JP4791966B2 - 核酸解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質支持体上での核酸の増幅方法と、該方法を利用した核酸の抽出、増幅、検出のトータルシステムに関する。
最近、DNA検査の一般的需要が拡大している。こうした需要に応えるためには、検体からの核酸の抽出、増幅、検出を一貫して行える、簡便な小型システムの開発が望まれる。
酵素や血液成分等の生化学分析では、ドライケミストリーを利用した簡易な固相検査システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これらのシステムでは、反応に必要な試薬類がマトリックス中に乾燥状態で提供され、添加された検体の水分を溶媒として反応が行われる。ドライケミストリーを利用した検査システムでは、わずかな検体を固相上に点着するだけで、目的とする成分が簡便に測定できるため実用性が高く、生化学分野で汎用されている。
しかしながら、上記のドライケミストリーを核酸検査に応用するためには、いくつかのハードルがある。まず、核酸の抽出、増幅、検出は従来異なる系で行われており、単一のシステムに一貫化することは難しい。特に、PCR等の核酸増幅は、高温での複雑な温度サイクルを必要とし、また鋳型核酸と酵素、基質、プライマー等の試薬類を高い自由度で反応させる必要があることから、一般に固相反応系には適さない。
これに対し、不織布や濾紙、ハイドロキシアパタイト等からなるフィルターに核酸を吸着させ、LAMP法によって増幅する方法が報告されている(特許文献2及び特許文献3参照)。これらの方法では、固相支持体上に核酸を吸着させ、ここにLAMP反応液を添加することにより、核酸の増幅が行われる。
LAMP法は、発明者らが開発した核酸増幅法で、PCR法で不可欠とされる複雑な温度制御を必要せず、特有のインバーテッドリピート構造(同一鎖上に互いに相補的な配列が繰り返し含まれる構造)を有する長鎖の増幅産物を、高い増幅効率で合成できる(非特許文献1及び特許文献4参照)。発明者らは、LAMP増幅産物に核酸沈澱剤を結合させることで、親水性基材上で核酸増幅を検出する方法を既に報告している(特許文献5参照)。しかしながら、この方法はハイブリダイゼーションアッセイにおけるB/F分離の問題の解決が目的であって、核酸の抽出、増幅、検出を固相中で一貫して行うシステムを指向したものではない。
特開平5‐80049号公報 特開2004−201607号公報 国際公開03/6650号パンフレット 国際公開00/28082号パンフレット 特開2004−141159号公報 納富継宣ら(Tsugunori Notomi et al.),「Loop−mediated isothermal amplification of DNA.」,ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Res.),Vol.28,No.12:e63,(2000)
これまでの研究で、発明者らは検体からの核酸抽出を固相上で行い標的核酸を固相に担持させる技術、及び、LAMP産物−ポリエチレンイミン(PEI)複合体を固相上に展開させて配列特異的に検出する方法を確立している。そこで、もし固相上でLAMP反応を起こすことができれば、抽出、増幅、検出の全工程が固相上で実現することになり、核酸解析のトータルシステムが構築できることになる。
すなわち、本発明の課題は、核酸の抽出、増幅、検出の全工程を固相支持体上で行うことが可能な、核酸解析のトータルシステムを構築することにある。
発明者らは、微量のLAMP反応液を展開させた濾紙の小片を所定温度に加熱し、LAMP反応が起きることを確認した。さらに、LAMP反応液を幾つかの成分に分割し、それぞれを複数の濾紙に展開して、重ね合わせることによってもLAMP反応が起きることを確認した。そして、これらの結果をもとに、固相抽出法−固相LAMP反応−固相PEI検出というトータルシステムのモデル実験を行い、目的とする核酸の検出に成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、予め核酸増幅試薬を含む多孔質支持体に、核酸を含む検体を添加し、標的核酸の核酸増幅反応を行うことを特徴とする、核酸解析方法に関する。
前記方法は、核酸を含む検体からの核酸抽出と、標的核酸の核酸増幅反応と、該核酸増幅反応あるいはその産物の検出を、前記多孔質支持体上で一貫して行うことができる。
この場合、前記多孔質支持体は、さらに核酸抽出試薬及び/又は核酸検出試薬を予め含むものであってもよい。
ある態様において、本発明の方法は、2以上の層で構成される多孔質支持体上において、
1)核酸抽出試薬を含む多孔質支持体層で核酸を抽出し、
2)核酸増幅試薬を含む多孔質支持体層で標的核酸の核酸増幅反応を行い、そして
3)上記核酸増幅反応産物に核酸プローブをハイブリダイズさせ、生成したハイブリッドに核酸沈澱剤を作用させて凝集塊を形成させ、得られた凝集塊により検体中の標的核酸を検出することを特徴とする核酸解析方法である。
前記方法において、核酸沈澱剤及び/又は核酸プローブは多孔質支持体中に予め含まれていてもよい。
本発明の方法において、予め核酸増幅試薬、核酸抽出試薬、及び/又は核酸検出試薬を含む2以上の多孔質支持体から構成されるものであってもよい。
