JP4779787B2 - Rfidタグ用の読み書き処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、半導体メモリを内蔵するRFIDタグと非接触の交信を行って、前記半導体メモリに対する情報の読み出し、または情報の書き込みを行う装置(読み書き処理装置)に関する。
近年、荷物の管理現場や工場の組立ラインなどには、搬送される物品に種々の情報が書き込まれた記憶媒体を取り付け、この記憶媒体との無線通信により情報を非接触で読み取るシステムが導入されている。このシステムは、RFIDシステム(Radio Frequency Identification System)と呼ばれる。前記物品に取り付けられる記憶媒体は、半導体メモリを含むICチップや通信用のアンテナコイルなどが内蔵されたもので、RFIDタグまたは非接触ICタグなどと呼ばれる。以下では、「RFIDタグ」または単に「タグ」という。
RFIDシステム用の従来の読み書き処理装置は、アンテナ部と制御部とが同一の筐体内に組み込まれたリーダライタ、またはアンテナ部から分離したコントローラとして構成される。従来の読み書き処理装置は、情報を読み出す場合、書き込む場合のいずれにおいても、RFIDタグに所定形式のコマンドを送信し、RFIDタグからそのコマンドに対するレスポンスを受けるようにしている。また、内部電源を持たないRFIDタグが使用される場合には、アンテナ部からの送信波によりRFIDタグ側のアンテナコイルに誘導起電力を発生させて、RFIDタグ内の制御回路を駆動するようにしている。
上記のようなRFIDシステムは、一般に、種々の機器が設置された環境に導入されるので、タグとアンテナ部との交信領域に種々のノイズが混入し、交信エラーが生じるおそれがある。このため、システムの稼働に先立ち、試験的な交信を行って、RFIDタグとの交信に支障がない状態になるように、タグとアンテナ部との距離を調整しておく必要がある。
この点に鑑み、出願人は、以前に、読み書き処理装置にテストモードを設定し、このテストモードにおいて、タグとの距離を調整しつつ読み書き処理を実行し、交信エラーが発生した場合に表示灯を点灯することを提案した(特許文献1参照)。
特許第2610897号公報
上記特許文献1に開示された発明では、交信エラーが発生したか否かをチェックするだけであるから、交信に成功しても、その交信がどの程度の余裕度をもって実行されかまで判断していない。しかしながら、RFIDシステムが設置される環境では、突発的なノイズが生じたり、新たな機器の導入によってノイズが増えるなど、ノイズが大きく変動する可能性がある。したがって、タグがアンテナ部の交信領域の境界付近に設置されていたり、ノイズのレベルが一般的なレベルよりも高い状態にあるなど、交信の余裕度が小さい状態にあると、ノイズのレベルが少し上がっただけで交信エラーが生じる可能性がある。
また、従来のRFIDシステムでは、ノイズの変動に対応するために、同じ内容の交信処理を複数回繰り返すようにしている。しかしながら、このような制御をもっても、ノイズが大きい状態が続くと、すべての交信に失敗する可能性がある。よって、RFIDタグとアンテナ部との距離を設定する際には、ある程度大きなレベルのノイズが生じても、交信を実行できるだけの余裕を確保しておくのが望ましい。
また、従来のRFIDシステムでは、タグをアンテナ部の前で静止させてから交信を実行するのが一般的であった。しかし、近年の工場の組立ラインでは、コスト低減のために生産ラインのタクトを短くすることが求められているなどの事情により、タグを静止させることなく、移動させながら交信処理を実行するケースが増えている。
RFIDタグを移動させながら交信を行う場合には、タグがアンテナ部の交信領域内にある間に交信を完了する必要がある。このため、タグが交信領域を通過するのに要する時間がタグとの交信に要する時間よりも十分に大きくなるように調整するのが望ましい。また、タグを移動させながら交信を行う場合にも、ノイズに備えて複数回の交信を行えるようにするのが望ましい。
1回分の交信に要する時間は、送受信のデータ容量が大きくなるほど、長くなる。タグを移動させながら交信を行う場合には、タグが交信領域内にある間に交信を完了しなければならないという制約があるため、データ容量が大きくなるほど、実行できる交信の回数は少なくなる。
このように、タグを移動させながら交信を行う場合には、交信できる回数が限られるから、ノイズに対して十分な余裕度を確保して交信を行う必要性がさらに高められる。
この発明は上記問題に着目してなされたもので、RFIDタグを移動させながら交信を行う場合に、ノイズのレベルが変動しても、安定した状態で交信を行うことができるように、RFIDタグとの交信に関わる条件を調整できるようにすることを目的とする。
なお、交信に関わる条件としては、アンテナ部とタグとの距離のほか、タグの移動速度や送受信のデータ容量などをあげることができる。
この明細書で言うところの「交信の余裕度」とは、RFIDタグと交信することが可能な状態において、その交信可能な状態がどの程度のノイズにまで対応可能であるかを示すもの、と考えることができる。交信の余裕度が大きいほど、ノイズの変動に強く、RFIDタグとの交信処理を安定して実行できる状態にあると考えることができる。また、交信の余裕度は、RFIDタグとアンテナ部との距離によっても変動する。また、タグを移動させながら交信を行う場合には、タグの移動速度や送受信のデータ容量によっても交信の余裕度が変動する。
この発明にかかる読み書き処理装置は、半導体メモリを具備するRFIDタグと交信して、前記半導体メモリに対する情報の読み書きを行うためのもので、コンピュータによる制御部を具備するのが望ましい。この読み書き処理装置は、RFIDタグとの交信のためのアンテナ部(アンテナコイルおよび信号の送受信のための回路を含む。)を具備するリーダライタとして構成することができる。ただし、読み書き処理装置の構成はこれに限定されるものではなく、前記アンテナ部から分離させたコントローラとして構成することもできる。または、アンテナ部のうちの送信回路や受信回路を含むタイプのコントローラとして構成することもできる。
