JP4785105B2 - 超音波画像処理装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波を用いて取得した複数の超音波画像を処理して表示する超音波画像処理装置に係り、特に医療用の超音波診断装置などで取得される視野の狭い超音波画像の複数を合成することによって広視野の超音波画像(パノラマ画像)を作成する超音波画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の医療現場では、X線CT装置、超音波装置、MRI装置などを用いて被検者の体内画像を撮影し、得られた体内画像に基づいて診断を行なうことが日常的に行なわれている。従って、撮影された画像をただ単純に表示するのではなく、さまざまな画像処理を施して、医師がその症状を最も診断しやすいように加工して表示する技術の重要性も高い。特に、超音波診断装置は、超音波探触子の幅が狭いため、超音波探触子に接する部分の幅の狭い超音波画像しか得ることができなかった。最近、複数の超音波画像を複数組み合わせることによって、より広視野の超音波画像(パノラマ画像)を作成し、表示するようにしたものとして、例えば、特開2000−217815号公報に記載されたものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のものは、時間的に前後する超音波画像を用いて超音波探触子の移動方向における移動量を検出し、超音波探触子の回転方向を検出し、それに基づいて超音波画像を合成処理することについては言及している。しかしながら、実際に超音波探触子を人体に接触させながら移動する場合、人体の凹凸や超音波探触子の押圧力に対する反発力などの影響を受けて、超音波探触子自体が移動方向に対して垂直(縦)方向に変動することがある。従って、縦方向の移動量を考慮して超音波画像を合成しないと、縦方向の変動成分による誤差を含む形でパノラマ画像が作成されるという問題があった。
また、従来のものは、パノラマ画像を作成することに関しては詳細に述べてあるが、作成されたパノラマ画像を医師が最も診断し易いように加工して表示する方法については言及してない。
【0004】
本発明は、超音波探触子の移動に応じて生じる縦方向の移動による誤差を補正したパノラマ画像を作成することのできる超音波画像処理装置を提供することを目的とする。
本発明は、パノラマ画像を医師が診断し易いように加工して表示することのできる超音波画像処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る超音波画像処理装置は、超音波探触子を移動させることによって取得した超音波画像を順次出力する超音波画像出力手段と、前記超音波探触子の移動方向に対して側辺が一致するような矩形領域を前記超音波画像内に設定する領域設定手段と、前記矩形領域内の画素値を前記移動方向に投影することによって垂直方向に沿った投影分布を作成する垂直投影分布作成手段と、前記超音波画像出力手段から出力される時間的に前後する2つの超音波画像について、前記垂直投影分布作成手段から出力される垂直投影分布を比較して垂直方向のずれ幅を検出し、そのずれ幅を補正する垂直ずれ幅補正手段と、前記垂直ずれ幅補正手段によって垂直方向のずれ幅の補正された2つの超音波画像について、前記矩形領域内の画素値及び前記矩形領域を垂直方向に複数に分割したそれぞれの分割領域内の画素値を、垂直な方向に投影することによって水平方向に沿った投影分布をそれぞれ作成する水平投影分布作成手段と、前記複数の分割領域内の画素値の投影分布に基づいて前記2つの超音波画像の相対的な回転量を検出する回転量検出手段と、前記矩形領域内の画素値の投影分布に基づいて前記2つの超音波画像の移動方向における相対的な移動量を検出する移動量検出手段と、前記回転量及び前記移動量に基づいた前記2つの超音波画像を合成し、パノラマ画像を作成する画像作成手段とを備えたものである。超音波探触子を操作する場合、移動方向に対して垂直(縦)方向に移動することがあるので、この発明では、時間的に前後する2つの超音波画像を用いて垂直(縦)方向のずれ幅を補正してから、移動方向における移動量及び回転量を検出して超音波画像を合成処理するようにした。これによって、縦方向の変動成分による誤差のない精度の高いパノラマ画像を作成することができる。
【0006】
請求項2に係る超音波画像処理装置は、請求項1において、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像の表示画面中に合成前の超音波画像を重ねて表示する手段を設けたものである。合成前の超音波画像は、超音波画像出力手段から出力される取込原画像であり、この発明では、その取込原画像をパノラマ画像中に重ねて表示することによって、ユーザは、取込原画像が撮影部位のどこに対応するのか容易に認識することができ、合成処理によってぼける前の鮮明な取込原画像に基づいてより正確な診断を行なうことができるようになる。
