JP3622989B2 - マグネシウム合金からなる成形部材及びその製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金からなる成形部材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材及びその製造方法に関し、より詳しくは特定組成のマグネシウム合金の溶湯を急冷凝固して素材を得た後、これを成形することにより得られる熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の自動車、電機部品における軽量化の流れの中でマグネシウム合金が注目されており、その使用用途によっては特に耐熱性高強度及び/又は低熱膨張係数が必要とされている。マグネシウム合金の内で耐熱性高強度を有する合金としてマグネシウムにランタノイド(Ln)を添加した合金が開発されている。このような合金としてはMg−Ln−Zr系合金、Mg−Al−Ln−Zr系合金(特開昭46−6202号公報参照)、Mg−Zn−Ln−Zr系合金(特開昭52−92811号公報参照)、Mg−Ag−Ln−Zr系合金(特開昭51−92707号、特開昭51−92708号、特開昭52−101615号の各公報参照)がある。更に、Mg−Y−Nd−Zr系合金(特開昭57−210946号公報参照)が開発されている。しかし、これらの合金は高価なランタノイドあるいは銀を数%以上含有するものであり、コスト面からその使用用途が制限されている。また、マグネシウム合金の熱膨張係数は26×10-6/K程度で、これを大きく下回る合金存在しなかった。
【0003】
これらの課題を解決する合金としてMg−高Si系合金がDE4125014で提案されているが、鋳造時の初晶Mg2Siが粗大となり、機械的強度を低下させるという欠点がある。この現象はAl−高Si系合金の鋳造時の現象と同じである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、上記のようなMg−高Si系合金における粗大な初晶Mg2Siの生成を抑制してそのような粗大な初晶Mg2Siに起因する強度低下を防止する、熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、DE4125014に記載されているような合金の溶湯を急冷凝固して素材を得た後、これを成形することにより、初晶Mg2Siが微細化されて耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明の熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材の製造方法は、ケイ素を12〜19重量%含有し、所望により更にそれぞれ12重量%以下のアルミニウム及び亜鉛、16重量%以下の銀、7重量%以下のスカンジウム、それぞれ1重量%以下のジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなるマグネシウム合金の溶湯を急冷凝固して素材を得た後、これを成形することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は上記の製造方法によって得られた、ケイ素を12〜19重量%含有し、更にそれぞれ12重量%以下のアルミニウム及び亜鉛、16重量%以下の銀、7重量%以下のスカンジウム、それぞれ1重量%以下のジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなる素材で成形されており、熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材にも関する。
【0008】
本発明の製造方法で用いるマグネシウム合金において、ケイ素が12重量%未満の場合には耐熱性高強度及び低熱膨張係数の改善効果が不十分であり、また、19重量%を超えると晶出するMg2Siの粒径が大きくなって割れが生じ、室温強度及び高温強度が低下する。従って本発明の製造方法で用いるマグネシウム合金においてはケイ素含有量を12〜19重量%にする。また、ケイ素含有量を12〜19重量%にすることにより、本発明の製造方法で得られるマグネシウム合金の熱膨張係数は20×10-6/K〜22×10-6/Kとなる。
【0009】
本発明の製造方法で用いるマグネシウム合金において、アルミニウム、亜鉛、銀、スカンジウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムは合金の室温強度及び高温強度を向上させる。しかし、アルミニウム及び亜鉛については添加量が12重量%を超えると合金が脆くなる傾向がある。銀については添加量16重量%で添加効果が飽和し、それ以上添加してもコスト高になるだけである。スカンジウムについては添加量7重量%で添加効果が飽和し、それ以上添加してもコスト高になるだけである。ジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムについてはそれぞれの添加量1重量%で添加効果が飽和し、それ以上添加しても無意味である。従って、本発明の製造方法で用いるマグネシウム合金においては、アルミニウム、亜鉛、銀、スカンジウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム又はストロンチウムを用いる場合には、それぞれ12重量%以下のアルミニウム及び亜鉛、16重量%以下の銀、7重量%以下のスカンジウム、それぞれ1重量%以下のジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を用いる。
