JP4771627B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷媒にCOを使用した冷凍サイクルを備えた車両用空調装置として、車外側熱交換器の出口側冷媒温度に基づいて最も高いエネルギー効率(COP)で運転できるようにしたものがある(特開平7−294033号公報)。
【0003】
なお、この種の車両用空調装置では、冷房能力やCOPがコンプレッサから吐出される圧力に左右されるが、前記COPは、10〜15MPaの圧力で最も良くなることが周知である。また、コンプレッサから吐出される冷媒圧力は、減圧弁の入り口側の冷媒温度と大きな関係があり、この減圧弁の入り口側での冷媒温度に応じてエネルギー効率の良い最適な圧力値があることが周知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記車両用空調装置では、コンプレッサから減圧弁の入り口側までの冷媒圧力は、冷媒循環量に応じて変化する。また、冷媒循環量の変化に伴って圧力損失も大きく変化するため、減圧弁の入り口側での冷媒温度に基づき、最適な効率になるコンプレッサからの吐出圧力の演算は非常に複雑になる。
【0005】
特に、冷媒圧力が8MPaから10MPaの範囲の場合、超臨界域での等温線の勾配が著しく小さくなる。そのため、複数のセンサを用い、冷媒温度に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒圧力を最適な圧力に制御する場合、チャタリングが発生するため、現実的には困難が多い。また、減圧弁に高い耐久性が求められることになり、コスト高になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、複雑な演算をすることなく、コンプレッサから吐出する冷媒圧力と、減圧弁の入り口側での冷媒温度を理想的な目標値に調整できる車両用空調装置を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、第1発明の車両用空調装置は、コンプレッサから吐出させた超臨界流体からなる冷媒を、車外用ブロアを備えた車外側熱交換器で放熱させ、減圧弁で減圧し、車内側熱交換器で気化させた後、前記コンプレッサに戻して循環させる冷凍サイクルを備え、各種検出手段により検出した車内外の諸条件に基づいて前記コンプレッサ、車外用ブロアおよび減圧弁を制御手段で制御する車両用空調装置において、前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率を設定するとともに、減圧弁の入り口側における目標温度を設定し、かつ、前記目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、車外の温度を検出する外気温度検出手段を更に設け、前記制御手段は、前記外気温度検出手段により検出した温度と、前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した温度とが略同一である場合、車外用ブロアの動作を停止するように構成している。
【0008】
ここで、前記車内外の諸条件とは、車内温度とユーザが設定した空調の設定温度の差から演算した熱負荷、コンプレッサの回転数に基づく冷媒の循環量などを意味する。
【0009】
前記車両用空調装置によれば、例えば熱負荷等の車内外の諸条件から目標エネルギー効率を設定するとともに、この目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、実際の冷媒圧力と比較して減圧弁の開度を調整する。また、車内外の諸条件から減圧弁の入り口側での目標温度を設定し、実際の冷媒温度と比較して車外用ブロアの風量を調整する。
【0010】
即ち、減圧弁の入り口側の温度に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒圧力を調整するのではなく、コンプレッサから吐出する冷媒圧力と減圧弁の入り口側での冷媒温度の目標値をそれぞれ設定し、それぞれ独立してその目標値になるように減圧弁と車外用ブロアとを調整する。即ち、複雑な演算をすることなく、理想的な冷媒圧力と冷媒温度の関係に確実に調整できるため、チャタリングが発生することを防止できる。従って、減圧弁に高い耐久性が求められることはなく、安価な冷凍サイクルを提供できる。また、外気温度と減圧弁の入り口側での冷媒温度が略同一である場合には、車外用ブロアを動作させても冷房能力は向上しないため、車外用ブロアの動作を停止することにより、無駄な電力消費を防止するとともに、高効率な冷凍サイクルを実行できる。
