JP4793552B2 - 剥離剤組成物 - Google Patents

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本発明は、自動車部品、電機部品等に使用されている液状シール剤、接着剤等の硬化物を容易にかつ確実に除去でき、また除去したあと洗浄工程をとらなくてもシール剤や接着剤を再塗布することができる剥離剤組成物に関するものである。
従来から自動車部品や電機部品などにおいてシール剤や接着剤などの硬化性樹脂により部品を固着することが行われてきた。自動車部品を例にして詳しく述べてみると、例えば、エンジンのシリンダーブロックとオイルパンの間にはエンジンオイルが漏洩しないように液状シール剤が使用される。液状シール剤は硬化するとゴム状になり、被着体であるシリンダーブロックとオイルパンのフランジ同士を強固に接着する。エンジンの修理や点検の際には、整備工場等の現場においてシリンダーブロックとオイルパンを解体する必要があるが、エンジンは作動時に500〜1000℃の高い温度に加熱されるため、液状シール剤は被シール部に硬く焼き付くことがある。また、近年においては液状シール剤自体の接着力が高くなり、また、ゴム物性が向上し強靱なものであるため、容易にこれを剥離することができない。
従来は例えば鋭利なナイフ状の器具でシール剤を削り落とすようなことも行われているがこの方法ではエンジンのシール面であるフランジに傷が付きやすく、再度エンジンを組み付けた場合にエンジンオイルの漏洩が発生する原因となる。つまり、シール剤を除去しないとシール面が平滑にならないためシール性が悪くなり、また、接着力が大幅に低下するため、古いシール剤の除去は必須の作業であった。このように、エンジン部品に限らず、あらゆるものにおいて分解して再使用する場合にはシール剤や接着剤などの硬化物を除去する必要があった。
シール剤の除去方法として前述したナイフの他、サンダーやブラストなどのように物理的に削り落とす方法が挙げられるがこれらが好ましくないのは前述のとおりである。そのため、有機溶剤を主成分とした剥離剤(リムーバー)を硬化物に塗布し硬化物に剥離剤成分を浸透させ体積膨潤させて柔らかくすることにより除去しやすくする方法が挙げられる。
剥離剤は剥離したい硬化物に塗布して、硬化物に十分浸透するまでしばらく放置し無ければならない。剥離したいワークの形状や、ワークを移動できない場合など、必ずしも剥離面が水平とは限らない。水平でない箇所に塗布した場合、剥離剤が流れたり、垂れたりするおそれがある。そうなると硬化物に十分浸透できないだけでなく、作業周辺を汚染したり、プラスチックなどの部品に付着して部品が溶けてしまったりなどのおそれがある。
そのため、剥離剤は流れたり垂れない程度の粘性、チクソトロピック性が必要であるが、粘性が高いと塗布時の作業性が悪くなたっり、硬化物への浸透性が悪くなる。特に、エアゾールで噴射することにより塗布するためには粘度が高すぎては噴射することができない。特にチクソ性を有する組成物をエアゾール化すると噴射量が一定化しなかったり、沈降が発生したりする、という問題を生じやすい。
剥離剤組成物に垂れ防止性を付与したものとして特許文献1がある。これは塩素系溶剤にアルコール類、メチルセルロースを添加するものである、メチルセルロースとアルコールを組み合わせることにより組成物を増粘させかつ剥離剤の揮散を抑え、持続性を高めるというものである。
特公昭63−21713号公報
しかしながら、塩素系溶剤は種々の法規制があり使用することができないものや、また、人体に対して毒性があるため使用することが好ましくないものが多い。塩素系溶剤を用いない場合、メチルセルロースで増粘させた組成物は粘度や垂れ防止性の調節が難しく、配合量の微妙な変化により大きくその物性が変化する。特に、調製直後としばらく経過したあとでの粘度、垂れ防止性が変化するため、製品としての品質にばらつきが生じてしまう。特にエアゾール化するとこれが顕著に現れるものであった。
また、剥離剤組成物を他の方法で増粘、垂れ防止性能を付与させると、その剥離剤を適用した物品にその成分が残存しやすく、単に拭き取りをしただけでは残存物質を除去できず、剥離剤組成物により硬化物を除去した後、さらに別の洗浄剤により剥離剤組成物成分を洗浄する工程が必要になるという欠点が生じる。硬化物を除去した箇所に当該成分が残存すると、接着剤やシール剤の接着性を著しく低下させてしまい、所望の性能を著しく低下させるおそれがあるため、除去後の洗浄工程は必須になってしまい非常に煩雑なものとなる。
よって、斜面や垂直面でも垂れ落ちないものであり、その粘度や流れ性が安定し、かつ剥離工程後の洗浄工程の必要がない剥離剤組成物が望まれていた。
そのため、本発明は上述の問題点を解決するため鋭意検討したものであり、上述の欠点を克服した剥離剤組成物を得るに至ったものである。
