JP4772406B2 - 電動式変速装置を備える動力装置 - Google Patents

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本発明は、変速機構が電動機により駆動される電動式変速装置を備える動力装置に関する。
動力装置の変速装置において、電動機によりシフトドラムを回動させるものは知られている(特許文献1参照)。
特開平11−82708号公報
従来の電動式変速装置では、変速装置用の電動機を用意する必要があるため、動力装置のコスト高および重量増を招来する。また、電動機とシフトドラムとは間歇的に駆動する伝動機構を介して連結されるため、電動機とシフトドラムとの間の伝動機構の構造が複雑化していた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電動式変速装置を備える動力装置のコスト削減および軽量、コンパクト化を図り、さらに、電動機とシフトドラムとの間の伝動機構の構造を簡略にすることを目的とする。
請求項1記載の発明は、内燃機関と、変速比を変更するシフトドラムを有する変速機構が電動機により駆動される電動式変速装置とを備え、前記内燃機関の動力が前記変速装置により変速される動力装置において、前記内燃機関は始動電動機を備え、前記電動機は前記始動電動機により構成され、前記始動電動機は、内燃機関の停止時およびクランキング時に非接続状態にあるクラッチを介して変速機構の前記シフトドラムに接続され、前記始動電動機は、内燃機関の始動のために該始動電動機を始動するスタータスイッチを有し、動力装置の運転を制御する制御装置が設けられ、前記内燃機関が始動されてクランキング状態を経て自力回転を開始し内燃機関回転速度がクランキング回転速度より大きい所定回転速度に達した時にそれを検出する始動完了検出手段が設けられ、該始動完了検出手段は、それからの始動完了検出信号が前記制御装置に入力されるように該制御装置に接続され、前記制御装置は、変速操作部からの変速操作信号を受けて該変速操作信号を前記始動電動機に伝達可能に、前記変速操作部および前記始動電動機に接続され、前記制御装置は、前記スタータスイッチの操作で前記始動電動機により内燃機関が始動されて前記所定回転速度に達した時、前記始動完了検出手段からの始動完了検出信号を受けて、前記クラッチに接続信号を送り該クラッチを接続し、前記始動電動機を前記シフトドラムに接続して前記始動電動機により前記変速機構を駆動することを特徴とする動力装置である。
これによれば、内燃機関を始動させるための始動電動機を利用して変速機構が駆動されるので、変速機構を駆動するための電動機を別途用意する必要がない。
また、内燃機関が始動中であるとき、始動電動機は変速機構を駆動することがないので、変速機構が始動電動機による内燃機関の始動性に影響を与えることはなく、しかも始動完了後は始動電動機により駆動される変速機構による変速が可能になる。
請求項記載の発明は、請求項1記載の動力装置において、前記始動電動機は、内燃機関の停止時およびクランキング時に非接続状態にあるクラッチを介して変速機構のシフトドラムに接続され、前記クラッチは、内燃機関回転速度がクランキング回転速度より大きい前記所定回転速度に達した時、前記始動完了検出手段からの信号に基づいて接続されて前記始動電動機を前記変速機構に接続することを特徴とする。
これによれば、内燃機関の始動状態に応じて始動電動機とシフトドラムとの断続を行うクラッチが設けられるので、内燃機関と変速装置とで共有される始動電動機の使い分けができると共に、クラッチは単に接続および非接続の作動状態にされればよく、シフトドラムを間歇的に駆動する伝動機構は不要である。
請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、変速機構を駆動するための電動機を別途用意する必要がないので、動力装置のコストが削減され、しかも動力装置が軽量、コンパクト化される。
また、始動電動機による内燃機関の良好な始動性が確保されたうえで、始動完了後から始動電動機による変速が可能になる。
さらに、始動電動機とシフトドラムとの間の伝動機構の構造が簡略化され、しかも内燃機関と変速装置とで共有される始動電動機の使い分けが容易になる。
