極低温技術に携わる者には良く知られているように、3He液相と4He液相の混合液は、0.8K(800mK)以下の極低温において、相対的に3Heが少ない3He希薄相と、相対的に3Heを多く含む3He濃厚相とに分離する。ここで、3He希薄相と3He濃厚相のそれぞれにおける3Heの含有率は、温度によって決定されるが、0.1K以下の温度では、3Heを6.4%含み残部が4Heからなる3He希薄相と、100%の3Heからなる3He濃厚相とに分離される。またここで、3He液相よりも4He液相の方が密度が大きいため、上述のように3He−4He混合液が3He希薄相と3He濃厚相とに2相分離した状態では、密度の大きい3He希薄相が下側に、密度の小さい3He濃厚相が上側に位置することになる。したがって例えば0.1K程度以下の極低温の室内(従来の一般的な希釈冷凍機における混合室内)では、6.4%3He−残部4Heの3He希薄相が下部に、100%3Heからなる3He濃厚相が上部に位置するように2相分離した平衡状態となる。そしてまたこのような平衡状態にある混合室内において、なんらかの手段により3He希薄相から3He分子を抜き去って、3He希薄相における3He濃度を低下させれば、両相は平衡状態に戻ろうとするため、3He濃厚相中の3Heが3He希薄相中へ溶け込む(3Heが4Heに希釈される)ことになる。
ここで、同一温度での各相中の3He分子のエントロピーを比較すれば、濃厚相中の3He分子のエントロピーは希薄相中の3He分子のエントロピーより小さいため、断熱状態であれば前述のように2相分離した混合室内において3Heが濃厚相中から希薄相中へ希釈されることにより吸熱が生じることになる。このような吸熱を利用した冷凍機が希釈冷凍機と称されるものであり、1〜10−3K程度の超低温を得ることが可能となる。
希釈冷凍機の原理的な構成については、非特許文献1、非特許文献2などにおいて説明されているが、その原理的な構成を図6に示す。
図6において、ロータリーポンプ等からなる真空ポンプ1は3Heガスを圧送して強制循環させるためのものであり、この真空ポンプ1の出口側から後述する混合室3までの経路を往路5Aとしかつ混合室3から真空ポンプ1の入口側に至る経路を復路5Bとして、これらの往路5A、復路5Bにより、一部に4Heを含んで3Heを循環させるためのHe循環経路5が形成されている。
前記真空ポンプ1から往路5A側に送り出された300K程度の温度の3Heガスは、液体4Heを排気減圧して1.3K程度に保った1Kポット7に熱的に接触する凝縮器(コンデンサ)9において液化され、さらに分留器11内の熱交換器13に送られる。この分留器11は、後述するように3Heと4Heとの飽和蒸気圧の差を利用して、復路5B側において4He−3Heの混合液中から3Heを選択的に排出させるためのものであるが、往路5A側において凝縮器9から送られて来た3Heは、この分留器11に熱接触する熱交換器13において熱交換されて、0.5〜0.7K程度まで冷却される。さらにその往路5A側の3Heは、熱交換器15の往路側流路15Aにおいて、その熱交換器15の復路側流路15Bと熱交換されて0.1K程度まで冷却され、混合室3に導入される。混合室3では、前述のような100%3Heからなる3He濃厚相Pと、3Heが4Heに溶け込んだ4He−6.4%3Heからなる3He希薄相Qとに2相分離しており、両相の密度差により下層が3He希薄相(4He−6.4%3He)Q、上層が3He濃厚相(100%3He相)Pとなる。そして3He濃厚相Pに導入された3Heが3He希薄相Qに溶け込む際に、既に述べたように熱吸収が生じ、10mKのオーダーの超低温に冷却される。すなわちこの混合室3が冷凍機としてのコールドヘッドとなり、この部分に近接して冷却対象物(試料)を保持しておけば、その試料を10mKのオーダーに冷却することができる。
混合室3の3He希薄相における3He濃度は6.4%を保ち、一方復路5Bにおける分留器11内の4He−3He混合液中からは4Heと3Heとの飽和蒸気圧の差によって3Heのみがガス化して排出されて行くから、分留器11内の3He濃度は0.5〜0.7Kで1%程度となり、そのため混合室3の3He希薄相Qと分留器11内の4He−3He混合液との間で3Heの濃度差が生じるから、両者間の濃度勾配によって混合室3内の3He希薄相Q中から3Heが復路5B側(分留器11側)へ引込まれ、それに伴なって混合室3内の3He希薄相Qで3He濃度の低下傾向が生じるため、その3He希薄相Qの3He濃度が6.4%を保つように(すなわちその温度における3He濃厚相Pと3He希薄相Qとの平衡状態を保つように)、100%3Heの3He濃厚相Pから3He希薄相Qへの3Heの溶け込みが連続的に生じることになる。そして混合室3から3Heが分留器11へ引込まれる間においてその3Heは熱交換器15の復路側流路15Bを通過し、前述の往路5A側の3Heを冷却する。
分留器11においては、既に述べたように飽和蒸気圧の差によって4He−3He混合液中から3Heのみが蒸発し、前述の真空ポンプ1によって引出される。真空ポンプ1に吸引された3Heは、再び凝縮器9へ送られて同様な過程を繰返す。
以上のようにして、希釈冷凍機では、10mKオーダーの超低温を得ることができ、特に外部からの熱侵入が全くない理想状態において0.1Kの温度の100%3He液体が混合室3に導入された場合を想定すれば、その場合は計算上は0.036Kまで冷却することが可能となる。
ここで、以上のような図6に示した希釈冷凍機についての説明は、飽くまで原理的な構成について説明したものであり、実際の希釈冷凍機においては、真空ポンプ1を除いた部分、すなわち1Kポット7、凝縮器9、分留器11(熱交換器13)、熱交換器15、混合室3は、その全体が周囲を真空断熱した極低温容器17(通常クライオスタットと称されるもの)内に一体的に収容されて、希釈冷凍機本体19を構成している。そして極低温容器(クライオスタット)17内には、液体ヘリウムが注入されていて、希釈冷凍機本体19が全体的に低温に冷却保持されるようになっている。そしてこの極低温容器17内の冷却保持用の液体ヘリウムの一部が、前記凝縮器9を冷却するための1Kポット7の液体ヘリウム(予冷用冷媒)21として用いられている。そして1Kポット7は、液体ヘリウム21の温度を常時1K近くの低温に保つため、その室内が第2の真空ポンプ23によって排気減圧されるのが通常である。
ところで図6に原理的に示した希釈冷凍機では、前述のように1Kポット7内は排気減圧されるため、その1Kポット7内の液体ヘリウム(通常は前述のように極低温容器17内の液体ヘリウムと共通)21は徐々に消費されてその量が減ることになり、したがって随時液体ヘリウムの補給を行なう必要がある。このように液体ヘリウムの補給を行なう際には、希釈冷凍機の運転を停止させなければならないから、図6の希釈冷凍機では長時間連続して運転することが困難であり、また液体ヘリウムは著しく高価であるから、それを消費する図6の希釈冷凍機は、ランニングコストも著しく高くならざるを得ない。
そこで最近では、例えば特許文献1に示しているように前述のような液体ヘリウムを用いた1Kポットに代え、GM冷凍機(ギフォード−マクマホン冷凍機)で代表される小型機械式極低温冷凍機を用いて凝縮器を冷却するように構成した希釈冷凍機を本発明者が提案している。ただし、GM冷凍機だけでは3Heガスの凝縮・液化温度まで冷却することが困難となることもあり、そこで上記提案では、GM冷凍機で数K程度まで冷却された3Heガスを断熱膨張させて1K近くまで冷却し、凝縮させることとしている。
