以下、図面を参照して本発明に係るシルティング防止制御装置の実施の形態について説明する。
図1は、実施形態のエンジンの制御装置の構成を示す。この装置は、建設機械に搭載される。また、エンジンは、4サイクルのディーゼルエンジンを想定する。
エンジン1には、吸気通路3と排気通路2が設けられている。吸気通路3は、吸気マニホールド13と吸気管23とからなる。排気通路2は、排気マニホールド12と排気管22とからなる。
吸気マニホールド13の出口13bは、エンジン1の吸入用バルブを介してシリンダの燃焼室に連通しており、吸気マニホールド13の入口13aは、吸気管23に連通している。排気マニホールド12の入口12aは、エンジン1の排気用バルブを介してシリンダの燃焼室に連通しており、排気マニホールド12の出口12bは、排気管22に連通している。
吸気行程では、吸気マニホールド13から吸入用バルブを介して、エンジン1のシリンダ内に空気が吸入される。圧縮行程では、エンジン1のシリンダ内に、燃料噴射システムによって燃料が噴射される。シリンダに吸入された空気は、この噴射された燃料と混合され、圧縮された混合気が、圧縮上死点付近で自己着火燃焼する。排気行程では、燃焼後の排気ガスが排気用バルブを介して排気マニホールド12に排出される。
吸気管23には、ベンチュリ33が設けられている。
排気管22とベンチュリ33のスロート部33aとは、EGR通路4によって連通している。EGR通路4上には、EGRクーラ14と、EGRバルブ5が設けられている。EGRバルブ5は、排気管22内の不活性ガスとしての排気ガスの一部をベンチュリ33のスロート部33aに導入して、エンジン1内の燃焼を抑制して燃焼温度を低下させることで、排気ガス中のNOxを低減させるために設けられている。EGRクーラ14は、排気管22とEGRバルブ5の間に設けられている。EGRクーラ14は、排気管22から吸気通路3に導入される排気ガスの温度を低下させる。ベンチュリ33は、ベンチュリ効果によってベンチュリ33内で負圧を発生させて、EGR通路4内の排気ガスをベンチュリ33内に吸引する。
EGRバルブ5の開度が変化することによって、EGR通路4の開口面積が変化し、排気管22から吸気管23に導入される排気ガスの流量が調整される。EGRバルブ5は、油圧アクチュエータ15によって作動する。
EGRバルブ5には、EGRバルブ5の開度Aを検出するセンサ16が設けられている。コントローラ6には、センサ16で検出された開度Aを示す信号が入力される。コントローラ6は、EGRバルブ5を制御する装置であり、エンジン1の運転条件に応じて、EGRバルブ5の開度Aを調整する。コントローラ6から油圧アクチュエータ15に対して、EGRバルブ5の開度Aを示す開度指令信号が加えられる。
エンジン1には、可変ターボチャージャ9が設けられている。可変ターボチャージャ9は、エンジン1の燃費、エンジン出力等を向上させるために設けられている。可変ターボチャージャ9のタービン7のシュラウドの入口7aは、排気管22に連通しているとともに、タービン7のシュラウドの出口7bは、マフラ42を介して大気に連通している。可変ターボチャージャ9のコンプレッサ8のシュラウドの入口8aは、エアクリーナ43を介して大気に連通しているとともに、コンプレッサ8のシュラウドの出口8bは、アフタクーラ17を介して、吸気管23のうちベンチュリ33の上流側に連通している。アフタークーラ17は、可変ターボチャージャ9によって圧縮された吸入空気の温度を低下させて、エンジン1のシリンダ室内の酸素の充填効率を高めるために設けられている。
可変ターボチャージャ9のタービン7は、排気管22内の排気ガスによって駆動される。タービン7が回転すると、タービン7と同軸上に設けられたコンプレッサ8が駆動され、エアクリーナ43を介して吸入された空気がコンプレッサ8によって、大気圧以上の所定ブースト圧まで圧縮され、圧縮された吸入空気が、アフタークーラ17に圧送される。アフタークーラ17によって、所定ブースト圧の吸入空気が冷却されて、吸気通路23、つまりベンチュリ33、吸気マニホールド13を介してエンジン1のシリンダ内に押し込まれる。
本実施例の可変ターボチャージャ9は、以下に説明するように、タービン7に流入される排気ガスの流速を調整するために、ノズルベーンが取り付けられた壁を動かすことでノズルの開度を調整する機構の可変ターボチャージャを想定している。コントローラ6は、エンジン1の運転条件に応じた制御電気指令をEPC弁200に出力し、EPC弁200、油圧サーボ弁130を介して可変ターボチャージャ9の壁を動かしそれにより作動部材(ノズルベーン)を作動させて、ノズルの開度を調整する。なお、可変ターボチャージャ9には、ノズルベーンを直接、旋回等させて動かしノズルの開度を調整する機構のものもあるが、「ノズルの開度」を調整する点については、以下に説明する機構と同様である。
排気管22と、吸気管23のうちベンチュリ33の上流側とは、バイパス通路10によって連通している。バイパス通路10上には、バイパスバルブ11が設けられている。バイパスバルブ11は、ベンチュリ33の上流側の所定ブースト圧の吸入空気を、排気管22に逃がすために設けられている。バイパスバルブ11を開いてブースト圧と排気圧の差を小さくして、EGRバルブ5を介して排気ガスを吸気管23に導入させるようにするために設けられている。なお、バイパスバルブ11を設けない実施も可能である。
バイパスバルブ11が開閉することによって、バイパス通路10が連通、遮断され、所定ブースト圧の吸気の排気管22へ流入がオン、オフされる。
