JP4788047B2 - 高靱性マグネシウム合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金に関し、特に靱性が高いマグネシウム合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム(Mg)は、実用金属材料の中で最も軽量であることから、自動車部品等を始めとして幅広い分野への使用が期待される材料である。なかでも、珪素(Si)を含むマグネシウム合金は、SiとMgとの化合物であるMg2Siが多く晶出することから、優れた耐熱性を有することが知られている。
【0003】
しかし、晶出する共晶化合物は、針状または骸骨状の結晶が複雑に組み合わさったような、いわゆる漢字状の形状を有する。さらに、合金におけるSiの含有割合が多く、共晶組成を超える場合には、初晶化合物であるMg2Siも晶出する。この初晶化合物は鱗片状の結晶が積層したような粗大な塊状に晶出する。かかる形状の共晶化合物等では、合金に応力が加わった場合にはその共晶化合物等に応力が集中し、化合物の破壊による亀裂の伝播が容易に生じて、合金の破壊は容易となる。つまり、共晶化合物等が漢字状等の形状を有するものであるため、マグネシウム合金の靱性は著しく低下することとなる。
【0004】
Siを含むマグネシウム合金を改良する試みとして、例えば、特開平6−279889号公報には、1.5%以下のSiを含有するマグネシウム合金に、ストロンチウム(Sr)を0.005〜0.2%添加して、共晶化合物であるMg2Siを微細化する方法が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者が追試したところ、上記特開平6−279889号公報に示された、Srを0.005〜0.2%添加する方法では、充分に共晶化合物であるMg2Siを微細化することはできなかった。つまり、上記方法では、マグネシウム合金の靱性を充分に向上させることはできない。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、共晶化合物等であるMg2Siを微細化かつ粒状化して、優れた靱性を有するマグネシウム合金を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の高靱性マグネシウム合金は、Siを0.1質量%以上5質量%以下、Srを0.2質量%を超え0.5質量%以下、Alを1質量%以上6質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下の割合で含有し、残部がMgと不可避不純物とからなることを特徴とする。
【0008】
つまり、本発明の高靱性マグネシウム合金は、安価なMgにSi、Sr、AlおよびMnを添加した合金である。ここで、Siは主に合金の耐熱性および鋳造性を向上させる役割を果たす。また、Srは、漢字状に晶出する共晶化合物や粗大な塊状に晶出する初晶化合物を微細化かつ粒状化して、合金の靱性を向上させる役割を果たす。
【0009】
Srの含有割合を0.2質量%を超え0.5質量%以下と大きくすることで、充分に共晶化合物等であるMg2Siを微細化かつ粒状化することができる。特に、より優れた耐熱性が要求されるマグネシウム合金は、合金の主要構成元素であるAlの含有量が少ないために、少量のSrの添加では、共晶化合物等の微細化効果を充分に得ることがより困難となる。したがって、本発明のマグネシウム合金は、安価で耐熱性および鋳造性に優れることに加え、Srを0.2質量%を超え0.5質量%以下の割合で含有することにより、極めて靱性に優れたマグネシウム合金となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の高靱性マグネシウム合金について、その組成、調整方法および用途を説明する。
【0011】
〈マグネシウム合金の組成〉
本発明のマグネシウム合金は、Siを0.1質量%以上5質量%以下、Srを0.2質量%を超え0.5質量%以下、Alを1質量%以上6質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下の割合で含有し、残部がMgと不可避不純物とからなる。
【0012】
Siは、本発明のマグネシウム合金の必須構成元素であり、上述したように、合金の耐熱性および鋳造性を向上させる役割を果たす。Siの含有割合は、0.1質量%以上5質量%以下とする。Siの含有割合が0.1質量%未満の場合には、耐熱性および鋳造性を充分なものとすることができないからであり、反対に5質量%を超えると、初晶化合物であるMg2Siが多く晶出するとともに、液相線温度が上昇して溶解鋳造が極めて困難となるからである。なお、特に、マグネシウム合金の取扱い易さや、高温における酸化・燃焼、鋳造性等を考慮した場合には、Siの含有割合は、0.5質量%以上3質量%以下とすることが望ましい。
