JP4789306B2 - 磁歪線、および磁歪線を備えた変位検出装置、ならびに磁歪線の製造方法 - Google Patents
磁歪線、および磁歪線を備えた変位検出装置、ならびに磁歪線の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁歪線および磁歪線を備えた変位検出装置ならびに磁歪線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁歪線の材質として一般に、ニッケル(Ni)が使用され、その他にたとえばNi−Fe−Cr−Tiなどよりなるエリンバ型合金や、たとえばNi−Feなどよりなるパーマロイ型合金が使用されている。Niを使用した磁歪線では、磁歪伝搬速度が温度によって変化し易いため、その変化量を少なくするためにエリンバ型合金が使用されている。
【0003】
しかしながら、Niやエリンバ型合金は、80℃以上の高温になると、磁歪効果が小さくなる。このため、Niやエリンバ型合金よりなる磁歪線を用いた変位検出装置においては、80℃以上において位置検出に誤差が生じたり、位置検出が困難になるという問題があった。
【0004】
またパーマロイ型合金を使用した場合には、この合金の磁歪伝搬速度や磁歪効果の温度特性が比較的安定しているため、温度変化時の位置検出精度をNiやエリンバ型合金に比べて良好とすることができる。
【0005】
しかしながら、特開平1−96508号公報や特開平9−189504号公報に記されているように線引加工後に熱処理を施さなければエリンバ型合金と同等の磁歪効果を得ることができないという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
それゆえ、本発明の一の目的は、高温においても磁歪効果を大きく維持することができ、かつ線引加工後に熱処理を施さずともエリンバ型合金程度の磁歪効果を得ることができ、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない磁歪線およびその製造方法を提供することである。
【0007】
また本発明の他の目的は、高温においても変位位置を正確かつ安定に検出できる変位検出装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意検討した結果、Niを40質量%以上60質量%以下含み、クロム(Cr)を0.3質量%以上10質量%以下含む鉄(Fe)合金を磁歪線に用いることにより、高温においても磁歪効果を大きく維持でき、かつ線引加工後の熱処理を施さずともエリンバ型合金程度の磁歪効果が得られることを見出した。
【0009】
それゆえ本発明の磁歪線は、Niを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部がFeと不可避不純物とを含んでいる。
【0010】
上記組成の合金を磁歪線として使用することによって、線引加工後に熱処理を施さなくても、エリンバ型合金程度もしくはそれ以上の磁歪効果を得ることができる。またその磁歪線における磁歪効果の温度変化は高温になることによってわずかに減少するが、80℃以上の高温状態であっても位置検出が困難になることはない。また、磁歪伝搬速度の温度による変化がエリンバ型合金やパーマロイ型合金に比べて少ないため、位置検出における誤差の発生も抑制することができる。
【0011】
Niの含有量が40質量%より少なくなると磁歪効果が減少し、60質量%より多くなると磁歪伝搬特性が劣化する。
【0012】
Crの含有量が0.3質量%より少なくなると、パーマロイ型合金と同様な特性を示すため、熱処理を施さなければエリンバ型合金と同等な磁歪効果が常温で得られなくなる。また、Crが10質量%より多くなると、熱膨張係数が大きくなり、磁歪伝搬特性が劣化する。
【0013】
なお、理想的には、磁歪線の熱膨張係数が10×10-6/℃前後になるようにNiとCrの含有量を選定することにより、温度変化による磁歪伝搬特性の影響をより低減することが可能となる。
【0014】
上記磁歪線は、コバルト(Co)を含んでいてもよく、この場合NiとCoの合計含有量が40質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0015】
このようにNiおよびCoの合計含有量が40質量%以上であると磁歪効果が効率良く得られる。
【0016】
本発明の変位検出装置は、本発明の磁歪線を通した環状の永久磁石を有する可動部材と、その可動部材が磁歪線に対して変位することによる磁歪線の歪の変化を検出する歪検出手段とを備えている。検出された磁歪線の歪より可動部材の変位位置が算出される。
【0017】
上述したように本発明の磁歪線は常温において高い磁歪効果を有し、かつ150℃の高温においても磁歪効果が大きく、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない。このため、本発明の磁歪線を変位検出装置に適用することで、高温においても正確かつ安定に可動部材の変位位置を検出できる変位検出装置を得ることが可能となる。
【0018】
本発明の液面位置検出装置は、本発明の変位検出装置を、可動部材が液体に浮くよう構成することで、液面の位置の検出に用いたものである。