ある態様において、核酸増幅試薬は2以上の多孔質支持体に分割して保持されており、増幅時にそれら支持体を接触させて用いるものであってもよい。例えば、プライマーとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されていてもよいし、ポリメラーゼとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されていてもよい。あるいは、ポリメラーゼと、プライマーと、それ以外の核酸増幅試薬がそれぞれ異なる多孔質支持体に分割して保持されていてもよい。なお、これらの方法において、ポリメラーゼは乾燥状態で多孔質支持体に保持されていることが望ましい。
本発明の方法において、核酸増幅反応としてはLAMP反応を用いることが好ましい。
本発明の方法において、多孔質支持体としては、例えば、濾紙、ナイロンメンブレン、セルロースエステル、セルロース、不織布、織布、綿、ポリウレタン、及びプラスチック焼結体から選ばれる1又は2以上を用いることができる。
また、核酸沈澱剤としては、ハイドロキシアパタイト、ポリエチレンイミン、硫酸プロタミン、ポリ−L−リジン、及びジエチルアミノエチル デキストランからなる群より選ばれるいずれか1又は2以上を用いることができる。
本発明はまた、予め核酸増幅試薬、核酸抽出試薬、及び/又は核酸検出試薬を含む1又は2以上の多孔質支持体から構成される、核酸の抽出、増幅、検出を一貫して実施するための核酸解析システムを提供する。
前記多孔質支持体に含まれる試薬としては、例えば、
i)プライマー又はその標識物
ii)核酸プローブ又はその標識物。
iii)核酸沈澱剤
iv)DNAポリメラーゼ
v)DNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチド、又はその標識物
等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明によれば、核酸の抽出、増幅、検出を一貫して行える固相システムが提供される。本システムは、核酸分析へのドライケミストリーの応用として、臨床現場や研究室における簡便なDNA検査やDNA分析を可能にする。
図1は、濾紙上LAMP反応の概略を示した図である。
図2は、濾紙上LAMP反応(CK20;カルセイン蛍光検出)の結果を示す。
図3は、濾紙上LAMP反応(PSA;カルセイン蛍光検出)の結果を示す。 図3(A)は、濾紙のカルセイン蛍光を目視検出した結果(1,2:濾紙法ネガティブ、3,4:濾紙法ポジティブ、5:溶液法ネガティブ、6:溶液法ポジティプ)である。図3(B)は、増幅反応液の3%アガロース電気泳動分析結果(1,2:濾紙法ネガティブ、3,4:濾紙法ポジティブ、5:溶液法ネガティブ、6:溶液法ポジティブ)である。
図4は、二枚法−Bst濾紙法による濾紙上LAMP反応(PSAカルセイン蛍光検出)の結果を示す。 図4(A)は、濾紙のカルセイン蛍光を目視検出した結果(上段,濾紙法;下段,溶液法)である。上段下段共に、左2本はBstを含まない濾紙を重ねた場合、右2本はBstを展開した濾紙を重ねた場合を示す。 図4(B)は、増幅反応液の3%アガロース電気泳動分析結果(1,2:濾紙法ネガティブ、3,4:濾紙法ポジティブ、5:溶液法ネガティブ、6:溶液法ポジティブ)である。
図5は、二枚法−プライマー濾紙法による濾紙上LAMP反応の結果(PSAカルセイン蛍光検出)を示す。 図5(A)は、濾紙のカルセイン蛍光を目視検出した結果(上段,濾紙法;下段,溶液法)である。上段下段共に、左2本はPrimerを含まない濾紙を重ねた場合(Nega)、右2本はPrimerを展開した濾紙を重ねた場合(Posi)を示す。 図5(B)は、増幅反応液の3%アガロース電気泳動分析結果(1,2:濾紙法ネガティブ、3,4:濾紙法ポジティブ、5:溶液法ネガティブ、6:溶液法ポジティブ)である。
図6は、三枚法による濾紙上LAMP反応の結果(HCV転写RNAカルセイン蛍光検出)を示す図である。 図6(A)は、濾紙のカルセイン蛍光を目視検出した結果(1,2:三枚濾紙法ネガティブ、3,4:三枚濾紙法ポジティブ、5:一枚濾紙法ネガティブ、6:一枚濾紙法ポジティブ、7:溶液法ネガティブ、8:溶液法ポジティブ)である。 図6(B)は、増幅反応液の3%アガロース電気泳動分析結果(1,2:三枚濾紙法ネガティブ、3,4:三枚濾紙法ポジティブ、5:一枚濾紙法ネガティブ、6:一枚濾紙法ポジティブ、7溶液法ネガティブ、8:溶液法ポジティブ)である。
図7は、抽出−増幅−検出を全て濾紙上で行った結果(1.HBV検体増幅結果 2.HCV検体増幅結果 3.陰性コントロール(HBV標的核酸無し))を示す。
図8は、濾紙三枚法、5μl溶液反応、25μl通常スケール反応によるHBV検体の増幅結果を示す。図中、△(Paper_20)は濾紙三枚法、○は5μl(5μl_20)溶液反応、□(25μl_20)は25μl通常スケール反応の測定結果(各3本)を、無印(Paper_N、5μl_N、25μl_N)はコントロール(各2本)の測定結果を示す。
図9は、一枚法による濾紙上PCR反応(PSA)の電気泳動分析結果を示す(M:100bpラダー、1:濾紙法ネガティブ、2:濾紙法ポジティブ鋳型DNA 10copies/tube、3:濾紙法ポジティブ鋳型DNA 10copies/tube、4:溶液法ネガティブ、5:溶液法ポジティブ鋳型DNA 10copies/tube、6:溶液法ポジティブ鋳型DNA 10copies/tube)。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2004−252767号の明細書に記載された内容を包含する。
