JP4792167B2 - 磁器及びその製造方法、並びに高周波用配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の分野】
本発明は、高周波特性に優れた磁器(以下、高周波用磁器と呼ぶことがある)、特に、銅や銀等の低抵抗導体との同時焼成が可能であり、また、マイクロ波やミリ波等の高周波信号を伝送する各種デバイス、例えば半導体素子収納パッケージ、誘電体共振器、LCフィルタ、コンデンサ、誘電体導波管および誘電体アンテナ等に用いられる高周波配線基板や絶縁基板として好適な高周波用の磁器及びその製造方法、並びに高周波用配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミック多層配線基板としては、アルミナ質焼結体からなる絶縁基板の表面または内部にタングステンやモリブデンなどの高融点金属からなる配線層が形成されたものが最も普及している。また、最近に至り、高度情報化時代を迎え、使用される周波数帯域は高周波化に移行しつつある。
このような高周波配線基板においては、高周波信号を損失なく伝送する上で、配線層を形成する導体の抵抗が小さいこと、また絶縁基板の高周波領域での誘電損失が小さいことが要求される。
ところが、従来のタングステン(W)や、モリブデン(Mo)などの高融点金属は導体抵抗が大きく、信号の伝搬速度が遅く、高周波領域の信号伝搬も困難である。例えば、30GHz以上のミリ波領域の高周波信号が適用される高周波配線基板では、上記の高融点金属を使用することが使用できず、これらの高融点金属に代え、銅、銀、金などの低抵抗金属を使用することが必要である。
しかしながら、これら低抵抗金属は融点が低く、アルミナ等のセラミックスと同時焼成することが不可能であるため、ガラスとセラミックスとの複合材料であるガラスセラミックスを絶縁基板として用いた配線基板が開発されつつある。
【0003】
例えば、特開昭60−240135号公報には、ホウケイ酸亜鉛系ガラスに、Al2O3、ジルコニア、ムライトなどのフィラーを添加したものを低抵抗金属と同時焼成することにより得られる多層配線基板が提案されており、また、特開平5−298919号公報には、ムライトやコージェライトを結晶相として析出させたガラスセラミック材料が提案されている。
【0004】
一方、配線基板には、その用途に応じて、種々の電子部品や入出力端子等が接続されるが、その接続工程で加わる応力によって、配線基板にクラックが生じたり或いは配線基板が破損したりすることがある。このような不都合を防止するために、配線基板中の絶縁基板には、機械的強度が高いことが要求されている。
そこで、本出願人は、先に特開平10−275963号公報にて、機械的強度に優れ、且つ高周波特性に優れた磁器を提案した。
この磁器は、ZnOとAl2O3とを含むスピネル型結晶相と、SiO2結晶相と、エンスタタイト結晶相とを含み、且つ実質的に、SiO2又はSiO2とB2O3とからなる非晶質相を含有するものであり、機械的強度が高く、且つ高周波帯域での誘電損失が小さく、高周波用配線基板の絶縁基板として、極めて有用である。このような磁器は、SiO2、Al2O3、MgO、ZnOおよびB2O3を特定の比率で含有するガラス粉末に、ZnO粉末とアモルファスシリカ粉末とを加えた原料混合物に有機バインダーを加えてスラリーを調製し、このスラリーを用いてグリーンシートを成形し、得られたグリーンシートを、825〜975℃にて焼成することによって得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、特開昭60−240135号公報や特開平5−298919号公報に開示されているガラスセラミックは、銅、銀、金などの低抵抗金属との同時焼成が可能であっても、一般に高周波帯域での誘電損失が高く、更に機械的強度も低いという欠点がある。例えば、上記ガラスセラミック焼結体の強度は、15kg/mm2程度であり、アルミナ質焼結体に比しても各段に低い。
【0006】
一方、特開平10−275963号公報に記載された磁器は、高い機械的強度を有しているものの、高熱膨張性であるという問題があった(例えば、その熱膨張係数は8ppm/℃よりも高い)。即ち、マイクロ波やミリ波等の高周波帯で用いられるGaAsチップやSiGeチップ等の高周波素子(その熱膨張係数は、5〜8ppm/℃である)との熱膨張差が大きい。このため、この磁器により形成された絶縁基板を備えた配線基板は、高周波素子の動作による発熱や高周波素子等を実装するときに生じる熱等により、高周波素子と絶縁基板との界面に熱応力が発生し、この結果、クラック等が発生するという問題があった。また、この磁器は、高周波領域での誘電損失の点でも、十分に満足し得るものではなかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、1000℃以下の焼成により製造することができ、金、銀、銅の低抵抗導体との同時焼成が可能であると共に、磁器強度が高く、かつ高周波領域においても誘電損失が低い高周波用磁器及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記高周波用磁器により形成された絶縁基板として具備する高周波用配線基板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、本出願人が先に提案した特開平10−275963号公報に記載された磁器について詳細に検討した結果、この磁器は、クォーツ等のSiO2結晶が多量(例えば10重量%以上)に析出しているため、高い熱膨張係数を示し且つ高周波領域(例えば60GHz)での誘電損失も高いこと、及びSiO2結晶の析出量は、原料として用いるアモルファスシリカ原料中に含まれる不純物金属量に依存すること、という新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明によれば、構成成分として、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3を含む磁器において、ZnOとAl2O3を含む結晶相を30〜50重量%、SiO2とMgOを含む結晶相を5〜15重量%、SiO2又はSiO2とB2O3とからなる非晶質相を40〜60重量%、Coを、CoO換算で0.05〜5重量%含有し、且つSiO2結晶相の含有量が6重量%以下に抑制されており、60GHzでの誘電損失が15×10−4以下であることを特徴とする磁器が提供される。
