以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は電気掃除機Aの全体構成を示す斜視図である。この電気掃除機Aは、筒状の連通管1と掃除機本体2を備えている。掃除機本体2は、好ましくはその前部に前向きに突出して連通管1を取付ける円筒形状の連通管取付け部3を有する。なお、ここに前向きとは、水平状でかつ前向きに限らず、斜め上前向きに突出する態様も含んでいる。又、連通管取付け部3は上向きに突出させることもできる。
連通管1は、第一の延長管4と、第二の延長管5と、一端側に操作部6を取付けた可撓性のホース7からなる。第一の延長管4は、一端に部屋の床面13(図4参照)を摺動して塵を吸込む吸込口8を設けている。第一の延長管4は、その先端側に、第二の延長管5の他端側をスライド自在に嵌合し、かつ、任意の位置で固定できるようになっている。吸込口8は、第一の延長管4に対して着脱自在になっている。
ホース7の一端部は操作部6に接続され、ホース7の端部7aは掃除機本体2の連通管取付け部3の内側に挿入して取付けられている。ホース7は、連通管取付け部3に対して着脱自在になっている。連通管1をなす延長管4,5およびホース7は、吸込口8と掃除機本体2を連通する風路を構成している。
操作部6は、図2(a)(b)に示すように、手で握る把持部9を有している。把持部9は略円筒形状で、その上面側に電源をオン、オフする操作ボタンや吸込みの強弱を選択する操作ボタンなど複数の操作ボタン9aを配置している。また、操作部6には閾値を任意に設定するための閾値設定手段を構成する手動操作用の摺動ボリューム9bを配置している。なお、ここでの閾値を任意に設定するとは、予め定められた複数の閾値からいずれかを選択する場合も含む概念である。
掃除機本体2は、上下の本体ケースを連結してなり、その内部に図3および図4に示すように、連通管取付け部3の後端部にクリーナ機構を設けている。クリーナ機構は、集塵室10、フィルタ11および吸引用の電動送風機12を有している。連通管取付け部3と集塵室10は連通されている。
クリーナ機構は、電動送風機12の駆動によって空気流を発生させることで、吸込口8から塵と一緒に空気を吸込む。吸込んだ塵と空気は、連通管1の第一の延長管4、第二の延長管5、ホース7を順次経由して連通管取付け部3から集塵室10に入り込む。吸込まれた塵は、フィルタ11で捕捉されて集塵室10に留まり集められる。フィルタ11を通過した空気は、電動送風機12を経由して掃除機本体2の外部に排出される。
部屋の床面13に接する走行用の車輪14a,14bが、掃除機本体2の後部の左右両側に取付けられている。掃除機本体2内に、各車輪14a,14bを回転駆動する駆動手段16およびこの駆動手段16の駆動源である走行モータ15を設けている。
駆動手段16は、複数のギヤからなる動力伝達部17およびディファレンシャルギヤ機構18を備えている。駆動手段16は、走行モータ15の回転を、動力伝達部17を介してディファレンシャルギヤ機構18に伝達する。ディファレンシャルギヤ機構18は、回転を、車軸19を介して各車輪14a,14bに伝達する構成になっている。
掃除機本体2の前部の底壁中央に、自由に向きを変更できる従動輪20が取付けられている。掃除機本体2は、電動送風機12、走行モータ15、および後述する制御回路の電源となる充電可能な二次電池21を搭載している。二次電池21は、+E1電圧を出力する+E1電源と、+E2電圧を出力する+E2電源に、電力を供給している。
掃除機本体2の前方に突出された連通管取付け部3の下側外表面、すなわち、床面13に向いている面に、歪みゲージ22を貼り付けている。この歪みゲージ22は、連通管1を介して連通管取付け部3に加わる力を検出するためのセンサとして用いられている。
図5に示すようにディファレンシャルギヤ機構18は、外輪ギヤ18aと、2個の遊星かさギヤ18b,18cと、2個のかさギヤ18d,18eからなる。外輪ギヤ18aは車軸19の周囲を回転する。各遊星かさギヤ18b,18cは、外輪ギヤ18aの内側に取付けられている。各かさギヤ18d,18eは、遊星かさギヤ18b,18cに歯合し、外輪ギヤ18aの回転を車軸19に伝達する。各遊星かさギヤ18b,18cは、左右の車輪14a,14bの回転差を吸収する動作を行う。この動作によって、掃除機本体2は、連通管1で引っ張られる方向にスムーズに向きを変えながら床面13上を走行することができる。
図6は走行モータ15を駆動制御する制御回路を示している。この制御回路は、例えば回路基板上に実装され、掃除機本体2内に取付けられる。
1辺に歪みゲージ22を接続し、他の3辺に抵抗を接続した4辺からなる抵抗ブリッジ回路36を+E1電源に接続している。抵抗ブリッジ回路36は、連通管1を介して連通管取付け部3に加わる力を歪みゲージ22で検出し、この検出した力に応じて電圧信号を出力する検出手段を構成している。
抵抗ブリッジ回路36は、歪みゲージ22が歪んでその抵抗が変化すると、出力端子間に歪みに応じた電圧を出力し、その出力電圧を次段の差動増幅回路37に供給している。差動増幅回路37は、供給された出力電圧を増幅し、その増幅した出力電圧を、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ45aでデジタル信号に変換した後、移動制御手段例えばマイクロコンピュータ46に入力している。更に、操作部6に設けた摺動ボリユーム9bを有した閾値設定器42からの閾値を、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ45bに入力し、デジタル信号に変換した後、マイクロコンピュータ46に入力している。
