JP4774154B2 - 血液バッグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は血液および血液成分を保存するのに適した血液バッグの改良に関する。内面に微細な凹凸を設けることにより面相互間の接触面積を減らし、高圧蒸気滅菌処理後の面相互間のブロッキングを防止する血液バッグに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来血液バッグはその素材にポリ塩化ビニルを使用している。
このポリ塩化ビニル(以下PVC)を用いたシートは熱処理を行った際、シート同士の膠着(以下ブロッキング)が起こる事が知られており、このシートを用いて血液保存バッグを作るとバッグの内面および外面でブロッキングが起こり、使用時にバッグの口開きができない可能性がある。そのため従来このPVC製血液バッグのブロッキングを抑制するために、バッグの内面および外面に所定サイズの凹凸を付けることで面相互間の接触面積を減少させてブロッキングを抑制する手段がとられている。
この目的でバッグ内外面に一定サイズの凹凸(以下シボ)を成形するために、従来のPVC製血液バッグはTダイ金型を使用した押出し成形によりTダイシートを成形し、引き取り機のエンボスロールをシート両面に圧着させることでシボを転写するという手段が取られている。
そして2枚のシートを重ね合わせて高周波溶着を行うことで内外面にシボを持つバッグが作られている。
しかしこの手法は2枚のシートを重ね合わせて製袋を行うために作業工程が複雑化する、また2枚のシート間に異物が混入したまま製袋される可能性があるといった問題点がある。そこで以上の課題を解決するために次の発明に到った。
【0003】
【課題を解決するための手段】
[1]本発明は、ポリ塩化ビニル90から40重量部に対して、当該ポリ塩化ビニルと相溶性の小さい部分架橋ポリ塩化ビニルを、10から60重量部添加した樹脂組成物をインフレーション成形することにより形成し、
本体(1A)内面に前記部分架橋ポリ塩化ビニルの添加による大きさ10〜40μmの凹凸を形成し、
前記本体(1A)内面に、前記インフレーション成形時に行うインフレーションチューブ(6)の内面側と外面側の5C°〜25C°の温度差処理による大きさ30〜60μmの凹凸を形成し、
前記本体(1A)内面に、前記部分架橋ポリ塩化ビニルの添加による凹凸、及び前記インフレーションチューブ(6)の温度差処理による凹凸の両方を形成し、
前記インフレーションチューブ(6)を、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌処理を行い、当該オートクレーブ滅菌処理後に、引張り試験機を用いて、引張り速度200mm/minで、前記インフレーションチューブ(6)内面のブロッキング強度を測定し、当該ブロッキング強度が、235.2mN/cm以下である、血液バッグ(1)を提供する。
【0004】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の血液バッグ1を構成する血液バッグ本体1A表面の概略図である。バッグ本体1A表面は主成分のPVC樹脂中に、該PVC樹脂と相溶性が低い部分架橋PVC樹脂が混在することで、微細な凹凸が形成される。
本発明の血液バッグ1は、ポリ塩化ビニル90から40重量部に対して、該ポリ塩化ビニルと相溶性の小さい部分架橋ポリ塩化ビニルを10から60重量部添加した樹脂組成物をインフレーション成形することにより形成され、バッグ本体1A内面に前記部分架橋ポリ塩化ビニルによる微細な凹凸が形成される。微細な凹凸の大きさは10から40μmである。
ポリ塩化ビニル90から40重量部に対する部分架橋PVC樹脂の添加量は10から60重量部が好ましい。60重量部を超えると血液バッグ周縁部のシール性が悪くなり好ましくない。また10重量部未満では内面のブロッキング抑制効果が小さく使用に耐えないからである。
【0005】
図2は本発明の血液バッグのインフレーション成形に用いるインフレーション成形金型4の概略図である。成形時、インフレーション成形金型4のインダイス5をインフレーション成形金型外周部4Aより冷却することで、溶融しているインフレーションチューブ6内面側と外面側で流速の差を生じさせ、流速の遅くなったインフレーションチューブ6内面に前記流速の差に起因する物理的な歪により凹凸を形成することができる。すなわち本体1A内面に前記部分架橋ポリ塩化ビニルによる微細な凹凸の他に前記インフレーション成形時に行う積極的なインフレーションチューブ6の内面側と外面側の温度差処理により凹凸を形成することができる。この場合の凹凸の大きさは30から60μmである。
前記冷却手段とは、例えばインダイス5内部に温度をコントロールしたオイルを循環させる手段等を採用することができる。要するにインフレーションチューブ6内面側を冷却する手段であれば何でも採用することができる。
【0006】
【実施例】
(a)PVC樹脂(平均重合度:1300)と(b)部分架橋PVC樹脂(平均重合度:750)、可塑剤、安定剤を表1(実施例1〜7)と表2(比較例1と2)に示すように配合して定法によりドライアップを行った後インフレーションチューブ6を成形し、このチューブを用いてブロッキング強度測定に用いた。なお比較例1では部分架橋PVC樹脂5重量部、PVC樹脂95重両部使用し、比較例2では部分架橋PVC樹脂70重量部、PVC樹脂30重量部使用した。比較例3は部分架橋PVC樹脂を使用せず、PVC樹脂100重量部用いた。比較例1〜3は実施例と同様にインフレーションチューブ6に成形した。比較例4は比較例3と同じ組成で、シート両面にエンボス加工を施したTダイシートとして成形した。本発明で使用した(a)部分架橋PVC樹脂、(b)PVC樹脂は以下の通りである。