本発明によれば、また、SiO2、Al2O3、MgO、ZnOおよびB2O3を含む結晶化ガラス65〜85重量%と、ZnO粉末を5〜20重量%と、金属換算による不純物含有量が500ppm以下のアモルファスシリカ粉末を1〜20重量%と、比表面積が10m 2 /g以上のCo 3 O 4 粉末をCoO換算で0.05〜5重量%とを含む原料混合物を調製し、前記混合物に、有機バインダーを加えてスラリーを調製し、前記スラリーを成形し、得られた成形体を、脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成すること、を特徴とする磁器の製造方法が提供される。
本発明によれば更に、上述した磁器から形成された絶縁基板と、該絶縁基板の表面および/または内部に形成された周波数1GHz以上の高周波信号が伝送可能な配線層とから成る高周波用配線基板が提供される。
【0010】
本発明は、特開平10−275963号公報に記載された磁器の改良に関するものであり、本発明の高周波用磁器は、SiO2結晶の含有量が6重量%以下に抑制されている点において、上記先行技術の磁器と大きく相違するものであり、SiO2結晶含有量が抑制されていることにより、後述する実験例にも示されている通り、60GHzでの誘電損失は15×10−4以下と低く、且つ、室温から400℃での熱膨張係数は、5〜8ppm/℃の範囲にあり、GaAsチップやSiGeチップ等の高周波素子のそれに近似している。この結果、本発明の高周波用磁器は、高周波用配線基板の絶縁基板として、極めて有効に使用される。即ち、本発明の高周波磁器は、上記先行技術の磁器と同様、SiO2、Al2O3、MgO、ZnOおよびB2O3を含む結晶化ガラスと、ZnO粉末と、アモルファスシリカ粉末とCo 3 O 4 粉末との混合粉末を用いて製造されるが、このアモルファスシリカ粉末中に含まれるアルミニウム、鉄、アンチモン等の不純物金属や他の不純物金属酸化物は、クォーツ等のSiO2結晶の析出に大きな影響を与える。具体的には、アモルファスシリカ粉末中に含まれるこれら不純物量が多いと、焼成に際して、アモルファスシリカの結晶化が促進され、SiO2結晶が多量に析出し、得られる磁器の熱膨張率は高くなり、また高周波領域での誘電損失も高くなる。しかるに本発明によれば、上記の不純物量が金属換算で500ppm以下に抑制された高純度のアモルファスシリカを用いることにより、焼成に際してのアモルファスシリカの結晶化を抑制し、SiO2結晶含有量が6重量%以下に抑制された磁器を得ることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す具体例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の高周波用磁器の組織を説明するための模式図である。
図2は、本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の一例である誘電体アンテナを具備する高周波用配線基板の概略断面斜視図である。
図3は、本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の一例である図2とは異なる構造の誘電体アンテナを具備する高周波用配線基板の概略断面斜視図である。
図4は、本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の他の一例である半導体素子収納用パッケージの概略側断面図である。
【0012】
(高周波磁器)
本発明の高周波用磁器は、必須の構成成分として、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3を含むものであり、さらにCoを含有し、通常、これらの酸化物を、以下の割合で含有する。
SiO2:30〜60重量%、特に40〜50重量%
Al2O3:18〜25重量%、特に20〜25重量%
MgO:5〜10重量%、特に8〜9重量%
ZnO:5〜35重量%、特に10〜20重量%
B2O3:5〜10重量%、特に5.5〜7重量%
かかる組成の高周波磁器は、図1に示す様に、各種の結晶相と非晶質相(図1においてGで示す)を含有するが、結晶相としては、ZnOとAl2O3とを含む結晶相(図1においてSPで示す)、SiO2及びMgOを含む結晶相(図1においてEで示す)が析出していることが必須不可欠である。
【0013】
ZnOとAl2O3とを含む結晶相(SP)としては、例えばガーナイト結晶相(ZnAl2O4)、(Zn,Mg)Al2O4結晶相等のスピネル型結晶相を例示することができ、特にガーナイト結晶相が好適である。本発明において、このような結晶相(SP)は、30〜50重量%の量で含まれている。この量が30重量%よりも少ないと、磁器の高強度化と低誘電損失化を両立させることができず、逆に、50重量%よりも多いと磁器の熱膨張係数が高くなってしまう。
SiO2及びMgOを含む結晶相(E)としては、例えばエンスタタイト結晶相(MgSiO3)、クリノエンスタタイト結晶相、プロトエンスタタイト結晶相等のエンスタタイト型結晶相や、フォルステライト結晶相を例示することができるが、特に高周波帯での誘電損失の低減化や磁器の高強度化の点で、エンスタタイト型結晶相が望ましい。本発明において、このような結晶相(E)の含有量は、5〜15重量%の範囲に設定される。5重量%よりも少ないと、磁器の誘電損失の低減効果が不十分となり、また、15重量%よりも多いと磁器の熱膨張係数が高くなってしまう。