1.用語の定義
標的核酸:本明細書中における「標的核酸」とは、検出すべき核酸配列又は核酸分子を意味する。
多孔質支持体:本明細書中における「多孔質支持体」とは、多孔質の親水性固相支持体であって、例えば、濾紙、ナイロンメンブレン、又はセルロースエステル等を挙げることができる。
検体:本明細書中における「検体」には、血液、末梢血白血球等、核酸を含有する全ての試料、及びそれらの試料から抽出された核酸が含まれる。
核酸増幅反応:本明細書中における「核酸増幅反応」とは、PCR法、ICAN法、SDA法、NASBA法、LAMP法等、公知の核酸増幅反応の全てが含まれる。
核酸増幅試薬:本明細書中における「核酸増幅試薬」には、DNAポリメラーゼ、基質ヌクレオチド、プライマー、プローブ等、核酸増幅反応に必要な全ての試薬が含まれる。
核酸抽出試薬:本明細書中における「核酸抽出試薬」には、核酸抽出に必要な全ての試薬が含まれる。
核酸検出試薬:本明細書中における「核酸検出試薬」には、発光試薬、蛍光試薬、インターカレーター、核酸沈澱剤等、核酸検出に必要な全ての試薬が含まれる。
プライマー:本明細書中における「プライマー」とは、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、増幅するためのオリゴヌクレオチド又はその標識物を意味する。
核酸プローブ:本明細書中における「核酸プローブ」とは、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、該配列を検出するための核酸断片を意味する。なお、後述するように核酸プローブは、ペプチド核酸やロックド核酸であってもよい。
核酸沈澱剤:本明細書中における「核酸沈澱剤」とは、ポリエチレンイミン等、核酸に吸着して凝集塊を形成させるものを意味する。
なお、上記各用語の具体例については、以下の記載と実施例においてさらに詳述する。
2.多孔質支持体上での核酸の抽出
多孔質支持体上での核酸の抽出は、後述する実施例3に記載する方法にしたがって実施できる。例えば、タンパク質変性剤共存下で検体にアルコール類(エタノール、イソプロパノール)を加えて核酸を沈澱させ、それを多孔質支持体上に担持させればよい。
3.多孔質支持体上での核酸の核酸増幅
多孔質支持体上で抽出された核酸は、そのまま核酸増幅反応に付される。核酸増幅反応は、PCR法をはじめ、ICAN法、SDA法、NASBA法、LAMP法等が公知のいずれの方法を用いてもよい。
特に、本発明で用いられる核酸増幅反応としてはLAMP反応が好ましい。LAMP(Loop−mediated isothermal amplification)法は本発明者らが開発した核酸の増幅方法で、インナープライマーペア或いはこれにアウタープライマーペア、さらにループプライマーペアを加えた、2種、4種或いは6種の特異的プライマーと、鎖置換型ポリメラーゼ及び基質であるヌクレオチドを用いて、等温条件下(65℃前後)でDNA又はRNAを迅速かつ安価に増幅することができる。LAMP法の概要については、文献:Notomi,T et al.:Nucleic Acids Res.28(12):e63(2000)、特許:国際公開WO 00/28082号、あるいは栄研化学(株)ホームページ(http://www.eiken.co.jp/)に詳細に記載されている。
LAMP法では、増幅生成物の同一鎖上の複数の位置で、伸長反応と増幅反応が同時進行するため、DNAの増幅が超指数関数的にしかも等温条件下で達成され、特有のインバーテッドリピート構造(同一鎖上に互いに相補的な配列が繰り返し含まれる構造)を有する長鎖の増幅産物を、高い増幅効率で合成することができる。
LAMP法ではインナープライマー、アウタープライマー、ループプライマーと呼ばれる、特異的プライマーが用いられる。
インナープライマーはLAMP法に必須のプライマーであって、鋳型DNAのそれぞれの鎖において、3’側に存在する任意配列X2c、これより5’側の任意配列X1cを選択したとき、該X2cに相補的配列X2と該X1cと同一の配列X1cを3’側から5’側にこの順で含む(X1c+X2の構造をもつ)プライマーである。
アウタープライマーとは、インナープライマーよりも外側(すなわち鋳型の3’側)の任意配列X3cに相補的配列を有し、これにアニールしうるプライマー2種(2本鎖に相補的な各々について1つずつ)をいう。
ループプライマーとは、LAMP法による増幅生成物の同一鎖上に生じる相補的配列が互いにアニールしてループを形成するとき、該ループ内の配列に相補的な塩基配列をその3’末端に含むプライマーをいう。前記アウタープライマーとループプライマーはLAMP法に必須のプライマーではないが、これらがあれば増幅反応はより効率的に進行する。
LAMP反応は、インナープライマーが鋳型核酸上の相補的配列に対して安定な塩基対結合を形成することができ、かつ鎖置換型ポリメラーゼが酵素活性を維持しうる温度、例えば50〜75℃、好ましくは55〜70℃で、1分〜10時間、好ましくは5分〜4時間かけて行われる。