【0019】
これにより、高温においても正確かつ安定に液面位置を検出できる液面位置検出装置を得ることができる。
【0020】
本発明の一の局面に従う磁歪線の製造方法は、Niを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、かつ残部がFeと不可避不純物とからなる合金材を、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工することを特徴とする。
【0021】
このように適切な組成を見出したことにより、冷間加工後に熱処理を施さずとも、常温において高い磁歪効果があり、150℃の高温においても磁歪効果が大きく、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない磁歪線を製造することができる。
【0022】
上記の磁歪線の製造方法において、冷間加工後の線材に750℃以上850℃以下の温度で熱処理をすることが好ましい。
【0023】
このような温度での熱処理を施すことにより、さらに磁歪効果を向上させることができる。
【0024】
上記の磁歪線の製造方法において、冷間加工後または熱処理後の線材に硬化処理を施すことが好ましい。この硬化処理は線材の表面を硬化させて直線にする真直加工であってもよい。また、この硬化処理は、線材に90%以上の加工率で施す冷間加工であってもよい。
【0025】
これにより、磁歪線の抗張力がより向上するため、磁歪線が長くなった場合でも、直線を維持することが容易となり、自重による撓みを防止することができる。よって、磁歪伝搬の伝達特性が向上し、比較的長い位置検出を行なってもより安定した検出が可能となる。
【0026】
本発明の他の局面に従う磁歪線の製造方法は以下の工程を備えている。
まずNiを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部がFeと不可避不純物とからなる合金材が、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工される。そして冷間加工後の線材に750℃以上850℃以下の温度で熱処理が施される。そして熱処理後の線材に硬化処理が施される。
【0027】
これにより、磁歪線の抗張力が向上するため、磁歪線が長くなった場合でも、直線を維持することが容易となり、自重による撓みを防止することができる。よって、磁歪伝搬の伝達特性が向上し、比較的長い位置検出を行なってもより安定した検出が可能となる。
【0028】
この硬化処理は、線材の表面を硬化させて直線にする真直加工であってもよく、また線材に90%以上の加工率で施す冷間加工であってもよい。
【0029】
本発明のさらに他の局面に従う磁歪線の製造方法は以下の工程を備えている。
まずNiを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部がFeと不可避不純物とからなる合金材が、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工される。そして冷間加工後の線材に硬化処理が施される。
【0030】
これにより、磁歪線の抗張力が向上するため、磁歪線が長くなった場合でも、直線を維持することが容易となり、自重による撓みを防止することができる。よって、磁歪伝搬の伝達特性が向上し、比較的長い位置検出を行なってもより安定した検出が可能となる。
【0031】
この硬化処理は、線材の表面を硬化させて直線にする真直加工であってもよく、また線材に90%以上の加工率で施す冷間加工であってもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施の形態における磁歪線を用いた変位検出装置の構成を概略的に示す模式図である。図1を参照して、本実施の形態の変位検出装置は、磁歪線1と、永久磁石2と、検出コイル3と、歪検出回路部4と、電流パルス発生回路5と、吸振材6とを有している。
【0034】
磁歪線1は、環状の永久磁石2内に挿通されており、その一部周囲を検出コイル3により取り巻かれている。検出コイル3は歪検出回路部4に接続されており、歪検出回路部4は磁歪線1の歪を検出する回路を有している。磁歪線1の接続端7aには電流パルス発生回路5が接続されており、電流パルス発生回路5によって発生された電流パルスは接続端7aから吸振材6を介して磁歪線1に与えられる。この電流パルス発生回路5と磁歪線1の接続端7bとは電流帰還電線8によって電気的に接続されている。
【0035】
磁歪線1には、Niを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部がFeと不可避不純物とを含む合金が用いられ、具体的には質量%で、42%Ni−6%CrのFe合金などが用いられ得る。
【0036】
永久磁石2の変位Xの検出にあたっては、まず電流パルス発生回路5によって電流パルスが磁歪線1に与えられる。これにより、永久磁石2に近接する磁歪線1の部位でねじり弾性波が発生し、そのねじり弾性波による歪が検出コイル3を通じて歪検出回路部4により検出される。この検出回路部4は、入力された信号を波形整形するとともに演算処理して永久磁石2に与えられた機械的変位Xを算出する。