【0014】
本発明においては、図1に示されている様に、クォーツ、クリストバライト等のSiO2結晶相(図1においてSiで示す)が析出していてもよいが、かかる結晶相(Si)の含有量は、6重量%以下に抑制されていることが極めて重要である。即ち、SiO2結晶相(Si)の析出量が6重量%よりも多いと、高周波領域での誘電損失が高くなり、しかも磁器の熱膨張係数が高くなって高周波素子の実装信頼性が低下してしまう。SiO2結晶相(Si)の析出量を上記範囲に設定するためには、後述するアモルファスシリカ粉末として、不純物金属量が一定値以下に抑制された高純度のものを使用すればよい。尚、高純度のアモルファスシリカ粉末中に含まれる微量の不純物金属(Al、Fe、Sb等)は、通常、上記の各結晶相の何れか、例えばスピネル型結晶相(SP)中に固溶する。
【0015】
また、本発明においては、上述した結晶相を析出させるために使用される結晶化ガラスの組成等に応じて、Zn2SiO4で表されるウイレマイト結晶相(図示せず)が析出し得るが、ウイレマイト結晶相の析出量は、6重量%以下に抑制されていることが、高周波領域における誘電損失の低減化や熱膨張係数の低減化の点で好適である。
更に、上述した各種の結晶相以外にも、Mg2B2O5で表される結晶相(図示せず)やコージェライト結晶相(図示せず)等の他の結晶相が析出し得るが、このような他の結晶相の析出量は、総量で3重量%以下であることが望ましい。
【0016】
また、非晶質相(G)は、実質上、SiO2或いはSiO2とB2O3とからなるものであるが、この非晶質相(G)は、40〜60重量%、特に45〜55重量%の割合で存在する。このような非晶質相(G)の存在によって、高周波帯での磁器の誘電損失を低減できるとともに、磁器の誘電率を低めることもできる。例えば、この非晶質相(G)中に、前述した各種結晶相を析出させるために使用する結晶化ガラス中に含まれるAl2O3、ZnO、MgO等の成分(SiO2及びB2O3以外の成分)が析出すると、非晶質相(G)の高周波帯での誘電損失が増大し、この結果、磁器の高周波帯での誘電損失も増大してしまう。従って、非晶質相(G)中のこれら成分(SiO2及びB2O3以外の成分)の含有量は、それぞれ50ppm以下、且つ総量で100ppm以下であることが望ましく、このような成分は、実質上、全て結晶相として析出すべきである。
【0017】
また、上記の非晶質相(G)において、磁器の低誘電損失化の見地から、
B2O3含有量は、100ppm以下、特に50ppm以下であることが好ましく、非晶質相(G)は、実質的にSiO2のみから形成されていることが最も好適である。即ち、B2O3は、原料として用いる結晶化ガラス中に含まれるものであり、焼成に際して、Mg2B2O5として結晶化するか、或いは、前述した各種結晶相内、特にエンスタタイト結晶相(E)内に固溶することが望ましい。
【0018】
上記のような各主結晶相及び非晶質相を含む本発明の高周波磁器は、高強度であるばかりか、その誘電率は6以下であり、また15GHzでの誘電損失(tan δ)は、10×10−4以下と低く、更に、60GHzでの誘電損失(tan δ)は、15×10−4以下、特に10×10−4以下であり、また室温から400℃での熱膨張係数は5〜8ppm/℃の範囲にあり、GaAsチップ等の半導体素子の熱膨張係数に極めて近似している。従って、本発明の高周波磁器は、高周波用配線基板の絶縁基板として、極めて有用である。
【0019】
また、本発明の高周波用磁器では、前記したように、Co成分を、CoO換算で0.05〜5重量%、特に0.1〜2.0重量%含有している。このようなCo含有磁器は、Cu配線層を備えた配線基板の用途に極めて有用である。
【0020】
即ち、配線層を形成する低抵抗導体としては、Cu、Ag,Auが代表的であるが、コストの点から、Cu及びAgが一般に使用される。この内、Ag配線層は、大気中での焼成により形成することができ、しかも表面にメッキ層を形成する必要がないため、特にコストの点で有利であるが、配線層表面でのマイグレーションや半田濡れ性の点で問題がある。このため、このような問題のないCu配線層が最も一般的に使用されているが、Cu配線層は、酸化防止のために、表面にNi−AuやCu−Au等のメッキ層を形成する必要がある。ところで、配線基板中の絶縁基板が、従来公知の磁器により形成されている場合、Cu配線層表面に上記のメッキ層を形成する際に、絶縁基板表面にAuが付着し、変色や配線層間の絶縁性低下を生じるおそれがある。
前述したCo成分含有の磁器は、上記のようなメッキ層形成に際してのAu付着を有効に防止することができるという利点を有している。この場合、Co含量が多くなると、誘電損失が増大するおそれがあり、またCo含量が少ないと、
Au付着防止効果が十分に発現しないおそれがある。従って、Co含量は、前述した範囲に設定されていることが好ましい。
【0021】
また上述したCo成分は、特にCoOの形で磁器中に各種結晶相中及び非晶質相中に存在するが、特に磁器中のZnの分布とCoの分布とがよく一致しており、このことから、結晶相中のZnの一部がCoで置換されることに起因して、Au付着が有効に防止されるのではないかと、本発明者等は推定している。また、このことから、Co成分は少なくともZnOとAl2O3とを含む結晶相(SP)と非晶質相(G)とに含まれていることが好ましい。
更に、上記のCo成分は、磁器中に均一に分散していることが好ましい。Co成分の一部が磁器中で凝集し、その分散が不均一となっていると、凝集したCo成分により、誘電損失の増大を生じるおそれがあり、また、焼成により、突起状の欠陥が発生するおそれもある。尚、Co成分が均一に分散している磁器は、鮮やかな色を呈し、例えばL*a*b表色系で評価したとき、
明度L*>80