すなわち、本発明は、炭素数5〜8の脂環式炭化水素とヒドロキシプロピルセルロースを含むことを特徴とする剥離剤組成物を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の必須成分である炭素数5〜8の脂環式炭化水素は後述するヒドロキシプロピルセルロースと組み合わせることにより優れた垂れ防止性を達成することができる。この組み合わせの場合のみ比較的少量のヒドロキシプロピルセルロースの添加で垂れ防止性能を付与することができる。炭素数5〜8の脂環式炭化水素以外の有機溶剤は多数存在するが、本発明のこの組み合わせ以外では本発明の効果は達成できない。例えば、脂肪族炭化水素系の溶剤を使用した場合、炭素数5〜8の脂環式炭化水素とくらべヒドロキシプロピルセルロースの添加量を多くしないと垂れ防止性能が達成できない。添加量が多いと、残存物の存在量が増加する。また、芳香族系有機溶剤は毒性が高く、強い臭気を持つため好ましくないばかりでなく、垂れ防止性能や粘度の調節が困難である。その他、アルコール系やケトン系、エステル系、エーテル系などの溶剤も同様であり、すなわち、炭素数5〜8の脂環式炭化水素以外ではヒドロキシプロピルセルロースの添加量と有機溶剤の配合バランスにより粘度や垂れ防止性が大きく変化する。これは保存安定性が悪いことを意味する。すなわち、保存中に各種成分が揮散したり変質したりするとそれに伴い、粘度や垂れ防止性が変化する。よって、配合初期時に最適な性状に配合しても、保存中や使用時に所望の流れ防止性ではなくなるおそれがある。また、エアゾールに充填するのに製造自体がこんなになる場合もある。一方、炭素数5〜8の脂環式炭化水素を用いると、だいたいの配合量で一定の性状にすることができ、成分の変化に応じて正常が大きく変わることがない。
本発明で使用することができる(A)成分としては、炭素数5〜8の脂環式炭化水素であり、具体例としてはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、さらにこれらを含有している商品としてエクソールD30やエクソールD40(エクソン化学社製)等が挙げられる。炭素数5〜8の脂環式炭化水素の配合量としては重量比で剥離剤組成物全体の5重量%〜99.9重量%であり、好ましくは10重量%〜50重量%である。(以下、本発明では特に断りのない場合を除き重量%である。)
本発明で使用することができる(B)成分として、炭素数5〜8の脂環式炭化水素以外の有機溶剤を混合することができる。炭素数5〜8の脂環式炭化水素も硬化物を膨潤させるのに十分の性能を有するが、硬化物の種類によってはさらにケトン系溶剤や(A)成分以外の炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、複素環化合物を添加することにより、膨潤性を高めることができる。当該その他有機溶剤を添加しても、本組成物中に炭素数5〜8の脂環式炭化水素が含まれていれば、ヒドロキシプロピルセルロースを安定して溶解することができるため、垂れ防止性が劣化することはない。その他の有機溶剤の配合量は剥離剤組成物全体の0%〜95%であり、好ましくは50%〜90%である。
本発明で使用することができる(C)成分はヒドロキシプロピルセルロースであり、セルロースの水酸基がヒドロキシプロピル基で置換されているものである。前述の通り、炭素数5〜8の脂環式炭化水素と組み合わせることにより比較的少量で垂れ防止性を発現させることができる。これはヒドロキシプロピルセルロース以外のセルロースでは達成できない。ヒドロキシプロピルセルロースの配合量は剥離剤組成物全体の0.1%〜5.0%であり、好ましくは0.2%〜2.0%である。
さらに、本発明では(E)成分としてパラフィンワックスを添加することができ、当該成分を添加することにより、剥離剤組成物を塗布した時に、剥離剤表面に膜を形成し有機溶剤の揮散を遅延させる効果がある。これにより、剥離させたい硬化物と有機溶剤との接触時間を増加させ、持続性を高め膨潤しやすくなる。当該パラフィンワックスの配合量は剥離剤組成物全体の0〜1.0%である。パラフィンワックスとしてはノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
さらに好ましくは、前述の炭素数5〜8の脂環式炭化水素以外の有機溶剤として特開平2001−279135号に記載の有機溶剤の組み合わせを添加することが好ましい。すなわち、以下の(1)〜(3)が添加されていることが好ましい。ただし、本発明においては炭素数5〜8の脂環式炭化水素以外の有機溶剤を最低5%含有しなければ当初の目的からはずれるものとなってしまう。