またLAMP反応は、酵素反応に好適なpHを与える緩衝剤、酵素の触媒活性の維持やアニールのために必要な塩類、酵素の保護剤、更には必要に応じて融解温度(Tm)の調整剤等の共存下で行うことが好ましい。緩衝剤としては、Tris−HCl等の中性から弱アルカリ性に緩衝作用を持つものが用いられる。pHは使用するDNAポリメラーゼに応じて調整すればよい。塩類としては、例えばKCl、NaCl、あるいは(NHSO等が、酵素の活性維持とDNAの融解温度(Tm)調整のために適宜添加される。酵素の保護剤としては、ウシ血清アルブミンや糖類が利用される。また、融解温度(Tm)調整剤としては、ベタイン、プロリン、ジメチルスルホキシド、あるいはホルムアミドを一般的に利用することができる。
インナープライマーや基質ヌクレオチドは適当な標識によりラベルされていてもよい。標識物質としては、例えば、蛍光色素(FITC、ROC等)、酵素、タンパク、放射性同位体、化学発光物質(例えば、DNP)、ビオチン、DIG(ジゴキシゲニン)等を挙げることができる。
4.多孔質支持体上での標的核酸の検出
増幅された標的核酸は、多孔質支持体上で標識核酸プローブや蛍光試薬等を用いて公知の方法により簡便に検出することができる。特に、核酸プローブと核酸沈澱剤を用いた方法は、増幅産物を目視で簡便に確認できるという点で好ましい。
(1)核酸プローブ
検出で用いられる核酸プローブは、標的核酸の少なくとも一部に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブであって、その鎖長は、通常5〜50塩基長程度、好ましくは10〜30塩基長程度である。
特に核酸沈澱剤を用いる場合、前記プローブは比較的短鎖であることが好ましい。これは、核酸沈澱剤は長鎖の核酸に吸着しやすいという性質を有するため、遊離のプローブへの沈澱剤の吸着を防止して良好なB/F分離を達成するには、一般に核酸プローブは比較的短鎖であることが必要だからである。しかしながら、核酸沈澱剤反応時の温度をプローブのTm付近に調整するなど反応条件を調整すれば、プローブの長さにかかわらず良好なB/F分離が可能となる。
前記核酸プローブは、検出のために適当な試薬で標識されていてもよい。標識物質としては、例えば、蛍光色素(FITC、ROC等)、酵素、タンパク、放射性同位体、化学発光物質(例えば、DNP)、ビオチン、DIG(ジゴキシゲニン)等を挙げることができる。また、核酸プローブはペプチド核酸(Nielsen,P.E.et al.,Science 254,1497〜1500(1991))、又はロックド核酸(WO99/14226、特表2002−521310)であってもよい。
(2)核酸沈澱剤
本発明で用いられる核酸沈澱剤は、核酸に吸着して凝集塊を形成させるものであれば特に限定されないが、鎖長の短い核酸よりも鎖長の長い核酸と選択的に結合するものが好ましい。すなわち、核酸沈澱剤としては、界面活性剤、ジヒドロキシベンゼン、ドデシル硫酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゼン、サルコシル(Sarkosyl)、及びSO、PO、Cl、HCOOとのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が公知であるが、本発明においては、ハイドロキシアパタイト、ポリエチレンイミン、硫酸プロタミン、ポリ−L−リジン、及びジエチルアミノエチル デキストラン(DEAE dextran)が好ましい。ポリエチレンイミンは、特に重合度が40以下程度のものが好ましい。
使用する核酸沈澱剤の濃度や量は、各沈澱剤の性質によって決定される。例えば、重合度14のポリエチレンイミンであれば、濃度0.1M〜2M程度、添加量は反応液25μlに対して4〜200μg程度が好ましい。
核酸沈澱剤に適した反応液のpHは各沈澱剤の性質によって決定されるが、一般的に6〜10が好ましい。これは反応液のpHが高すぎるとプローブが核酸にハイブリダイズしにくくなり、一方pHが低すぎると核酸のプロトン化によりB/F分離が低下するからである。
また、核酸沈澱剤添加時の反応液のイオン強度も各沈澱剤の性質によって決定されるが、一般的に0.15mol/l以下が好ましい、イオン強度が高すぎると沈澱剤と核酸の静電的相互作用が阻害され、十分な凝集塊の形成が望めないからである。
さらに、核酸沈澱剤添加時の温度は20〜70℃程度が好ましく、核酸増幅時の一定温度と同じでもよい。
(3)核酸沈澱剤による検出
前記核酸プローブと核酸沈澱剤は、増幅後の多孔質支持体上に添加してもよいし、多孔質支持体の適当な位置に予めスポットしておいてもよい。あらかじめ多孔質支持体に核酸プローブを添加して前記増幅反応を行う場合、前記増幅工程とハイブリダイゼーション工程はほぼ同時に進行する。増幅産物と核酸プローブとのハイブリダイズ条件は特に限定されないが、通常50〜70℃で、5分程度行えばよい。
増幅核酸、核酸プローブ、核酸沈澱剤で形成される凝集塊と、遊離の核酸プローブは固相上での移動度が明確に異なるため、両者は容易に分離することができる。
凝集塊は核酸プローブや増幅産物を標識しておくことにより、容易に検出することができる。検出は定性的なものと定量的なものの両方を含み、例えば、標的配列の有無等、定性的な検出であれば、凝集塊の目視確認によって簡便に実施することが可能である。一方、定量的な検出は、蛍光プレートリーダーpolarion(TECAN社製)等、市販の装置を用いてシグナル強度を測定することにより実施することができる。
5.核酸解析システム
本発明はまた、予め核酸増幅試薬、核酸抽出試薬、及び/又は核酸検出試薬を含む1又は2以上の多孔質支持体から構成され、核酸の抽出、増幅、検出を一貫して行うための核酸解析システムを提供する。
多孔質支持体に含まれる試薬としては、例えば、
i)プライマー又はその標識物
