004】
(3)特開2000−54214号公報
針金の周囲に花弁用の染料を仕込んだ内部吸水物質を巻き付け、花弁と中芯を一体化し、その周囲に防水物質、葉と茎の染料を仕込んだ外部吸水物質を順に巻き付け、水を容器に注ぐことにより、毛細管現象とクロマトグラフィー効果を利用して、花弁の色を変化させる色変わり造花が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は湿気や水分を利用した造花ではあるが、いずれも花冠の開花と閉花の動的変化や、花冠部の色調の変化のような視覚的鑑賞を目的としたものであって、造花に視覚効果以外の付加価値を持たせることを目的としたものではない。
また、従来の造花は耐久性付与の見地から合成樹脂などを材質として常用しているため、そのまま土壌中に廃棄することはできず、産業廃棄物となってゴミの増大につながり、環境保護の見地から好ましくない。しかも、塩化ビニルのような塩素含有樹脂を材質とするものでは、燃焼させた場合にダイオキシン類が発生する危険もある。
【0006】
一般に、冬場や空調の効いた屋内などでは、空気が乾燥しがちであり、膚面がかさついたり、膚の潤いが不足ぎみになり易い。
本発明は、造花自体に視覚効果だけではなく、周辺空間への良好な加湿効果を併せ持たせるとともに、土壌への廃棄の簡便性を兼備させることを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、造花の材質として天然繊維製の紙又は不織布を選択することにより、これらを水に浸した場合の吸水作用による周辺空間への放湿能力と、これらを材質とする造花に対する保形性の付与とを鋭意研究した結果、これらの材質にポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布を積層することで、優れた放湿能力と良好な保形性の両方を併せて達成できること、ポリ乳酸の優れた生分解性により造花全体をそのまま簡便に廃棄できることを見い出すとともに、ポリ乳酸繊維と天然繊維の混合不織布の単層体を造花に形成した場合にも、同様に所期の目的を達成できることを突き止め、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明1は、(a)天然繊維を材質とする紙又は不織布にポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布を積層して生分解性積層体を構成し、又は、
(b)ポリ乳酸繊維と天然繊維より製造した不織布から生分解性単層体を構成し、
上記(a)〜(b)の生分解性積層体又は単層体を展開形状の花冠部又は葉部から成る造花状に形成して生分解性造花となし、
上記生分解性造花を補水容器の内部空間に臨ませて、補水容器の内部空間に収容した水を生分解性造花を介して周辺空間に放湿可能に構成したことを特徴とする造花型加湿用具である。
【0009】
本発明2は、上記本発明1において、ポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布の両面に天然繊維を材質とする紙又は不織布を夫々積層して3層の生分解性積層体を構成することを特徴とする造花型加湿用具である。
【0010】
本発明3は、上記本発明1又は2において、芳香剤を水溶性包接皮膜で被覆して芳香性インクを製造し、当該芳香性インクを生分解性造花の花冠部又は葉部に塗膜し、生分解性造花に浸透した水分により水溶性包接皮膜を溶解可能に構成することを特徴とする造花型加湿用具である。
【0011】
本発明4は、上記本発明1又は2において、補水容器に収容した水に芳香剤を溶解することを特徴とする造花型加湿用具である。
【0012】
本発明5は、上記本発明1又は2において、生分解性造花の花冠部又は葉部に消臭用吸着剤を塗膜することを特徴とする造花型加湿用具である。
【0013】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、天然繊維不織布がコットン不織布であることを特徴とする造花型加湿用具である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、天然繊維を材質とする紙又は不織布とポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布との積層体、或はポリ乳酸繊維と天然繊維の混合不織布の単層体を、少なくとも展開形状の花冠部又は葉部を有する造花状に形成して生分解性造花となし、この生分解性造花を補水容器と組み合わせた造花型加湿用具である。
【0017】