彩度C*={(a*)2+(b*)2}1/2>20
の色位置にある。
【0022】
(高周波磁器の製造)
原料粉末
本発明の高周波磁器を製造するために使用される原料粉末としては、結晶化ガラス粉末と、ZnO粉末と、アモルファスシリカ粉末(溶融シリカ)とCo 3 O 4 粉末との混合粉末が使用される。
【0023】
結晶化ガラス粉末は、上述した各種結晶相を析出させるために、SiO2、Al2O3、MgO、ZnOおよびB2O3を成分として含むものであるが、磁器中の非晶質相を、実質上、SiO2或いはSiO2とB2O3とから形成させ、残部を結晶化させるために、以下の組成を有していることが好ましい。
SiO2:40〜52重量%、特に45〜50重量%
Al2O3:14〜32重量%、特に25〜30重量%
MgO:4〜15重量%、特に9〜13重量%
ZnO:6〜16重量%、特に6〜10重量%
B2O3:5〜15重量%、特に7〜11重量%
このような結晶化ガラス粉末は、1〜10μm、特に1.5〜4μmの平均粒径を有していることが好ましく、またZnO粉末の平均粒径は、0.5〜5μm、特に0.8〜2.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
また、アモルファスシリカ(溶融シリカ)粉末としては、原料のケイ酸ソーダ等に含まれ或いはアモルファスシリカの製造工程中に混入するアルミニウム、鉄、アンチモン等の不純物金属の総量が、金属換算で500ppm以下に制御された極めて高純度のものが使用される。即ち、このような高純度のアモルファスシリカ(溶融シリカ)粉末を用いることにより、焼成に際してのアモルファスシリカの結晶化が有効に抑制され、SiO2結晶相の析出量が前述した範囲に抑制され、高周波領域での誘電損失を低減させることができる。しかも、SiO2結晶相の析出量が抑制されていることから、得られる磁器の室温から400℃での熱膨張係数は5〜8ppm/℃の範囲にあり、GaAsチップ等の半導体素子の熱膨張係数に極めて近似している。
また、このような高純度のアモルファスシリカ粉末は、平均粒径が1.2〜6μm、特に1.5〜3.5μmの範囲にあり、2μm以上の粒径を有する粒子の含有量が15重量%以上、特に15〜30重量%の範囲にあることが好ましい。このような粒度分布を有するアモルファスシリカ粉末の使用は、磁器中の各結晶相の含有比率を所定の割合とし且つ磁器中の非晶質相をSiO2のみから、或いはSiO2及びB2O3のみから構成する上で最も好適である。
【0025】
また、本発明において、結晶化ガラス粉末と、ZnO粉末と、アモルファスシリカ粉末との混合比は、混合粉末中の結晶化ガラス粉末量が、65〜85重量%、ZnO粉末量が5〜20重量%、特に7〜15重量%、アモルファスシリカ粉末量が3〜20重量%、特に10〜20重量%となるように設定され、このような量比で各粉末を混合することにより、析出する各結晶相の量を前述した範囲に設定することができる。
【0026】
更に本発明において、前述したCo含有磁器を製造するために、上記の混合粉末に、更にCoO粉末或いはCo3O4粉末を、CoO換算で0.05〜5重量%、特に0.1〜2.0重量%となる割合で加える。この場合、磁器中にCoを均一に分散させるためには、比表面積(BET)が10m2/g以上のCo3O4粉末を用いることが好適である。また、Co3O4は、加熱により酸素を放出し、CoOに転換するが、放出された酸素により脱バインダーが促進されるという効果がある。従って、脱バインダーを有効に行い、磁器中の残留カーボン量を低減させるという点で、Co3O4粉末を用いることが有利である。
【0027】
成形用スラリーの調製及び成形
上記で得られた混合粉末に、ポリビニルアルコール、メタクリレート樹脂等の有機バインダーを加え、更に、必要により、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の可塑剤及びトルエン、酢酸エチル、イソプロパノール等の有機溶剤を適量混合し、成形用スラリーを調製する。
上記の成形用スラリーを用いて、それ自体公知の成形法、例えばドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法またはプレス成形法等により、用途に応じた形状の成形体を作成し、脱バインダー及び焼成が行われる。
【0028】
この場合、高周波用配線基板を作製する場合には、所定厚みのシート状成形体(グリーンシート)を作製し、所望により、このグリーンシートにスルーホールを形成し、該スルーホール内に銅、銀、金のうちの少なくとも1種を含む金属ペーストを充填する。また、グリーンシートの表面には、前記金属ペーストを用いて高周波信号が伝送可能な高周波線路パターンをスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の公知の印刷法により配線層の厚みが5〜30μmとなるように印刷、塗布する。
次いで、スルーホールおよび線路パターンを位置合わせして複数のグリーンシートを積層圧着し、この積層シートについて、脱バインダー及び焼成が行われる。
【0029】
脱バインダー
脱バインダーは、水蒸気含有雰囲気中での熱処理により行われる。このような雰囲気中での熱処理を行うと、バインダーが熱分解した後に残留するカーボンが水蒸気と反応するため、脱バインダーを有効に行うことができる。また、先にも述べた通り、Co3O4粉末が使用されている場合には、Co3O4がCoOに転換する際に放出される酸素によって、脱バインダーが促進される。尚、Cu配線層を同時焼成により形成する時には、Cuの酸化を防止するために、水蒸気含有の非酸化性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)中で脱バインダーが行われる。
【0030】