具体的には、特許文献1で提案されている希釈冷凍機は、3Heガスを循環させるための真空ポンプと、その真空ポンプにより送出される3Heガスを受入れる希釈冷凍機本体とを有し、前記希釈冷凍機本体は、冷却ヘッドを備えた小型機械式冷凍機と、その小型機械式冷凍機の冷却ヘッドから延長された良熱伝導材料からなる伝熱ブロックと、その伝熱ブロックに熱的に接触しかつ前記真空ポンプから送出された3Heガスを冷却するための主熱交換器と、その主熱交換器により冷却された3Heガスを断熱膨張により3Heガスの凝縮温度以下まで冷却するためのJT膨張器と、4He−3He混合液体を保持しかつ4Heと3Heとの蒸気圧の差により3Heガスが前記真空ポンプの吸気圧により真空ポンプへ向けて吸出される分留器と、前記JT膨張器から導かれた液体3Heが通過してこれを前記分留器内の4He−3He混合液体によりさらに冷却するための分留器熱交換器と、相互に熱交換可能に隔絶された往路側通路および復路路側通路を備えかつ往路側通路に前記分留器熱交換器から導かれた液体3Heが通過して復路側通路の冷熱により往路側通路の液体3Heを0.8K以下の温度に冷却するための往復熱交換器と、底部側が前記往復熱交換器の復路側通路を介して前記分留器の底部側に連通するように作られかつ前記往復熱交換器の往路側通路から液体3Heが導入されるとともに予め液体4Heが収容されるようにした混合室とからなり、前記真空ポンプから送出された3Heガスが、前記主熱交換器を通過する際に冷凍機の冷却ヘッドの冷熱により前記伝熱ブロックを介して所定の低温に冷却され、さらにJT膨張器を通過して凝縮液化され、その液化された液体3Heが往復熱交換器の往路側通路を通って混合室に送り込まれるように構成したことを特徴とするものである。
このような特許文献1において提案している希釈冷凍機では、GM冷凍機などの小型機械式冷凍機を用いて数K程度まで3Heガスを冷却し、さらに断熱膨張により凝縮温度以下まで冷却して液化させているため、図6に示される希釈冷凍機の如く初期冷却のために減圧した液体ヘリウムを使用する必要がなく、そのため長時間の連続運転が可能となるとともにランニングコストも低減される。
さらに特許文献1の希釈冷凍機の原理的構成を図7に示し、これについて以下に簡単に説明する。
図7において、1は3Heガスを循環させるための真空ポンプであり、この真空ポンプ1により送り出された3Heガス(通常は室温)は、トラップ25を介して、極低温容器(クライオスタット)17内に収容された希釈冷凍機本体19に送り込まれる。ここでトラップ25は、真空ポンプ1から送り出される3Heガス中から空気成分や油分等を除去するためのものである。そして極低温容器17内には、真空ポンプ1からトラップ25を経て送り込まれたHeガスを混合室3まで導くための往路5Aと、混合室3から真空ポンプ1へ向けて3Heガスを導くため(但し下部の区間では液体4Heが流通している)の復路5Bとが設けられている。さらにこれらの往路5A、復路5Bには、後に改めて説明するように、主熱交換器27、JT膨張前予冷用熱交換器29、JT膨張器31、分留器11および分留器内熱交換器13、往復熱交換器15(往路側通路15Aおよび復路側通路15B)が介在されており、これらによって冷凍機本体19が構成されている。
前記希釈冷凍機本体19は、上記各構成要素のほか、例えば4.2K程度の低温を発生するGM冷凍機などの小型機械式冷凍機(以下特に説明のない限りは、これをGM冷凍機と記す)33を備えている。すなわちGM冷凍機33の本体基部33Aが極低温容器17の上面側に固定され、そのGM冷凍機33の冷却ヘッド33Bが上方から極低温容器17の内部へ挿入されており、その冷却ヘッド33Bからは銅等の良伝熱材料からなる伝熱ブロック35が水平に延出されるとともにその先端側が往路5Aに設けられた主熱交換器27の伝熱部27Aに熱的に接続されて、往路5A内を流れる3Heを4.2K程度に冷却するようになっている。なお図示の例では、この主熱交換器27の伝熱部27Aは復路5Bにも熱的に接触する構成としている。
さらに往路5Aにおける主熱交換器27の出口側はJT膨張前予冷用熱交換器29に導かれている。この予冷用熱交換器29は、JT膨張器31によって3Heガスを断熱膨張させる前の段階で、例えば2.6K程度に3Heガスを予冷するためのものであり、復路5B内を流れる戻りの3Heガスの冷熱を受けるべく、復路5Bに熱的に接続されている。
往路5Aにおける主熱交換器27の出口側はJT膨張器31に導かれている。このJT膨張器31は、ジュール・トムソン膨張によって3Heガスをその凝縮温度以下の温度、例えば1.5K程度まで冷却して、3Heガスを凝縮液化させるためのものであり、図示の例では復路5Bを流れる復路側の3Heガスの冷熱をも利用するべく、復路5Bに熱的に接続されている。
また往路5AにおけるJT膨張器31の出口側は分留器11に配置された分留器用熱交換器13に導かれている。この分留器用熱交換器13は、分留器11内の4He−3He混合液体によって往路側の3Heガスを例えば1.1K程度に冷却するためのものであり、分留器11内の4He−3He混合液体に熱的に接触するように設けられている。
そして往路5Aにおける分留器用熱交換器13の出口側は、往復熱交換器15における往路側通路15Aに導かれる。この往復熱交換器15は、往路側通路15Aと復路側通路15Bとを備えており、これらの往路側通路15Aと復路側通路15Bとは流路構造的には隔絶されているものの、熱的には互いに熱交換可能となるように配設されていて、往路側通路15Aを通る液体3Heが、復路側通路15B内の4He+3He混合液体によって0.8K以下の低温、例えば100mK程度に冷却されるように構成されている。
さらに往復熱交換器15の往路側通路15Aの出口は混合室3の上部に導かれている。この混合室3には、予め液体4Heが収容されており、往路5Aから導かれた液体3Heが液体4Heに混合されることになる。そして既に述べた図6の希釈冷凍機と同様に、3Heを約6.4%含む希薄相(下層)Qと3He100%濃厚相(上層)Pとして2相分離し、濃厚相中の3Heが希薄相へ溶け込む際に10mKオーダーの超低温が得られる。
混合室3の底部からは前述の復路5Bが上方へ導き出されている。そしてこの復路5Bにおける最も混合室3に近い位置には、前述の往復熱交換器15の復路側通路15Bが設けられており、その復路側通路15Bの出口側は前述の分留器11の底部に導かれ、さらにその分留器11の上部は上方に導かれて、極低温容器17の外部の前記真空ポンプ1により吸引されるようになっている。ここで、分留器11内には4He−3He混合液体が保持されるが、既に述べたように3Heと4Heとの飽和蒸気圧の差により3Heガスが選択的に排出されることになる。そしてこの3Heガスが真空ポンプ1によって再び極低温容器17内の希釈冷凍機本体19に送り込まれることになる。
以上のように、図7に示す特許文献1の希釈冷凍機においては、真空ポンプ1によって極低温容器17内に送り込まれた3Heガスは、GM冷凍機33からの冷熱により主熱交換器27において4.2K程度に冷却され、さらに予冷用熱交換器29において2.6K程度に冷却され、続いてJT膨張器31において凝縮温度以下の1.5K程度に冷却されて液化する。したがって図7の例では、主熱交換器27、予冷用熱交換器29およびJT膨張器31が図6の例における凝縮器9に対応することになる。このようにして液化された液体3Heは分留器用熱交換器13において1.1K程度に冷却され、さらに往復熱交換器15の往路側通路15Aにおいて100mK程度に冷却され、最終的に混合室3内においてmKオーダーの超低温を得ることができる。