上記ポリ乳酸は、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、或は、L−乳酸とポリD−乳酸の共重合体であり、乳酸から直接に脱水重縮合し、或は、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトンなどを開環重合し、又はその他の公知の方式で製造することができ、分子量は特に限定されるものではない。
また、本発明のポリ乳酸は、乳酸とグリコール酸、ヒドロキシ酪酸などの他のオキシカルボン酸との共重合体も含む概念である。
ポリ乳酸フィルムは公知の方式でフィルムに製造したものであり、ポリ乳酸の不織布は、上記ポリ乳酸の単一繊維及び/又は長繊維をスパンボンド、サーマルボンド、メルトブロー、水流絡合などの公知の方式で不織布に製造したものである。
ポリ乳酸フィルムの市販品にはエコロージュ(三菱樹脂社製)などがあり、同じくポリ乳酸不織布にはテラマック(ユニチカ社製)などがある。
【0018】
本発明の造花の材質としては、下記の積層体(a)か、単層体(b)を使用する。
(a)天然繊維を材質とする紙又は不織布にポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布をラミネートした生分解性積層体
(b)ポリ乳酸繊維と天然繊維を混合した不織布から成る生分解性単層体
天然繊維を材質とする紙又は不織布にポリ乳酸を積層するのは、生分解性積層体に保形性を付与するためである。特に、天然繊維製の不織布は紙に比べて腰が弱いため、ポリ乳酸の使用は保形性の付与に重要である。また、保形性を付与する点では、ポリ乳酸フィルムの方がポリ乳酸不織布より有効である。
上記天然繊維は、コットン、カポック、亜麻、大麻、黄麻、ラミー、マニラ麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、羊毛、モヘヤ、絹などの植物性、或は動物性の任意の繊維をいい、生分解性保持の見地から合成繊維は排除されるが、レーヨン、アセテートなどの再生繊維を排除するものではない。
天然繊維を材質とする紙は、公知の湿式抄造法によって製造される。
天然繊維の不織布は、ポリ乳酸不織布と同様に、公知の方式で製造される。
【0019】
本発明1の造花型加湿用具を作成する際に中心となる生分解性造花は、(a)生分解性積層体、(b)生分解性単層体のいずれから構成することもできる。
上記生分解性積層体は、例えば、天然繊維の不織布上にポリ乳酸フィルム又は不織布を載置し、適正な温度と圧力条件で熱プレス処理を行って積層体に成形される。
紙とポリ乳酸フィルム又は不織布を積層する場合も基本的にこれと同様であるが、天然起源の結合剤を介して両者を貼着しても差し支えない。上記結合剤としては、各種デキストリン、プルラン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガムなどの天然ガム類、アルギン酸塩、マンナン、ペクチン、ゼラチンなどの水溶性或はアルコール溶解性の糊料などが好ましい。
【0020】
この場合、上記生分解性積層体(a)は、紙/ポリ乳酸フィルム、天然繊維不織布/ポリ乳酸フィルムの2層に限らず、本発明2に示すように、紙/ポリ乳酸フィルム/紙、紙/ポリ乳酸フィルム/天然繊維不織布、天然繊維不織布/ポリ乳酸フィルム/天然繊維不織布の3層、或はそれ以上の層を有する積層体であっても良い。この場合、上記ポリ乳酸フィルムをポリ乳酸不織布に替えても良い。
ちなみに、単位面積当たりの放湿性能を向上する見地からは、後述の試験例に示すように、紙より不織布の方が有利であり、本発明6に示すように、天然繊維不織布の中ではコットン不織布が有利である。従って、生分解性積層体としては、コットン不織布/ポリ乳酸フィルム/コットン不織布が好ましい。コットン不織布の市販品としては、オイコス(日清紡績社製)などがある。
【0021】
本発明1の生分解性造花が生分解性単層体(b)から構成される場合、当該単層体とはポリ乳酸繊維と天然繊維とを混合した不織布の単層体を意味する。加湿用具として使用する場合、水の吸上げ能力を充分に確保する目的で、ポリ乳酸繊維単独ではなく、ポリ乳酸繊維に上記天然繊維を混合して不織布を製造するのである。
当該混合不織布の製法は前述した通りである。また、当該混合不織布にアイロン掛けなどの表面加熱を施すと、保形性の強化に有利である。
また、ポリ乳酸が良好なヒートシール性を具備することから、混合不織布の単層体や、ポリ乳酸フィルム(又は不織布)と天然繊維製の紙(又は不織布)との2層体で造花を形成する場合、単層体又は積層体のポリ乳酸同士の熱融着により、複雑な造形も可能になるため、造形加工性に優れる。
良好な加湿適性を具備させる見地から、ポリ乳酸フィルム、天然繊維製の紙又は不織布、混合不織布の坪量は、夫々10〜50g/m2程度が好ましい。