図2は、可変ターボチャージャ9の作動部材であるノズルベーンを作動させる油圧アクチュエータである油圧サーボ弁130と、電気指令に応じて油圧サーボ弁130に対して制御圧油を出力する電磁弁であるEPC弁200の構成をブロック図にて示している。
コントローラ6は、EPC弁200に対して電気指令を出力し、EPC弁200は、電気指令に対応するパイロット圧のパイロット圧油を油圧サーボ弁130のパイロットポート141に導入し、油圧サーボ弁130のピストンをパイロット圧に対応する位置まで移動させる。油圧サーボ弁130のピストンの作動に用いられる圧油は、ポンプポート142を介してポンプ192から供給される。油圧サーボ弁130のピストンの作動に伴いドレインポート143を介して圧油がタンクにドレインされる。
コントローラ6には、油圧サーボ弁130のピストンが作動し、かつ可変ターボチャージャ9のタービン7に導入される排気ガスの流速が変動しない範囲の大きさのシルティング防止用の電気指令が予め設定しておかれ、このシルティング防止用の電気指令をEPC弁200に対して出力することにより、油圧サーボ弁130で発生するシルティングを防止する。
図3(a)、(b)は、可変ターボチャージャ9と、油圧サーボ弁130の外観を斜視図にて示している。
図3(b)に示すように、可変ターボチャージャ9には、装着面9aが形成されている。一方、油圧サーボ弁130には、装着面130aが形成されている。可変ターボチャージャ9の装着面9aに、油圧サーボ弁130の装着面130aが装着されることで、図3(a)に示すごとく、可変ターボチャージャ9と油圧サーボ弁130が一体化される。
図4は、油圧サーボ弁130が装着された可変ターボチャージャ9の断面図を示している。
タービン7側のタービンハウジング92内には、タービンホイール93が収容されている。コンプレッサ8側のコンプレッサハウジング94内には、コンプレッサインペラ95が収容されている。タービンホイール93には、シャフト96が一体に設けられている。シャフト96の先端には、コンプレッサインペラ95が取り付けられている。シャフト96は、センターハウジング97に回転自在に支持されている。排気ガスがタービンホイール93に導入されると、タービンホイール93は回転し、シャフト96を介してコンプッサインペラ95が回転する。コンプレッサインペラ95が回転することで吸気が圧縮過給される。
タービンハウジング92には、エンジン1の排気ガスを排気管22(図1)を介して導入するボリュート状の排気導入路110が設けられている。排気導入路110には、排気ガスをタービンホイール93側に噴出するためのノズル部111がシャフト96の周方向に形成されている。ノズル部111は、互いに対向する一対の排気導入壁113、114によって形成されている。ノズル部111の入口より導入された排気ガスは、ノズル部111の出口から噴出されてタービンホイール93を回転させ、排気口112から排気され、マフラ42(図1)に導かれる。
ノズル部111の一方の排気導入壁113は、断面コの字形で、シャフト96の中心に対して環状に形成された可動リング115の側面116として構成されている。可動リング115は、センターハウジング97に設けられた環状の収容室98内に収容されている。可動リング115の側面116には、他方の排気導入壁114側に向けて突出する態様で、複数のノズルベーン117がシャフト96の周方向に等間隔で取り付けられている。
ノズル111の他方の排気導入壁114には、シャフト96の周方向に沿って凹部118が形成されており、この凹部118内にノズルベーン117の先端が収容されている。凹部118の入口には、ノズルベーン117を摺動させるガイド部材301が設けられている。
可動リング115は、後述のスライド機構120によって進退され、排気導入壁113を排気導入壁114に対して近接させる方向あるいは離間させる方向にスライド作動させることにより、ノズルベーン117を同様にスライド作動させノズル部111の開口面積を変更する。ノズルベーン117がスライド作動することで、タービン7に導入される排気ガスの流速が変化する。
可動リング115とタービンハウジング92およびセンターハウジング97との隙間300には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがある。同様にノズルベーン117と凹部118の入口のガイド部材301との隙間302には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがある。この対策については後述する。
以下、スライド機構120について図5、図6を併せ参照して説明する。
スライド機構120は、センターハウジング97に挿通された駆動シャフト121を回転駆動することで、可動リング115を収容室98より進退させる機構である。
図5、図6に示すように、駆動シャフト121には、円弧状に形成された一対のアーム122、122が固定されている。各アーム122の先端には、ピン123が取り付けられている。ピン123には、スライダ124が嵌めこまれている。スライダ124は、シャフト96と平行な支持ロッド125の基端側の摺動溝126に摺動自在に嵌装されている。支持ロッド125の先端は、可動リング115の側面116の反対の裏面側に当接されている。
したがって、駆動シャフト121が回動されると、アーム122がシャフト96の軸長手方向に揺動し、支持ロッド125がシャフト96の軸長手方向に移動して、可動リング115を収容室98より進退させる。