マイクロコンピュータ46には、メモリ48および走行モータ15を駆動するモータドライバ49が接続されている。メモリ48は、閾値記憶手段として機能するものであって、これには第一の閾値およびこの第一の閾値とは異なるレベル例えば高いレベルの第二の閾値が設定される。この場合、マイクロコンピュータ46が、閾値設定器42で人為的に設定した閾値をA/Dコンバータ45bから取込むことで、メモリ48に閾値として記憶させる。そして、マイクロコンピュータ46がメモリ48に書き込む第一、第二の閾値は、使用者が連通管1を持ち上げた状態等において摺動ボリューム9bを操作して閾値設定電圧を変更することで、変更できる。
マイクロコンピュータ46はメモリ48に格納されたプログラムデータに基づいてモータドライバ49を介して図7に示す流れ図に従ったモータ制御をする。
すなわち、ステップS1にて、A/Dコンバータ45bは、閾値設定器42で設定された閾値データを一定時間毎に取込み、このA/Dコンバータ45bでデジタル化されたデータを、第一の閾値(図9参照)として、メモリ48に書き込む。次に、ステップS2にて、第一の閾値を予め設定された値だけ高くレベルシフトしたデータを、第二の閾値(図9参照)として、メモリ48に書き込む。
続いて、ステップS3にて、差動増幅回路37で増幅された歪ゲージ22からのセンサ出力電圧をA/Dコンバータ45aで取込んでデジタル化する。この後、ステップS4にて、取込んだ電圧値データとメモリ48に書き込まれた第一の閾値とを比較する。これにより、歪ゲージ22に一定値以上の力が作用したか否かを検出する。前記比較の結果、電圧値データが、第一の閾値以下のとき、つまり、第一の閾値を超えていないときは、ステップS8にて、モータイネーブルをオフにする信号をモータドライバ49に出力する。
前記比較の結果、電圧値データが第一の閾値を越えているときは、ステップS5にて、電圧値データとメモリに書き込まれた第二の閾値とを比較する。これにより、歪ゲージ22に一定値以上の力が更に作用したか否かを検出する。その結果、電圧値データが第二の閾値以下のとき、つまり、第二の閾値を超えていないときは、ステップS7にて、モータイネーブルをオンにする信号をモータドライバ49に出力し、同時に走行モータ15の回転方向を正転とする制御信号を期間t1(図9参照)の間出力する。また、前記比較の結果、電圧値データが第二の閾値を越えているときは、ステップS6にて、モータイネーブルをオンにする信号をモータドライバ49に出力し、同時に走行モータ15の回転方向を逆転とする制御信号を予め設定された期間t3(図11参照)のみ出力する。
モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を正転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体2を前進方向に移動するように走行モータ15を回転駆動する。モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を逆転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体2を後退方向に移動するように走行モータ15を回転駆動する。モータドライバ49は、モータイネーブルがオフになると、走行モータ15の回転を停止させる。
前記構成を備えた電気掃除機Aは、以下の動作を行う。
掃除をする使用者が、操作部6の把持部9を手で握り、把持部9の操作ボタン9aを指でオンすると、電動送風機12が動作する。電動送風機12が動作することで発生する空気流によって、吸込口8から塵とともに空気が吸込まれる。吸込まれた空気と塵は、第一の延長管4、第二の延長管5、ホース7を順次経由して掃除機本体2の集塵室10に入る。そして、塵はフィルタ11で捕捉されて集塵室10に集められる。空気は、集塵室10からフィルタ11、電動送風機12を順次経由して掃除機本体2の外部に排出される。
使用者は、把手部9を握った状態で、例えば、床面13に接している吸込口8を前後に動かしながら前方へ移動するようにして掃除を行う。吸込口8を前方に動かしたときホース7が引っ張られる。このとき、掃除機本体2の前方にいる使用者は、連通管取付け部3より上方位置で把手部9を握って掃除しているので、連通管取付け部3はこれの内側に挿入して接続されたホース7により図8中矢印Bで示す斜め前上方に引っ張られる。その際、連通管取付け部3は図8中矢印Cで示す斜め前下方に力を受けて歪みを生じ、それに伴い連通管取付け部3に貼り付けられた歪みゲージ22にも歪みが生じる。
このとき、抵抗ブリッジ回路36の出力端子には、図9(a)に示すように、歪みに応じた出力電圧が発生する。この電圧信号は差動増幅回路37によって増幅され、図9(b)に示す電圧信号になる。こうして増幅された電圧信号はA/Dコンバータ45aでデジタル信号に変換された後、マイクロコンピュータ46に取込まれる。マイクロコンピュータ46は、取込んだデジタルデータとメモリ48に格納されている第一、第二の閾値と比較する。
ここで、歪ゲージ22に加えられた力Cがある程度大きいときには、マイクロコンピュータ46に取込まれたデジタル信号は、図9(b)に示すように第一の閾値よりは大きいが、第二の閾値より小さくなる。これは、使用者が把手部9を握った状態で前方へ連通管1を押し動かす場合に相当する。すなわち、使用者が把手部9を握って連通管1を前方へ移動させる場合には、図8中矢印Bで示すように連通管取付け部3はホース7を介して斜め前上方に引っ張られるので、連通管取付け部3にはある程度の力が加わり、それに応じた歪が連通管取付け部3に貼り付けられた歪ゲージ22に生じる。