ii)核酸プローブ又はその標識物
iii)核酸沈澱剤
iv)DNAポリメラーゼ
v)DNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチド、又はその標識物
等が挙げられるが、これに限定されない。
LAMP増幅の場合、上記プライマーは、インナープライマーに加えて、アウタープライマー、及び/又はループプライマー、あるいはその標識物をさらに含んでいることが望ましい。
また、核酸沈澱剤は、前記したように、ハイドロキシアパタイト、ポリエチレンイミン、硫酸プロタミン、ポリ−L−リジン、及びジエチルアミノエチル デキストランからなる群より選ばれるいずれか1つ又は2つ以上であることが好ましい。
さらに、本発明のシステムは、必要に応じて融解温度調整剤(例えば、ベタイン、トリメチルアミンN−オキシド等)、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、合成反応生成物の検出のために必要な他の試薬類を含むキットとして提供されてもよい。
本発明のシステムは、核酸増幅試薬が2以上の多孔質支持体に分割して保持されており、使用時(あるいは増幅時)にそれら支持体を接触させて用いるものとして構成することもできる。例えば、プライマーとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されているシステム、ポリメラーゼとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されているシステム、あるいは、ポリメラーゼと、プライマーと、それ以外の核酸増幅試薬がそれぞれ異なる多孔質支持体に分割して保持されているシステム等を挙げることができる。これらのシステムでは、ポリメラーゼは安定性を維持するため、乾燥状態で多孔質支持体に保持されていることが望ましい。
以下、実施例を用いて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、特に記載しない限り、実施例では以下に示すLAMP反応液及び試験材料を用いて行った。
(1)LAMP反応液
Figure 0004791966
(2)標的核酸、プライマー及び標識プローブ
a) PSA(pBR322にクローニングしたPSA cDNA GenBank ID M26663)
FIP TGTTCCTGATGCAGTGGGCAGCTTTAGTCTGCGGCGGTGTTCTG(配列番号1)
RIP TGCTGGGTCGGCACAGCCTGAAGCTGACCTGAAATACCTGGCCTG(配列番号2)
F3 TGCTTGTGGCCTCTCGTG(配列番号3)
R3 GGGTGTGTGAAGCTGTG(配列番号4)
b) CK20(GenBank ID BC031559)
FIP:CAATTTGCAGGACACACCGAGATTGAAGAGCTGCGAAGTC(配列番号5)
BIP:CTGCTGAGGACTTCAGACTGACTTGGAGATCAGCTTCCAC(配列番号6)
F3:CGA CTACAGTGCATATTACAGAC(配列番号7)
B3:GTAGGGTTAGGTCATCAAAGAC(配列番号8)
LpF:GCAGTTGAGCATCCTTAATCT(配列番号9)
LpB:GACTGAGAGAGGAATACGTC(配列番号10)
c) HCV検体(秋田日赤血漿パック検体;ABC No62;約2300KIU/ml;1.15×10copies/μl)
FIP:GGTTKATCCAAGAAAGGACCCAGTCGCCATAGTGGTCTGCGGA(配列番号11)
BIP:CCGCAAGACTGCTAGCCGAGGCAAGCACCCTATCAGGC(配列番号12)
F3:GGCGTTAGTATGAGTGTCGTAC(配列番号13)
B3:CATGGTGCACGGTCTACG(配列番号14)
Loop R:TTGGGTTGCGAAAGG(配列番号15)
d) HBV検体(日赤血漿パック検体 No.79;63100copies/ml)
FIP:GATAAAACGCCGCAGACACATCCTTCCAACCTCTTGTCCTCCAA(配列番号16)
BIP:CCTGCTGCTATGCCTCATCTTCTTTGACAAACGGGCAACATACCTT(配列番号17)
F3:CAAAATTCGCAGTCCCCAAC(配列番号18)
B3:GGTGGTTGATGTTCCTGGA(配列番号19)
Loop R:GTTGGTTCTTCTGGACTACC(配列番号20)
標識HBVプローブ(3’ROX標識):CAGCGATAGCCAGGACAAAG(配列番号21)
(3)濾紙
濾紙材としては、東洋濾紙社製定性濾紙No.1を3mm角に切断したものあるいは直径4mmの円形に切断したものを用いた(以下ともに濾紙片と表記)。
[実施例1] LAMP反応液への濾紙の添加実験
まず、通常スケールのLAMP反応に対する濾紙(セルロース)の添加による影響をCK20の系を用いて以下の方法で調べた。
1.試験方法
0.2mlのPCRチューブに50μlのLAMP反応液(表1)を入れ、所定の枚数の濾紙片を加えた。標的核酸としてはCK20を用い、サーマルサイクラーで63℃、60分間加熱することによりLAMP増幅を行い、ABI−7700(Applied Biosystems製)を用いてカルセイン蛍光(FAM用Dye layer)を測定することにより、増幅の有無を確認した。
2.試験結果