【0037】
図2は、図1に示した変位検出装置の原理を応用した液面位置検出装置の構成を概略的に示す模式図である。図2を参照して、液面位置検出装置は、磁歪線1と、永久磁石2と、フロート2aと、検出コイル3と、歪検出回路部4と、電流パルス発生部5と、吸振材6と、電流帰還電線8と、張力調整部11と、磁歪線保持管12と、保護支持管13と、フロート止め14a、14bと、取付部15と、収納・接続箱16とを主に備えている。
【0038】
磁歪線1、永久磁石2、検出コイル3、歪検出回路部4、電流パルス発生部5、吸振材6および電流帰還電線8の構成については上述した図1の構成とほぼ同じであるためその説明は省略する。
【0039】
磁歪線1は磁歪線保持管12内に保持されており、磁歪線保持管12の一方端部には磁歪線1の張力を調整するための張力調整部11が取付けられている。また、磁歪線保持管12の他方端部には、検出コイル3、歪検出回路部4、電流パルス発生部5および吸振材6が取付けられており、収納・接続箱16内に収納されている。磁歪線保持管12の大部分および張力調整部11は、保護支持管13の内部に保持されている。
【0040】
保護支持管13には環状の永久磁石2およびフロート2aが保護支持管13に対して移動可能なように取付けられている。このフロート2aの変位位置を規制するためのフロート止め14a、14bが保護支持管13の両端の外周に設けられている。
【0041】
このような液面位置検出装置は取付部15によりタンク20に取付けられ、その状態で保護支持管13はタンク20内に位置する。
【0042】
この液面位置検出装置がタンク20に取付けられた状態において、タンク20内に液体が入れられている場合、フロート2aはタンク20内の液体に浮いた状態となる。この状態で、図1において説明したと同様、磁歪線1に電流パルス発生部5から吸振材6を介して電流パルスが与えられることにより、永久磁石2の変位を検出コイル3を介して歪検出回路部4で検出することにより、タンク20内の液面位置が検出される。
【0043】
本実施の形態においては、磁歪線1が常温において高い磁歪効果を有し、150℃の高温においても磁歪効果が大きく、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない。このため、タンク20内の液体の温度が高くても、正確かつ安定に液面位置を検出することが可能となる。
【0044】
次に本実施の形態の磁歪線1の製造方法について説明する。
図3は、本発明の一実施の形態における磁歪線の製造方法を示す図である。図3を参照して、まずNiを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、かつ残部がFeと不可避不純物とを含む合金材が準備される(ステップS1)。そしてその合金材に、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工が施されて線材が得られる(ステップS2)。
【0045】
これにより、冷間線引加工後に高温での熱処理を施すことなく、常温において高い磁歪効果を有し、150℃の高温においても磁歪効果が大きく、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない磁歪線を製造することができる。
【0046】
さらに磁歪効果を向上させるために、上記の冷間加工(ステップS2)後の線材に、750℃以上850℃以下の温度で熱処理が施されてもよい(ステップS3)。また、この温度範囲での熱処理時間は好ましくは1時間〜2時間である。
【0047】
さらにその冷間加工(ステップS2)後または熱処理(ステップS3)後に、線材表面を硬化させて直線にする真直加工(ステップS4a)または90%以上(たとえば90%以上93%以下)の加工率での冷間加工(ステップS4b)のいずれかの硬化処理が施されてもよい。
【0048】
上記組成の合金は、素材として比較的軟質である。このため、上記組成の磁歪線を用いて4m以上の比較的長い位置検出を行なった場合、磁歪線の自重による撓みによって磁歪伝搬の伝達特性が低下し、熱処理を施せばより低下する。しかし、上述したように線引加工後または熱処理後の線材に硬化処理を施すことにより、磁歪線が硬化して抗張力が向上し自重により撓みを抑制できるため、磁歪伝搬の伝達特性が向上し、比較的長い位置検出を行なってもより安定した検出が可能となる。
【0049】
上記図3の説明においては、Niを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、かつ残部がFeと不可避不純物とを含む合金材について説明したが、この図3の工程の組合せはたとえばパーマロイ型合金などよりなる磁歪線の製造方法にも適用でき、広くはNiを含み、残部がFeと不可避不純物とを含む合金材よりなる磁歪線の製造方法にも適用できる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0051】
まず、以下に示す6種の組成(質量%)の合金材または金属材を準備した。
1.42%Ni−5.4%Cr−2.4%TiのFe合金(サンプル1)
