JP4776398B2 - 耐熱自己融着線およびスピーカー用耐熱性ボイスコイル - Google Patents

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Description

本発明は自己融着線およびスピーカー用ボイスコイル(以下、ボイスコイルと略記する)に関する。更に詳しくは、耐熱性が要求される偏向ヨーク、ボイスコイル、モーター用コイル等の電気機器用コイルを製造するのに好適な耐熱自己融着線、および200℃〜250℃の高温下においても自己融着線がほつれず、ボイスコイルの形状を保つ耐熱性ボイスコイルに関する。
導体上に絶縁皮膜を介して融着塗料を塗布,焼付けた自己融着線は、コイルの巻線後、加熱または溶剤処理により融着皮膜が溶解又は膨潤し線間相互を融着固化せしめ得ることから、簡単に自己支持型コイルを作ることが可能である。例えば偏向ヨーク、ボイスコイル、モーター用コイル等の電気機器用コイルとして、自己融着線を整列巻きにしたコイルが製造され、使用されている。前記ボイスコイルやモーター用コイルに用いられている自己融着線用の融着塗料は、通常、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を有機溶剤に溶解して製造されている。従って、この融着塗料を絶縁導体上に塗布,焼付けた自己融着線の融着皮膜はアルコール可溶性ポリアミド樹脂により形成されている。また前記アルコール可溶性ポリアミド樹脂にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等の硬化付与成分を添加した融着塗料を絶縁導体上に塗布,焼付けた自己融着線も知られている。
上記アルコール可溶性ポリアミド樹脂にエポキシ樹脂を添加し、これを有機溶剤に溶解して製造した融着塗料を絶縁導体上に塗布,焼付けした自己融着線は下記特許文献1に記載されている。
また、近年、スピーカーが高出力化、高性能化するとともにボイスコイルへの熱による負荷が大きくなるためにボイスコイルの耐熱性向上が要求されている。
特開平7−94026
しかしながら、前記アルコール可溶性ポリアミド樹脂は融点が110℃〜150℃の熱可塑性樹脂であるため、ボイスコイルの発熱温度が200℃〜250℃の高温下において融着皮膜が分解しコイル形状を保てなくなるため、耐熱性は十分ではなかった。そのため、近年の高出力化、高性能化が要求されるスピーカーに使用出来ないという問題点があった。また、前記アルコール可溶性ポリアミド樹脂にエポキシ樹脂等の硬化付与成分を添加した融着塗料を絶縁導体上に塗布,焼付けた自己融着線を用い、ボイスコイルの耐熱性を向上させているが、自己融着線の融着皮膜の耐熱性は不十分であり、スピーカーの高出力化、高性能化は不可能であという問題点があった。
特にスピーカーが高出力化、高性能化するとともにボイスコイルへの熱と振動による負荷が大きくなるためボイスコイルの更なる耐熱性向上が要求され、例えば200℃〜250℃の高温下においても自己融着線がほつれず、コイルの形状を保持することが可能な耐熱性ボイスコイルが要求されているが、上記従来の自己融着線では不可能であるという問題点があった。
本発明は、上記従来技術が有する各種問題点を解決するためになされたものであり、アルコール(アルコール系溶剤も含む)による接着が可能で、耐熱性が要求される各種電気機器用コイル、特には耐熱性ボイスコイルの製造に好適な耐熱自己融着線を提供し、また200℃〜250℃の高温下におけるコイル形状の保持能力を有する耐熱性ボイスコイルを提供することを目的とする。
第1の観点として本発明は、融点が155℃を超え、200℃以下の高融点アルコール可溶性ポリアミド樹脂(以下、高融点ポリアミド樹脂と略記する)80〜100重量部に、エポキシ樹脂のエポキシ基を残し位置選択的にアルコキシシランを化学結合させたシラン変性エポキシ樹脂50〜70重量部を添加し、これを有機溶剤に溶解した耐熱融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介して塗布,焼付け、アルコール可溶性で耐熱性を有する融着皮膜(以下、耐熱融着皮膜と略記する)を設けたことを特徴とする耐熱自己融着線にある。
前記高融点ポリアミド樹脂は、耐熱融着塗料の主成分樹脂として用いられ、融着皮膜となった場合、接着力に一番寄与する樹脂である。その具体例としては、6.10ポリアミド樹脂又は6.6ポリアミド樹脂等からなる共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
前記シラン変性エポキシ樹脂は、融着皮膜の耐熱性向上に寄与するために添加される樹脂であり、該樹脂中にはシリカ分を含有している。なお前記シラン変性エポキシ樹脂のアルコキシシランとしては3官能メトキシまたは4官能メトキシが好ましい。