また、上記のような脱バインダーは、残留カーボン量が、100ppm以下、特に80ppm以下となるように行われることが好ましい。残留カーボン量が多いと、磁器の緻密度の低下、誘電損失の増大、絶縁性の低下等を生じる恐れがあるばかりか、焼成により、磁器表面に突起状の欠陥を生じるおそれがある。特に、低抵抗導体の配線層との同時焼成により、上記の磁器から成る絶縁基板を備えた配線基板を作製する場合、低抵抗導体の配線層表面にも突起状の欠陥が生じてしまうと、配線基板と外部素子との接続の信頼性が著しく損なわれてしまう。本発明では、残留カーボン量を、上記の範囲に調整することにより、これらの不都合を有効に回避することができる。
【0031】
本発明において、残留カーボン量を上記範囲内に抑制するためには、脱バインダーを2段の熱処理で行うことが望ましい。例えば、650〜710℃と720〜770℃との2段階での熱処理により脱バインダーを行うことが好ましく、特に、650〜710℃での熱処理を1時間以上行い、続いて720〜770℃での熱処理を1時間以上行うことが、残留カーボン量を前記範囲内に抑制する上で最も好適である。
【0032】
焼成
脱バインダー後に行われる焼成は、窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気中又は大気等の酸化性雰囲気中で行われるが、Cu配線層を同時焼成により形成する時には、Cuの酸化を防止するために、非酸化性雰囲気中で焼成が行われる。
上記雰囲気中での焼成は、800〜1000℃、特に875〜1000℃にて、0.5時間以上行われ、これにより、緻密化され、前述した各種結晶相及び非晶質相を含む本発明の高周波用磁器、或いはこのような高周波用磁器を絶縁基板とする高周波用配線基板を得ることができる。
尚、Cu配線層を備えた配線基板(前記金属ペーストとしてCuペーストが使用されたもの)では、焼成後に、無電解Ni−Auメッキ、無電解Cu−Auメッキを基板表面のCu配線層に施してメッキ層を形成する。この際、絶縁基板がCo成分を含有する高周波用磁器から形成されている場合には、絶縁基板表面へのAu付着が有効に抑制される。
また、上記のようにして形成された配線基板の表面には、所望により、Si、GaAs、SiGe等の高周波素子が搭載され、配線基板に設けられている配線層と高周波信号の伝達が可能なように接続される。例えば、配線層表面に半田を介して高周波素子を直接実装したり、ワイヤボンディング、TABテープなどを用いて高周波素子を接続することも可能である。
さらに、高周波素子が搭載された配線基板表面に、所望により、絶縁基板と同種の絶縁材料や、その他の絶縁材料、あるいは放熱性が良好な金属等からなるキャップをガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤により接合することにより、高周波素子を気密に封止することができ、これにより高周波用半導体モジュールを作製することができる。
【0033】
(高周波用配線基板の構造)
上述した高周波用磁器により形成された絶縁基板を備えた高周波用配線基板は、種々の構造を採ることができる。
その一例を示す図2の概略断面斜視図において、所定の厚みAを有する絶縁基板1は、絶縁層1a、1b、1cの3層から構成されている。また、この絶縁基板1を挟持する様に、一対の導体層2、3が形成されている。
絶縁基板1内には、絶縁基板1の厚み方向に延びている多数のビアホール4が設けられており、これらのビアホール4によって、導体層2、3は、互いに電気的に接続されている。
【0034】
図2から明らかな通り、ビアホール4は、所定間隔Bをもって二列に配置されており、各列のビアホール4は、所定間隔Cで配置されており、ビアホール4の各列は、信号伝達方向(線路形成方向)に延びている。即ち、これらのビアホール4と、導体層2、3とによって囲まれる空間が、誘電体導波管線路6となる。
絶縁基板1の厚みAに対する制限は特にないが、シングルモードの高周波信号を用いる場合には、ビアホール4の列の間隔Bを基準として、B/2程度または2B程度の大きさであることが望ましい。
【0035】
各列を構成しているビアホール4の間隔Cは、伝送される信号波長λc(遮断波長)より狭い間隔に設定されることで電気的な壁を形成しており、これにより、信号は二列のビアホール4、4間に閉じこめられる。平行に置かれた一対の導体層2、3間にはTEM波が伝搬できるために、例えば、ビアホール4の間隔Cが遮断波長λc以上であると、この線路6に電磁波を給電しても伝搬せず、ビアホールの間隔Cが遮断波長λcよりも小さいと、電磁波は、線路6と垂直な方向で遮蔽されて、導体層2、3とビアホール4とで囲まれる誘電体導波管線路6内を反射しながら伝搬する。
【0036】
また、図2においては、絶縁層1a、1b、1c間のビアホール形成列領域には導体層5が形成されており、この導体層5によって、電磁波の遮蔽効果が強化されている。
さらに、図2においては、誘電体導波管線路6の一方の表面に形成された導体層2にスロット7が形成されており、誘電体導波管線路6内を伝送する高周波信号は、スロット7から放射される。従って、この誘電体導波管線路6は、導波管アンテナとして作用する。
【0037】
さらに、図3の他の例に示すように、導体層2の表面に形成されたスロット(図示せず)を囲むように、他の誘電体導波管線路8を接続することができる。また、図2や図3の例において、スロットを貫通するビアホール導体(図示せず)を設けることにより、誘電体導波管線路6の外部にスロット7を延ばして高周波信号を取り出すこともできる。
さらに、絶縁基板1の表面、特にスロット7形成面の裏面に高周波用素子(図示せず)を搭載することも可能である。
【0038】
既に述べた様に、本発明の高周波用磁器は、15GHzでの誘電損失が10×10−4以下、60GHzでの誘電損失は15×10−4以下であり、高周波帯での誘電損失が非常に小さい。従って、上記のような配線基板においては、絶縁基板1を、上述した高周波用磁器から形成させることにより、高周波信号が減衰することなく誘電体導波管線路6内を伝送することができる。
