JP4792098B2 - 感知装置 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電振動子に形成された吸着層に感知対象物が吸着されることで、その固有振動数が変化することを利用して感知対象物を感知する感知装置に関する。
従来、例えば試料液中の微量な物質を感知する方法として、圧電振動子の一つである水晶振動子を用いた感知装置が知られている。この感知装置は、水晶振動子に形成された吸着層例えば抗体層に抗原抗体反応を利用して抗原を捕捉し、水晶振動子の発振周波数の変化分を抗原の捕捉量、即ち試料液中の感知対象物の濃度として評価するものである。
ところで水晶には、無用な歪が生じていたり、内部に応力が発生している場合があり、この状態では水晶振動子の発振周波数が不安定になる。感知装置は、水晶振動子の固有の発振周波数を基づいて感知対象物の測定を行うため、発振周波数が不安定であると感知対象物を高精度に感知できなくなる。
一方水晶振動子は、発振させると水晶片の歪や内部応力が少しずつ消失され、それに伴って発振周波数が安定化していくという特性を有している。そして通常時よりも2倍以上、好ましくは5倍以上の大電力を供給して強励振させ、大きな機械振動を与えると、歪や内部応力の消失が促進されて水晶振動子の発振周波数が短時間で安定化する。そこで従来は、出荷時に水晶振動子に大電力を供給して強励振させ、大きな機械振動を与えて発振周波数を安定化させる処理を行う場合があった。しかしながらこの方法では、2〜3ヶ月経過すると効果が薄れるという問題点がある。
また一般的に発振回路は定電流回路を用いているので、大電力を供給できず、水晶振動子を強励振させることができない。そのため従来の感知装置では、通常電力を供給して水晶の歪や内部応力を少しずつ消失させ、発振周波数を安定化させるエージング処理を行っているが、この方法では大電力を供給する場合と比較して、水晶振動子の発振周波数の安定化に要する時間が長くなる。このエージング処理中は感知対象物の感知を行えないことから、作業効率が低下するという問題があった。従ってこの発振周波数の安定化に要する時間を短縮することができる感知装置が求められている。
一方特許文献1には、バイオセンサの2つの電極端子とコンデンサとを接続し、バイオセンサの測定が終了した後にエージングを行い、電界局面に安定性の高い電荷を保持させると共に、コンデンサに電荷を蓄積して電界局面に安定性の高い電荷が保持された状態を維持する電気化学センサ用ホルダが記載されている。しかしながら特許文献1は、一度測定が終了した後、次の測定時に測定の準備に要する時間を短縮するものであり、バイオセンサを装置に取り付けたときの測定の準備に要する時間を短縮することについては記載されていない。また特許文献1のエージングは、電界局面に安定性の高い電荷が保持された状態を維持することを目的としたものであり、上述した水晶の歪や応力を消失することを目的としたものではない。
また特許文献2には、アルミナ基板、白金ヒータ、絶縁層、酸化触媒層、基準電極、固体電界質厚膜及び検知電極を積層したセンサ素子を備え、電源投入と同時にヒータに通常より高めの電圧を印加すると共に電極間に電圧を印加してエージングを行い、水素ガスに対する感度を低下させ一酸化炭素炭素に対する感度を向上させる一酸化炭素センサが記載されている。しかしながら特許文献2のエージングは、電圧を印加して一酸化炭素に対する感度を向上させることを目的したものであり、上述した水晶の歪や応力を消失することを目的としたものではない。
[特許文献1] 特開2005−164407号公報(段落番号0055、0056)
[特許文献2] 特開平11−304752号公報(段落番号0023、0024)
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電振動子に形成された吸着層に感知対象物が吸着されることで、その固有振動数が変化することを利用して感知する感知装置において、発振周波数を安定化させるのに要する時間を短縮できる感知装置を提供することにある。
本発明の感知装置は、
