JP4775815B2 - 溶接鋼管製造用溶接装置 - Google Patents
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Description
この2丁合わせ溶接方法には、外面及び内面の両側から溶接する内外面溶接方式(図14(イ))と、突合せ部を外面からのみ溶接する外面溶接方式(図14(ロ)、(ハ))とがある。また、外面溶接方式には裏当て金を用いる方式(図14(ロ))と、用いない裏波溶接方式(図14(ハ))とがある。図14は図13のa部の拡大図である。
両面から溶接する内外面溶接では開先をX開先とするが、一方向から溶接する外面溶接では開先をV開先またはY開先とするので、外面溶接は内外面溶接に比べて開先が大(開先の断面積が大)となり、溶接金属量が増え、溶接コストが高くなる。また、裏当て金等のバッキング材を用いる場合は、さらに溶接コストが高くなる。
このため、溶接ヒュームを適切に吸引する方法が、鋼管の内面溶接の場合ではないが、特許文献1やその他種々提案されている。
前記管状材の後端側から挿入されて前記管状材内を管長さ方向前後に移動可能にされたブームの前端部に溶接トーチを取り付けるとともに、この溶接トーチのトーチ角度を50〜70°とし、かつ、前記ブームを後退させつつ溶接を行うようにしたことを特徴とする。
これにより、外径約200〜300mmの小径溶接鋼管を製造する際に、端縁を突き合わせて管状にした管状材の突合せ部を内面から溶接することが実際的に可能となった。
また、溶接トーチを後退させながら溶接を行う後退法により溶接を行うので、溶接機器が溶接ビードの輻射熱を受けることが少なくなり、輻射熱からの保護構造を簡素化でき、溶接機器の小型化、簡素化が可能となる。
特に、本発明のようにトーチ角度θを小さくした場合、シールドガス吹出口から離れた部分が生じるので、その部分がヒューム吸引によりさらに乱され易くなりシールド不良となり易いが、ヒューム吸引口を概ね上向きにしたことで、前記の通りシールド機能を損なわない溶接ヒューム吸引が可能となる。
また、本発明は溶接方法として、溶接トーチの先端の開口から放出されるシールドガス中で、同じく溶接トーチの先端の開口から連続的に繰り出される溶接用ワイヤと溶接対象の母材との間にアークを発生させて溶接を行う溶接方式を採用する。すなわち、シールドガスとしてアルゴン等の不活性ガスを用いるMIG溶接(Metal electrode inert gas welding)、あるいは、炭酸ガス若しくは炭酸ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いるMAG溶接(Metal active gas welding)等を採用する。
以下に述べる実施例は、溶接鋼管を製造するに際して図14(イ)で説明した内外面溶接方式を採用するものであり、かつ、その内外面溶接における内面溶接作業に適用するものである。また、以下の説明は、向かい合わせて端縁どうしを突き合わせて管状にした2つの溝形鋼1を何らかの手段で拘束して下面側の突合せ部の内面溶接を行う場合、あるいは、一方の突合せ部の溶接を済ませた後に他方の突合せ部の内面溶接を行う場合のものである。
これらの図において、13は例えばMAG溶接用の溶接トーチである。溶接トーチ13は、中心部に溶接用ワイヤ4を挿通させるとともに、先端からシールドガスを吹き出す構造となっている。この溶接トーチ13は、ブーム駆動装置17によって管状材2内に出し入れ可能な長尺のブーム18の前端部に取り付けられ、ブーム18に沿って後端部の装置本体部21に伸びる溶接トーチチューブ20に接続されている。溶接トーチチューブ20は溶接用ワイヤ4及びシールドガスを溶接トーチ13に送る通路となる。前記装置本体部21は、溶接電源や、コイル状に巻いた溶接用ワイヤ4を供給するワイヤ供給装置や、シールドガスを供給するガスボンベや、ヒューム排出部等を備えている。
ブームヘッド22は、ブーム18の先端部に可動機構23を介して連結されている。可動機構23は、ブームヘッド22が上面から見て左右方向に首振り回動するのを許容する水平角度可動部24と、ブームヘッド22がブーム18に対して鉛直方向上下に移動するのを許容する鉛直可動部25と、ブームヘッド22がブーム18に対して水平方向左右に移動するのを許容する水平可動部26とからなっている。