【0011】
第2発明の車両用空調装置は、第1発明の車外の温度に基づいて車外用ブロアの動作を停止する構成の代わりに、前記制御手段は、前記車外用ブロアを最大出力とした状態で前記目標温度に至らない場合、前記目標エネルギー効率を減少するように補正、または、前記目標圧力を増加させるように補正するように構成している。このようにすれば、より効率的な冷凍サイクルを実行および維持できる。
【0012】
第3発明の車両空調装置は、前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率と、減圧弁の入り口側における目標温度とを設定し、かつ、設定温度と車内温度との温度差に基づいて目標冷房能力を設定するとともに、前記目標エネルギー効率と目標冷房能力に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、車外の温度を検出する外気温度検出手段を更に設け、前記制御手段は、前記外気温度検出手段により検出した温度と、前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した温度とが略同一である場合、車外用ブロアの動作を停止するように構成している。
【0013】
この第3発明の車両空調装置では、前記と同様に、複雑な演算をすることなく、理想的な冷媒圧力と冷媒温度の関係に確実に調整できる。そのうえ、車内外の諸条件から目標冷房能力を設定し、その目標冷房能力と前記目標エネルギー効率に基づいて前記目標圧力を設定するため、冷凍サイクルにおける必要性能である冷房能力を確実に確保することができる。また、外気温度と減圧弁の入り口側での冷媒温度が略同一である場合には、車外用ブロアの動作を停止するため、無駄な電力消費を防止するとともに、高効率な冷凍サイクルを実行できる。
【0014】
第4発明の車両空調装置は、第3発明の車外の温度に基づいて車外用ブロアの動作を停止する構成の代わりに、前記制御手段は、前記車外用ブロアを最大出力とした状態で前記目標温度に至らない場合、前記目標エネルギー効率を減少するように補正、または、前記目標圧力を増加させるように補正するように構成している。このようにすれば、より効率的な冷凍サイクルを実行および維持できる。
【0015】
第3および第4発明の車両空調装置では、前記制御手段は、前記目標冷房能力に応じてコンプレッサから吐出する冷媒循環量を調整することが好ましい。このようにすれば、冷凍サイクルの高効率化と必要性能の確保を両立できる。
【0016】
さらに、第1乃至第4発明の車両空調装置では、前記制御手段は、所定の車両走行速度以下でのみ前記車外用ブロアを動作させることが好ましい。即ち、車速が所定速度以上の場合には、前記と同様に、車外用ブロアを動作させても冷房能力は向上しないため、車外用ブロアの動作を停止することにより、無駄な電力消費を防止するとともに、高効率な冷凍サイクルを実行できる。
【0017】
さらにまた、前記冷媒はCOであることが好ましい。ここで、COは、地球温暖化係数が小さいため、地球の温暖化を防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の冷凍サイクルを示す。この冷凍サイクルでは、コンプレッサから吐出された冷媒(ここでは、COを使用)が、オイルセパレータ3、車外側熱交換器5、減圧弁9、および、車内側熱交換器10からアキュムレータ17を介してコンプレッサ1に戻って循環する。これらコンプレッサ1、減圧弁9、および、後述する車外用ブロア6は、制御装置18によって駆動制御される。
【0019】
前記コンプレッサ1は、図示しないエンジンの動力によって駆動可能である。コンプレッサの出口側配管には、吐出圧力検出手段である圧力センサ2が設けられている。
【0020】
前記オイルセパレータ3は、コンプレッサ1から吐出された冷媒中に含まれるオイルを分離し、オイルリターン管4を介してコンプレッサ1に還流させるものである。
【0021】
前記車外側熱交換器5は、車両前方部に配設され、冷媒を放熱させるのに適した従来周知の構造である。この車外側熱交換器5は、車外用ブロア6を備えている。この車外用ブロア6は、送風量が変更自在に構成され、その送風量の変更により車外側熱交換器5における冷媒からの放熱量(熱交換効率)を調整することが可能である。また、車外側熱交換器5の近傍には外気温度検出手段である車外温度センサ7が設けられている。さらに、この車外側熱交換器5の出口側には、流出した冷媒温度、即ち、後述する減圧弁9の入り口側の冷媒温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段である冷媒温度センサ8が設けられている。