スライド機構120の駆動シャフト121の端部には、アーム127が設けられている。アーム127は、油圧サーボ弁130に連結されている。
図5に示すように、油圧サーボ弁130の作動に用いられた圧油は、油路310を介して可変ターボチャージャ9に送られ、可変ターボチャージャ9の各部の潤滑に使用される。油路310aは、駆動シャフト121の中央部に通し孔として形成されている。また、油路310bは、駆動シャフト121の外周の摺動部に形成されている。なお、センターハウジング97に孔を形成して、油圧サーボ弁130と可変ターボチャージャ9とを連通する油路310aとしてもよい。油路310a、310b、310cのいずれか1つあるいはいずれか2つあるいは全てを連通油路310として採用することができる。
なお、本実施例では、図9に示すように、連通油路310がドレインポート143に連通されており、ドレインポート143を介して圧油が油路191を介して直接タンク180に導かれるとともに、ドレインポート143を介して圧油が連通油路310を介して可変ターボチャージャ9に導かれる構成を前提としている。しかし、ドレインポート143から直接タンク180に導かれる油路191を省略してドレインポート143から可変ターボチャージャ9に導かれる連通油路310のみを配置する実施も可能であり、ドレインポート143から可変ターボチャージャ9に導かれる連通油路310を省略してドレインポート143からタンク180に導かれる油路191のみを配置する実施も可能である。
油圧サーボ弁130とアーム127との連結機構は、図7に示される。
同図7に示すように、油圧サーボ弁130のピストン131の図中上下の移動に応じて駆動シャフト121が回動される。すなわち、ピストン131の外周には、ピストン131の長手方向に直交して摺動溝132が形成されている。アーム127には、摺動溝132側に突出するピン128が形成されている。摺動溝132には、スライダ129が摺動自在に嵌装されている。アーム127のピン128は、スライド129に嵌めこまれている。このため油圧サーボ弁130のピストン131が図中矢印で示すごとく上下動すると、それに伴ってスライダ129が上下動するとともに摺動溝132に沿って矢印示すごとく摺動し、アーム127がピン128を回転中心に回転し、駆動シャフト121が矢印に示すごとく回転する。
以上のようにして、油圧サーボ弁130のピストン131の上下動に応じて、駆動シャフト121が回転し、それに応じて可動リング115が進退作動し、それに応じてノズルベーン117がスライド作動する。
図8は、油圧サーボ弁130の縦断面図である。
油圧サーボ弁130は、ピストン131と、ピストン131を摺動自在に収容し、かつ一部に開口部33Aを有したハウジング133と、ピストン131の軸方向に貫通したセンターホール134内に収容されてパイロット圧によって摺動するパイロットスプール136とを備えて構成される。油圧サーボ弁は、開口部133A周りをシールするOリング1100を介して可変ターボチャージャ9のセンターハウジング97に装着されている(図3参照)。
ハウジング133は、外形形状が角柱状であり、その内部には上下に貫通するシリンダ空間135が設けられている。このシリンダ空間135内にピストン131が収容されている。シリンダ空間135の上下端側は、Oリング1101、1102を介して閉塞部材137、138によって密閉されている。ハウジング133の開口部133Aに対応した位置には、駆動シャフト121とピストン131との連結部139が設けられている。したがって、開口部133Aの大きさは、ピストン131およびスライダ129の摺動量を考慮して設計される。
ハウジング133の開口部133Aとは反対側の側面には、EPC弁200から出力されたパイロット圧が供給されるパイロットポート141、ポンプ192から出力されたポンプ圧油が供給されるポンプポート142、油圧サーボ弁130の作動に用いられた圧油が排出されるドレインポート143が設けられている。
ハウジング133のシリンダ空間135は、ピストン131が摺動する部分と、図中その上方の部分とが仕切り部材144によって仕切られている。この仕切り部材144は、シリンダ空間135の内周面に設けられた部分に当接している。この当接部分の近傍には、仕切り部材144で仕切られた空間をシールするためのOリング1103が設けられている。仕切り部材144には、図中下方に垂下した筒部145が設けられている。この筒部145は、ピストン131のセンターホール134の図中上方側に入り込んでいる。仕切り部材144で仕切られた図中上方の空間は、パイロット油圧室146として、パイロットポート141に連通している。
仕切り部材144で仕切られた図中下方の空間は、仕切り部材144とピストン131の上端面との間に形成される第1油圧室147を構成している。パイロット油圧室146は、第1油圧室147に対して軸方向の外側にずれている。ピストン131の下端面と図中下側の閉塞部材138との間には、第2油圧室148が形成される。
ピストン131には、センターホール134とハウジング133のポンプポート142とを連通させて、ポンプ192から出力されるポンプ圧油をセンターホール134内に流入させるプレッシャポート151が設けられている。このプレッシャポート151の外側は、径方向に対向して形成された溝部分に開口している。この溝部分は所定の上下寸法を有しており、ピストン131のストローク内でプレッシャポート151とポンプポート142とが常時連通する。ただし、ピストン131のストローク中において、プレッシャポート151およびポンプポート142は互いに上下方向にずれた位置にある。