既述の電圧値データと閾値との比較においてマイクロコンピュータ46は、電圧値データが第一の閾値を超えている期間t1、図9(c) (d)に示すようにモータイネーブルをオンにする出力信号とともに、走行モータ15の回転方向を正回転にする出力信号を、モータドライバ49に出力する。これにより、掃除機本体2を前方向に自走させて前進移動させるために走行モータ15が正回転する。
掃除作業において、以上の場合よりも歪ゲージ22に加えられた力が更に大きいときには、図11(b)に示すようにマイクロコンピュータ46に取込まれる電圧値データはメモリ48に格納された第二の閾値より大きくなる。これは、使用者が把手部9を握った状態で後方へ移動する場合に相当する。すなわち、使用者が把手部9を握って後方へ移動する場合は、図10中矢印Dで示すように連通管取付け部3がホース7を介して上方または後方へ引っ張られるから、連通管取付け部3が斜め前上方に引っ張られる場合に比較して、連通管取付け部3には、更に大きな力が加えられる。この力は、図10中矢印Eで示すように略真下に向くように作用する。よって、連通管取付け部3にさらに大きな歪が発生し、それに応じた歪が連通管取付け部3に貼り付けられた歪ゲージ22に生じる。
この場合にも、マイクロコンピュータ46は、歪ゲージ22の出力電圧をデジタル化した電圧値データとして取込んで、メモリ48に格納されている第一、第二の閾値と比較する。この比較に基づき、図11(c)に示すようにモータイネーブルをオンにする出力信号と、図11(d)に示すように走行モータ15の回転方向を正回転とする出力信号を、電圧値データが第一の閾値を超えて、かつ、第二の閾値に達するまでの短い期間t2、モータドライバ49に送出する。
そして、取込まれた電圧値データが第二の閾値を超えても、図11(c)に示すようにモータイネーブルをオンにする出力信号は継続して出力され、かつ、第二の閾値を超えることにより図11(e)に示すように走行モータ15の回転方向を逆回転とする出力信号を、予め設定された期間t3、モータドライバ49に送出する。これにより、掃除機本体2を後ろ方向に自走させて後退移動させるために走行モータ15が逆回転する。
以上のように使用者が連通管1を持った状態で後方向に移動する場合、歪ゲージ22から取得される電圧値データが第一の閾値を超えている短い期間t2は、走行モータ15は正回転するが、その直後に電圧値データが第二の閾値を超えることにより、前記期間t2に対してこれより遥かに長い期間t3を走行モータ15が正回転する。したがって、トータル的に走行モータ15は、掃除機本体2を後ろ方向に自走させるために駆動される。
走行モータ15の回転は動力伝達部17に伝達される。このため、回転は、動力伝達部17からディファレンシャルギヤ機構18、および夫々の車軸19を介して左右の車輪14a,14bに伝達される。これにより、既述の制御で走行モータ15が回転したときには掃除機本体2が前方へ自走し、この逆に走行モータ15が逆回転したときには掃除機本体2が後方へ自走する。以上のように連通管1の前方への移動および後方への移動に追従させて掃除機本体2を前後に自走させることができる。なお、取得された電圧値データが閾値を超えている期間は短いので、走行モータ15の回転およびそれに基づく掃除機本体2の自走は、長時間継続することはなく、図11(c) (e) に示すように短時間(t2+t3)で終了される。
掃除中に使用者が連通管1を動かす操作を止めると、歪ゲージ22に作用する力は消失するか、作用しても極めて軽微で実質的に無視できるようになる。これにより、マイクロコンピュータ46は、モータドライバ49に対するモータイネーブル信号をオフにするので、走行モータ15は直ちに動作を停止する。すなわち、掃除機本体2の自走が停止され、使用者が連通管1の操作を止めているにも拘らず、掃除機本体2が自走しつつける不具合を生じない。
以上のように前記電気掃除機Aは、使用者が前進しながら掃除するときの連通管1の動きに応じて掃除機本体2を前方に自走させつつ掃除することができ、掃除機本体2を意図的に前方に引き動かす手間、および掃除機本体2を手で持ち運ぶ手間を要しないので、電気掃除機Aとしての使い勝手を高めることができる。
それだけではなく、使用者が後退するときの連通管1の動きに応じて掃除機本体2を後方に自走させることができるので、掃除機本体2等が部屋の壁等に当たって前進不可能な状態に陥ったとしても、その状態を解消するために使用者が腰を屈めて掃除機本体2を動かす手間を要しない。同様に、使用者が後退しながら掃除をする場合においても、掃除機本体2を後ろ方向に自走させることで、後退する使用者の足が掃除機本体2に当たることを抑制できる。これとともに、後退して掃除をしようと思っているエリアから掃除機本体2を後方に自走させるので、前記エリアから掃除機本体を退避させるために使用者が腰を屈めて掃除機本体2を動かす手間を要しない。したがって、例えば高齢者にとっても掃除中の身体的負担を軽減できる。
しかも、第1の実施の形態では、ホース7が斜め前上方に引っ張られたときと、ホース7が後向きに引っ張られたときとで、大きさが異なる出力電圧を出力する歪ゲージ22の出力をメモリ48に設定された第一の閾値と、第二の閾値と比較して、掃除機本体の自走による前進、後退、停止させたので、歪センサ22およびその出力を処理する回路が一つで済む。よって、構成が簡単でコストの低減が可能である。更に、以上のように歪ゲージ22の出力電圧の大きさを変えるのに、ホース7の端部7aに接しないように歪ゲージ22を連通管取付け部3の下面部に取付けたので、簡単な構成で、確実に出力電圧を得ることができ、しかも、ホース7により損傷を受けることもなく、長期間にわたる検出信頼性を確保できる。
