JP4774253B2 - 摩擦攪拌接合のバリ取り装置 - Google Patents

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本発明は、摩擦攪拌接合時において被接合部材のビード部に生ずるバリを除去するためのバリ取り装置に関する。
摩擦攪拌接合は、溶融溶接では困難であったAl−Cu合金やAl−Zn−Mg系合金の接合が可能であることから、特にこれらの合金を多用する航空機の部品に適している。
摩擦攪拌接合は、図7に示すように、被接合部材同士が接合されるところ(この例では、被接合部材W、W同士の突合せ部位)に摩擦攪拌接合ツール100のピン部101を挿入し、その軸部102のショルダー部102aで加圧しつつ当該摩擦攪拌接合ツール100を同図の矢印方向に回転させ、このような摩擦攪拌接合ツール100を突合せ部位に沿って同図の矢印方向に移動させることにより行われる。ところが、摩擦攪拌接合に際しては、摩擦攪拌接合ツール100によって塑性流動した被接合部材の一部が、図8に示すように、ビード(被接合部材同士が接合されたところ)103の両端部に沿って所謂バリ104aとして或いは段差104bとなって出現する。このようなバリ104a等の発生を阻止することは極めて困難であり、また、このようなバリ104a等は、製品の外観を損ね、腐食の発生や応力集中による疲労破壊を誘発するなどの弊害をもたらす。このため、サンダーやサンドペーパー等の研磨器具を用いて、或いは、作業工数の削減による生産性向上の観点からこれらの研磨器具に代えて摩擦攪拌接合ツールにバリ取り機能を追加したもの(例えば、特許文献1、特許文献2)を用いてバリ104a等を取り除く作業が行われる。
摩擦攪拌接合ツールにバリ取り機能を追加したものとして、特許文献1に示されるような、切削工具200の回転部材201外周に対をなして設けられた溝201a,201bに下方端切刃を有する切削インサート202を配設し、この切削インサート202を、当該切削インサート202が回転部材201とともに取り囲まれるカラー203を通して止めねじ204で固定したもの(図9(A))、切削工具300の回転部材301に斜めに貫通して設けられた孔に、下方端切刃を有する切削インサート303が取り付けられた切削インサートホルダー302を配設し、この切削インサートホルダー302をねじ304で押圧して固定したもの(図9(B))、及び切削工具400の回転部材401周縁に対をなして半径方向にタブ402を突設し、このタブ402に切刃として作用する角を有する切削インサート403を取り付けたもの(図9(C))がある。また、特許文献2に示されるような、接合ツール500の円筒状ショルダー501の先端端部に切削刃501aを設けたもの(図10(A))や、接合ツール600の突起状ショルダー601に切削用円筒ショルダー602を固定し、この切削用円筒ショルダー602の円周3等分上に切削刃603を設けたもの(図10(B))がある。
しかしながら、上述した摩擦攪拌接合ツールにバリ取り機能を追加したものは、作業工数の削減による生産性向上を図ることができるが、摩擦攪拌接合ツールに対する、特許文献1に示されるような切刃、或いは特許文献2に示されるような切削刃の相対的な位置の微調整(0.01mm単位)が極めて困難であるという問題がある。即ち、特許文献1における、図9(B)の切削工具300においては、当該切削工具300に対する切刃の相対的な位置の調整が可能であるが、微調整は極めて困難であり、また、特許文献2における、図10(B)の接合ツール600においては、当該接合ツール600に対する切削刃603の相対的な位置の調整が可能であるが、微調整は極めて困難であり、このため、バリ等と同時に切削される、母材である被接合部材の切削量を抑え、被接合部材の板厚の減少を最小限にすることは極めて困難である。
特開平10−71477号公報(第7,8頁、図8〜16) 特開2000−94158号公報(第3頁、図3,10〜12)
解決しようとする問題点は、摩擦攪拌接合ツールに取り付けられるバリ取りカッターの取付位置の微調整(0.01mm単位で管理)を可能にして、バリ等と同時に除去される被接合部材の切削量を抑え、被接合部材の板厚の減少を最小限にする点である。