ブームヘッド22の下面中央の前後2箇所に、突合せ部の開先(V開先)2aに嵌入して転動する倣い輪28を備えている。この倣い輪28は、ブームヘッド22の移動の際に、開先に嵌入してブームヘッド22の位置決めを行い、ブームヘッド22に取り付けられた溶接トーチ13の先端を正しく開先2aに沿わせる作用をする。
可動機構23の詳細構造は省略するが、ブームヘッド22が後退移動する際に、ブームヘッド22の管長さ方向移動以外の動きを拘束しないもの、すなわち、倣い輪28が開先に沿って転動するのに追従して動くことを許容するものであればよい。例えば、水平角度可動部24として垂直な回転軸を介して連結する構造、鉛直可動部25として鉛直方向の蟻と蟻ミゾと組み合わせによる水平スライド構造、水平可動部26として水平方向の蟻と蟻ミゾとの組み合わせによる鉛直スライド構造等を採用でき、その他種々の構造が可能である。
また、ブーム18は、管状材2の内面底部及びこれに連続する外部テーブル30を転動してブーム18を支持するブーム支持輪29を備えている。
しかし、図6(イ)にも示したこの後退法を採用することにより、溶接機器(溶接トーチ13や、ブーム18に沿って配される各部分)が溶接ビードの輻射熱を受けることが少なくなり、したがって、輻射熱からの保護構造を簡素化でき、溶接機器の小型化が可能となる。
また、開先位置の倣い装置として、前述のように、単に倣い輪28を開先に嵌入させるという簡単な構造を採用することができるので、倣い装置の簡素化が可能となる。
背景技術の説明で述べた通り、図7(ロ)に示したようにトーチ角度θを90°前後にするのが一般的であるが、トーチ角度θを種々変化させて良好な溶接が可能な条件を実験的に種々探索した結果、前記の通り、50〜70°の範囲であれば、良好な溶接が可能であることが分った。実験結果については後述する。
実施例のヒューム吸引口31aは、概ね管状材2の長さ方向に細長い四角形であり、また、上端が左右側壁内面側に寄るように傾斜している。
また、ヒューム吸引口31aを形成する開口部材31の外形は、溶接ヒュームを整流するようなフィン状をなしている。ここでフィン状とは、開口部材31の外形が扁平(したがって、内部空間の幅がヒューム吸引口31aの幅と概ね同じ)であることを指す。但し、必ずしも平坦であるものに限らず、場合によっては、溶接ヒュームの流れの制御のために曲面とすることも考えられる。開口部材31のヒューム排出チューブ32に接続される部分31bは四角形筒、円筒、楕円筒、長円筒など任意である。
なお、図1において、35は溶接開始位置において良好な溶接が行われるための補助板である。
ブーム18とともに溶接トーチ13を図1(ロ)の位置から矢印のように後退させながら先端から溶接用ワイヤ4を開先に繰り出すとともにシールドガスを放出して、シールドガス中で溶接を行う。
製造しようとする鋼管は19mm(板厚)×200mm(辺長)×200mm(辺長)の角形鋼管である。使用した溝形鋼1は鋼板をプレス成形したものである。溶接方式はシールドガスとして炭酸ガスを用いたMAG溶接である。開先条件はY開先、開先深さ6mmである。溶接用ワイヤは径φ1.2mmで、ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤの両方で実験した。
溶接速度40c〜80cm/min.に対して、トーチ角度θを45〜90°の範囲で種々変えて、良好な溶接が可能なトーチ角度θを探索する溶接実験の結果を図9に示す。図9(イ)は溶接用ワイヤ4としてソリッドワイヤφ1.2mmを用いた場合、図9(ロ)はフラックス入りワイヤφ1.2mmを用いた場合である。
同図に示すように、溶接速度50〜60cm/min.の範囲では、ソリッドワイヤではトーチ角度が約50°以上、フラックス入りワイヤは約60°以上で良好な溶接が得られた。フラックス入りワイヤの場合、溶接速度70cm/min.でも良好な溶接が得られた。
この実験結果より、トーチ角度θが50°までなら良好な溶接を得ることが可能である。なお、トーチ角度θが90°に近づけば当然良好な溶接が得られるが、小径管に対応させることを考慮すると極力小さなトーチ角度θが望ましい。
なお、良好な溶接が可能な溶接速度は溶接用ワイヤの径とも関係があり、両者の関係を適切に選択するとよい。
ここで図12(ロ)に示すように、溶接部の上方にフード6を設けるなどの直接吸引方式で溶接ヒューム(実線で示す)の吸引を行う場合、充分なヒューム吸引効果を得るために吸引風速を大きくすると、シールドガス(破線で示す)も容易に吸引されてしまい、シールドガスのシールド機能が損なわれる。また、管内のヒュームを漏れなく吸引するためには大きな吸引フードが必要となるが、小径角形鋼管内ではスペースの確保が難しく、実施が困難である。