なお、第1の実施の形態では、閾値設定手段をなした摺動ボリューム9bの操作で設定された第一の閾値に基づいて、予め設定された値でレベルシフトされた電圧値を第二の閾値としたが、これに代えて、第一の閾値を設定するための第一の摺動ボリュームと、第二の閾値を設定するための第二の摺動ボリュームを設けることもできる。更に、第一の閾値と第二の閾値は、ともに予めメモリ48に記憶させることもできる。また、マイクロコンピュータ46は、取得した電圧値データが第一の閾値を超えている期間t2がある時間を越えるまでは、走行モータ15を正回転させない制御を行うことによって、掃除機本体2が後退する前に前進するという動作を無効にする構成としてもよい。
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、走行モータ15を駆動制御する移動制御手段をなすマイクロコンピュータ46のプログラムデータにおいて、閾値と比較されるデータに、歪ゲージ22の電圧出力のままではなく、微分処理を行った後のデータを用いた点が、第1の実施の形態とは異なる。そのため、第1の実施の形態と同じ電気掃除機Aの構成および回路構成については、第1の実施の形態と同一符号を付して説明を省略する。
マイクロコンピュータ46は、メモリ48に格納されたプログラムデータに基づいて図12に示す流れ図に従って走行モータ15の駆動を制御する。
すなわち、ステップ11にて、A/Dコンバータ45bは閾値設定器42で設定された閾値データを一定時間毎に取込み、このA/Dコンバータ45bでデジタル化されたデータを、第一の閾値(図13,14参照)として、メモリ48に書き込む。次に、ステップS12にて、第一の閾値を予め設定された値だけ高くレベルシフトしたデータを、第二の閾値(図13,14参照)として、メモリ48に書き込む。
この場合、閾値設定器42で人為的に設定した閾値を、マイクロコンピュータ46がA/Dコンバータ45aから取込むことで、メモリ48に閾値として記憶させる。そして、マイクロコンピュータ46がメモリ48に書き込む第一、第二の閾値は、使用者が連通管1を持ち上げた状態等において摺動ボリューム9bを操作して閾値設定電圧を変更することで、変更できる。
続いて、ステップS13にて、差動増幅回路37で増幅された歪ゲージ22からのセンサ出力電圧をA/Dコンバータ45aで取込んでデジタル化する。この後、ステップS14にて、取込んだ電圧値データをメモリ48に書き込んでから、ステップS15にて平均化処理を行う。平均化処理は、例えば取得された数回分の電圧値データの平均値を求めるもので、それによりノイズを除去する。
この後、ステップ16にて微分処理を行う。この微分処理は、平均化処理により得た前回の電圧値データと、その後の平均化処理により得た今回の電圧値データとの差分を求めることを内容とする。続いて、ステップ17にて、求めた差分値とメモリ48に書き込まれた第一の閾値を比較する。これにより、歪ゲージ22に一定値以上の力が作用したか否かを検出する。前記比較の結果、差分値が第一の閾値以下のとき、つまり、第一の閾値を超えていないときは、ステップS21にて、モータイネーブルをオフにする信号をモータドライバ49に出力する。
前記比較の結果、差分値が第一の閾値を越えているときは、ステップ18にて、差分値とメモリに書き込まれた第二の閾値とを比較する。これにより、歪ゲージ22に一定値以上の力が更に作用したか否かを検出する。その結果、差分値が第二の閾値以下のとき、つまり、第二の閾値を超えていないときは、ステップS20にて、モータイネーブルをオンにする信号をモータドライバ49に出力し、同時に走行モータ15の回転方向を正転とする制御信号を出力する。また、前記比較の結果、差分値が第二の閾値を越えているときは、ステップ19にて、モータイネーブルをオンにする信号をモータドライバ49に出力し、同時に走行モータ15の回転方向を逆転とする制御信号を予め設定された期間のみ出力する。
モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を正転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体2を前進方向に移動するように走行モータ15を回転駆動する。モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を逆転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体2を後退方向に移動するように走行モータ15を回転駆動する。モータドライバ49は、モータイネーブルがオフになると、走行モータ15の回転を停止させる。
前記構成を備えた第2の実施の形態の電気掃除機Aは、以下の動作を行う。
掃除をしようとする使用者が、第1の実施の形態と同様に掃除を行うと、抵抗ブリッジ回路36の出力端子には、図13(a)に示すように、歪みに応じた出力電圧が発生する。この電圧信号は差動増幅回路37によって増幅され、図13(b)に示す電圧信号になる。こうして増幅された電圧信号はA/Dコンバータ45aでデジタル信号に変換された後、マイクロコンピュータ46に取込まれる。マイクロコンピュータ46は、取込んだデジタル信号を微分処理し、微分処理された差分値データとメモリ48に格納されている第一、第二の閾値とを比較する。
ここで、微分処理された差分値データは、歪ゲージ22に加えられた力C(図8参照)がある程度大きいときには、図13(c)に示すように第一の閾値よりは大きいが、第二の閾値より小さくなる。これは、使用者が把手部9を握った状態で前方へ連通管1を押し動かす場合に相当する。
既述の差分値データと閾値との比較においてマイクロコンピュータ46は、差分値データが第一の閾値を超えている期間(図13中t4で示す。)、図13(d) (e)に示すようにモータイネーブルをオンにする出力信号とともに、走行モータ15の回転方向を正回転にする出力信号を、モータドライバ49に出力する。これにより、掃除機本体2を前方向に自走させるために走行モータ15が正回転する。