2.42%Ni−6%CrのFe合金(サンプル2)
3.50%NiのFe合金(サンプル3)
4.100%Niの金属(硬化処理)(サンプル4)
5.42%Ni−6%CrのFe合金(800℃熱処理)(サンプル5)
6.42%Ni−6%CrのFe合金(800℃熱処理、真直加工)(サンプル6)
サンプル1〜3の各々には30%の減面率で冷間線引加工を施して磁歪線とした。
【0052】
またサンプル4には、90%の減面率で冷間加工を施して磁歪線とした。
また、サンプル5には、30%の減面率で冷間加工を施した後、800℃の温度で1時間の熱処理を施して磁歪線とした。
【0053】
また、サンプル6には、30%の減面率で冷間加工を施した後、800℃の温度で1時間の熱処理を施し、その後に真直加工を施して磁歪線とした。
【0054】
このようにして得られた全長60cmで線径0.5mmの6種の磁歪線の各一方端側に検出コイルと電流パルス発生部とからなる磁歪発生検出回路を設け、他方端側に磁歪発生検出回路からの電流帰還電線を接続した。また、電流帰還電線を接続された磁歪線側(先端側)の50cmをオーブン内に設置した。周辺構造体の熱膨張による影響を低減するため、磁歪線の先端側にリング状フェライト系マグネットを50mm間隔に2個固定し、これら2つのマグネットによる磁歪波形の波高電圧と時間差を温度と共に記録した。
【0055】
このようにして得られた6種の磁歪線の磁歪波形の波高電圧について、エリンバ型合金の25℃における磁歪波形の波高電圧との相対比較を行なった。その結果を図4に示す。
【0056】
なお図4の相対比較値は、磁歪線の材質による抵抗値の差すなわち電流パルス値の差における磁歪効果の差異を相対的に比較したものであり、パルス電流値を測定し、その比率から相対値を補正することにより得られた値である。また、磁歪効果の正確な値を計測するために、磁歪波形に波形歪を発生させないように増幅回路の増幅度を適切に設定している。また、25℃のエリンバ型合金の磁歪効果を1としている。
【0057】
図4の結果より、サンプル2および6の磁歪線では、温度150℃まではほぼエリンバ型合金の25℃における磁歪効果と同等の磁歪効果が得られることがわかる。また、線引加工後に800℃の熱処理を施したサンプル5においては常温および高温のいずれにおいても格段に優れた磁歪効果が得られることがわかる。
【0058】
また、上記のサンプル1〜5の各磁歪線の磁歪伝搬速度と温度との関係を調べた。その結果を図5に示す。なお、磁歪伝搬速度については、25℃における磁歪線の2つの磁歪波形の時間差を基準として、その基準となる時間差と各温度における時間差との時間比により評価した。
【0059】
なお図5においては、25℃のエリンバ型合金の磁歪伝搬速度を1としている。
【0060】
図5より、サンプル2および5は、120℃程度まで25℃のエリンバ型合金と同等の磁歪伝搬速度を有しており、磁歪伝搬速度の温度による影響が極めて小さいことがわかる。
【0061】
磁歪線を用いた変位検出装置においては、磁歪波形を高増幅し、磁歪波形をできる限り矩形波形に近づけた上で、予め定められたしきい値を超えた場合に検出値とする場合や、磁歪波形の頂点を検出して検出位置とする場合がある。このため、図4に示されるように高温においても磁歪効果が高く、なおかつ図5に示すように高温においても磁歪伝搬速度が安定した磁歪線を変位検出装置に用いることが好ましい。
【0062】
また42%Ni−6%CrのFe合金について真直加工を施したサンプル6と真直加工を施さないサンプル5との磁歪伝搬速度とについて調べた。この実験は、上記の実験方法と同様な構成において磁歪線の全長を4000mmとし、検出側から200mmの位置にマグネットを設置した場合と3700mmの位置にマグネットを設置した場合との磁歪波形の波高電圧を測定し、その相対比較値を求めることにより行なった。その結果を図6に示す。
【0063】
なお図6における磁歪伝搬率とは、サンプル5の近距離(距離200mm)における磁歪伝搬速度に対する磁歪伝搬速度の比率であり、このサンプル5の近距離における磁歪伝搬率を1とするものである。
【0064】
図6の結果より、真直加工を施したサンプル6は、真直加工を施さないものと比較して、磁歪伝搬率の距離による変化量が少ないことがわかる。特に、真直加工を施したサンプル6に関しては、距離3000mm以上において真直加工を施さないサンプル5よりも磁歪伝搬率が高くなることがわかる。これは、真直加工を施したことにより、磁歪線の抗張力が向上し、それにより磁歪線が自重によって撓み難くなったためと考えられる。
【0065】
このように真直加工を施すことによって、温度による磁歪効果の減衰量が低減され、250℃近辺においてもパーマロイ型合金と同様な磁歪効果が得られる。このため、図5および図6で示されるように、磁歪伝搬率も高く、磁歪伝搬速度の温度による影響も小さいため、このような磁歪線を変位検出装置に用いることにより、効率のよい変位検出が可能となる。
【0066】
なお、上記の実験においては、特定の組成の場合の実験結果について説明したが、Niを40質量%以上60質量%以下含み、Crを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部がFeと不可避不純物とを含む磁歪線においても上記の本発明例と同等の結果が得られた。
