JP4775990B2 - 多層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多層フィルムに関する。詳しくは、粘着性に優れたラップフィルムに好適な多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ラップフィルムなどの包装用フィルムとしては、柔軟性、食品衛生性、コストなどからエチレン系重合体からなるフィルムが用いられている。しかしながら、このフィルムは、カット性、粘着性、耐熱性などが満足いくものではなく、その改善方法として、例えば、特開平7−148898号公報には、低密度ポリエチレンと超低密度線状ポリエチレンの樹脂組成物からなる層、ポリプロピレン系重合体からなる層の2種類の層を積層した多層フィルムが提案されている。また、特開平7−285202号公報には、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体と特定の構造を有する防曇剤との樹脂組成物からなる層、ポリプリピレン系樹脂からなる層の2種類の層を積層した多層フィルムが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の多層フィルムにおいても、カット性、粘着性において十分満足しうるものではなかった。かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、カット性、粘着性、耐熱性に優れた多層フィルム、および該多層フィルムからなるラップフィルムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第一は、 下記成分(a1)を含有する層(X)、下記成分(b1)を含有する層(Y)および下記成分(c)を含有する層(Z)を有する少なくとも3層からなる多層フィルムであって、表面層の少なくと一つが層(X)であり、JIS K7127に規定された引張破断伸びが170〜280%である多層フィルムに係るものである。
(a1)密度が870〜910kg/m3 であるエチレン−α−オレフィン共重合体
(b1)190℃のメルトフローレートが0.5〜10g/10分であり、かつスウェリング比(SR)が1.4〜1.8であるエチレン系重合体
(c)プロピレン系重合体
本発明の第二は、上記多層フィルムからなるラップフィルムに係るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の層(X)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(a1)とは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数3〜10のオレフィン1種または2種以上とエチレンとの共重合体であって、エチレンから誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する共重合体である。エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体があげられえる、これらは公知の方法で製造することができる。
【0006】
エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)の密度は、870〜910kg/m3である。密度が低すぎると、エチレン−α−オレフィン共重合体の結晶性が低すぎるため、フィルムのベタツキが強くなり過ぎる場合があり、また、エチレン−α−オレフィン共重合体原料をペレットで取り扱う時に、ペレットが互着することにより、取り扱い性が低下する場合がある。また、密度が高すぎるとフィルムの粘着力が低下する場合がある。好ましくは890〜905kg/m3である。
【0007】
エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)のn−ヘキサン抽出量は4重量%以下であることが好ましい。n−ヘキサン抽出量が多すぎるとフィルムのベタツキが強くなり過ぎて、繰出し性が悪化する場合があり、また、エチレン−α−オレフィン共重合体原料をペレットで取り扱う時に、ペレットが互着することにより、取り扱い性が低下する場合がある。n−ヘキサン抽出量は、より好ましくは3.5重量%以下であり、更に好ましくは3重量%以下である。
【0008】
層(X)には、耐熱融着性の改良のために、密度が870〜910kg/m3であるエチレン−α−オレフィン共重合体(a1)に、密度が910kg/m3を超えるエチレン系重合体(a2)を配合することが好ましい。ここで、エチレン系重合体(a2)とは、エチレンから誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する共重合体である。エチレン系重合体(a2)は、エチレン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよく、エチレン以外の単量体としては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数3〜10のα−オレフィン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジビニルベンゼンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンなどがあげられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらエチレン以外の単量体としては、入手容易性の観点からα−オレフィンが好ましく、エチレン系重合体(a2)としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0009】