感知対象物を吸着するための吸着層がその表面に形成され、感知対象物の吸着により固有振動数が変わる圧電振動子を用い、この圧電振動子の固有振動数に基づいて感知対象物を感知する感知装置において、
前記圧電振動子を発振させるための発振回路と、
前記発振回路に接続された圧電振動子に、当該圧電振動子の発振を安定化させるために、感知対象物の測定時に供給される通常電力の2倍以上の大電力を供給して圧電振動子を予め設定した設定時間だけ強励振させる強励振回路と、を備えたことを特徴とする。
また本発明の感知装置は、例えば前記発振回路は前記強励振回路の一部を兼用し、前記強励振回路は、この発振回路に接続され、当該発振回路から圧電振動子に供給される電力が前記通常電力と前記大電力との間で切り替わるスイッチ部を備えていてもよい。また本発明の感知装置は、例えば前記圧電振動子を強励振させる時間を設定するための時間設定部を備えていてもよい。また本発明の感知装置は、例えば感知装置を操作するための操作画面表示部を備え、前記時間設定部はこの操作画面表示部に組み合わされていてもよい。また本発明の感知装置は、例えば前記圧電振動子が発振回路に接続されたことを検出して、前記強励振回路に強励振動作を開始させるための信号を出力する接続検出部を備えていてもよい。
本発明によれば、前記発振回路に接続された圧電振動子を予め設定した設定時間だけ強励振させる強励振回路を設けているため、強制的に大きな機械振動が与えられて圧電振動子の歪や内部応力の消失が促進されることになり、圧電振動子の発振周波数の安定化に要する時間が短縮される。従って感知装置におけるエージング処理に要する時間を短縮することができ、作業効率が向上する。また強励振させる時間を設定するための時間設定部を設けるようにすれば、測定結果の解析などに応じて柔軟に対応することができ、強励振が不足していたり、無駄に長い時間に強励振させたりすることが回避できる。更にまた圧電振動子が発振回路に接続されたことを検出して、前記強励振回路に強励振動作を開始させるための信号を出力するようにすれば、作業を円滑に行うことができ、便利である。
感知装置の全体を示す斜視図である。 水晶センサの概要について説明するための説明図である。 感知装置の全体の回路について説明するための平面図である。 第2の実施形態の感知装置について説明するための平面図である。 第3の実施形態の感知装置について説明するための平面図である。 他の実施形態の感知装置における発振回路ユニットについて説明するための平面図である。
〔第1の実施形態〕
本発明の感知装置の一実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。図1に示すようにこの感知装置は、感知対象物を含む試料溶液が供給される水晶センサ1、この水晶センサ1が着脱自在に接続される発振回路ユニット2、この発振回路ユニット2に接続される計測部3及び発振回路ユニット2と計測部3とを制御する制御用コンピュータ(以下、単に制御用PCという)30を備えている。計測部3には、発振回路ユニット2及び制御用PC30が夫々専用のデータケーブルによって接続されており、計測部3は、水晶センサ1の周波数信号を発振回路ユニット2から受信して計測を行い、その結果を制御用PC30に送信する。
水晶センサ1は、図2(a)に示すように配線基板であるプリント基板10の上にゴムシート11を重ね、このゴムシート11上に圧電振動子に相当する水晶振動子12(図2(b)参照)を設け、その上から上蓋ケース13を装着することによって構成されている。水晶振動子12は、例えば円形の水晶板26の両面に電極27(裏面側の電極は見えない)が設けられ、電極27は夫々プリント基板10に設けられているプリント配線16、17に導電性接着剤等によって電気的に接続されている。電極27の表面側には、感知対象物を吸着するための吸着層28が形成されている。この吸着層28は、感知対象物である試料溶液中の抗原を抗原抗体反応で捕捉するための抗体から構成される。また上蓋ケース13には、試料溶液の注入口14と試料溶液の観察口15とが形成されている。
