以下、本発明の一態様について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の発光素子の一態様について図1を用いて説明する。
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素子が示されている。図1に示す発光素子において、発光層113と第1の電極101との間には、混合層111が設けられている。また、発光層113と混合層111の間には正孔輸送層112が設けられ、発光層113と第2の電極102との間には、電子輸送層114、及び電子注入層115が設けられている。このような発光素子において、第1の電極101の電位が第2の電極102の電位よりも高くなるように第1の電極101と第2の電極102間に電圧を印加したとき、発光層113には、第1の電極101側から正孔が注入され、第2の電極102側から電子が注入される。つまり第1の電極101は陽極としての機能を有し、第2の電極102は陰極としての機能を有する。そして、発光層113に注入された正孔と電子とは再結合する。発光層113には発光物質が含まれており、再結合によって生成された励起エネルギーによって発光物質は励起状態となる。励起状態となった発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
以下、第1の電極101、第2の電極102、及び第1の電極101と第2の電極102との間に設けられた各層について具体的に説明する。
第1の電極101を形成する物質について特に限定はなく、インジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質の他、アルミニウム、またはマグネシウム等の仕事関数の低い物質を用いることができる。これは、本発明の発光素子では、電極間に電圧を印加したときに、混合層111から正孔が発生される為である。
第2の電極102を形成する物質は、アルミニウム、及びマグネシウム等の仕事関数の低い物質であることが好ましいが、第2の電極102と発光層113との間に、電子を発生する層を設けた場合は、インジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質等も用いることができる。従って、第2の電極102を形成する物質として、いずれの物質を用いるかは、第2の電極102と発光層113との間に設けられる層の性質に合わせて適宜選択すればよい。
なお、第1の電極101と第2の電極102とは、いずれか一方または両方の電極が発光した光を透過できるように形成されていることが好ましい。
混合層111は、正孔輸送性物質と金属酸化物とを含む層である。正孔輸送性物質について特に限定はないが、1×10−6cm2/Vs以上(より好ましくは、1×10−6〜1×100cm2/Vs)の正孔移動度を有するものが好ましい。1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有することによって金属酸化物から注入された正孔を効率よく輸送できる。なお、正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の移動度が高い物質であり、好ましくは電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100よりも大きい物質をいう。正孔輸送性物質として、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)等が挙げられる。また、金属酸化物としては、正孔輸送性物質に対し電子受容性を示すものが好ましい。このような金属酸化物として、例えば、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸化物等が挙げられる。また、この他、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、銀酸化物等の金属酸化物を用いることもできる。このように金属酸化物と正孔輸送性物質とを混合させることによって、混合層111の厚さに依存した駆動電圧の増加が非常に少なく、発光層113から第1の電極101迄の距離を自由に変えることができる発光素子を得ることができる。また、ここに記載したような金属酸化物はLi、Mg等の金属よりも透光性に優れている為、発光した光が発光素子外部へ射出されるのを妨げ難く、外部取り出し効率の低下を防ぐことができる。なお、混合層111において、金属酸化物は、正孔輸送性物質に対して質量比が0.1〜1(=金属酸化物/正孔輸送性物質)若しくはモル比が0.4〜4(=金属酸化物/正孔輸送性物質)、若しくは正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率(混合率)が3〜24vol%となるように含まれていることが好ましく、より好ましくは7〜16vol%、最も好ましくは8〜12vol%である。例えば、正孔輸送性物質としてNPB、金属酸化物としてモリブデン酸化物を用いると、正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率(混合率)が3〜24vol%の場合、質量比はおよそ0.1〜1(=金属酸化物/正孔輸送性物質)であり、モル比はおよそ0.4〜4(=金属酸化物/正孔輸送性物質)である。また、正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率(混合率)が7〜16vol%の場合、質量比はおよそ0.2〜0.6(=金属酸化物/正孔輸送性物質)であり、モル比はおよそ1〜3(=金属酸化物/正孔輸送性物質)である。また、正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率(混合率)が8〜12vol%の場合、質量比はおよそ0.3〜0.4(=金属酸化物/正孔輸送性物質)であり、モル比はおよそ1〜2(=金属酸化物/正孔輸送性物質)である。また、発光層113と第1の電極101との間に設けられる層の積算膜厚は50〜300nmになるように形成されていることが好ましく、その為、混合層111は10〜250nm(より好ましくは120〜180nm)の厚さとなるように形成されていることが好ましい。
