JP4772470B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
また、触媒層と電解質膜の接合界面での損傷によって電池抵抗が増大するといった問題がある。
図1は、この発明に関連した参考例1に係わる燃料電池システムの構成図である。
参考例1に係わる燃料電池システム1は、図1に示すように、燃料電池2、酸化剤ガスを燃料電池2に供給する酸化剤ガス供給ライン3、燃料ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス供給ライン4、燃料電池2の発電において残った酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出ライン5および燃料電池2の発電において残った燃料ガスを排出する燃料ガス排出ライン6を備える。
これら酸化剤ガス供給ライン3、燃料ガス供給ライン4、酸化剤ガス排出ライン5および燃料ガス排出ライン6には、それぞれ途中に酸化剤ガス入口バルブ7、燃料ガス入口バルブ8、酸化剤ガス出口バルブ9および燃料ガス出口バルブ10が介設されている。
なお、酸化剤ガス供給ライン3、酸化剤ガス排出ライン5、酸化剤ガス入口バルブ7おとび酸化剤ガス出口バルブ9をまとめて酸化剤供給排出手段、燃料ガス供給ライン4、燃料ガス排出ライン6、燃料ガス入口バルブ8および燃料ガス出口バルブ10をまとめて燃料供給排出手段と称す。
このアノード13とカソード14は、それぞれ高分子電解質膜12に面する面に図示しない触媒層および触媒層とセパレータ板19、20との間に多孔質の電気伝導性の図示しない拡散層を備える。
このガスシール部15、16には、セパレータ板19、20のガス流路17、18に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給または排出する図示しないマニホールド穴が設けられており、このマニホールド穴に酸化剤ガス供給ライン3、燃料ガス供給ライン4、酸化剤ガス排出ライン5および燃料ガス排出ライン6が接続されている。
このアノードカソード連通ライン22は、酸化剤ガス排出ライン5の酸化剤ガス出口バルブ9の上流側と燃料ガス排出ライン6の燃料ガス出口バルブ10の上流側とを連通し、アノード13内の空間とカソード14内の空間が空間的につながった状態にある。
この電磁弁23は、両側の差圧が生じたときに開かれ、それにともなってカソード14内からアノード13内へ適量のガスが移動し、アノード13内とカソード14内のガス圧をともに大気圧に保つことができる。
この制御装置29は、燃料電池2を起動するとき、酸化剤ガス入口バルブ7、燃料ガス入口バルブ8、酸化剤ガス出口バルブ9、燃料ガス出口バルブ10およびスイッチ25を制御して所定の発電条件で発電を開始し、燃料電池2の発電を停止するとき、電圧計28からの発電電圧に基づいて、酸化剤ガス入口バルブ7、燃料ガス入口バルブ8、酸化剤ガス出口バルブ9、燃料ガス出口バルブ10およびスイッチ25を制御して発電を停止する。
なお、アノードカソード連通ライン22と電磁弁23をまとめて圧力調整機構、スイッチ25、外部負荷26および抵抗27をまとめて抵抗回路と称す。
燃料電池2の運転を開始する方法は一般的であるので、簡略化して説明する。
運転開始前の燃料電池2では、アノード13とカソード14が抵抗27を介して接続されている。なお、セパレータ板19、20は導電性の例えばカーボン板で構成されているので、アノード13に積層されたセパレータ板19とカソード14に積層されたセパレータ板20とが抵抗27に接続されている。
また、アノード13およびカソード14の有効面積(触媒層が形成された面積)は約100cm2である。
また、酸化剤ガス供給ライン3からガス流路18を経由して、酸化剤ガスとして例えば露点70℃の空気を、利用率50%相当の流量(約970ml/min)でカソード14へ流す。これらの燃料ガスおよび酸化剤ガスは、高分子電解質膜12が湿潤することによってはじめてプロトン伝導性を発現するので、水分を多く含んだ状態で流される。また、このガスの利用率とは、ガスの供給量に対して、発電に利用されるガス量の割合で定義される。
このとき、酸化剤ガス入口バルブ7、燃料ガス入口バルブ8、酸化剤ガス出口バルブ9および燃料ガス出口バルブ10は、すべて必要なガス流量で燃料ガスおよび酸化剤ガスが流れるように制御装置29により調整される。