なおGM冷凍機などの機械式冷凍機を用いた希釈冷凍機としては、特許文献2に、希釈冷凍機の本体部分に対して機械式冷凍機を構造的に分離・独立させておき、機械式冷凍機の発生する冷熱をフレキシブルヒートパイプにより希釈冷凍機の本体部分内に伝達するようにしたものも提案されている。
前述のように図6に示される従来の希釈冷凍機では、連続運転可能な運転時間は、1Kポット7の部分を含む極低温容器17内に保有されている液体ヘリウムの量に依存するから、長時間連続運転させるためには、多量の液体ヘリウムを必要とし、そのためには極低温容器17を全体的に大型化せざるを得ない。したがって実用機として長時間連続運転可能な希釈冷凍機は、著しく大型なものとなるため、汎用性、運搬性、取扱い性に欠ける問題がある。特に電子顕微鏡観察において試料冷却のために電子顕微鏡に取付けるには不向きであり、また実験室での小規模な卓上冷却実験には不向きであった。
一方、図7に示されるようなGM冷凍機で代表される小型機械式冷凍機を用いた希釈冷凍機の場合は、既に述べたように3Heの凝縮のための予冷用冷媒として液体ヘリウムを用いないため、長時間の連続運転が可能となる。但し、機械的冷凍機を備えているため、小型化には制約がある。
さらに図7に示される希釈冷凍機の場合、機械式冷凍機による振動の問題を逃れ得ないという、根本的な問題があった。すなわちGM冷凍機で代表される機械式冷凍機は、機械的に圧縮−膨張させる行程を周期的に繰返すところから、必然的に振動が発生し、この振動が希釈冷凍機本体の全体に伝達されるため、希釈冷凍機を用いた各種分析機器において分析精度が損なわれてしまうおそれがある。
例えば、半導体表面検査や材料開発における微量元素分析には、X線分光分析計が頻繁に用いられており、このX線分光分析計のX線検出器には半導体検出器が搭載されているが、従来の半導体検出器では分析性能が理論的限界に近付いており、微量元素についてのこれ以上の高精度分析性能の向上は困難となりつつある。そこで近年、従来の半導体検出器よりも優れた分析性能を有する超伝導相転移端温度計(TES)型マイクロカロリーメーターを検出器とするX線分光分析計の開発が進められている。このTES型マイクロカロリーメーターを用いたX線分光分析計に用いる超伝導X線検出素子が常に高性能で動作するためには、100mK以下の極低温で温度変動幅10μK程度以内の温度安定度を保持する必要があり、そこで冷却装置として希釈冷凍機が不可欠となる。しかしながらこの種のX線分光分析計に前述のような図7に示す希釈冷凍機を用いた場合、実際には機械式冷凍機の発する振動のために、試料と検出素子との間の距離が変動することなどに起因して、高精度の分析が困難とならざるを得なかったのである。
一方、特許文献2において提案されている機械式冷凍機を用いた希釈冷凍機は、振動発生源となる機械式冷凍機を、希釈冷凍機の本体部分とは構造的に分離・独立させ、両者間をフレキシブルヒートパイプによって結合した構成としているため、理論的には機械式冷凍機で発生する振動が希釈冷凍機本体部分に加わることを抑制できると考えられる。
しかしながら特許文献2で提案されている希釈冷凍機で用いているヒートパイプは、フレキシブルなものと称してはいるが、いわゆるヒートサイホン構造の重力型のものであり、そのためヒートパイプの一端部(凝縮部)に接する機械式冷凍機を、ヒートパイプの他端部(蒸発部)に接する希釈冷凍機本体の上方に配置せざるを得ないから、機器の配置の自由度が制約される問題があるほか、フレキシブルではあっても、重力型であるためヒートパイプの中間の一部を垂れ下げることができないから、ヒートパイプの取り廻しも制約される問題があり、さらにはこれらの配置や取り廻しの制約に起因して、全体的なコンパクト化も困難となりやすいという問題もある。
なお一般のヒートパイプとしては、液相還流のためにウィックを用いた逆勾配可能な毛細管タイプのものもあるが、数K程度の極低温で使用可能でしかも充分にフレキシブルなものは、未だ実用化されておらず、そのため前述のような重力型のものを用いざるを得ず、配置や取り廻しの問題を免れ得ないのである。
これらの関係から、特許文献2で提案されている希釈冷凍機は、実際に使用するには程遠いもの、と言わざるを得なかったのである。すなわち、特許文献2で提案されている希釈冷凍機は、原理的には機械式冷凍機で発生する振動の悪影響を抑制するために有効と考えられるものの、配置の自由度や取り廻し性に甚だしく劣っていて、全体的なコンパクト化も難しく、そのため実際の機器としては使用することが困難で、未だ不充分なものと言わざるを得なかったのが実情である。
この発明は以上のような事情を背景としてなされたもので、基本的には長時間連続運転可能としながらも、希釈冷凍機の本体部分(極低温容器の部分)の小型化を図り、これにより取扱い性、運搬性の向上を図ると同時に、GM冷凍機で代表される機械式冷凍機を用いた場合の振動による問題を回避し得るようにし、しかも実用的な機器として、配置の自由度や取り廻し性を損なうことがないようにした希釈冷凍機を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決するため、この発明では、3Heの凝縮のために機械式冷凍機を用いた場合においては、機械式冷凍機の部分(もしくは機械式冷凍機および凝縮器の部分)を、希釈冷凍機の本体部分から構造的に分離して、機械式冷凍機の振動が希釈冷凍機本体に直接伝達されないようにするとともに、本体部分の小型化を図って、希釈冷凍機の取扱い性、運搬性を向上させるばかりでなく、機械式冷凍機で発生した冷熱を希釈冷凍機の本体部分へ伝えるための予冷用冷媒を、真空ポンプにより積極的に圧送循環させるようにして、ヒートパイプを用いた場合の問題を解決することとした。
また機械式冷凍機を用いずに液体ヘリウムにより3Heを凝縮させるようにした場合においては、凝縮器における1Kポットに相当する部分(3Heを冷却・凝縮させるための予冷用冷媒を収容する部分)、もしくは凝縮器の部分自体を希釈冷凍機の本体部分から分離して、本体部分の小型化を図り、その取扱い性、運搬性を向上させるとともに、ヒートパイプを不要として前記問題を解消することとした。
本願の各請求項のうち、請求項1〜請求項5の発明では、GM冷凍機で代表される小型機械式冷凍機を用いた場合を規定し、また請求項6、請求項7の発明では、機械式冷凍機を用いない場合について規定している。