この発明にかかる読み書き処理装置は、前記RFIDタグとの交信処理を実行する交信処理手段と、RFIDタグに対し、初回の情報読み出し用のコマンドを当該コマンドに対するRFIDタグからのレスポンスを受信するまで繰り返し送信した後に、このRFIDタグに情報の読み出しまたは書き込みを指示する実行コマンドを送信して当該実行コマンドに対するRFIDタグからのレスポンスを受信する本交信処理を複数サイクル繰り返して実行するように、前記交信処理手段の動作を制御する制御手段と、前記交信処理手段が本交信処理を実行している間に当該本交信処理に成功した実績に基づき、RFIDタグと交信できる能力を示す情報を作成する情報作成手段と、前記情報作成手段により作成された情報を表示または外部に出力する報知手段とを具備する。
上記において、交信処理手段、制御手段、および情報作成手段は、前記制御部を構成するコンピュータ内に、各手段の処理用のプログラムを組み込むことによって設定することができる。交信処理手段は、前記アンテナ部を介して、読み出し命令または書き込み命令のいずれかのコマンドをRFIDタグに送信するとともに、アンテナ部が受信したレスポンスの内容を認識するように構成される。初回の情報読み出し用のコマンドは、RFIDタグの種類やメモリ構成などを識別するために送信されるものである。
報知手段は、RFIDタグと交信できる能力を示す情報を表示する手段として構成される場合には、数値や文字そのものを表示するほか、数値をグラフなどのアナログ表示に置き換えて示すこともできる。また、上記の能力を表す情報を表示する場合には、各レベル毎に表示灯を設けて該当する表示灯を点灯させたり、1つの表示灯を、表示するレベルに合わせて表示色を切り替えて点灯させることができる。このような表示手段は、読み書き処理装置の装置本体を構成する筐体の表面に設けることができる。
また、報知手段を、上記の能力を示す情報を外部に出力する手段として構成する場合、この手段は、パーソナルコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの上位機器への出力用インターフェースとすることができる。また、この出力は、ディジタル信号に限らず、アナログ信号として出力することもできる。
上記の読み書き処理装置をRFIDタグを移動させながら交信する用途に適用すると、RFIDタグが交信領域に入って初回の情報読み出し用のコマンドに対するRFIDタグからのレスポンスの受信に成功したことに応じて本交信処理が開始され、複数サイクル分の本交信処理が実行されている間の交信に成功した実績に基づいてRFIDタグと交信できる能力を示す情報が作成される。さらに、作成された情報が表示または出力の形で報知されるから、ユーザーは、交信の余裕度がどの程度であるかを推測することができる。
上記の読み書き処理装置の好ましい態様では、情報作成手段は、RFIDタグと交信できる能力を示す情報として、複数サイクル分の本交信処理における交信成功回数または交信成功率を示す情報を作成する。
また他の好ましい態様での情報作成手段は、複数サイクル分の本交信処理における交信成功回数と前記本交信処理でRFIDタグに送信されたコマンドの容量に基づき、前記本交信処理においてRFIDタグに送信可能なデータ容量を示す情報を、RFIDタグと交信できる能力を示す情報として作成する。
上記各態様の読み書き処理装置によれば、複数サイクル分の本交信処理が実行される間の交信成功回数または交信成功率、もしくはRFIDタグに送信可能なデータ容量が表示または出力の形で報知される。よってユーザーは、報知される数値が高いほど余裕度が大きいと考えることができる。
他の好ましい態様による読み書き処理装置は、交信処理手段の交信処理における感度を調整するための感度調整手段をさらに備える。また前記制御手段は、この感度をあらかじめ定めた所定のレベルに設定して交信処理手段に複数サイクル分の本交信処理を開始させると共に、1サイクル分の本交信処理が終了する毎に前記感度を現在値よりも低いレベルに変更する。また、この場合の情報作成手段は、各サイクルにおける本交信処理が適切に実行されたか否かを判別し、RFIDタグと交信できる能力を示す情報として、適切に実行された本交信処理における感度の最小レベルまたは適切に実行された本交信処理の回数を示す情報を作成する。
上記において、感度調整手段は、RFIDタグへの送信信号のレベルを調整する手段として構成することができる。この手段は、たとえば、アンテナコイルのQ値を変化させるための回路として、アンテナ部に組み込まれる。
また、感度調整手段は、RFIDタグから受信した信号の増幅率を調整する手段として構成することもできる。この手段は、たとえば、受信回路のオペアンプの帰還抵抗を切り替える手段として、アンテナ部に組み込まれる。
RFIDタグとアンテナ部との距離が一定であるものとすると、送信信号のレベルが小さくなるほど、RFIDタグに供給できる電力が小さくなる。この結果、RFIDタグからの応答信号のレベルが小さくなり、交信処理に失敗する可能性が高くなる。したがって、送信レベルを段階的に小さくしながら交信処理を繰り返した場合、交信処理に失敗した時点での送信レベルと最初の送信レベルとの差が大きいほど、交信の余裕度が大きいと考えることができる。
また、RFIDタグとアンテナ部との距離が一定であり、送信信号のレベルも一定である場合には、受信信号の増幅率が小さくなるほど、RFIDタグからの信号を復調できる可能性が低くなり、交信処理に失敗する可能性が高くなる。したがって、増幅率を段階的に小さくしながら本交信処理を繰り返した場合、本交信処理に失敗した時点での増幅率と最初の増幅率との差が大きいほど、交信の余裕度が大きくなると考えることができる。
したがって、適切に実行された本交信処理における感度の最小レベルまたは適切に実行された本交信処理の回数を示す情報を表示または出力すれば、ユーザは、この情報から交信の余裕度を推測することができる。
情報作成手段は、適切に実行された本交信処理における感度の最小レベルに基づく情報を作成する場合には、この最小レベルが、少なくとも、合格レベル、不合格レベルのいずれに相当するかを判別し、その判別したレベルを交信の余裕度を示す情報とすることができる。