この水晶センサ1は、既述のように発振回路ユニット2に対してプリント基板10を抜脱することにより着脱できるように構成されており、この水晶センサ1を差し込むと水晶振動子12がプリント配線16、17を介して発振回路ユニット2内の発振回路4(図3参照)と電気的に接続される。そして水晶センサ1では、感知対象物を含む試料溶液を注入口14から注入して内部に設けられた水晶振動子12の上面側の空間に満たし、水晶振動子12上に設けられた吸着層28に試料溶液中の感知対象物を吸着させる。吸着層28に感知対象物が吸着されると水晶振動子12の発振周波数が変化するため、感知装置ではこの発振周波数の変化を検知することにより感知対象物の感知を行う。
発振回路ユニット2は、図3に示すように、発振回路4と、この発振回路4の後段に接続されたバッファアンプ20と、発振回路4の発振出力に基づいて水晶センサ1が発振回路ユニット2に接続されたことを検出し、パルスを出力する接続検出部21と、この接続検出部21の出力パルスにより所定長さのパルス幅のパルスを出力する時間設定部に相当するワンショット回路(単安定マルチバイブレータ)22と、を備えている。接続検出部21は、発振回路4の出力の立ち上がりに基づいてパルスを出力するように構成されている。ワンショット回路22は、出力パスルのパルス幅を調整する機能を備えており、具体的には前記パルス幅を決定する時定数回路の可変コンデンサの容量値を調整できるようになっている。またワンショット回路22のパルスを出力する出力端には、ワンショット回路22の出力を反転させる否定回路22aが設けられている。
発振回路4は、コルピッツ型発振回路として構成されている。この発振回路4には、図3に示すように、発振増幅素子となるNPN型の第1のトランジスタ40が設けられており、第1のトランジスタ40のベース側には、コンデンサ41を介して水晶振動子12が接続されている。また第1のトランジスタ40のベース、接地間には、分割容量成分をなすコンデンサ42、43の直列回路が接続され、コンデンサ42、43の中間点は、第1のトランジスタ40のエミッタ側に接続されている。さらに第1のトランジスタ40のベース、接地間には、コンデンサ42、43の直列回路と並列になるようにブリーダ抵抗44が設けられている。
第1のトランジスタ40のエミッタ、接地間には正帰還ループを構成するNPN型の第2のトランジスタ45及び抵抗46が接続されている。第1のトランジスタ40のコレクタ側には、インダクタ47及びコンデンサ48の並列回路を介して+Vccを供給する電源端子37が接続されている。第2のトランジスタ45のベースは、電源端子37と接地との間に設けられた2個の直列抵抗51、54の中間点に接続され、第2のトランジスタ45、抵抗46及び直列抵抗51、54により定電流回路が構成される。従って、感知対象物の測定時には水晶センサ1に対して定電流が供給されることになる。なお図3に示した49はブリーダ抵抗、50は発振回路の出力端である。
直列抵抗51に対して並列に抵抗52及びPNP型の第3のトランジスタ53から構成される直列回路が接続され、第3のトランジスタ53はエミッタ側が電源端子37に、コレクタ側が抵抗52に、ベース側がワンショット回路22に接続されている。抵抗52は、第2のトランジスタ45のベース電位を上昇させるためのものであるため直列抵抗51よりも抵抗値が小さく、例えば直列抵抗51、54及び抵抗52の各抵抗値は、夫々15kΩ、10kΩ及び0kΩとされる。
ここで第3のトランジスタ53は水晶振動子12に供給される電力を通常電力とすると、エージング用の大電力との間で切り替えるためのスイッチ部に相当し、その役割について簡単に触れておくと、通常時(感知対象物の測定を行う時)には、第3のトランジスタ53はオフであるため、第2のトランジスタ45のベースには、電源端子37の直流電圧を直列抵抗51、54で分圧された電圧が供給され、第2のトランジスタ45に定電流が流れる。これに対して後述するエージング時には第3のトランジスタ53がオンとなり、第2のトランジスタ45のベースには、概ね電源端子37の直流電圧を抵抗52及び直列抵抗54で分圧された電圧が印加されるので、当該第2のトランジスタ45のベース電圧が増大し、これにより第2のトランジスタ45の電流が増加することとなる。従って、抵抗52及びPNP型の第3のトランジスタ53の直列回路を含む発振回路4が、本発明の強励振回路に相当する。