本発明の請求項1に係る摩擦攪拌接合のバリ取り装置は、摩擦攪拌接合加工時において被接合部材のビード部に生ずるバリを摩擦攪拌接合加工を行いながら切削刃で除去するバリ取り装置であって、摩擦攪拌接合ツールにおいて被接合部材に挿入されるピン部が突設された軸部の外周に螺刻されたネジに螺合するバリ取りカッターと、当該ネジに螺合して前記バリ取りカッターを前記軸部に固定する取付ナットとを備え、前記取付ナットは前記バリ取りカッターに対して前記被接合部材と反対側から当接するとともに前記軸部のネジに螺合して前記バリ取りカッターを締付け固定するようにしたものであり、バリ取りカッターをピン部が突設された軸部外周に螺刻されたネジに螺着して取り付けるようにしているので、摩擦攪拌接合ツールに取り付けられるバリ取りカッターの取付位置の微調整(0.01mm単位で管理)が可能となり、バリ等と同時に除去される被接合部材の切削量を抑え、被接合部材の板厚の減少を最小限にすることができ、また、上述した従来例と比べて切削抵抗に対する剛性が高い構造としているので、0.01mm単位で管理される微調整に資するものとなる。
本発明の請求項2に係る摩擦攪拌接合のバリ取り装置において、前記バリ取りカッターの切削刃は、前記摩擦攪拌接合ツールの回転軸が後方に所定傾斜角をなして傾斜し回転して移動するに際して、当該バリ取りカッターの切削刃の先端部が形成する回転面上の、回転軸から移動方向後方に延びる線分が前記被接合部材表面と平行をなすように形成されるようにしたものであり、切削刃は、バリ取り時に被接合部材表面と平行をなす態様となるので、接合加工によって生じたバリや段差のみを削除して滑らかな表面を得ることができる。
本発明の摩擦攪拌接合のバリ取り装置は、バリ取りカッターがピン部が突設された軸部外周に螺刻されたネジに螺着して取り付けられるようにしているので、摩擦攪拌接合ツールに取り付けられるバリ取りカッターの取付位置の微調整(0.01mm単位で管理)が可能となり、バリ等と同時に除去される被接合部材の切削量を抑え、被接合部材の板厚の減少を最小限にすることができる利点がある。
本発明の実施の形態に係る摩擦攪拌接合のバリ取り装置を図1〜5を参照して説明する。
本実施の形態に係る摩擦攪拌接合のバリ取り装置1は、摩擦攪拌接合加工時において被接合部材のビード部に生ずるバリや段差を摩擦攪拌接合加工を行いながら除去する装置で、摩擦攪拌接合ツールのピン部4が突設された小径の軸部3外周に取り付けられるものであり、図3に示すように、摩擦攪拌接合ツール2の軸部3外周に螺刻された細目ネジ3aに螺合するバリ取りカッター5と、当該細目ネジ3aに螺合してバリ取りカッター5を軸部3に固定する取付ナット6とで構成されている。なお、本実施の形態では細目ネジ3aとしてM8×0.75を使用している。
ところで、バリ取りカッター5や取付ナット6が、例えば図3のようにして取り付けられる摩擦攪拌接合ツール2は、図1に示すように、径大で短尺な円筒部21とこの円筒部21の両端部からそれぞれ延出した当該円筒部21より径小で長尺の円筒部22a,22bとからなる主軸、及びこの主軸の円筒部22aの一方端部に突設される、当該円筒部22aより径小の軸部3で構成されている。この軸部3の外周には、上記主軸の円筒部22aに連接する一方端部とは反対側の他方端部近傍位置までのところに細目ネジ3aが螺刻される一方、この軸部3の他方端部には、テーパ面を有するショルダー部3bが形成され、更に、この軸部3の他方端部の端面中央にはピン部4が形成されている。
このような摩擦攪拌接合ツール2の軸部3に取り付けられる円筒状のバリ取りカッター5には、図2に示すように、軸部3の細目ネジ3aに螺合すべく雌ネジ5aが円筒内に螺刻されており、バリ取りカッター5を細目ネジ3aに螺合させたときのその螺合位置の微調整が可能となっている。また、このバリ取りカッター5の円筒下部には切削刃5bが設けられ、この切削刃5bには、バリ取りカッター5のカッター軸(=摩擦攪拌接合ツール2のツール軸、図3参照)X−Xに垂直な平面に対し傾斜角Aが付けられており、かかる傾斜角Aは、図3に示すように摩擦攪拌接合ツール2が後方に所定傾斜角Aをなして傾斜し移動するに際して、当該バリ取りカッター5のカッター軸X−Xが所定傾斜角Aに等しく傾斜するときに切削刃5bの回転軸から進行方向後方に延びる部分が被接合部材表面と平行をなして接触できるようにした角度で、切削刃5bの先端部の回転面の後退角である。また、切削刃5bには、バリ取り時に切屑の固着を防止しその排出を容易にするための逃げ角Bが付けられている。
また、摩擦攪拌接合ツール2の軸部3に取り付けられる薄平たい円筒状の取付ナット6は、図3に示すように軸部3の細目ネジ3aに螺合すべく雌ネジが円筒内に螺刻されており、軸部3に螺着されたバリ取りカッター5を当該軸部3上で固定する。このような取付ナット6を用いると、バリ取りカッター5を上下動させて微調整するに際して迅速に且つ容易に弛緩・締付けが行える。