また、情報作成手段が適切に実行された本交信処理の回数に基づく情報を作成する場合には、この回数に所定の点数を掛け合わせた数値をRFIDタグと交信できる能力を示す情報として設定することができる。たとえば、送信信号のレベル変更を最大5回実行できる場合に、1回の変更につき10点を設定すれば、RFIDタグと交信できる能力を50点満点で示すことができる。
RFIDタグと交信できる能力を示す情報が合格レベル、不合格レベルとして表される場合、前記報知手段は、複数の表示灯や多色発光型の表示灯などによって交信の余裕度を示す情報を表示することができる。また、当該情報を出力する場合には、たとえば、合格レベルを「1」、不合格レベルを「0」とするディジタル信号出力することができる。
またRFIDタグと交信できる能力を示す情報が点数として表される場合には、点数表示が可能な表示器(7セグのLED表示器や液晶パネルなど)を報知手段とすることができる。また、この場合にも、前記点数を示すディジタル信号またはアナログ信号を上位機器に出力することができる。
さらに上記の読み書き処理装置の他の好ましい態様においては、制御手段は、1サイクル分の本交信処理において、前記交信処理手段にRFIDタグにコマンドを送信する処理およびRFIDタグからの応答を受信する処理を複数回実行させる。また、情報作成手段は、1サイクル分の本交信処理における交信成功回数に基づいて当該本交信処理が適切に実行されたか否かを判別する。
上記の態様によれば、一定のレベルの感度を維持しながら、RFIDタグとの交信処理を複数回繰り返して実行し、この複数回の交信処理のうちの交信成功回数に基づき、1サイクル分の本交信処理を適切に実行できたか否かを判別することができる。
したがって、複数回の交信処理によってRFIDタグから正常なレスポンスを受信することができた場合でも、交信に失敗する度合が大きい場合には、1サイクル分の本交信処理が適切に実行されなかったと判断することができる。言い換えれば、交信処理の確度があるレベルより上になった時点で1サイクル分の本交信処理が適切に行われたと判断されることになる。
なお、タグを移動させながら交信を行う場合の余裕度は、タグとアンテナ部との距離のほか、タグの移動速度やタグに送信されるデータの容量によっても変動する。したがってユーザは、読み書き処理装置の報知手段により表示または出力された情報から交信の余裕度が確保できていないと判断した場合には、上記した要因のいずれかを選択して調整を行うことができる。
さらに、この発明の読み書き処理装置(各種態様も含む。)には、前記情報作成手段により作成された、RFIDタグと交信できる能力を示す情報を蓄積する蓄積手段を設けることができる。この場合の報知手段は、前記情報作成手段により作成された直後の情報及び前記蓄積手段に蓄積された情報の少なくとも一方を、表示または出力するように設定される。
上記において、前記蓄積手段は、不揮発性のメモリ装置と、このメモリ装置に交信の余裕度を示す情報を格納する手段とにより構成することができる。後者の情報を格納する手段は、前記制御部を構成するコンピュータ内にプログラムを組み込むことによって設定することができる。
この発明によれば、移動するRFIDタグと複数サイクル分の交信を行う場合に、RFIDタグと交信できる能力を示す情報が表示または出力されるから、この表示や出力に基づき、交信の余裕度が大きくなるように、アンテナ部とRFIDタグとの距離や、RFIDタグの移動速度、送受信のデータ容量などを調整することができる。よって、ノイズのレベルの変動が大きい環境下においても、RFIDタグとの交信処理を安定して行うことが可能となる。
図1は、この発明が適用されたRFIDタグ用のリーダライタ1、およびその交信対象のRFIDタグ2(以下、単に「タグ2」という。)の構成を示す。この実施例のタグ2は、電源を内蔵せず、リーダライタ1からの送信波により生じた誘導起電力によって動作するタイプのもので、制御部21や半導体メモリ22を具備する。また、このタグ2には、交信のために、アンテナコイル23、コンデンサ24、ロードスイッチ25(この実施例では接点付き抵抗を使用する。)などが設けられる。なお、このタグ2の制御部21はコンピュータのほか、リーダライタ1からの送信信号を復調するための復調回路などの周辺回路も含む。
リーダライタ1は、制御部10、アンテナコイル11、送信回路12、受信回路13、発振回路14、およびアンテナコイル11に対する整合処理のためのZ変換回路101などが、1つの筐体(図示せず。)内に組み込まれて成る。さらに、この筐体には、表示部15、インターフェース(I/F)回路16、入出力(I/O)回路17などが設けられる。
リーダライタ1側の制御部10はコンピュータであって、内部メモリに組み込まれたプログラムに基づき、タグ2との交信処理や後記するテストモードの処理などを実行する。また、この制御部10は、前記発振回路14からのパルス信号に基づき、搬送波(キャリア)の元となる高周波パルスを出力する。また、タグ2との交信時には、コマンドの内容を表すデータをパルス信号として出力する(以下、この出力信号を「コマンド信号」という。)。
前記送信回路12には、ドライブ回路102、変調回路103、同調増幅回路105、およびこの同調増幅回路を挟む2個のZ変換回路104,106などにより構成される。また、受信回路13には、バンドパスフィルタ(BPF)回路107、検波回路108、ローパスフィルタ(LPF)回路109、増幅回路110、コンパレータ回路111などが含められる。
前記表示部15は、後記する交信の成功率を表示するための数値表示器や複数の表示灯(図示せず。)などを含むもので、筐体表面の適所に設けられる。インターフェース回路16は、パーソナルコンピュータやPLCなどの上位機器(図示せず。)との通信に用いられる。入出力回路17は、外部信号を取り込んだり、処理結果を出力するために使用される。
図2は、上記リーダライタ1の送受信に関わる信号のタイミングチャートであって、図2(1)は、タグ2へのコマンド送信に関わる信号処理の流れを、図2(2)は、レスポンスの受信に関わる信号処理の流れを、それぞれ示す。
図2(1)において、(a)は、前記した搬送波であり、(b)は、コマンド信号である。コマンド信号は、コマンドを構成する各ビットのデータを、「1」をローレベル、「0」をハイレベルとしてパルス幅変調した信号となる。