【0013】
Srは、本発明のマグネシウム合金の必須構成元素であり、上述したように、共晶化合物や初晶化合物を微細化かつ粒状化して、合金の靱性を向上させる役割を果たす。Srの含有割合は、0.2質量%を超え0.5質量%以下とする。Srの含有割合が0.2質量%以下の場合には、充分に共晶化合物等を微細化かつ粒状化することができず、反対に0.5質量%を超えると、粗大なMg−Sr化合物が晶出して、靱性の低下を招くからである。なお、より共晶化合物等の微細化等の効果を発揮させるためには、Srの含有割合は、0.3質量%以上とすることが望ましく、また、Srは高価であることからマグネシウム合金のコストを考慮した場合には、0.4質量%以下とすることが望ましい。
【0014】
また、本発明のマグネシウム合金は、SiおよびSrに加えて、さらにSbを含有する態様とすることが望ましい。Sbは、Srと同様に、晶出する共晶化合物や初晶化合物を微細化かつ粒状化する役割を果たす元素であり、特に、当該化合物を粒状化する効果が大きいと考えられる。したがって、Sbをさらに含有することによって、本発明のマグネシウム合金は、より靱性の高い合金となる。
【0015】
Sbをさらに含有する場合、その含有割合は、0.1質量%以上0.5質量%以下とすることが望ましい。Sbの含有割合が0.1質量%未満の場合には、Sbを加えたことによる、さらなる共晶化合物等の粒状化等の効果を得ることができず、また、0.5質量%を超えて添加しても、さらなる微細化等の効果は得られず、過剰のSb添加はマグネシウム合金のコストアップとなるからである。なお、より共晶化合物等の粒状化等の効果を発揮させるためには、Sbの含有割合は、0.2質量%以上とすることが望ましい。
【0016】
なお、マグネシウム合金にSrを添加しないで、Sbを単独で添加することにより、共晶化合物であるMg2Siの微細化等を行うことも考えられる。しかし、Sbを単独で添加した場合には、共晶化合物等であるMg2Siは粒状化するものの、粗大なMg2Siは充分に微細化されない。つまり、Sbを単独で添加してもマグネシウム合金の靱性は充分とはいえず、Srと共に添加することにより、Sbの添加効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明のマグネシウム合金は、AlおよびMnを含有する。例えば、Alを含有すると、合金の鋳造性、耐食性、強度等が向上する。加えて、Alは鋳造組織を微細にする効果があるため、Alを含有することにより、Mg2Si化合物は分断され、粒状化し易くなる。その場合、Alの含有割合は、1質量%以上6質量%以下とすることが望ましい。Alの含有割合が1質量%未満の場合には、Al添加による耐食性や強度向上の効果がほとんど得られないからである。反対に、6質量%を超えると、Mg2Si化合物による耐熱性向上の効果がほとんど得られなくなるからである。
【0018】
ちなみに、予備的な実験により、合金中のAlの含有割合が2質量%程度と小さい場合は、共晶化合物等を充分に微細化かつ粒状化させるためには、Srをより大きな割合で含有させる必要があることがわかっている。具体的には、Alの含有割合が2質量%程度の場合は、Srの含有割合を0.3質量%以上とすることが望ましい。一方、Alの含有割合が大きいほど、少量のSrで共晶化合物等を微細化かつ粒状化することができるが、Alの含有割合が6質量%程度になると粒状化した共晶化合物等が粗大化しやすい。したがって、共晶化合物等を充分に微細化かつ粒状化させるためには、Alの含有割合は6質量%以下とすることが望ましい。
【0019】
また、本発明のマグネシウム合金は、耐食性を向上させるために、Mnを含有することができる。Mnの含有割合は、0.1質量%以上0.5質量%以下とすることが望ましい。Mnの含有割合が0.1質量%未満の場合には、耐食性を改善する効果はほとんどみられず、反対に0.5質量%を超えると、さらなる耐食性の向上は望めず、逆に耐食性が低下する傾向があるからである。
【0020】
〈マグネシウム合金の調製方法および用途〉
本発明のマグネシウム合金は、その調製方法を特に限定するものではなく、通常、合金を調製する方法に従えばよい。例えば、純MgやSi粉末、およびSr等の所定の構成元素を含む合金等を、るつぼ炉や誘導炉等を使用して溶解して調製することができる。
【0021】
本発明のマグネシウム合金は、特に、鋳造用合金として適したものであり、鋳造方法は、特に制限するものではなく、重力金型、重力砂型、ダイカスト等種々の鋳造方法を用いることができる。
