従来のロータリーベーン式舵取機は、例えば図11〜図13に示すように、ハウジング1と、その内部に収納されるローター2とを有している。ローター2は、下部軸部2aがハウジング1の底部に設けたボス部1aで支持され、上部軸部2bがハウジング1の上部開口に配置した環状のトップカバー3で支持されている。ボス部1aと下部軸部2aとの間にはラジアル軸受4aとスラスト軸受4bとを装入し、トップカバー3と上部軸部2bとの間にはラジアル軸受4cを装入しており、ローター2は、半径方向と軸方向とに荷重のかかった状態で、船体に固定されたハウジング1の内部で回動自在に保持されている。
ローター2は、舵軸(図示省略)を装入する内部貫通孔2cを有し、外周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のベーン2dを突設している。ハウジング1は、内周面の周方向に沿った等間隔の位置に、上記ベーン2dと同数のセグメント1bを突設している。
ローター2の各ベーン2dは、上端面に形成した上部横スリット2e内に、トップカバー3の下面に摺接する上部横シール2fを保持し、下端面に形成した下部横スリット2g内に、ハウジング1の内底面に摺接する下部横シール2hを保持し、半径方向の先端の縁部に形成した縦スリット2i内に、ハウジング1の内周面に摺接する縦シール2jを保持している。また、ハウジング1のセグメント1bは、半径方向の先端の縁部に形成した縦スリット1c内に、ローター2の外周面に摺接する縦シール1dを保持している。尚、上記各シール2f,2h,2j,1dはそれぞれ弾性材料によって形成されている。
ローター2は、ハウジング1内において、上部および下部横シール2f、2hがそれぞれトップカバー3の裏面およびハウジング1の内底面に摺接し、縦シール2iがハウジング1の内周面に摺接し、セグメント1bの縦シール1dがローター2の外周面に摺接する状態で回転し、これにより、ベーン2dとセグメント1bとの間には作動油室5a、5b、5c、5dが形成される。
トップカバー3は、ローター2の上部端面2kに対向する部位に形成した上部リングスリット3a内に、一体構造の環状の上部リングシール3bを保持している。また、ハウジング1は、ローター2の下部端面2lに対向する部位に形成した下部リングスリット1e内に、一体構造の環状の下部リングシール1fを保持している。上部および下部リングシール3b,1fはそれぞれ弾性材料より形成されており、上部リングシール3bのリングシール面3cがローター2の上部端面2kと接触し、下部リングシール1fのリングシール面1gがローター2の下部端面2lと接触して、それぞれシーリング作用を行っている。
上記上部および下部リングシール3b,1fによって、各作動油室5a〜5dの圧油が、ローター2の上部端面2kとトップカバー3との間の微小な間隙およびローター2の下部端面2lとハウシング1の内底面との間の微小な間隙を通って、隣接する作動油室5a〜5dおよび大気に通ずるローター軸部2a,2bへ漏洩(又は漏出)するのを防いでいる。
また、上部リングシール3bのリングシール外周縁部3dがベーン2dの上部横シール2fの内周側上端縁2nとセグメント1bの縦シール1dの内周側上端縁1hとにそれぞれ接触するとともに、下部リングシール1fの外周縁部1iがベーン2dの下部横シール2hの内周側下端縁2oとセグメント1bの縦シール1dの内周側下端縁1jとにそれぞれ接触し、これによって、ベーン2dの上部および下部横シール2f,2hの上下の各内周端縁部2n,2oとセグメント1bの縦シール1dの上下の各内周端縁部1h、1jを通って作動油が高圧側の作動油室(5a,5c又は5b,5d)から隣接する低圧側の作動油室(5b,5d又は5a,5c)に漏洩するのを防いでいる。
尚、ローター2には、上部リングシール3bの位置よりも内側の上部端面2kと下部リングシール1fの位置よりも内側の下部端面2lとを連通するバランス孔2mが設けられている。もし万一、上部および下部リングシール3b、1fから圧油が漏洩した場合、この漏洩油によってローター2の上部端面2kと下部端面2lとに作用する圧力がバランス孔2mを介して上下方向にバランスするようになっている。これにより、軸方向の差圧による不均等な力がローター2に発生するのを防いでいる。
ローター2の回転軸心に対して対極の位置にある作動油室5a,5c同士、および作動油室5b,5d同士はそれぞれ連通しており、例えば、作動油室5aに油圧ポンプから圧油が供給されると、対極の位置にある作動油室5cにも同時に圧油が供給される一方、残りの作動油室5b,5dからは同時に油が排出されて油圧ポンプ側に戻される。これにより、圧油によるローター2の回転が成立する。
各作動油室5a〜5dの油密を確保するために、ベーン2dの上部および下部横シール2f,2hと縦シール2jとセグメント1bの縦シール1dと上部および下部のリングシール3b,1fとは、接触摺動するシール面の反対側の各背面にそれぞれ、高圧側となっている作動油室(5a,5c又は5b,5d)から導いた圧油をかけて、シール面を相手面に押し付けている。
すなわち、図14は横シール2f,2hと縦シール1d,2jとの断面形状を示し、図15はリングシール3b、1fの断面形状を示す。図14,図15に示すように、上記各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bは、いずれも接触摺動する各シール面1g,1k,2p,2q,2r,3cの反対側の背面1m,1n,2s,2t,2u,3eに作動油室5a〜5dから導いた圧油を作用させることによって、各シール面1g,1k,2p,2q,2r,3cを相手側の摺動面に押し付けてシーリング性を与えるものである。
また、上記各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bはそれぞれ背面1m,1n,2s,2t,2u,3e側にスカート部1o,1p,2v,2w,2x,3fを有している。そして、上記圧油は、同時に、各々のスカート部1o,1p,2v,2w,2x,3fにも作用して、スカート部1o,1p,2v,2w,2x,3fを各々のスリット1c,1e,2e,2g,2i,3aの両側面に押し付ける。これにより、圧油が各スリット1c,1e,2e,2g,2i,3aと各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bとの間の間隙を通って低圧側に漏洩するのを防いでいる。
また、上記ベーン2dの上部および下部横シール2f,2hと縦シール2jとの連接部は図16〜図19に示すような構成になっている。尚、各図16〜図19は上部横シール2fと縦シール2jの上側との連接部を示したものであり、下部横シール2hと縦シール2jの下側との連接部はこれと対称に構成されている。横シール2fは、縦シール2jとの連接部において、スカート部2vが欠けており、この欠けた部分に縦シール2jの上端部がはめ込まれる。これにより、上部および下部横シール2f,2hと縦シール2jとをそれぞれスリット2e,2g,2i内に装着した状態において、上部および下部横シール2f,2hの背面2s,2tの空間と縦シール2jの背面2uの空間とが連通し、縦シール2jの背面2uに導かれた作動油が上部および下部横シール2f、2hの背面2s,2tにも作用するようになっている。
而して、上部および下部横シール2f、2hと縦シール2jとのそれぞれの端面と相手面との間を通って高圧作動油が低圧側に漏洩するのを防ぐために、これら各シール2f,2h,2jをそれぞれのスリット2e,2g,2i内に装着するに際して、各シール2f,2h,2jに若干の長手方向の弾性圧縮を与えるようになっており、この弾性圧縮の反発力により、各シール2f,2h,2jの各端面に接触面圧を生じさせるようになっている。さらに、上部および下部横シール2f,2hのスカート部2v,2wの端面と縦シール2jのスカート部2xとの間のそれぞれの接触面を通っての高圧作動油の漏洩を防ぐために、これらの接触面にも各スリット2e,2g,2i内への装着の際に、弾性圧縮による接触面圧を生じさせるようになっている。
また、シール面2r,1kの直線長さが一般に長くなるベーン2dの縦シール2jおよびセグメント1bの縦シール1dについては、作動油室5a〜5dからそれぞれの背面2u,1mに導かれる作動油の圧力が低いか或いはゼロであっても、各シール面2r,1kにシール面圧が与えられるように、図17,図18に示すようにベーン2dの縦シール2jの背面2uと縦スリット2iとの間の空間、および、図21,図22に示すようにセグメント1bの縦シール1dの背面1mと縦スリット1cとの間の空間には、それぞれ下記のような役割をする波板ばね30が自由状態で介在されている。
すなわち、舵を中立状態にして船が直進航行している間、実際には外乱により船の針路がずれるのを矯正するために絶えず舵を小舵角にて作動させているが、この時は発生する油圧が低く、従って、上記縦シール2j,1dの背面2u,1mを押す十分な力を与えられない。上記波板ばね30は、十分な油圧が発生していなくてもシール面2r,1kに必要最小限の面圧を与えるためのものである。
尚、上記縦シール2jの背面2uと縦スリット2iとの間の空間および縦シール1dの背面1mと縦スリット1cとの間の空間はそれぞれ非常に狭いため、これら狭い空間に挿入可能で且つ十分なばね力(押圧力)を縦シール1d,2jに与えるためには、ばね定数の大きな波板ばね30を用いる必要があった。
また、上記従来の上部および下部リングシール1f、3bの構造では、図15に示すように、外周縁部1i,3dに作用する油圧によってリングシール1f,3bが半径方向に押されてリングシール1f,3bの外周側面とスリット1e,3aとの間に漏洩を許すような間隙が生じることに対する積極的な対抗手段を講じていないため、高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から導いた作動油をリングシール1f,3bの背面1n,3eにのみ作用させる代わりに、先ず内周側面に導いて、それをさらに背面1n,3eにも導くようにして、シール面1g,3cにおけるシーリングとともに外周面におけるシーリングも併せて行わせるようにしたものが公開されている(例えば下記特許文献1参照)。
これら、圧油を作動油室5a〜5dから各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bの背面1m,1n,2s,2t,2u,3eに導く手段は次のようなものである。