【0067】
また、上記組成に、NiとCoとの合計含有量が40質量%以上60質量%以下となるようにCoを含有した組成においても、上記の本発明例と同等の結果が得られた。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、NiおよびCrを所望量含有させたFe合金を磁歪線に用いたことにより、常温において高い磁歪効果を有し、かつ150℃の高温においても磁歪効果が大きく、かつ磁歪伝搬速度の温度変化による影響が少ない磁歪線が得られる。このため、この磁歪線をたとえば変位検出装置に用いることにより、高温においてもより正確かつ安定に位置を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における磁歪線を用いた変位検出装置の構成図である。
【図2】 図1の変位検出装置の原理を適用した液面位置検出装置の構成図である。
【図3】 本発明の一実施の形態における磁歪線の製造方法を示す図である。
【図4】 25℃におけるエリンバ型合金の磁歪効果を1とした場合の各試料の磁歪効果の温度による変化を示す図である。
【図5】 25℃におけるエリンバ型合金の磁歪伝搬速度を1とした場合の各試料の磁歪伝搬速度の温度による変化を示す図である。
【図6】 真直加工を施した試料と真直加工を施さない試料との磁歪伝搬率の距離による変化を示す図である。
【符号の説明】
1 磁歪線、2 永久磁石、3 検出コイル、4 歪検出回路部、5 電流パルス発生部、6 吸振材、8 電流帰還電線。
Claims (15)
- ニッケルを40質量%以上60質量%以下含み、クロムを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部が鉄と不可避不純物とからなる、磁歪線。
- 請求項1に記載の磁歪線を通した環状の永久磁石を有する可動部材と、
前記可動部材が前記磁歪線に対して変位することによる前記磁歪線の歪の変化を検出する歪検出手段とを備え、
検出された前記磁歪線の歪により前記可動部材の変位位置を算出する、変位検出装置。 - 前記可動部材を液体に浮くよう構成することで、請求項2に記載の変位検出装置を液面の位置の検出に用いた、液面位置検出装置。
- ニッケルを40質量%以上60質量%以下含み、クロムを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部が鉄と不可避不純物とからなる合金材を、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工することを特徴とする、磁歪線の製造方法。
- 前記冷間加工後の前記線材に硬化処理を施すことを特徴とする、請求項4に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記冷間加工後の前記線材に750℃以上850℃以下の温度で熱処理することを特徴とする、請求項4に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記熱処理後の前記線材に硬化処理を施すことを特徴とする、請求項6に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記硬化処理は、前記線材の表面を硬化させて直線にする真直加工である、請求項5または7に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記硬化処理は、前記線材に90%以上の加工率で施す冷間加工である、請求項5または7に記載の磁歪線の製造方法。
- ニッケルを40質量%以上60質量%以下含み、クロムを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部が鉄と不可避不純物とからなる合金材を、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工する工程と、
前記冷間加工後の前記線材に750℃以上850℃以下の温度で熱処理する工程と、
前記熱処理後の前記線材に硬化処理を施す工程とを備えた、磁歪線の製造方法。 - 前記硬化処理は、前記線材の表面を硬化させて直線にする真直加工である、請求項10に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記硬化処理は、前記線材に90%以上の加工率で施す冷間加工である、請求項10に記載の磁歪線の製造方法。
- ニッケルを40質量%以上60質量%以下含み、クロムを0.3質量%以上10質量%以下含み、残部が鉄と不可避不純物とからなる合金材を、線加工の最終工程において30%以上40%以下の減面率で冷間加工する工程と、
前記冷間加工後の前記線材に硬化処理を施す工程とを備えた、磁歪線の製造方法。 - 前記硬化処理は、前記線材の表面を硬化させて直線にする真直加工である、請求項13に記載の磁歪線の製造方法。
- 前記硬化処理は、前記線材に90%以上の加工率で施す冷間加工である、請求項13に記載の磁歪線の製造方法。
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