【0022】
ダイカスト鋳造において、例えば、コールドチャンバーダイカストマシンを使用した場合には、注湯してから射出するまでの間にスリーブ面に接した溶湯の一部が凝固する場合がある。このスリーブ内で凝固した組織は、冷却速度が比較的遅いことから、通常は粗大な結晶が晶出した組織となる。また、巻き込み欠陥の防止や引け巣の低減を目的として、冷却速度を遅くし、意図的に固相を晶出させて鋳造する半凝固鋳造法等も多く用いられる。このような粗大な晶出物が予想される鋳造法においても、本発明のマグネシウム合金は、Sr等を含有するため、晶出する共晶化合物等が微細化かつ粒状化され、靱性の高いマグネシウム合金となる。
【0023】
本発明のマグネシウム合金から鋳造される鋳物は、特に耐熱性および高い靱性が要求される部品等に最適であり、例えば、自動車のトランスミッションケースやオイルパン等に使用することができる。
【0024】
以上、本発明のマグネシウム合金の実施形態について説明したが、上記実施形態は一実施例にすぎず、本発明のマグネシウム合金は、上記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0025】
【実施例】
上記実施形態に基づいて、合金組成、鋳造条件の異なる種々のマグネシウム合金を鋳造した。そして、鋳造したマグネシウム合金鋳物の組織観察を行い、さらに引張強さおよび伸びを測定することにより靱性を評価した。以下、鋳造したマグネシウム合金鋳物のシリーズごとに説明する。なお、本実施例の記載において、特にことわりのない限り%は質量%を意味するものとする。
【0026】
〈第1シリーズのマグネシウム合金鋳物〉
(1)マグネシウム合金の鋳造
マグネシウム合金を、基本組成をMg−4%Al−1%Si−0.2%Mnとし、さらに含有するSrの割合が種々異なるように調製した。具体的には、純Mg、純Al、Si粉末、Mnを3.3%含むMg−Mn合金、およびSrを10%含むAl−Sr合金や金属Srを、SUS430製のるつぼ炉の中で、溶解温度を750℃として、それぞれ所定量溶解した。なお、Al−Sr合金や金属Srの溶解量を変えることにより、Sr含有割合を調整した。さらにSbを含有させる場合には、金属SbあるいはSbを10%含むAl−Sb合金を所定量溶湯に添加した。そして、調製したマグネシウム合金を700℃とした後、その合金を150℃に予熱したJIS舟型(JIS H 5203)に注湯し、冷却することによりマグネシウム合金鋳物を得た。
【0027】
得られたマグネシウム合金鋳物を第1シリーズのマグネシウム合金鋳物とし、#11〜18と番号付けした。#11〜18のマグネシウム合金鋳物の化学成分を表1に示す。なお、本シリーズにおいては、#14、15、17、18の各マグネシウム合金鋳物が本発明のマグネシウム合金の実施例に該当する。
【0028】
【表1】
【0029】
(2)マグネシウム合金鋳物の組織観察
第1シリーズのマグネシウム合金鋳物の組織観察を行った。#11〜18の合金鋳物の組織写真を図1〜8に示す。
【0030】
これらの写真からわかるように、#11〜13の合金鋳物は、Srの含有割合が0.2%以下であるため、粗大な共晶化合物の多くが漢字状に晶出している(図1〜3)。一方、#16の合金鋳物は、Srの含有割合が0.5%を超えているため、針状のMg−Sr化合物が晶出している(図6)。これに対して、#14、15、17、18の合金鋳物は、Srの含有割合が0.2%を超え0.5%以下であるため、共晶化合物は微細化かつ粒状化されている(図4、5、7、8)。さらに#17、18の合金鋳物はSbをも含有するため、粒状化がより顕著に観察できる(図7、8)。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、共晶化合物が微細化かつ粒状化することが確認できた。
【0031】
(3)マグネシウム合金鋳物の靱性の評価
第1シリーズのマグネシウム合金鋳物について、JIS Z 2241による引張試験を行い、引張強さと伸びを求めた。その結果を上記表1に併せて示す。
【0032】
Srの含有割合が0.2%を超え0.5%以下である#14、15、17、18の合金鋳物は、Srの含有割合がかかる範囲以外の合金鋳物と比べて、引張強さ、伸びともに大きな値となっている。特に#17、18の合金鋳物はSbをも含有するため、伸びの増大が顕著である。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、共晶化合物は充分に微細化かつ粒状化され、合金の靱性が大幅に向上することが確認できた。また、さらにSbを含有した場合には、より合金の靱性が向上することが確認できた。