結果を図2に示す。図2に示されるように、濾紙片を20枚添加しても増幅反応が起きることが確認された。濾紙片(3mm角)は最大で3μlの液体を保持できるので、20枚の濾紙片であれば50μl以上の液体を保持できることになる。すなわち、反応液に濾紙が添加された状態(反応液過剰の状態)のみならず、濾紙に反応液を展開した状態(濾紙過剰の状態)でもLAMP反応が起こる可能性が確認された。
[実施例2] 濾紙上でのLAMP反応
1.試験方法
0〜20枚の濾紙片(3mm角)を添加して反応を行った。PCRチューブはサーマルサイクラーで所定の温度に加熱してLAMP反応を行い、カルセイン(同仁化学)を加えて蛍光を検出すること(Applied Biosystems製ABI−7700(FAM用Dye layer使用))により、増幅の有無を確認した。次いで、濾紙にLoading Dye,6x(Promega製)を10μl添加して5分放置し、3%アガロースの電気泳動にかけて、標的核酸のLAMP増幅を確認した。濾紙上LAMP反応は、以下の各種方法により行った。
1.1 一枚法
表1に示す全ての成分を含むLAMP反応液を1枚の濾紙に3μl展開し、LAMP反応を行った。
1.2 二枚法
プライマー、酵素、基質、マグネシウムイオンが同一の溶液中に存在している場合、長期間保存しているとプライマーダイマー等の非特異反応が起きる可能性が考えられる。そこで、プライマーあるいは酵素を残りの試薬とは別の濾紙に展開しておき、必要なときにそれらを重ね合わせてLAMP反応を起こすことが可能かどうかをPSAの系を用いて検討した。
(1)プライマー濾紙法
プライマーだけを含まないLAMP反応液(RM;1.67倍濃度)3μl、及び2.5倍濃度のプライマー溶液2μlを、それぞれ別々の濾紙片に展開し、それらを重ね合わせてLAMP反応を行った。なお、各成分の濃度は、2枚が合わさって、全液量が5μlとなった状態で所定の濃度になるように設定されている。
(2)Bst濾紙法
Bstのみを含まないLAMP反応液(RM;1.67倍濃度)3μl、4倍希釈したBst(あるいはEnzyme Mix)原液2μlをそれぞれ別の濾紙片に展開し、それらを重ね合わせて反応を行った。なお、各成分の濃度は、2枚が合わさって、全液量が5μlとなった状態で所定の濃度になるように設定されている。
1.3 三枚法
濾紙反応法を濾紙抽出法と組み合わせるためには、濾紙上に担持された標的核酸に対して濾紙上でLAMP反応が起こせなければならない。つまり、標的核酸を含む濾紙、RM濾紙、Bst濾紙(あるいはEnzyme Mix濾紙)の3枚からなる濾紙反応が必要である。そこで、HCVの系を用いて以下の方法で三枚法を試みた。
3枚の濾紙片に、Bst及び標的核酸を含まないLAMP反応液(RM;1.67倍濃度)3μl、2倍希釈したBst(あるいはEnzyme Mix)溶液1μl、任意の濃度の標的核酸溶液を1μlをそれぞれ展開し、それらを重ね合わせてLAMP反応を行った。なお、各成分の濃度は、3枚が合わさって、全液量が5μlとなった状態で所定の濃度になるように設定されている。
2.試験結果及び考察
2.1 一枚法
PSA(6x10−20M)を標的核酸として、65℃、60分間濾紙上LAMP反応を行った結果を図3に示す。図3に示されるよう、標的核酸を含む場合のみカルセイン蛍光が観察され、LAMP増幅が確認された。また、3%アガロース電気泳動分析により、所定のサイズのラダーパターンが得られたことから、濾紙上でLAMP反応が可能なことが確認された。
2.2 二枚法
プライマー濾紙法により、PSA(6x10−20M)を標的核酸として、65℃、60分間濾紙上LAMP反応を行った結果を図4に示す。また、Bst濾紙法により、PSA(6x10−20M)を標的核酸として、65℃、60分間濾紙上LAMP反応を行った結果を図5に示す。
図4及び図5より、Primerあるいは酵素が別々の濾紙に展開されていても、それらを重ね合わせることによって所定のLAMP反応が起きることが確認された。すなわち、プライマーもBstも濾紙の細孔にくらべて十分に小さく、濾紙間をかなり自由に移動できることが確認された。
なお、本実験は、二枚の濾紙間に物質(プライマーあるいは酵素)の移動が可能かどうかを確認することを目的としたため、ネガティブコントロールとしては、標的核酸無しではなく、それぞれプライマー無しあるいは酵素無しの反応条件とした(二枚のうちの一枚を水スポット濾紙とした)。
Bstは濾紙上で安定に製剤化できることがわかっているため、Bst濾紙法はLAMP試薬の製剤化も兼ねられると考えられる。一方、Primerを別濾紙にした場合は、RM濾紙が系によらずに共通化できるという長所が考えられ、多項目あるいは複数ターゲットの同時検出可能に応用可能であると考えられる。
2.3 三枚法
三枚法により、HCV転写RNA(6x10−18M)を標的核酸として、63℃、60分間濾紙上LAMP反応を行った結果を図6に示す。三枚法によっても所定のLAMP増幅が確認され、LAMP試薬を2枚に分けて製剤化し、そこに濾紙抽出した標的核酸担持濾紙を重ね合わせるシステムが構築可能であることが確認された。