変調回路103は、上記コマンド信号を用いて搬送波を振幅変調(ASK変調)し、図中の(c)に示すような送信信号を生成する。この送信信号は、同調増幅回路105による増幅処理やZ変換回路104,106,101によるインピーダンス整合処理を経て、アンテナコイル11に与えられ、電磁波としてタグ2に送信される。
タグ2側の制御部21は、前記リーダライタ1からの送信信号を復調してコマンドの内容を認識すると、そのコマンドに応じた処理を実行し、その処理結果を示すレスポンスを生成する。このレスポンスの返送のために、制御部21は、図2(2)の(d)(e)に示すように、データ配列に基づいてロードスイッチ25をオン/オフする。この実施例では、1ビット分の信号を送信するための期間の長さを、ロードスイッチ25のオン/オフを16回繰り返すのに必要な長さに設定している。送信するデータが「0」のときは、前記期間の前半でロードスイッチ25のオン/オフを8回繰り返し、後半はロードスイッチ25をオフ状態にする。反対に送信するデータが「1」のときは、前記期間の前半はロードスイッチ25をオフ状態にし、後半にオン/オフを8回繰り返すようにしている。
アンテナコイル1とタグ2とが交信可能な関係にある場合には、各アンテナコイル11,23は電磁的に結合した状態となっている。したがって、上記のロードスイッチ25の切り替えによってタグ2のインピーダンスが周期的に切り替えられると、リーダライタ1のインピーダンスもこの切り替えに伴って変化し、アンテナコイル11に流れる電流が変化する。前記受信回路13は、この変化から前記レスポンスを示す信号を検出するもので、バンドパスフィルタ回路107によりノイズを除去した後、検波回路108により前記インピーダンスの切り替えの影響を受けた搬送波を抽出する。さらに、ローパスフィルタ回路109により搬送波の周波数成分を除去した後、増幅回路110により増幅処理を施した結果、図中の(f)に示すような受信信号が検出される。
上記の受信信号には、前記ロードスイッチ25が切り替えられる期間に、その切り替えに同期し、所定値以上の振幅を持つ波が現れる。ただし、ロードスイッチ25のオフ状態が維持される期間の受信信号にも、周囲のノイズの影響によって、所定大きさの振幅を持つ波が現れる。
コンパレータ回路111は、上記の受信信号を所定の基準レベルと比較し、図中の(g)に示すように、振幅の大きな波を抽出した2値信号を生成する。制御部10は、この2値信号を1ビット毎に切り分けることにより、図中の(h)に示すように、各ビットのデータを復調する。
上記のリーダライタ1は、前記した上位機器からコマンド(読み出し命令または書き込み命令)を受信することによって、タグ2との交信を開始し、前記上位機器と同様のコマンドをタグ2に与える。タグ2がこのコマンドに応じた処理を実行してレスポンスを返送してくると、リーダライタ1は、このレスポンスを上位機器に送信する。
図3は、前記リーダライタ1、タグ2、および上位機器における交信処理の流れであって、(1)は上位機器とリーダライタ1との間でやりとりされる信号の内容を、(2)はリーダライタ1からタグ2に送信される信号の内容を、(3)はタグ2からリーダライタ1に送信される信号の内容を、それぞれ示す。なお、図中、点線で示す部分は、リーダライタ1またはタグ2の情報処理期間であり、これらの期間についても、図の余白に、具体的な処理の内容を示してある。
以下、この図中の参照符号(A,B,C・・・)を引用しつつ、タグ2に対する基本的な情報処理の流れを説明する。
まず、上位機器は、タグ2に実行させるべき処理を示すコマンドを生成し、これをリーダライタ1に送信する(A)。リーダライタ1は、このコマンドの内容を解析した上で、タグ2に対し、初回の情報読み出しを要求するコマンドを送信する(B)。この初回の情報読み出しは、タグ2の識別情報などの固定データを確認するためのもので、「システムリード」と呼ばれる。タグ2では、システムリード用のコマンドを認識して解析した後、指定された情報を含むレスポンスを生成して、前記リーダライタ1に返送する(C)。
リーダライタ1は、前記レスポンスの内容を解析し、正常なレスポンスであると判断すると、前記タグ2に2回目のコマンドを送信する(D)。この2回目のコマンドは、前記上位機器からのコマンド(A)の内容をRFIDタグ2に与えて、そのコマンドを実行させることを目的とするもので、以下、これを「実行コマンド」という。タグ2では、実行コマンドを解析してその内容に応じた処理を実行した後、処理の内容を示すレスポンスを生成し、リーダライタ1に返送する(E)。リーダライタ1は、タグ2からのレスポンスが正常であることを確認した上で、これを上位機器に送信する(F)。
なお、図3に示した処理は、タグ2をリーダライタ1の正面で所定時間停止させて実行されるものである。タグ2を停止させることなく、移動させながら交信を行う場合には、BのシステムリードをCのレスポンスが得られるまで繰り返し、しかる後にDの実行コマンド送信処理を実行する。以下の図4〜図9に示す各実施例では、タグ2を停止させて交信を行うことを前提として、BおよびCの処理を1サイクルのみ実行するようにしている。
一般的なRFIDシステムのリーダライタ1およびタグ2は、上記機器からのコマンドに対し、B〜Fの信号のやりとりを複数サイクル繰り返して実行する。したがって、これらの交信処理のうちのいずれかにおいて、タグ2から正しいレスポンスを得ることができれば、上位機器は、目的とする情報処理を実行することができる。
しかしながら、リーダライタ1とタグ2との交信の余裕度が小さい場合には、本来のデータを示す信号とノイズとの差は小さな状態となる。このような場合に、突発的なノイズが発生するなどして、ノイズのレベルが変動すると、タグ2またはリーダライタ1側では、データとノイズとを切り分けて認識できない状態となり、最終的にタグ2から正常なレスポンスを得られなくなる可能性がある。
そこで、以下に示す実施例では、リーダライタ1において、交信の余裕度をチェックするテストモードを実行するようにしている。このテストモードでは、タグ2と試験的な交信を実行して交信の成功率を求め、これを表示部15に表示する。ユーザーは、この表示に基づき、成功率が十分に高い状態で交信が行われるようにリーダライタ1とタグ2との距離を調整することができるので、交信の余裕度を十分に確保することができ、ノイズの変動にも対応することが可能となる。