【0007】
請求項3に係る超音波画像処理装置は、請求項2において、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像及び超音波画像に後からアノテーション文字や図形などを合成して表示する手段と、合成表示されたアノテーション文字や図形などを前記パノラマ画像及び超音波画像上に表示/非表示する手段とを設けたものである。これは、パノラマ画像及び/又は超音波画像にアノテーション文字や図形などを合成して表示すると共にその表示状態(表示/非表示)を任意に切り換えて表示することによって、必要なアノテーションなどをユーザが任意に選択できるようにしたものである。
【0008】
請求項4に係る超音波画像処理装置は、請求項1において、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像全体を回転して表示する手段を設けたものである。この発明のようにパノラマ画像全体を回転表示することによって、ユーザは、撮影された部位に応じてより正確に診断を行なうことができるようになる。
【0009】
請求項5に係る超音波画像処理装置は、請求項1において、前記回転量検出手段が回転量を検出する前に前記矩形領域の画素値に基づいて前記矩形領域の大きさを修正する手段を設けたものである。これは、超音波探触子の表示深度と矩形領域と大きさが異なる場合、深部の輝度が暗過ぎて、回転量を正確に検出することができない場合があるので、矩形領域について所定の閾値以下の画素値が一定以上存在する行を矩形領域から削除し、削除後の矩形領域について回転量を検出することによって、回転量を正確に検出できるようにしたものである。
【0010】
請求項6に係る超音波画像処理装置は、超音波探触子を移動させることによって取得した複数の超音波画像の相対的移動量及び相対的回転量を検出し、それに基づいて前記複数の超音波画像を合成することによってパノラマ画像を作成する超音波画像処理装置において、前記パノラマ画像の表示画面中に合成前の超音波画像を重ねて表示する手段を設けたものである。これは、パノラマ画像の作成方法が請求項1のものに限定されるものではなく、作成されたパノラマ画像中に重ねて取込原画像である超音波画像を表示するようにしたものである。これによって、ユーザは、取込原画像が撮影部位のどこに対応するのか容易に認識することができ、合成処理によってぼける前の鮮明な取込原画像に基づいてより正確な診断を行なうことができるようになる。
【0011】
請求項7に係る超音波画像処理装置は、超音波探触子を移動させることによって取得した複数の超音波画像の相対的移動量及び相対的回転量を検出し、それに基づいて前記複数の超音波画像を合成することによってパノラマ画像を作成する超音波画像処理装置において、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像及び超音波画像に後からアノテーション文字や図形などを合成して表示する手段と、合成表示されたアノテーション文字や図形などを前記パノラマ画像及び超音波画像上に表示/非表示する手段とを設けたものである。これは、パノラマ画像の作成方法が請求項1のものに限定されるものではなく、パノラマ画像及び/又は超音波画像にアノテーション文字や図形などを合成して表示すると共にその表示状態(表示/非表示)を任意に切り換えて表示することによって、ユーザが必要なアノテーションなどを任意に選択できるようにしたものである。
【0012】
請求項8に係る超音波画像処理装置は、超音波探触子を移動させることによって取得した複数の超音波画像の相対的移動量及び相対的回転量を検出し、それに基づいて前記複数の超音波画像を合成することによってパノラマ画像を作成する超音波画像処理装置において、前記パノラマ画像全体を回転して表示する手段を設けたものである。これは、パノラマ画像の作成方法が請求項1のものに限定されるものではなく、作成されたパノラマ画像全体を回転表示するようにしたものである。これによって、ユーザは、撮影された部位によっては、回転表示することによってより正確に診断を行なうことができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る超音波画像処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の超音波画像処理装置の適用された超音波診断装置の全体構成の一例を示すブロック図である。超音波診断装置は、超音波探触子10、超音波送受波部11、画像構成部12、画像メモリ部13、画像表示部14、制御部15及び操作部16から構成される。超音波探触子10は被検体内へ超音波を送波すると共にその反射波を受波する。超音波送受波部11は超音波探触子10内の振動子を駆動させて超音波を発生させると共にその反射波を受波する。