【0022】
上記生分解性積層体又は単層体を造花に形成する際には、表面積を増大して放湿性能を向上させる見地から、展開形状の花冠部又は葉部を有することが重要である。例えば、花冠部を形成する際には、バラやボタンなどのような多数の花弁が複雑に集合した大輪のものが好ましい。
また、造花の形成に際して、生分解性積層体又は単層体のみにより、茎部を花冠部や葉部と一体形成して、水を吸い上げる機能を担わせても良いことはいうまでもない。但し、吸水能力に優れた多孔性又はスポンジ性の棒状体で茎部だけを別途形成し、この茎部を本発明の積層体又は単層体で形成した花冠部や葉部に連結して造花全体を製造しても良い。
以上のように、花冠部や葉部を広く大きく展開するほど、造花の表面積が増大して放湿性能の向上に有効に寄与することができる。
【0023】
本発明は、上記生分解性造花と補水容器を組み合わせた造花型加湿用具であり、この造花の茎部を補水容器の内部空間に臨ませて、補水容器の内部空間に収容した水を造花を介して周辺空間に放湿可能に構成したものである。
即ち、補水容器の水分は毛細管現象により茎部から花冠部又は葉部に移動し、表面積の大きい花冠部又は葉部から放湿され、周辺空間を加湿するのである。
【0024】
本発明3又は4は、加湿性能に加えて、芳香性能を兼備した造花型加湿用具である。
即ち、上記本発明3は、芳香剤を水溶性包接皮膜で被覆して芳香性インクを上記生分解性造花の花冠部又は葉部に塗膜した加湿用具であり、補水容器から生分解性造花に吸い上げた水分により水溶性包接皮膜が溶解し、皮膜内の芳香剤が外気に接触して芳香を周辺空間に放出するようにしたものである。
尚、芳香性インクを調製する際には、可塑剤、色素などの各種添加剤を溶剤に混合し、公知の方式で製造するのは勿論である。塗膜処理は、塗布、含浸、スプレーによる噴霧などを問わない。
上記芳香剤としては、ジャスミン、ローズ、ラベンダー、ハーブ、レモン、キンモクセイ、フローラルなどが挙げられる。
上記包接皮膜の材質としては、シクロデキストリン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。
一方、上記本発明4は、芳香性インクを生分解性造花の花冠部又は葉部に塗膜する替わりに、補水容器に収容した水に上記芳香剤を直接的に溶解して、補水容器から芳香を放出可能にした加湿用具である。
【0025】
本発明5は、前記芳香性インクに替えて、生分解性造花の花冠部又は葉部に消臭用吸着剤を塗膜した造花型加湿用具である。
上記消臭用吸着剤としては、竹抽出液等の植物性消臭抽出物、或は、活性炭、ゼオライト等の多孔性物質などが挙げられ、上記竹抽出液などは造花に含浸し、多孔性物質などは分散液の形態で塗布するのが好ましい。
【0026】
【発明の効果】
(1)ポリ乳酸で保形した展開形状の花冠部又は葉部により造花の表面積を増大できるため、造花の放湿面積を拡大して、水蒸気の放散を有効に促進できる。
このため、本発明の造花型加湿用具は、造花による視覚上の審美的効果に加えて、冬場や空調の効いた屋内空間などを加湿して、空気の乾燥を有効に阻止し、膚面の潤い不足などを防止して、周辺空間を健康的な湿度状態に保持できる。
また、インフルエンザ・ウイルスは湿度が高いほど活動が弱まるため、本発明の加湿用具は風邪の防止にも有効である。
この場合、後述の試験例に示すように、生分解性積層体などに不織布を使用すると、紙を使用するより放湿効率が向上するため、周辺空間の加湿効果への寄与が増大する。
【0027】
(2)本発明の加湿用具に用いる造花は、生分解性に優れたポリ乳酸の繊維と天然繊維から得られた混合不織布の単層体か、当該ポリ乳酸フィルム又は不織布と天然繊維製の紙又は不織布との積層体を材質とするため、迅速に土壌中で分解し、そのまま生ゴミとして簡便に廃棄でき、もって環境への負荷を円滑に軽減できる。
従って、合成樹脂製の従来の造花のように、産業廃棄物となってゴミの増大につながることはなく、環境保全に有益である。
【0028】
(3)本発明の生分解性造花はヒートシール性に優れたポリ乳酸を材質とするため、展開形状の花冠部や葉部を形成する場合、ポリ乳酸同士を熱融着して複雑な造形も可能になり、造形加工性に優れる。
【0029】
(4)本発明3又は4では、造花による審美的効果と加湿効果に加えて、さらにハーブなどの芳香剤による芳香放散効果があるため、アロマテラピー、精神の癒しなどに寄与し、心身の健康保持に有効である。