以下、このテストモード時の処理の詳細について、図4を用いて説明する。この実施例では、前記図3のB〜Eの信号のやりとりを1回の交信処理として、これを100回実行している。図中のXは交信処理の実行回数(以下、「交信実行回数X」という。)、Yは交信に成功した回数(以下、「成功回数Y」という。)を、Pは交信成功率を、それぞれ示す。
この処理も、前記図3に示した通常の読み書き処理と同様に、上位機器からのコマンド(テストモードの実行を命じるコマンドとなる。)に基づき開始される。まず、最初のST1(STはSTEP(ステップ)の略である。以下も同じ。)では、前記交信実行回数Xおよび成功回数Yをゼロリセットする。つぎのST2では、前記したシステムリードを実行し、ST3において、タグ2からのレスポンスを受信しつつ解析する。ここで、レスポンスが正常であると判断すると、ST4からST5に進み、実行コマンドを送信する。つぎのST6では、実行コマンドに対するレスポンスを受信し、その内容を解析する処理を実行する。この処理により、前記レスポンスが正常であると認識すると、ST7からST8に進み、前記交信実行回数Xおよび成功回数Yをインクリメントする。
一方、システムリードに対するレスポンス、または実行コマンドに対するレスポンスのいずれかが不良であれば、ST9に進み、交信実行回数Xのみをインクリメントする。 なお、システムリードに対するレスポンスを正常に得られなかった場合には、ST9を実行するのみとなり、実行コマンドの送信処理はスキップされる。
ST8またはST9のいずれかを実行した後は、ST10を介してST2に戻る。そして、再度、上記と同様の処理を実行し、交信に成功すれば成功回数Yをカウントする。100回の交信処理が終了すると、ST10が「YES」となってST11に進み、交信実行回数Xに対する前記成功回数Yの比を求め、その値を交信成功率Pとする。ST12では、交信成功率Pの値を表示部15に表示させる。
よって、ユーザは、リーダライタ1とタグ2との距離を仮設定してテストモードを実行し、表示された交信成功率Pが所定の値以上であれば、交信の余裕度を確保できたとみなして、仮設定した距離を確定することができる。
なお、上記実施例では、交信処理に成功した比率を求めているが、これに代えて、交信実行回数Xに対する成功回数Yの差を求めてもよい。この場合には、表示される数値が小さいほど、交信の余裕度が大きくなると考えることができる。
また、交信成功率に代えて、交信処理に失敗した比率を求めてもよい。また、上記の実施例では、交信成功率をリーダライタ1側で表示するようにしたが、これに代えて、上位機器に交信成功率を出力し、上位機器側で表示処理を行うようにしてもよい。
つぎに示すテストモードの実施例では、タグ2への送信信号のレベルを段階的に小さくしながら交信処理を繰り返し、交信処理に失敗した時点での送信信号のレベルによって、交信の余裕度を判別するようにしている。この実施例を適用する場合、前記リーダライタ1には、図5に示すようなレベル調整回路が設けられる。
図5のレベル調整回路120は、3個の抵抗R1,R2,R3を並列に接続した回路であって、アンテナコイル11とグランドとの間に介装される。各抵抗R1,R2,R3には、それぞれ切替回路SW1,SW2,SW3が接続されており、オンにする切替回路の組み合わせによって抵抗の大きさが変化する。各切替回路SW1,SW2,SW3のオン/オフは、制御部10によって切り替えられる。なお、この図5では、切替回路SW1,SW2,SW3を簡易化して示しているが、実際には、トランジスタやアナログスイッチなどを用いるのが望ましい。
アンテナコイル11のQは、前記レベル調整回路120の抵抗が大きくなるほど低くなり、送信レベルは、Qが低くなるほど小さくなる。よって、この実施例の制御部10は、前記レベル調整回路120の抵抗が段階的に大きくなるように、オン設定する切替回路の組み合わせを変更しながら、交信処理を実行する。
図6は、送信レベルの調整によってリーダライタ1とタグ2との距離を調整する方法の概要を示す。なお、この図6および次の図7では、説明を簡単にするために、タグ2への送信のために、最大1ワット(W)の電力を発生することができ、抵抗を切り替えることによって、0.2Wずつ電力を小さくできるものとする。
タグ2との交信が可能な距離の最大値(以下、「交信可能距離」という。)は、送信波によってタグ2に必要な電力を誘起できるか否かにより決まる。したがって、送信レベルが小さくなれば、交信可能距離も小さくなる。この実施例では、図6に示すように、送信レベルが0.4Wになるまで交信が可能であれば、リーダライタ1とタグ2との距離が送信レベルが0.4Wのときの交信可能距離Lを超えない範囲にあり、送信レベルを最大の1Wに設定したときに、交信に十分な余裕度が確保されると考えている。交信可能距離は、周囲のノイズレベルによって変動するので、テストモードによって確認する必要がある。
この実施例のテストモードでは、赤色、黄色、緑色をそれぞれ発光する3個の表示灯を用いて、交信処理が全く不可能な状態である旨の表示(交信不可能表示)、交信は可能であるが十分な余裕度を確保できていない旨の表示(交信不安定表示)、十分な余裕度をもって交信できる状態にある旨の表示(交信安定表示)を行うようにしている。ユーザーは、いずれの表示が行われるかによって、現在の交信が余裕度を確保した適切な状態で行われているものか否かを容易に判断することができる。
図7は、テストモード時の処理手順を示す。なお、図中のWは、送信信号に含まれる電力を示すもので、単位はワットである。この手順も前記図4の手順と同様に、上位機器からのコマンドにより開始されるもので、最初のST21では、前記送信レベルを最大値の1に設定する。
つぎのST22では、システムリードを実行する。ST23では、タグ2からのレスポンスを受信し、その内容を解析する。ここでレスポンスが正常と判断すると、ST24からST25に進み、実行コマンドを送信する。ST26では、この実行コマンドに対するレスポンスを受信し、その内容を解析する。このレスポンスも正常であれば、ST27が「YES」となってST28に進み、前記送信レベルを0.2Wだけ小さくする。
この後は、ST22〜27の処理を再実行する。以下、同様にして、システムリード、実行コマンドの双方に対するレスポンスの受信に成功したことを交信成功とみなし、交信に成功する都度、送信レベルを小さくしてST22〜27の処理を実行する。