エチレン系重合体(a2)としては、たとえば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体があげられ、これらの中でも、入手容易性の観点から、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体が好ましい。これらは公知の方法で製造することができる。
【0010】
エチレン系重合体(a2)の密度は910kg/m3より高い。密度が高くなるほど、耐熱融着性の改良効果が高くなる。密度の上限は、通常、通常970kg/m3である。エチレン系重合体(a2)の密度は、好ましくは915〜940kg/m3であり、より好ましくは920〜935kg/m3である。密度が高すぎると、フィルムの透明性が低下する場合があり、フィルムの柔軟性が低下する場合がある。
【0011】
エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)へのエチレン系重合体(a2)の配合割合は、エチレン−α−オレフィン共重合体(a1)とエチレン系重合体(a2)の合計量100重量%に対して、好ましくは5〜85重量%であり、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは30〜75重量%である。エチレン系重合体(a2)の配合量が少なすぎるとフィルムの耐熱融着性の改良効果が低下し、エチレン系重合体(a2)の配合量が多すぎるとフィルムの柔軟性が低下する場合がある。
【0012】
エチレン系重合体(a2)のスウェリング比(SR)は、1.4未満であることが好ましい。SRが大き過ぎると、フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0013】
本発明の層(Y)に用いられるエチレン系重合体(b1)とは、エチレンから誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する共重合体である。エチレン系重合体(b1)は、エチレン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよく、エチレン以外の単量体としては、たとえば、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数3〜10のα−オレフィン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジビニルベンゼンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンなどがあげられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0014】
エチレン系重合体(b1)としては、たとえば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体があげられる。これらは公知の重合法により製造されるが、後述のスウェリング比(SR)を容易に得る観点から、高圧ラジカル重合法によるエチレン系重合体が好ましく、該重合法によるポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0015】
エチレン系重合体(b1)の190℃のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分である。MFRが低すぎるとフィルムの成型加工性が低下する場合があり、MFRが大きすぎるとフィルムのカット性が低下する場合がある。MFRは、好ましくは0.8〜7g/10分であり、より好ましくは1〜4g/10分である。
【0016】
エチレン系重合体(b1)のスウェリング比(SR)が1.4〜1.8である。SRが低すぎるとフィルムのカット性が低下する場合があり、SRが大きすぎるとフィルムの透明性が悪化する場合がある。SRは、好ましくは1.45〜1.65である。
【0017】
層(Y)には、フィルムの縦裂けを改良するために、エチレン系重合体(b1)に、エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)を配合することが好ましい。ここで、エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)とは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素原子数3〜10のオレフィン1種または2種以上とエチレンとの共重合体であって、エチレンから誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する共重合体である。エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体があげられ、これらは公知の方法で製造することができる。
【0018】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の密度は870〜950kg/m3であることが好ましい。密度が低過ぎると、エチレン−α−オレフィン共重合体原料をペレットで取り扱う時に、ペレットが互着することにより、取り扱い性が低下する場合がある。密度が高すぎると、フィルムの透明性が低下する場合がある。より好ましくは880〜940kg/m3であり、更に好ましくは890〜930kg/m3である。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の190℃のMFRは0.1〜20g/10分であることが好ましい。MFRが低過ぎるとフィルムの成型加工性が低下する場合があり、MFRが高過ぎると、フィルムの低縦裂け性改良効果が低下する場合がある。より好ましくは0.5〜10g/10分であり、更に好ましくは1〜7g/10分である。
【0020】