また、本発明5では、造花に塗膜した消臭用吸着剤の作用により、屋内の煙草などの臭い、或は、建材から発生するホルムアルデヒドなどの揮発性物質を吸着して、周辺空間を清浄に保持することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の生分解性造花の製造実施例、当該生分解性造花を用いた加湿用具による加湿試験例、造花の生分解性試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0031】
《生分解性造花の製造実施例》
下記の実施例1〜2のうち、実施例1は不織布/ポリ乳酸フィルム/不織布の3層体で造花を形成した例、実施例2は紙/ポリ乳酸フィルム/紙の例である。
(1)実施例1
膜厚15μmのポリ乳酸フィルム(エコロージュSEP15;三菱樹脂社製)を中芯として、その表・裏両面に坪量30g/m2のコットン不織布(オイコス;日清紡績社製)を夫々熱プレスして積層した後、この3層の生分解性積層体を用いてバラを模した展開形状の花冠部と茎部が一体になった生分解性造花を造形加工した。
この場合、花弁と茎部を形成するための上記積層体10枚を用意し、展開形状に造形した花弁10枚を集合させて花冠部を形成するとともに、花冠部以外の残部を絞り込んで茎部と成して造花全体を形成したものであり、造花の合計の展開表面積は0.3m2であった。
【0032】
(2)実施例2
上記実施例1を基本としながら、コットン不織布の替わりに坪量23g/m2の麻紙(アバカ紙;大福製紙社製)を使用して、麻紙/ポリ乳酸フィルム/麻紙の3層の積層体を製造し、この積層体から実施例1と同様の条件で生分解性造花を造形した。
従って、造花の展開表面積は実施例1と同様である。
【0033】
そこで、上記実施例1のコットン不織布/ポリ乳酸フィルム/コットン不織布の3層からなる生分解性造花を補水容器と組み合わせて造花型加湿用具を構成し、この加湿用具を使用して加湿試験を行った。
《造花型加湿用具による加湿試験例》
(1)湿度変化による加湿試験例
500mlの水を充填した合成樹脂製の補水容器に実施例1の生分解性造花の茎部を浸して加湿用具とした。一方、外気の湿度変化を受ける所定の室内に容積0.85m3の試験庫を設置し、上記加湿用具をこの試験庫内に2個配置し、雨天〜晴天の間で室内の湿度条件が70%〜40%の範囲で変化した際の、試験庫内の湿度の経時変化を120分経過時点まで測定した。
また、500mlの水を入れた補水容器のみを2個試験庫に配置して、比較例とした。
尚、上記試験庫は試験前には室内と連通されて同じ湿度状態に保持されているが、試験開始と同時に室内から遮断して密閉状態に保持した。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
上記試験結果によると、比較例では、室内が低湿度(45%)の場合にはそれなりに試験庫内の加湿効果が認められたが、高湿度(60〜70%)になると試験庫内の湿度は室内と同じか、逆に低下してしまい、加湿効果はなかった。
これに対して、実施例1の造花をセットした加湿用具を用いた場合、室内の湿度が高湿度〜低湿度のいずれの場合にも、試験庫内は室内より充分に加湿されており、特に、室内が低湿度であるほど室内の湿度に対する試験庫内の湿度の増加率が増大し、加湿効果が顕著であることが判明した。従って、冬場やエアコンなどの稼働で空気が乾燥している部屋では、とりわけ本発明の加湿用具は有効であることが明らかになった。
尚、実施例1の場合においても、試験開始から20分程度までは加湿効果が弱い傾向にあるが、これは、補水容器の水が毛細管現象で花冠部まで吸い上げられるまでの、いわば放湿の立ち上げに時間を要するためと推定できる。この点は、以下の(2)〜(4)の加湿試験例でも同様である。
【0038】
(2)造花の表面積の変化による加湿試験例
上記(1)の加湿試験例を基本としながら、試験庫に配置する加湿用具の個数を1個〜2個に変化させて、試験庫内の湿度の経時変化を120分経過時点まで測定した。また、比較例は、補水容器のみを実施例1と同じ個数だけ試験庫に配置したものである。
尚、当該試験の際の室内の湿度は60%であった。
【0039】
【0040】
上記試験結果によると、比較例では、補水容器が1個、2個の場合を問わず、加湿効果がないのに対して、実施例1の造花を用いた場合には、1個〜2個共に明確な加湿効果を奏するとともに、加湿用具を2個用いた方が1個の場合より放湿面積が増大するために加湿効果が大きかった。
しかしながら、加湿用具を1個だけ用いた場合でも、その加湿による試験庫内の湿度水準は室内湿度の60%よりはかなり高めの数値を示し、充分な加湿効果を示すことが判明した。
【0041】
(3)造花の材質を変化させた加湿試験例
上記実施例1と実施例2の生分解性造花を補水容器と組み合わせて2種類の加湿用具を準備し、上記(1)の加湿試験例を基本としながら、試験庫に配置する加湿用具の種類を変化させて、数試験庫内の湿度の経時変化を120分経過時点まで測定した。また、比較例は、補水容器のみを試験庫に配置したものである。