具体的には、請求項1の発明は、Heガスを循環圧送するための第1の真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から第1の真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、第1の真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において冷却して凝縮させ、得られたHe液相を、第1の熱交換器において復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却された液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて第1の真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から前記第1の熱交換器を経て3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記凝縮器と、第1の熱交換器と、混合室と、分留器とを断熱容器内に収容して、これらを全体として一体化された希釈冷凍機本体とする一方、前記第1の真空ポンプを希釈冷凍機本体の断熱容器に対して離隔させて配設し、さらに前記第1の真空ポンプとは別の第2の真空ポンプと機械式小型極低温冷凍機とを備えた予冷用冷却装置を、前記希釈冷凍機本体の断熱容器から離隔させてその断熱容器とは別体に設けておき、前記予冷用冷却装置を、予冷用冷媒を機械式小型低温冷凍機により冷却するとともに、その予冷用冷媒を前記第2の真空ポンプにより循環圧送させて、希釈冷凍機本体内の凝縮器に導き、その凝縮器において予冷用冷媒の冷熱により前記往路内のHeガスを冷却するように構成し、かつ予冷用冷却装置内から希釈冷凍機本体内へ予冷用冷媒を導きかつ希釈冷凍機本体内から予冷用冷却装置内へ予冷用冷媒を戻すための管路を、可撓性を有する管体によって構成したことを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において冷却して凝縮させ、得られたHe液相を、第1の熱交換器において復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却された液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から前記第1の熱交換器を経て3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記凝縮器と、第1の熱交換器と、混合室と、分留器とを断熱容器内に収容して、これらを全体として一体化された希釈冷凍機本体とする一方、前記真空ポンプを希釈冷凍機本体の断熱容器に対して離隔させて配設し、さらに機械式小型極低温冷凍機とを備えた予冷用冷却装置を、前記希釈冷凍機本体の断熱容器から離隔させてその断熱容器とは別体に設けておき、前記真空ポンプから希釈冷凍機本体内の凝縮器へ送られるべきHeガスの一部を予冷用冷却装置へ導いて循環圧送させ、そのHeガスを予冷用冷媒として機械式小型低温冷凍機により冷却するとともに、冷却された予冷用冷媒を希釈冷凍機本体内の凝縮器に導き、その凝縮器において予冷用冷媒の冷熱により前記往路内のHeガスを冷却するように構成し、かつ予冷用冷却装置内から希釈冷凍機本体内へ予冷用冷媒を導きかつ希釈冷凍機本体内から予冷用冷却装置内へ予冷用冷媒を戻すための管路を、可撓性を有する管体によって構成したことを特徴とするものである。
またさらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の希釈冷凍機において、予冷用冷却装置において予冷用冷媒を断熱膨張させて液化させ、その液化された予冷用冷媒を希釈冷凍機本体内の凝縮器に導くように構成したことを特徴とするものである。
そしてまた請求項4の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の希釈冷凍機において、予冷用冷却装置から気相のままの予冷用冷媒を希釈冷凍機本体内の凝縮器に導き、その凝縮器においては、往路内のHeガスを予冷用冷媒との熱交換により冷却後、断熱膨張させて液化させるように構成したことを特徴とするものである。
さらに請求項5の発明は、Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において冷却して凝縮させ、得られたHe液相を、第1の熱交換器において復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却された液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から前記第1の熱交換器を経て3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記第1の熱交換器と、混合室と、分留器とを断熱容器内に収容して、これらを全体として一体化された希釈冷凍機本体後段部とし、一方その希釈冷凍機本体後段部の断熱容器から離隔させて希釈冷凍機本体前段部を設けておき、かつその希釈冷凍機本体前段部内に前記凝縮器を配設するとともに、その凝縮器を通るHeガスを冷却するための機械的小型冷凍機を付設しておき、前記希釈冷凍機本体後段部と希釈冷凍機本体前段部とを結ぶ循環経路における凝縮器と分留器との間の往路部分および復路部分の流路を、可撓性を有する管体によって構成したことを特徴とするものである。
また請求項6の発明は、Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において冷却して凝縮させ、得られたHe液相を、第1の熱交換器において復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却された液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から前記第1の熱交換器を経て3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記凝縮器と、第1の熱交換器と、混合室と、分留器とを断熱容器内に収容して、これらを全体として一体化された希釈冷凍機本体とする一方、真空ポンプを希釈冷凍機本体に対して離隔させて配設し、また前記凝縮器には、真空ポンプから送られて来るHeガスを冷却するために凝縮器と熱交換させる第2の熱交換器を付設しておき、一方予冷用液体He貯留槽を、希釈冷凍機本体の断熱容器から離隔して配置しておき、その予冷用液体He貯留槽からの液体Heもしくはその液体Heを断熱膨張させて得られたHeガスを、前記第2の熱交換器に予冷用冷媒として導くように構成したことを特徴とするものである。
そしてまた請求項7の発明は、Heガスを循環圧送するための真空ポンプの出口側から、He液相を3He濃厚相と3He希薄相とに2相分離した状態で収容しかつ冷却ヘッドとなるべき混合室の入口までの経路を往路とし、前記混合室の出口から真空ポンプの入口側に至る経路を復路とし、これらの往路、復路によってHeを循環させるためのHe循環経路を形成しておき、前記往路中に凝縮器を配設しておき、真空ポンプにより送り出されたHeガスをその凝縮器において冷却して凝縮させ、得られたHe液相を、第1の熱交換器において復路側との熱交換により0.8K以下に冷却して、その0.8K以下に冷却された液相を、前記混合室の3He濃厚相中に導き、混合室内での3He濃厚相中から3He希薄相への3Heの希釈により熱吸収を生ぜしめ、一方復路中には分留器を配設しておき、その分留器内における3Heの蒸気圧と4Heの蒸気圧の差を利用して、3Heを気化させて真空ポンプの入口側へ導くと同時に、その気化による分留器内のHe液相中におけるHe濃度の低下を利用して、混合室内の3He希薄相から前記第1の熱交換器を経て3He液相を復路側へ導き出すようにした希釈冷凍機において、前記分留器と、第1の熱交換器と、混合室とを断熱温容器内に収容して、これらを全体として一体化された希釈冷凍機本体とし、かつその希釈冷凍機本体とは離隔して配設した凝縮器断熱容器内に前記凝縮器を収容し、その凝縮器断熱容器内に外部から予冷用冷媒として液体Heを導入して、その液体Heにより凝縮器内の3Heガスを冷却・凝縮させるように構成したことを特徴とするものである。