第1の実施の形態において説明した通り、使用者が把手部9を握って後方へ移動する場合は、図10中矢印Dで示すように連通管取付け部3がホース7を介して上方または後方へ引っ張られるから、連通管取付け部3が斜め前上方に引っ張られる場合に比較して、連通管取付け部3に加わる力の変化は急激になる。
この場合にも、マイクロコンピュータ46は、歪ゲージ22の出力電圧をデジタル化して微分処理した差分値データとして取込んで、メモリ48に格納されている第1、第二の閾値と比較する。そして、前記のように急激な力の変化が生じて取込まれた差分値データが第二の閾値を超えると、図14(d)に示すようにモータイネーブルをオンにする出力信号と、図14(f)に示すように走行モータ15の回転方向を逆回転とする出力信号を、予め設定された期間t5のみ、モータドライバ49に送出する。これにより、掃除機本体2を後ろ方向に自走させるために走行モータ15が逆回転する。
以上のように連通管1の前方への移動および後方への移動に追従させて掃除機本体2を前後に自走させることができる。なお、取得された差分値データが閾値を超えている期間は短いので、走行モータ15の回転およびそれに基づく掃除機本体2の自走は、長時間継続することはなく、短時間で終了される。
ところで、使用者が連通管1を前後に動かして掃除を行っているときには、歪ゲージ22に対して力が繰り返し頻繁に作用するので、微分処理後の差分値データも不連続的に頻繁に発生する。従って、使用者が連通管1を前後に動かして掃除を行っているときには、モータドライバ49に頻繁にパルス上のモータ駆動信号を、マイクロコンピュータ46が繰り返し発生する。これにより、モータドライバ49は短時間のオン・オフを繰り返すので、走行モータ15は駆動と停止とを頻繁に繰り返す。
しかし、掃除するときの連通管1の前後の動きは、以上の走行モータ15の駆動と停止とが頻繁に繰り返えし周期に比べてゆっくりである。従って、使用者は、走行モータ15が頻繁に駆動と停止とが頻繁に繰り返えしても気にならない。むしろ、走行モータ15の駆動と停止とが短い周期で繰り返えされるので、使用者にとっては、掃除機本体2が連通管1の前方への動きに応じて追従してくるような印象を与えることができる。そのため、連通管1の前方への動きに掃除機本体2を円滑に追従させて前方に自走させることができる。
しかも、歪ゲージ22の出力を微分処理した差分値データに基づいて走行モータ15を制御したので、力の変化量が急に大きくなるとき、すわなち、ホース7が引っ張られる初期段階で確実に走行モータ15を駆動できる。
第2の実施の形態でも、ホース7が斜め前上方に引っ張られたときと、ホース7が後向きに引っ張られたときとで、歪ゲージ22に加わる力の変化量をメモリ48に設定された第一の閾値と、第二の閾値と比較して、掃除機本体の自走による前進、後退、停止させたので、第1の実施の形態のものと同様な効果を奏する。加えて、抵抗ブリッジ回路36で吸収しきれない温度特性等の緩慢な変化が、微分処理および閾値との比較によってキャンセルされるので、誤動作を抑制できる。
以上説明したように第2の実施の形態の電気掃除機Aにおいても、第1の実施の形態と同様に、掃除機本体2の前方および後方への移動を適切に補助することができる。
(第3の実施の形態)
この実施の形態は、走行モータ15を駆動制御する制御回路において、微分処理をマイクロコンピュータ46ではなく専用の回路で行う点が、第2の実施の形態とは異なる。そのため、第2の実施の形態と同じ電気掃除機Aの構成および回路構成については、第2の実施の形態と同一符号を付して説明を省略する。
すなわち、図15に示すように、差動増幅回路37からの出力電圧を抵抗38および微分手段を構成するコンデンサ51を介して反転増幅回路39に供給している。言い換えれば、コンデンサ51は、差動増幅回路37が増幅した出力電圧を微分して反転増幅器39に供給する。
反転増幅器39は微分された電圧を反転増幅する。この反転増幅された電圧信号を、レベルシフト回路40を介して、A/Dコンバータ45aに供給している。電気信号はA/D(アナログ/デジタル)コンバータ45aでデジタル信号に変換した後、マイクロコンピュータ46に入力している。更に操作部6に設けた摺動ボリューム9bを有する閾値設定器42からの閾値を、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ45bに入力し、デジタル信号に変換した後、マイクロコンピュータ46に入力している。マイクロコンピュータ46には、さらに、メモリ48および走行モータ15を駆動するモータドライバ49が接続されている。
マイクロコンピュータ46は、プログラムデータに基づいて図7に示す流れ図に従って走行モータ15の制御を行う。
すなわち、ステップS1にて、A/Dコンバータ45bは、一定時間毎に閾値設定器42で設定された閾値データを一定時間毎に取込み、このA/Dコンバータ45bでデジタル化されたデータを第一の閾値として、メモリ48に取込む。次に、ステップS2にて、第一の閾値を予め設定された値だけレベルシフトした電圧値を第二の閾値として設定し、メモリ48に取込む。
この後、ステップS3にて、A/Dコンバータ45aから増幅され、歪センサ22の出力信号の電圧値をコンデンサ51により微分処理して電圧値データとして取込む。続いて、ステップS4にて、取込んだ微分処理後の電圧値データとメモリ48に書き込まれた第一の閾値を比較する。これにより、歪みゲージ22に加わる力の変化量が一定値以上か否かを検出する。