先ず、各ベーン2dの縦シール2jと上部および下部横シール2f,2hの各背面2s,2t,2uに高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から圧油を導く手段としては、ベーン2dが回転体であるがゆえに、図20に示すように、各ベーン2dに、隣接する両作動油室5a,5d同士および隣接する両作動油室5b,5c同士をそれぞれ連通する油室連通孔2yを設け、それぞれの油室連通孔2yに圧力バルブ6を装着し、そして、ベーン2dには、圧力バルブ6の出口孔6cから縦シール2jの背面2uに通じる作用孔2zを設けるとともに、上部および下部横シール2f,2hの各背面2s,2tがそれぞれ縦シール2jとの連接部を通じて縦シール2jの背面2uに連通している。従って、縦シール2jの背面2uに作用する油圧は同時に上部および下部横シール2f、2hの各背面2s,2tにも作用する。
上記圧力バルブ6は、図20に示すように、バルブ本体6aの両入口6bにそれぞれ弁座6dを螺合し、二つの弁座6dの間に二個のボール弁体6eを遊動せしめ、両ボール弁体6eの間にスプリング6fを介在せしめ、ボール弁体6eが弁座6dから開いた状態で圧力バルブ入口6bに通じるように出口孔6cを設け、バルブ本体6aの一端の外径部にねじ部6gを切り、他端の外径部にOリング6hを設けるように構成されている。上記油室連通孔2yの一端部にタップをたてて、これに上記バルブ本体6aのねじ部6gを螺合することにより、圧力バルブ6を油室連通孔2y内に装着している。
これにより、例えば作動油室5aが高圧側、作動油室5dが低圧側となった場合、高圧側の作動油室5aの油圧が圧力バルブ6の一方のボール弁体6eを開くとともに、他方のボール弁体6eを弁座6dに押し付けて逆止作用を行うことにより、高圧側の作動油室5aが低圧側の作動油室5dに連通するのを防ぎ、そして、高圧側の圧油が作用孔2zを通って縦シール2jの背面2uに作用する。逆に作動油室5dが高圧側、作動油室5aが低圧側となった場合は、逆の動作により、作動油室5dの圧油が縦シール2jの背面2uに作用する。
次に、セグメント1bの縦シール1dについては、背面1mに油圧をかける代わりに、作動油室5a〜5dの高圧油を直接シーリングリップ部に導いてシーリング作用を行わせるようにしたものが公開されている(例えば下記特許文献1参照)。この場合、高圧側となる作動油室から圧力油をセグメント1bの縦シール1dの背面1mに導く手段を講じる必要はない。
しかしながら上記セグメント1bの縦シール1dがベーン2dの縦シール2jと同じ構造である場合は、図21に示すように、高圧側となる作動油室(5a〜5dのいずれか)から上記縦シール1dの背面1mに圧油を導いている。すなわち、上記ローター2のベーン2dの場合と同様に、セグメント1bに、隣接する両作動油室5a,5bおよび隣接する両作動油室5c,5dをそれぞれ連通する油室連通孔を設け、油室連通孔内に圧力バルブ6を装備する。
次に、図11に示すように、上部および下部リングシール3b,1fについては、セグメント1bの縦シール1dの背面1mの上端部から上部リングシール3bの背面3eに通じる油路3gがトップカバー3に穿孔され、また、上記縦シール1dの背面1mの下端部から下部リングシール1fの背面1nに通じる油路1qがハウジング1の底部に穿孔されており、これによって、高圧側となる作動油室5a〜5dからの圧油を上部および下部リングシール3b,1fの各背面3e,1nに作用させている。
尚、下記特許文献1においては、請求項3,4および請求項6,7の場合、セグメントの縦シールには高圧側となる作動油室からの圧油を導入しないため、上部および下部リングシールに高圧側となる作動油室からの圧油を導入する手段として、例えば、同請求項5において、ベーンに設けた圧力バルブの出口を、ローターを上下に貫通するバランス孔に接続し、バランス孔の上下の開口をそれぞれ上部および下部リングシールの内周側面に通じるようにしている。
舵取機を組立てる場合、上記各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bを装着するのに、従来、次の方法がとられている。
すなわち、図11に示すように、ハウジング1の内底部の下部リングスリット1eに下部リングシール1fを装入し、下部横シール2hをベーン2dの下部横スリット2g内に装入し、この状態で、ローター2をハウジング1内に組み付ける。この組立状態において、ベーン2dの縦シール2jを縦スリット2i内に上方から圧入するとともに、縦シール2jの背面2uと縦スリット2iとの間の隙間に上方から波板ばね30を圧入する。その後、ベーン2dの上部横シール2fを上部横スリット2e内に装入する。同様に、セグメント1bについても、縦シール1dを縦スリット1c内に上方から圧入するとともに、縦シール1dの背面1mと縦スリット1cとの間の隙間に上方から波板ばね30を圧入する。そして、上部リングシール3bをトップカバー3の上部リングスリット3a内に装入し、このトップカバー3をハウジング1に組み付ける。
上記のようにして組立てられたロータリーベーン式舵取機の作動油室5a〜5dに作動油を与えるために、図23又は図24に示すいずれかの油圧回路が設けられている。図23に示した油圧回路は制御油圧ポンプ9gを設ける場合である。また、図24に示した油圧回路は制御油圧ポンプ9gを設けない場合である。図23又は図24に示すように、油圧回路には、主要構成要素として、一方向一定吐出量の油圧ポンプ9aと、方向切換弁9bと、方向切換弁9bを制御する電磁弁9cと、パイロット逆止弁9dと、流量調整弁9eと、油タンク9fとが備えられている。
方向切換弁9bは、油圧ポンプ9aからの吐出油の供給先を作動油室5a,5cと作動油室5b,5dとのいずれかに切り換える通路切換を行うとともに、作動油室5a〜5dに作動油を供給しない場合、中立位置に切り換えられて油圧ポンプ9aからの吐出油をそのまま油タンク9fに戻す機能を有している。また、上記パイロット逆止弁9dは、油圧ポンプ9aから作動油室5a,5cあるいは作動油室5b,5dへの作動油の供給を行わない時、作動油を各作動油室5a〜5d内に閉じ込めて、舵を固定するものである。また、上記流量調整弁9eは、パイロット逆止弁9dの作動が衝撃的にならないように流量を調整するものである。
図23に示した油圧回路を用いた場合では、方向切換弁9bを作動させるために必要な制御油圧は、油圧ポンプ9aに同軸に設けた制御油圧ポンプ9gから制御油圧ライン9iを通って供給される。
また、図24に示した油圧回路を用いた場合では、方向切換弁9bを作動させるために必要な制御油圧は、油圧ポンプ9aの吐出油圧を方向切換弁9bの制御油圧として利用している。この場合、舵取機が無負荷あるいは低負荷の状態、或いは、方向切換弁9bが中立位置にあって、油圧ポンプ9aの吐出油が油タンク9fにそのまま戻されている状態であっても、油圧ポンプ9aの吐出油圧が所定の値以上に保たれるように、方向切換弁9bから油タンク9fへの戻り油ライン9Lに圧力調整弁9hを設け、圧力調整弁9hの入口における油圧ラインを、圧力調整弁9hによって一定圧力に規定される規定油圧ライン9jとしている。
また、舵に異常に大きい衝撃荷重が作用した時、その衝撃荷重が舵取機に損傷を与えることを防止するために、図23〜図25に示すように、トップカバー3に、作動油室5a,5cに連通する一方の油路3hと、作動油室5b,5dに連通する他方の油路3iとが貫通して設けられている。トップカバー3の上面には、上記油路3h,3iにそれぞれ連通する流出入孔8a,8bを有する防衝弁ブロック8が取り付けられている。防衝弁ブロック8には、一方の流出入孔8aを流入側として他方の流出入孔8bに流出させる一方の防衝弁8cと、他方の流出入孔8bを流入側として一方の流出入孔8aに流出させる他方の防衝弁8dとが内装されている。
舵に異常に大きい衝撃荷重が作用して、例えば作動油室5a,5cの側の油圧が異常に上昇した場合、油路3hおよび流出入口8aを通って一方の防衝弁8cが作動し、作動油室5a,5c内の油が流出入孔8bおよび油路3iを通って作動油室5b,5dの側に逃げ、衝撃荷重が緩和される。逆に、作動油室5b,5dの側に異常な油圧が発生した場合、同様にして他方の防衝弁8dが開いて、作動油室5b,5d内の油が作動油室5a,5cの側へ逃げる。
特開2003−161371
上記の従来形式では、ベーン2dは運動体であるために、高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から圧油をベーン2dの各シール2f,2h,2jの各背面2s,2t,2uに導く手段として、図19に示すように圧力バルブ6を用いざるを得なかった。しかし、高圧の作動油がボール弁体6eを弁座6dに押し付けて逆止作用を行わせる際、その作用が圧力バルブ6のバルブ本体6aに衝撃を与え、それが繰り返されることによって、圧力バルブ6を油室連通孔2y内に螺合しているねじ部6gに緩みが生じ、遂には圧力バルブ6が油室連通孔2yから作動油室5a〜5d内に脱落して、舵取機が作動不能に陥るという問題があった。また、上記圧力バルブ6の脱落が作動油室5a〜5d内であるため、舵取機を分解して開放してみないと脱落を確認できないという問題があった。
また、高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から圧油を各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bの各背面1m,1n,2s,2u,3eに導入することによって、各シール面1g,1k,2p,2q,2r,3cを相手側の面に押し付けてシーリング性を与えているが、舵取機が無負荷あるいは低負荷である場合、作動油室(5a,5c又は5b,5d)に十分な油圧が発生していないため、各シール面1g,1k,2p,2q,2r,3cに発生する押付力が不足し、十分なシーリング性が得られず、作動油室5a〜5d内の作動油が漏洩し易くなるといった問題がある。従って、舵が命令された所定の角度位置を保つことができず、いわゆるクリーピング現象を生じて舵が流れることになる。すると、追従装置により舵取機は舵が流れた分を修正するように作動する。このようにして、舵を所定の位置に保つために、舵取機は絶えず修正作動を繰り返さねばならず、これは、作動の面からも、磨耗の面からも好ましくなかった。