以下、本発明の実施形態を図1を参照して説明する。
本発明が適用された電動式変速装置Mを備える動力装置Pは、車両としての自動二輪車に搭載される。該動力装置Pは、シリンダに往復動可能に嵌合するピストンにより回転駆動されるクランク軸2を有する機関本体1および始動時にクランク軸2を回転駆動する始動電動機Sを備える内燃機関Eと、クランク軸2の動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置とを備える。該動力伝達装置は、変速装置Mと、クランク軸2の動力の変速装置Mへの伝達および遮断を行うメインクラッチ3と、変速装置Mで変速された動力を駆動輪に伝達する終減速装置とを備える。
始動電動機Sは、始動用駆動歯車6および始動用被動歯車7を含む複数の歯車から構成される始動用減速機構5と、被動歯車7およびクランク軸2間に設けられる一方向クラッチ8とを介してクランク軸2に連結される。一方向クラッチ8は、始動電動機Sからクランク軸2への駆動力の伝達時のみ接続状態になり、内燃機関Eの始動完了後にクランク軸2の回転速度が被動歯車7の回転速度以上になるときに非接続状態になるため、クランク軸2の動力は始動電動機Sに伝達されない。
運転者のクラッチ操作に基づいて作動するメインクラッチ3は、油圧式、電磁式またはマニュアル式クラッチから構成され、クランク軸2と変速装置Mとの間の動力の伝達および遮断を行う。
変速装置Mは、常時噛合い式の歯車式変速装置から構成され、メインクラッチ3の出力側に接続されると共に複数のメイン側変速歯車13が装着されるメイン軸11と、メイン側変速歯車13に噛合する複数のカウンタ側変速歯車14が装着されると共に前記終減速装置に連結されるカウンタ軸12と、運転者の操作により変速比を変更する変速機構20と、変速機構20を駆動する電動機を構成する始動電動機Sから構成される駆動機構とを備える。
変速機構20は、変速操作部21と、始動電動機Sにより回転駆動されるシフトドラム22と、基端部でシフトドラム22の外周面に設けられた複数のカム溝(図示されず)にそれぞれ係合すると共に先端部で後述するシフタ24に係合する複数のシフトフォーク23と、メイン軸11またはカウンタ軸12にそれぞれ軸方向に移動可動に装着されると共にシフトフォーク23により駆動されるシフタ24とを備える。メイン軸11またはカウンタ軸12と一体に回転するシフタ24は、この実施形態では一部のメイン側変速歯車13およびカウンタ側変速歯車14により構成され、所望の変速位置での変速比を確立するために軸方向に移動して、互いに噛合する1対のメイン側変速歯車13およびカウンタ側変速歯車14をそれぞれメイン軸11およびカウンタ軸12に一体回転するように連結する。
変速操作部21は、シフトアップスイッチ21a、シフトダウンスイッチ21bおよびニュートラルスイッチ21cから構成されるシフト操作スイッチを有する。そして、該シフト操作スイッチの操作に応じて始動電動機Sにより回転駆動されるシフトドラム22の回転位置、すなわち変速装置Mのシフト位置が変更され、例えばシフトアップスイッチ21aまたはシフトダウンスイッチ21bの1回の操作毎に、1つずつシフト位置が変更される。
逆回転可能な始動電動機Sは、スタータスイッチ9のオン・オフにより運転および停止が行われると共に、後述する制御装置によりその回転軸4の回転位置(または回転量)およびシフトアップおよびシフトダウンのための回転方向が制御される。
始動電動機Sと共に前記駆動機構を構成するクラッチ31は、油圧式または電磁式クラッチからなり、回転軸4とシフトドラム22のシフトドラム軸22aとの間に配置されて、前記制御装置により内燃機関Eの始動状態に応じて接続および非接続が制御され、シフトドラム22への始動電動機Sの回転駆動力の伝達および遮断を行う。
動力装置Pに備えられる制御装置は、始動電動機Sにより駆動されて始動を開始する内燃機関Eが自力回転を開始して始動が完了したことを検出する始動完了検出手段41、変速装置Mのシフト位置を検出するシフト位置検出手段としてシフトドラム22の回転位置を検出する回転位置検出手段42および前記シフト操作スイッチから構成されて運転者の操作により指定される所望のシフト位置を検出するシフト操作位置検出手段43と、それら検出手段41〜43からの信号に基づいて始動電動機Sおよびクラッチ31を制御するECU(電子制御ユニット)45とを備える。