上記ST22〜28のループにおいて、システムリード、実行コマンドのいずれかに対するレスポンスが正常に得られなかった場合には、ST24またはST27が「NO」となる。これにより、制御部10は、上記のループを抜け、その時点での送信レベルをチェックする。
ここで、送信レベルが初期値の1であれば、ST29が「YES」となってST31に進み、交信不可能表示として赤色の表示灯を点灯させる。また送信レベルが1より小さいが、0.4よりも大きい場合には、ST29が「NO」、ST30が「YES」となってST32に進み、交信不安定表示として黄色の表示灯を点灯させる。送信レベルが0.4W以下であれば、ST29,ST30の双方が「NO」となってST33に進み、交信安定表示として緑色の表示灯を点灯させる。
よって、ユーザーは、リーダライタ1とタグ2との距離を仮設定してテストモードを実行し、緑色の表示灯が点灯した時点の距離を適切な距離として確定することができる。通常時には、常に最大の1Wの送信レベルが設定されるので、十分な余裕度をもって交信を行うことができる。
上記の実施例では、送信レベルを変更しながら交信処理を行うようにしたが、これに代えて、受信信号の増幅率を変更するようにしてもよい。図8は、前記増幅回路110に増幅率の調整機能を持たせた例である。図中の110Aは、増幅回路110の主体をなすオペアンプであって、その帰還経路に増幅率調整回路121が設けられている。この調整回路121も、前記図5のレベル調整回路120と同様に、3個の抵抗R1,R2,R3およびこれらに個別に対応する切替回路SW1,SW2,SW3を含む。各切替回路SW1,SW2,SW3のオン/オフは、前記図5の例と同様に、制御部10により制御される。
この実施例のテストモードでは、制御部10は、増幅率を最大値に設定して交信処理を実行し、交信に成功すれば、増幅率を所定値だけ小さな値に変更する。以下、図7に準じた手順により、増幅率を段階的に小さくしつつ交信処理を繰り返し、交信に失敗した時点での増幅率をチェックする。そして、この増幅率が初期値のままであれば、交信不可能表示を行い、前記増幅率が初期値より小さいが所定のしきい値よりも高い場合には、交信不安定表示を行なう。一方、前記増幅率がしきい値以下であれば、交信に十分な余裕度が確保されているとして、交信安定表示を実行する。
前記図2(2)の(f)に示したように、受信回路13により検出された受信信号では、タグ2からのデータ送信が行われていない期間(ロードスイッチ25のオフ状態が維持されている期間)でも、ノイズを反映したレベル変化が生じている。増幅率が十分に設定されていれば、このノイズレベルと本来のデータとを切り分けることができるが、増幅率が小さくなるほど、その切り分けは困難になる。しかし、増幅率が前記しきい値の付近になるまで交信が可能であれば、ノイズに十分に対応できる交信の余裕度が確保できていると考えることができる。ユーザーは、リーダライタ1とタグ2との距離を調整しつつ、上記のテストモードを実行し、交信安定表示である緑色の表示灯が点灯したときの距離を適切なものとして確定する。この場合も、通常処理時の増幅率は最大値に設定されるので、交信を安定して実行することが可能となる。
なお、上記2例のように送信レベルや増幅率を変更しながら交信処理を行う場合、その変更の回数をカウントしてゆき、交信失敗時点での計数値をもって、表示灯を制御するようにしてもよい。すなわち、計数値が0であれば交信不可能表示を実行し、計数値が0より大きく所定のしきい値より小さい場合には交信不安定表示を実行し、計数値がしきい値以上であれば交信安定表示を実行することができる。
つぎの図9に示す実施例は、前記図4の手順と図7の手順とを組み合わせたものである。まず、最初のST41で送信レベルを最大値の1Wに設定した後、ST42〜ST51において、前記図5のST1〜ST10と同様の処理、すなわち100回分の交信処理を実行する。この後は、ST52において、交信成功率Pを求める。ここでPが所定値(図示例では0.98)以上であれば、ST53が「YES」となってST54に進み、送信レベルを0.2だけ小さくする。
この後は、ST42に戻り、変更された送信レベルの下で、再度100回の交信処理を実行する。以下同様にして、0.98以上の交信成功率Pが得られたことをもって交信成功とみなし、送信レベルを変更して処理を続行する。
所定の時点での交信成功率Pが0.98より小さくなると、ST53が「NO」となる。制御部10は、この「NO」判定に応じて、前記図7のST29〜ST33と同様に、その時点での送信レベルに基づき、交信不可能表示、交信不安定表示、交信安定表示のいずれかを実行する(ST55〜ST59)。なお、送信レベルに代えて、受信信号の増幅率を変化させるようにする場合にも、図9と同様の制御を実行することができる。
上記の実施例によれば、交信処理の確度があるレベルより下になった時点で交信の余裕度をチェックすることができるから、リーダライタ1とタグ2との位置関係の調整を、図7の実施例よりも高い精度で行うことができる。よって、より一層安定した状態で交信を行うことが可能となり、ノイズに強い情報処理を実現することができる。
なお、上記した各テストモードの実施例は、いずれも上位機器からテストモードを開始する旨のコマンドを受信したことによって開始されるが、これに限定されるものではない。たとえば、リーダライタ1側に、テストモード用の切替スイッチを設け、上位機器からのコマンドによらずに単独でテストモードを実行するようにしてもよい。
また、各実施例では、1回の交信処理において、システムリード用のコマンドと実行コマンドとの2種類のコマンドを送信し、各コマンドに対するレスポンスを受信するようにしたが、これに限らず、少なくとも1つのコマンドの送信とこれに対するレスポンスの受信をもって、1回分の交信処理としてもよい。
つぎに、タグ2を移動させながら交信を行うことを前提として交信の余裕度をチェックする場合のテストモードについて説明する。