また、本発明の高周波用磁器の誘電率は6以下であり、この点においても、このような高周波用磁器により形成された絶縁基板1を備えた配線基板は、高周波信号の伝送特性に優れている。
本発明の高周波用磁器の室温から400℃における熱膨張係数は5〜8ppm/℃であり、半導体素子の熱膨張係数に近似している。従って、このような高周波磁器により形成された絶縁基板1を備えた配線基板は、高周波素子が実装される用途にも極めて有用である。
【0039】
本発明の高周波用配線基板の好適例の一つである高周波用パッケージを図4の概略側断面図に示す。
図4において、全体として20で示すこのパッケージは、本発明の高周波用磁器からなる絶縁基板21を備えており、この絶縁基板21の上面には、蓋体22により閉じられたキャビティ23が形成されている。このキャビティ23内には、Si、SiGe、GaAs等の高周波素子24が搭載されている。蓋体22は高周波素子24と外部との電磁波の漏洩が防止できる材料から構成されることが望ましい。
絶縁基板21の表面には、高周波素子24と電気的に接続された配線層25が形成されている。
【0040】
本発明において、1GHz以上、特に15GHz以上、さらに50GHz以上、さらには70GHz以上の高周波信号を配線層25によって伝送するために、配線層25の形状は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路のうちの少なくとも1種から構成されることが望ましい。
これにより、高周波信号の伝送損失を小さくすることができる。また、高周波信号の伝送損失を小さくするために、配線層25は、銅、銀または金の低抵抗金属のいずれか1種を含有し、特にこれら金属を主成分とすることが望ましい。
【0041】
図4のパッケージ20においては、配線層25はアース層26とともにマイクロストリップ線路27を形成している。また、この絶縁基板21の裏面には外部回路基板と接続される配線層28が形成され、アース層26とともにマイクロストリップ線路29を形成している。そして、配線層25および配線層28は、その端部がアース層26に形成されたスロット孔30を介して各配線層の端部が対峙するように形成することにより電磁結合され、マイクロストリップ線路27とマイクロストリップ線路29間で損失の少ない信号の伝送が行われる。
【0042】
本発明において、配線層の構造は、上記電磁結合構造に限定されるものではなく、例えば、図4のマイクロストリップ線路27の端部に、先に説明した様な誘電体導波管線路を積層、配設し、アース層26の一部に設けたスロット30を貫通するビアホール導体によって誘電体導波管線路とマイクロストリップ線路27とを接続することも可能である。
また、図4のパッケージ20では、絶縁基板21と蓋体22とにより高周波素子24が気密に封止されているが、本発明はこれに限られるものではなく、蓋体22を形成せず高周波素子24を樹脂モールド等によって封止したものであってもよい。
【0043】
【実施例】
実験例1:
下記の組成からなる4種の結晶化ガラスを準備した。
【0044】
上記の結晶化ガラス粉末に、平均粒径1μmのZnO粉末、および表1に示す粒度分布を有するアモルファスシリカ粉末を用いて、焼成後の磁器が表1の組成となるように混合した。なお、各原料の粒径は原料粉末のSEM写真からルーゼックス解析法を用いて面積比率を求めることによって測定した。また、アモルファスシリカ原料粉末についてはICP分析法、赤外線吸収スペクトル分析、ラマン分光分析法によって不純物金属量を測定し、表1に示した。
【0045】
得られた混合粉末に、有機バインダ、可塑剤、トルエンを添加し、スラリーを調製した後、このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを10〜15枚積層し、50℃の温度で10MPaの圧力を加えて熱圧着した。
【0046】
得られた積層体を、水蒸気含有/窒素雰囲気(露点60℃)中、700℃で1時間、更に750℃で1時間、脱バインダ処理を行った後、乾燥窒素中で表1の条件で焼成し高周波用磁器を得た。
【0047】
尚、一部の試料については、フィラー成分として、ZnO、アモルファスシリカの代わりに、結晶質SiO2であるクォーツ粉末、Al2O3粉末、CaO粉末を用いて同様に磁器を作製した(試料No.9〜11、18)。また、脱バインダーのための熱処理を、750℃、1時間の一段で行った以外は試料No.3と同様にして磁器を得た(試料No.25)。
得られた磁器について誘電率、誘電損失、抗折強度、熱膨張係数を以下の方法で評価し、更に磁器中の成分分析及び信号の透過性能の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0048】
誘電率及び誘電損失:
試料の磁器を所定の大きさの円板形状に切りだし、15GHz又は60GHzにて、ネットワークアナライザー、シンセサイズドスイーパーを用いて誘電体円柱共振器法により測定を行った。測定に際しては、NRDガイド(非放射性誘電体線路)で誘電体共振器の励起を行い、TE011またはTE021モードの共振特性より、誘電率、誘電損失を算出した。
尚、15GHzでの誘電損失を測定するときは、試料の円板形状を、直径10mm、厚み5mmの大きさとし、60GHzでの誘電損失を測定するときは、試料の円板形状を、直径2〜7mm、厚み2.0〜2.5mmの大きさとした。
【0049】
抗折強度:
試料を幅4mm×厚さ3mm×長さ70mmの形状に切り出し、
JISC−2141の規定に基づいて3点曲げ試験により抗折強度を測定した。
熱膨張係数:
室温から400℃における熱膨張曲線をとり、熱膨張係数を算出した。
【0050】
成分分析:
磁器中の結晶相および非晶質相をX線回折チャートから同定し、リートベルト法を用いて定量した。
