JP4772356B2 - 誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法 - Google Patents
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Description
その零相電流方式誘導集電装置を用いた走行試験において、車両運動による誘導電圧変化が原因と考えられる出力電流過剰(OL)によりコンバータが停止するという事態が発生した。そのため、本願発明者らはその現象を解明するとともに、その対策を検討した。その結果、(1)走行試験における初期ゲイン時とゲイン増大時の出力電流過剰の原因が異なること、(2)後者は制御抵抗Rc 及びコンバータ電圧が飽和することが原因であること、(3)そのため、コンバータ電圧が飽和しないような制御を盛り込むことが有効であること、(4)コンバータ電圧偏差をフィードバックするにあたっては積分項より出力偏差部にすることが有効であることがわかった。
本発明は、上記状況に鑑みて、コンバータ電圧が上限値を超えた場合でも的確に制御し、安定な動作を行うことができる誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法を提供することを目的とする。
〔1〕電流瞬時値に、制御抵抗Rcによって制御される回路インピーダンスを乗じた電圧にて高力率を達成する、磁気浮上式鉄道の車上電源としての地上コイルが作る高周波磁界を利用する零相電流方式誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法において、前記コンバータ電圧が上限値を超える場合、前記上限値と実測値の差分をフィードバックして積分値に追加することにより、前記制御抵抗Rcは低減させないことで前記誘導集電装置の出力電力目標値を低減させることを特徴とする。
まず、現車試験における出力電流過剰(OL)発生状況について説明する。
図1は現車試験における出力制御の基本ブロック図である。
この図において、1は出力測定値、2は出力上限値、3,8,11は加算器、4,9は制限値生成器、5はKp (比例項ゲイン)、6は積分器、7はKi (積分項ゲイン)、10は制御抵抗最小値(Rc0)、12は出力値である。
(1)計算モデルを図2に示す。本モデルは入力信号離散化(sample)、三相、零相電流分離(i trans)、出力制御(power control)、離散化補正(digital compensate)、制御電圧計算(Ec trans)、集電回路〔G(s)〕、直流回路(DC simulate)等を模擬しているが、PWM制御は模擬していない。
(3)コンバータは、0.2s(120Hz)後から動作する(図中、start)。
(1)初期ゲイン(図3)における制御抵抗Rc は誘導電圧E0 の変化に対して90度遅れており、そのために誘導電圧E0 増大時に交流電流I、コンバータ電圧(指令値)Ec 、直流電力が増大している。すなわち、誘導電圧E0 の変動に対する出力制御が十分でない(出力制御ゲインが小さい)ことが確認できる。また、コンバータ電圧Ec は390V≒550/sqrt(2)を越えており、その時に大きな零相電流I0 が発生、出力電力Pの最大値は80kW(直流電流133A)となっている。なお、周波数増加時に出力制御が機能していないが(出力制御が機能する場合、200Hz付近から交流電流Iが低減、実機では低減)、これは周波数変化速度が実機より速いため(実機では30秒程度)と考えられる。
(5)上記4つのシミュレーション結果は実際の測定結果とほぼ同様な傾向を示している。
なお、ゲイン増大時の制御抵抗Rc 飽和時に出力制御が遅れる(制御抵抗Rc が増大しない)理由として、
・制御抵抗Rc 自身に最小値を持つこと
・誘導電圧E0 極小時に集電能力自体が25kW以下となること
・制御抵抗Rc が小さい時に出力電力脈動が大きいこと
・コンバータ電圧Ec が上限値を超え、力率1制御が機能できないこと
・出力偏差にしきい値を設けていること、また制御ゲインが未だ不十分であること
等が挙げられる。
図8において、21は出力測定値、22は出力上限値、23,27,31,34,37は加算器、24,28,35は制限値生成器、25はコンバータ電圧(Ecrms)、26は規定値(図中360)、29はリセットワインドアップ制御のフィードバック定数(K)、30はKp (比例項ゲイン)、32は積分器、33はKi (積分項ゲイン)、36は制御抵抗最小値(Rc0)、38は出力値である。
上記図3〜図6の場合、出力電力低減時に出力一定制御によって制御抵抗Rc が低減(積分項が−方向に増加)するが、本制御は、コンバータ電圧の飽和時にその制御機能を抑制するように作用する(すなわち制御抵抗Rc が低減せず、交流電流そしてコンバータ電圧が増大しない)。なお、本制御は、検討当初、コンバータ電圧飽和時にそれ以上の積分動作を行わないことを目的としたリセットワインドアップ制御と似た制御ブロック図とした。
図9はリセットワインドアップ制御(K=4)を示す図である。
図10はリセットワインドアップ制御(K=2)を示す図である。
図11はリセットワインドアップ制御(K=8)を示す図である。
図9〜図11から以下のことがわかる。