尚、試験庫には実施例1〜2と比較例の各加湿用具を2個づつ配置した。また、当該試験の際の室内の湿度は45%であった。
【0042】
また、120分経過時点での補水容器内の水の減少量(即ち、蒸発量)は下記の通りであった。
【0043】
上記試験結果によると、比較例の加湿効果は低水準であった。
実施例2は略40分経過時点から加湿効果が増大し、実施例1は略20分経過時点から以後、迅速且つ顕著な加湿効果を示し、その加湿水準は実施例2より高かった。但し、120分経過時点では、実施例1と実施例2での試験庫内の湿度水準はほとんど変わりなかった。
即ち、実施例1は実施例2より加湿効果が大きく、且つ、放湿速度が速いことが判明し、加湿効果及び速度の点ではコットン不織布の方が麻紙より有効であることが明らかになった。これは、コットンと麻紙の材質の差と、不織布と紙という物理的構造の差の両方に起因するものと推定される。
これらの点は水の上記蒸発量からも裏付けられる。
【0044】
(4)室内放散による加湿試験例
前記各種試験例は試験庫という限られた容積の密閉空間での加湿能力を観察したものであるが、本試験例では、実際の建物の室内での加湿能力(即ち、水蒸気の放散度合)を観察したものである。
即ち、前記(1)の試験例を基本として、8坪程度の広さの部屋に上記実施例1を用いた加湿用具を2個配置して、その補水容器の合計水量を1000mlとしたうえで、24時間経過時点での加湿用具からの水蒸気の放散量を測定した。 尚、当該試験に際しては、空調を効かせて部屋内の空気を対流させて、水蒸気の放散を促進した。
【0045】
その結果、室温が2℃〜21℃の範囲で変化し、室内湿度が45〜60%の範囲で変化した条件の下で、造花型加湿用具の水の減少量は317mlであった。前記(3)の加湿試験例では、比較例の水の蒸発量は2時間で0.5g(24時間換算では6ml程度)であったことから、この(3)の試験例が室内の湿度が45%である条件下の試験庫内での試験であることを勘案しても、本試験結果の317mlという蒸発量に鑑みれば、本発明の加湿用具を2個用いるだけで、造花から部屋全体に充分な水蒸気が放散されて、部屋を好適な加湿空間に保持できることが判明した。
【0046】
《造花の生分解性試験例》
そこで、前記実施例1の造花の基本となるコットン不織布/ポリ乳酸フィルム/コットン不織布の3層の積層体(厚さは0.18mm)を5cm×5cmの矩形の試料として、市販の家庭用コンポスト(生ゴミイーター;松下電工社製)内に載置して、生分解性の可否、或はその分解速度を目視観察した。
その結果、上記積層体の全体は19日程度で生分解されて完全に消失してしまった。
これにより、上記積層体の迅速な生分解性能が確認され、この積層体を廃棄しても環境に無用の負荷を掛ける恐れは全くなく、もって、本発明の造花が良好な環境保全能を具備することが判明した。
Claims (6)
- (a)天然繊維を材質とする紙又は不織布にポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布を積層して生分解性積層体を構成し、又は、
(b)ポリ乳酸繊維と天然繊維より製造した不織布から生分解性単層体を構成し、
上記(a)〜(b)の生分解性積層体又は単層体を展開形状の花冠部又は葉部から成る造花状に形成して生分解性造花となし、
上記生分解性造花を補水容器の内部空間に臨ませて、補水容器の内部空間に収容した水を生分解性造花を介して周辺空間に放湿可能に構成したことを特徴とする造花型加湿用具。 - ポリ乳酸フィルム又はポリ乳酸不織布の両面に天然繊維を材質とする紙又は不織布を夫々積層して3層の生分解性積層体を構成することを特徴とする請求項1に記載の造花型加湿用具。
- 芳香剤を水溶性包接皮膜で被覆して芳香性インクを製造し、当該芳香性インクを生分解性造花の花冠部又は葉部に塗膜し、生分解性造花に浸透した水分により水溶性包接皮膜を溶解可能に構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の造花型加湿用具。
- 補水容器に収容した水に芳香剤を溶解することを特徴とする請求項1又は2に記載の造花型加湿用具。
- 生分解性造花の花冠部又は葉部に消臭用吸着剤を塗膜することを特徴とする請求項1又は2に記載の造花型加湿用具。
- 天然繊維不織布がコットン不織布であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の造花型加湿用具。
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