JP4772404B2 - 真空処理装置及びそのシール方法 - Google Patents
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Description
このVOD法は、真空処理槽とこれに載置する上蓋との間をシールし、真空処理槽内部の空気を外部から吸引して、真空度を100〜0.1Torr程度とした減圧状態で精錬を行うことにより、溶鋼の脱炭を促進し、クロムの酸化を防止して、クロム歩留りの高い脱炭精錬を行う方法である。
しかし、このように良好な脱炭精錬を行うためには、真空処理槽と上蓋との間のシールを確実に行うことが重要である。
また、特許文献2には、真空処理槽(真空槽)の外周に環状溝を設け、この環状溝内に低融点金属を満たし、この低融点金属を誘導加熱又は抵抗電熱ヒータを用いて溶融させた後に、環状溝内に上蓋のフランジ部を浸漬し、溶融した低融点金属を凝固させることにより、真空処理槽内部を外気と遮断する真空処理装置(真空処理設備)が提案されている。なお、低融点金属としては、Bi、Zn、Cd、Sn、Te、Pb、あるいはこれらの合金を使用している。
また、特許文献2に開示された真空処理装置では、低融点金属を用いるため、上蓋内側の低融点金属が溶鋼熱を受けて蒸発したり、また真空度を50〜0.1Torrの高真空にすることで、低融点金属が真空処理槽内に吸引されて真空処理槽内部にこぼれ、低融点金属の損失が生じる問題がある。更に、上蓋のフランジ部に低融点金属の凝固体が付着するため、次回のシール作業に備えて凝固体を溶解し除去することに手間を要したり、また凝固体を除去しない場合はこの凝固体がシール性を阻害するという問題がある。
前記真空処理槽の上端部には、その底に前記シール部材が配置された断面凹状のフランジ部が設けられ、しかも該フランジ部の溝内の底部分は、前記真空処理槽に前記シール部材を介して前記上蓋を載置した際に、該上蓋の下端フランジ部が当接する部分であり、かつ前記真空処理槽内に配置された前記フランジ部の内周側壁及び該真空処理槽外に配置された前記フランジ部の外周側壁がそれぞれ、前記上蓋の下端フランジ部とは間隔をあけて配置され、
前記真空処理槽の外側には、前記上蓋が該真空処理槽に未載置の状態で前記フランジ部内へ水を供給する水供給手段が設けられている。
第1の発明に係る真空処理装置において、前記フランジ部の下側には、該フランジ部の冷却手段が設けられていることが好ましい。
前記フランジ部の溝内の底部分は、前記真空処理槽に前記シール部材を介して前記上蓋を載置した際に、該上蓋の下端フランジ部が当接する部分であり、かつ前記真空処理槽内に配置された前記フランジ部の内周側壁及び該真空処理槽外に配置された前記フランジ部の外周側壁がそれぞれ、前記上蓋の下端フランジ部とは間隔をあけて配置され、前記上蓋が前記真空処理槽に未載置の状態では、前記フランジ部内に水を供給し、該フランジ部内の水の液面位置を、前記シール部材の上端位置よりも高くしている。
第2の発明に係る真空処理装置のシール方法において、前記上蓋の上昇又は下降に応じて、前記フランジ部内への水の供給量及び前記フランジ部内からの水の排出量のいずれか一方又は双方を制御することにより、前記フランジ部内の水の液面位置を調整することが好ましい。
これにより、従来よりも長期に渡って、溶鋼の精錬時における真空処理槽内部の真空度を安定させることができるため、例えば、脱炭精錬による脱炭反応を良好に進行させることができ、更に、精錬過程でのクロムの酸化を防止して、クロム歩留りの高い脱炭精錬を実施できる。
また、フランジ部の外周側壁の上端位置を、フランジ部の内周側壁の上端位置と、シール部材の上端位置に対して設定することで、例えば、上蓋が真空処理槽に未載置の状態で、フランジ部内へ連続的に水を供給し続けても真空処理槽内部へ水を流入させることなく、しかもフランジ部内に水を滞留させることなくシール部材を水に浸漬できる。
請求項6記載の真空処理装置のシール方法は、上蓋の上昇又は下降に応じてフランジ部内の水の液面位置の調整を行うので、状況に応じたシール部材の冷却が可能になり、シール部材の損耗又は品質劣化を更に抑制できる。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る真空処理装置の一部省略側断面図、図2は同真空処理装置の真空処理槽の平面図、図3は同真空処理装置の真空処理槽と上蓋との接触部分の拡大図、図4(A)〜(C)はそれぞれ同真空処理装置の使用状態の説明図である。
図1〜図3に示すように、真空処理槽12の上端部には、環状となったフランジ部15が設けられている。このフランジ部15は溝型となっており、その平坦となった底部分に複数(ここでは、2つ)の環状溝部20が同心円状に形成され、ここに、例えば、シリコーンゴムで構成される弾性を備えたOリング13が配置されている。なお、Oリング13は複数配置しているが1本でもよい。
