JP4782186B2 - 重ね摩擦攪拌接合方法及びその方法で製造された構造体 - Google Patents
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Description
図13(a)に示すように、重ね摩擦攪拌接合方法では、一対のアルミ板等の板材11,12を接合するためにツール13を使用する。
ツール13は、軸心Cを中心に回転する硬質な丸棒であり、ショルダ部14とネジ部15とを備えている。
ネジ部15は、ショルダ部14から下向きに突出するように設けられている。ネジ部15の外周面にはネジ溝(図示せず)が形成されており、ネジの巻き方向は左方向となっている(左ネジ)。また、ネジ部15の高さhは、一対の板材11,12の重ね合わせ部16に侵入し且つ突き抜けないように、上側の板材11の厚さt1よりも大きく且つ両方の板材の合計t1+t2よりも小さく設定されている。
そして、図13(a)に示すように、ツール13を1点鎖線の位置まで押し込むと、ネジ部15と下側の板材12との間の摩擦熱により下側の板材12も軟化する。
さらに、図13(b)に示すように、この状態でツール13を重ね合わせ部16に沿って矢印T方向に移動させると、ネジ部15の周囲の軟化した両板材11,12が攪拌及び塑性流動し、その結果、接合部17が形成される。
上述の重ね摩擦攪拌接合方法では、ネジ部15の巻き方向と反対の方向にツール13を回転させているので、板材11,12の界面18付近のリトリーティングサイドRSでは軟化した板材11,12が上向きに流動し、ツール13の直下付近では軟化した板材11,12が下向きに流動する。したがって、図14の符号19で示すように、板材11,12間の界面18の酸化層は、横向きのS字を描くように残存することになる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を示している。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法では、一対の板材1,2を接合するためにツール3を使用する。ツール3は、軸心Cを中心に回転する硬質な丸棒であり、ショルダ部4とネジ部5とを備えている。ここで、ショルダ部4とネジ部5の構成は、上述した図13の従来例と同様の構成となっている。なお、本実施形態のツール3のネジ部5は、ネジの巻き方向が左方向となっている(左ネジ)。
そして、ツール3のショルダ部4が上側の板材1の表面に接する位置(1点鎖線の位置)までツール3を押し込み、この状態でツール3を重ね合わせ部6に沿って移動させる。この際、本実施形態では、図1(b)に示すように、上側の板材1の重ね合わせ部6の端部1aと反対側にアドバンシングサイドASを形成するようにツール3をT方向に移動させる。これにより、ツール3のネジ部5の周囲の軟化した板材1,2が攪拌及び流動され、その結果、接合部7が形成される。
せん断引張試験とは、接合された一対の板材1,2に対して界面8と平行で且つ互いに反対方向となる荷重をかけ、せん断強度(MPa)を測定するものである。
このせん断引張試験においては、板材1,2は、材質がA6N01で且つ板厚が2.5mmのものを使用した。また、ツール3のネジ部5の長さを3.5mmのものを使用した。また、ツール3の回転方向は右回りとし、ツール3は前進方向に対して3度傾斜させている(すなわち、前進角が3度)。
図2に示すように、本実施形態に係る構造体は、図2(a)の状態から矢印方向に荷重F1,F2が付加されると、図2(b)のように、板材1,2の重ね合わせ部6に曲げが生じる。そして、接合部7におけるリトリーティングサイドRS側端部から横方向に亀裂が入る。最終的には、残存する酸化層9沿ってS字に亀裂が入って、板材1,2がせん断されることになる。
図4は、本実施形態に対する比較例の構造体にせん断引張試験を行った場合のせん断の過程を示している。
図4(a)に示すように、比較例の構造体は、上側の板材1の重ね合わせ部6の端部1aと反対側にリトリーティングサイドRSを形成したものである。
図4(b)のように、比較例の構造体は、矢印方向に荷重F1,F2が付加されると、板材1,2の重ね合わせ部6に曲げが生じる。そして、接合部7におけるリトリーティングサイドRS側端部から上方向に亀裂が入る。最終的には、板材1,2の界面8のリトリーティングサイドRSから残存する酸化層9に沿ってS字に亀裂が入って、板材1,2がせん断されることになる。
図5に示すように、接合方向Aの構造体(本実施形態に係る構造体)は、いずれの回転数及び移動速度においても、接合方向Bの構造体と比較してせん断引張強さが強い結果となった。
これは、図4(b)に示すように、接合方向Bの構造体の場合には、接合部7のリトリーティングサイドRS側端部(亀裂の起点)における亀裂の入る方向が、その亀裂の起点の位置に作用する上下方向の分力の方向と重なってしまい、亀裂が入り易くなってしまうことが考えられる。