尚、この問題を軽減するために、シーリングの直線長さが長くて影響を受ける度合いが大きいベーン2dの縦シール2jとセグメント1bの縦シール1dに対して、各縦シール2j,1dの各背面1m,2uとスリット1c,2iとの間の空間にそれぞれ波板ばね30を装入して、作動油室5a〜5dに十分な油圧が発生していなくても、上記波板ばね30の反発力によって各シール面1k,2rに初期面圧を与えられるようにしている。
しかしながら、各縦シール1d,2jのシール面1k,2rが磨耗した場合、各縦シール2j,1dの各背面1m,2uとスリット1c,2iとの間の間隔が増大し、波板ばね30のばね力(押圧力)が低下する。特に、波板ばね30にはばね定数の大きいものを用いているため、上記間隔の増大に対する波板ばね30のばね力の低下の度合が大きい。したがって、各縦シール1d,2jのシール面1k,2rの磨耗の進行とともに波板ばね30のばね力が急激に低下し、シール面1k,2rを相手面に押し付ける押圧力が不足し、作動油室(5a,5c又は5b,5d)に十分な油圧が発生していない時の、波板ばね30による各縦シール1d,2jのシーリング効果が小さくなってしまうという問題がある。これにより、作動油室間の作動油の漏洩量が多くなり、舵取機は舵角の修正作動を頻繁に繰り返さなければならなくなる。
また、各縦シール2j,1dの各背面1m,2uとスリット1c,2iとの間の空間にそれぞれ波板ばね30を挿入した際、波板ばね30を上記空間内で固定することは困難であり、波板ばね30は、自由状態で装着され、ばね力によって位置を保持している。したがって、各縦シール1d,2jのシール面1k,2rが磨耗した場合、ばね力による位置保持が弱まり、波板ばね30の位置が変動して各シール面1k,2rの接触が不均等になり、シーリング性能のばらつきや各シール面1k,2rの偏磨耗をもたらすといった問題があった。
また、ベーン2dの縦シール2jと上部および下部横シール2f,2h、セグメント1bの縦シール1d、および上下部リングシール3b,1fはそれぞれ、樹脂ゴム材料で作られているため、作動油中に含まれている添加剤により化学的に組成変化を起こして脆化し、破損する場合がある。この場合、上記各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bが破損したことを外部から迅速且つ確実に察知することは困難であるといった問題があった。
本発明は、シールが磨耗した場合であっても、常時、シール面に必要最低限の押圧力を与えて安定したシーリング効果を維持することができ、また、シールが破損した場合、シールの破損を外部から迅速且つ確実に察知することが可能なロータリーベーン式舵取機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明は、舵軸に嵌合装着するローターと、ローターを収納してローターの周囲に油室用空間を形成するハウジングと、ハウジングの上部開口に配置する環状のトップカバーとを有し、
ローターの外周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のベーンを配置し、
ハウジングの内周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のセグメントを配置し、
ベーンとセグメントによって上記油室用空間を複数の作動油室に区画し、
上記複数の作動油室は、供給された圧油によってローターを左右一方向へ回転させる第1グループの作動油室と左右他方向へ回転させる第2グループの作動油室との2つのグループから成り、
ローターの各ベーンに、トップカバーの裏面およびハウジングの内周面と内底面にそれぞれ対向するように、その半径方向先端縁部と上下両端面とに縦および横スリットを形成し、
縦スリットに、ハウジングの内周面に摺接する縦シールを挿入し、
上部横スリットに、トップカバーの裏面に摺接する上部横シールを挿入し、
下部横スリットに、ハウジングの内底面に摺接する下部横シールを挿入し、
上記各シールを弾性材料で形成し、
縦シールの背面を上部および下部横シールの背面に連通し、
摺動面に接触面圧を与えるように縦シールの背面に圧油を作用させ、
第1グループの作動油室に連通する一方の流出入孔と、第2グループの作動油室に連通する他方の流出入孔と、一方の流出入孔から流入した圧油を他方の流出入孔へ流出する一方の防衝弁と、他方の流出入孔から流入した圧油を一方の流出入孔へ流出する他方の防衝弁とを備えた防衝弁ブロックが配置されたロータリーベーン式舵取機であって、
トップカバーは、ローターの上部端面に対向する部位に形成された上部リングスリット内に、環状の上部リングシールを保持し、
ハウジングは、ローターの下部端面に対向する部位に形成された下部リングスリット内に、環状の下部リングシールを保持し、
ローターに、上部リングシールよりも径方向内側の上部端面と下部リングシールよりも径方向内側の下部端面とに連通するバランス孔が形成され、
上記一方の流出入孔から分岐した一方の分岐油路に一方の逆止弁の入口が接続され、
他方の流出入孔から分岐した他方の分岐油路に他方の逆止弁の入口が接続され、
両逆止弁の出口を連通する連通油路が防衝弁ブロックに設けられ、
上記防衝弁ブロックの連通油路とローターの上部端面に設けた円環状の上部リング溝とを連通する給油通路が防衝弁ブロックとトップカバーとにわたり設けられ、
上部リング溝とベーンの縦スリットの底面とを連通するシーリング油孔がローターからベーンを通って設けられ、
上記上部リング溝は、上記上部リングシールの内周側面と背面とに連通するとともに、上記バランス孔を介して、上記下部リングシールの内周側面と背面とに連通し、
作動油室に作動油を供給する油圧回路に、作動油供給先を第1グループの作動油室と第2グループの作動油室とのいずれかに切り換える方向切換弁と、この方向切換弁の切り換えを制御する制御油圧を制御油圧ラインから方向切換弁へ供給する制御油圧ポンプとが設けられ、
上記防衝弁ブロックに、パイロット油流入口と、パイロット油逆止弁と、パイロット油流入口とパイロット油逆止弁の入口側とに連通するパイロット油路と、パイロット油逆止弁の出口側と連通油路とに連通するパイロット油連通油路とが設けられ、
上記防衝弁ブロックのパイロット油流入口を上記制御油圧ラインに連通し、
上記制御油圧ラインに圧力検知装置を設けたものである。
これによると、舵に異常に大きな衝撃荷重が作用して、例えば第1グループの作動油室の油圧が異常に上昇した場合、第1グループの作動油室の圧油が一方の流出入孔から流入し、一方の防衝弁が作動して上記圧油を他方の流出入孔へ流出する。これにより、上記圧油は他方の流出入孔から排出されて第2グループの作動油室へ逃げるため、衝撃荷重が緩和される。尚、第2グループの作動油室の油圧が異常に上昇した場合も同様に、第2グループの作動油室の圧油が第1グループの作動油室へ逃げるため、衝撃荷重が緩和される。
また、一方の逆止弁の入口は一方の分岐油路を介して第1グループの作動油室と常時連通し、他方の逆止弁の入口は他方の分岐油路を介して第2グループの作動油室と常時連通している。例えば第1グループの作動油室の油圧が第2グループの作動油室の油圧よりも高圧である場合、第1グループの作動油室の圧油は、一方の逆止弁を開いて連通油路に通じ、他方の逆止弁によって低圧側である第2グループの作動油室に流入することを阻止されて、連通油路から給油通路を経て上部リング溝に供給され、上部リング溝からシーリング油孔を通って縦スリットの底面へ導入され、さらに、縦シールの背面を上部および下部横シールの背面に連通しているため、縦シールの背面側から上部および下部横シールの背面側にも導入されるとともに、さらに、上記上部リング溝から上部および下部リングシールの内周側面と背面にも導入される。
これにより、圧力の高い圧油が縦シールの背面と上部および下部横シールの背面とに作用し、縦シールと上部および下部横シールとによって確実なシーリング作用が発揮される。また、同時に、上記圧力の高い圧油が上部および下部リングシールを外周方向に押すとともに上下の相手摺動面を押すため、確実なシーリング作用が発揮される。
尚、反対に、第2グループの作動油室の油圧が第1グループの作動油室の油圧よりも高圧である場合は、同様に、第2グループの作動油室の圧油が縦スリットの底面および上下部リングシールへ導入される。
また、縦シールと上部および下部横シールと上下部リングシールとにシーリング作用を行わせるために必要とされる圧油は全て一元的に防衝弁ブロックを介して高圧側の作動油室から供給されることになり、したがって、従来のような脱落の可能性がある圧力バルブをベーンに設ける必要は無く、圧力バルブの脱落の問題が解消され、さらに、圧油を導く手段を一元化して簡素化することができる。
また、第1および第2のグループの各作動油室に、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生しておらず、この油圧が制御油圧ラインの油圧よりも低いときは、制御油圧ラインからパイロット油流入口を経てパイロット油路に供給されている油圧が、パイロット油逆止弁を押し開き、パイロット油連通油路を通って連通油路へ供給され、連通油路から給油通路を経て上部リング溝に供給され、上部リング溝からシーリング油孔を通って縦スリットの底面へ導入され、また、縦シールの背面側から上部および下部横シールの背面側にも導入され、さらに、上下部リングシールの内周側面と背面とにも導入され、ベーンの縦シールと上部および下部横シールと上下部リングシールとにシーリング作用を行わせるとともに、一方および他方の逆止弁に逆止作用を与えて、上記油圧が各作動油室に漏洩するのを防ぐ。
また、各作動油室に発生する油圧が制御油圧ラインの油圧よりも高くなれば、作動油室の油圧が縦スリットの底面へ導入され、縦シールと上部および下部横シールとにシーリング作用を行わせるとともに、上下部リングシールにシーリング作用を行わせる。
従って、舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室に発生していないときや或いはシールが磨耗したときでも、最低限、上記制御油圧ラインの油圧がベーンの縦シールと上部および下部横シールと上下部リングシールとに作用することになるため、常時、必要最低限の一定値以上の油圧によってシーリング作用が行われることになり、いかなる状態であっても安定したシーリング作用を維持することができる。従って、船の航行中のほとんどの期間を占める小舵角での舵の作動の間、すなわち、舵取機が低負荷あるいは無負荷状態での作動の間でも、或いはシールが磨耗したときでも、舵取機のシーリング性能が安定して維持されることになり、シーリング性能の低下に起因する舵取機のクリーピングが防止され、それによる舵取機の作動頻度の増加が避けられる。