計測部3は、図3に示すようにダイオード31、A/D変換回路32及びこのA/D変換回路32からのディジタル信号を処理する信号処理回路であるFGPA(Field Programmable Gate Array)33と、を備え、さらに計測部3を制御すると共に発振回路ユニット2及び制御用PC30との間で、データの送受信を制御するためのCPU34とを備えている。また制御用PC30は、計測部3を制御すると共に計測部3から受け取った計測情報を解析する制御用ソフトウェア36を備えている。
この計測部3では、起動するとCPU34が、FGPA33等に制御命令を送信し、制御用PC30に起動したことを報知する。そして発振回路ユニット2から受信した周波数信号を計測して、その計測結果を制御用PC30に送信する。また制御用PC30の制御用ソフトウェア36は、受信した計測結果をディスプレイ39(図1参照)に表示する機能と、受信した計測結果からワンショット回路22の状態を判定してディスプレイ39に表示する機能と、を有しており、使用者は現在の水晶振動子12の発振周波数と、ワンショット回路22からパルスが出力されている状態(後述するエージング処理状態)かどうかをディスプレイ39上で認識できるようになっている。
また発振回路ユニット2には、ワンショット回路22からパルスが出力されていることを報知する赤色LED24が設けられている。この赤色LED24は、図3に示すように否定回路22aのワンショット回路22側に接続されており、ワンショット回路22からパルスが出力されている時に点灯し続けるように構成されている。
次に本実施形態における感知対象物の計測の流れについて説明する。まず図1に示すように水晶センサ1を発振回路ユニット2に取り付ける。これにより水晶振動子12と発振回路4とが接続され、発振回路4から周波数信号(発振出力)が出力される。接続検出部21では例えば入力レベルの立ち上がりを検出してワンショット回路22にパルスを出力し、これによりワンショット回路22から予め設定された長さのパルスが否定回路22aを介して第3のトランジスタ53のベースに供給される。
このため第3のトランジスタ53のベース電位は、「H(ハイレベル)」から「L(ローレベル)」に変わり、第3のトランジスタ53がオンとなる。この結果、第2のトランジスタ45のベース電位が上昇するので、当該第2のトランジスタ45のコレクタ−エミッタ電流が増加し、これにより第1のトランジスタ40のベース−エミッタ間の電圧が上昇し、水晶センサ1の供給電力が大きくなる。このときに水晶センサ1に供給される電力を大電力と呼ぶとすると、この大電力の値は、感知対象物の測定を行うとき(通常時)に水晶センサ1に供給される電力の2倍以上であり、5倍以上が好ましい。なお本実施形態では、大電力を計測した結果、大電力の値が通常時に供給される電力の10倍となった。また制御用PC30には、制御用ソフトウェア36によりワンショット回路22からパルスが出力されている状態、即ちエージング処理状態であることが表示部であるディスプレイ39に表示される。またこのとき発振回路ユニット2においては、赤色LED24が点灯している状態になる。即ち、水晶振動子12に大電力が印加されている状態がディスプレイ39及び発振回路ユニット2に表示されることになる。
水晶センサ1に大電力が供給されると、水晶振動子12のエージング処理が行われ、水晶振動子12が強励振する。そのため水晶板26に大きな機械振動が与えられ、水晶板26の歪や内部応力の消失が促進されるので、水晶振動子12の発振周波数が短時間で安定化する。
ワンショット回路22のワンショットパルスの設定幅に対応する時間が経過すると、ワンショット回路22からのパルスが消失し、第3のトランジスタ53のベース電位が「L」から「H」に変わるので第3のトランジスタ53がオフになる。この結果第2のトランジスタ45のベース電位が低下し、第2のトランジスタ45のコレクタ−エミッタ間には、直列抵抗51、54及び抵抗46で決定される定電流が流れることになり、水晶振動子12の供給電力は、通常時に設定された値、例えば3μWになる。なおディスプレイ39からは、エージング処理状態の表示が消え、また発振回路ユニット2では、赤色LED24が消灯する。