さらに、TEM分析によるEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)分析によって、非晶質相中の各元素の比率を測定し、その比率が50ppm以上の元素を確認した。
また、磁器中の残留カーボン量を、赤外吸収法によって測定した。
【0051】
透過性能:
透過性能については、各試料の磁器から成る絶縁基板に、ストリップ線路と、該ストリップ線路の端部が変換されたコプレーナ線路とから成る高周波信号電送線路を、絶縁基板との同時焼成により形成した。尚、ストリップ線路は、絶縁基板表面に形成された、長さ1cm、2cm、3cmで、幅260μm、厚み10μmの中心導体(Cu)と、絶縁基板内部の全面に形成されたグラウンド層(中心導体とグラウンド層との間隔:150μm)とから成るものである。
このようにして形成された高周波信号電送線路の一端から60GHzの信号を入力し、他端にてネットワークアナライザにより、その信号の透過性能であるS21を測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1、2から明らかなように、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3を含むガラス量が85重量%を越える試料No.1、14では、ZnOとAl2O3とを含む結晶相の析出割合が30重量%より少なく、またSiO2とMgOを含む結晶相の析出比率が5重量%より少なくなってしまい、誘電損失が高く、また磁器強度が低いものであった。逆に、ガラス量が65重量%より低い試料No.8では、磁器を1000℃以下の温度で緻密化させることができなかった。
また、ZnO粉末およびアモルファスシリカ粉末に代えて他のセラミックフィラー粉末を添加した試料No.9〜11、18では、磁器の非晶質相中にSiまたはB以外の他の金属成分が残存し、磁器の誘電損失が増大した。
【0055】
さらに、アモルファスシリカ原料中にAl、Fe、Sbの不純物金属を総量で500ppmより多く含む試料No.12、13、19、20では、アモルファスシリカの結晶化が促進され、磁器中のクォーツの析出量が6重量%を越えてしまい、60GHz(高周波帯)での誘電損失が高くなる傾向にあった。
また、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3の全てを含んでいないガラスC、Dを用いた試料No.21〜24は誘電損失が高いものであった。
これに対して、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3の全てを含むガラスA,Bを使用し、特定量のZnO粉末および高純度のアモルファスシリカ粉末を混合して得られた試料No.2〜7、15〜17の磁器は、いずれも誘電率5.7以下、15GHzでの誘電損失が10×10−4以下、60GHzでの誘電損失が15×10−4以下、強度200MPa以上、熱膨張係数5〜6ppm/℃以下の優れた特性を有するものであった。
更に脱バインダーを一段の熱処理で行った試料No.25では、残留カーボン量が100ppmよりも多く、誘電損失が増大していた。
【0056】
実験例2:
この実験例では、Co成分を含む磁器についての評価を行った。
先ず、結晶化ガラスとしては、実験例1で用いたガラスA,Bを用いた。
このガラス粉末に、アモルファスシリカ粉末及び酸化コバルト(Co3O4)粉末を、表3に示す割合で混合して、混合粉末を調製した。(表3において、酸化コバルト量は、CoO換算の値で示した。)
尚、アモルファスシリカ粉末としては、実験例1の試料No.4で用いたものを使用した。
また、酸化コバルト粉末としては、以下のa,b,cの3種を用いた。
酸化コバルト粉末(a):BET比表面積 40g/m2
酸化コバルト粉末(b):BET比表面積 10g/m2
酸化コバルト粉末(c):BET比表面積 1g/m2
【0057】
上記の混合粉末100重量%に対して、メタクリル酸イソブチル樹脂(有機バインダー)を固形分として12重量%、フタル酸ジブチル(可塑剤)を6重量%、及びトルエン/酢酸エチルの混合溶媒を加え、ボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚さが0.25mmのグリーンシートを成形した。
上記で得られた8枚のグリーンシートを、実験例1と同様にして加圧積層し、これを一辺が60mmの正方形状に切断し、絶縁基板用成形体を作製した。
また、Cu粉末にガラス粉末、セラミック粉末、有機バインダー、可塑剤及び溶剤を添加してCuペーストを調製し、このCuペーストを、上記で得られたグリーンシートの表面に、一辺が12mmの大きさの正方形状に印刷した。このようなCuペーストが印刷されたグリーンシート(Cuシート)と、Cuペーストが印刷されていない2枚のグリーンシートとを、Cuシートが最上層となるように重ね合わせ、実験例1と同様にして加圧積層し、これを一辺が24mmの正方形状に切断し、配線基板用成形体を作製した。
【0058】
上記で得られた絶縁基板用成形体及び配線基板用成形体について、実験例1と同様にして、2段の熱処理で脱バインダーを行った後、表3に示す温度で焼成を行い、絶縁基板及びCu導体層を有する配線基板を得た。
この絶縁基板については、実験例1と同様に、60GHzにおける誘電率及び誘電損失(tanδ)を測定した。また、目視により、絶縁基板上の突起状欠陥の個数を測定し、且つ実験例1と同様に、抗折強度や残留カーボン量を測定するとともに、更に、L*a*b表色系における明度L*及び彩度C*を測定した。
配線基板については、Cu導体層表面をエッチングした後、無電解Niメッキ層を3μmの厚みで形成し、更に無電解Auメッキ層を1μmの厚みで形成し、Cu導体層が形成されていない基板表面を40倍の実体顕微鏡で観察し、Au付着による変色の有無を観察した。
