JP4786485B2 - 断面h形鋼材の補強構造および補強方法 - Google Patents
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このような断面H形鋼材1の補強構造では、断面H形鋼材1と、補強鋼板20または補強形鋼21を溶接で一体化することで、強度を確実に向上できる利点がある。
前記(B)の従来の場合は、断面H形鋼材の断面外形が大幅に大きくなるため、周囲にスペースがない場合には、適用できないという問題もある。
前記(C)(D)の従来の場合は、H形鋼に鉄筋またはスタッドを、火気使用となる溶接により固定するため、前記(A)と同様に、火気の使用ができない既存建物等の使用条件によっては、補強工事が困難となり、工場における操業を一時停止した後、補強構造の施工をする等、補強施工に長期間を要するばかりでなく、火気使用となる溶接を必要とするため、周囲に引火する恐れを必然的に生じ、補強工事の安全性が低下する等の問題がある。
本発明は、断面H形鋼材を補強する場合に、周囲にスペースを確保できない場合でも施工可能であり、また、火気の使用となる溶接することなく、断面H形鋼材とこれを補強する補強部材とを確実に、強固に一体化可能な断面H形鋼材の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
また、第2発明では、第1発明の断面H形鋼材の補強構造において、断面H形鋼材における各フランジ内側面とこれに接続する各ウェブ側面とに、接着剤層が設けられていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明又は第2発明の断面H形鋼材の補強構造において、ウェブ側面に最も近い位置の網状繊維シートの巾方向中間部が、ウェブ側面に接着剤層により固着されていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明又は第2発明の断面H形鋼材の補強構造において、網状繊維シートは、フランジ片側において、フランジ巾方向に間隔をおくと共に、フランジ長手方向に複数列設けられていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の断面H形鋼材の補強構造において、網状繊維シートに代えて、網状繊維筒状体とされていることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかに記載の断面H形鋼材の補強構造において、コンクリート系材料が、補強繊維混入コンクリート系材料であることを特徴とする。
第7発明の断面H形鋼材の補強方法においては、断面H形鋼材における対向するフランジ内側面に接し、かつコンクリート系材料の中に埋まる位置に、予め1枚または複数枚の網状繊維シートまたは網状繊維筒状体の端部を接着剤により固定し、次いで網状繊維シートまたは網状繊維筒状体を埋め込むように、かつフランジ内側面とウェブ側面とに囲まれた各凹溝にコンクリート系材料を打設し硬化させて、硬化したコンクリート系材料と断面H形鋼材とを一体化することを特徴とする。
第8発明では、第7発明の断面H形鋼材の補強方法において、断面H形鋼材は、既存の鉄骨構造物における柱または梁あるいは筋交いであることを特徴とする。
第2発明によると、断面H形鋼材における各フランジ内側面とウェブ側面とに設けた接着剤層を介して、断面H形鋼材とコンクリート系材料とを一体化する補強形態であるので、従来のように、溶接による補強形態と異なり、断面H形鋼材に設ける補強材料と断面H形鋼材の一体化に火気を使用することなく、各フランジ内側面とウェブ側面の広い面積を接合面として有効に利用し一体化して補強することができ、しかも周囲にスペースを確保できない場合でも断面H形鋼材を補強することができる効果が得られる。
第1発明によると、網状繊維シートを断面H形鋼材における各フランジ内側面に固定することができ、網状繊維シートとコンクリート系材料とが接着剤により断面H形鋼材と一体化された高強度の補強構造とすることができる。
第3発明によると、ウェブ部分が網状繊維シートにより補強されると共に、ウェブ部分に固定された網状繊維シートを介してコンクリートに圧縮力および引張力を伝達させることができ、フランジ部分のみに網状繊維シートの巾方向端部を固定する場合に比べて、より強固に補強することができる。