作業者は、制御用PC30の「エージング処理状態」の表示の消失、若しくは赤色LED25の消灯を確認し、純水或いは緩衝液を水晶センサ1内に注入させて、所謂ブランク値に対応する水晶センサ1の発振周波数を求める。即ち発振回路4の周波数信号がバッファアンプ20、ダイオード31及びA/D変換回路32を介してFGPA33に入力され、FGPA33にて周波数信号の周波数を求める。この周波数信号の測定は、例えばA/D変換回路32にて得られたディジタル信号を直交検波して得られる回転ベクトルの実数成分及び虚数成分に基づいて当該回転ベクトルの回転速度を求めるといった手法で行われる。なお周波数の測定は、周波数カウンタを用いてもよい。
計測部3で求められた周波数の測定値の時系列データが、制御用PC30の制御用プログラム36に取り込まれた後、作業者は、感知対象物を含む試料液を水晶センサ1の注入口14に注入する。水晶センサ1に感知対象物を含む試料液が注入されると、水晶振動子12の吸着層28に試料液中の感知対象物が吸着され、水晶振動子12の発振周波数が、感知対象物の吸着量に応じて低くなる。
そして計測部3では、発振回路ユニット2の周波数信号の周波数を求め、その周波数の測定値の時系列データを制御用PC30へと送信する。制御用PC30には、純水或いは緩衝液を用いたブランク値である周波数の測定値の時系列データと、試料液が注入された後の周波数の測定値の時系列データとが表示され、作業者によりあるいは制御用PC30の制御プログラム36によってこれらの時系列データに基づいて、試料液を注入したことによる水晶振動子12の周波数の低下分(周波数差)を求める。そして例えば予め作成しておいた検量線に基づいて試料液中の感知対象物の濃度を求める。
上述したように本実施形態の感知装置では、予め設定した時間だけワンショット回路22からパルスを出力し、これに基づいて発振回路4に接続された水晶センサ1の水晶振動子12を強励振させるように発振回路ユニット2が構成されている。そのため水晶振動子12に、強制的に大きな機械振動を与えて水晶振動子12の歪や内部応力の消失を促進し、水晶振動子12の発振周波数を安定化させるのに要する時間を短縮することができる。従って感知装置におけるエージング処理に要する時間を短縮することができ、作業効率が向上する。
またワンショット回路22によって、水晶振動子12を強励振させる時間を設定できるようにしているため、測定結果の解析などに応じて設定を変更し、強励振させる時間を変更する等柔軟に対応することができ、強励振が不足していたり、無駄に長い時間に強励振させたりすることが回避できる。また接続検出部21によって水晶振動子12が発振回路4に接続されたことを検出し、水晶振動子12を強励振させるようにしているため、水晶センサ1を発振回路ユニット2に差し込むだけでエージング処理が自動的に開始されることになり、作業を円滑に行うことができ、便利である。
また本実施形態では、ワンショット回路22からパルスが出力されている状態、即ち水晶振動子12に大電力が供給されてエージング処理が行われている状態であることを、ディスプレイ39の表示と、発振回路ユニット2に設けられた赤色LED24によって作業者に報知できるように構成されており、エージング処理が終わる前に水晶センサ1に試料液が注入されてしまう事を防止できるようになっている。特に水晶センサ1が装着される発振回路ユニット2に表示部となる赤色LED24を設けたことにより、水晶センサ1の側に表示部があるため試料液を注入するときにこの赤色LED24を確認するだけでエージング中かどうかを確認でき、エージング処理中の処理液の誤注入を防止することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、発振回路ユニット2に接続検出21とワンショット回路22とを設けることに代えて、計測部3に水晶振動子12の接続を検出したときに、予め設定したパルス幅の(時間)のパルスが出力されるプログラムが設けられる。