画像構成部12は超音波送受波部11からの受波信号を入力して超音波画像を作成する。画像メモリ部13は画像構成部12からの超音波画像を一時的に記憶すると共に任意の表示が可能なように画像変換処理を行う。画像表示部14は画像メモリ部13からの画像データを取り込んでそれをCRTモニタや液晶モニタなどに表示する。制御部15は、これらの各構成要素の動作を制御し、受波信号に基づいてパノラマ画像を作成し、それを画像表示部14に表示させる。操作部16は、制御部15を操作するものであり、画面上のソフトスイッチを操作するマウス及びそのコントローラと、各種パラメータ設定用のキーやスイッチを備えたキーボードなどで構成される。図1超音波診断装置は、そのまま本発明の超音波画像処理装置として動作するものである。
【0014】
以下、図1の超音波画像処理装置の動作例について図面を用いて説明する。図2は、超音波画像処理装置が実行する広視野画像表示処理のメインフローの一例を示す図である。制御部15は、このメインフローに従って動作する。以下、このメインフローの詳細をステップ順に説明する。
【0015】
[ステップS20]
操作部16の操作に応じたモード選択処理を行なう。モードの切り換えは操作部16であるマウスを左クリックすることによって順次行なわれるようになっている。この実施の形態では、記録モード(Rec)、一時停止モード(Pause)、停止モード(Stop)の3つのモードが存在する。従って、操作部16によって選択されたモードに対応するステップS21,S24,S25にそれぞれジャンプする。
【0016】
ステップS21〜S23は、ステップS20で一時停止モードが選択された場合に行なわれる処理であり、パノラマ画像を作成する前に行なわれる最初の処理である。
[ステップS21]
表示サイズの変更処理を行なう。これは、等倍サイズ表示、2分の1サイズの表示又は画面サイズ表示などの種々の表示サイズに変更する処理のことであり、これ意外の任意サイズの表示も可能である。
[ステップS22]
患者情報の入力処理を行なう。ユーザ(医師)が、表示画面上の所定のソフトボタンをクリックすると、患者IDと患者名の入力ダイアログが表示されるようになるので、そこに患者IDと名前を入力する。これによってID欄に患者情報とその日付が表示され、登録される。
【0017】
[ステップS23]
各種設定処理を行なう。パノラマ画像の作成を行なう際に必要な領域及びオプション値として最適なものが設定される。領域には、メイン画面において表示する超音波画像の実際の表示領域と、移動量などの計算のために使用される解析領域がある。オプション値には、パノラマ画像表示面の最大幅及び最大高によって設定されるメモリ容量(画像メモリの横幅と縦高さ)、再生表示用の画像メモリの記憶容量(パノラマ表示後に再生可能な原画像用の画像メモリの容量)、貼り合わせ幅(パノラマ画像作成時に実際に使用される画像メモリの容量)、無信号判定しきい値(白黒256階調のうち、移動解析に使用しない低い値を除去するためのレベル値)、回転検出しきい値(白黒256階調のうち、回転検出に使用しない低い値を除去するためのレベル値)、回転量の検出の有無を示す値(回転の認識のオン/オフ値)などがある。なお、これらの各設定は、超音波探触子や表示深度が変わる度に一つ一つ設定するのは、非常に効率が悪いので、プリセットされたものを適宜選択できるようにしてある。
【0018】
ステップS24は、ステップS20で記録モードが選択された場合に行なわれる処理であり、超音波探触子10の移動に応じてパノラマ画像を作成し、作成されたパノラマ画像をリアルタイムに表示する処理である。
[ステップS24]
超音波探触子10の移動に応じて、ステップS23の設定値に従ってパノラマ画像を作成し、作成されたパノラマ画像をリアルタイムに表示する。このパノラマ画像の作成処理の詳細については後述する。
【0019】
ステップS25〜S2Aは、ステップS20で停止モードが選択された場合に行なわれる処理であり、ステップS24によって作成されたパノラマ画像に対して行なわれる処理である。
[ステップS25]
ステップS22と同様の表示サイズの変更処理を行なう。ここでの変更処理は、作成されたパノラマ画像に基づいて行なうものである。
[ステップS26]
ステップS23と同様の患者情報の入力処理を行なう。ここでの入力処理は、作成されたパノラマ画像について行なうものである。
【0020】
[ステップS27]
原画像の表示/非表示の切換処理を行なう。原画像とは、パノラマ画像になる前の超音波探触子によって取得された合成処理前の1フレーム毎の取込原画像のことである。この原画像は、パノラマ画像作成中に移動処理や回転処理があるたびに、メモリに記録される。作成されたパノラマ画像に、この原画像を重ねて表示することもできる。これによってパノラマ画像作成前の取込原画像を目視することができる。通常パノラマ画像は複数の取込原画像を合成して作成してあるので、輪郭などが若干ぼけてしまうので、取込原画像をそのまま表示することによって、ユーザ(医師)は鮮明な画像に基づいた判断を行なうことができる。また、この原画像の表示/非表示は適宜切換選択可能になっている。この原画像の表示/非表示の切換処理の動作例については後述する。