始動完了検出手段41は、内燃機関Eの機関回転速度を検出する回転速度検出手段により構成され、機関回転速度がクランキング回転速度よりも大きい所定回転速度に達したとき、内燃機関Eの始動の完了を検出する。
ECU45は、内燃機関Eの始動開始後、クランキング状態のときはクラッチ31を非接続状態に維持する一方で、始動完了検出手段41により内燃機関Eの始動完了が検出されると、クラッチ31を直ちに接続状態にして、その後内燃機関Eが停止されるまで接続状態に維持する。
クラッチ31が接続状態にあるとき、ECU45は、そのメモリに格納された制御マップに基づいて始動電動機Sを回転させることにより、各シフト位置に対応する回転位置までシフトドラム22を回転させる。より具体的には、前記制御マップには、各シフト位置に対応した回転軸4の設定回転位置(シフトドラム22の回転位置と等価である。)が設定されている。そして、ECU45は、該制御マップに基づいて、前記シフト操作スイッチにより指定されたシフト位置に対応する前記設定回転位置まで回転軸4を回転させて、指定されたシフト位置が得られる回転位置までシフトドラム22を回転させる。さらに、ECU45は、回転位置検出手段42により検出されたシフトドラム22の実際の回転位置に基づいて、始動電動機Sの回転位置、したがってシフトドラム22の回転位置をフィードバック制御する。
変速装置Mの動作について説明する。
内燃機関Eの停止時にはクラッチ31は非接続状態にある。スタータスイッチ9の操作により始動電動機Sが回転し、その駆動力が減速機構5および一方向クラッチ8を介してクランク軸2に伝達されてクランク軸2が回転駆動され、内燃機関Eが始動を開始する。内燃機関Eが、クランキング状態を経て自力回転を開始し、機関回転速度が前記所定回転速度に達して内燃機関Eの始動が完了した後、始動完了検出手段41からの信号に基づいてクラッチ31が接続される。それゆえ、クラッチ31は、内燃機関Eの始動状態に応じて、始動中はシフトドラム22への始動電動機Sの回転駆動力を遮断し、始動完了後にシフトドラム22への始動電動機Sの回転駆動力を伝達する。
一方、内燃機関Eでは、始動が完了すると、クランク軸2の回転速度が被動歯車7の回転速度を上回るため、クランク軸2から減速機構5および回転軸4への回転の伝達は、一方向クラッチ8により遮断される。
内燃機関Eの始動完了後、変速装置Mでは、接続状態にあるクラッチ31を介して伝達される始動電動機Sにより駆動されたシフトドラム22が回転軸4と一体に回転する。そして、運転者の所望のシフト位置を検出するシフト操作位置検出手段43からの信号に基づいてECU45により制御された始動電動機Sがシフトドラム22を指示されたシフト位置に対応する回転位置まで回転させる。シフトドラム22の回転により前記カム溝に沿って軸方向に移動するシフトフォーク23が、シフタ24を軸方向に移動させて、指示されたシフト位置での変速比を確立すべく互いに噛合するメイン側変速歯車13およびカウンタ側変速歯車14を介してメイン軸11からカウンタ軸12にクランク軸2の動力が伝達される。
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
変速装置Mの変速機構20を構成するシフトドラム22を駆動する電動機が始動電動機Sで構成されることにより、始動電動機Sを利用してシフトドラム22が駆動されることから、シフトドラム22を駆動するための電動機を別途用意する必要がないので、動力装置Pのコストが削減され、しかも動力装置Pが軽量、コンパクト化される。
また、始動電動機Sは、始動電動機Sからクランク軸2への動力の伝達のみを許容する一方向クラッチ8を介してクランク軸2を回転駆動するため、シフトドラム22を駆動する始動電動機Sがクランク軸2に与える影響を排除する機構を新たに設ける必要がないので、この点でも、動力装置Pのコスト削減および軽量化に寄与する。