エチレン系重合体(b1)へのエチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の配合割合は、エチレン系重合体(b1)とエチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の合計量100重量%に対して、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%であり、更に好ましくは15〜30重量%である。エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の配合量が少なすぎるとフィルムの縦裂け改良効果が低下し、エチレン−α−オレフィン共重合体(b2)の配合量が多すぎるとフィルムのカット性が低下する場合がある。
【0021】
本発明の層(Z)に用いられるプロピレン系重合体(c)とは、プロピレンから誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する重合体であって、最高融解ピーク温度(Tm)が140℃以上である重合体である。プロピレン系重合体(c)は、プロピレン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよく、プロピレン以外の単量体としては、たとえば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜10のオレフィンなどがあげられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。プロピレン系重合体(c)としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体があげられ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらの中では、入手容易性の観点から、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体が好ましい。これらプロピレン系重合体(c)は公知の方法で製造することができる。
【0022】
プロピレン系重合体(c)の最高融解ピーク温度は、好ましくは150℃以上である。最高融解ピーク温度が高いほど、耐熱性が良好となる。プロピレン系重合体(c)の230℃のMFRは、加工性の観点から、1〜12g/10分であることが好ましい。より好ましくは4〜8g/10分である。
【0023】
フィルムの各層を構成する樹脂には、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤などの添加剤を配合してもよい。
【0024】
また、層(X)を構成する樹脂には、粘着性を調整するために、液状脂肪族炭化水素、水素化石油系炭化水素樹脂等の粘着付与剤を含有させることができる。
【0025】
フィルムの各層を構成する樹脂の配合方法は、特に制限はなく、公知の方法、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機、一軸又は二軸押出機等を用いて加熱溶融混練する方法等が挙げられる。また、各種樹脂ペレットをドライブレンドしてもよい。
【0026】
本発明の多層フィルムの層構成は、層(X)〜(Z)を有し、表面層の少なくとも一つが層(X)であればよく、例えば、層(X)/層(Y)/層(Z)、層(X)/層(Z)/層(Y)、層(X)/層(Y)/層(Z)/層(X)、層(X)/層(Y)/層(Z)/層(Y)/層(X)、層(X)/層(Z)/層(Y)/層(Z)/層(X)があげられる。これらの中でも、フィルムの取り扱い性の観点から、両表面層が層(X)から構成されていることが好ましく、裏表が対称である層(X)/層(Y)/層(Z)/層(Y)/層(X)、層(X)/層(Z)/層(Y)/層(Z)/層(X)がより好ましい。
【0027】
本発明の多層フィルムは、リサイクル樹脂層を積層挿入してもよく、他の熱可塑性樹脂層、例えば、ガスバリヤーを付与するためポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエステル樹脂等を積層挿入してもよい。更には、層間の接着強度を上げるため、接着剤や接着性樹脂層を積層挿入してもよい。
【0028】
本発明の多層フィルムの厚みは、通常5〜50μmであり、フィルムの取り扱い性の観点から、好ましくは7〜20μmである。多層フィルムを構成する各層の厚みは、特に限定されるものでなく、任意に選択することができる。通常は、フィルム総厚みに対する各層の厚み比率は、層(X)は10〜50%であり、層(Y)は30〜80%であり、層(Z)は5〜40%である。カット性、粘着性、耐熱性のバランスの観点から、好ましくは、層(X)は15〜40%であり、層(Y)は40〜70%であり、層(Z)は10〜30%である。ただし、同一層を複数有する場合は、層厚みの合計をその層の厚みとする。
【0029】
本発明の多層フィルムの製造方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法、例えば、インフレーション法やキャスト法による共押出積層法、押出しラミネーション法、サンドラミネーション法、ドライラミネーション法等を用いることができる。上記製造方法の中では、生産性、透明性の観点から、キャスト法が好ましい。さらに、キャスト法においてカット性の観点から、バキュームボックスタイプのTダイ成形機を用いる製造方法が好ましい。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって説明する。
[評価方法]
1.密度
JIS K6760に規定された方法に従い、アニール無しで測定した。
2.メルトフローレート(MFR)
JIS K6760に規定された方法に従い、荷重21.18Nで測定した。エチレン系重合体およびエチレン−α−オレフィン共重合体は、温度190℃で、プロピレン系重合体は、温度230℃で測定した。