[ステップS28]
回転再生処理を行なう。作成されたパノラマ画像全体を、原画像の表示/非表示に関わらず、操作部16の操作量に応じて右回転又は左回転させる。原画像が表示中のときは、原画像もパノラマ画像と共に回転表示される。撮影された部位に応じてパノラマ画像を回転することによって、ユーザ(医師)はより正確に診断を行なうことができるようになる。
【0021】
[ステップS29]
画像の保存/読込処理を行なう。ユーザ(医師)が迅速に診察を行なえるようにするために、作成されたパノラマ画像をソフトボタンの操作で簡単に保存することができる。パノラマ画像の保存ファイル形式はBMPである。また、パノラマ画像の読出処理は、読出用のソフトボタンを操作することによって、読出ダイアログとファイル一覧が出現するので、その中から所定のファイルを選択することによって行なわれる。
[ステップS2A]
アノテーション処理を行なう。アノテーションとは、超音波画像の上に文字列や記号などの任意の文字や図形などを注釈として入力する機能のことであり、従来から行なわれているものであるが、この実施の形態では、原画像及びパノラマ画像の両方にそれぞれ別々のアノテーションを設定することが可能であり、この場合、原画像の表示/非表示に応じてアノテーション表示も種々変更できるようになっている。
【0022】
図3は、図2のステップS24のパノラマ画像作成・表示処理の詳細を示すフローチャート図である。このパノラマ画像作成・表示処理は、時間的に前後する超音波画像を用いて超音波探触子10の移動方向における移動量及び垂直(縦)方向の移動量並びに回転量を考慮して超音波画像を合成して、パノラマ画像を作成するものである。以下、このパノラマ画像作成・表示処理の詳細をステップ順に説明する。
【0023】
[ステップS30]
縦方向の移動量を求めるための垂直方向投影分布を作成する。図4に示すように、超音波原画像の中から解析領域に対応したフレーム40を取り出し、その水平方向について輝度の累算を求め、その値を垂直方向投影分布49とする。すなわち、フレーム40について、水平方向の矢印41上の各画素の輝度の合計値を算出し、その合計値をその水平方向の矢印42の位置における値として垂直方向投影分布49に反映させる。なお、合計値に代えて平均値を用いてもよい。この処理を、水平方向の矢印42〜48のように順次行なう。なお、図では、矢印41〜48の間隔が比較的大きい場合が図示してあるが、この間隔は任意に設定可能であり、1画素毎であってもよいし、数画素単位であってもよい。図4の垂直方向投影分布49は、1画素毎に求めたものである。このような垂直方向投影分布を時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームについてそれぞれ算出する。
【0024】
[ステップS31]
ステップS30で求められた時間的に前後するフレームの垂直方向投影分布に基づいて縦方向の移動量(ずれ幅)を計算する。例えば、時刻tのフレームと時刻t+1のフレームが図8の左側に示すような関係の場合、すなわち、時刻t+1のフレームが時刻tのフレームに対して縦方向にΔYだけずれ、横方向にΔXだけずれている場合、このステップではこれらの各フレームについて算出された垂直方向投影分布に基づいて縦方向のシフト量ΔYを求め、それを補正する。図5は、時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームについて求められた垂直方向投影分布を示す図である。垂直方向投影分布49は、時刻tのフレームのものであり、垂直方向投影分布50は時刻t+1のフレームのものである。まず、時刻tのフレームについて、取り得る最大の移動量dMAX分だけ両端からそれぞれ除いた中央部の領域51に含まれる垂直方向投影分布49を用いる。この領域51に含まれる垂直方向投影分布49を時刻t+1の垂直方向投影分布50に対して順次シフトしながら比較し、その相関が最も高いときのシフト量ΔYを求め、そのシフト量ΔYを垂直方向の移動量とする。図5では、まず最初に領域51に含まれる垂直方向投影分布49と、点線で示す領域52に含まれる垂直方向投影分布50と比較する。順次領域をシフトし、最終的に領域51に含まれる垂直方向投影分布49と、一点鎖線で示す領域54に含まれる垂直方向投影分布50と比較する。この比較の結果、実線で示す領域53に含まれる垂直方向投影分布50が領域51に含まれる垂直方向投影分布49と相関が最も高いと判定されるので、領域51と領域53のシフト量ΔYが垂直方向の移動量となる。従って、このシフト量ΔYだけ、補正前の時刻t+1のフレーム(図8の右側の斜線で示す領域)を縦方向に移動することによって、補正後の時刻t+1のフレーム(ず8の右側の点線で示す領域)となり、これによって実際の時刻t+1のフレームの位置と補正後の時刻t+1のフレームとが図8の左側に示すような関係と一致することになり、縦方向のずれ幅を補正することができる。