比較の結果、微分処理後の電圧値データが第一の閾値を超えていないときには、ステップS8にて、モータドライバ49に対してモータイネーブルをオフにする信号を出力する。また、比較の結果、微分処理後の電圧値データが第一の閾値を超えていると、ステップS5にて、微分処理後の電圧値データとメモリ48に書き込まれた第二の閾値を比較する。これにより、歪みゲージ22に加わる力の変化量が一定値以上か否かを検出する。
そして、微分処理後の電圧値データが第二の閾値を越えていないときには、ステップS7にて、モータドライバ49にモータイネーブルをオンにする信号を出力し、同時に走行モータ15の回転方向を正回転とする制御信号を出力する。また、微分処理後の電圧値データが第二の閾値を越えているときには、ステップS6にて、モータドライバ49にモータイネーブルをオンにし、同時に走行モータ15の回転方向を逆回転とする制御信号を予め設定された期間t3のみ出力する。
モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を正回転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体2が前進方向に移動するように走行モータ15を回転させる。モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を逆回転とする制御信号が入力されていると、走行モータ15を掃除機本体2が後退方向に移動するように回転させる。モータドライバ49は、モータイネーブルがオフになると、走行モータ15の回転を停止させる。
このような構成の電気掃除機は、掃除をしようとする使用者が、第1の実施の形態と同様に掃除を行うと、抵抗ブリッジ回路36は、図16(a)に示すように、出力端子に歪みに応じた電圧信号を発生する。この電圧信号は差動増幅回路37によって増幅され、図16(b)に示す電圧信号になる。この電圧信号はコンデンサ51によって微分された後、反転増幅器39に入力される。反転増幅器39は微分された電圧を反転増幅し、図16(c)に示す出力電圧を出力する。
この出力電圧はレベルシフト回路40でレベルシフトされた後、図16(d)に示す入力電圧として、A/Dコンバータ45aに入力される。電圧信号は、A/Dコンバータ45aでデジタル信号に変換された後、マイクロコンピュータ46に取込まれる。マイクロコンピュータ46は、取込んだデジタル信号とメモリ48に格納されている閾値との比較を行う。
ここで取込んだデジタル信号は、例えば、歪みゲージ22に加えられた力がある程度大きいときには、図16(d)に示すように第一の閾値より小さく、第二の閾値より大きくなる。これは、第2の実施の形態で述べた通りである。
マイクロコンピュータ46は、取込んだ電圧値データと閾値を比較し、電圧値データが第一の閾値を超えている期間t6、図16(e)(f)に示すようにモータドライバ49にモータイネーブルをオンにする出力信号と、走行モータ15の回転方向を正回転とする出力信号を送出する。これにより、走行モータ15は正回転し、掃除機本体2は前進する。また、歪みゲージ22に加えられた力が更に大きくなったときには、図17(d)に示すように、マイクロコンピュータ46に取込まれた電圧値データは、メモリ48に格納されている第二の閾値より小さくなる。これは、使用者が把手部9を握った状態で後方へ移動する場合に相当することは、第2の実施の形態で述べた通りである。
マイクロコンピュータ46は、電圧値データと閾値を比較し、電圧値データが第二の閾値を超えると、図17(e)(g)に示すようにモータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転とする出力信号と、モータイネーブルをオンにする出力信号を予め設定された期間t7のみ送出する。これにより、走行モータ15は逆回転し、掃除機本体2は後退する。
以上説明したように第3の実施の形態でも、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、第3の実施の形態の電気掃除機Aにおいても、掃除機本体2の前方および後方への移動を適切に補助することができる。
(第4の実施の形態)
この実施の形態は、走行モータ15を駆動制御する制御回路に、走行モータ15を逆回転させるタイミングを設定する後退設定手段を設けた点が、第1の実施の形態とは異なる。そのため、第1の実施の形態と同じ電気掃除機Aの構成および回路構成については、第1の実施の形態と同一符号を付して説明を省略する。前述した実施形態では使用者が掃除機本体2を後退させるときに操作するであろう力を検出して掃除機本体2を後退させたのに対し、本実施の形態では、後退設定手段60を操作するという使用者の明確な意思により掃除機本体2を後退させる点が異なる。
図18(a)(b)に示すように操作部6に手で握る把持部9を設けている。把持部9は略円筒形状で、その上面側に電源をオン、オフする操作ボタンや吸込みの強弱を選択する操作ボタンなど複数の操作ボタン9aの他に、これに並べて後退スイッチ9cを配置している。後退スイッチ9cは操作ボタン9aの例えば後側に配置されているが、前側でも、横でもよい。後退スイッチ9cは、掃除機本体Aを後退させるタイミングを任意に設定する際に手動で操作される。
図19は走行モータ15を駆動制御する制御回路を示している。この第4の実施の形態の制御回路は後退設定手段60を備えている。この後退設定手段60は、操作スイッチ9cと抵抗素子61によって構成されている。
制御回路は、歪ゲージ22の出力電圧が供給される差動増幅回路37からの出力電圧を、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ45aでデジタル信号に変換した後、マイクロコンピュータ46に入力する。