ピストン131には、センターホール134とハウジング133のドレインポート143とを連通させて、センターホール134内の圧油をタンクに戻すリターンポート152が設けられている。このリターンポート152の外側も、ピストン131の外周に形成された溝部分に開口している。ピストン131のストローク内でリターンポート152とドレインポート143とが常時連通する。ピストン131と駆動シャフト121との連結部139は、リターンポート152の反対側に対応した位置に設けられており、プレッシャポート151に対して軸方向の図中下方側にずれて位置している。
ピストン131には、図8の図中に点線で示すように、センターホール134と図中上方の第1油圧室147とを連通させる第1ピストンポート153およびセンターホール134と図中下方の第2油圧室148とを連通させる第2ピストンポート154が設けられている。第1ピストンポート153のセンターホール134側の開口部分は、プレッシャポート151の開口部分よりも図中下方に位置し、第2ピストンポート154のセンターホール134側の開口部分は、プレッシャポート151の開口部分よりも図中上方に位置している。
センターホール134の下方側は、当接部材155がピストン131にOリング1104を介して螺設するされること密閉されている。当接部材155を介してピストン131が閉塞部材138に当接している。この当接した位置がピストン131の最下位置になる。第2油圧室148内にあって、閉塞部材138と当接部材155との間にはコイルばね156が配置されている。コイルばね156は、ピストン131の図中上方側への移動をアシストする。
パイロットスプール136は、略中央部分に第1、第2スプールランド161、162を備えている。パイロットスプール136の内部には、図中下方に開口したリターン流路163が設けられている。第1スプールランド161の図中上側の溝部分とリターン流路163とは連通し、第2スプールランド162の図中下側の溝部分とリターン流路163とが同様に連通している。リターン流路163の図中下側が開口しているため、リターン流路163、リターンポート152、ドレインポート143が連通している。
パイロットスプール136は、仕切り部材144の筒部145を介してピストン131のセンターホール134内を図中上下に摺動可能となっている。パイロットスプール136の上端部分は、パイロット油圧室146内に配置された保持部材164に螺合保持されている。パイロット油圧室146内において、保持部材164は、コイルばね165によって図中上方に付勢されている。コイルばね165の付勢力に抗するパイロット圧が保持部材164に作用すると、パイロットスプール136は図中下方に移動する。またパイロット圧油がドレインされることにより、コイルばね165の付勢力によってパイロットスプール136は図中上方に移動する。
つぎに図8を参照して油圧サーボ弁130の動きについて説明する。
図8は、コイルばね165の付勢力を超えるパイロット圧が供給されることで、パイロットスプール136およびピストン131の両方が共に最下位置にある状態を示している。この状態のときには、パイロットスプール136の図中下端が当接部材155の図中上端に当接している。また当接部材155の図中下端は閉塞部材138に当接している。さらに、この位置ではパイロットスプール136の図中上側の第1スプールランド161が第2ピストンポート154から図中下方にずれており、第2ピストンポート154がリターン流路163を通してリターンポート152に連通し、第2油圧室148内の圧油がドレインされている。
一方、図中下側の第2スプールランド162も第1ピストンポート153に対して図中下方にずれており、プレッシャポート151と第1ピストンポート153とが連通している。このため、プレッシャポート151および第1ピストンポート153を通して第1油圧室147に圧油が供給される。
この図8に示す状態から、パイロット油圧室146内の圧油を戻して所定のパイロット圧まで下げると、パイロット圧に応じた力とコイルばね165のばね力とが釣り合う位置までパイロットスプール136が上昇する。これに伴い、図中上側の第1スプールランド161は、第2ピストンポート154の図中上方にずれる。このため第2ピストンポート154とプレッシャポート151とが連通し、第2油圧室148に圧油が供給される。
この動作と同時に、図中下側の第2スプールランド162も第1ピストンポート153の図中上方にずれる。このため、第1ピストンポート153とリターン流路163とが連通し、第1油圧室147内にあった圧油の一部がドレインされる。これによりピストン131がパイロットスプール136に追従するようにして上昇する。ピストン131の上昇作動は、第1、第2スプールランド161、162によって第1、第2ピストンポート153、154が閉じられた時点で終了する。ピストン131は、パイロットスプール136の停止位置に応じた位置で同様に停止する。
パイロット圧が完全に抜かれると、保持部材164の図中上端がパイロット油圧室146の図中天井面に当接した状態になるまでパイロットスプール136が上方に移動する。この移動に追従してピストン131が作動し、その上端が仕切り部材144に当接するまで上昇する。こうしてパイロットスプール136およびピストン131が共に最上位置まで移動すると、第2油圧室148内に圧油が充満した状態で第1、第2ピストンポート153、154がそれぞれ、第1、第2スプールランド161、162によって閉じられる。