【0025】
[ステップS32]
前のステップS31で縦方向のずれ幅が補正された時刻t及び時刻t+1のフレームについて、今度は横方向の移動量及び回転量を求めるための水平方向投影分布を作成する。ステップS30と同様にして、水平方向投影分布を作成する。図4に示すように、超音波原画像の中から解析領域に対応したフレーム40だけを取り出し、その垂直方向について輝度の合計値を求め、その値を水平方向投影分布4Aとする。すなわち、フレーム40について、垂直方向の矢印上の各画素の輝度の合計値を算出し、その合計値をその垂直方向の矢印の位置における値として水平方向投影分布4Aに反映させる。なお、合計値に代えて平均値を用いてもよい。この処理を、垂直方向の矢印のように順次行なう。なお、図では、矢印の間隔は大きい場合が示してあるが、この間隔は任意に設定可能であり、1画素毎であってもよいし、数画素単位であってもよい。図4の水平方向投影分布4Aは、1画素毎に求めたものである。このような水平方向投影分布を時刻t及び時刻t+1のフレームについてそれぞれ算出する。また、このステップでは、回転量を求めるために、図7(A)に示すように時刻tのフレーム40を縦方向に複数に分割し、縦分割フレームR11〜R51を作成し、作成された各縦分割フレームR11〜R51について、同様に水平方向投影分布を算出する。図7(B)は、別の時刻における時刻t+1のフレーム70であり、時刻tのフレーム40に対して反時計回りに約5度程度回転している場合を示している。これについても同様に複数の縦分割フレームR12〜R52に分割し、分割された各縦分割フレームR12〜R52について、水平方向投影分布を算出する。
【0026】
[ステップS33]
ステップS32で求められた時間的に前後するフレームの水平方向投影分布に基づいて横方向の移動量を計算する。図6は、時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームについて求められた水平方向投影分布を示す図である。水平方向投影分布4Aは、時刻tのフレームのものであり、水平方向投影分布60は時刻t+1のフレームのものである。まず、時刻tのフレームについて、取り得る最大の移動量dMAX分だけ両端からそれぞれ除いた中央部の領域61に含まれる水平方向投影分布4Aを用いる。この領域61に含まれる水平方向投影分布4Aを時刻t+1の水平方向投影分布60に対して順次シフトしながら比較し、その相関が最も高いときのシフト量ΔXを求め、そのシフト量ΔXを水平方向の移動量とする。図6では、まず最初に領域61に含まれる水平方向投影分布4Aと、点線で示す領域62に含まれる水平方向投影分布60と比較する。順次領域をシフトし、最終的に領域61に含まれる水平方向投影分布4Aと、一点鎖線で示す領域64に含まれる水平方向投影分布60とを比較する。この比較の結果、実線で示す領域63に含まれる水平方向投影分布60が領域61に含まれる水平方向投影分布4Aと相関が最も高いと判定されるので、その領域63のシフト量ΔXが水平方向の移動量となる。
【0027】
次に、図7に示すように分割された各縦分割フレームR11〜R51及びR12〜R52のそれぞれについても同様に、そのシフト量ΔX1〜ΔX5を求める。すなわち、縦分割フレームR11と縦分割フレームR12を比較し、そのシフト量ΔX1を求め、縦分割フレームR21と縦分割フレームR22を比較し、そのシフト量ΔX2を求め、縦分割フレームR31と縦分割フレームR32を比較し、そのシフト量ΔX3を求め、縦分割フレームR41と縦分割フレームR42を比較し、そのシフト量ΔX4を求め、縦分割フレームR51と縦分割フレームR52を比較し、そのシフト量ΔX5を求める。図7から明らかなように、縦分割縦分割フレームR12,R22は左側に、縦分割フレームR42,R52は右側に移動している。従って、シフト量ΔX1は左方向に大きな移動量を示し、シフト量ΔX2は左方向に小さな移動量を示し、逆に、シフト量ΔX5は右方向に大きな移動量を示し、シフト量ΔX4は右方向に小さな移動量を示すことになる。このような分割された縦分割フレームR11〜R51,R12〜R52の移動量の差が、回転による垂直軸との傾きをあらわし、この傾きに基づいて回転量Δθを求めることができる。
[ステップS34]
ステップS30〜ステップS33の計算結果の信頼性が高いかどうかを判定し、高い(yes)と判定した場合はステップS36にジャンプし、そうでない(no)と判定した場合はステップS35に進む。
[ステップS35]
信頼性がでるまで何フレームか溜めて計算する。なお、この後にステップS34と同様の信頼性が出たかどうかの判定を行なうようにしてもよい。