始動電動機Sは内燃機関Eの始動完了後にシフトドラム22を駆動することにより、内燃機関Eが始動中であるとき、始動電動機Sはシフトドラム22を駆動することがないので、シフトドラム22が始動電動機Sによる内燃機関Eの始動性に影響を与えることはなく、しかも始動完了後は始動電動機Sにより駆動されるシフトドラム22による変速が可能になる。この結果、始動電動機Sによる内燃機関Eの良好な始動性が確保されたうえで、始動完了後から始動電動機Sによる変速が可能になる。
変速装置Mは、内燃機関Eの始動状態に応じてシフトドラム22への始動電動機Sの回転駆動力の伝達および遮断を行うクラッチ31を備えることにより、内燃機関Eの始動状態に応じて始動電動機Sとシフトドラム22との断続を行うクラッチ31が設けられるので、内燃機関Eと変速装置Mとで共有される始動電動機Sの使い分けができると共に、クラッチ31は単に接続および非接続の作動状態にされればよく、シフトドラム22を間歇的に駆動する伝動機構は不要である。この結果、始動電動機Sとシフトドラム22との間の伝動機構の構造が簡略化され、しかも内燃機関Eと変速装置Mとで共有される始動電動機Sの使い分けが容易になる。
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
変速装置Mは、常時噛合い式の歯車式変速装置以外の歯車式変速装置や歯車式以外の変速装置であってもよい。例えば、変速装置Mはベルト式などの巻掛け式変速装置であってもよく、その場合には、駆動プーリの可動シーブが変速機構20を構成する。
始動電動機Sとシフトドラム22との間に、始動電動機Sの回転速度を減速する変速用減速機構が設けられてもよい。その際、始動用駆動歯車6と始動用被動歯車7との間に始動用減速機構を構成する1つまたは複数の中間歯車が設けられ、該中間歯車およびクラッチ31を介してシフトドラム22が回転駆動されるなど、始動用減速機構5の一部を利用して構成される前記変速用減速機構を介して、シフトドラム22が始動電動機Sにより駆動されてもよい。これにより、前記変速用減速機構が始動用減速機構により構成されるので、変速用減速機構を新たに設ける必要がなく、動力装置Pのコストが削減され、動力装置Pが軽量、コンパクト化される。
本発明が適用された電動式変速装置を備える動力装置の概念図である。
符号の説明
2…クランク軸、8…一方向クラッチ、22…シフトドラム、31…クラッチ、41…始動完了検出手段、P…動力装置、M…変速装置、E…内燃機関、S…始動電動機。

Claims (1)

  1. 内燃機関(E)と、変速比を変更するシフトドラム(22)を有する変速機構(20)が電動機により駆動される電動式変速装置(M)とを備え、前記内燃機関(E)の動力が前記変速装置(M)により変速される動力装置において、
    前記内燃機関(E)は始動電動機(S)を備え、前記電動機は前記始動電動機(S)により構成され、
    前記始動電動機(S)は、内燃機関(E)の停止時およびクランキング時に非接続状態にあるクラッチ(31)を介して変速機構(20)の前記シフトドラム(22)に接続され、
    前記始動電動機(S)は、内燃機関(E)の始動のために該始動電動機(S)を始動するスタータスイッチ(9)を有し、
    動力装置の運転を制御する制御装置(45)が設けられ、
    前記内燃機関(E)が始動されてクランキング状態を経て自力回転を開始し内燃機関回転速度がクランキング回転速度より大きい所定回転速度に達した時にそれを検出する始動完了検出手段(41)が設けられ、該始動完了検出手段(41)は、それからの始動完了検出信号が前記制御装置(45)に入力されるように該制御装置(45)に接続され、
    前記制御装置(45)は、変速操作部(21)からの変速操作信号を受けて該変速操作信号を前記始動電動機(S)に伝達可能に、前記変速操作部(21)および前記始動電動機(S)に接続され、
    前記制御装置(45)は、前記スタータスイッチ(9)の操作で前記始動電動機(S)により内燃機関(E)が始動されて前記所定回転速度に達した時、前記始動完了検出手段(41)からの始動完了検出信号を受けて、前記クラッチ(31)に接続信号を送り該クラッチ(31)を接続し、前記始動電動機(S)を前記シフトドラム(22)に接続して前記始動電動機(S)により前記変速機構(20)を駆動することを特徴とする動力装置。
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