ピストン131を再度、図中下方の所定位置まで移動させる場合には、パイロット圧を供給してパイロットスプール136を所定位置まで下降させる。これにより再度、第2ピストンポート154がリターン流露163と連通し、第2油圧室148内の圧油の一部がドレインされ、ピストン131が下降する。この下降動作は、第1、第2スプールランド161、162によって第1、第2ピストンポート153、154が閉じられた時点で終了し、ピストン131はパイロットスプール136の停止位置に応じた位置で同様に停止する。
以上のように、パイロット圧を低下させるに応じて、パイロットスプール136がピストン131に対して上昇し、その動きに追従してピストン131も上昇する。また、パイロット圧を上昇させるに応じて、パイロットスプール136がピストン131に対して下降し、その動きに追従してピストン131も下降する。
図9は、エンジン1と可変ターボチャージャ9と油圧サーボ弁130を含む潤滑回路図である。
この潤滑回路170では、オイルパン180内の潤滑油を油圧ポンプ181で汲み上げて、オイルクーラ182およびオイルフィルタ183を介してメインギャラリ184に供給する。メインギャラリ184に潤滑油が供給されることで、主に、エンジン1のクランクシャフト185およびカムシャフト186が潤滑される。
潤滑回路170には、メインギャラリ184から分岐して、噴射装置側回路171と、伝達機構側回路172と、ロッカアーム側回路173と、過給機側回路174と、第1ドレイン側回路175とが設けられている。噴射装置側回路171は、燃料噴射装置187内のカム駆動部等を潤滑する。伝達機構側回路172は、タイミングギアを含む動力伝達機構188を潤滑する。ロッカアーム側回路173は、エンジン1のロッカアーム189を潤滑する。過給機側回路174は、可変ターボチャージャ7のシャフト96を支持する軸受け部分を潤滑する。第1ドレイン回路175は、可変ターボチャージャ9および燃料噴射装置187から潤滑油をオイルパン80に戻す。
潤滑回路170とは別に、圧油供給回路190と、第2ドレイン回路191と、連通油路310が設けられている。圧油供給回路190は、潤滑油の一部を駆動圧油およびパイロット圧油として油圧サーボ弁130に供給するものである。第2ドレイン回路191は、油圧サーボ弁130のドレインポート143から圧油をオイルパン180に排出するものである。連通油路310は、油圧サーボ弁130と可変ターボチャージャ9とを連通する油路であり、油圧サーボ弁130の作動に用いられた圧油を、可変ターボチャージャ9に送り、可変ターボチャージャ9の各部を潤滑するものである。
すなわち、メインギャラリ184の手前で、潤滑回路170は、圧油供給回路190に分岐している。圧油供給回路190の基端側には、ポンプ192が設けられている。圧油供給回路190の先端側は、ポンプポート142に連通する駆動圧回路193と、パイロットポート141に連通するパイロット圧回路194とに分岐されている。パイロット圧回路194には、EPC弁200が設けられている。
ポンプ192によって油路内の圧油の圧力が昇圧されて、圧油が駆動圧回路193を介して油圧サーボ弁130のポンプポート142に供給される。またポンプ192によって油路内の圧油の圧力が昇圧されて、元圧としてEPC弁200に供給される。EPC弁200は、元圧を電気指令に応じたパイロット圧に変換してパイロット圧油をパイロット圧回路194を介して油圧サーボ弁130のパイロットポート141に供給する。油圧サーボ弁130のドレインポート143からはドレイン回路191を介して圧油がオイルパン180に排出される。油圧サーボ弁130の作動に用いられた圧油は、連通油路310を介して可変ターボチャージャ9に送られ、可変ターボチャージャ9の各部が潤滑される。
このように本実施例では、エンジン1の潤滑に使用されているエンジンオイルが、可変ターボチャージャ9の潤滑および油圧サーボ弁130の作動に用いられる。エンジンオイルは、一般的にエンジンの燃焼に伴い発生した鉄粉やスラッジやすすが多量に含有されており、一般の作動油と比較して汚染度が大きい。このため、一層、油圧サーボ弁130でシルティングが発生しやすくなっており、本実施例ではその対策として後述の制御が行なわれる。
(第1実施例;可変ターボチャージャの油圧アクチュエータのシルティング防止制御)
以下、コントローラ6で行なわれるシルティング防止制御の処理について説明する。
すなわち、コントローラ6では、油圧サーボ弁130が作動し、かつタービン7に導入される排気ガスの流速が変動しない範囲の大きさのシルティング防止用の電気指令を予め設定しておかれ、このシルティング防止用の電気指令をEPC弁200に対して出力することにより、油圧サーボ弁130で発生するシルティングを防止するものである。
図10は、シルティング防止用の電気指令isの供給時間幅tと指令電流値の大きさis1を例示している。シルティング防止用の電気指令isは、供給時間幅tと指令電流値の大きさis1とによって特定されるステップ状の指令信号である。供給時間幅tと指令電流値の大きさis1は、油圧サーボ弁130のピストン131は作動するものの、タービン7に導入される排気ガスの流速は変動しない値に予め設定されておかれる。
コントローラ6は、図11に示すフローチャートに従いシルティング防止用の電気指令isを出力する。