前記絶縁皮膜としては、耐熱性を有する絶縁皮膜、例えばポリアミドイミド絶縁皮膜、ポリエステルイミド絶縁皮膜、またはポリイミド絶縁皮膜が好ましく用いられる。
前記耐熱融着皮膜はアルコールの塗布により膨潤,溶融し、乾燥後自己融着線同士を強固に固着するとともに、固着融着皮膜に耐熱性を付与しなければならない。そのためポリアミド樹脂の選定及び耐熱付与成分との組合せが重要となるが、本発明では、その組合せについて特に配慮したものである。
前記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、変成アルコール、或いはこれらの混合溶剤が挙げられる。
なお、前記高融点ポリアミド樹脂と耐熱付与成分との配合組成を上記のように限定した理由は、この範囲外ではアルコール塗布による溶融性が悪くなり、またコイルにした後の耐熱性が低下してしまうので好ましくないためである。
上記第1観点の耐熱自己融着線は、高融点ポリアミド樹脂を主成分とし、これにシラン変性エポキシ樹脂を添加した2成分からなる耐熱融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介して塗布,焼付けることにより耐熱融着皮膜が形成される。この融着皮膜は、アルコールの塗布により膨潤,溶解すると、前記2成分の樹脂が一定の比率で溶解融着皮膜中に均一に分散する。そして、乾燥することにより溶解融着皮膜中のアルコールが蒸発し自己融着線同士が強固に接着され、耐熱性を有するコイル、例えば耐熱性ボイスコイルが得られる。このボイスコイルを更に加熱処理(使用中の発熱を含む)を行うことにより、シラン変性エポキシ樹脂のアルコキシシランに加水分解反応と脱水縮合反応が起こり、接着層にシリカが均一に分散して耐熱性に優れる皮膜を形成する。従って、シラン変性エポキシ樹脂は融着皮膜の耐熱性を付与する作用をする。
以上のように、本発明の耐熱自己融着線は優れた耐熱性が付与されるため、得られるコイルの耐熱性が高くなる。従って、高温かつ振動する環境下での使用に極めて好適となる。
第2の観点として本発明は、前記エポキシ樹脂が液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、またシラン変性エポキシ樹脂は10wt%〜60wt%のシリカ分を含有することを特徴とする耐熱自己融着線にある。
上記第2観点の耐熱自己融着線では、前記エポキシ樹脂として液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、またシラン変性エポキシ樹脂は10wt%〜60wt%のシリカ分を含有するので、自己融着線にはより優れた耐熱性が付与されるため、得られるコイルの耐熱性がより高くなる。なお、シリカ分が10wt%未満では耐熱性の付与に大きな効果が得られず、またシリカ分が60wt%を超えても耐熱性の付与に更なる効果が得られないためである。
第3の観点として本発明は、前記耐熱自己融着線を、アルコールを用いて巻き筒に巻線したことを特徴とするスピーカー用耐熱性ボイスコイル(以下、耐熱ボイスコイルと略記する)にある。
前記巻き筒としては、耐熱性を有する巻き筒が好ましく、例えばアルミ箔、ポリイミド樹脂フィルム等が用いられる。
上記第3観点の耐熱ボイスコイルでは、前記耐熱自己融着線を、アルコールを用いて巻き筒に巻線しているため、ボイスコイルの接着力と耐熱性が大幅に向上し、ボイスコイルへの熱と振動による負荷が大きくなった場合にも使用することができる。従って、高出力のスピーカーに用いられるボイスコイルとしても極めて好適となる。
本発明の耐熱自己融着線は、融着皮膜のアルコール可溶性が極めて優れており、また接着特性に優れているのでコイルの製造を効率よく行うことが可能である。またコイルに巻線後、加熱処理をする、或はコイル使用中の発熱により、優れた接着力と耐熱性が付与されるため、コイルの耐熱性が極めて高くなり、高温環境下での使用に耐えられるので、耐熱ボイスコイル用の自己融着線として極めて好適となる。
また本発明の耐熱ボイスコイルは、本発明の耐熱自己融着線を用い、アルコールを用いて巻き筒に巻線したものであるので、高温環境下、例えば200℃〜250℃の高温下においても自己融着線がほつれず、ボイスコイルの形状を保持することが可能となり、高出力のボイスコイルとしても極めて好適となる。
従って、本発明は産業に寄与する効果が極めて大である。
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は本発明の耐熱自己融着線の1実施形態(実施例)を示す断面図である。図2は本発明の耐熱自己融着線の耐熱接着力試験結果(ヘリカルコイル法)を示すグラフ図である(比較例の自己融着線も示す)。図3は試験用ボイスコイル(耐熱ボイスコイル)を示す略図であり、同図(a)は斜視図、また同図(b)は断面図である。図4は試験用ボイスコイルからせん断温度試験片を作製する最初の状態を示す略図であり、同図(a)は切断箇所を示したコイルの斜視図、また同図(b)は切断箇所の断面図である。図5はせん断温度試験片の形状を示す斜視図である。図6は試験用ボイスコイルのせん断温度の測定方法を示す略図である。