このプログラムは、図4に機能的に示すと、発振回路ユニット2から振幅が一定レベル以上の周波数信号が入力されたか否かを判断する接続検出部に相当する判断部61と、その判断結果が「YES」のときに時間設定部となるタイマ部62により設定された時間だけパルスを出力するパルス出力部63と、を備えている。さらに前記プログラムは、パルス出力部63からパルスが一旦出力されると、フラグ64を立て、その後判断部により周波数信号が消失したと判断したとき、つまり水晶振動子12が発振回路ユニット2から取り外されたときには、フラグ64を消去する機能を備えている。なお図4中65は、否定回路22aを介して第3のトランジスタ53のベースとパルス出力部63とを接続する専用線である。またそれ以外の構成については第1の実施形態の感知装置と同じであるため、第1の実施形態と同一部分または相当部分には、同一の符号を付して説明する。
この感知装置では、以下の手順でエージング処理が行われる。水晶振動子12が発振回路4に接続され、発信回路4の周波数信号が、バッファアンプ20、ダイオード31及びA/D変換回路32を介してFGPA33に入力されると、CPU34は、判断部61によって入力された周波数信号の入力レベルの立ち上がりを検出し、そのレベルが一定値を超えた時点でフラグ64を確認する。そしてCPU34は、このフラグ64が論理「0」であることが確認された場合には、水晶センサ1が接続された直後の状態、即ちエージング処理を行っていない状態であると判定してエージング処理を開始する。なおフラグ64が論理「1」の場合には、エージング処理済みと判定され、エージング処理は行われない。
エージング処理が開始されると、まずCPU34は、パルス出力部63とタイマ部62とに起動命令を送信し、パルス出力部63から予め設定された長さのパルスを、否定回路22aを介して第3のトランジスタ53のベースに供給すると共に、タイマ部62による処理時間のカウントを開始する。またCPU34は、タイマ部62のカウント情報を制御用PC30に送信し、制御用PC30の制御用プログラム36は、そのカウント情報をディスプレイ39(図1参照)に表示する。
パルス出力部63から第3のトランジスタ53のベースにパスルが出力されると、発振回路ユニット2の赤色LED24が点灯し、第1の実施形態と同様に水晶振動子12に大電力が供給されてエージング処理が行われる。またCPU34は、エージング処理中、タイマ部62のカウント情報を制御用PC30に送信し、制御用PC30の制御用プログラム36は、そのカウント情報をディスプレイ39(図1参照)に表示する。
その後タイマ部62のカウントが処理終了時間になると、CPU34は、パルス出力部63に停止命令を送信し、タイマ部62のカウントをリセットする。その後発振回路ユニット2では、パルス出力部63からのパルスの出力が停止するので赤色LED24が消灯し、水晶振動子12の供給電力が通常時に設定された値になる。またCPU34は、タイマ部62の停止情報を制御用PC30に送信すると共にフラグ64の値を1に変更し、制御用プログラム36は、エージング処理が終了したことをディスプレイ39に表示する。その後第1の実施形態と同様に感知対象物の処理を行う。
このような感知装置であっても、第1の実施形態と同様に、抵抗52及びPNP型の第3のトランジスタ53の直列回路を含む発振回路4が強励振回路となり、水晶センサ1が発振回路ユニット2に接続されたことを検出し、水晶振動子12に高電力を供給して強制的に大きな機械振動を与え、水晶振動子12の歪や応力の消失を促進することができ、水晶振動子12のエージング処理に要する時間を削減して、作業効率を向上させることができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、図5に示すように第2の実施形態の発振回路ユニット2に否定回路22a、第3のトランジスタ53、直列抵抗51、54及び抵抗52を設けることに代えて、発振回路4に第2のトランジスタ45のベースにパルスを出力するスイッチ部に相当するD/A変換回路71が設けられ、計測部3に、パスル出力部63を設けることに代えてCPU34からの命令に基づいてディジタルの制御信号をD/A変換回路71に送信する制御信号発信部72が設けられる。