さらに、上記のように、シーリングのために必要な油圧が作動油室に発生せず、制御油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、制御油圧ラインの油圧が低下する。このような制御油圧ラインの油圧の低下が圧力検知装置によって検知されるため、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損を外部から迅速且つ確実に察知することができる。
また、従来のように、上記縦シールの背面に波板ばねを圧入する必要がなくなり、波板ばね使用に伴う従来の諸問題が解消され、シーリング機能の低下や劣化が避けられるとともに、シーリング性能の均一化や縦シールのシール面の偏磨耗防止が可能となり、上記縦シールが磨耗した場合であっても、シール面に必要最低限の押圧力を与えて安定したシーリング効果を維持することができる。
本第2発明は、圧力検知装置は圧力検知弁であり、
上記圧力検知弁は、制御油圧ラインの油圧が規定値より低下した場合、制御油圧ラインからパイロット油流入口への作動油の供給を遮断するものである。
これによると、制御油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側に又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、制御油圧ラインの油圧が規定値より低下する。この油圧の低下を圧力検知弁が検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を閉鎖し、これにより、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みが遮断される。このようにして制御油圧ラインからパイロット油流入口への作動油の供給が遮断されると、制御油圧ラインの油圧が上昇し、制御油圧ラインの油圧が規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁が検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を開通させ、これにより、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みが再開される。
この際、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損状態が変わっていなければ、再び制御油圧ラインの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁が、油圧の低下を検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を閉鎖し、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みを遮断する。そして、制御油圧ラインの油圧が上昇し、制御油圧ラインの油圧が規定値に復元すると、圧力検知弁が制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を開通させる。このように圧力検知弁が開閉動作を繰り返すようになることで、縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損したことを外部から迅速且つ確実に察知することができる。
さらに、圧力検知弁の開閉動作のサイクルは、各シールの破損の程度が大きければ短くなり、各シールの破損の程度が小さければ長くなり、これによって、各シールの破損の程度の大小を察知することができる。
本第3発明は、制御油圧ラインの圧力検知弁の入口側に連通する流路に圧力スイッチを設け、
圧力スイッチは、制御油圧ラインの油圧が規定値より低下した場合、電気信号を発し、この電気信号に基いて警報装置を作動させるものである。
これによると、制御油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側に又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、制御油圧ラインの油圧が規定値より低下する。この油圧の低下を圧力検知弁が検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を閉鎖し、これにより、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みが遮断されると同時に、圧力スイッチが電気信号を発し、この電気信号に基いて警報装置が作動する。
このようにして制御油圧ラインからパイロット油流入口への作動油の供給が遮断されると、制御油圧ラインの油圧が上昇し、制御油圧ラインの油圧が規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁が検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を開通させると同時に、圧力スイッチからの電気信号が停止する。これにより、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みが再開されるとともに、警報装置が停止する。
この際、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損状態が変わっていなければ、再び制御油圧ラインの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁が、油圧の低下を検知して制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を閉鎖し、制御油圧ラインから上記各シールの背面側への油圧の送り込みを遮断すると同時に、圧力スイッチにより警報装置が作動する。そして、制御油圧ラインの油圧が上昇し、制御油圧ラインの油圧が規定値に復元すると、圧力検知弁が制御油圧ラインからパイロット油流入口へ至る流路を開通させると同時に、警報装置が停止する。このように圧力検知弁が開閉動作を繰り返すとともに警報装置が作動と停止を繰り返すようになることで、縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損したことを外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。さらに、警報装置の作動と停止とのサイクルの長短により、各シールの破損の程度を外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。
本第4発明は、舵軸に嵌合装着するローターと、ローターを収納してローターの周囲に油室用空間を形成するハウジングと、ハウジングの上部開口に配置する環状のトップカバーとを有し、
ローターの外周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のベーンを配置し、
ハウジングの内周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のセグメントを配置し、
ベーンとセグメントによって上記油室用空間を複数の作動油室に区画し、
上記複数の作動油室は、供給された圧油によってローターを左右一方向へ回転させる第1グループの作動油室と左右他方向へ回転させる第2グループの作動油室との2つのグループから成り、
ローターの各ベーンに、トップカバーの裏面およびハウジングの内周面と内底面にそれぞれ対向するように、その半径方向先端縁部と上下両端面とに縦および横スリットを形成し、
縦スリットに、ハウジングの内周面に摺接する縦シールを挿入し、
上部横スリットに、トップカバーの裏面に摺接する上部横シールを挿入し、
下部横スリットに、ハウジングの内底面に摺接する下部横シールを挿入し、
上記各シールを弾性材料で形成し、
縦シールの背面を上部および下部横シールの背面に連通し、
摺動面に接触面圧を与えるように縦シールの背面に圧油を作用させ、
第1グループの作動油室に連通する一方の流出入孔と、第2グループの作動油室に連通する他方の流出入孔と、一方の流出入孔から流入した圧油を他方の流出入孔へ流出する一方の防衝弁と、他方の流出入孔から流入した圧油を一方の流出入孔へ流出する他方の防衝弁とを備えた防衝弁ブロックが配置されたロータリーベーン式舵取機であって、
トップカバーは、ローターの上部端面に対向する部位に形成された上部リングスリット内に、環状の上部リングシールを保持し、
ハウジングは、ローターの下部端面に対向する部位に形成された下部リングスリット内に、環状の下部リングシールを保持し、
ローターに、上部リングシールよりも径方向内側の上部端面と下部リングシールよりも径方向内側の下部端面とに連通するバランス孔が形成され、
上記一方の流出入孔から分岐した一方の分岐油路に一方の逆止弁の入口が接続され、
他方の流出入孔から分岐した他方の分岐油路に他方の逆止弁の入口が接続され、
両逆止弁の出口を連通する連通油路が防衝弁ブロックに設けられ、
上記防衝弁ブロックの連通油路とローターの上部端面に設けた円環状の上部リング溝とを連通する給油通路が防衝弁ブロックとトップカバーとにわたり設けられ、
上部リング溝とベーンの縦スリットの底面とを連通するシーリング油孔がローターからベーンを通って設けられ、
上記上部リング溝は、上記上部リングシールの内周側面と背面とに連通するとともに、上記バランス孔を介して、上記下部リングシールの内周側面と背面とに連通し、
作動油室に作動油を供給する油圧回路に、油圧ポンプから吐出された作動油の供給先を第1グループの作動油室と第2グループの作動油室とのいずれかに切り換える方向切換弁と、この方向切換弁から油タンクへの戻り油ラインとが設けられ、
上記方向切換弁の切り換えを制御する制御油圧を上記油圧ポンプの吐出口側から方向切換弁へ供給するように構成し、
上記戻り油ラインに圧力調整弁を設けて、上記方向切換弁と圧力調整弁との間のラインが一定の油圧以上に規定される規定油圧ラインとして形成され、
防衝弁ブロックに、パイロット油流入口と、パイロット油逆止弁と、パイロット油流入口とパイロット油逆止弁の入口側とに連通するパイロット油路と、パイロット油逆止弁の出口側と連通油路とに連通するパイロット油連通油路とが設けられ、
上記規定油圧ラインから分岐した分岐油圧ラインが上記防衝弁ブロックのパイロット油流入口に連通し、