マイクロコンピュータ46には、掃除機本体Aが後退するタイミング設定を行うための後退設定信号が後退設定手段60から入力される。つまり、後退設定手段60の操作スイッチ9cがオン操作されることによって、デジタルな後退設定信号がマイクロコンピュータ46に入力されるようになっている。
マイクロコンピュータ46には、メモリ48および走行モータ15を駆動するモータドライバ49が接続されている。マイクロコンピュータ46はメモリ48に格納されたプログラムデータに基づいて図20に示す流れ図に従って走行モータ15の制御を行う。
すなわち、ステップS31にて、歪ゲージ22から出力されて差動増幅回路37で増幅された出力電圧を、A/Dコンバータ45aでデジタル化し、この電圧値のデジタルデータを取込む。
次に、マイクロコンピュータ46は、ステップS32にて、取込んだ電圧値データとメモリ48に予め設定されている閾値を比較する。これにより、歪みゲージ22に一定値以上の力が作用したか否かを検出する。比較の結果、電圧値データが閾値を超えているときには、ステップS34にて、モータドライバ49にモータイネーブルをオンにする信号を出力し、同時に走行モータ15の回転方向を正回転とする制御信号を電圧値データが閾値を超えている期間t8のみ出力する。
また、ステップS32での判断により電圧値データが閾値を越えていないときには、ステップS33にて、後退設定手段60から後退設定信号が入力されているか否かを判断する。後退設定信号が入力されている場合には、ステップS36にてモータドライバ49にモータイネーブルをオンにし、同時に走行モータ15の回転方向を逆回転とする制御信号を後退設定信号が入力されている期間t9のみ出力する。また、後退設定信号が入力されていない場合には、ステップS35にて、モータドライバ49にモータイネーブルをオフにする信号を出力する。
モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を正回転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体Aが前進方向に移動するように走行モータ15を回転させる。モータドライバ49は、モータイネーブルがオンになり、走行モータ15の回転方向を逆回転とする制御信号が入力されていると、掃除機本体Aが後退方向に移動するように走行モータ15を回転させる。モータドライバ49は、モータイネーブルがオフになると、走行モータ15の回転を停止させる。
第4の実施の形態の電気掃除機Aは、以下の動作を行う。
掃除をしようとする使用者が、第1の実施の形態と同様に掃除を行うと、抵抗ブリッジ回路36は、図21(a)に示すように、出力端子に歪みに応じた出力電圧を発生する。この電圧信号は差動増幅回路37によって増幅され、図21(b)に示す電圧信号になる。こうして増幅された電圧信号は、A/Dコンバータ45aでデジタル信号に変換された後、マイクロコンピュータ46に取込まれる。マイクロコンピュータ46は、取込んだデジタル信号と予めメモリ48に格納されている閾値との比較を行う。
ここで取込んだデジタル信号は、歪みゲージ22に加えられた力がある程度大きいときには、図21(b)に示すように閾値より大きくなる。これは、前述した通り、使用者が把手部9を握った状態で前方へ移動する場合に相当する。
マイクロコンピュータ46は、電圧値データと閾値を比較し、電圧値データが閾値を超えている期間t8、図21(d)に示すようにモータドライバ49にモータイネーブルをオンにする出力信号と、図21(e)に示すように走行モータ15の回転方向を正回転にする出力信号を送出する。これにより、走行モータ15は正回転し、掃除機本体Aは前進する。
ここで、図21(c)に示すように、走行モータ15が正回転し、掃除機本体Aが前進動作を開始して、t8時間経過前のタイミングで、使用者が把手部9の操作スイッチ9cを誤ってオン操作した場合、モータドライバ49にモータイネーブルをオンにする出力信号が出力されている状態下で、後退設定信号がマイクロコンピュータ46に入力される。この後退設定信号は操作スイッチ9cがオン操作されている期間は出力される。
このとき、マイクロコンピュータ46は、図21(d)(f)に示すように、t8時間が経過するまでは、走行モータ15の正回転動作を、モータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転する出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号よりもよりも優先させる制御を行う。
そして、マイクロコンピュータ46は、走行モータ15の正回転動作が終わるタイミングであるt8時間経過後にも操作スイッチ9cがオン操作されている場合、この操作スイッチ9cがオフ操作されるまでの期間t9、モータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転する出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号を出力する。
これにより、走行モータ15は逆回転し、掃除機本体Aは後退する。なお、t8時間経過後、掃除機本体Aが停止しているときに、操作スイッチ9cがオン操作された場合、マイクロコンピュータ46での制御によって走行モータ15が逆回転され、掃除機本体Aを後方向に自走される。
使用者が連通管1を前後に動かす操作を止めると、歪みゲージ22に力が作用しなくなる。これにより、マイクロコンピュータ46が、モータドライバ49に対するモータイネーブル信号をオフにするので、走行モータ15は直ちに動作を停止する。そのため、掃除機本体2の自走が停止される。すなわち、使用者が連通管1の操作を止めているにも拘わらず掃除機本体2が自走し続けるような不具合は生じない。