請求項1〜請求項4の発明の希釈冷凍機においては、振動の発生源となる機械式小型極低温冷凍機を含む予冷用冷却装置が、冷凍機としてのコールドヘッドに相当する混合室を含む希釈冷凍機本体から離隔されて、その希釈冷凍機本体の断熱容器とは別体に設けられており、かつ予冷用冷却装置と希釈冷凍機本体とを結ぶ管路が、可撓性を有する管体によって構成されているため、機械式小型極低温冷凍機で発生した振動が希釈冷凍機本体、特にコールドヘッドの混合室の部分に伝達されることが有効に防止され、そのため各種分析を高精度で行なうことが可能となる。また希釈冷凍機本体の断熱容器の内側に往路内を流れる3Heを冷却するための液体ヘリウムを別途保持しておく必要がないため、希釈冷凍機本体の断熱容器を従来よりも格段に小型化することができ、そのため取扱い性、運搬性に優れ、電子顕微鏡などの種々の装置への取り付けが容易となるとともに、実験室での卓上冷却実験にも適している。
さらに請求項1〜4の発明の希釈冷凍機においては、予冷用冷却装置から予冷用冷媒を真空ポンプにより循環圧送させて希釈冷凍機本体内の凝縮器に可撓性管体により導くようにしており、この場合の管体は、いわゆるヒートパイプとは異なり、背圧が加えられた予冷用冷媒をその圧力により導くだけの単純な構成であれば良いため、逆勾配となっても特に問題はなく、かつ充分な可撓性を与えておくことも容易であるため、予冷用冷却装置と希釈冷凍機本体との配置関係(上下関係)が特に制約されることがなく、かつ管体の一部が垂れ下がっても予冷用冷媒の移送に支障がないことから、管体の取り廻し性も良好であり、したがって配置、取り廻しの自由度が極めて高い。
また請求項5の発明の希釈冷凍機においては、凝縮器の部分およびそれを冷却するための小型機械式極低温冷凍機を備えた部分が、希釈冷凍機本体の前段部分(予冷部)として、コールドヘッドに相当する混合室を含む希釈冷凍機本体の後段部分から離隔されて、その希釈冷凍機本体後段部分とは別体に設けられており、かつ凝縮器と分留器との間の往路部分および復路部分すなわち前段部分と後段部分とを結ぶ部分の流路が、可撓性を有する管体によって構成されており、しかもその管体部分は真空ポンプにより圧力が加えられたHeガスが流れる部分であって、ヒートパイプを使用すべき部分ではないから、請求項1〜請求項4の発明と同様な効果を得ることができる。
一方、請求項6の発明の希釈冷凍機においては、凝縮器に付設される第2の熱交換器を流通する液体ヘリウム(予冷用液体ヘリウム)を貯留しておくための予冷用液体He貯留槽が、コールドヘッドに相当する混合室を含む希釈冷凍機本体から離隔されて配置されているため、希釈冷凍機本体自体の内部には3Heガスの冷却・凝縮のための液体ヘリウムを保持させておく必要がなく、そのため希釈冷凍機本体自体の小型化が可能であり、そのため取扱い性、運搬性に優れ、電子顕微鏡などの種々の装置への取付けが容易になるとともに、実験室での卓上冷却にも適している。
さらに請求項7の発明の希釈冷凍機においては、凝縮器を収容した凝縮器容器の部分が、コールドヘッドに相当する混合室を含む希釈冷凍機本体とは離隔して別体に配設され、その凝縮器容器内に3Heガスの冷却・凝縮のための予冷用冷媒としての液体ヘリウムが保持されることから、請求項6の発明の場合と同様に希釈冷凍機本体の小型化が可能となり、請求項6の発明と同様な効果が得られる。
図1に請求項1の発明の一実施例の希釈冷凍機の全体的な構成を示す。なお以下の各実施例において、図6もしくは図7に示す従来技術の希釈冷凍機と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図1に示す実施例は、基本的には図7に示した従来技術の希釈冷凍機と同様にGM冷凍機33で代表される機械式小型極低温冷凍機を用いたものである。
図1において、周囲が真空断熱された断熱容器41内には、凝縮器9、インピーダンス42、分留器11、第1熱交換器15、混合室3が収納されており、これらが全体として一体化された希釈冷凍機本体43を構成している。Heガスを循環圧送するための真空ポンプ(第1の真空ポンプ)1は希釈冷凍機本体43から(したがって断熱容器41から)離隔して配置されており、真空ポンプ1の出口側からオイルトラップ45および液体窒素トラップ46を経てHeガスを希釈冷凍機本体43内の凝縮器9へ導くための管路(往路5Aの一部を構成する管路)5A0および希釈冷凍機本体43内の凝縮器9に付設された熱交換流路体9Cから真空ポンプ1にHeガスを戻すための管路(復路5Bの一部を構成する管路)5B0は、いずれも可撓性を有する管体(いわゆるフレキシブルチューブ)によって構成されている。
ここで、凝縮器9は、例えば銅粉等の熱伝導率の高い金属粉末の焼結体の如く、微細な流路を有する凝縮器本体9Aを備えていて、その凝縮器本体9A内の微細な流路に真空ポンプ1から送られて来たHeガスが導かれるように構成され、またその凝縮器本体9Aはその全体が銅等の熱伝導性の高い材料からなる伝熱体9Bにより取囲まれ、その伝熱体9Bには、復路5Bにおける分留器11からのHeガスが流通する熱交換流路体9Cが熱的に接触もしくは一体化した状態で設けられている。さらに凝縮器9の伝熱体9Bには、次に述べるようなGM冷凍機等の機械式小型極低温冷凍機33を備えた予冷用冷却装置49から給送された予冷用冷媒が流れる予冷用冷媒流路51が熱的に接触した状態で設けられている。
予冷用冷却装置49は、He等の予冷用冷媒を1K程度まで冷却するためのものであり、希釈冷凍機本体43から(したがって断熱容器41から)離隔して設けられている。ここで以下の説明では、予冷用冷媒としてHeを用いるものとして説明する。
この予冷用冷却装置49は、GM冷凍機等の機械式小型極低温冷凍機33を備えており、真空ポンプ(第1の真空ポンプ)1とは別の真空ポンプ(第2の真空ポンプ)53から循環圧送されるHeガスをそのGM冷凍機33によって冷却する構成とされている。具体的には、予冷用冷却装置49は、希釈冷凍機本体43の断熱容器41から離隔して別体に設けられた断熱容器55内に、GM冷凍機33の二つのステージ33B1、33B2からなる冷却ヘッド33Bが挿入され、またその冷却ヘッド33Bの第1ステージ(相対的に高温側)33B1および第2ステージ(相対的に低温側)33B2にそれぞれ熱交換用第1流路57Aおよび熱交換用第2流路57Bが熱的に接触した状態で設けられ、さらに断熱容器55内には、入側熱交換器59および出側熱交換器61が設けられた構成とされている。ここで入側熱交換器59は、往路側流路59Aおよび復路側流路59Bとによって構成され、また出側熱交換器61も往路側流路61Aおよび復路側流路61Bとによって構成されている。出側熱交換器61における往路側流路61Aの出口側がJT膨張弁63(予冷用冷媒凝縮器)を経て予冷用冷却装置49の断熱容器55の外部に導き出されて、予冷用冷媒導入管路65を介して前記希釈冷凍機本体43内の凝縮器9における予冷用冷媒流路51に導かれ、さらにその予冷用冷媒流路51の出側が予冷用冷媒排出管路67を介して予冷用冷却装置49の断熱容器55の内部の出側熱交換器61の復路側流路61Bに導かれている。ここで、予冷用冷却装置49と希釈冷凍機本体43とを結ぶ管路65,67、すなわち予冷用冷媒が流通する管路65,67は、いわゆるフレキシブルチューブ等の可撓性を有する管体によって構成されている。
一方、予冷用冷却装置49の入側熱交換器59の往路側流路59Aには、第2の真空ポンプ53によって、3Heガスがオイルトラップ71および液体窒素トラップ73を介して圧送供給されるようになっており、またその予冷用冷却装置49の入側熱交換器59の往路側流路59Bは、前記真空ポンプ53の入口側に導かれている。
次に図1に示される実施例の希釈冷凍機の動作、機能について説明する。