フランジ部15の半径方向の内側端部と外側端部には、内周側壁22と外周側壁23がそれぞれ設けられ、真空処理槽12に上蓋14を載置した際には、内周側壁22が真空処理槽12内に、外周側壁23が真空処理槽12外に、それぞれ配置される。このとき、内周側壁22と下端フランジ部21との間隔、及び外周側壁23と下端フランジ部21との間隔は、例えば、それぞれ50mm以上200mm以下(ここでは、100mm)程度あいている。
図3に示すように、フランジ部15の外周側壁23の上端位置U1は、フランジ部15の内周側壁22の上端位置U2よりも、例えば、50mm以上200mm以下(ここでは、130mm)程度低く、自由状態でのOリング13の上端位置U3よりも、例えば、10mm以上50mm以下(ここでは、20mm)程度高くなっている。
また、真空処理槽12の外側には、フランジ部15内の水を排出する排出手段28が設けられている。
この排出手段28は、フランジ部15の外周側壁23の下方に設けられ、外周側壁23を超えて溢れ出す水を回収するための排水溝29と、排水溝29の底部に取付けられ、溢れ出した水を排水枡30へ流す排水管31とを有している。この排水管31は、排水溝29の底部に1箇所取付けられているが、複数箇所であってもよい。また、排水管31を介して回収した水は、再度貯留槽24へ送ってフランジ部15へ供給することも可能である。
また、上蓋14の下端フランジ部21の上側には、この下端フランジ部21の上面34が構成要素の一部となる上側冷却水流路35が設けられている。この上側冷却水流路35には、ポンプ(図示しない)により供給管36を介して冷却水が供給され、この冷却水が下端フランジ部21の上面34に接触しながら流れている。
この下側冷却水流路33及び上側冷却水流路35に冷却水を流すことで、真空処理槽12のフランジ部15及び上蓋14の下端フランジ部21の熱変形を防止しながら、Oリング13の冷却も実施できる。
また、上蓋14の下端部内側には、下端フランジ部21の内側面と間隔を有して配置され、真空処理槽12のフランジ部15の内周側壁22と隙間を開けて、上から被さった状態で配置される突出部37が設けられている。これにより、真空処理槽12の減圧の際に、真空処理槽12のフランジ部15の内周側壁22側に残存する水が、真空処理槽12内へ蒸発する速度を遅くすることができる。また、これにより、短時間での大量蒸発を防止することができ、排気ガス中の水分濃度の上昇を抑制できるので、例えば、排ガス中のダストが排気ダクトへ付着することを防止でき、付着による圧損で真空排気に支障をきたすことを防止できる。
まず、図1、図2に示すように、溶鋼を入れた取鍋11を真空処理槽12内部の支持台18に配置する。このように、上蓋14が未載置の状態では、図4(A)に示すように、フランジ部15内の水の液面位置を、自由状態にあるOリング13の上端位置よりも高くし、Oリング13が浸漬する位置まで水を供給する。これにより、取鍋11が真空処理槽12の上方を移動する際に、例えば、粉塵の付着、又はスプラッシュによる溶鋼微粒子の侵入によって生じるOリング13の摩耗又は損耗を抑制できる。なお、給水弁26は開状態となってフランジ部15内へ水を常時流しているが、停止してもよい。また、フランジ部15内へ供給された水は、フランジ部15の内周側壁22と外周側壁23の高さの違いから、真空処理槽12内部へ流れ込むことなく、外周側壁23を超えて溢れ出し、排水溝29へ流れ出す。
図4(B)に示すように、上蓋14の下端フランジ部21が、真空処理槽12のフランジ部15内の水に浸漬する際、フランジ部15内の水が外周側壁23を超えて溢れ出し、排水溝29へと流れ出す。このとき、真空処理槽12の内側へ移動する水は、内周側壁22の高さによって、真空処理槽12内へ溢れ出すことなく滞留する(斜線部参照)。
これによって、真空処理槽12のフランジ部15及び上蓋14の下端フランジ部21の冷却を実施して、その変形を防止しながら、Oリング13の冷却も実施でき、溶鋼熱によるOリング13の損耗又は品質劣化を抑制できる。
これにより、上蓋14を前記した処理位置まで上昇させる間(例えば、1分以内程度)に、図4(A)に示すように、フランジ部15内に水が供給され、フランジ部15内の水の液面位置を、Oリング13の上端位置よりも高い位置(例えば、15mm程度)に調整する。
なお、フランジ部15への水の供給は、次の溶鋼の処理まで連続的に行うことが好ましく、これにより、例えば、上蓋からの輻射熱、及びOリング13へのダストの付着を抑制でき、シール性を良好にできる。このとき、フランジ部15の外周側壁23から溢れ出した水は、排水溝29を介して排水枡30で回収し、再度送水管25を介してフランジ部15へ循環供給することが好ましい。