これに対し、本実施形態の場合には、図2(b)に示すように、接合部7のリトリーティングサイドRS側端部(亀裂の起点)における亀裂の入る方向が、その亀裂の起点の位置に作用する上下方向の分力の方向と重ならない(すなわち、本実施形態では、亀裂の起点の位置での亀裂の入る方向は横方向)ので、リトリーティングサイドRSから亀裂が入りにくくなり、せん断引張強さが強くなると考えられる。
次に、図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を上方から見た図である。
そして、ツール3のショルダ部(図示せず)が上側の板材1の表面に接する位置までツール3を押し込み、この状態でツール3を重ね合わせ部6に沿って方向Tに移動させる。これにより、ツール3のネジ部5の周囲の軟化した板材1,2が攪拌及び流動され、その結果、接合部7が形成される。
図7(b)に示すように、本実施形態に係る構造体は、矢印方向に荷重F1,F2が付加されると、重ね合わせ部6に曲げが生じる。そして、接合部7におけるリトリーティングサイドRS側端部から横方向に亀裂が入る。最終的には、残存する酸化層9沿ってS字に亀裂が入って、板材1,2がせん断されることになる。
したがって、せん断引張試験を行った場合には、接合部7のリトリーティングサイドRS側端部(亀裂の起点)における亀裂が入る方向が、その亀裂の起点の位置に作用する上下方向の分力の方向と重ならなくなる。これにより、リトリーティングサイドRSから亀裂が入りにくくなり、せん断引張強さが強くなる。
次に、図8及び図9を用いて、本発明の第3実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を上方から見た図である。図9は、図8のA−A線断面図である。
以上により、図9に示すように、アドバンシングサイドAS1,AS2がリトリーティングサイドRS1,RS2を囲うように溶接線の両端に形成された接合部7が形成される。
図10に示すように、比較例の方法は、ツール3を本実施形態と反対に移動させて、リトリーティングサイドRS1,RS2でアドバンシングサイドAS1,AS2を囲うように形成する。
これに対し、本実施形態に係る構造体は、図9に示すように、接合力が強いアドバンシングサイドAS1,AS2がリトリーティングサイドRS1,RS2の残存する酸化層9を囲むように重ね合わせ部6の外側に形成されているので、板材1,2の界面8から亀裂に入りにくくなり、せん断引張強さが強くなる。
次に、図12を用いて、本発明の第4実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法を説明する。図12は、本発明の第4実施形態に係る重ね摩擦攪拌接合方法により製造された構造体の断面図である。
ここで、本実施形態では、ツール3をネジの巻き方向と同一の方向に回転させているので、板材1,2の界面8付近のリトリーティングサイドRS1,RS2では軟化した板材1,2が下向きに流動し、ツール3の直下付近では軟化した板材1,2が上向きに流動する。つまり、図12の符号9に示すように、本実施形態では、溶接線の両端に酸化層9が残存するが、図11の場合とは反対向きのS字に酸化層9が残存する。
1a 上側の板材の端部
3 ツール
4 ショルダ部
5 ネジ部
6 重ね合わせ部
7 接合部
8 界面
9 酸化層
11,12 (従来)板材
13 (従来)ツール
14 (従来)ショルダ部
15 (従来)ネジ部
16 (従来)重ね合わせ部
17 (従来)接合部
18 (従来)界面
19 (従来)酸化層
t1,t2 板材の板厚
h ネジ部の高さ
C ツールの軸心
F1,F2 板材にかかる荷重
R ツールの回転方向
T ツールの移動方向
AS,AS1,AS2 アドバンシングサイド
RS,RS1,RS2 リトリーティングサイド
Claims (2)
- 一対の板材を重ね合わせ、この重ね合わせ部の一方の板材側表面からネジが形成されたツールを押し当てて前記重ね合わせ部に沿って移動させることにより前記一対の板材を接合する重ね摩擦攪拌接合方法において、
前記ネジの巻き方向と同一の方向に前記ツールを回転させながら前記重ね合わせ部の前記一方の板材側において前記ツールを一方の方向に移動させて、アドバンシングサイド及びリトリーティングサイドを形成し、その後に前記ツールを前記方向と反対方向に移動させて、アドバンシングサイドを囲うようにリトリーティングサイドを溶接線の両端に形成することを特徴とする重ね摩擦攪拌接合方法。 - 請求項1に記載の重ね摩擦攪拌接合方法により、板材を重ね合わせて接合してなることを特徴とする構造体。
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