まず、アノード13とカソード14とをスイッチ25を切り換えて抵抗27(30mΩ)を介して接続するように切り換える。
次に、酸化剤ガス入口バルブ7と酸化剤ガス出口バルブ9とを閉じて空気の供給を停止する。このとき、カソード14内に残存する空気中の酸素は水素と反応して水に変わるため、カソード14内の空間につながった酸化剤ガス供給ライン3は、ほぼ窒素だけで満たされる。そのため、カソード14の電位は、徐々に低下し、酸素の拡散律速による濃度分極の増大により0.1V以下となる。このとき、アノード13およびカソード14では、式(1)、式(2)に示す反応が起こり、水素/水素の濃淡電池が形成されてカソード14で水素が発生される。このときのカソード14の電位を水素の発生電位という。
カソード:2H++2e−→H2・・・(2)
そして、カソード14内のガス圧が大気圧に等しくなってから、燃料電池2を冷却すると、カソード14内のガス圧が大気圧より低くなるので、燃料電池2の外部からの空気混入量が多くなる。この空気中の酸素が水素と反応するためにカソード14内の空間の水素濃度が薄くなり、アノード13内の空間から水素が移動することになる。
このようにアノードカソード連通ライン22を備えることにより、停止および保管中における電極の酸化劣化、電池抵抗の増大などを防止することができる。
また、上述と同様、燃料電池2の通常負荷運転時の安全性を考慮すると、圧力調整弁、逆止弁、差圧弁、またはアノードカソード連通ライン22に直接流体を封入する機構などといった、負荷運転時には両極のガスが混ざらないよう隔離した状態を保ち、かつ、停止保管時に両極の圧力バランスを調整する機構であることが好ましい。
このように、50日間運転、停止、保管を繰り返しても燃料電池2の発電電圧の低下はほとんど認められなかった。
参考例1に係わる燃料電池2の運転を停止する方法では、酸化剤ガス入口バルブ7および酸化剤ガス出口バルブ9を閉じ、カソード14で水素が発生したことを確認した直後に燃料ガス入口バルブ8および燃料ガス出口バルブ10を閉じるが、参考例2に係わる停止方法では、カソード14内の空間の水素濃度がアノード13内の空間の水素濃度と同等になった後で燃料ガス入口バルブ8および燃料ガス出口バルブ10を閉じる。すなわち、カソード14内で水素発生が充分に行われる時間を考慮している。
参考例1の説明において述べたようにして、参考例1に係わる燃料電池システム1の運転を開始し、100時間の連続運転後、燃料電池2の運転を停止する。
まず、スイッチ25を切り換えることにより、アノード13とカソード14とを抵抗27を介して接続する。
それから、酸化剤ガス入口バルブ7と酸化剤ガス出口バルブ9とを閉じて空気の供給を停止する。このとき、カソード14内の空間に残存する酸素は水素と反応して水になるため、カソード14内の空間につながる酸化剤ガス供給ライン3はほぼ窒素だけで充満され、カソード14の電位は、水素の発生電位(約0.1V)以下となる。そして、アノード13とカソード14とが抵抗27を介して電気的に接続されているため、カソード14内のガスの水素濃度がアノード13内のガスの水素濃度と同濃度になるまでアノード13内の空間からカソード14内の空間に高分子電解質膜12を介して水素が移動する。このようにして、アノード13内のガスの水素濃度とカソード14内のガスの水素濃度が同濃度になると、式(1)で示すように、発電電圧がほぼ0mVとなる。従って、発電電圧がほぼ0mVになるまで水素ガスを流し続け、その後燃料ガス入口バルブ8および燃料ガス出口バルブ10を閉じる。
また、燃料電池2の起動、停止、保管において、起動、保管は参考例1のように行い、停止だけ参考例2のように行って、参考例1と同様なDSS試験を100日間実施したが、燃料電池2の発電電圧の低下量はほとんど0mVであった。
また、アノード13内とカソード14内のガス圧が平衡されているために、高分子電解質膜12への破損を防止することができる。
この発明の実施の形態1に係わる燃料電池システム1Cは、参考例1に係わる燃料電池システム1の燃料ガス供給ライン4にガス補充手段が追加されることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