正孔輸送層112は、正孔を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、混合層111から発光層113へ正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層112を設けることによって、混合層111と発光層113との距離を離すことができ、その結果、混合層111に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。正孔輸送層112は、正孔輸送性物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上(より好ましくは、1×10−6〜1×100cm2/Vs)の正孔移動度を有する正孔輸送性物質またはバイポーラ性物質を用いて形成することが好ましい。正孔輸送層112の形成に用いることのできる正孔輸送性物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、等が挙げられる。また、バイポーラ性物質とは、電子の移動度と正孔の移動度とを比較したときに、一方のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは10以下である物質をいう。バイポーラ性の物質として、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔及び電子の移動度が1×10−6cm2/Vs以上(より好ましくは、1×10−6〜1×100cm2/Vs)の物質を用いることが好ましい。なお、正孔輸送層112は、5〜50nmの厚さであることが好ましい。このような厚さとすることによって正孔輸送層112の厚さに起因した駆動電圧の増加も抑えることができる。
発光層113は、発光物質を含んでいる層である。ここで、発光物質とは、発光効率が良好で、所望の波長の発光をし得る物質である。発光層113は、発光物質のみから形成された層であってもよいが、濃度消光を生じる場合は、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、発光物質が分散するように混合された層であることが好ましい。発光層113に発光物質を分散して含ませることで、発光が濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。ここで、エネルギーギャップとはLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位とHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との間のエネルギーギャップをいう。
発光物質について特に限定はなく、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質を用いればよい。例えば、赤色系の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−9−ジュロリジル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−9−ジュロリジル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−9−ジュロリジル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−9−ジュロリジル)エテニル]ベンゼン等、600nmから680nmの波長帯域に発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。また緑色系の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等、500nmから550nmの波長帯域に発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。また、青色系の発光を得たいときは、9,10−ビス(2−ナフチル)−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等、420nmから500nmの波長帯域に発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。以上のように、蛍光を発光する物質の他、ビス[2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIr(pic))、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(略称:Ir(ppy)3)等の燐光を発光する物質も発光物質として用いることができる。
また、発光物質と共に発光層113に含まれ、発光物質を分散状態にするために用いられる物質について特に限定はなく、発光物質として用いる物質のエネルギーギャップ等を勘案して適宜選択すればよい。例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等のキノキサリン誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等を発光物質と共に用いることができる。
電子輸送層114は、電子を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、第2の電極102側から注入された電子を発光層113へ輸送する機能を有する。電子輸送層114を設けることによって、第2の電極102と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第2の電極102に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。電子輸送層は、電子輸送性物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上(より好ましくは、1×10−6〜1×100cm2/Vs)の電子移動度を有する電子輸送性物質またはバイポーラ性物質を用いて形成することが好ましい。ここで、電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の移動度が高い物質であり、好ましくは、正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100よりも大きい物質をいう。電子輸送性物質の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾリル−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等が挙げられる。また、バイポーラ性物質については、先に説明したとおりである。なお、電子輸送層114と正孔輸送層112とを同じバイポーラ性物質を用いて形成してもよい。なお、電子輸送層114は、5〜30nmの厚さであることが好ましい。このような厚さとすることによって電子輸送層114の厚さに起因した駆動電圧の増加も抑えることができる。