そしてD/A変換回路71は、制御信号発信部72を介してCPU34からディジタルの制御信号を受け取ると、その制御信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号に基づくパルスを第2のトランジスタ45のベースに出力する。なお図5中73は、D/A変換回路71と制御信号発信部73とを接続する高速データ通信が可能な通信ケーブルの一つであるパラレルケーブルである。またそれ以外の構成については第2の実施形態の感知装置と同じであるため、第2の実施形態と同一部分または相当部分には、同一の符号を付して説明する。
この感知装置でエージング処理を行う場合、まず第2の実施形態と同様に、判断部61によって入力された周波数信号の入力レベルの立ち上がりを検出し、そのレベルが一定値を超えた時点でフラグ64を確認する。このフラグ64が論理「0」であることが確認された場合には、水晶センサ1が接続された直後の状態、即ちエージング処理を行っていない状態であると判定してエージング処理を開始する。
エージング処理が開始されると、CPU34は、D/A変換回路71に第2のトランジスタ45のベース電位を上昇させるパルスを第2のトランジスタ45に向けて出力させるためのディジタルの制御信号を、制御信号発信部72を介して送信する。またCPU34は、タイマ部62のカウント情報を制御用PC30に送信し、制御用PC30の制御用プログラム36は、そのカウント情報をディスプレイ39(図1参照)に表示する。
この制御信号を受け取ったD/A変換回路71は、ディジタルの制御信号をアナログの制御信号に変換し、この制御信号に基づくパルスを第2のトランジスタ45のベースに出力する。これにより第2のトランジスタ45のベース電位が上昇するので、第1及び第2の実施形態と同様に第1のトランジスタ40のベース−エミッタ間の電圧が上昇して水晶振動子12に大電力が供給され、エージング処理が行われる。
その後タイマ部62のカウントが処理終了時間になると、CPU34は、D/A変換回路71に、第2のトランジスタ45のベース電位を上昇させるパルスを第2のトランジスタ45に向けて出力させるためのディジタルの制御信号を、制御信号発信部72を介して送信する。これによりD/A変換回路71からは、第2のトランジスタ45のベース電位を元に戻すパルスが出力され、水晶振動子12の供給電力が、通常時に設定された値になる。またCPU34は、タイマ部62の停止情報を制御用PC30に送信すると共にフラグ64の値を1に変更し、制御用プログラム36は、エージング処理が終了したことをディスプレイ39に表示する。その後第1の実施形態と同様に感知対象物の処理を行う。
このような感知装置であっても、D/A変換回路71を含む発振回路4が強励振回路となり、水晶センサ1が発振回路ユニット2に接続されたことを検出し、水晶振動子12に高電力を供給して強制的に大きな機械振動を与え、水晶振動子12の歪や応力の消失を促進することができ、水晶振動子12のエージング処理に要する時間を削減して、作業効率を向上させることができる。
なお第2及び第3本実施形態では、エージング処理の処理時間をタイマ部62によって制御するように構成されているため、このタイマ部62を書き換えることによって、エージング処理時に水晶振動子12に大電力が供給される時間を変更することができる。従って本実施形態では、タイマ部62を書き換えるだけで種類の異なる水晶振動子12に対して適切なエージング処理を行うことができる。
また第2及び第3の実施形態では、判定部61、タイマ部62及びフラグ64を計測部3に組み込んでいるが、本発明の実施の形態としては、これらのプログラムを制御PC30の制御プログラム36に組み込み、制御PC30から計測部3を介して発振回路ユニット2に命令を送信するようにしてもよい。
また第2及び第3の実施形態では、エージング処理の終了判定を、タイマ部62よるカウントによって判定しているが、本発明の実施の形態としては、例えば制御プログラムによって計測部から送信される周波数信号の時系列のデータを監視するようにし、周波数信号の振幅の幅が予め設定された許容値の範囲内になったことが確認できるまでの時間を処理時間として、この処理時間の経過を確認できたときにパルス出力部または制御信号発信部にエージング処理の終了命令を送信するようにしてもよい。