これらの図において、1は導体(銅線)、2は絶縁皮膜、3は耐熱融着皮膜(融着皮膜)、5は耐熱自己融着線(自己融着線)、5aはコイル1層目(耐熱自己融着線)、5bはコイル2層目(耐熱自己融着線)、5abはコイル1層目,2層目重なり部分(耐熱自己融着線)、10は巻き筒、20は試験用ボイスコイル(耐熱ボイスコイル)(ボイスコイル)、20’はせん断温度試験片、またwは荷重である。
本発明の耐熱自己融着線および耐熱ボイスコイルの実施形態について融着塗料の調製から順を追って説明する。なお比較例についても同時に説明する。
(1)耐熱自己融着線用融着塗料(融着塗料)の調製
融着塗料の調製について表1を用いて説明する。なお表1は実施例1〜5の耐熱自己融着線および比較例1、2の自己融着線に用いる融着塗料の配合組成表である。
―実施調製例1―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分の高融点ポリアミド樹脂として、Ultramid 1C(独国Basf社商品名:融点170〜180℃)を80.0g、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE102(荒川化学工業社商品名)を70.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の耐熱自己融着線用融着塗料(以下、耐熱融着塗料と略記する)を調製した。
―実施調製例2―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分の高融点ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを85.0g、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE102を65.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温冷却し、濃度15%の耐熱融着塗料を調製した。
―実施調製例3―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分の高融点ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを90.0g、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE102を60.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の耐熱融着塗料を調製した。
―実施調製例4―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分の高融点ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを95.0g、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE102を55.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の耐熱融着塗料を調製した。
―実施調製例5―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分の高融点ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを100.0g、シラン変性エポキシ樹脂としてコンポセランE102を50.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の耐熱融着塗料を調製した。
前記高融点ポリアミド樹脂としては、MX1178(アトフィナジャパン社商品名:融点180〜190℃)を用いることもできる。またシラン変性エポキシ樹脂としては、コンポセランE201(荒川化学工業社商品名)を用いることもできる。なお、前記コンポセランE102はシラン変性エポキシ樹脂中に35wt%のシリカ分を含有している。
―比較調製例1―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分のアルコール可溶性ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを80.0g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1007を70.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の融着塗料を調製した。