(a)部分架橋PVC樹脂はXEL−E(鐘淵化学社製)
(b)PVC樹脂は、S−1003(カネビニル社製)
【0007】
【表1】
Figure 0004774154
【0008】
【表2】
Figure 0004774154
【0009】
(1)ブロッキング強度測定
上記方法で成形したインフレーションチューブ6を以下の方法でブロッキング強度の評価を行った。
チューブ6を内面が合着したまま縦10cm横10cmのサイズで切り出し、MD方向の1端2cmの幅でチューブ6の内面合着を剥がす。剥がした面に1.5cm幅の紙テープを貼る。
上記処理を行ったサンプルを121℃で20分間オートクレーブ滅菌処理を行い、このオートクレーブ滅菌処理を行ったサンプルをMD方向に3cmの幅で切り出し、事前に紙テープを貼っておいた部分をつかみ部として引っ張り試験機を用いて引張り速度200mm/minの条件でチューブ6内面のブロッキング強度を測定した。
ブロッキング強度測定結果を表3に示す。表3よりインフレーション成形では部分架橋PVCを使用していないサンプルより、部分架橋PVCを使用したサンプルのほうがチューブ6内面のブロッキング強度が低い。また部分架橋PVC樹脂の配合含量が高いほど、チューブ6内面のブロッキング抑制効果が高い。実施例1〜3及び比較例2・4はブロッキング強度が弱く充分に実使用可能である。比較例1・3はブロッキング強度が強く実使用に耐えない。
【0010】
【表3】
Figure 0004774154
【0011】
(2)高周波溶着強度測定厚み0.3mmのサンプルを高周波溶着した後121℃ 20分の条件で高圧蒸気滅菌処理し、乾燥後のシール部および非シール部を含んだ1cm幅の試験片を作製し、そのシール強度を引っ張り試験機を用いて試験速度200mm/minの条件で測定した。測定結果を表4に示す。表4の結果より、部分架橋PVC樹脂70重量部、PVC樹脂30重量部使用した比較例2は高周波溶着強度が低いとわかる。他の実施例1〜3と比較例1・3・4は至適シール強度(3〜5kg/cm)であり実使用に耐える。
【0012】
【表4】
Figure 0004774154
【0013】
(3)インダイス温度をダイス外周部より冷却して成形したインフレーションチューブのブロッキング強度測定
部分架橋PVC10重量部使用した実施例1の原料と部分架橋PVCを使用していない比較例3の原料を用いて、インフレーション成形金型4のインダイス5温度をインフレーション成形金型外周部4Aより5〜25℃冷却してインフレーション成形を行った。このときインダイス5温度とインフレーション成形金型外周部4Aの温度差が25℃を超えると溶融しているインフレーションチューブ6内面側と外面側で流速の差が大きく安定した成形が困難となるため好ましくない。得られたチューブは実施例1と同様の手法でチューブ6内面のブロッキング強度を測定した。結果を表5に示す。表5より同一配合組成でもインダイス5温度をインフレーション成形金型外周部4Aより冷却することでチューブ6内面のブロッキング抑制効果が増加し、インダイス5温度とインフレーション成形金型外周部4Aの温度差が高いほどその効果は増加することが確認できた。実施例1・4・5・6は充分にブロッキング強度が低く実使用可能である。しかし部分架橋PVCを使用していない比較例3・5・6・7はインダイス温度を冷却してもブロッキング強度が強く実使用不可能である。
【0014】
【表5】
Figure 0004774154
【0015】
【発明の作用効果】
本発明の血液バッグ1は部分架橋PVC樹脂10〜60重量部およびインフレーション成形金型4のインダイス5温度をインフレーション成形金型外周部4Aより5〜25℃の冷却することで、エンボス加工を施さずともインフレーション成形によりバッグ内面に微細な凹凸が成形でき、現行の製品以上の耐ブロッキング性を示すため、好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血液バッグ本体表面の概略図
【図2】本発明の血液バッグのインフレーション成形金型を示す概略図
【符号の説明】
1 血液バッグ
1A 血液バッグ本体(容器)の表面
2 血液バッグ本体(容器)の主成分のポリ塩化ビニル
3 部分架橋ポリ塩化ビニル
4 インフレーション成形金型
4A インフレーション成形金型外周部
5 インダイス
6 インフレーションチューブ

Claims (1)

  1. ポリ塩化ビニル90から40重量部に対して、当該ポリ塩化ビニルと相溶性の小さい部分架橋ポリ塩化ビニルを、10から60重量部添加した樹脂組成物をインフレーション成形することにより形成し、
    本体(1A)内面に前記部分架橋ポリ塩化ビニルの添加による大きさ10〜40μmの凹凸を形成し、
    前記本体(1A)内面に、前記インフレーション成形時に行うインフレーションチューブ(6)の内面側と外面側の5C°〜25C°の温度差処理による大きさ30〜60μmの凹凸を形成し、
    前記本体(1A)内面に、前記部分架橋ポリ塩化ビニルの添加による凹凸、及び前記インフレーションチューブ(6)の温度差処理による凹凸の両方を形成し、
    前記インフレーションチューブ(6)を、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌処理を行い、当該オートクレーブ滅菌処理後に、引張り試験機を用いて、引張り速度200mm/minで、前記インフレーションチューブ(6)内面のブロッキング強度を測定し、当該ブロッキング強度が、235.2mN/cm以下である、ことを特徴とする血液バッグ(1)。
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