次に、本摩擦攪拌接合のバリ取り装置1の動作について図3〜5を用いて説明する。
本バリ取り装置1のバリ取りカッター5は、図3に示すように、バリ取りカッター5が摩擦攪拌接合ツール2の軸部3の適宜位置に取付ナット6で固定される。このとき、本バリ取り装置1は、摩擦攪拌接合加工に際して摩擦攪拌接合ツール2が後方に所定傾斜角Aをなして傾斜し移動するようにしているため、当然のことながら所定傾斜角Aに等しく傾斜する態様となっている。
そして、図4(A)に示すような突き合わせ接合加工の場合には、被接合部材W,W同士の突合せ部位に、バリ取りカッター5が取り付けられた摩擦攪拌接合ツール2のピン部4を挿入し、そのショルダー部3bで加圧しつつ当該摩擦攪拌接合ツール2を回転させ、このような摩擦攪拌接合ツール2を突合せ部位に沿って同図の矢印方向に移動させる。この接合加工に際してビード7の両端部に沿って発生するバリや段差は、切削刃5bが被接合部材W,W表面と平行をなして接触するバリ取りカッター5により切削除去され、例えば図5に示すような滑らかな接合加工後の仕上げ面が得られる。ところで、本バリ取り装置1においては、バリ取りカッター5の、軸部3における上述した微調整が可能となっているので、かかる微調整をすることにより母材である被接合部材W,Wの切削量を抑え、被接合部材W,Wの板厚の減少を最小限にすることができる。
また、図4(B)に示すような重ね合わせ接合加工の場合も、上記突き合わせ接合加工の場合と同様に、被接合部材W,Wが重ね合わされた所定部位に沿って摩擦攪拌接合ツール2を移動させて接合加工がなされる。かかる接合加工に際してもビード7の両端部に沿って発生するバリや段差がバリ取りカッター5により切削除去される。バリ取りカッター5の微調整により被接合部材Wの切削量を抑え、被接合部材Wの板厚の減少を最小限にすることができることはもちろんである。
ところで、上述した実施の形態では、バリ取りカッター5は、図2に示すように、二枚の切削刃5bを有するものであったが、図6に示すように、雌ネジ8aが円筒内に螺刻された、一枚の切削刃8bを有するバリ取りカッター8であってもよい。
本発明の摩擦攪拌接合のバリ取り装置は、摩擦攪拌接合加工時において被接合部材のビード部に生ずるバリや段差を摩擦攪拌接合加工を行いながら除去できることはもとより、摩擦攪拌接合ツールに取り付けられるバリ取りカッターの取付位置の微調整(0.01mm単位で管理)を可能にして、バリ等と同時に除去される被接合部材の切削量を抑え、被接合部材の板厚の減少を最小限にすることができ、有用価値が高いと言える。
本発明の実施の形態に係る摩擦攪拌接合のバリ取り装置が取り付けられる摩擦攪拌接合ツールの正面図である。 本バリ取り装置のバリ取りカッターの構成図である。 本バリ取り装置の摩擦攪拌接合ツールへの取付図である。 本バリ取り装置の動作説明図である。 本バリ取り装置で仕上げられた被接合部材の外観図である。 図2のバリ取りカッターとは異なるバリ取りカッターの構成図である。 従来の摩擦攪拌接合ツールの構成図及び動作説明図である。 従来の摩擦攪拌接合ツールで仕上げられた被接合部材の外観図である。 従来の摩擦攪拌接合ツールの構成図である。 従来の摩擦攪拌接合ツールの構成図である。
符号の説明
1 バリ取り装置
2 摩擦攪拌接合ツール
3 軸部
3a 細目ネジ
5,8 バリ取りカッター
6 取付ナット
7 ビード
,W 被接合部材

Claims (2)

  1. 摩擦攪拌接合加工時において被接合部材のビード部に生ずるバリを摩擦攪拌接合加工を行いながら切削刃で除去するバリ取り装置であって、摩擦攪拌接合ツールにおいて被接合部材に挿入されるピン部が突設された軸部の外周に螺刻されたネジに螺合するバリ取りカッターと、当該ネジに螺合して前記バリ取りカッターを前記軸部に固定する取付ナットとを備え
    前記取付ナットは前記バリ取りカッターに対して前記被接合部材と反対側から当接するとともに前記軸部のネジに螺合して前記バリ取りカッターを締付け固定することを特徴とする摩擦攪拌接合のバリ取り装置。
  2. 前記バリ取りカッターの切削刃は、前記摩擦攪拌接合ツールの回転軸が後方に所定傾斜角をなして傾斜し回転して移動するに際して、当該バリ取りカッターの切削刃の先端部が形成する回転面上の、回転軸から移動方向後方に延びる線分が前記被接合部材表面と平行をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合のバリ取り装置。
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