―比較調製例2―
撹拌機、温度計及び冷却管をつけた2000mlのセパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って、主成分のアルコール可溶性ポリアミド樹脂としてUltramid 1Cを100.0g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1007を50.0g、有機溶剤としてクレゾール/キシロール=1/1混合溶剤(以下混合溶剤という)を850g入れ、60〜80℃の温度で3時間加熱撹拌して樹脂を溶解した後、この溶液を室温迄冷却し、濃度15%の融着塗料を調製した。
(2)耐熱自己融着線(自己融着線)の製造
本発明の耐熱自己融着線の製造について図1を用いて説明する。また、比較例の自己融着線の製造についても説明する。
導体径0.200mmの銅線(1)にポリアミドイミド絶縁塗料を外径が0.220mmとなるように塗布,焼付けして絶縁皮膜(2)を設けた絶縁導体上に、前記実施調製例1により得られた融着塗料を、ダイスを用いて5回掛けで塗布,焼付し、皮膜厚が0.005mmの耐熱融着皮膜(3)を設けて実施例1の耐熱自己融着線(5)を製造した。なお、前記融着皮膜(3)の焼付後、皮膜の表面に流動パラフィンを塗布してからボビンに巻き取った。また前記融着皮膜(3)の焼付は2.5m長の横型電気炉を用い、炉温260℃(入口側)/300℃(出口側),線速40m/minで行った。
前記実施調製例2により得られた融着塗料を用いて皮膜厚が0.005mmの耐熱融着皮膜(3)を設ける以外は上記実施例1と同様にして実施例2の耐熱自己融着線(5)を製造した。
前記実施調製例3により得られた融着塗料を用いて皮膜厚が0.005mmの耐熱融着皮膜(3)を設ける以外は上記実施例1と同様にして実施例3の耐熱自己融着線(5)を製造した。
前記実施調製例4により得られた融着塗料を用いて皮膜厚が0.005mmの耐熱融着皮膜(3)を設ける以外は上記実施例1と同様にして実施例4の耐熱自己融着線(5)を製造した。
前記実施調製例5により得られた融着塗料を用いて皮膜厚が0.005mmの耐熱融着皮膜(3)を設ける以外は上記実施例1と同様にして実施例5の耐熱自己融着線(5)を製造した。
−比較例1、2−
比較例1、2の自己融着線の製造について説明する。
上記比較調製例1、2により得られた融着塗料をそれぞれ用いて皮膜厚が0.005mmの融着皮膜(3)を設ける以外は上記実施例1と同様にして比較例1、2の自己融着線(5)を製造した。
―耐熱自己融着線(自己融着線)の特性試験―
(イ)一般特性試験
上記により得られた実施例1〜5の耐熱自己融着線、および比較例1、2の自己融着線について一般特性試験を行った。その結果を下記表2に示す。
表2の試験結果から明らかなように、本発明の耐熱自己融着線はピンホール等の一般特性が良好であった。また表には記載しなかったが、本発明の自己融着線の耐熱融着皮膜はアルコール可溶性が極めて優れていた。
(ロ)耐熱接着力試験(ヘリカルコイル法)
上記により得られた実施例1〜5の耐熱自己融着線、および比較例1、2の自己融着線より試験線を採取し、マンドレル(巻き付け棒)として、導体径の10倍径の2.0mmΦのものを用い、このマンドレルに20ターン巻きつけてヘリカルコイルとした。次に、このヘリカルコイルをメタノール中に1秒間浸漬して取り出し、常温で30分乾燥してコイルを接着させて試験コイルを作製した。次に、これらの試験コイルを40℃〜140℃の範囲で20℃間隔に保った恒温槽中に各3分間保持し、耐熱接着力を測定した。なお20℃については常温で測定した。その結果を下記表3に示す。またこの表3をグラフ化したものを図2に示す。
この試験結果から明らかなように、本発明の自己融着線は140℃まで殆んど接着力が低下せず、また60℃以上の温度において比較例の自己融着線よりも接着力が高いので耐熱接着力が優れていることが分かる。
―ボイスコイルのせん断温度試験―
ボイスコイルのせん断温度試験として、前記各実施例の耐熱自己融着線および比較例の自己融着線から試験用のボイスコイルを作製し、次いでせん断温度試験片を作製してせん断温度の測定を行った。試験用ボイスコイルの作製からせん断温度の測定迄について図3〜6を用いて説明する。なお、本せん断温度試験は当社独自の試験方法である。
(イ)試験用ボイスコイルの作製
先ず、図3(a)、(b)に示すように、ポリイミド樹脂フィルムのカプトン(商品名)からなる20mmΦの巻き筒(10)を自動巻線機の巻線治具に円筒状に取り付け(図示せず)、この巻き筒(10)に前記実施例1〜5の耐熱自己融着線(5)および比較例1、2の自己融着線にメタノールを塗布し、該融着線の融着皮膜を膨潤、溶解させながら回転数500rpmで整列に1層目を9ターン、2層目を8ターンに密巻きした。巻線後、常温にて30分乾燥させ、実施例6〜10および比較例3、4の試験用ボイスコイル(20)を作製した。