電子注入層115は第2の電極102から電子輸送層114へ電子が注入されるのを補助する機能を有する層である。電子注入層115を設けることによって、第2の電極102と電子輸送層114との間の電子親和力の差が緩和され、電子が注入され易くなる。電子注入層115は、電子輸送層114を形成している物質よりも電子親和力が大きく第2の電極102を形成している物質よりも電子親和力が小さい物質、または電子輸送層114と第2の電極102との間に約1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような性質を有する物質を用いて形成することが好ましい。電子注入層115を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、リチウム(Li)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)等のアルカリ土類金属、フッ化セシウム(CsF)等のアルカリ金属のフッ化物、フッ化カルシウム(CaF2)等のアルカリ土類金属のフッ化物、リチウム酸化物(Li2O)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、のアルカリ金属の酸化物、カルシウム酸化物(CaO)、マグネシウム酸化物(MgO)等のアルカリ土類金属の酸化物等の無機物が挙げられる。これらの物質は薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるため好ましい。また、無機物の他、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる有機物も、これらの物質の中から、電子輸送層114の形成に用いる物質よりも電子親和力が大きい物質を選択することによって、電子注入層115を形成する物質として用いることができる。つまり、電子注入層115における電子親和力が電子輸送層114における電子親和力よりも相対的に大きくなるように物質を選択し、電子注入層115を形成すればよい。なお、電子注入層115を設ける場合、第2の電極102は、アルミニウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成することが好ましい。
以上に説明した発光素子において、電子輸送層114の形成に用いられる電子輸送性物質の移動度と、混合層111に含まれる正孔輸送性物質の移動度とを比較したときに一方の物質の移動度に対する他方の物質の移動度の比が1000以下となるように、電子輸送性物質と正孔輸送性物質のそれぞれを選択することが好ましい。このようにそれぞれの物質を選択することで、発光層における再結合効率を高めることができる。
なお、本形態では、混合層111及び発光層113の他に、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115等を有する発光素子について示したが、発光素子の態様は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図16に示すように、電子注入層115に換えて電子発生層116等を設けられた構成であってもよい。電子発生層116は、電子を発生する層であり、電子輸送性物質およびバイポーラ性物質から選ばれる少なくとも一の物質と、これらの物質に対し電子供与性を示す物質とを混合して形成することができる。ここで、電子輸送性物質およびバイポーラ性物質の中でも特に1×10−6cm2/Vs以上(より好ましくは、1×10−6〜1×100cm2/Vs)の電子移動度を有する物質であることが好ましい。電子輸送性物質およびバイポーラ性物質については、それぞれ、上記したものを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。また、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物、アルカリ金属フッ化物およびアルカリ土類金属フッ化物等、具体的にはリチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。
また、発光層113と電子輸送層114との間には、図17に示すように、正孔阻止層117が設けられてもよい。正孔阻止層117を設けることによって、正孔が、発光層113を突き抜けて第2の電極102の方に流れていくのを防ぐことができ、キャリアの再結合効率を高めることができる。また、発光層113で生成された励起エネルギーが電子輸送層114等、他の層へ移動してしまうことを防ぐことができる。正孔阻止層117は、BAlq、OXD−7、TAZ、BPhen等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質の中から、特に、発光層113を形成するのに用いる物質よりもイオン化ポテンシャル及び励起エネルギーが大きい物質を選択することによって、形成することができる。つまり、正孔阻止層117は、正孔阻止層117におけるイオン化ポテンシャルが電子輸送層114におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に大きくなるように物質を選択して形成されていればよい。同様に、発光層113と正孔輸送層112との間にも、発光層113を突き抜けて第1の電極101の方に電子が流れていくのを阻止するための層を設けても構わない。
なお、電子注入層115、電子輸送層114、正孔輸送層112、を設けるか否かについては発明の実施者が適宜選択すればよく、例えば、正孔輸送層112、電子輸送層114等を設けなくても金属に起因した消光等の不具合が生じない場合、電子注入層115を設けなくても電極からの電子注入が良好に行える場合等は、必ずしもこれらの層を設ける必要がない。
以上のように正孔輸送性物質と金属酸化物とを含む混合層111を有する発光素子とすることによって、外部に発光を効率良く取り出せるような長さとなるように、あるいは外部に取り出された発光の色純度が良くなる長さとなるように、第1の電極101と発光層113との距離を調整する(つまり、発光した光が通る光路の長さ(光路長)を調節する)ことが容易である。