3.スウェリング比(SR)
MFR測定時に採取されたストランドの直径を測定し、下記の式より求めた。
SR=ストランドの直径(mm)/オリフィスの内径(mm)
4.最高融解ピーク温度(Tm)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計を用いて、試料10mgを入れたアルミパンを窒素雰囲気下で220℃で5分間保持し、試料を溶融させた。次いで、220℃から40℃まで、5℃/分の降温速度で降温させ、40℃で5分間保持した。その後、40℃から180℃まで、5℃/分の昇温速度で昇温させて融解吸熱カーブを得た。得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度を、該試料の最高融解ピーク温度(Tm)とした。なお、該示差走査熱量計を用いて5℃/分の昇温速度で測定したインジウム(In)の融点は156.6℃であった。
【0031】
5.n−ヘキサン抽出量
180℃プレス成形することにより、25mm×25mm×100μmのシートを作成し、これを試験片とした。50℃に調整した400mlのn−ヘキサン中に試験片を入れ、攪拌しながら2時間抽出を行った。抽出終了後、n−ヘキサン溶液から試験片を取り出し、次に、n−ヘキサン溶液からn−ヘキサンを蒸発させることにより、n−ヘキサン溶液に抽出した成分の量を測定し、抽出前の試験片重量に対するn−ヘキサン溶液に抽出した成分の重量の割合を求めた。
【0032】
6.引張破断伸び
JIS K7127に規定された方法に従って、フィルムのMD方向(フィルム成形時の機械軸方向)について測定した。なお、試験片形状は2号形を用いた。この値が小さいほどカット性に優れる。
7.引裂強度
JIS P8116に規定された方法に従って、フィルムのMD方向およびTD方向のそれぞれについて測定した。
8.鋸刃カット性
フィルムを芯管に巻き、「鋸刃」つきケース(0.2mm厚のこぎり型打ち抜き鉄板型「鋸刃」を、コートボール紙製ケースに貼り付けたもの)に収納し、「鋸刃」によるカット性を評価した。評価の基準は次の通りである。
○:「鋸刃」にあてて引張るだけで、ストレートに切れる。
△:カット可能であるもののフィルムが伸びやすく、こつを必要とする。
×:フィルムが伸びてカットできず実用性がない。
【0033】
9.粘着性
直径20cmのガラス皿に対して底面まで回り込むよう試料フィルムをラップして密着の程度を観察し、3段階の評価を行った。
◎:フィルムがガラス皿にぴったり密着し、かつ剥がれが生じない。
○:フィルムがガラスに皿に密着するが、一部剥がれが生じる。
△:フィルムがガラス皿に十分密着しない。
【0034】
10.耐熱性
東京都告示第1027号「ラップフィルムの品質表示」を参考にして、以下の手順で耐熱温度を測定した。この温度が高いほど耐熱性に優れる。
(1)幅3cm、長さ14cmの短冊状のフィルム試験片と、幅3cm、長さ2.5cmの板目紙2枚を用意する。
(2)該試験片の長さ方向の上部2.5cmおよび下部2.5cmのそれぞれの部分と、板目紙とを重ねて、両者を粘着テープで固定する。
(3)試験片の上部の板目紙と重なった部分を治具に固定し、試験片の下部の板目紙と重なった部分に10gの荷重をかける。
(4)それを、一定試験温度に調整したエアーオーブン中に迅速に入れ、1時間加熱し、加熱後の試験片の切断の有無を調べる。
(5)1時間経過後、試験片が切断しなかった場合は、試験温度を10℃だけ上げ(東京都告示第1027号「ラップフィルムの品質表示」に記載された刻み温度は5℃である)、別の新しい短冊状のフィルム試験片を使って前記の操作を繰り返す。なお、1時間経過後、試験片が切断した場合は、試験温度を10℃だけ下げ、別の新しい短冊状のフィルム試験片を使って前記の操作を繰り返す。
(6)試験片が切断しない最高温度を、該試験片の「耐熱温度」とする。
【0035】
11.防曇性
図1に示すように、樹脂製容器に深度10mmになるよう23℃の水を張り、その中に試料フィルムを被せたポリ塩化ビニル製円筒を置き、0℃に調節した恒温恒湿器内に入れた。恒温恒室器投入3分後の状態を観察し、下記基準に基づき5段階評価を行った。この値が高いものほど防曇性に優れる。
5:均一な水膜を形成し、透視感良好。
4:水膜にわずかな乱れがあり、透視感が劣る。
3:水膜に乱れがあり
2:水滴が多数付着し、透視感が悪い。
1:曇りが発生し、透視できない。
【0036】
[材料]
LD1:住友化学工業(株)製スミカセン CE3506
(密度=928kg/m3、MFR=5g/10分、SR=1.36)
LD2:住友化学工業(株)製スミカセン CE2575
(密度=919kg/m3、MFR=2g/10分、SR=1.50)
LL1:住友化学工業(株)製スミカセンE FV401
(密度=899kg/m3、MFR=4g/10分、n−ヘキサン抽出量=2.0wt%)
LL2:住友化学工業(株)製スミカセンFX CX2001
(密度=898kg/m3、MFR=2g/10分、n−ヘキサン抽出量=2.3wt%)
LL3:住友化学工業(株)製エクセレン VL800
(密度=897kg/m3、MFR=8g/10分)
PP :住友化学工業(株)製 ノーブレンW101
(MFR=7g/10分、Tm=161℃)
防曇剤:丸菱油化工業(株)製STO421
【0037】
[多層フィルムの製造]
実施例1
層(X)用の樹脂として、高圧ラジカル重合法ポリエチレンLD1を70重量部、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL1を30重量部、および防曇剤を3重量部配合したものを用いた。層(Y)用の樹脂として、高圧ラジカル重合法ポリエチレンLD2を70重量部、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL1を30重量部、および防曇剤を3重量部配合したものを用いた。層(Z)用の樹脂として、プロピレン単独重合体PPを用いた。層構成比が層(X)/層(Y)/層(Z)/層(Y)/層(X)=10/30/20/30/10である厚み12μmの3種5層フィルムを、SHIモダンマシナリー(株)社製の3種5層共押出Tダイフィルム成形機にて製造した。