第4発明によると、網状繊維シートが一枚の場合に比べて、より高強度の補強構造とすることができる。
第5発明によると、網状繊維筒状体とされているので、一つの網状繊維筒状体により、網状繊維シート2枚分と同様な高強度の補強構造とすることができ、網状繊維シート2枚の取り付けに比べて、取り付け回数を少なくすることができる。
第6発明によると、コンクリート系材料が、補強繊維混入コンクリート系材料であるので、補強繊維が混入していない場合の補強構造に比べて、さらに強度の高い補強構造とすることができる。
本願発明によると、断面H形鋼材における各フランジ内側面とこれに接続する各ウェブ側面とに、接着剤を塗布して接着剤層を形成した後、コンクリート系材料を打設し硬化させる簡単な施工で、断面H形鋼材を容易に補強することができる。
第7発明によると、対向するフランジ内側面に接し、かつコンクリート系材料の中に埋まる位置に、予め1枚または複数枚の網状繊維シートまたは網状繊維筒状体の端部を接着剤により固定し、次いで網状繊維シートまたは網状繊維筒状体を埋め込むようにコンクリート系材料を打設し硬化させるだけで、容易に断面H形鋼材を補強することができ、また、網状繊維シートまたは網状繊維筒状体とコンクリートと断面H形鋼材とを一体化した高強度の補強構造とすることができ、さらに断面H型鋼材またはその接着剤層から網状繊維シートまたは網状繊維筒状体を介してコンクリートに、あるいはコンクリートから網状繊維シートまたは網状繊維筒状体を介して断面H型鋼材に応力の伝達可能な高強度の補強構造とすることができる。
第8発明によると、既存の鉄骨構造物における柱または梁あるいは筋交いに使用されている断面H形鋼材を容易に高強度に補強することができる。
(1)コンクリート系材料8と接着剤のみで補強される構成とされるため、施工に溶接による火気は使用しない。
(2)コンクリート系材料8は、フランジ2とウェブ3で囲まれた凹溝4のみに打設するため、補強により部材の外形寸法は全く変わらない。
(3)断面H形鋼材1に圧縮(引張)応力が作用すると(図7参照)、接着面11を介してコンクリート系材料8にも圧縮(引張)応力が伝達され、H形鋼等の断面H形鋼材1とコンクリート等のコンクリート系材料8の双方にて、圧縮(又は引張)応力に抵抗する。
(4)H形鋼等の断面H形鋼材1に曲げ応力Mが作用すると(図8参照)、圧縮側フランジ2、引張側フランジ2ともに接着面を介してコンクリート等のコンクリート系材料にも片側に圧縮応力、もう片側に引張応力が伝達される。
図4(a)に示すように、前記の網状繊維シート9(または、後記の網状繊維筒状体12)における網目15の配置形態(繊維の方向)としては、断面H形鋼材の部材長手方向に対して繊維が傾斜するように菱形網目15の網状繊維シート9を配置するようにしてもよく、図4(b)に示すように、断面H形鋼材の部材長手方向に対して一方の横繊維が平行に他方の縦繊維が直角に交差する矩形網目15の網状繊維シート9を配置するようにしてもよい。
前記のように、網状繊維シート9をコンクリート系材料8に埋め込み配置すると、網状繊維シート9の巾方向中間部は、硬化したコンクリート系材料8により、面外方向の変形が拘束される。また、網目15はその内側に充填硬化されるコンクリート系材料8により、網目15の形状は変形が拘束されて保持された状態で、コンクリート系材料8と網状繊維シート9間で応力が伝達される。
網状繊維シート9の網目15の大きさは、隣り合う横繊維部間または縦繊維部間の間隔(中心間隔または内側間隔)で、5mm〜20mm程度にすると、コンクリート系材料8を網目内に充填させ、確実に一体化させることができる。繊維を混入したコンクリート系材料8を打設する場合には、概して網目15の大きい形態の網状繊維シート9を使用するようにするとよい。なお、網状繊維シート9の網目15の形態としては、矩形、菱形、六角形等、適宜の網目形状となる形態でもよいが、矩形あるいは菱形の網目形態の方が、網目形状が単純であるので、網状繊維シート9の製作が容易に安価に製作することができる。なお、網状繊維シート9は、布状であっても可能である。
(1)コンクリート系材料8、接着剤、網状繊維シート9または網状繊維筒状体12のみで補強されるため、断面H形鋼材1の補強施工に、溶接などによる火気は使用しない。