ところで、発明者らは、濾紙を用いた核酸抽出法において、イソプロパノールを作用させずに濾過操作を行った場合、標的核酸が濾紙を通過してしまい、濾紙上に担持できないことを確認している。このことから、イソプロパノールで沈澱(凝集)した標的核酸は濾紙の細孔より大きいが、溶解している標的核酸は濾紙の細孔より十分に小さいことがわかる。また、溶解している標的核酸と濾紙(セルロース)の間には吸着等の特別な相互作用が無いこともわかる。以上より、溶解している標的核酸は濾紙の間をある程度自由に移動することができ、重ねた3枚の濾紙に含まれる溶液が、結果的に、標的核酸を含む所定のLAMP反応液(すなわち一枚法と同じ溶液)として機能するものと推定された。
[実施例3] 濾紙を用いたトータルシステムのモデル実験
以下のプロトコールで濾紙を用いたトータルシステムのモデル実験を行った。
1.試験方法
(1) HCV検体(秋田日赤血漿パック検体;ABC No62;約2300KIU/ml;1.15×104copies/μl)をリン酸バッファーで1000希釈した溶液あるいは、HBV検体(日赤血漿パック検体 No.79;63100copies/ml)を正常血漿(No.39)で10倍希釈した溶液を検体とし、その100μlを300μlのLysis buffer(68%グアニジンチオシアネート、3%DTT、10mM Tris pH8.0)に混合して10分間放置した。次いで、検体に400μlの100%イソプロパノールを加え、シリンジを用いて濾紙片(直径4mm;No1)で濾過した。
(2)標的核酸を担持した濾紙に対し、500μlの70%エタノールをシリンジで通過させることで洗浄した。
(3)5分間放置することでエタノールを除去した。
(4)得られた濾紙を標的核酸濾紙とし、RM濾紙及びBst(あるいはEnzyme Mix)濾紙と重ね合わせてPCRチューブに仕込み、63℃で1時間加熱した。
(5)モノマー濃度で0.25Mのポリエチレンイミン(PEI:重合度14;0.75M KClを含む)溶液を1.2μlスポットした濾紙片と、反応後の濾紙を重ねて、1分間放置した。これらの濾紙に、100nMのROX標識HBVプロープを含む溶液100μlを添加し、LAMP産物−PEI複合体にプローブをハイブリダイズさせた。次いで、このLAMP産物−PEI複合体を展開した濾紙を蛍光イルミネーター上(302nm)で目視観察した。なお、プローブ検出に対する陰性コントロール(無関係LAMP産物)としてHCV増幅産物を用いた。また、LAMP反応に対する陰性コントロールとしてHBV増幅系の標的核酸無添加の系を用いた。
2.試験結果及び考察
濾紙上に抽出したHBVを標的核酸として、三枚法による増幅反応と、濾紙によるPEI検出を続けて行なった(図7)。その結果、HBVの実検体に対する一連の遺伝子検査(配列特異的検出を含む)を全て濾紙上で行うことに成功した。すなわち、HBV検体を増幅したサンプル(図7−1)のみROXの赤色蛍光を示し、無関係LAMP産物(HCV検体:図7−2)、陰性コントロール(図7−3)では濾紙由来のわずかな蛍光しか観察されなかった。
以上の結果から、濾紙等の多孔質固相担体上において、液相と同様のLAMP反応を起こせることが明らかとなった。また、反応系の各種成分を別々の濾紙に展開しておき、それを重ね合わせることによっても、LAMP反応が起きることが確認された。このことは、抽出−増幅−検出という工程の全てが濾紙上で一貫して実施可能なことを示す。各ステップを一つのデバイス上で組み合わせれることができれば、この方法は簡易で安価な核酸検出(分析)のトータルシステムとなりうるものと思われる。
本研究により、濾紙を基本担体としたトータルシステムは、試薬の微量混合を回避し、デバイス内での送液システムを簡易な担体移動システムに変えること、試薬を安定化が達せられることが確認された。
[実施例4] 三枚法の感度
1.試験方法
三枚法の感度を評価するために、実施例1〜3に従い、以下の3つの方法:
(1)濾紙三枚法5μl(RM3μl+1/2Bst 1ul+鋳型1μl)
(2)5μl溶液反応(RM3μl+1/2Bst 1μl+鋳型1μl)
(3)25μl通常スケール反応
により、HBV検体(20copies/tube)の増幅と検出を行った。検出には、大塚電子社製蛍光プレートリーダ Fluodia T70(Ex 486nm;Em 530nm)を用い、それぞれ3本の試料について測定を行った。なお、コントロールとして検体を含まない試料(2本)についても同様に増幅と検出を行った。
2.試験結果及び考察
結果を図8に示す。その結果、溶液反応では3本中2本しか増幅が認められず、本実施例の条件においては20copies/tubeが感度の限界と考えられた。一方、濾紙三枚法では、3本中3本において増幅が認められた。このことから、本発明にかかる濾紙法の感度は溶液法の感度と同等あるいはそれ以上であることが確認された。
[実施例5] 濾紙上でのPCR反応
実施例2の一枚法に準じて、PSA(6x10−20M)を標的核酸として、濾紙片1枚に3μlのPCR反応液を添加して濾紙上PCR反応を行った(増幅領域のサイズは178bp)。PCR反応は、TAKARA LA Taq標準プロトコールに従い、表2に示すPCR反応液組成により、PSA用LAMPプライマーのouter primer(配列番号3、4)をPCRプライマーとして、95℃ 30sec、58℃ 30sec、70℃ 30secを35回サイクル行った。
Figure 0004791966
反応後の濾紙3枚を10μlのloading dyeに浸潤させて電気泳動を行い、増幅を確認した。比較として、同様のPCR条件で通常の溶液PCRを行った。溶液PCRは10μlスケールで行い、その全てを電気泳動に供した。