図1に示される希釈冷凍機において、第1の真空ポンプ1から圧送された3Heガスは、オイルトラップ45および液体窒素トラップ46を経て、Heガス循環路5の往路5Aにおける断熱容器41の外側(したがって希釈冷凍機本体43の外側)の部分、すなわちフレキシブルチューブ5A0を通り、断熱容器41内に送り込まれ、凝縮器9の凝縮器本体9A、インピーダンス42、分留器11の熱交換器13、往復熱交換器15の往路側通路15Aを経て、予め4Heが収容されている混合室3の上部に導かれる。
一方、混合室3の下部からは、4He−3He混合液体が復路5Bにより往復熱交換器15を経て分留器11内に導かれ、その分留器11から3Heガスが凝縮器9の熱交換流路体9Cを経て断熱容器41の外部へ導き出されて、復路5Bにおける断熱容器41の外側のフレキシブルチューブ5B0を介して第1の真空ポンプ1に戻る。
ここで、凝縮器9の凝縮器本体9A内においては、往路5A内の3Heガスは、主として予冷用冷媒流路51を通る予冷用冷却装置49からの予冷用冷媒(液体He)により1.2K程度まで冷却されて液化し、さらにその液化された3Heは、インピーダンス42、分留器熱交換器13および往復熱交換器15の往路側通路15Aを通ってさらに冷却されて100mK程度に冷却され、最終的に混合室3内においてmKオーダーの極低温を得ることができる。
一方、予冷用冷却装置49の側においては、3Heガスがオイルトラップ71および液体窒素トラップ73を経て断熱容器55に導かれ、断熱容器55内において、入側熱交換器59の往路側流路59Aを経てGM冷凍機33の冷却ヘッド33Bの第1ステージ33B1に熱的に接する熱交換用第1流路57Aおよび第2ステージ33B2に熱的に接する熱交換用第2流路57Bを通り、その間に4K程度まで冷却され、さらに出側熱交換器61における往路側流路61Aを経てJT膨張弁(予冷用冷媒凝縮器)63により1K程度まで冷却されて液化し、その液化した1K程度の液体Heは、予冷用冷却媒体として、断熱容器55の外部へ導き出され、可撓性を有する予冷用冷媒導入管路65を介して断熱容器41内の凝縮器9における予冷用冷媒流路51に導かれ、伝熱体9Bを介して凝縮器本体9A内を流れる希釈冷凍機本体側の3Heガスと熱交換して、その本体側の3Heガスを1.2K程度に冷却してこれを液化させる。
一方、予冷用冷媒流路51から出た予冷用冷媒(通常は前述の熱交換により気化したHeガス)は、断熱容器41の外部へ導き出されて、可撓性を有する予冷用冷媒排出管路67を介して予冷用冷却装置49の断熱容器55内に導入され、出側熱交換器61の復路側流路61Bおよび入側熱交換器59の復路側流路59Bを通り、それぞれ出側熱交換器の往路側流路61A、入側熱交換器59の往路側流路59Aを通る予冷用冷媒と熱交換した後、断熱容器55の外部の第2の真空ポンプ53に戻る。
以上の実施例において、GM冷凍機33はかなりの振動を発生するのが通常であるが、前述のようにGM冷凍機33を含む予冷用冷却装置49は、希釈冷凍機本体43から離隔して設けられていて、その間を結ぶ予冷用冷媒を流通させる管路(65、67)は可撓性を有する管体によって構成されているため、GM冷凍機33の振動が混合室3を含む希釈冷凍機本体43の断熱容器41に伝達されることが可及的に防止され、その結果高精度での分析等が可能となるのである。また希釈冷凍機本体43内の凝縮器9において3Heを冷却、凝縮させるための冷媒は、希釈冷凍機本体43とは別体の予冷用冷却装置49から供給されるため、希釈冷媒器本体43の断熱容器41内には特に冷媒を保持しておく必要がないから、断熱容器自体を従来よりも小型化することが可能となる。
なおここで、図1に示す請求項1の発明の実施例では、予冷用冷却装置49と希釈冷凍機本体43とを結ぶ管体(予冷用冷媒導入管路65および予冷用冷媒排出管路67)には、第2の真空ポンプ53による圧力が加えられた状態で予冷用冷媒が流通するから、予冷用冷却装置49の側を希釈冷凍機本体43の側よりも下方に配置しても(したがって上述の管体が逆勾配となっても)、あるいは上述の管体の中途が垂れ下がっても、特に予冷用冷媒の流れが妨げられることがない。この点は特許文献2に示される希釈冷凍機との大きな相違点である。
なおまた、図1の実施例では、予冷用冷却装置49内にJT膨張弁63を設けておいて、予冷用冷却装置49の側において予冷用冷媒を液化温度まで充分に冷却し、予冷用冷媒を液相状態で希釈冷凍機本体43の凝縮器9の予冷用冷媒流路51に送り込む構成としているが、場合によっては予冷用冷却装置49内のJT膨張弁63を省き、4K程度の気相のままの予冷用冷媒を希釈冷凍機本体43の側へ送り込んでも良い。但しこの場合は、希釈冷凍機本体43の凝縮器9においては、凝縮器本体9Aのみでは本体側3Heガスが4K近くまでしか冷却されず、液化温度まで達しないのが通常であるから、その場合には凝縮器本体9Aの後段(インピーダンス42の前)に図示しないJT膨張弁を設けておき(あるいはインピーダンス42の代わりにJT膨張弁を設けておき)、凝縮器本体9Aで4K近くまで冷却された3HeガスをJT膨張弁により断熱膨張させ、これにより1.2K以下に冷却して液化させるように構成すれば良い。
図2には、請求項2の発明に対応する実施例、すなわち図1に示される第1の実施例の一部を変形させた第2の実施例を示す。
図2の実施例においては、図1の実施例における予冷用冷却装置49の側の真空ポンプ53を省く一方、希釈冷凍機本体43側の真空ポンプ(第1の真空ポンプ)1から凝縮器9に送られるHeガスの一部を分流させて予冷用冷却装置49の側に導き、そのHeガスを予冷用冷却装置49において冷却させて液化し、予冷用冷媒として用いることとしている。
具体的には、図2に示す実施例では、真空ポンプ1からオイルトラップ45および窒素トラップ46を経て希釈冷凍機本体43の断熱容器41内にHeガスを導くための流路(往路5Aの一部)から、往路側バイパス管路75が分岐され、その往路側バイパス管路75が予冷用冷却装置49の断熱容器55内の入側熱交換器59における往路側流路59Aの入口側に導かれている。一方、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内の凝縮器熱交換流路体9Cから真空ポンプ1にHeガスを戻すための流路(復路5Bの一部)の中途には、復路側バイパス管路77の一端が接続されており、この復路側バイパス管路77の他端側は、予冷用冷却装置49の断熱容器55内の入側熱交換器59における復路側流路59Bの出口側に接続されている。なお図2の実施例では、図1の実施例とは異なり、予冷用冷却装置49の側に専用の真空ポンプを設けていない。そしてこれらの点以外についての構成は、図1の実施例と同様である。
以上のような図2に示される実施例においては、真空ポンプ1からオイルトラップ45および液体窒素トラップ46を経て希釈冷凍機本体43の断熱容器41内の凝縮器9に送られるHeガスの一部が、往路側バイパス管路75によって分流されて予冷用冷却装置49の断熱容器55内に導かれ、その断熱容器55内においては、図1に示した実施例と同様に、入側熱交換器59を経てGM冷凍機33により4K程度まで冷却され、さらに出側熱交換器61を経てJT膨張弁63により1K程度まで冷却されて液化し、その液化した1K程度の液体Heが、予冷用冷媒として希釈冷凍機本体43の断熱容器41内の凝縮器9における予冷用冷媒流路51に導かれる。そしてこの予冷用冷媒流路51において熱交換されて温度上昇して気化したHeガスは、予冷用冷媒排出管路67を経て予冷用冷却装置49の断熱容器55内に戻り、出側熱交換器61および入側熱交換器59を通った後、断熱容器55内から復路側バイパス管路77を経て真空ポンプ1に戻る。