また、以上に説明した発光素子は、第1の電極101上に、混合層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115等を順に積層した後、第2の電極102を形成する方法で作製してもよいし、または、第2の電極102上に、電子注入層115、電子輸送層114、発光層113、正孔輸送層112、混合層111を順に積層した後、第1の電極101を形成する方法で作製してもよい。
(実施の形態2)
本発明の発光素子は光路長を容易に調整して、発光を効率良く発光素子外部へ取り出すことができる為、実施の形態1で説明した本発明の発光素子を画素として用いることによって、低消費電力で表示動作を行うことができる発光装置を得ることができる。
本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図2〜6を用いて説明する。
図2は本発明を適用した発光装置を上面からみた模式図である。図2において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)(Tape Carrier Package)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
図3は、一画素を動作するための回路を表した図である。図3に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれトランジスタの第1電極、トランジスタの第2電極と表記する。
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図4の上面図に表すように配置することができる。図4において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
次に、駆動方法について説明する。図5は時間経過に伴ったフレームの動作について説明する図である。図5において、横方向は時間経過を表し、縦方向はゲート信号線の走査段数を表している。
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え動作と表示動作とが繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とすることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作と表示動作を行う期間を1フレーム期間という。
1フレーム期間、図5に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレーム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられた発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサブフレーム503:第4のサブフレーム504=23:22:21:20=8:4:2:1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調を行えるようにしてもよい。
1フレーム期間における動作について説明する。まず、サブフレーム501において、1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に状態が保持期間501bへと移る。当該保持期間において、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態となっている。また、保持期間501bが終了した行から順に状態が次のサブフレーム502へ移り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504の保持期間504b迄終了する。サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブフレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることによって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように制御することが好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態を保つ(この期間を非発光期間504dとする。)。そして、最終行目の書込期間が終了したら直ちに、状態が一行目から順に次の(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによって、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重畳することを防ぐことができる。
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並んでいるが、必ずしも本実施例のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものから順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
ここで、書込期間および消去期間における、図3で示す回路の動作について説明する。
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路915と電気的に接続している。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に映像信号が入力される。なお、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線912に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、発光素子903は発光または非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作によって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると共に、他の行(m行目(mは自然数)とする。)については書込期間となる場合がある。このような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目には書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するように動作させることが好ましい。