(1)シミュレーション結果から、(リセットワインドアップ制御では)誘導電圧E0 極小時における制御抵抗Rc が最小値0.35Ωに固定されず、その時の交流電流I及びコンバータ電圧Ec が低減している。また、コンバータ電圧Ec は390Vを若干越える程度となり、力率1制御が機能し、零相電流I0 も低減している。
(2)一方、誘導電圧E0 極小時を中心に交流電流I等に新たな振動が発生し、またフィードバック定数Kが大きくなるにつれて増加している。シミュレーション結果では、K=2程度が出力電力増加もなく、上記振動も小さいため、適切なゲインと考えられる。
上記までの検討にてコンバータ電圧と上限値の偏差(交流電圧偏差)のフィードバックが直流電流過剰対策として有効であることから、本方法をベースに改良方式を検討した。改良方式の制御ブロック図を図12に示す。
(1)交流電圧偏差がより有効に作用するように、フィードバックする箇所を積分項から出力指令偏差部に変更する。このことは、交流電圧偏差発生時に出力上限値Pmax を低減することと解釈できる。
(2)制御抵抗Rc が最小値である時のコンバータ電圧は、ほぼ交流電流×リアクタンスに比例することから、交流電圧偏差の代わりに交流電流偏差を使用する。また、交流電流はコンバータ電圧(制御電圧)に対して、集電コイルのリアクタンス分がなまっているため、脈動等に対して有利である。
図13はコンバータ電圧飽和を考慮した改良制御(K=0.3)の特性図である。
図14はコンバータ電圧飽和を考慮した改良制御(K=0.5)の特性図である。
図15はコンバータ電圧飽和を考慮した改良制御(K=1)の特性図である。
図16はコンバータ電圧飽和を考慮した改良制御(K=5)の特性図である。
これらの図から以下のことが分かる。
(1)本発明の改良制御によって、誘導電圧E0 極小時における制御抵抗Rc が最小値0.35Ωに固定されず、その時の交流電流I及びコンバータ電圧Ec が低減している。また、コンバータ電圧Ec はK=0.3(図13)を除き、約390V以下であり、力率1制御が機能し、零相電流I0 も低減している。更に、誘導電圧E0 が極小値から増大する時に発生した出力電力Pの増加も見られなくなった。
その試験回路を図17に示す。この図において、61は三相電源、62はPWMインバータ、63は変圧器、64はシミュレートされた集電コイル、65は零相電流型コンバータ(PWMコンバータ)、66は蓄電池、67は負荷である。
上記試験回路において、台車共振周波数程度の一定周波数(5Hz)の誘導電圧変動を発生し、車両動揺電圧変動による出力電流過剰対策の効果を試験した。
ここで図18は出力電流過剰対策試験結果(K=2)、図19は出力電流過剰対策試験結果(K=0.2)、図20は出力電流過剰対策試験結果(従来制御)を示している。
これらの図から、従来制御では車両運動により出力電力が過剰に増大しているのに対して、対策を施した場合、出力電力の増大が抑制されていることが分かる。
一方、フィードバックゲインKを0.2〜5に変化させて試験を実施したところ、K=5にてコンバータ停止が発生したので、適切なフィードバックゲインを設定する必要がある。
上記したように、零相電流方式誘導集電装置現車試験において発生した出力電力過剰の現象解明を実施し、その対策を検討した。また、現車試験にて検討した対策を実施したが、不十分であったため、改良制御方法を提案した。
2,22,42 出力上限値
3,8,11,23,27,31,34,37,47,50,55,58 加算器
4,9,24,28,35,48,51,56 制限値生成器
5,30,52 Kp (比例項ゲイン)
6,32,53 積分器
7,33,54 Ki (積分項ゲイン)
10,36,57 制御抵抗最小値(Rc0)
12,38,59 出力値
25 コンバータ電圧(Ecrms)
26,44 規定値
29,49 K(リセットワインドアップ制御のフィードバック定数)
43 コンバータ電流測定値
45 角周波数
46 演算器
61 三相電源
62 PWMインバータ
63 変圧器
64 シミュレートされた集電コイル
65 零相電流型コンバータ(PWMコンバータ)
66 蓄電池
67 負荷
Claims (2)
- 電流瞬時値に、制御抵抗Rcによって制御される回路インピーダンスを乗じた電圧にて高力率を達成する、磁気浮上式鉄道の車上電源としての地上コイルが作る高周波磁界を利用する零相電流方式誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法において、前記コンバータ電圧が上限値を超える場合、前記上限値と実測値の差分をフィードバックして積分値に追加することにより、前記制御抵抗Rcは低減させないことで前記誘導集電装置の出力電力目標値を低減させることを特徴とする誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法。
- 請求項1記載の誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法において、前記フィードバックは、所定の規定値と角周波数から計算される電流値と、実際のコンバータ電流値との差分とし、前記フィードバックを出力偏差部分に追加することを特徴とする誘導集電装置のコンバータ電圧飽和時の制御方法。
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