(2)コンクリートなどのコンクリート系材料は、断面H形鋼材1におけるフランジ2とウェブ3とで囲まれた面のみに打設するため、補強により部材の外形は全く変わらない。
(3)H形鋼等の断面H形鋼材1に圧縮(引張)応力が作用すると(図7参照)、接着部を介して網状繊維シート9にも圧縮(引張)応力が伝達され、コンクリート系材料8による埋込部の網目15の中に充填されたコンクリートなどのコンクリート系材料8を介して硬化したコンクリート系材料にも圧縮(引張)応力が伝達され、H形鋼等の断面H形鋼材1とコンクリートなどのコンクリート系材料8の双方にて応力に抵抗する。
(4)H形鋼等の断面H形鋼材1に曲げ応力M(図8参照)が作用すると、圧縮側フランジ2、引張側フランジ2ともに接着部を介して網状繊維シート9にも片側に圧縮応力、他方の片側に引張応力が伝達され、前記と反対の曲げ応力が作用した場合は、反対に、同様に伝達される。
また、対向するフランジ内側面5に接し、かつコンクリート系材料8の中に埋まる位置に、予め1枚または複数枚の網状繊維シート9または網状繊維筒状体12の端部が接着剤により固定し、次いで網状繊維シート9または網状繊維筒状体12を埋め込むようにコンクリート等のコンクリート系材料8を打設(充填)し、硬化させる。
そして、既存の鉄骨構造物における柱または梁あるいは筋交いが断面H形鋼材である場合には、前記のような補強方法により容易に断面H形鋼材を補強することができ、既存の鉄骨構造物を補強強化することができる。
2 フランジ
3 ウェブ
4 凹溝
5 フランジ内側面
6 ウェブ側面
7 接着剤層
8 コンクリート系材料
9 網状繊維シート
10 取り付け部
11 接着面
12 網状繊維筒状体
13 柱
14 梁
15 網目
16 鋼構造物
17 水平ダイアフラム
18 型枠
20 補強鋼板
21 補強形鋼
22 H形鋼柱
23 主筋
24 環状横鉄筋
M 曲げ応力
W 溶接
Claims (8)
- 断面H形鋼材における少なくともフランジ内側面に接着剤層が設けられ、かつフランジ内側面とウェブ側面とに囲まれた各凹溝にコンクリート系材料が打設されて硬化され、前記接着剤層を介して硬化したコンクリート系材料と断面H形鋼材とが一体化され、対向するフランジ内側面に接するように、網状繊維シートの巾方向の各端部が接着剤層により固定され、かつ網状繊維シートがコンクリート系材料に埋め込まれていることを特徴とする断面H形鋼材の補強構造。
- 断面H形鋼材における各フランジ内側面とこれに接続する各ウェブ側面とに、接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の断面H形鋼材の補強構造。
- ウェブ側面に最も近い位置の網状繊維シートの巾方向中間部が、ウェブ側面に接着剤層により固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断面H形鋼材の補強構造。
- 網状繊維シートは、フランジ片側において、フランジ巾方向に間隔をおくと共に、フランジ長手方向に複数列設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断面H形鋼材の補強構造。
- 網状繊維シートに代えて、網状繊維筒状体とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の断面H形鋼材の補強構造。
- コンクリート系材料が、補強繊維混入コンクリート系材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の断面H形鋼材の補強構造。
- 断面H形鋼材における対向するフランジ内側面に接し、かつコンクリート系材料の中に埋まる位置に、予め1枚または複数枚の網状繊維シートまたは網状繊維筒状体の端部を接着剤により固定し、次いで網状繊維シートまたは網状繊維筒状体を埋め込むように、かつフランジ内側面とウェブ側面とに囲まれた各凹溝にコンクリート系材料を打設し硬化させて、硬化したコンクリート系材料と断面H形鋼材とを一体化することを特徴とする断面H形鋼材の補強方法。
- 断面H形鋼材は、既存の鉄骨構造物における柱または梁あるいは筋交いであることを特徴とする請求項7に記載の断面H形鋼材の補強方法。
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