上記分岐油圧ラインに圧力検知装置を設けたものである。
これによると、第1および第2のグループの各作動油室に、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生しておらず、この油圧が規定油圧ラインの油圧よりも低いときは、規定油圧ラインから分岐油圧ラインとパイロット油流入口とを経てパイロット油路に供給されている油圧が、パイロット油逆止弁を押し開き、パイロット油連通油路を通って連通油路へ供給され、連通油路から給油通路を経て上部リング溝に供給され、上部リング溝からシーリング油孔を通って縦スリットの底面へ導入され、さらに、縦シールの背面側から上部および下部横シールの背面側にも導入され、ベーンの縦シールと上部および下部横シールとにシーリング作用を行わせ、また、上部リング溝およびバランス孔を通って上下部リングシールにシーリング作用を行わせるとともに、一方および他方の逆止弁に逆止作用を与えて、上記油圧が各作動油室に漏洩するのを防ぐ。
また、各作動油室に発生する油圧が規定油圧ラインの油圧よりも高くなれば、作動油室の油圧が、上記第1発明と同様にして縦スリットの底面へ導入され、縦シールと上部および下部横シールと上下部リングシールとにシーリング作用を行わせる。
従って、舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室に発生していないときでも、最低限、上記規定油圧ラインの油圧がベーンの縦シールと上部および下部横シールと上下部リングシールとに作用することになるため、常時、必要最低限の一定値以上の油圧によってシーリング作用が行われることになり、いかなる状態であっても確実なシーリング作用が行われることになる。
これにより、船の航行中のほとんどの期間を占める小舵角での舵の作動の間、シーリング性能の低下に起因するクリーピングが防止され、舵取機の作動頻度の増加が避けられるため、舵の作動が安定するばかりでなく、舵取機の摩耗が減少する。
さらに、上記のように、シーリングのために必要な油圧が作動油室に発生せず、規定油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が低下する。このような分岐油圧ラインの油圧の低下が圧力検知装置によって検知されるため、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損を外部から迅速且つ確実に察知することができる。
また、従来のように、上記縦シールの背面に波板ばねを圧入する必要がなくなり、波板ばね使用に伴う従来の諸問題が解消され、シーリング機能の低下や劣化が避けられるとともに、シーリング性能の均一化や縦シールのシール面の偏磨耗防止が可能となり、上記縦シールが磨耗した場合であっても、シール面に必要最低限の押圧力を与えて安定したシーリング効果を維持することができる。
本第5発明は、圧力検知装置は圧力検知弁であり、
上記圧力検知弁は、分岐油圧ラインの油圧が規定値より低下した場合、分岐油圧ラインを遮断するものである。
これによると、規定油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側に又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が規定値より低下する。この油圧の低下を圧力検知弁が検知して分岐油圧ラインを閉鎖し、これにより、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みが遮断される。このようにして分岐油圧ラインが遮断されると、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が上昇して規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁が検知して分岐油圧ラインを開通させ、これにより、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みが再開される。
この際、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損状態が変わっていなければ、再び規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁が、油圧の低下を検知して分岐油圧ラインを閉鎖し、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みを遮断する。そして、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が上昇して規定値に復元すると、圧力検知弁が分岐油圧ラインを開通させる。このように圧力検知弁が開閉動作を繰り返すようになることで、縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損したことを外部から迅速且つ確実に察知することができる。
さらに、圧力検知弁の開閉動作のサイクルは、各シールの破損の程度が大きければ短くなり、各シールの破損の程度が小さければ長くなり、これによって、各シールの破損の程度の大小を察知することができる。
本第6発明は、分岐油圧ラインの圧力検知弁の入口側に連通する流路に圧力スイッチを設け、
圧力スイッチは、分岐油圧ラインの油圧が規定値より低下した場合、電気信号を発し、この電気信号に基いて警報装置を作動させるものである。
これによると、規定油圧ラインの油圧が縦シールの背面側と上部および下部横シールの背面側と上下部リングシールとに送り込まれている時に、万一、上記縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損した場合、縦シールの背面側又は横シールの背面側に又は上下部リングシールの内周側面と背面とに作用していた油圧が漏洩し、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が規定値より低下する。この油圧の低下を圧力検知弁が検知して分岐油圧ラインを閉鎖し、これにより、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みが遮断されると同時に、圧力スイッチが電気信号を発し、この電気信号に基いて警報装置が作動する。
このようにして分岐油圧ラインが遮断されると、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が上昇して規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁が検知して分岐油圧ラインを開通させると同時に、圧力スイッチからの電気信号が停止する。これにより、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みが再開されるとともに、警報装置が停止する。
この際、縦シール又は横シール又は上下部リングシールの破損状態が変わっていなければ、再び規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁が、油圧の低下を検知して分岐油圧ラインを閉鎖し、規定油圧ラインから分岐油圧ラインを経て上記各シールの背面側への油圧の送り込みを遮断すると同時に、圧力スイッチにより警報装置が作動する。そして、規定油圧ラインと分岐油圧ラインとの油圧が上昇して規定値に復元すると、圧力検知弁が分岐油圧ラインを開通させると同時に、警報装置が停止する。このように圧力検知弁が開閉動作を繰り返すとともに警報装置が作動と停止を繰り返すようになることで、縦シール又は横シール又は上下部リングシールが破損したことを外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。さらに、警報装置の作動と停止とのサイクルの長短により、各シールの破損の程度を外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
尚、先に図11〜図25において説明した従来のものと基本的に同様の作用を行う部材については、同一番号を付して説明を省略する。
複数の作動油室5a〜5dは、対極に配置されてローター2を左右一方向へ回転させる第1グループの作動油室5a,5cと、対極に配置されてローター2を左右他方向へ回転させる第2グループの作動油室5b,5dとの2つのグループから成る。また、ベーン2dの縦シール2jの上下両端部において、縦シール2jの背面2uは上部および下部横シール2f,2hの背面2s,2tにそれぞれ連通している。
先ず、回転体であるローター2のベーン2dの各シール2f,2h,2jに対して背面2s,2t,2uに圧油を導く手段について説明する。
図1に示すようにトップカバー3の上面に防衝弁ブロック10が設けられ、図2〜図4に示すように、この防衝弁ブロック10には一方の流出入孔10aと他方の流出入孔10bとが形成され、一方の流出入孔10aはトップカバー3に形成された一方の油路3hに連通しており、他方の流出入孔10bはトップカバー3に形成された他方の油路3iに連通している。尚、上記一方の油路3hは第1グループの作動油室5a,5cに連通し、他方の油路3iは第2グループの作動油室5b,5dに連通している。
また、防衝弁ブロック10内には防衝弁8c,8dが装着され、これら防衝弁8c,8dは図25に示した従来のものと同じ構成を有している。
上記一方の流出入孔10aは一方の防衝弁8cの流入側および他方の防衝弁8dの流出側に連通し、他方の流出入孔10bは他方の防衝弁8dの流入側および一方の防衝弁8cの流出側に連通する。
これにより、舵に異常に大きい衝撃荷重が作用して、例えば作動油室5a,5cに異常に高い油圧が発生すれば、その油圧は、作動油室5a,5cから一方の油路3hと一方の流出入孔10aとを通って一方の防衝弁8cを作動せしめ、一方の防衝弁8cから他方の流出入孔10bへ流出し、他方の油路3iを通って、低圧側である作動油室5b,5dに逃げる。これにより、舵取機にかかる衝撃荷重が緩和される。逆に、作動油室5b,5dの側に異常に高い油圧が発生すれば、その油圧は、作動油室5b,5dから他方の油路3iと他方の流出入孔10bとを通って他方の防衝弁8dを作動せしめ、他方の防衝弁8dから一方の流出入孔10aへ流出し、一方の油路3hを通って、低圧側である作動油室5a,5cに逃げる。これにより、舵取機にかかる衝撃荷重が緩和される。