上記の結果を表4に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表3,4の結果から、Co成分の含有量が0.05重量%よりも少ない磁器(試料No.1,2,11)では、Au付着による変色が生じているが、Co成分を0.05重量%以上含有している他の磁器では、Au付着による変色が有効に防止されていることが判る。
また、Co成分の含有量が5重量%を越える磁器(試料No.10、15)では、誘電損失が増大していた。更に比表面積が10m2/gよりも小さい酸化コバルト粉末を用いた磁器(試料No.19)では、Co成分が均一に分散しておらず、この結果、突起状欠陥が多数発生した。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、金属換算による不純物含有量が500ppm以下のアモルファスシリカ粉末を用い、この高純度アモルファスシリカ粉末と所定の組成の結晶化ガラスとZnO粉末とを所定の量比で含む混合粉末を用いて成形用スラリーの調製、成形、及び脱バインダーを経ての1000℃以下の温度での焼成を行うことにより、構成成分として、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3を含み、結晶相として、ZnOとAl2O3を含む結晶相及びSiO2とMgOを含む結晶相を一定の割合で含有し、SiO2又はSiO2とB2O3とからなる非晶質相を有するとともに、SiO2結晶相の含有量が6重量%以下に抑制された高周波用磁器を得ることができる。この磁器は、焼成時のアモルファスシリカの結晶化が有効に抑制され、SiO2結晶相の含有量が6重量%以下に抑制されていることから、60GHzでの誘電損失が15×10−4以下であり、また、GaAsチップ等の高周波素子に極めて近似した熱膨張係数を有している。従って、かかる高周波用磁器は、高周波信号が適用される配線基板における絶縁基板として用いた時、金、銀、銅の低抵抗導体との同時焼成により製造することができ、しかも得られる基板は、磁器強度が高いばかりか、かつ高周波領域における誘電損失が低く、高周波信号を損失なく伝送することができ、さらに、高周波素子の実装等に際しても熱応力の発生を有効に防止することができ、信頼性の高い実装構造を確保することができる。
また、Co成分を一定の割合で含む本発明の高周波用磁器は、Cu配線層を備えた配線基板の用途に極めて有用であり、Cu配線層上にNi−AuやCu−Au等のメッキ層を形成する際の絶縁基板表面へのAuを有効に防止することができ、Au付着に起因する変色や配線層間の絶縁性低下を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波用磁器の組織を説明するための模式図。
【図2】本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の一例である誘電体アンテナを具備する高周波用配線基板の概略断面斜視図。
【図3】本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の一例である図2とは異なる構造の誘電体アンテナを具備する高周波用配線基板の概略断面斜視図。
【図4】本発明の高周波用磁器を用いた高周波用配線基板の他の一例である半導体素子収納用パッケージの概略側断面図。
Claims (10)
- 構成成分として、SiO2、Al2O3、MgO、ZnO及びB2O3を含む磁器において、ZnOとAl2O3を含む結晶相を30〜50重量%、SiO2とMgOを含む結晶相を5〜15重量%、SiO2又はSiO2とB2O3とからなる非晶質相を40〜60重量%、Coを、CoO換算で0.05〜5重量%含有し、且つSiO2結晶相の含有量が6重量%以下に抑制されており、60GHzでの誘電損失が15×10−4以下であることを特徴とする磁器。
- SiO2とZnOとを含むウイレマイト結晶相の含有量が6重量%以下に抑制されている請求項1に記載の磁器。
- 前記Coは、少なくとも、ZnOとAl2O3を含む結晶相と非晶質相とに含まれている請求項1に記載の磁器。
- L*a*b表色系における明度L*が80より小さく、彩度C*が20より大である色位置にある請求項1乃至3のうちいずれかに記載の磁器。
- SiO2、Al2O3、MgO、ZnOおよびB2O3を含む結晶化ガラス65〜85重量%と、ZnO粉末を5〜20重量%と、金属換算による不純物含有量が500ppm以下のアモルファスシリカ粉末を1〜20重量%と、比表面積が10m 2 /g以上のCo 3 O 4 粉末をCoO換算で0.05〜5重量%とを含む原料混合物を調製し、前記原料混合物に、有機バインダーを加えてスラリーを調製し、前記スラリーを成形し、得られた成形体を、脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成することを特徴とする磁器の製造方法。
- 前記アモルファスシリカ粉末は、1.2〜6μmの平均粒径を有し、かつ2μm以上の粒径を有する粒子の含有量が15重量%以下である請求項5に記載の磁器の製造方法。
- 前記脱バインダー処理を、650乃至710℃と720乃至770℃との2段階での熱処理により行う請求項5に記載の磁器の製造方法。
- 650乃至710℃での熱処理を1時間以上行い、720乃至770℃での熱処理を1時間以上行う請求項7に記載の磁器の製造方法。
- 請求項1乃至4のうちいずれかに記載の磁器から形成された絶縁基板と、該絶縁基板の表面および/または内部に形成された周波数1GHz以上の高周波信号が伝送可能な配線層とから成る高周波用配線基板。
- 前記配線層は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路または誘電体導波管線路のうちの少なくとも1種から構成され、且つ前記絶縁基板との同時焼成によって形成されている請求項9に記載の高周波用配線基板。
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