【0028】
[ステップS36]
ステップS32で求められた回転量に基づいて回転ありか否かを判定し、回転あり(yes)と判定した場合はステップS37に進み、回転なし(no)と判定した場合はステップS38に進む。
[ステップS37]
ステップS36で回転ありと判定されたので、その回転中心の移動も考慮してステップS31及びステップS33で算出された移動量を記憶する。
[ステップS38]
ステップS36で回転なしと判定されたので、ステップS31及びステップS33で算出された移動量を記憶する。
[ステップS39]
最初の移動方向を記憶する。すなわち、図6のシフト量ΔXが左方向であるか、又は右方向であるかに応じた移動方向を記憶する。
[ステップS40]
移動方向が決定している場合は、その計算結果が正しいかどうか、すなわち移動方向が一致しているかどうかの判断を行なう。すなわち、超音波探触子10が最初の移動方向に対して逆走していないかどうかのチェックを行なう。
【0029】
[ステップS41]
順走か逆走かの判定を行い、順走(no)の場合はステップS42に進み、逆走(yes)の場合はステップS47に進む。
[ステップS42]
ステップS41で順走だと判定されたので、回転量を考慮した取込原画像を表示バッファの対応する位置に転送する。
[ステップS43]
前回までの処理で取得されているパノラマ画像を画像表示部14に表示する。
[ステップS44]
取込原画像を表示中のパノラマ画像に重ねて表示する。
[ステップS45]
表示中のパノラマ画像がどの部位に対するものであるのかを示すボディマークを表示する。
[ステップS46]
取込原画像をパノラマ画像の一部として記憶する。
【0030】
[ステップS47]
ステップS41で逆走だと判定されたので、取込原画像をパノラマ画像に反映させることなく、前回までの処理で取得されているパノラマ画像を画像表示部14に表示する。
[ステップS48]
表示中のパノラマ画像がどの部位に対するものであるのかを示すボディマークを表示してリターンする。
【0031】
図9は、図2のステップS27の原画像の表示/非表示処理による表示画面の一例を示す図である。図9では、肘関節部のパノラマ画像90上に取込原画像91が重ねて表示されている。ボディマーク表示部92には肘関節部を示すマークが表示されている。取込原画像91は、パノラマ画像90になる前の1フレーム毎の画像であり、パノラマ画像90の作成中に移動や回転があるたびにメモリに記録されている。図9のように、パノラマ画像90に取込原画像91を重ねて表示することによって、パノラマ画像90になる前の画像を確認することができる。図9において、ネクストボタン(←)93及びバックボタン(→)94を操作することによって、取込原画像91を前後に移動させることができる。原画像位置表示バー95は、取込原画像91がパノラマ画像90中のどこに位置するかを示すものであり、カレット96の位置が取込原画像91表示位置に対応する。なお、拡大表示ボタン97、縮小表示ボタン98をクリックすると、それに応じてパノラマ画像90及び/又は取込原画像91が拡大縮小されるようになっている。
【0032】
図10は、図2のステップS2Aのアノテーション処理による表示画面の一例を示す図である。図10では、取込原画像91にアノテーション文字「ABCDE」が入力され、さらに、円形上のアノテーションマーカ(図形)が同時に表示されている。これは、左上のアノテーション表示(an−on)ボタン101が選択されている場合である。従って、アノテーション非表示(an−off)ボタン102が選択されると、それに伴って取込原画像91のアノテーション文字及びマーカは非表示になる。また、全アノテーション表示(all−on)ボタンが選択されると、パノラマ画像90及び取込原画像91の全てのアノテーション文字及びマーカが図11に示すように表示されるようになる。すなわち、図11に示すように、取込原画像99が表示されている場合でも図10の取込原画像91に設定されたアノテーション文字及びマーカが表示されることになる。なお、パノラマ画像90及び取込原画像91のいずれか一方のアノテーション文字及びマーカを表示可能なボタンを設けてもよい。これによって、ユーザ(医師)はパノラマ画像だけを表示していても、取込原画像に設定されているアノテーション文字及びマーカなどを認識することができ、逆に、取込原画像表示中に、パノラマ画像に設定されているアノテーション文字及びマーカなども認識することができるので、適切な診断を行なうことができるようになる。
【0033】