また、図22(c)に示すように走行モータ15の停止中に操作スイッチ9cがオン操作されて、後退設定信号が供給された場合、マイクロコンピュータ46は、モータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転する出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号を送出するので、走行モータ15が逆回転して、掃除機本体Aは後退する。
この期間中に、使用者が連通管1を介して吸込口8を前方に動かしたとき、および連通管1を持ち上げた時等ホース7が引っ張られることがある。これに伴い連通管取付け部3に生じた歪に応じてある程度以上の歪が歪みゲージ22に生じた場合、図22(c)に示すようにマイクロコンピュータ46に取込まれたデジタルデータはメモリ48の閾値より大きくなる。そうすると、マイクロコンピュータ46は、図22(d)(e)に示すように、走行モータ15の回転が逆回転された時点からデジタルデータが閾値を超えるまでの期間t10経過後、デジタルデータが閾値を超え続けている期間t11時間が経過するまでは、走行モータ15の正回転動作を、モータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転する出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号よりもよりも優先させる制御を行う。
なお、図22(b)(c)は、マイクロコンピュータ46、走行モータ15の回転方向を正回転にする出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号をモータドライバ40の送出している期間t11中に、後退設定手段60からの出力信号が消失する場合を示しているので、期間t11が経過した後には図22(g)に示すように走行モータ15の回転は停止される。また、後退設定手段60からの出力信号が期間t11を超えて継続して出力されている場合、期間t11の経過後に、モータドライバ49に走行モータ15の回転方向を逆回転する出力信号とモータイネーブルをオンにする出力信号によって、走行モータ15の回転方向が逆回転となって掃除機本体Aは後退される。
以上のように第4の実施の形態では、掃除機本体2を連通管1の前方への動きおよび後方への動きに追従させて円滑に走行させることができる。これとともに、掃除機本体Aの前進動作を優先にして走行モータ15の回転が制御されるので、既述のように掃除機本体Aを自走により前進させているときに誤って後退スイッチ9cがオン操作されても、所望の前進動作を継続できる。また、掃除機本体Aを自走により後退させ過ぎた場合には、連通管1を引っ張るなどによって掃除機本体Aを自走により前進させて、所望とする位置に掃除機本体Aを移動させることができる。
したがって、第4の実施の形態の電気掃除機Aは、掃除するときの連通管1の動きに応じて掃除機本体2をスムーズに自走させて掃除ができるので、電気掃除機Aとして使い勝手を向上できる。しかも、使用者は、希望するタイミングで把手部9に配置した操作スイッチ9cを操作して、掃除機本体2を自走により後退させることができる。これにより、掃除機本体2等が壁等に衝突して前進不可能な状態に陥ったとしても、使用者はその状態を解消するために腰をかがめる必要はない。更に、後退しながら掃除作業を行う場合は、掃除機本体2が使用者の脚部に衝突することが抑制される。これとともに、掃除しようと思っている後方のエリアに掃除機本体Aが位置されたままになっていることがない。従って、掃除機本体2の追従性において使用者の使い勝手が向上するとともに、高齢者にとっても掃除をする上での身体的負担が軽減される。
なお、第4の実施の形態では、閾値はメモリ48に予め設定されている例を示したが、これに限ったものではなく、第1の実施の形態に示すように、閾値設定手段により閾値を設定してもよい。また、マイクロコンピュータ46は、電圧値データが閾値を超えている期間に限らず、一定時間モータを正転動作させる制御を行う構成であってもよい。
以上説明したように第4の実施の形態の電気掃除機Aにおいても、第1の実施の形態と同様に、掃除機本体2の前方および後方への移動を適切に補助することができる。
なお、前記各実施の形態では、ディファレンシャルギヤ機構18を使用して掃除機本体2の操舵機能を実現したが、これに限定するものではなく、モータで駆動される操舵輪を別途設けたものであっても、また、従動輪20をモータで駆動する車輪に代え、この車輪に操舵機能を持たせてもよい。
また、前記各実施の形態では閾値設定手段として摺動ボリュームを有するものを使用したがこれに限定するものではない。更には、前記各実施の形態では、使用時に閾値を都度設定するものについて説明したが、予め閾値が定められており、必要時にのみ閾値設定手段で閾値を変更して設定するようにしてもよい。また、走行モータ15を駆動制御する制御回路は同様の機能を実現するものであればよく、使用する素子や回路構成を限定するものではない。加えて、本発明では、微分処理した電圧信号が閾値を超えている期間に応じて走行モータ15を駆動するものが好ましいが、必ずしもこの制御に限定されるものではない。更には、第1の実施の形態などで例示したプログラムデータは、機能を実現するための例であり、これに限ったものではない。
A…電気掃除機、1…連通管、2…掃除機本体、3…連通管取付け部、8…吸込口、9b…摺動ボリューム(閾値設定手段)、9c…後退設定手段の後退スイッチ、12…電動送風機、14a,14b…走行用の車輪、15…走行モータ、16…駆動手段、22…歪みゲージ(センサ)、36…抵抗ブリッジ回路(検出手段)、42…閾値設定器、46…マイクロコンピュータ(移動制御手段)、48…メモリ(閾値記憶手段)、60…後退設定手段。