すなわち、エンジン1が定常状態にあり、一定の時間Tの間、EPC弁200に加えられる制御電気指令iの変化がないか否かが判断される(ステップ401)。エンジン1の定常状態とは、たとえばエンジン1がローアイドル回転で回転している状態、あるいはエンジン1が定格点で稼動している状態など、エンジン回転調整用のスロットルが定位置にある状態をいう。エンジン1が定常状態のときには、EPC弁200に加えられる制御電気指令iの変化はなく(たとえば制御電気指令iが一定値)、油圧サーボ弁130のピストン131の位置に変化はない。このような状態が長時間続くと、シルティングが発生しやすくなる。そこで、エンジン1が定常状態にあり、一定の時間Tの間、EPC弁200に加えられる制御電気指令iの変化がないと判断されると(ステップ401の判断YES)、シルティング防止用の電気指令isがEPC弁200に対して出力される(ステップ402)。
図12(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、EPC弁200に加えられる電気指令i、EPC弁200のスプールの変位、EPC弁200から出力されるパイロット圧、油圧サーボ弁130のピストン131の変位(サーボ変位)、可変ターボチャージャ9のタービン7(シャフト96)の回転数あるいはブースト圧の変動をタイムチャートで示している。
図13、図14は比較例であり、図13は従来の特許文献4に記載された発明を示す図で、図14は従来の特許文献4に記載された装置構成に本発明の制御を適用したときの図である。図13(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、電磁弁に加えられる電気指令、電磁弁のスプールの変位、電磁弁から出力されるパイロット圧、油圧アクチュエータのスプールの変位、油圧ポンプの斜板位置あるいは冷却用ファンの回転数の変動をタイムチャートで示している。図14(a)、(b)、(c)、(d)、(e)も同様である。
図13に示すように、特許文献4に記載された発明は、電磁弁のスプールで発生するシルティングを防止することを目的としているため、シルティング防止用の電気指令isが出力されると電磁弁のスプールは変位するものの、電磁弁の出力パイロット圧は変化せず、油圧アクチュエータのスプールの変位、油圧ポンプの斜板位置あるいは冷却用ファンの回転数は何ら変動しない。したがって油圧アクチュエータで発生するシルティングを防止することはできない。
図14に示す比較例では、油圧アクチュエータのスプールを作動させることができるシルティング防止用の電気指令isが出力される。このため、シルティング防止用の電気指令isが出力されると電磁弁のスプールは変位し、電磁弁の出力パイロット圧が変化し、油圧アクチュエータのスプールが変位するものの、更に油圧ポンプの斜板位置あるいは冷却用ファンの回転数が変動してしまう。したがって油圧アクチュエータで発生するシルティングを防止することはできるものの、制御電気指令iが一定値(エンジン1が定常状態)で制御対象機器(油圧ポンプ、冷却用ファン)を変動させたくない場合であるにもかかわらず制御対象機器の制御量が変動してしまう。
これは特許文献4の制御対象機器で扱う流体が圧油という非圧縮性流体であり応答が比較的早く、油圧アクチュエータの変位によって即座に制御対象機器が作動してしまうためである。
これに対して本実施例では、図12に示すように、油圧サーボ弁130のピストン131が変化し、それに応じて可変ターボチャージャ9のノズルベーン117が作動したとしても、タービン7に導入される流速は変化せず、タービン回転数、ブースト圧の変動はみられない。つまり制御対象機器の制御量は変動せず通常の制御に影響を及ぼさない。これは制御対象機器(可変ターボチャージャ)で扱う流体が排気ガス(エア)という圧縮性流体であり、慣性が大きく応答が比較的遅く、ノズル部111の流路面積が変動したとしても即座にタービン7に導入される排気ガスの流速は変化しないからである。
以上のように、本実施例によれば、可変ターボチャージャという排気ガス調整機器を制御対象とし、油圧サーボ弁130で発生するシルティングを防止するために、この油圧サーボ弁130を作動させ、かつ同排気ガス調整機器である可変ターボチャージャ9で調整される排気ガスの流速が変化しないような大きさのシルティング防止用の電気指令isをEPC弁200に与えるように構成したので、通常の制御に影響を与えることなく、シルティング防止制御を行なうことができる。
また、本実施例では、油圧サーボ弁130の作動に用いられた圧油が連通油路310を介して可変ターボチャージャ9に送られ可変ターボチャージャ9の各部を潤滑するように構成している。これにより油圧サーボ弁130でシルティング防止制御が行なわれエンジンオイル内の汚染物がかきだされ清浄になったエンジンオイルが可変ターボチャージャ9に供給されることになり、可変ターボチャージャ9の潤滑性能を向上させることができる。
上述した実施例では、図4に示す構成のノズルベーン可変機構を想定している。しかし、図15に示す構成のノズルベーン可変機構を備えた可変ターボチャージャ9に対して本発明を適用してもよい。
図15は、図4に対応する図で、図4と同じくノズルベーン117を作動させる機構520を示している。図4に示すノズル開度機構は、ノズルベーン117が取り付けられた壁をスライド作動させる機構120であったが、図15に示すノズル開度調整機構は、ノズルベーン117を旋回作動させる機構520である。なお、ノズルベーン117を旋回作動させる機構520の構成の詳細は省略するが、その動作は、油圧サーボ弁130のピストン131の上下動に応じて、駆動シャフト121が回転し、それに応じてシャフト518が回転し、それに応じてノズルベーン117が旋回作動するというものである。ノズルベーン117は、一方の排気導入壁113と他方の排気導入壁114との間に摺動自在に配置されている。ノズルベーン117が旋回作動することによりノズル部111の開口面積が変更される。