また、上記防衝弁ブロック10の一方の流出入孔10aに一方の分岐油路10cを設け、この分岐油路10cの終端部から立上油路10eを設けて、その端部に一方の逆止弁10gの入口を接続している。また、他方の流出入孔10bに他方の分岐油路10dを設け、この分岐油路10dの終端部から立上油路10fを設けて、その端部に他方の逆止弁10hの入口を接続している。また、防衝弁ブロック10内において、一方の逆止弁10gの出口と他方の逆止弁10hの出口とを連通油路10iで連通し、さらに、上記連通油路10iと防衝弁ブロック10の下面に形成された圧油抽出口10kとをブロック側給油通路10jで連通している。
図1,図5に示すように、ローター2の上部端面2kに円環状の上部リング溝11aを設け、この上部リング溝11aと防衝弁ブロック10の圧油抽出口10kとを連通するように、トップカバー3にカバー側給油通路12aを穿孔する。これにより、上記連通油路10iと上部リング溝11aとはブロック側およびカバー側給油通路10j,12aと圧油抽出口10kとを介して連通している。また、上記上部リング溝11aは、ローター2のバランス孔2mの上端部に連通するとともに、トップカバー3に設けられた上部リングスリット3aの内周側端縁部にも連通する。
また、図1,図6に示すように、ローター2の下部端面21に円環状の下部リング溝11cを設け、この下部リング溝11cは、ローター2のバランス孔2mの下端部に連通するとともに、ハウジング1の内底面に設けられた下部リングスリット1eの内周側端縁部にも連通する。
また、図1,図7に示すように、ローター2とベーン2dとにはシーリング油孔11bが形成されている。上記シーリング油孔11bの上端開口は上記上部リング溝11aに連通し、下端開口はベーン2dの縦スリット2iの底面に連通している。
さらに、図2〜図4に示すように、上記防衝弁ブロック10には、パイロット油導入手段が設けられている。
上記パイロット油導入手段は、パイロット油流入口13aとパイロット油逆止弁13bとパイロット油路13cとパイロット油連通油路13dとで構成されている。すなわち、上記パイロット油流入口13aは防衝弁ブロック13の一方の側面に設けられ、パイロット油逆止弁13bは防衝弁ブロック13の他方の側面に設けられている。上記パイロット油路13cはパイロット油流入口13aからパイロット油逆止弁13bの入口(流入)側に至るように設けられている。上記パイロット油連通油路13dはパイロット油逆止弁13bの出口(流出)側と上記連通油路10iの他端部とに連通して設けられている。
また、図8に示すように、各作動油室5a〜5dへ作動油を供給する油圧回路には、油圧ポンプ9aから吐出された作動油の供給先を第1グループの作動油室5a,5cと第2グループの作動油室5b,5dとのいずれかに切り換える方向切換弁9bと、この方向切換弁9bの切り換えを制御する制御油圧を制御油圧ライン9iから方向切換弁9bへ供給する制御油圧ポンプ9gとが設けられている。上記防衝弁ブロック10のパイロット油流入口13aは、制御油圧ポンプ9gから方向切換弁9bに至る上記制御油圧ライン9iに連通されている。尚、上記制御油圧ライン9iの油圧は最低限必要な所定の規定値(又は規定値以上)に設定されている。
図8および図3,図4に示すように、上記制御油圧ライン9iには圧力検知弁21(圧力検知装置の一例)が設けられている。圧力検知弁21は、内部パイロット方式であり、制御油圧ライン9iの油圧が上記規定値より低下した場合、閉動して制御油圧ライン9iを遮断し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値以上の場合、開動して制御油圧ライン9iを開通させる。
以下、上記した構成における作用を説明する。
図2〜図4に示すように、防衝弁ブロック10の一方の逆止弁10gは一方の分岐油路10cと立上油路10eとを介して第1グループの両作動油室5a,5cと常時連通し、また、他方の逆止弁10hは他方の分岐油路10dと立上油路10fとを介して第2グループの両作動油室5b,5dと常時連通している。
(A)例えば、第1グループの作動油室5a,5cの油圧が、第2グループの作動油室5b,5dの油圧よりも高く、かつ、制御油圧ライン9iの油圧よりも高い場合、上記作動油室5a,5cの油圧は、一方の逆止弁10gを押し開くとともに、他方の逆止弁10hに逆止作用を与えて、この油圧が低圧側の作動油室5b、5dに漏洩するのを防ぎ、また、連通油路10iの他端部からパイロット油連通油路13dを通ってパイロット油逆止弁13bに逆止作用を与え、この油圧が制御油圧ライン9iに漏洩するのを防ぐ。
そして、作動油室5a,5cから一方の逆止弁10gを出た圧油は、連通油路10iに通じ、ブロック側給油通路10jから圧油抽出口10kに至り、図1,図5に示すように、上記圧油抽出口10kを経てトップカバー3のカバー側給油通路12aを通り、ローター2の上部リング溝11aに供給され、図1,図7に示すように、上部リング溝11aからシーリング油孔11bを通って各ベーン2dの縦スリット2iの底面へ導入され、縦シール2jの背面2uに作用する。
さらに、上記縦シール2jの背面2uは上部および下部横シール2f,2hの背面2s,2tにそれぞれ連通しているため、縦シール背面2uに導入された圧油は、上部および下部横シール2f,2hの背面2s,2tにも導入されて作用し、縦シール2jと上部および下部横シール2f,2hとの各シール面2r,2p,2qにシーリング作用を行わせる。これにより、上記縦シール2jと上部および下部横シール2f,2hとによって確実なシーリング作用が発揮される。
(B)また、反対に、第2グループの作動油室5b,5dの油圧が、第1グループの作動油室5a,5cの油圧よりも高く、かつ制御油圧ライン9iの油圧よりも高い場合、上記第2グループの作動油室5b,5dの油圧は、他方の逆止弁10hを押し開いて、同様に、各シール2j,2f,2hに連通してそれぞれシーリング作用を行わせるとともに、一方の逆止弁10gとパイロット油逆止弁13bとに逆止作用を与えて、この油圧が、低圧側の作動油室5a,5cに漏洩するのを防ぐとともに、制御油圧ライン9iに漏洩するのを防ぐ。
また、図5に示すように、上部リング溝11aは上部リングスリット3aの内周側端縁部に連通しているため、上部リング溝11a内の圧油は、上部リングシール3bの内周側側面に作用して、上部リングシール3bを外周方向に押す。これにより、上記(A)又は(B)のいずれの場合においても、高圧の作動油室(5a,5c又は5b,5d)内の作動油が上部リングシール3bの外周側面から漏洩するのを確実に防ぐことができる。同時に、上記圧油は上部リングシール3bの背面3eにも作用して、そのシール面3cをローター2の上部端面2kに押し付けるため、高圧の作動油室(5a,5c又は5b,5d)内の作動油が上部リングシール3bのシール面3cから漏洩するのを確実に防ぐことができる。
さらに、上記圧油は、図6に示すように、ローター2の上部リング溝11aからバランス孔2mを通って下部リング溝11cに供給され、下部リング溝11cから下部リングスリット1eの内周側端縁部に連通するため、上記上部リングシール3bと同様に、高圧の作動油室(5a,5c又は5b,5d)内の作動油が下部リングシール1fの外周側面とシール面1gとから漏洩するのを確実に防ぐことができる。
尚、セグメント1bの縦シール1dがベーン2dの縦シール2jと同じ構成のものである場合は、図5の仮想線で示すように、トップカバー3の裏面において、上部リングスリット3aの底面と各セグメント1bの縦シール1dの上端とを連通するように油孔3jを穿孔することによって、防衝弁ブロック10を介して高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から抽出された圧油は、セグメント1bの縦シール1dの背面1mにも作用するため、縦シール1dのシール面1kにシーリング作用を行わせる。
以上のように、各シール1d,1f,2f,2h,2j,3bのシーリング作用を行わせるために必要とされる圧油は、全て一元的に防衝弁ブロック10を介して高圧側となる作動油室(5a,5c又は5b,5d)から抽出されて供給されることになり、したがって、図19,図20に示した従来のベーン2dやセグメント1bに横断して設ける必要があった圧力バルブ6を無くすことができ、圧力バルブ6の脱落の問題が解消される。また、シーリング作用を行わせるために必要とされる圧油を導く手段が一元化されるため簡素化される。
(C)また、各作動油室5a、5b、5c、5dに、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生しておらず、この油圧が上記制御油圧ライン9iの油圧よりも低いときは、制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aを経てパイロット油路13cに供給されている油圧が、パイロット油逆止弁13bを押し開き、パイロット油連通油路13dを通って連通油路10iへ供給され、上記と同様にしてブロック側およびカバー側給油通路10j,12aから各シール2j,2f,2h,3b,1fに連通してそれぞれシーリング作用を行わせるとともに、両逆止弁10g,10hに逆止作用を与えて、この油圧が各作動油室5a,5b,5c,5dに漏洩するのを防ぐ。さらに、セグメント1bの縦シール1dがベーン2dの縦シール2jと同じ構成のものである場合は、図5の仮想線で示した油孔3jを穿孔することにより、縦シール1dにもシーリング作用を行わせることができる。
従って、舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室5a,5b,5c,5dに発生していないときでも、最低限、上記制御油圧ライン9iの油圧が各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用することになるため、常時、必要最低限の規定値の油圧によってシーリング作用が行われることになり、いかなる状態であっても確実なシーリング作用が行われることになる。従って、船の航行中のほとんどの期間を占める小舵角での舵の作動の間、すなわち、舵取機が低負荷あるいは無負荷状態での作動の間でも、舵取機のシーリング性能が確実に保たれることになり、シーリング性能の低下に起因する舵取機のクリーピングが防止され、それによる舵取機の作動頻度の増加が避けられる。従って、舵の作動が安定するばかりでなく、舵取機の磨耗も減少する。