図12は、表示深度及び解析領域がそれぞれ異なる場合の回転部分のパノラマ画像の一例を示す図である。図12(A)及び(B)は、表示深度が59[mm]と48[mm]の場合のふくらはぎのパノラマ画像をそれぞれ示す。この場合、解析領域はその表示深度を含むように決定されるので、通常は、表示深度が大きい場合には解析領域も大きく、表示深度が小さい場合には解析領域も小さく設定される。図12(A)の場合は、表示深度が大きいために解析領域も大きく、そのために解析領域の深部の輝度が暗く、それによって回転量を検出する際の深部の分割領域から正しい移動量が得られなくなり、回転に対する追従性が悪くなる。従って、図12(B)のパノラマ画像と比較して、図12(A)の場合は、回転量が不足していることが分かる。そこで、パノラマ画像の作成開始直後に、所定の閾値(回転検出閾値)以下の輝度が一定以上存在する行を自動的に解析領域から削除することによって、図12(C)及び(D)に示すように、表示深度が48[mm]の場合であっても59[mm]の場合であってもその回転量がほぼ同じとなるようにすることができる。
【0034】
図13は、上述のように回転量を正確に求めるためにその解析領域に修正を加えるようにした解析領域修正処理の詳細を示す図である。以下、この解析領域修正処理の詳細をステップ順に説明する。
[ステップS130]
解析領域の全画素の輝度を調べる。例えば、図7(A)のフレーム40について、最下部の行を左から右に向かって輝度を調べ、その行が終了したらその上の行を左から右に向かって輝度を調べ、それを最上部の行まで繰り返し実行する。そして、列レジスタA及び行レジスタBを「0」にリセットし、スタート点をフレーム40の左下に設定する。
[ステップS131]
画素の輝度が回転検出閾値よりも大きいかどうかの判定を行い、大きい(yes)場合はステップS133にジャンプし、小さい(no)場合はステップS132に進む。
【0035】
[ステップS132]
前のステップS131で輝度が回転検出閾値以下と判定されたので、その画素数をカウントするために列レジスタAを「1」だけインクリメントする。
[ステップS133]
その行の全ての画素についてステップS131の判定が終了したか否かを判定し、終了した(yes)場合はステップS135に進み、終了していない(no)場合はステップS134に進む。
[ステップS134]
その行の全ての画素について判定が終了してないので、その画素の右隣の画素の輝度を調べ、ステップS131の判定を行なう。
[ステップS135]
その行の全ての画素について輝度の判定が終了したので、列レジスタAの値がその行の全画素数の80パーセントよりも小さいか否かの判定を行い、小さい(yes)場合はステップS139にジャンプし、大きい(no)場合は次のステップS136に進む。
【0036】
[ステップS136]
前のステップS135で列レジスタAの値がその行の全画素数の80パーセントよりも大きいと判定されたので、その行数をカウントするために行レジスタBを「1」だけインクリメントする。
[ステップS137]
解析領域の全体について比較処理が終了したか否かの判定を行い、終了した(yes)場合はステップS139に進み、終了していない(no)場合はステップS138に進む。
[ステップS138]
解析領域の全体について比較処理が終了していないので、次の行について同様の処理を繰り返すために、列レジスタAを「0」にリセットして、ステップS131にリターンする。
【0037】
[ステップS139]
列レジスタAの値がその行の全画素数の80パーセントよりも小さいとステップS135で判定された場合、及び解析領域全体について比較が終了した場合に行なわれる処理である。すなわち、フレームの最下部から徐々に上側に向かって比較判定を行い、その途中の行のいずれかで列レジスタAの値が全画素数の80パーセントよりも小さいと判定された場合はフレームの最下部から行レジスタBの相当する数の行だけ削除する。なお、ステップS137でyesと判定されたということは、フレームが全体的に回転検出閾値よりも小さいことを意味するので、その解析領域全体は削除され、次のフレームについての解析が行なわれることになる。
【0038】
上述の実施の形態では、ステップS40で最初の移動方向に対して逆走していないかどうかのチェックを行い、逆走している場合はパノラマ画像及びボディマークを表示する場合について説明したが、逆走している場合に、その逆走した距離又は逆走している時間が所定値よりも大きい場合には、その逆走方向を順走方向と見なして、処理を続けるようにしてもよい。
なお、上述の説明に使用した数値等は代表的なものであって、もちろん本実施の形態を制限するものではなく、あらゆる数値等に適用できることはいうまでもないことである。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、探触子の移動に応じて生じる縦方向の移動による誤差を補正したパノラマ画像を作成することができる。
また、本発明の別の発明によれば、パノラマ画像を医師が診断し易いように加工して表示することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の超音波画像処理装置の適用された超音波診断装置の全体構成の一例を示すブロック図