【0022】
前記減圧弁9は、開度を変更することにより、その上流側の冷媒圧力を調整するとともに、通過する冷媒を減圧するものである。なお、この減圧弁9により、上流側の冷媒圧力を調整することにより、その冷媒温度も調節することが可能である。
【0023】
前記車内側熱交換器10は、車内前方部の空調ユニット11内に配設され、この空調ユニット11内を通過する空気を冷却するとともに除湿する従来周知の構造である。空調ユニット11における車内側熱交換器10の上流側には、ブロアモータ13の駆動により回転するブロア14が配設され、内気または外気を所定風量で車内に送風する。また、空調ユニット11の車内側熱交換器10の下流側には、エアミックスドア15が回動自在に設けられ、冷風を分流し、その一方をヒータコア16に向かわせる。前記エアミックスドア15は、その回動位置(開度)によってヒータコア16で加熱される空気量、即ち、混合される冷風と温風の比率を変更し、車内に所望温度で送風する。
【0024】
前記アキュムレータ17は、冷媒を気液に分離し、その気相のみをコンプレッサ1に循環供給するものである。
【0025】
前記制御装置18は、予め設定されたプログラムに基づいてコンプレッサ1の駆動回転数、減圧弁9の開度、車外用ブロア6による送風量、および、エアミックスドア15の回動位置を調整するものである。
【0026】
また、本実施形態の制御手段は、車外温度センサ7により検出した車外温度、車内に配設した車内温度センサ12により検出した車内温度とユーザが設定した空調の設定温度の差から熱負荷を判定する。そして、この熱負荷に基づいて冷凍サイクルの目標エネルギー効率(COP)を設定するとともに、減圧弁9の入り口側における目標温度を設定する。また、前記目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサ1から吐出する冷媒の目標圧力を設定する。そして、これらの設定と、実際の温度や圧力に応じて減圧弁9の開度および車外用ブロア6の風量を調整し、高効率な冷凍サイクルを実施できるように構成している。
【0027】
次に、前記構成の車両用空調装置の動作について具体的に説明する。
図2のモリエル線図に示すように、まず、冷媒は、コンプレッサ1の駆動により高温かつ超臨界域を越える高圧状態で吐出(A)され、オイルセパレータ3を通過し、車外側熱交換器で放熱されて圧力を維持したまま液化(B)し、減圧弁9で減圧(C)される。その後、車内側熱交換器10内を通過する際に気化(D)し、アキュムレータ17で気液分離され、気相のみがコンプレッサ1に戻って(E)循環する。なお、前記オイルセパレータ3では、コンプレッサ1から冷媒とともに漏出したオイルを分離し、そのオイルのみをオイルリターン管4を介してコンプレッサ1に還流する。
【0028】
この車両用空調装置は、冷媒に、HFC−134a等の他の冷媒に比べて分子量が小さくて漏れやすいCOを使用する場合、所望の効果を発揮させることができる。そして、COは、地球温暖化係数が小さいため、地球の温暖化を防止できる。
【0029】
この冷凍サイクルにおいて、前記目標エネルギー効率(COP)は、下記の数(1)に示すように、車内側熱交換器10でのエンタルピの変化(差)hevaと、コンプレッサ1でのエンタルピの変化(差)hcompとの比率により算出できる。
【0030】
【数1】
Figure 0004771627
【0031】
また、前記車内側熱交換器10でのエンタルピ差hevaと、コンプレッサ1でのエンタルピ差hcompは、例えば、下記の数(2)に示すように、吐出圧力Pdにより算出できる。
【0032】
【数2】
Figure 0004771627
【0033】
そして、本実施形態では、前記車内側熱交換器10でのエンタルピ差hevaは既知であるため、目標エネルギー効率を設定すると、前記数(1)および数(2)によりコンプレッサ1から吐出する目標圧力を設定できる。
【0034】
次に、前記制御装置18による冷凍サイクルの高効率化について説明する。
制御装置18は、図3に示すように、まず、ステップS1で、車外温度センサ7および車内温度センサ12により車外温度および車内温度を検出した後、ステップS2で、熱負荷判定処理を実行する。
【0035】
ついで、ステップS3で、目標値設定処理を実行する。この目標値設定処理では、図4に示すように、まず、ステップS3−1で、前記判定した熱負荷に基づいて、下記の表1に示すテーブルから目標エネルギー効率を設定する。