以上に示した方法を繰り返し行って溶鋼を精錬する。これにより、Oリング13の損耗又は品質劣化を抑制してOリング13の長寿命化を図り、溶鋼の精錬時における真空処理槽12内部の真空度を長期にわたって安定させることができる。
ここでは、Oリングによるシール性の評価を行うため、真空処理槽内の到達真空度と溶鋼の到達炭素量との関係を図5に、またOリングの劣化状態を図6に、それぞれ示す。なお、図5において、実施例及び従来例に用いたOリングの使用開始時(溶鋼の処理回数1回)は、真空処理槽内の到達真空度が0.7Torr程度、溶鋼の到達炭素量が15ppm程度であった。また、図6において、Oリングの使用開始時は、真空処理槽内の到達真空度が0.7Torr程度であった。なお、図5、図6に記載した到達真空度とは、真空処理槽内の真空度が最も高くなった状態での値を意味する。
以上のことから、本願発明の真空処理装置を使用して、そのシール方法を適用することで、上蓋からの輻射熱、更には溶鋼熱によるOリングの損耗又は品質劣化を抑制してOリングの長寿命化を図り、溶鋼の精錬時における真空処理槽内部の真空度を長期にわたって安定させることができることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、上蓋の上昇又は下降に応じて、真空処理槽のフランジ部内への水の供給量を制御することにより、フランジ部内の水の液面位置を調整する場合について説明した。しかし、例えば、真空処理槽のフランジ部に排水弁を設け、フランジ部内からの水の排出量を制御することにより、フランジ部内の水の液面位置を調整することも、また水の給水量と排水量の両方を調整することも可能である。
Claims (6)
- 溶鋼を入れた精錬鍋を内部に配置する真空処理槽と、該真空処理槽にシール部材を介して載置される上蓋とを有し、前記真空処理槽に該上蓋を載置し、該真空処理槽内部を減圧状態にして前記溶鋼の精錬を行う真空処理装置において、
前記真空処理槽の上端部には、その底に前記シール部材が配置された断面凹状のフランジ部が設けられ、しかも該フランジ部の溝内の底部分は、前記真空処理槽に前記シール部材を介して前記上蓋を載置した際に、該上蓋の下端フランジ部が当接する部分であり、かつ前記真空処理槽内に配置された前記フランジ部の内周側壁及び該真空処理槽外に配置された前記フランジ部の外周側壁がそれぞれ、前記上蓋の下端フランジ部とは間隔をあけて配置され、
前記真空処理槽の外側には、前記上蓋が該真空処理槽に未載置の状態で前記フランジ部内へ水を供給する水供給手段が設けられていることを特徴とする真空処理装置。 - 請求項1記載の真空処理装置において、前記フランジ部の前記外周側壁の上端位置は、該フランジ部の前記内周側壁の上端位置よりも低く、しかも前記シール部材の上端位置よりも高くなっていることを特徴とする真空処理装置。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載の真空処理装置において、前記フランジ部の下側には、該フランジ部の冷却手段が設けられていることを特徴とする真空処理装置。
- 溶鋼を入れた精錬鍋を真空処理槽内部に配置し、該真空処理槽の上端部に設けられた断面凹状のフランジ部の底に配置したシール部材を介して、前記真空処理槽に上蓋を載置し、減圧状態にした前記真空処理槽内部で前記溶鋼の精錬を行う真空処理装置のシール方法において、
前記フランジ部の溝内の底部分は、前記真空処理槽に前記シール部材を介して前記上蓋を載置した際に、該上蓋の下端フランジ部が当接する部分であり、かつ前記真空処理槽内に配置された前記フランジ部の内周側壁及び該真空処理槽外に配置された前記フランジ部の外周側壁がそれぞれ、前記上蓋の下端フランジ部とは間隔をあけて配置され、前記上蓋が前記真空処理槽に未載置の状態では、前記フランジ部内に水を供給し、該フランジ部内の水の液面位置を、前記シール部材の上端位置よりも高くしていることを特徴とする真空処理装置のシール方法。 - 請求項4記載の真空処理装置のシール方法において、前記溶鋼の精錬中は、前記フランジ部内に水を供給して前記シール部材の冷却を行うことを特徴とする真空処理装置のシール方法。
- 請求項4及び5のいずれか1項に記載の真空処理装置のシール方法において、前記上蓋の上昇又は下降に応じて、前記フランジ部内への水の供給量及び前記フランジ部内からの水の排出量のいずれか一方又は双方を制御することにより、前記フランジ部内の水の液面位置を調整することを特徴とする真空処理装置のシール方法。
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