(ロ)せん断温度試験片の作製
上記各試験用ボイスコイル(20)を図4(a)に示す様にc−c部で切断し、開いて平状にした。なお、この切断面は同図(b)に示す様になる。次いでコイル1層目(5a)とコイル2層目(5b)の重なり部分(5ab)の長さが1cmになるように1層目と2層目の不要部分をそれぞれ剥ぎ取り、図5に示す様なせん断温度試験片(20’)を作製した。なお1層目(5a)は巻き筒(10)に付けたままとした。
(ハ)せん断温度の測定
上記各せん断温度試験片(20’)を、図6に示す様に恒温槽(図示せず)中にて1kgの荷重(w)を加えた状態で吊り下げ、10℃/minの昇温を行ない、重なり部分(5ab)がせん断する温度を測定した。その結果を下記表4に示す。
表4の試験結果から明らかなように、本発明の耐熱自己融着線を用いたボイスコイルはせん断温度が200℃以上と高く、耐熱特性が極めて優れていることが分かる。
本発明の耐熱自己融着線は、融着皮膜のアルコール可溶性が極めて優れており、また接着特性に優れているのでコイルの製造を効率よく行うことが可能である。またコイルに巻線後、熱処理をする、またはコイル使用中の発熱により優れた耐熱性が付与されるため、コイルの耐熱性が極めて高くなり、高温環境下での使用に耐えられるので、耐熱ボイスコイルの他、偏向ヨーク、モーターコイル等の電気機器用コイルの自己融着線として好適に使用できる。
また本発明の耐熱ボイスコイルは、本発明の耐熱自己融着線を用い、アルコールを用いて巻き筒に巻線した後、熱処理をする、コイル使用中の発熱によりコイルの接着力と耐熱性を向上させることが可能なので、コイルの耐熱性が極めて高く、高温環境下での使用に耐えられ、高出力のボイスコイルとして好適に使用できる。
本発明の耐熱自己融着線の1実施形態(実施例)を示す断面図である。 本発明の耐熱自己融着線の耐熱接着力(ヘリカルコイル法)を示すグラフ図である(比較例の自己融着線も示す)。 試験用ボイスコイル(耐熱ボイスコイル)を示す略図であり、同図(a)は斜視図、また同図(b)は断面図である。 試験用ボイスコイルからせん断温度試験片を作製する最初の状態を示す略図であり、同図(a)は切断箇所を示したコイルの斜視図、また同図(b)は切断箇所の断面図である。 せん断温度試験片の形状を示す斜視図である。 試験用ボイスコイルのせん断温度の測定方法を示す略図である。
符号の説明
1 導体(銅線)
2 絶縁皮膜
3 耐熱融着皮膜(融着皮膜)
5 耐熱自己融着線(自己融着線)
5a コイル1層目(耐熱自己融着線)
5b コイル2層目(耐熱自己融着線)
5ab コイル1層目,2層目重なり部分(耐熱自己融着線)
10 巻き筒
20 試験用ボイスコイル(耐熱ボイスコイル)(ボイスコイル)
20’ せん断温度試験片
w 荷重

Claims (6)

  1. 融点が155℃を超え、200℃以下の高融点アルコール可溶性ポリアミド樹脂80〜100重量部に、エポキシ樹脂のエポキシ基を残し位置選択的にアルコキシシランを化学結合させたシラン変性エポキシ樹脂50〜70重量部を添加し、これを有機溶剤に溶解した耐熱融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介して塗布,焼付け、アルコール可溶性で耐熱性を有する融着皮膜を設けたことを特徴とするスピーカー用耐熱性ボイスコイルに用いる耐熱自己融着線。
  2. 前記エポキシ樹脂が液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、またシラン変性エポキシ樹脂は20wt%〜50wt%のシリカ分を含有することを特徴とする請求項1記載の耐熱自己融着線。
  3. 前記高融点アルコール可溶性ポリアミド樹脂が、6.10ポリアミド樹脂又は6.6ポリアミド樹脂等からなる共重合ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱自己融着線。
  4. 前記アルコキシシランとして3官能メトキシシランまたは4官能メトキシシランを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱自己融着線。
  5. 前記絶縁皮膜として、ポリアミドイミド絶縁皮膜、ポリエステルイミド絶縁皮膜、またはポリイミド絶縁皮膜を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱自己融着線。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱自己融着線を、アルコール系溶剤を用いて巻き筒に巻線したことを特徴とするスピーカー用耐熱性ボイスコイル。
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