図10は、タグ2が交信領域200に入る前の状態を、図11は、前記タグ2が交信領域200を通過する状態を、それぞれ示す。図10に示す時点では、リーダライタ1からタグ2にコマンドを送っても、タグ2はそのコマンドに反応することができないから、正常なレスポンスは返送されてこない。これに対し、図11に示すように、タグ2が交信領域200内に入ると、このRFIDタグ2内に交信に必要な電力が誘起され、リーダライタ1からのコマンドを受け付けられる状態となる。以後、タグ2は、交信領域200内を矢印Fの方向に沿って移動するが、タグ2が交信領域200から抜けるまでの間、コマンドおよびレスポンスをやりとりすることが可能である。
タグ2を移動させながら交信を行う場合のテストモードでは、タグ2が交信領域200に入って交信可能になったことを検出する必要がある。このため、この実施例では、前記したシステムリード(図3の(B)に示したもの)を繰り返し送信し、タグ2からシステムリードに対する正常なレスポンス(図3(C)に示したもの)を受信したことを条件として、実行コマンドの送信処理を開始するようにしている。
さらに、この実施例のテストモードでは、通常の実行コマンドを送信する処理に代えて、データ容量を1バイトに限定した専用の実行コマンド(以下、このコマンドを「テスト用コマンド」という。)を送信するようにしている。このテスト用コマンドも、通常の実行コマンドと同様に、タグ2にデータの読み出しまたは書き込みを命令するもので、タグ2からは命令に応じたレスポンスが返送される。
以下、図12を用いて、テストモードにおける詳細な処理手順を説明する。なお、図中、Zは交信実行回数であり、Uは、テスト用コマンドの送信に対して正常なレスポンスを受信した回数である(以下、このUを「交信成功回数」という。)。また。ST72のQは、交信の余裕度である。
この手順を実行するに先立ち、制御部10には、上位機器などから通常の実行コマンドのデータ容量が入力される。ST61では、このデータ容量を変数mにセットするとともに、このmに標準的な送信回数(この実施例では10とする。)を乗算し、その乗算値を変数Nにセットする。
つぎに、ST62において、前記交信実行回数Zおよび成功回数Uをゼロリセットした後、システムリードを実行する(ST63)。つぎのST64では、前記システムリードに対するレスポンスの受信およびその解析処理を実行する。ここで、正常なレスポンスを確認できなかった場合には、ST65が「NO」となってST63に戻り、システムリードを再実行する。このようにして、所定回数のシステムリードを実行した結果、正常なレスポンスが確認されると、ST65が「YES」となり、以下、ST66〜71のループに移行する。
ST66〜71では、前出の図4のST4〜10と同様の手順により、1バイト分のテスト用コマンドの送信処理、そのコマンドに対するレスポンスの受信および確認処理を、N回繰り返す。またこのN回の交信において、正常なレスポンスを確認する都度、交信成功回数Uをインクリメントする。
上記までの流れによれば、正常なレスポンスが得られるまで繰り返しシステムリードを実行することにより、タグ2が交信領域内に入ったか否かを検出し、その検出に応じてテスト用コマンドの送信を開始することができる。さらに、テスト用コマンドをN回送信することにより、タグ2に対し、実際の実行コマンドを標準の回数(10回)送信した場合と同じ量のデータを送信することができる。
ST66〜71のループがN回実行されると、ST71が「YES」となってST72に進む。このST72では、前記交信成功回数Uを通常の実行コマンドのデータ容量mで除算し、その演算結果を余裕度Qとして設定する。
このようにして、交信の余裕度Qが求められると、ST73では、算出された余裕度Qの値を表示するとともに、外部機器に出力する。
この後、別のタグ2を用いてテストを続行する場合には、ST74が「YES」となり、ST62に戻る。よってタグ2毎に、余裕度Qを求めることができる。
タグ2を移動させながら交信処理を行う場合、交信可能な時間が限られるから、タグ2を停止させて交信を行う場合のように、十分な回数の交信処理を行うことは困難である。特に実行コマンドのデータ容量が大きい場合には、交信可能回数は少なくなる。この場合、ノイズの影響を受けて交信に失敗すると、必要な回数分の交信処理を実行することが困難になる可能性がある。
上記実施例における成功回数Uは、最小情報単位である1バイトのコマンドによる交信に成功した回数であるから、このUの値は、タグ2が交信領域200を通過する間にそのタグ2に送信することができるデータ容量を表していると考えることができる。ST72の余裕度Qは、前記Uを実行コマンドのデータ容量mにより除算して求められたものであるから、タグ2に実行コマンドを送信することができる回数(以下、「コマンドの送信可能回数」という。)を表していると考えることができる。したがって、ユーザーは、図12のテストモードで得られた余裕度Qにより、必要な回数分の交信処理を実行できる状態にあるか否かを容易に確認することができる。
なお、ユーザーは、余裕度Qが適切でないと判断した場合には、リーダライタ1とタグ2との距離のほか、タグ2の移動速度を調整することができる。また、可能であれば、実行コマンドのデータ容量を調整することで余裕度を向上することもできる。
さらに、余裕度Qとして出力する数値は、前記コマンドの送信可能回数に限らず、Uの値、すなわちタグ2に対して送信可能なデータ容量としてもよい。また、図4の実施例と同様の交信成功率を求めてもよい。
ところで、これまでに説明した各実施例では、アンテナ部と読み書き処理の機能を有する制御部とが一体化されたリーダライタ1に適用することができるが、これに限らず、アンテナ部から分離したコントローラに適用することもできる。
図13は、アンテナ部から分離したコントローラの一例を示す。
このコントローラ3の筐体30の内部には、前記図1の構成のうち、制御部10、インターフェース回路16、入出力回路17が組み込まれる。また筐体30の上面には、複数のコネクタや、数値表示器31、表示灯32などが設けられる。
各種コネクタのうち、33,34は、図示しないアンテナ部に接続するためのものである。また、35,36,37は、パーソナルコンピュータやPLCなどの上位機器に接続するためのコネクタである。また、38は、上位機器に、交信の余裕度に関する数値情報を出力するためのコネクタである。