さらに、従来のように、ベーン2dの縦シール2jの背面2uおよびセグメント1bの縦シール1dの背面1mにそれぞれ波板ばね30を圧入する必要がなくなり、波板ばね30の使用に伴う従来の諸問題が解消され、シーリング性能の均一化や各シール面1k,2rの偏磨耗防止が可能となり、さらに、上記ベーン2dの縦シール2jやセグメント1bの縦シール1dが磨耗した場合であっても、各シール面1k,2rに必要最低限の押圧力を与えて安定したシーリング効果を維持することができる。
また、上記(C)のように舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室5a,5b,5c,5dに発生しておらず、制御油圧ライン9iの油圧を各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用させてシーリング作用を行っている時に、万一、上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損した場合、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側に作用していた油圧が漏洩し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下する。
図8に示すように、この油圧の低下を圧力検知弁21が検知し閉動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を閉鎖し、これにより、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが遮断される。このようにして制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路が遮断されると、制御油圧ライン9iの油圧が制御油圧ポンプ9gと圧力検知弁21との間で上昇し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁21が検知し開動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を開通させ、これにより、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが再開される。
この際、破損したシールの破損状態が変わっていなければ、再び制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁21が、油圧の低下を検知し閉動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を閉鎖し、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みを遮断する。そして、制御油圧ライン9iの油圧が上昇し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元すると、圧力検知弁21が開動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を開通させる。このように圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すようになることで、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことを外部から迅速且つ確実に察知することができる。
尚、破損の程度が大きいほど、上記のように圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すサイクルが急になり、破損の程度が小さいほど、圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すサイクルが緩やかになるため、上記サイクルに基いて破損の程度を概ね把握することができる。
また、各作動油室5a、5b、5c、5dに、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生している状態で、万一、上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損し、破損したいずれかのシール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側に作用していた油圧が漏洩した場合、各作動油室5a、5b、5c、5dの油圧が低下する。そして、各作動油室5a、5b、5c、5dの油圧が制御油圧ライン9iの油圧よりも低下すると、上記(C)のように、制御油圧ライン9iの油圧が各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用するが、上記シールの破損により制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下する。これにより、上記と同様に圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すようになり、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことおよび破損の程度を外部から迅速且つ確実に察知することができる。
上記第1の実施の形態では、図8に示すように油圧回路に制御油圧ポンプ9gを設けたが、次に説明する第2の実施の形態では、図9に示すように、油圧回路に制御油圧ポンプ9gを設けていない。すなわち、油圧回路には、方向切換弁9bと、油圧ポンプ9aから吐出された作動油が方向切換弁9bを経て油タンク9fへ戻される戻り油ライン9Lとが設けられている。上記戻り油ライン9Lには圧力調整弁9hが設けられ、方向切換弁9bの切り換えを制御する制御油圧が油圧ポンプ9aの吐出口側から方向切換弁9bへ供給されるように油圧回路が構成されている。上記方向切換弁9bと圧力調整弁9hとの間のラインは、一定の油圧以上に規定される規定油圧ライン9jとして形成される。規定油圧ライン9jから分岐した分岐油圧ライン9kが防衝弁ブロック10のパイロット油流入口13aに連通している。
上記分岐油圧ライン9kには圧力検知弁21(圧力検知装置の一例)が設けられている。圧力検知弁21は、内部パイロット方式であり、分岐油圧ライン9kの油圧が上記規定値より低下した場合、閉動して分岐油圧ライン9kを遮断し、分岐油圧ライン9kの油圧が規定値以上の場合、開動して分岐油圧ライン9kを開通させる。
以下、上記構成における作用を説明する。
パイロット油逆止弁13bは、図9に示すように、分岐油圧ライン9kを介して規定油圧ライン9jに常時連通している。
(A)例えば、第1グループの作動油室5a,5cの油圧が、第2グループの作動油室5b,5dの油圧よりも高く、かつ、規定油圧ライン9jの油圧よりも高い場合、上記作動油室5a,5cの油圧は、一方の逆止弁10gを押し開くとともに、他方の逆止弁10hに逆止作用を与えて、この油圧が低圧側の作動油室5b、5dに漏洩するのを防ぎ、また、連通油路10iの他端部からパイロット油連通油路13dを通ってパイロット油逆止弁13bに逆止作用を与え、この油圧が規定油圧ライン9jに漏洩するのを防ぐ。
(B)また、反対に、第2グループの作動油室5b,5dの油圧が、第1グループの作動油室5a,5cの油圧よりも高く、かつ規定油圧ライン9jの油圧よりも高い場合、上記第2グループの作動油室5b,5dの油圧は、他方の逆止弁10hを押し開くとともに、一方の逆止弁10gに逆止作用を与えて、この油圧が低圧側の作動油室5a,5cに漏洩するのを防ぎ、また、連通油路10iの他端部からパイロット油連通油路13dを通ってパイロット油逆止弁13bに逆止作用を与え、この油圧が規定油圧ライン9jに漏洩するのを防ぐ。
(C)また、各作動油室5a、5b、5c、5dに、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生しておらず、この油圧が上記規定油圧ライン9jの油圧よりも低いときは、規定油圧ライン9jから分岐油圧ライン9kとパイロット油流入口13aとを経てパイロット油路13cに供給されている油圧が、パイロット油逆止弁13bを押し開き、パイロット油連通油路13dを通って連通油路10iへ供給され、先の実施の形態1と同様にブロック側およびカバー側給油通路10j,12aから各シール2j,2f,2h,3b,1fに連通してそれぞれシーリング作用を行わせるとともに、両逆止弁10g,10hに逆止作用を与えて、この油圧が各作動油室5a,5b,5c,5dに漏洩するのを防ぐ。さらに、セグメント1bの縦シール1dがベーン2dの縦シール2jと同じ構成のものである場合は、先の第1の実施の形態の図5の仮想線で示した油孔3jを穿孔することにより、セグメント1bの縦シール1dにもシーリング作用を行わせることができる。
従って、舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室5a,5b,5c,5dに発生していないときでも、最低限、上記規定油圧ライン9jの油圧が各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用することになるため、常時、必要最低限の規定値の油圧によってシーリング作用が行われることになり、いかなる状態であっても確実なシーリング作用が行われることになる。
さらに、従来のように、ベーン2dの縦シール2jの背面2uおよびセグメント1bの縦シール1dの背面1mにそれぞれ波板ばね30を圧入する必要がなくなり、波板ばね30の使用に伴う従来の諸問題が解消され、シーリング性能の均一化や各シール面1k,2rの偏磨耗防止が可能となり、さらに、上記ベーン2dの縦シール2jやセグメント1bの縦シール1dが磨耗した場合であっても、各シール面1k,2rに必要最低限の押圧力を与えて安定したシーリング効果を維持することができる。
また、上記(C)のように舵取機が無負荷あるいは低負荷であって、シーリングのために必要な油圧が作動油室5a,5b,5c,5dに発生しておらず、規定油圧ライン9jの油圧を各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用させてシーリング作用を行っている時に、万一、上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損した場合、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側に作用していた油圧が漏洩し、規定油圧ライン9jと分岐油圧ライン9kとの油圧が規定値より低下する。