(1):20℃における蒸気圧が70〜350mmHgであり、かつ25℃ においてパラフィンワックスに対して溶解性がある有機溶剤
(2):20℃における蒸気圧が1〜100mmHgであり、かつ25℃においてパラフィンワックスに対して溶解性がなく、さらに、(A)成分の蒸気圧より低い有機溶剤
(3):(E)成分として25℃において固形であるパラフィンワックス
また、本発明の剥離剤は前記成分以外にも防錆剤、消泡剤、界面活性剤などの添加剤を添加することができる。
本発明の剥離剤組成物は加熱や加圧などの煩雑な方法を必要とせず、常温で攪拌するだけで容易に製造することができる。
本発明の剥離剤組成物は接着剤やシール剤などの硬化物を剥離、除去するための剥離剤組成物であり、斜面や垂直面に塗布しても流れたり垂れ落ちたりしないものであり、かつ最大の特徴として接着剤やシール剤除去後のワークを入念な洗浄の必要が無く再使用が可能である。さらに、優れた粘度安定性によりエアゾールでの塗布が可能である。

以下、本発明を実施例に従ってさらに詳細に説明する。
剥離剤組成物の調製
表1に記載の成分を記載の配合量で秤量し、混合攪拌することにより剥離剤組成物を得た。混合方法としては、まず表1の調整Aの化合物を混合し、10分間攪拌し、ついで調整Bの化合物を混合し30分攪拌した。ただし、パラフィンワックスはE135(日本製蝋社製) を使用した。各剥離剤組成物をエアゾール缶に充填した。(D)成分の噴射ガスとしてDME(ジメチルエーテル)を使用し、剥離剤組成物とDMEの割合は1:1とした。
垂れ性試験
25℃湿度50%の雰囲気下で200mm×300mm×0.3mmのブリキのテストピースを垂直に立て、各剥離剤組成物をエアゾールにて噴射し塗布した。ほとんど垂れ流れないものを○、やや垂れ流れるものを△、大半が流れてしまったものを×とした。
剥離性能試験
10mm×20mm×厚み0.5mmのサイズのアルミ板上に脱アセトンタイプのシリコーンシール剤であるスリーボンド1207C(スリーボンド社製)を塗布し、25℃湿度50%の雰囲気下で1週間の養生して、硬化させた。本テストピースを水平にし、硬化したシール材の表面に上記各剥離剤組成物を塗布し5分そのまま放置した。硬質プラスチック製へらにてアルミ板のシール材を削り取るように剥離した。その状態を観察した。完全に金属表面があらわれたものを○とした。金属表面にシール剤の薄膜やカスが残るものを△とした。シール材厚みの半分が残るものを×とした。
同様に上述のテストピースを垂直に立て、硬化したシール材の表面に上記各剥離剤組成物を塗布し5分そのまま放置した。同様に評価を行った。
再接着試験
100mm×25mm×1mmのアルミ製テストピースに各剥離剤組成物を塗布し5分放置したものを織布で拭き取ったものを用意した。このテストピースの端部に脱アセトンタイプのシリコーンシール剤であるスリーボンド1207C(スリーボンド社製)を塗布し、10mmの接着代で2本のテストピースが互い違いになるように貼り合わせた。貼合せ面は100gのおもりをのせて25℃湿度50%の雰囲気下で1週間固定した。これを引っ張りせん断試験器でテストピースの端を引っ張ることで接着力(N)を測定し、10mm×25mmの接着面積より再接着性(MPa)を計算した。
保存性試験
各剥離剤組成物をエアゾールに詰めたものを40℃50%の雰囲気下で30日保存した。エアゾールを噴射した時の噴射量、性状に初期状態とくらべ変化がなかったものを○、変化があったものを×とした。
揮散試験
各剥離剤成分2ccを25℃湿度50%の雰囲気下で鉄板上に滴下し、面積比で50%になるまでの乾燥時間(分)を測定した。
本発明の剥離剤組成物は自動車部品や電機部品に適用した接着剤やシール剤を剥離させるのに適したものである。

Claims (4)

  1. (A)〜(D)成分を含み、硬化型シリコーンを剥離させるためのエアゾール用剥離剤。
    (A)成分:炭素数5〜8の脂環式炭化水素 5.0〜99.9重量%
    (B)成分:(A)成分以外の有機溶剤 0〜95.0重量%
    (C)成分:ヒドロキシプロピルセルロース 0.1〜5.0重量%
    (D)成分:噴射ガス
  2. 前記(A)成分がシクロヘキサンまたはエチルシクロヘキサンであり、前記(D)成分がジメチルエーテルである請求項1に記載のエアゾール用剥離剤。
  3. 前記(B)成分がメチルエチルケトン、テトラヒドロキシフラン、メタノールおよびイソヘキサンのいずれかから選択される少なくとも1種類の有機溶剤である請求項1または2のいずれかに記載のエアゾール用剥離剤。
  4. (E)成分としてパラフィンワックスを含む請求項1〜3のいずれかに記載のエアゾール用剥離剤。
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