[他の実施形態]
本発明の感知装置は、次の図6に示すような感知装置であってもよい。この感知装置は、第1の実施形態で発振回路4に設けられていた抵抗52及び第3のトランジスタ53と否定回路22aとを設けることに代えて、水晶センサ1に電源端子37とは別に設けられた追加電源38から直接電流を供給する給電線80と、給電線80に設けられたスイッチング素子81とを備えている。このスイッチング素子81は、ワンショット回路22に接続され、ワンショット回路22からパルスが出力されると、スイッチング素子81のスイッチが入り水晶センサ1側に電流が供給されるように構成されている。なお、それ以外の構成については第1の実施形態の感知装置と同じであるため説明は省略する。
この感知装置では、接続検出部21によって水晶センサ1の水晶振動子12が発振回路4に接続されたことが検出され、ワンショット回路22からパルスがスイッチング素子81に出力されると、給電線80を介して水晶センサ1側に追加電源38から電流が供給される。そのため水晶振動子12に供給される電力が大きくなり、強制的に大きな機械振動を与えて水晶振動子12の歪や応力の消失を促進することができる。従ってこのような感知装置であっても、給電線80とスイッチング素子81とが強励振回路となり、上述した各実施形態と同様に、感知対象物の計測を行う為に要する準備時間を短縮して作業効率を向上させることが可能となる。
1 水晶センサ
2 発振回路ユニット
3 計測部
4 発振回路
12 水晶振動子(圧電振動子)
14 注入口
20 バッファアンプ
21 接続検出部
22 ワンショット回路
22a 否定回路
24 赤色LED
26 水晶板
28 吸着層
30 制御用コンピュータ(制御用PC)
34 CPU
36 制御用プログラム
37 電源端子
38 追加電源
39 ディスプレイ
40 第1のトランジスタ
45 第2のトランジスタ
53 第3のトランジスタ
61 判断部
62 タイマ部
63 パルス出力部
64 フラグ
65 専用線
71 D/A変換回路
72 制御信号発信部
73 パラレルケーブル

Claims (5)

  1. 感知対象物を吸着するための吸着層がその表面に形成され、感知対象物の吸着により固有振動数が変わる圧電振動子を用い、この圧電振動子の固有振動数に基づいて感知対象物を感知する感知装置において、
    前記圧電振動子を発振させるための発振回路と、
    前記発振回路に接続された圧電振動子に、当該圧電振動子の発振を安定化させるために、感知対象物の測定時に供給される通常電力の2倍以上の大電力を供給して圧電振動子を予め設定した設定時間だけ強励振させる強励振回路と、を備えたことを特徴とする感知装置。
  2. 前記発振回路は前記強励振回路の一部を兼用し、
    前記強励振回路は、この発振回路に接続され、当該発振回路から圧電振動子に供給される電力が前記通常電力と前記大電力との間で切り替わるスイッチ部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の感知装置。
  3. 前記圧電振動子を強励振させる時間を設定するための時間設定部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の感知装置。
  4. 感知装置を操作するための操作画面表示部を備え、前記時間設定部はこの操作画面表示部に組み合わされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の感知装置。
  5. 前記圧電振動子が発振回路に接続されたことを検出して、前記強励振回路に強励振動作を開始させるための信号を出力する接続検出部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の感知装置。
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