【0036】
【表1】
Figure 0004771627
【0037】
前記表1に示すように、車外温度が高く、設定温度と実際の車内温度の差が大きい場合には目標エネルギー効率を2.0に設定する。また、車外温度が高く、設定温度と実際の車内温度の差が小さい場合には目標エネルギー効率を2.5に設定する。また、車外温度が低く、設定温度と実際の車内温度の差が大きい場合には目標エネルギー効率を2.5に設定する。また、車外温度が低く、設定温度と実際の車内温度の差が小さい場合には目標エネルギー効率を3.5に設定する。ここで、本実施形態では、車外温度の高低とは、その車外温度が30℃以上であるか否かによって判断している。また、温度差の大小とは、その温度差が5℃以下であるか否かによって判断している。
【0038】
目標エネルギー効率を設定すると、ステップS3−2で、その目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサ1から吐出する冷媒の目標圧力Phtrを前記数(1),(2)により設定する。
【0039】
ついで、ステップS3−3で、ステップS1で検出した車外温度に基づいて車外側熱交換器5の出口側(減圧弁9の入り口側)における目標温度Tgco trを設定する。ここで、本実施形態では、この目標温度Tgco trは、車外温度Tgに2℃加算した温度としている。
【0040】
前記目標値設定処理が終了すると、図3に示すように、ステップS4で、圧力センサ2を介してコンプレッサ1から吐出された実際の冷媒の現圧力Phrを検出する。
【0041】
そして、ステップS5で、設定した目標圧力Phtrと現圧力Phrが一致しているか否かを検出する。そして、目標圧力Phtrと現圧力Phrが一致している場合にはステップS1に戻り、一致していない場合にはステップS6に進む。
【0042】
ステップS6では、設定した目標圧力Phtrが現圧力Phrより高いか否かを検出する。そして、設定した目標圧力Phtrが現圧力Phrより高い場合にはステップS7に進み、減圧弁9を閉方向に調整してステップS9に進む。一方、設定した目標圧力Phtrが現圧力Phrより低い場合にはステップS8に進み、減圧弁9を開く方向に調整してステップS9に進む。
【0043】
このように、目標エネルギー効率に基づいて設定した目標圧力Phtrと現圧力Phrとを比較し、一致している場合には減圧弁9の開度はその状態を維持する。また、目標圧力Phtrが現圧力Phrより高い場合には、減圧弁9を閉方向に調整することにより、減圧弁9の上流側の圧力を高め、実際の現圧力Phrが目標圧力Phtrに近づくように補正する。逆に、目標圧力Phtrが現圧力Phrより低い場合には、減圧弁を開方向に調整することにより、減圧弁9の上流側の圧力を低くし、実際の現圧力Phrが目標圧力Phtrに近づくように補正する。
【0044】
減圧弁9を調整すると、ステップS9で、車外側熱交換器5の出口側における実際の現温度Tgco rを検出する。
【0045】
そして、ステップS10で、現状での車外用ブロア6が最大風量であるか否かを検出する。そして、車外用ブロア6が最大風量である場合にはステップS11に進み、目標エネルギー効率の設定を低くすることを意味するフラグfに1を入力してリターンする。一方、車外用ブロア6が最大風量ではない場合にはステップS12に進み、車外用ブロア6の風量制御処理を実行してリターンする。
【0046】
前記ステップS11を経てステップS3に至った場合には、ステップS2で判定した熱負荷に基づいて前記表1より低い目標エネルギー効率を設定する。即ち、表1において、車外温度が高く、設定温度と実際の車内温度の差が大きい場合には目標エネルギー効率を1.8に設定する。また、車外温度が高く、設定温度と実際の車内温度の差が小さい場合には目標エネルギー効率を2.2に設定する。また、車外温度が低く、設定温度と実際の車内温度の差が大きい場合には目標エネルギー効率を2.2に設定する。また、車外温度が低く、設定温度と実際の車内温度の差が小さい場合には目標エネルギー効率を3.0に設定する。なお、目標圧力Phtrを増加させるように補正してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、前記ステップS12での車外用ブロア6の風量制御処理は、車両速度が所定速度以上である場合には動作を停止する。また、車両速度が所定速度より遅い場合には、ステップS9で検出した車外側熱交換器5での現温度Tgco rと目標温度Tgco trとの差に基づいて、下記の表2のテーブルに従って制御する。