以上のような図2に示す実施例によれば、図1に示す実施例と同様な効果が奏されるほか、予冷用冷媒として本体側へ送られるHeガスの一部を利用して、Heガス圧送用の真空ポンプを希釈冷凍機本体43の側と予冷用冷却装置49の側とで共用しているため、全体として高価な真空ポンプが1基で足り、そのため図1の実施例よりも低コスト化を図ることができる。
なお図2の例においても、図1に示される実施例に関して説明したように、予冷用冷却装置49内のJT膨張弁63を省く一方、希釈冷凍機本体43内の凝縮器9の凝縮器本体9Aの後段(インピーダンス42の前)に図示しないJT膨張弁を設けるかまたはインピーダンス42の代りにJT膨張弁を設けた構成として、予冷用冷却装置49から気相のままの予冷用冷媒を希釈冷凍機本体43内に導入し、一方希釈冷凍機本体43内において図示しないJT膨張弁により本体側のHeガスを液化に至らしめるようにしても良い。
図3には、この発明の第3の実施例、すなわち請求項3の発明に対応する実施例を示す。
図3に示される実施例の希釈冷凍機は、原理的には、図7に示されるGM冷凍機を用いた希釈冷凍機の本体を、GM冷凍機を含む前段部分と、希釈冷凍機の冷却ヘッドとなるべき後段部分とに積極的に分離して、両者間で振動が伝達されないようにしたものである。
具体的には、図3に示される実施例では、希釈冷凍機本体が、GM冷凍機等の機械式小型極低温冷凍機33により冷却される凝縮器9を断熱容器81内に収容した希釈冷凍機本体前段部(予冷凝縮部)83と、分留器11、第1の熱交換器15および混合室3を断熱容器85内に収容した希釈冷凍機本体後段部87とによって構成されており、前段部83の断熱容器81と後段部87の断熱容器85とは、構造的、空間的に分離されている。そしてHe循環経路5の往路5Aおよび復路5Bにおける前段部83の断熱容器81内の部分と後段部87の断熱容器85内の部分とを結ぶ外部中間往路管路89および外部中間復路管路91が、フレキシブルチューブ等の可撓性を有する管体によって構成されている。
ここで、図3の例では、希釈冷凍機本体前段部83は、断熱容器81内にGM冷凍機33の冷却ヘッド33B(第1ステージ33B1および第2ステージ33B2)が挿入されている。そして往路5Aの一部として冷却ヘッド33Bの第1ステージ33B1に熱的に接する第1熱交換流路99Aおよび第2ステージ33B2に熱的2接する第2熱交換流路99Bが設けられ、さらに往路5A、復路5Bの熱交換のための前段熱交換器93および中間熱交換器95と、JT膨張弁等の断熱膨張器97とが断熱容器81内に収容されて、これらによって凝縮器9が構成されている。また希釈冷凍機本体後段部87の断熱容器85内の構成は、図1もしくは図2に示される希釈冷凍機本体43における分留器11から混合室3までの部分と同様な構成とされている。
このような図3に示される実施例の希釈冷凍機においては、真空ポンプ1からオイルトラップ45および液体窒素トラップ46を経て送り出された3Heガスは、往路5Aの外部管路(可撓性管体からなるもの)5A0により希釈冷凍機本体前段部83の断熱容器81内に送り込まれ、前段熱交換器93の往路側流路93Aを経てある程度予冷されて、GM冷凍機33の冷却ヘッド第1ステージ33B1に接する熱交換流路99Aおよび冷却ヘッド第2ステージ33B2に接する熱交換流路99Bを通って、4K近くまで冷却され、さらに中間熱交換器95の往路側熱交換流路体95Aを経て、断熱膨張器97により最終的に1.2K以下に冷却されて液化する。そしてその液化された液相3Heは、可撓性管体からなる外部中間往路管路89を経て希釈冷凍機本体後段部87の断熱容器85内に送り込まれ、分留器11の熱交換器13、往復熱交換器15の往路側流路15Aを経て混合室の上部に導かれる。一方、混合室3の下部からの4He−3He混合液体は、復路5Bにより往復熱交換器15を経て分留器11内に導かれ、その分留器11で気化した3Heガスが断熱容器85外へ導き出され、可撓性管体からなる外部中間復路管路91により希釈冷凍機本体前段部83の断熱容器81内に導かれ、中間熱交換器95の復路側流路95Bおよび前段熱交換器93の復路側流路93Bを経て再び断熱容器81の外部へ導き出され、外部管路5B0を経て真空ポンプ1へ戻る。
このような図3に示される実施例では、振動発生源となるGM冷凍機33を備えた希釈冷凍機本体前段部83と、希釈冷凍機としての冷却ヘッドとなる混合室3を含む希釈冷凍機本体後段部87とが、それぞれ別の断熱容器81、85に収容されて、構造的、機械的に分離されるとともに、その間が可撓性管体からなる外部中間往路・復路管路89、91によって結ばれているため、GM冷凍機33により発生する振動が混合室3を含む後段部87に伝達されることが防止され、その結果高精度での分析が可能となる。
また希釈冷凍機本体前段部83と同後段部87とを結ぶ可撓性管体からなる外部中間往路・復路管路89、91には、真空ポンプ1による圧力が加えられた状態で液体HeもしくはHeガスが通過するから、前段部83の断熱容器81と後段部87の断熱容器85の配置関係(上下位置関係)は特に制約されず、また管路89、91を構成している可撓性管体の中間が垂れ下がっても、特に液体He、Heガスの流通の妨げとなることがない。
なお、図3に示される実施例の場合、真空ポンプ1から希釈冷凍機本体前段部83の断熱容器81内に送られて来たHeガスを凝縮器9により冷却、液化させるにあたっては、GM冷凍機33により冷却して断熱膨張器97により断熱膨張させるばかりでなく、前段熱交換器93および中間熱交換器95により復路側の冷熱を充分に利用しているため、前段部断熱容器81内には別の冷媒を維持しておく必要がないから、その部分を従来よりも格段に小型化することができる。
なおまた図3に示される例の場合も、GM冷凍機33として充分に大きな冷却能力を有するものを用いた場合には、GM冷凍機33によって3Heガスを直接的に液化温度まで冷却して凝縮させるようにして、JT膨張弁等の断熱膨張器97を省くことも可能である。
図4には、この発明の第4の実施例、すなわち請求項6の発明に対応する実施例を示す。
図4に示される実施例の希釈冷凍機は、基本的には図6に示される希釈冷凍機と同様に、GM冷凍機等の機械式小型極低温冷凍機を用いず、冷媒としてヘリウムを用いて、希釈冷凍機本体内の3Heを凝縮させるようにしたものであり、従来の図6に示される希釈冷凍機とは異なる点は、凝縮機における1Kポットに相当する部分の代りに、希釈冷凍機本体の外部から導かれた液体ヘリウムの断熱膨張ガスとの熱交換により本体側の3Heガスを冷却・凝縮させる熱交換器(第2の熱交換器)を設けたことである。
具体的には、図4の実施例では、周囲が真空断熱された断熱容器41内に、図1に示した第1の実施例と同様に、凝縮器9、インピーダンス42、分留器11、第1熱交換器15、混合室3が収納されており、これらが全体として一体化された希釈冷凍機本体43を構成している。Heガスを循環圧送するための真空ポンプ(第1の真空ポンプ)1は希釈冷凍機本体43から(したがって断熱容器41から)離隔して配置されており、真空ポンプ1の出口側からオイルトラップ45および液体窒素トラップ46を経てHeガスを希釈冷凍機本体43内の凝縮器9へ導くための外部管路(往路5Aの一部を構成する管路)5A0および希釈冷凍機本体43内の凝縮器9に付設された熱交換流路体9Cから真空ポンプ1にHeガスを戻すための外部管路(往路5Bの一部を構成する管路)5B0は、いずれも可撓性を有する管体(いわゆるフレキシブルチューブ)によって構成されている。