参考例1の説明において述べたようにして、実施の形態1に係わる燃料電池システム1Cの運転を開始し、100時間の運転後、燃料電池2の運転を停止する。
まず、スイッチ25を切り換えることにより、アノード13とカソード14とを抵抗27を介して接続する。
それから、酸化剤ガス入口バルブ7と酸化剤ガス出口バルブ9とを閉じて空気の供給を停止する。このとき、カソード14内の空間に残存する酸素は水素と反応して水になるため、カソード14内の空間につながる酸化剤ガス供給ライン3はほぼ窒素だけで充満され、カソード14の電位は、水素の発生電位(約0.1V)以下へと低下する。そして、発電電圧が0.1Vになったとき、燃料ガス入口バルブ8および燃料ガス出口バルブ10を閉じて燃料電池2の運転を中止し、保管状態に移行する。
その後、図4に示すように、カソード14内の空間の酸素が消費されたカソード内酸素消費時点直後では、アノード13内の空間からカソード14内の空間に水素が移動するために、カソード14内のガス圧がいったん上昇する。しかし、アノードカソード連通ライン22を経由して圧力上昇は緩和されるので、アノード13内、カソード14内のガス圧が大気圧付近で均衡が保たれていることがわかる。
さらに、圧力調整機構がアノードカソード連通ライン22に組み込まれているために、保管中に両極が圧力差を生じることなく均衡を保ちながら保管されていることが確認できた。
また、実施の形態1に係わる燃料電池システム1Cの性能を評価するために、実施の参考例1と同様にDSS試験を100日間実施した。その結果、燃料電池2の発電電圧の低下量はほとんど0mVであった。
また、内部圧力の減少を感知してその燃料の減少分を補充するようなガス補充手段を用いることも可能である。
さらに好ましくは、電池内に空気混入した場合にその空気を酸化還元反応により消費することのできる還元性を有するものであれば良く、例えば水素、一酸化炭素、メタンガス、あるいはこれらと不活性ガスの混合ガス等が使用可能である。
また、ガス補充手段は燃料ガス供給排出ライン、または燃料電池アノード内のいずれの場所に設けることも可能であるが、実施の形態1で記載したように、アルミガスパック31を燃料ガス供給排出ラインのうち燃料電池よりも上流側に設けることが好ましい。その理由としては、燃料電池の運転時においては、燃料ガス供給排出ラインの上流側ほど水素濃度が高く、停止保管時に燃料電池内により高濃度の水素を滞留させることができるからである。
Claims (3)
- 電解質膜を両面から挟持するアノードおよびカソードを具備する燃料電池と、
上記アノードに燃料ガスを供給排出する燃料供給手段および燃料排出手段を具備する燃料供給排出手段と、
上記カソードに酸化剤ガスを供給排出する酸化剤供給手段および酸化剤排出手段を具備する酸化剤供給排出手段と、を備える燃料電池システムにおいて、
上記燃料電池の下流領域に配置され、上記燃料供給排出手段と上記酸化剤供給排出手段とを連通して、上記カソード内のガス圧と上記アノード内のガス圧とが等しくなるように調整する圧力調整機構と、
上記燃料供給手段に接続され、上記燃料ガスまたは還元性ガスまたは不活性ガスを補充して、上記燃料電池の内圧を大気圧に維持するガス補充手段と、を備え、
上記圧力調整機構は、上記燃料供給排出手段の上記燃料電池より下流側と上記酸化剤供給排出手段の上記燃料電池の下流側とを連通するアノードカソード連通ラインを備えることを特徴とする燃料電池システム。 - 上記アノードと上記カソードとを接続する抵抗回路と、上記燃料供給排出手段、上記酸化剤供給排出手段および上記抵抗回路を制御する制御回路と、上記燃料電池の発電電圧を検出する電圧計とを備え、
上記制御回路は、上記アノードと上記カソードとを抵抗を介して接続してから、上記酸化剤供給手段および酸化剤排出手段の両方を閉じて、上記発電電圧が水素の発生電位に対応した所定の電圧以下に達した時、上記燃料供給手段および燃料排出手段の両方を閉じて上記燃料電池を停止することを特徴とする請求項1に記載する燃料電池システム。 - 上記ガス補充手段が上記燃料供給手段に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載する燃料電池システム。
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