シャフト518とセンターハウジング97との隙間501には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがある。同様にノズルベーン117と一方の排気導入壁113との隙間502、ノズルベーン117と他方の排気導入壁114との隙間503には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがある。この対策については後述する。
また特許文献1に記載されているように、ユニゾン・リングの回転に応じてノズルベーンを開閉作動させる機構を備えた可変ターボチャージャに本発明を適用してもよい。
また、上述した実施例では、可変ターボチャージャ9という排気ガス調整機器を作動させる油圧アクチュエータ(油圧サーボ弁130)で発生するシルティングを防止する場合を想定して説明した。しかし、可変ターボチャージャ9以外の排気ガス調整機器、たとえばEGRバルブ5を作動させる油圧アクチュエータ15で発生するシルティングを防止する場合に本発明を適用する実施も可能である。
図16は、EGRバルブ5の作動部材としてのバルブステム601を、電磁弁620、油圧アクチュエータ630を介して作動させる構成を示している。ここで電磁弁620、油圧アクチュエータ640は、図1の油圧アクチュエータ15に対応するものである。
すなわち、電磁弁620のソレノイド621に電気指令が与えられると、電磁弁620のスプール622が作動する。スプール622の作動に応じてパイロット圧油がパイロット油路640を介して油圧アクチュエータ630の油室631に供給される。油圧アクチュエータ630の油室631にパイロット圧油が供給されると、油圧アクチュエータ630のピストン632が作動する。ピストン632が作動すると、バルブスプリング602のばね力に抗してバルブステム601が変位し、EGRバルブ5はEGR通路4を開くように作動する。
こうした構成のものに上述の実施例と同様に、コントローラ6で、油圧アクチュエータ630のピストン632が作動し、かつEGR通路4を通過する排気ガスの流量が変動しない範囲の大きさのシルティング防止用の電気指令isを予め設定しておき、コントローラ6から、シルティング防止用の電気指令isを電磁弁620のソレノイド621に対して出力する。これにより油圧アクチュエータ630で発生するシルティングを防止することができる。
バルブステム601は、EGR通路4を通過する排気ガスに晒されており、かつハウジング603のバルブガイド603aに対して摺動自在に設けられている。このためバルブステム601とハウジング603のバルブガイド603aとの隙間604には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがある。この対策については後述する。
以上の説明では、可変ターボチャージャ9、EGRバルブ5といった排気ガス調整機器を想定して説明したが、本発明としては、エンジン1の排気ガスの通路に設けられた作動部材を作動させることにより排気ガスの流れが調整される排気ガス調整機器であれば、可変ターボチャージャ9やEGRバルブ5以外の排気ガス調整機器にも適用することができる。
さらに、本発明としては、制御対象機器は、排気ガス以外の流体であっても圧縮性の流体を扱うものであればよく、同様に本発明を適用することができる。すなわち、本発明の制御対象機器は、圧縮性流体の通路に設けられた作動部材を作動させることにより圧縮性流体の流れが調整される圧縮性流体調整機器であればよい。
なお、本実施例では、油圧サーボ弁130とEPC弁200を別々に設けているが、これらを一体とした油圧アクチュエータを構成して本発明を適用する可能である。また、EPC弁200自体を省略して、油圧アクチュエータに直接電気指令を与えるように構成してもよい。たとえば、図8に示す油圧サーボ弁130の保持部材164を駆動するソレノイドを油圧サーボ弁130に装着し、コントローラ6から出力される電気指令によってソレノイドを付勢することで、保持部材164を移動させるように構成してもよい。ただし、この場合、図8において、パイロット圧油が導入されるパイロット油圧室146が不要になるために、この室を大気と連通させたり、筒部145とピストン131との間をシールするOリングを設けたり、ピストン131とパイロットスプール136との間をシールするOリングを設けたりする必要がある。
(第2実施例;可変ターボチャージャのシルティング防止制御)
前述したように第1実施例の可変ターボチャージャ9は、たとえば図4に示すごとく、可動リング115とタービンハウジング92およびセンターハウジング97との隙間300あるいはノズルベーン117と凹部118の入口のガイド部材301との隙間302に、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがあるものであった。また、図15に示す構成の可変ターボチャージャ9にあっても同様に、シャフト518とセンターハウジング97との隙間501あるいはノズルベーン117と一方の排気導入壁113との隙間502、ノズルベーン117と他方の排気導入壁114との隙間503に、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがあるものであった。