しかし、この溶接装置では、図8(イ)、(ロ)、(ハ)に示すように、溶接部から立ち上がった溶接ヒュームは、管内天井面に突き当たって左右内面側壁に沿って降りてくる際にヒューム吸引口31aから適切に吸引されるとともに、溶接トーチ13から下向きに放出されたシールドガスは、上向きのヒューム吸引口31aによる吸引からの直接的な影響を受けず、シールドガスの流れが乱されることはない。
大気を遮断して溶接部を保護しているシールドガスが溶接位置で乱流になると大気を巻き込み、ブローホールなどの溶接不良が発生する恐れがあるため、シールドガスの風速は、溶接部で層流になる範囲の2m/s以下とする必要があり、健全な溶接をするには溶接部近傍での風速が1m/s以下とするのが望ましい。上記のような溶接ヒュームを上向きのヒューム吸引口31aから吸引するようにすれば、溶接ヒュームの充分な吸引を確保しつつ、シールドガスの溶接部での風速を1m/s以下にすることが可能となり、溶接ヒューム吸引性能とシールド機能とを共に確保することができる。
この溶接実験の条件では風速と窒素量との関係が図10の曲線のようになった。風速1.5m/sではブローホールが多発したが、風速1.0m/sでは良好な溶接が得られた。
この風速は上記の通り、シールドガスが乱流にならずに層流状態を維持することができる風速である。
管内での溶接の場合にヒューム吸引を行うことで管内に外部から空気が流入するが、充分なヒューム吸引効果を得るために吸引風量を大とした場合、管内に流入する空気の量と管の断面積との関係で、小径管の場合、管内への流入速度は大となる。しかし、上向きのヒューム吸引口31aからのヒューム吸引によって、溶接部での風速を1m/s以下にすることが可能となる。
また、角形鋼管でなく丸鋼管を製造する場合にも本発明を適用できる。この場合は、1枚の鋼板を円形断面に湾曲成形して、その端縁の突合せ部を本発明の溶接鋼管製造用溶接装置により内面溶接する。
2 管状材(鋼管の溶接前の状態のもの)
2a 開先
4 溶接用ワイヤ
5 溶接ビード
10 溶接鋼管製造用溶接装置(溶接装置)
13 溶接トーチ
17 ブーム駆動装置
18 ブーム
20 溶接トーチチューブ
21 装置本体部
22 ブームヘッド
23 可動機構
24 水平角度可動部
25 鉛直可動部
26 水平可動部
28 倣い輪
29 支持輪
30 外部テーブル
31 開口部材
31a ヒューム吸引口
32 ヒューム排出チューブ
Claims (6)
- 外径約200〜300mmの小径溶接鋼管を製造する際に、溶接トーチの先端の開口から放出されるシールドガス中で、同じく溶接トーチの先端の開口から連続的に繰り出される溶接用ワイヤと溶接対象の母材との間にアークを発生させて溶接を行う溶接方式により、端縁どうしが突き合わされて管状をなす管状材の前記突合せ部の内面溶接を行う溶接鋼管製造用溶接装置であって、
前記管状材の後端側から挿入されて前記管状材内を管長さ方向前後に移動可能にされたブームの前端部に溶接トーチを取り付けるとともに、この溶接トーチのトーチ角度を50〜70°とし、かつ、前記ブームを後退させつつ溶接を行うようにしたことを特徴とする溶接鋼管製造用溶接装置。 - 溶接時に発生する溶接ヒュームを吸引するヒューム吸引口を、溶接部から立ち上がり管内天井面に突き当たって左右内面側壁に沿って降りてくる溶接ヒュームを吸引するように、溶接トーチの左右両側に概ね上向きに設けたことを特徴とする請求項1記載の溶接鋼管製造用溶接装置。
- 前記ヒューム吸引口の向きが、左右内面側壁側に傾斜した上向きであることを特徴とする請求項1〜2記載の溶接鋼管製造用溶接装置。
- 前記ヒューム吸引口を溶接トーチの左右両側に対称的に設けるとともに、ヒューム吸引口の形状を概ね溶接鋼管長さ方向に細長い四角形にしたことを特徴とする請求項2又は3記載の溶接鋼管製造用溶接装置。
- 前記ヒューム吸引口を形成する開口部材の外形が、溶接ヒュームを整流するようなフィン状をなしていることを特徴とする請求項2〜4記載の溶接鋼管製造用溶接装置。
- 前記ブームの先端部に、溶接トーチを支持するブームヘッドを可動機構を介して管長さ方向移動以外の動きを拘束しないように連結するとともに、前記ブームヘッドの下面に、管状材の突合せ部に形成される開先に転動可能に嵌入する倣い輪を設けたことを特徴とする請求項1〜5記載の溶接鋼管製造用溶接装置。
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