【図2】 超音波画像処理装置が実行する広視野画像表示処理のメインフローの一例を示す図
【図3】 図2のステップS24のパノラマ画像作成・表示処理の詳細を示すフローチャート図
【図4】 図3のステップS30の垂直投影分布及びステップS32の水平投影分布の作成処理の概念を示す図
【図5】 時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームについて求められた垂直方向投影分布を示す図
【図6】 時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームについて求められた水平方向投影分布を示す図
【図7】 図3のステップS32の回転量を求める場合の処理の概念を示す図
【図8】 時間的に前後する時刻t及び時刻t+1のフレームがどのようにして補正されるのかその概念を示す図
【図9】 図2のステップS27の原画像の表示/非表示処理による表示画面の一例を示す図
【図10】 図2のステップS2Aのアノテーション処理による表示画面の一例を示す図
【図11】 図2のステップS2Aのアノテーション処理による表示画面の別の一例を示す図
【図12】 表示深度及び解析領域がそれぞれ異なる場合の回転部分のパノラマ画像の一例を示す図
【図13】 回転量を正確に求めるためにその解析領域に修正を加えるようにした解析領域修正処理の詳細を示す図
【符号の説明】
10…超音波探触子、11…超音波送受波部、12…画像構成部、13…画像メモリ部、14…画像表示部、15…制御部、16…操作部、40…フレーム、49,50…垂直方向投影分布、4A,60…水平方向投影分布、90…パノラマ画像、91…取込原画像、92…ボディマーク表示部、93…ネクストボタン、94…バックボタン、95…原画像位置表示バー、96…カレット、97…拡大表示ボタン、98…縮小表示ボタン、101…アノテーション表示、102…アノテーション非表示ボタン、103…全アノテーション表示ボタン
Claims (5)
- 超音波探触子を移動させることによって取得した超音波画像を順次出力する超音波画像出力手段と、
前記超音波探触子の移動方向に対して側辺が一致するような矩形領域を前記超音波画像内に設定する領域設定手段と、
前記矩形領域内の画素値を前記移動方向に投影することによって垂直方向に沿った投影分布を作成する垂直投影分布作成手段と、
前記超音波画像出力手段から出力される時間的に前後する2つの超音波画像について、前記垂直投影分布作成手段から出力される垂直方向に沿った投影分布を比較して垂直方向のずれ幅を検出し、そのずれ幅を補正する垂直ずれ幅補正手段と、
前記垂直ずれ幅補正手段によって垂直方向のずれ幅の補正された2つの超音波画像について、前記矩形領域内の画素値及び前記矩形領域を垂直方向に複数に分割したそれぞれの分割領域内の画素値を、垂直な方向に投影することによって水平方向に沿った投影分布をそれぞれ作成する水平投影分布作成手段と、
前記複数の分割領域内の画素値の水平方向に沿った投影分布に基づいて前記2つの超音波画像の回転量を検出する回転量検出手段と、
前記矩形領域内の画素値の水平方向に沿った投影分布に基づいて前記2つの超音波画像の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記回転量及び前記移動量に基づいた前記2つの超音波画像を合成し、パノラマ画像を作成する画像作成手段と
を備えたことを特徴とする超音波画像処理装置。 - 請求項1において、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像の表示画面中に合成前の超音波画像の原画像を重ねて表示/非表示とするか、前記画像作成手段によって作成されたパノラマ画像及び超音波画像に後から合成するアノテーション文字や図形を含む項目を前記パノラマ画像及び超音波画像上に表示/非表示するかを選択する手段とを設けたことを特徴とする超音波画像処理装置。
- 請求項1において、前記回転量検出手段が回転量を検出する前に前記矩形領域の画素値に基づいて前記矩形領域の大きさを修正する手段を設けたことを特徴とする超音波画像処理装置。
- 請求項1において、前記移動量検出手段での移動方向が順走か逆走かを判断する手段を設け、前記順走と判定された取込原画像を前記パノラマ画像の作成に反映させ、前記逆走と判定された取込原画像を前記パノラマ画像の作成に反映させないことを特徴とする超音波画像処理装置。
- 請求項1において、前記移動量検出手段での移動方向が順走か逆走かを判断する手段を設け、前記逆走している場合に、その逆走した距離又は逆走している時間が所定値よりも大きい場合には、その逆走方向を順走と見なして、前記パノラマ画像を作成する処理を続けることを特徴とする超音波画像処理装置。
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