【0033】
〈第2シリーズのマグネシウム合金鋳物〉
(1)マグネシウム合金の鋳造
上記第1シリーズのマグネシウム合金の鋳造において、合金元素であるAlの含有割合を増減した以外は、第1シリーズと同様に鋳造した。得られたマグネシウム合金鋳物を第2シリーズのマグネシウム合金鋳物とし、#21〜25と番号付けした。#21〜25のマグネシウム合金鋳物の化学成分を表2に示す。なお、本シリーズにおいては、#22、#23、#25のマグネシウム合金鋳物が本発明のマグネシウム合金の実施例に該当する。
【0034】
【表2】
【0035】
(2)マグネシウム合金鋳物の組織観察
第2シリーズのマグネシウム合金鋳物の組織観察を行った。#21〜25の合金鋳物の組織写真を図9〜13に示す。
【0036】
図9、12の写真からわかるように、#21、24の合金鋳物は、Srの含有割合が0.2%以下であるため、粗大な共晶化合物が漢字状に晶出している。また、#25の合金鋳物は、Srの含有割合が0.2%を超えているため、化合物は分断、粒状化しているが、Alの含有割合が約6%と大きいため、化合物が粗大化する傾向がみられた(図13)。一方、図10、11の写真に示すように、#22、#23の合金鋳物は、Srの含有割合が0.2%を超えているため、共晶化合物は微細化かつ粒状化されている。なお、#22の合金鋳物は、Alの含有割合が約2%と小さいことから、Srの含有割合が0.28%、つまり、0.3%未満では、若干微細化等の効果が少ないと考えられる。
【0037】
〈第3シリーズのマグネシウム合金鋳物〉
(1)マグネシウム合金の鋳造
上記第1シリーズのマグネシウム合金の鋳造において、合金元素であるSiの含有割合を約2%に増加し、さらに、Siの溶解を促すため、溶解温度を800℃に変更した以外は、第1シリーズと同様に鋳造した。得られたマグネシウム合金鋳物を第3シリーズのマグネシウム合金鋳物とし、#31、32と番号付けした。#31、32のマグネシウム合金鋳物の化学成分を表3に示す。なお、本シリーズにおいては、#32のマグネシウム合金鋳物が本発明のマグネシウム合金の実施例に該当する。
【0038】
【表3】
【0039】
(2)マグネシウム合金鋳物の組織観察
第3シリーズのマグネシウム合金鋳物の組織観察を行った。#31、32の合金鋳物の組織写真を図14、15に示す。
【0040】
図14の写真からわかるように、Siの含有割合が大きい#31の合金鋳物は、Srを含有しないために、漢字状の共晶化合物とともに粗大な塊状の初晶化合物が晶出している。一方、図15の写真に示すように、#32の合金鋳物は、同様にSiの含有割合が大きくても、Srを0.2%を超えて含有しているため、初晶化合物および共晶化合物は微細化かつ粒状化されている。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、合金組成中のSiが多く、粗大な初晶化合物が晶出した場合であっても、共晶化合物と同様に、微細化かつ粒状化されることが確認できた。
【0041】
(3)マグネシウム合金鋳物の靱性の評価
第3シリーズのマグネシウム合金鋳物について、上記同様の引張試験を行い、引張強さと伸びを求めた。その結果を上記表3に併せて示す。
【0042】
Srの含有割合が0.2%を超え0.5%以下である#32の合金鋳物は、Srを含有しない#31の合金鋳物と比べて、引張強さ、伸びとも増大した。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、合金の靱性は向上することが確認できた。
【0043】
〈第4シリーズのマグネシウム合金鋳物〉
(1)マグネシウム合金の鋳造
上記第1シリーズのマグネシウム合金の鋳造において、鋳造方法のみを変更した。すなわち、第1シリーズと同様に調製したマグネシウム合金を650℃とした後、断熱材を設置したスリーブ内に注湯し、610℃まで冷却してから射出、加圧成形することにより鋳造した。得られたマグネシウム合金鋳物を第4シリーズのマグネシウム合金鋳物とし、#41、42と番号付けした。#41、42のマグネシウム合金鋳物の化学成分を表4に示す。なお、本シリーズにおいては、#42のマグネシウム合金鋳物が本発明のマグネシウム合金の実施例に該当する。
【0044】
【表4】
【0045】
(2)マグネシウム合金鋳物の組織観察
第4シリーズのマグネシウム合金鋳物の組織観察を行った。#41、42の合金鋳物の組織写真を図16、17に示す。
【0046】