図9に示されるよう、濾紙上PCRでも溶液PCRと同様に、増幅領域のサイズに対応したバンドが観察された。このことから、PCR法を用いてもLAMP法と同様に濾紙上での核酸増幅が可能であることが確認された。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
本発明は、核酸の抽出、増幅、検出を一貫して行う簡易な核酸検出デバイスとして、臨床現場や研究室における簡便なDNA分析やDNA検査に利用できる。
配列番号1−人工配列の説明:PSA用FIPプライマー
配列番号2−人工配列の説明:PSA用RIPプライマー
配列番号3−人工配列の説明:PSA用F3プライマー
配列番号4−人工配列の説明:PSA用R3プライマー
配列番号5−人工配列の説明:CK20用FIPプライマー
配列番号6−人工配列の説明:CK20用RIPプライマー
配列番号7−人工配列の説明:CK20用F3プライマー
配列番号8−人工配列の説明:CK20用R3プライマー
配列番号9−人工配列の説明:CK20用LpFプライマー
配列番号10−人工配列の説明:CK20用LpRプライマー
配列番号11−人工配列の説明:HCV用FIPプライマー
配列番号12−人工配列の説明:HCV用RIPプライマー
配列番号13−人工配列の説明:HCV用F3プライマー
配列番号14−人工配列の説明:HCV用R3プライマー
配列番号15−人工配列の説明:HCV用Loopプライマー
配列番号16−人工配列の説明:HBV用FIPプライマー
配列番号17−人工配列の説明:HBV用RIPプライマー
配列番号18−人工配列の説明:HBV用F3プライマー
配列番号19−人工配列の説明:HBV用R3プライマー
配列番号20−人工配列の説明:HBV用Loopプライマー
配列番号21−人工配列の説明:HBV用プローブ

Claims (13)

  1. 予め核酸増幅試薬を含む多孔質支持体に、核酸を含む検体を添加し、標的核酸のLAMP反応を行うことを含み、核酸増幅試薬の異なる組成同士が互いに補完される状態で核酸増幅試薬が2以上の多孔質支持体に分割して保持されており、増幅時に前記多孔質支持体を互いに接触させて用いることを特徴とする、核酸解析方法。
  2. 検体からの核酸抽出と、標的核酸のLAMP反応と、該LAMP反応あるいはその産物の検出を、前記多孔質支持体上で一貫して行うことを特徴とする、請求項1に記載の核酸解析方法。
  3. 前記多孔質支持体が、さらに核酸抽出試薬及び/又は核酸検出試薬を予め含むものである、請求項2に記載の核酸解析方法。
  4. 2以上の層で構成される多孔質支持体上において、
    1) 核酸抽出試薬を含む多孔質支持体層で核酸を抽出し、
    2) 核酸増幅試薬を含む多孔質支持体層で標的核酸のLAMP反応を行い、そして
    3) 上記LAMP反応産物に核酸プローブをハイブリダイズさせ、生成したハイブリッドに核酸沈澱剤を作用させて凝集塊を形成させ、得られた凝集塊により検体中の標的核酸を検出すること、
    を含み、核酸増幅試薬の異なる組成同士が互いに補完される状態で核酸増幅試薬が2以上の多孔質支持体に分割して保持されており、増幅時に前記多孔質支持体を互いに接触させて用いることを特徴とする、核酸解析方法。
  5. 核酸沈澱剤及び/又は核酸プローブが予め前記多孔質支持体に含まれていることを特徴とする、請求項4に記載の核酸解析方法。
  6. 前記多孔質支持体が、予め核酸増幅試薬、核酸抽出試薬及び/又は核酸検出試薬を含む2以上の多孔質支持体から構成されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  7. プライマーとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  8. ポリメラーゼとそれ以外の核酸増幅試薬が異なる多孔質支持体に分割して保持されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  9. ポリメラーゼと、プライマーと、それ以外の核酸増幅試薬がそれぞれ異なる多孔質支持体に分割して保持されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  10. ポリメラーゼが乾燥状態で多孔質支持体に保持されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  11. 多孔質支持体が濾紙、ナイロンメンブレン、セルロースエステル、セルロース、不織布、織布、綿、ポリウレタン及びプラスチック焼結体から選ばれる1又は2以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸解析方法。
  12. 核酸沈澱剤が、ハイドロキシアパタイト、ポリエチレンイミン、硫酸プロタミン、ポリ-L-リジン及びジエチルアミノエチルデキストランから成る群より選ばれるいずれか1又は2以上である、請求項4に記載の核酸解析方法。
  13. 予め核酸増幅試薬、核酸抽出試薬及び/又は核酸検出試薬を含む2以上の多孔質支持体から構成され、核酸の抽出、増幅、検出を一貫して行うための核酸解析システムであって、核酸増幅試薬の異なる組成同士が互いに補完される状態で核酸増幅試薬が2以上の多孔質支持体に分割して保持されており、増幅時に前記多孔質支持体が互いに接触させて用いられ、且つ核酸増幅反応がLAMP反応である、前記核酸解析システム。
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