【0048】
【表2】
Figure 0004771627
【0049】
具体的には、車外用ブロア風量制御処理では、図5に示すように、まず、ステップS12−1で、現状の車両速度を読み込む。
【0050】
ついで、ステップS12−2で、規定速度以上であるか否かを検出する。そして、規定速度以上である場合にはステップS12−3に進み、車外用ブロア6の動作を停止させてリターンする。一方、規定速度より遅い場合にはステップS12−4に進む。
【0051】
ステップS12−4では、車外側熱交換器5の出口側において、目標温度Tgco trと現温度Tgco rとの温度差が3℃以下であるか否かを検出する。そして、3℃以下である場合には前記と同様のステップS12−3に進み、3℃より大きい場合にはステップS12−5に進む。
【0052】
ステップS12−5では、目標温度Tgco trと現温度Tgco rとの温度差が5℃より大きいか否かを検出する。そして、温度差が5℃より大きい場合にはステップS12−6に進み、車外用ブロア6に通電する電力を12Vとして最大風量に調整してリターンする。一方、温度差が5℃以下である場合には、即ち、温度差が3℃より大きく5℃以下である場合にはステップS12−7に進み、車外用ブロア6に通電する電力を6Vとして弱風量に調整してリターンする。
【0053】
即ち、温度差が5℃より大きい場合には、車外用ブロア6を最大風量に調整し、迅速に目標温度に近づくように補正する。また、温度差が5℃以下で3℃より大きい場合には、車外用ブロア6を弱風量に調整し、目標温度に近づくように補正する。さらに、車両速度が所定速度以上である場合、および、温度差が3℃以下である場合には、車外用ブロア6を動作させても冷房能力は向上しないため、車外用ブロア14の動作を停止し、無駄な電力消費を防止するとともに、高効率な冷凍サイクルを実行できるようにする。
【0054】
このように、本実施形態の車両用空調装置では、車内外の諸条件に基づいて設定した目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサ1から吐出する冷媒の目標圧力を設定し、実際の圧力と比較して減圧弁9の開度を調整する。これにより、コンプレッサ1から吐出する冷媒圧力が理想的な目標圧力に近づくように補正する。
【0055】
また、車内外の諸条件に基づいて減圧弁9の入り口側での目標温度を設定し、実際の温度と比較して車外用ブロア6の風量を調整し、減圧弁9の入り口側の冷媒温度を理想的な目標温度に近づくように補正する。
【0056】
即ち、減圧弁9の入り口側の温度に基づいてコンプレッサ1から吐出する冷媒圧力を調整するのではなく、それぞれの目標値を設定し、それぞれ独立してその目標値になるように調整する。そのため、複雑な演算をすることなく、理想的な冷媒圧力と冷媒温度の関係に確実に調整できるため、チャタリングが発生することを防止し、高効率の冷凍サイクルを実現できる。また、減圧弁9に高い耐久性が求められることはなく、安価な冷凍サイクルを提供できる。
【0057】
図6は、第2実施形態に係る車両用空調装置の制御装置18による目標値設定処理を示す。この第2実施形態の制御装置18は、車内外の諸条件から目標冷房能力を設定し、この目標冷房能力と前記目標エネルギー効率に基づいて前記コンプレッサ1から吐出する冷媒の目標圧力を設定するようにした点で第1実施形態と相違している。
【0058】
ここで、前記目標冷房能力は、設定温度と実際の車内温度の差により算出される。また、実際の冷房能力は、車内側熱交換器10でのエンタルピ差hevaに冷媒の循環量Grを乗算することにより算出される。なお、この循環量Grは、吐出容積と吸込冷媒の比容積を乗算することにより算出できる。また、前記比容積は、冷媒の温度や圧力から算出でき、また、概略の既定値を用いることにより算出できる。
【0059】
そのため、前記目標エネルギー効率(COP)と目標冷房能力の関係は下記の数(3)のようになる。
【0060】
【数3】
Figure 0004771627
【0061】
この第2実施形態の制御装置18による冷凍サイクルの高効率化は、図3に示すステップS3の目標値設定処理のみが相違する。具体的には、第2実施形態の目標値設定処理では、図6に示すように、まず、ステップS3’−1で、ステップS2で判定した熱負荷に基づいて、前記表1に示すテーブルから目標エネルギー効率を設定する。
【0062】
ついで、ステップS3’−2で、前記熱負荷に基づいて下記の表3に示すテーブルから目標冷房能力を設定する。