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となった後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回路915と接続させる。そして、ソース信号線912とソース信号線駆動回路915とを接続させる共に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そして、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目の信号線に選択的に信号が入力され、第1のトランジスタがオンすると共に、ソース信号線駆動回路915からは、1列目から最終列目迄のソース信号線912に書込の為の信号が入力される。この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912を電源916と接続する。また、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲート信号線911については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力して第1のトランジスタに信号をオンする共に、電源916から消去信号が入力される。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間まで動作させればよい。
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設けるときにおいて、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にすると共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っても構わない。
(実施の形態3)
本発明の発光素子を含む発光装置の一態様について、図6の断面図を用いて説明する。
図6において、点線で囲まれている四角の部分は、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、実施の形態1で説明した本発明の発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態において、基板10上に設けられている。
なお、図6に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
なお、セミアモルファス半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端するために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。セミアモルファス半導体は所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。珪化物を含む気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物を含む気体としては、SiH4、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。この珪化物を含む気体をH2、又は、H2とHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
さらに、第1層間絶縁膜16は、図6(A)、(B)、(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリル、シロキサン(シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基として、フルオロ基またはアルキル基等の有機基を含む化合物である。)、または塗布成膜可能な酸化珪素等物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
なお、図6(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図6(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図6(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。第2層間絶縁膜19aはアクリル、シロキサン、または塗布成膜可能な酸化珪素等の物質から成る。さらに、第2層間絶縁膜19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図6(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに発光素子12が動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。図7には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図7において、基板951上には、電極952と電極956との間に、発光層等を含む層955が設けられた構成を有する本発明の発光素子を有する。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
(実施の形態4)
本発明の発光素子を画素または光源として用いた発光装置は低消費電力で動作させることができる為、このような発光装置を表示部に用いることで低消費電力で動作させることができる電子機器を得られる。
本発明を適用した発光装置を実装した電子機器の一実施例を図8に示す。
図8(A)は、本発明を適用して作製したパーソナルコンピュータであり、本体5521、筐体5522、表示部5523、キーボード5524などによって構成されている。実施の形態1で説明したような本発明の発光素子を画素として用いた発光装置(例えば実施の形態3、4で説明したよう構成を含む発光装置)を表示部として組み込むことで、低い消費電力で動作させることのできるパーソナルコンピュータを完成できる。また、本発明の発光素子を光源として用いた発光装置を、バックライトとして組み込んでもパーソナルコンピュータを完成させることができる。具体的には、図9に示すように、筐体5511と筐体5514とに液晶装置5512と発光装置5513とが嵌め込まれた照明装置を表示部として組み込めばよい。なお、図9において、液晶装置5512には外部入力端子5515が装着されており、発光装置5513には、外部入力端子5516が装着されている。
図8(B)は、本発明を適用して作製した電話機であり、本体5552、表示部5551と、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、アンテナ5553等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで、低い消費電力で駆動させることができる電話機を完成できる。