ここで、凝縮器9は、図1に示した第1の実施例と同様に、銅粉等の熱伝導率の高い金属粉末の焼結体の如く、微細な流路を有する凝縮器本体9Aを備えていて、その凝縮器本体9A内の微細な流路に真空ポンプ1から送られて来たHeガスが導かれるように構成され、またその凝縮器本体9Aはその全体が銅等の熱伝導性の高い材料からなる伝熱体9Bにより取囲まれ、その伝熱体9Bには、復路5Bにおける分留器11からのHeガスが流通する熱交換流路体9Cが熱的に接触もしくは一体化した状態で設けられている。さらに凝縮器9の伝熱体9Bには第2の熱交換器101が熱的に接触した状態で設けられている。この第2の熱交換器101には、希釈冷凍機本体43から(したがって断熱容器41から)離隔して設けられた予冷用液体He貯留槽103からの液体Heを、JT膨張弁等の断熱膨張器105により断熱膨張させて得られたHeガスが予冷用冷媒として導かれるようになっている。すなわち、前記予冷用液体He貯留槽103は、希釈冷凍機本体43の断熱容器41から構造的、機械的に分離して配置されており、その予冷用液体He貯留槽103から延出して希釈冷凍機43の断熱容器41に至る予冷用液体He供給路107がフレキシブルチューブ等の可撓性を有する管体によって構成されている。そして前記予冷用液体He供給管路107は、断熱容器41内に配設されたJT膨張弁等の断熱膨張器105に導かれており、その断熱膨張器105の出口側が前述の第2の熱交換器101の入口側に接続され、されにその第2の熱交換器101の出口側は、断熱容器41の外部にその断熱容器41から離隔して設けられた真空ポンプ109に、前記同様に可撓性管体からなる排出管路111を経て導かれている。
このような図4に示される希釈冷凍機における希釈冷凍機本体43内の希釈冷凍機能自体は、基本的には図1に示される希釈冷凍機と同様であるが、凝縮器9に付設された第2の熱交換器101に導かれる予冷用冷媒としてのHeガスが、GM冷凍機によって冷却されたものではなく、予冷用液体He貯留槽103から供給された液体ヘリウムを断熱膨張器105によって温度低下させた(通常は1K程度)ものである点が図1の希釈冷凍機と異なる。すなわち、図4に示される希釈冷凍機においては、予冷用液体He貯留槽103内の液体Heが真空ポンプ109の吸引圧力によって予冷用液体He供給管路107を経て希釈冷凍機本体43の断熱容器41内に導かれ、断熱膨張器105により温度が低下されて、凝縮器9の凝縮器本体9Aに熱的に接触する第2の熱交換器101内を流れる。一方、真空ポンプ1により導かれる本体側の3Heガスは、図1の希釈冷凍機の場合と同様に、凝縮器本体9A内を通る際に、主として第2の熱交換器101からの冷熱により冷却されて凝縮し、インピーダンス42および第1の熱交換器15を経て混合室3に導かれ、以下図1の例と同様に機能する。
以上のような図4の希釈冷凍機においては、希釈冷凍機本体43の凝縮器9において3Heガスを冷却、凝縮させるための予冷用冷媒としての断熱膨張前の液体Heが、希釈冷凍機本体43の断熱容器41とは別体に構成されかつ断熱容器41と離隔して設けられた予冷用液体He貯留槽103に保持されているため、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内には3Heの冷却・凝縮のための冷媒(例えば液体ヘリウム)を保持しておく必要がない。すなわち、冷媒保持のためのスペースが断熱容器41内に不要であるため、断熱容器41を小型化し、ひいては希釈冷凍機本体43を従来より格段に小型化することが可能となる。
なお図4に示される実施例の場合も、インピーダンス42の代りにJT膨張弁等の断熱膨張器を設ける一方、予冷用冷媒としての液体Heを気化させるためのJT膨張弁等の断熱膨張器105を省くこともできる。この場合は、予冷用の液体He貯留槽103からの液体Heを、液相のまま希釈冷凍機本体43内の第2の熱交換器101に導く一方、同じく希釈冷凍機本体43内の凝縮器本体9Aおよび断熱膨張器(インピーダンス42の代りに設けたもの)により3Heガスを冷却・凝縮させることになる。
さらに図5には、この発明の第5の実施例、すなわち請求項7の発明の実施例を示す。
図5に示される実施例の希釈冷凍機は、基本的には、図4に示される実施例と同様に、GM冷凍機等の機械式小型極低温冷凍機を用いず、冷媒として液体ヘリウムを用いて、希釈冷凍機本体内の3Heを冷却・凝縮させるようにしたものであるが、図4に示される希釈冷凍機と異なる点は、凝縮器9の部分を、希釈冷凍機本体43の断熱容器41と離隔させてその断熱容器41に対し別体に設けた凝縮器容器121内に配設した構成としたことである。すなわち、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内には、分留器11、第1の熱交換器15および混合室3が配設されており、一方その断熱容器41の外部には、液体He貯留槽103と、真空断熱層からなる凝縮器容器121とが、それぞれ別体かつ離隔して設けられている。凝縮器容器121内には、凝縮器9として、例えば銅粉等の熱伝導率の高い金属粉末の焼結体の如く、微細な流路を有する凝縮器本体(凝縮器熱交換流路体)9Aと、インピーダンス123とが、後述する予冷用冷媒としての液体He中に浸漬されるように配設されている。ここで、凝縮器本体9Aには、真空ポンプ1からオイルトラップ45、液体窒素トラップ46、および可撓性管体からなる供給管路5A0を経て3Heガスが導かれるようになっている。またインピーダンス123の出口側は、可撓性管体からなる中間管路5A1を介して、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内に導かれ、分留器11の熱交換器13に導かれている。一方凝縮器容器121の外部の予冷用液体He貯留槽103からは、予冷用冷媒供給管路124を介して凝縮器容器121内に予冷用冷媒としての液体ヘリウムが導入されるようになっており、その液体ヘリウム(予冷用冷媒)中に、凝縮器本体9Aおよびインピーダンス123とが浸漬されている。なお凝縮器容器121内で気化したHeガスは、Heガス排出管125を介して真空ポンプ109により吸引されるようになっている。
以上のような図5に示される実施例の希釈冷凍機では、真空ポンプ1によって送り出された本体側の3Heガスは、一旦凝縮器容器121に導かれ、その凝縮器容器121内の凝縮器9で冷却・凝縮される。すなわち、外部の液体He貯留槽103から導かれた予冷用冷媒としての液体He中に浸漬された凝縮器本体9Aにおいて、本体側3Heガスが凝縮され、その凝縮された3He液相が希釈冷凍機本体43の側の分留器11に導かれる。
このような図5に示される実施例の場合も、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内には、予冷用冷媒としての液体Heを保持する必要がないため、断熱容器41の小型化を図ることができる。ここで、図5の例では、希釈冷凍機本体43とは別に凝縮器容器121を備えているため、その凝縮器容器121のための設置スペースが必要とはなるものの、それ自体はさほど大型である必要はなく、したがってトータル的に見れば、小型化を図るとともに設置の自由度を増すことができる。
なお場合によっては、図5中の仮想線で示すように、希釈冷凍機本体43の断熱容器41内にJT膨張器126を設けておき、中間管路5A1を介して断熱容器41内に導かれたHeをより確実に凝縮・液化させるようにしても良い。