デポジットの堆積、つまりシルティングは、エンジン1が定常状態にあり長時間、ノズルベーン可変機構(図4のスライド機構120、図15のスイング機構520)が動作していない場合に進行しやすい。このため、それら隙間に排気ガス中の汚染物あるいはエンジンオイル中の汚染物が堆積して、こじりといった作動不良を引き起こすおそれがある。
そこで、本実施例は、こうした可変ターボチャージャ9で発生するシルティングによる作動不良を防止すべく、上述の第1実施例と同様の制御を可変ターボチャージャ9を対象として行なうものである。
すなわち、コントローラ6では、可変ターボチャージャ9の作動部材であるノズルベーン117等が作動し、かつ排気ガスの流速が変動しない範囲の大きさのシルティング防止用の電気指令isを予め設定しておき、コントローラ6は、シルティング防止用の電気指令isをEPC弁200に対して出力する。これにより可変ターボチャージャ9の作動部材であるスライドベーン117等で発生するシルティングが防止される。
以上のように、本実施例によれば、第1実施例と同様に、制御電気指令iが一定値(エンジン1が定常状態)であって制御対象機器(可変ターボチャージャ9)の制御量(タービン回転数、ブースト圧)を変動させたくない場合に、その変動を引き起こすことなくシルティングを防止することができる。
なお、前述の特許文献2記載のものでは、可変ターボチャージャという制御対象機器の作動部材としてのノズルに堆積したデポジットを焼き切ることでデポジットを除去するようにしていた。そのためには、低温の運転状態から高温の運転状態への切り替えが必要であった。しかしながら、本第2実施例の制御によれば、本来のエンジン1の運転の切り替えは必要ではなく、エンジン1の運転状態に多大な影響を及ぼすことはない。
また特許文献1に記載されているように、ユニゾン・リングの回転に応じてノズルベーンを開閉作動させる機構を備えた可変ターボチャージャに本発明を適用してもよい。
また、上述した実施例では、可変ターボチャージャ9という排気ガス調整機器で発生するシルティングを防止する場合を想定して説明した。
しかし、可変ターボチャージャ9以外の排気ガス調整機器、たとえばEGRバルブ5で発生するシルティングを防止する場合に本発明を適用する実施も可能である。
上述したごとく、たとえば図16に示す構成のEGRバルブ5にあっては、バルブステム601は、EGR通路4を通過する排気ガスに晒されており、かつハウジング603のバルブガイド603aに対して摺動自在に設けられている。このためバルブステム601とハウジング603との隙間604には、排気ガス中に含まれるすすやカーボンによるデポジットが堆積するおそれがあり、エンジン1が定常状態にあって長期間バルブステム601が作動しないと、シルティングが発生しやすく、こじりといった作動不良を引き起こすおそれがある。
そこで、こうした構成のものに上述の実施例と同様に、コントローラ6で、EGRバルブ5のバルブステム601が作動し、かつEGR通路4を通過する排気ガスの流量が変動しない範囲の大きさのシルティング防止用の電気指令isを予め設定しておき、コントローラ6から、シルティング防止用の電気指令isを電磁弁620のソレノイド621に対して出力する。これによりEGRバルブ5で発生するシルティングを防止することができる。
ここで、前述の特許文献3記載のものでは、EGRバルブの作動部材としてのバルブステムに付着したカーボンを除去するために、バルブステムの周囲に、カーボン拭き取り用の金属繊維を設けたり、カーボン付着防止用の冷却・潤滑手段を設けたり、カーボン削り落とし用のスクレーパを設けたりしなければならなかった。しかしながら、本第2実施例によれば、こうした構成は不要となるため、部品点数増加や、場積がかさむという問題を回避することができる。
以上の第2実施例の説明では、可変ターボチャージャ9、EGRバルブ5といった排気ガス調整機器を想定して説明したが、本発明としては、エンジン1の排気ガスの通路に設けられた作動部材を作動させることにより排気ガスの流れが調整される排気ガス調整機器であれば、可変ターボチャージャ9やEGRバルブ5以外の排気ガス調整機器にも適用することができる。
さらに、第2実施例に関しても、制御対象機器は、排気ガス以外の流体であっても圧縮性の流体を扱うものであればよく、同様に本発明を適用することができる。すなわち、本発明の制御対象機器は、圧縮性流体の通路に設けられた作動部材を作動させることにより圧縮性流体の流れが調整される圧縮性流体調整機器であればよい。
なお、第2実施例の説明では第1実施例と同様に、油圧アクチュエータによって可変ターボチャージャ9等の圧縮性流体調整機器で発生するシルティングを防止する場合を想定して説明したが、第2実施例に関しては、圧縮性流体調整機器の作動部材を作動させるアクチュエータとしては、油圧以外の駆動源、電動、空圧などによって駆動されるものであってもよい。たとえば電動アクチュエータによって可変ターボチャージャ9等の圧縮性流体調整機器で発生するシルティングを防止する場合に本発明を適用することができる。
1 エンジン、 2 排気通路、3 吸気通路、5 EGRバルブ、6 コントローラ、 9 可変ターボチャージャ、15 油圧アクチュエータ、117 ノズルベーン、120 スライド機構、130 油圧サーボ弁、200 EPC弁(電磁弁)、520 スイング機構、601 バルブステム、620 電磁弁、630 油圧アクチュエータ