数値表示器31は、前記した交信成功率Pや余裕度Qなどの数値を表示するのに用いられる。また、その下の複数の表示灯32は、前記数値を複数段階のレベルに分類して表示する場合や、前記図7や図9の実施例に準じた処理により交信の安定度を表示する場合などに、使用される。
なお、上記したリーダライタ1やコントローラ3には不揮発性メモリを組み込むことができる。この場合、テストモードで作成した余裕度を前記不揮発性メモリに蓄積してゆき、この蓄積情報を、たとえば上位機器からのコマンドに応じて読み出して、上位機器に出力することが可能となる。このような機能があれば、ユーザーは、過去に実行されたテストモードにおける交信の余裕度やその経時的な推移を確認することができる。
なお、蓄積された情報を読み出す処理は、上位機器からのコマンドに応じて実行する場合に限らない。たとえば、上記機器からテストモードの実行命令を受ける都度、そのテストモードで作成された情報や過去所定期間の蓄積情報を含むレスポンスを作成して、上位機器に送信してもよい。
この発明が適用されたリーダライタとその交信対象のタグとの構成を示すブロック図である。 リーダライタの送受信に関わる信号のタイミングチャートである。 リーダライタ、タグ、上位機器における交信処理の流れを示すタイミングチャートである。 テストモードの処理手順の例を示すフローチャートである。 送信レベル調整回路の例を示す図である。 送信レベルの調整によって距離調整を行う方法の概要を示す図である。 図6の方法を適用する場合のテストモードの処理手順を示すフローチャートである。 増幅率の調整回路の例を示す図である。 テストモードの処理手順の例を示すフローチャートである。 タグが交信領域に入る前の状態を説明する図である。 タグが交信領域に入った状態を説明する図である。 タグを移動させながら交信を行う場合のテストモードの処理手順を示すフローチャートである。 アンテナ部から分離したコントローラの外観を示す斜視図である。
1 リーダライタ
2 RFIDタグ
3 コントローラ
10 制御部
11 アンテナコイル
15 表示部
31 数値表示器
32 表示灯
38 コネクタ
120 送信レベル調整回路
121 増幅率調整回路

Claims (8)

  1. 半導体メモリを具備するRFIDタグと交信して、前記半導体メモリに対する情報の読み書きを行うための装置であって、
    前記RFIDタグとの交信処理を実行する交信処理手段と、
    前記RFIDタグに対し、初回の情報読み出し用のコマンドを当該コマンドに対するRFIDタグからのレスポンスを受信するまで繰り返し送信した後に、このRFIDタグに情報の読み出しまたは書き込みを指示する実行コマンドを送信して当該実行コマンドに対するRFIDタグからのレスポンスを受信する本交信処理を複数サイクル繰り返して実行するように、前記交信処理手段の動作を制御する制御手段と、
    前記交信処理手段が前記本交信処理を実行している間に当該本交信処理に成功した実績に基づき、RFIDタグと交信できる能力を示す情報を作成する情報作成手段と、
    前記情報作成手段により作成された情報を表示または外部に出力する報知手段とを具備するRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  2. 前記情報作成手段は、前記RFIDタグと交信できる能力を示す情報として、前記複数サイクル分の本交信処理における交信成功回数または交信成功率を示す情報を作成する、請求項1に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  3. 前記情報作成手段は、前記複数サイクル分の本交信処理における交信成功回数と前記本交信処理でRFIDタグに送信されたコマンドの容量に基づき、前記本交信処理においてRFIDタグに送信可能なデータ容量を示す情報を、前記RFIDタグと交信できる能力を示す情報として作成する、請求項1に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  4. 前記交信処理手段の交信処理における感度を調整するための感度調整手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記感度をあらかじめ定めた所定のレベルに設定して前記交信処理手段に前記複数サイクル分の本交信処理を開始させると共に、1サイクル分の本交信処理が終了する毎に前記感度を現在値よりも低いレベルに変更し、
    前記情報作成手段は、各サイクルにおける本交信処理が適切に実行されたか否かを判別し、前記RFIDタグと交信できる能力を示す情報として、適切に実行された本交信処理における感度の最小レベルまたは適切に実行された本交信処理の回数を示す情報を作成する、請求項1に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  5. 前記感度調整手段は、前記RFIDタグへの送信信号のレベルを調整する手段として構成される、請求項4に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  6. 前記感度調整手段は、前記RFIDタグから受信した信号の増幅率を調整する手段として構成される、請求項4に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  7. 前記制御手段は、1サイクル分の本交信処理において、前記交信処理手段に前記RFIDタグにコマンドを送信する処理およびRFIDタグからの応答を受信する処理を複数回実行させ、
    前記情報作成手段は、1サイクル分の本交信処理における交信成功回数に基づいて当該本交信処理が適切に実行されたか否かを判別する、請求項1に記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
  8. 前記情報作成手段により作成された、前記RFIDタグと交信できる能力を示す情報を蓄積する蓄積手段をさらに具備し、
    前記報知手段は、前記情報作成手段により作成された直後の情報及び前記蓄積手段に蓄積された情報の少なくとも一方を、表示または出力する請求項1〜7のいずれかに記載されたRFIDタグ用の読み書き処理装置。
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