図9に示すように、この油圧の低下を圧力検知弁21が検知し閉動して分岐油圧ライン9kを閉鎖し、これにより、規定油圧ライン9jから分岐油圧ライン9kを経て上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが遮断される。このようにして分岐油圧ライン9kが遮断されると、規定油圧ライン9jと分岐油圧ライン9kとの油圧が上昇して規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁21が検知し開動して分岐油圧ライン9kを開通させ、これにより、規定油圧ライン9jから分岐油圧ライン9kを経て上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが再開される。
この際、破損したシールの破損状態が変わっていなければ、再び規定油圧ライン9jと分岐油圧ライン9kとの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁21が、油圧の低下を検知し閉動して分岐油圧ライン9kを閉鎖し、規定油圧ライン9jから分岐油圧ライン9kを経て上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みを遮断する。そして、規定油圧ライン9jと分岐油圧ライン9kとの油圧が上昇して規定値に復元すると、圧力検知弁21が開動して分岐油圧ライン9kを開通させる。このように圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すようになることで、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことを外部から迅速且つ確実に察知することができる。
尚、破損の程度が大きいほど、上記のように圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すサイクルが急になり、破損の程度が小さいほど、圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すサイクルが緩やかになるため、上記サイクルに基いて破損の程度を概ね把握することができる。
また、各作動油室5a、5b、5c、5dに、シーリング作用に必要な十分な油圧が発生している状態で、万一、上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損し、破損したいずれかのシール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側に作用していた油圧が漏洩した場合、各作動油室5a、5b、5c、5dの油圧が低下する。そして、各作動油室5a、5b、5c、5dの油圧が制御油圧ライン9iの油圧よりも低下すると、上記(C)のように、規定油圧ライン9jの油圧が各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用するが、上記シールの破損により規定油圧ライン9jの油圧が規定値より低下する。これにより、上記と同様に圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すようになり、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことおよび破損の程度を外部から迅速且つ確実に察知することができる。
上記第1および第2の実施の形態では、図8,図9に示すように、圧力検知装置の一例として圧力検知弁21を用いているが、第3の実施の形態として、図10(a)に示すように、圧力検知弁21に、圧力スイッチ22と警報装置23とを組み合わせたものであってもよい。
すなわち、圧力スイッチ22は、制御油圧ライン9iの圧力検知弁21の入口側に連通する流路に設けられており、制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下した場合、オンに切り換わり、制御油圧ライン9iの油圧が規定値以上の場合、オフに切り換わるように構成されている。圧力スイッチ22は警報装置23に接続されており、圧力スイッチ22がオンすることによって電気信号を発し、警報装置23が作動するように構成されている。
これによると、制御油圧ライン9iの油圧を各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dに作用させてシーリング作用を行っている時に、万一、上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損した場合、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側に作用していた油圧が漏洩し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下する。
図10(a)に示すように、この油圧の低下を圧力検知弁21が検知し閉動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を閉鎖し、これにより、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが遮断されると同時に、圧力スイッチ22がオフからオンに切り換わって電気信号を発し、警報装置23が作動する。
このようにして制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路が遮断されると、制御油圧ライン9iの油圧が制御油圧ポンプ9gと圧力検知弁21との間で上昇し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元する。この復元した規定値を圧力検知弁21が検知し開動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を開通させると同時に、圧力スイッチ22がオンからオフに切り換わって圧力スイッチ22からの電気信号が停止する。これにより、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みが再開されるとともに、警報装置23が停止する。
この際、破損したシールの破損状態が変わっていなければ、再び制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下するため、上記と同様に、圧力検知弁21が、油圧の低下を検知し閉動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を閉鎖し、制御油圧ライン9iから上記各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの背面2u,2s,2t,3e,1n,1m側への油圧の送り込みを遮断すると同時に、圧力スイッチ22がオンに切り換わって警報装置23が作動する。
そして、制御油圧ライン9iの油圧が上昇し、制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元すると、圧力検知弁21が開動して制御油圧ライン9iからパイロット油流入口13aへ至る流路を開通させると同時に、圧力スイッチ22がオフに切り換わって警報装置23が停止する。このように圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すとともに警報装置23が作動と停止を繰り返すようになることで、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことを外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。
さらに、警報装置23の作動と停止とのサイクルの長短により、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの破損の程度を外部から迅速且つ確実に把握することができる。
尚、上記のように、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損した際、圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すとともに警報装置23が作動と停止を繰り返すようになるが、上記制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元した後も、警報装置23の作動を継続させるために、図10(b)に示すように、信号保持回路24を設けてもよい。信号保持回路24は第1および第2のリレーX1,X2と確認押釦25とを有している。
これによると、上記制御油圧ライン9iの油圧が規定値より低下して圧力スイッチ22がオフからオンに切り換わると、第1および第2のリレーX1,X2がそれぞれオンになり、警報装置23が作動する。この際、確認押釦25はバネ等によってオンの状態に保たれている。その後、上記制御油圧ライン9iの油圧が規定値に復元して圧力スイッチ22がオンからオフに切り換わると、第1のリレーX1はオフになるが、第2のリレーX2はオンになったままであり、警報装置23が継続して作動する。そして、作業者が手動で確認押釦25をバネ等の付勢力に抗して押すことにより、確認押釦25がオンからオフに切り換えられ、第2のリレーX2がオンからオフに切り換えられるため、警報装置23が停止する。
上記第3の実施の形態では、図10(a)に示すように、圧力スイッチ22を制御油圧ライン9iの圧力検知弁21の入口側に連通する流路に設けたが、第4の実施の形態として、図10(a)に示すように、圧力スイッチ22を分岐油圧ライン9kの圧力検知弁21の入口側に連通する流路に設けてもよい。
これにより、第3の実施の形態と同様に、圧力検知弁21が開閉動作を繰り返すとともに警報装置23が作動と停止を繰り返すようになることで、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dのいずれかが破損したことを外部からより一層迅速且つ確実に察知することができる。さらに、警報装置23の作動と停止とのサイクルの長短により、各シール2j,2f,2h,3b,1f,1dの破損の程度を外部から迅速且つ確実に把握することができる。