図8(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部5531、筐体5532、スピーカー5533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで、低い消費電力で動作させることのできるテレビ受像機を完成できる。
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適している。なお、電子機器は、本形態で述べたものに限定されるものではなく、ナビゲーション装置等、その他の電子機器であってもよい。
本発明の一実施例について図10を用いて説明する。
本実施例では、正孔輸送性物質と金属酸化物とを混合した混合層の厚さ、各物質の体積率が異なる21個の発光素子を作製し、それぞれの発光素子における電流効率(cd/A)および電力効率(lm/W)を調べた。なお、各発光素子における混合層の厚さ、正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率(混合率)[vol%]を表1に示す。また、質量比(=金属酸化物/正孔輸送性物質)およびモル比(=金属酸化物/正孔輸送性物質)もあわせて表1に示した。質量比は、と各物質の蒸着膜の密度比から算出した。また、モル比は、算出した質量比と各物質の分子量から算出した。また、本実施例では正孔輸送性物質としてNPBを、金属酸化物としてモリブデン酸化物とを用いた。
先ず、発光素子の作製方法について説明する。なお、それぞれの発光素子は、混合層の厚さ、および正孔輸送性物質と金属酸化物とをあわせた体積に対する金属酸化物の体積率の他は、同じ構成である。
図10に表すように基板300上に、インジウム錫酸化物を110nmの厚さとなるように成膜し、第1の電極301を形成した。なお、成膜にはスパッタリング法を用いた。
次に、第1の電極301の上に、共蒸着法によって、NPBとモリブデン酸化物とを含む第1の層311を形成した。なお、本実施例では、モリブデン酸化物の中で特に三酸化モリブデンを蒸着材料として用いて第1の層311を形成した。それぞれの発光素子における第1の層311の厚さは表1に記載した値となるようにした。また、モリブデン酸化物の体積率についても表1に記載した値となるようにした。なお、共蒸着とは、一つの処理室内に設けられた複数の蒸着源からそれぞれ原料を気化させ、気化した原料を被処理物上に堆積させて複数の物質が混合された層を形成する蒸着法をいう。
次に、第1の層311の上に、蒸着法によって、NPBからなる第2の層312を形成した。第2の層312の厚さは10nmとなるようにした。この第2の層312は、発光素子を駆動させたときに、正孔輸送層として機能する。
次に、第2の層312の上に、共蒸着法によって、Alq3とクマリン6とを含む第3の層313を形成した。第3の層313の厚さは40nmとなるようにした。また、Alq3とクマリン6との重量比は1:0.01(モル比は、1:0.013)(=Alq3:クマリン6)となるようにした。これによって、クマリン6はAlq3からなる層の中に分散して含まれた状態となる。このようにして形成された第3の層313は、発光素子を駆動させたときに、発光層として機能する。
次に、第3の層313の上に、蒸着法によって、Alq3からなる第4の層314を形成した。第4の層314の厚さは30nmとなるようにした。この第4の層314は、発光素子を駆動させたときに、電子輸送層として機能する。
次に、第4の層314の上に、蒸着法によって、フッ化リチウムからなる第5の層315を形成した。第5の層315の厚さは1nmとなるようにした。この第5の層315は、発光素子を駆動させたときに、電子注入層として機能する。
次に、第5の層315の上に、蒸着法によって、アルミニウムを200nmの厚さとなるように成膜し、第2の電極302を形成した。
以上のようにして、作製した発光素子に、第2の電極302の電位よりも第1の電極301の電位の方が大きくなるように電圧を印加し、発光素子の動作特性について調べた結果を図11〜14に示す。図11は、発光素子(1)〜(21)を1000cd/m2で発光させて電流効率を調べた後、第1の層311の厚さ[nm](横軸)に対して、1000cd/m2で発光させたときの電流効率[cd/A](縦軸)をプロットした図である。図12は、発光素子(1)〜(21)を1000cd/m2で発光させて電力効率を調べた後、第1の層311の厚さ[nm](横軸)に対して、1000cd/m2で発光させたときの電力効率[lm/W](縦軸)をプロットした図である。なお、本実施例で作製した発光素子では、クマリン6に由来した緑色の発光が得られた。
図11および図12において黒丸印は、第1の層311におけるモリブデン酸化物の体積率が7vol%の発光素子(1)〜(7)についてのプロット、黒四角印は、第1の層311におけるモリブデン酸化物の体積率が10vol%の発光素子(8)〜(14)についてのプロット、黒三角印は、第1の層311におけるモリブデン酸化物の体積率が13vol%の発光素子(15)〜(21)についてのプロットである。
図11、12より、体積率が異なるいずれの発光素子においても第1の層311が120〜180nmの厚さ(つまり、発光層として機能する第3の層313から第1の電極301迄の距離が130〜190nm)となるように形成されているときの電流効率および電力効率が最も高いことが分かる。
また、発光素子(1)〜(21)を10mA/cm2で発光させて電流効率を調べた後、第1の層311[nm](横軸)の厚さに対して、10mA/cm2で発光させたときの電流効率[cd/A](縦軸)をプロットした図を図13に示す。さらに、発光素子(1)〜(21)を10mA/cm2で発光させて電力効率を調べた後、第1の層311の厚さ[nm](横軸)に対して、10mA/cm2で発光させたときの電力効率[lm/W](縦軸)をプロットした図を図14に示す。
図13、14から10mA/cm2の輝度で発光素子を発光させた場合も第1の層311が150nmの厚さとなるように形成されているときの電流効率および電力効率が最も高いことが分かる。
以上のような第1の層311の厚さに依存した電流効率の変化は、主に、第1の層311の厚さが変わることによって発光層として機能する第3の層313と電極との距離(つまり光路長)が変わったことに因って、発光素子内部から外部に射出される発光の光量が変わった為生じた現象であると考えられる。