【0010】
本発明の製造方法の実施においては、溶湯の急冷凝固は、アトマイズ法、メルトスピン法、オスプレイ法などの一般的な方法によって実施することができる。また、本発明の製造方法によって得られた熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金から成形部材を成形する方法としては、HIP、ホットプレス、熱間押出、粉末鍛造などの一般的な方法を採用することができる。
【0011】
【実施例】
実施例1〜12及び比較例1〜2
アルゴン雰囲気の真空溶解炉に、表1に示す組成の合金となるように原材料を装入し、溶解させた。尚、坩堝としてSUS304材を使用し、フラックス等は使用しなかった。その溶湯から下記の条件下、単ロールメルトスピンで急冷凝固材を作成した:
射出温度:750℃、 射出圧力:0.5kgf/cm2
ノズル径:スリット状0.2mm×25mm、
ロール材質:SUS304材、ロール径:250mm、
ロール回転数:1500rpm 、
このようにして得たリボン状の急冷凝固材をフレークとして熱間押出した。熱間押出の条件は押出温度400℃、押出比50とし、径6mmの押出材を得た。この押出材を用いて下記の条件で引張試験を実施した:
引張試験:インストロン引張試験機によりクロスヘッド速度10mm/min、
試験片形状:径4mm、標点間距離10mm、
測定温度298K及び473K、引張強度の測定単位=MPa、
破断時伸び=%で測定。
測定結果は表1に示す通りであった(表中の伸び%は破断時伸びである)。
【0012】
比較例3〜
それぞれ実施例1〜の合金組成と同一であるが急冷凝固を伴わない通常の鋳造によって試験片を作成し、実施例1〜12と同様にして引張試験を実施した。その結果も表1に示す。
【0013】
【表1】
Figure 0003622989
【0014】
上記の実施例1〜12で得られた合金材の熱膨張係数を測定したところ、Mg−12Si−X系合金の熱膨張係数は22×10-6/K程度であり、Mg−19Si−X系合金の熱膨張係数は20×10-6/K程度であった。なお、ケイ素含有量が本発明で規定している範囲よりも少ない比較例1のMg−3.5Si系合金の熱膨張係数は25×10-6/K程度であった。
【0015】
上記の実施例1〜と比較例3〜との比較から明らかなように、溶湯を急冷凝固することにより室温強度及び高温強度が改善される。また実施例1〜12から明らかなように、アルミニウム、亜鉛、銀、スカンジウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムは合金の室温強度及び高温強度を向上させる。しかし、比較例1から明らかなように、ケイ素含有量が本発明で規定している範囲よりも少ない場合には、耐熱性高強度の改善効果が不十分であり、また、比較例2から明らかなように、アルミニウム添加量が12重量%を超えていると、極端に低い伸び%の値か判断されるように合金が脆くなる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、室温強度及び高温強度に優れた耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材が得られ、これは軽量で熱膨張係数の小さいものである。

Claims (2)

  1. ケイ素を12〜19重量%含有し、更にそれぞれ12重量%以下のアルミニウム及び亜鉛、16重量%以下の銀、7重量%以下のスカンジウム、それぞれ1重量%以下のジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなるマグネシウム合金の溶湯を急冷凝固して素材を得た後、これを成形することを特徴とする、熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法によって得られた、ケイ素を12〜19重量%含有し、更にそれぞれ12重量%以下のアルミニウム及び亜鉛、16重量%以下の銀、7重量%以下のスカンジウム、それぞれ1重量%以下のジルコニウム、チタン、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、クロム、カルシウム及びストロンチウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、残部がマグネシウムと不可避の不純物からなる素材で成形されており、熱膨張係数の小さい耐熱性高強度マグネシウム合金からなる成形部材。
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