【0038】
フィルムの製造は次のように行った。層(X)用の樹脂については、径が40mm、L/Dが32(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dは押出機のシリンダーの直径)の押出機1台を用いて280℃にて樹脂を溶融混練した後、フィードブロックの両表面層に導いた。層(Y)用の樹脂については、径が50mm、L/Dが32(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dは押出機のシリンダーの直径)の押出機1台を用いて280℃にて樹脂を溶融混練した後、フィードブロックの両中間層に導いた。層(Z)用の樹脂については、径が40mm、L/Dが32の押出機1台を用いて280℃にて樹脂を溶融混練した後、フィードブロックの芯層に導いた。フィードブロックを経由したこれらの樹脂を、280℃に温調したTダイ(600mm幅)から押し出したあと20℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化し、50m/分のライン速度で巻き取り、3種5層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
実施例1において、層(X)用の樹脂として、高圧ラジカル重合法ポリエチレンLD1を50重量部、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL1を30重量部、エチレン−1−ブテン共重合体LL3を20重量部、および防曇剤を3重量部配合したものを用いる以外は、実施例1と同様にフィルムを製造した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
実施例1において、層(X)用の樹脂として、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL1を30重量部、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL2を70重量部、および防曇剤を2重量部配合したものを用い、層(Y)用の樹脂として、高圧ラジカル重合法ポリエチレンLD2を70重量部、エチレン−1−ヘキセン共重合体LL1を30重量部、および防曇剤を2重量部配合したものを用いる以外は、実施例1と同様にフィルムを製造した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
実施例1において、層(X)用の樹脂および層(Y)用の樹脂としてとして、高圧ラジカル重合法ポリエチレンLD1を用いる以外は、実施例1と同様にフィルムを製造した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、カット性、粘着性、耐熱性に優れた多層フィルムが提供される。本発明の多層フィルムは、透明性、コスト、カット性、粘着性、密着性、耐熱性などに優れるため、包装用フィルムとして、特に家庭用や業務用のラップフィルムとして好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例における防曇性評価の際に使用した装置の模式図である。
Claims (9)
- 下記成分(a1)を含有する層(X)、下記成分(b1)を含有する層(Y)および下記成分(c)を含有する層(Z)を有する少なくとも3層からなる多層フィルムであって、表面層の少なくと一つが層(X)であり、JIS K7127に規定された引張破断伸びが170〜280%である多層フィルム。
(a1)密度が870〜910kg/m3 であるエチレン−α−オレフィン共重合体
(b1)190℃のメルトフローレートが0.5〜10g/10分であり、かつスウェリング比(SR)が1.4〜1.8であるエチレン系重合体
(c)プロピレン系重合体 - 層(X)が、請求項1記載の成分(a1)15〜95重量%、下記成分(a2)5〜85重量%(ただし、(a1)と(a2)の合計量を100重量%とする。)からなる樹脂組成物を含有する層である請求項1記載の多層フィルム。
(a2)密度が910kg/m3を超えるエチレン系重合体 - 請求項1記載の成分(a1)のn−ヘキサン抽出量が4重量%以下である請求項1または2記載の多層フィルム。
- 請求項2記載の成分(a2)のスウェリング比(SR)が1.4未満である請求項2または3記載の多層フィルム。
- 層(Y)が、請求項1記載の成分(b1)50〜95重量%、下記成分(b2)5〜40重量%(ただし、(b1)と(b2)の合計量を100重量%とする。)からなる樹脂組成物を含有する層である請求項1〜4いずれかに記載の多層フィルム。
(b2)エチレン−α−オレフィン共重合体 - プロピレン系重合体(c)の230℃のメルトフローレートが1〜12g/10分であり、かつ最高融解ピーク温度が140℃以上である請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
- 層構成が、層(X)/層(Y)/層(Z)/層(Y)/層(X)からなる5層構成または層(X)/層(Z)/層(Y)/層(Z)/層(X)からなる5層構成である請求項1〜6のいずれかに記載の多層フィルム。
- 多層フィルムが、Tダイキャスト法により製造される請求項1〜7いずれかに記載の多層フィルム。
- 請求項1〜8いずれかに記載の多層フィルムからなるラップフィルム。
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