図16の写真に示すように、Srを含有しない#41の合金鋳物の表面近傍は、溶湯が急冷されたために微細な組織となっているが、鋳物の中央部分には、スリーブ内で凝固したと考えられる粗大なα−Mg粒と共晶化合物が観察される。一方、図17の写真に示すように、Srを含有する#42の合金鋳物は、同様の条件で鋳造されても、共晶化合物が分断され粒状化している。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、スリーブ内で凝固が生じた場合、あるいは冷却速度が遅い場合であっても、共晶化合物は微細化かつ粒状化されることが確認できた。
【0047】
(3)マグネシウム合金鋳物の靱性の評価
第4シリーズのマグネシウム合金鋳物について、同様に引張試験を行い、引張強さと伸びを求めた。その結果を上記表4に併せて示す。
【0048】
Srの含有割合が0.2%を超え0.5%以下である#42の合金鋳物は、Srを含有しない#41の合金鋳物と引張強さはほぼ同等であったが、伸びが増大した。したがって、Srを0.2%を超え0.5%以下の割合で含有することにより、合金の靱性は向上することが確認できた。
【0049】
【発明の効果】
本発明のマグネシウム合金は、Siを0.1質量%以上5質量%以下、Srを0.2質量%を超え0.5質量%以下、Alを1質量%以上6質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下の割合で含有し、残部がMgと不可避不純物とからなることにより、漢字状に晶出する共晶化合物や粗大な塊状に晶出する初晶化合物が微細化かつ粒状化されるため、安価で耐熱性に優れることに加え、極めて靱性に優れたマグネシウム合金となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 #11の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図2】 #12の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図3】 #13の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図4】 #14の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図5】 #15の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図6】 #16の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図7】 #17の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図8】 #18の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図9】 #21の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図10】 #22の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図11】 #23の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図12】 #24の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図13】 #25の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図14】 #31の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図15】 #32の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図16】 #41の合金鋳物の組織を示す写真である。
【図17】 #42の合金鋳物の組織を示す写真である。
Claims (3)
- Siを0.1質量%以上5質量%以下、Srを0.2質量%を超え0.5質量%以下、Alを1質量%以上6質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.5質量%以下の割合で含有し、残部がMgと不可避不純物とからなることを特徴とする高靱性マグネシウム合金。
- 前記Srの含有割合は0.3質量%以上0.4質量%以下である請求項1に記載の高靱性マグネシウム合金。
- さらにSbを0.1質量%以上0.5質量%以下の割合で含有する請求項1または請求項2に記載の高靱性マグネシウム合金。
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