【0063】
【表3】
Figure 0004771627
【0064】
前記表3に示すように、設定温度と実際の車内温度の差が大きい場合には目標冷房能力を4500に設定する。また、設定温度と実際の車内温度の差が小さい場合には目標冷房能力を3500に設定する。
【0065】
ステップS3’−3では、車両のエンジンの回転数からコンプレッサ1の回転数を検出した後、ステップS3’−4で、このコンプレッサ1の回転数に基づいて冷媒の循環量Grを演算する。
【0066】
循環量Grを演算すると、ステップS3’−5で、車内側熱交換器10での入口側と出口側の目標エンタルピ差hevaを演算する。この目標エンタルピ差hevaは、設定した目標冷房能力を前記循環量Grで除算することにより算出できる。
【0067】
目標エンタルピ差hevaを演算すると、ステップS3’−6で、前記数(3)に基づき、演算した車内側熱交換器10での目標エンタルピ差hevaと前記目標エネルギー効率からコンプレッサ1から吐出する冷媒の目標圧力をPhtrを設定してステップS3’−7に進む。
【0068】
ステップS3’−7では、第1実施形態と同様に、ステップS1で検出した車外温度に基づいて車外側熱交換器5の出口側(減圧弁9の入り口側)における目標温度Tgco trを設定する。
【0069】
このように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、コンプレッサ1から吐出する冷媒圧力と、減圧弁9の入り口側での冷媒温度を、それぞれ独立して目標値になるように調整するため、複雑な演算をすることなく、理想的な冷媒圧力と冷媒温度の関係に確実に調整できるため、高効率の冷凍サイクルを実現できる。そのうえ、車内外の諸条件から目標冷房能力を設定し、その目標冷房能力と前記目標エネルギー効率に基づいて目標圧力を設定するため、冷凍サイクルにおける必要性能である冷房能力を確実に確保することができる。
【0070】
なお、前記第2実施形態では、吐出量を可変可能なコンプレッサ1を適用し、目標冷房能力に応じてコンプレッサ1から吐出する冷媒循環量を調整してもよい。このようにすれば、目標冷房能力に基づいた理想の冷媒循環量とすることができるため、更に確実に冷凍サイクルの必要性能を確保できる。そして、前記冷媒循環量に基づいて減圧弁9の開度と車外用ブロア6の風量とを調整することにより、理想的な冷媒圧力および冷媒温度に調整し、確実に冷凍サイクルの高効率化を図ることができる。即ち、冷凍サイクルの高効率化と必要冷房能力の確保を両立できる。
【0071】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の車両用空調装置は、設定した目標圧力と実際の冷媒圧力に基づいて減圧弁の開度を調整するとともに、設定した目標温度と実際の冷媒温度に基づいて車外用ブロアの風量を調整する。即ち、減圧弁の入り口側の温度に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒圧力を調整するのではなく、それぞれの目標値を設定し、それぞれ独立してその目標値になるように減圧弁の開度および車外用ブロアの風量を調整するため、複雑な演算をすることなく、理想的な冷媒圧力と冷媒温度の関係に調整し、冷凍サイクルの高効率化を安価に実現できる。また、車内外の諸条件から目標冷房能力を設定し、この目標冷房能力と目標エネルギー効率に基づいて前記目標圧力を設定することにより、冷凍サイクルにおける必要性能である冷房能力を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両用空調装置の概略図である。
【図2】 図1の各構成部品に於ける冷媒のエンタルピと圧力の関係を示すグラフである。
【図3】 制御装置による制御を示すフローチャートである。
【図4】 図3の目標値設定処理を示すフローチャートである。
【図5】 図3の車外用ブロア風量制御処理を示すフローチャートである。
【図6】 第2実施形態の目標値設定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…コンプレッサ、2…圧力センサ、3…オイルセパレータ、5…車外側熱交換器、6…車外用ブロア、7…車外温度センサ、8…冷媒温度センサ、9…減圧弁、10…車内側熱交換器、11…空調ユニット、12…車内温度センサ、17…アキュムレータ、18…制御装置。

Claims (7)

  1. コンプレッサから吐出させた超臨界流体からなる冷媒を、車外用ブロアを備えた車外側熱交換器で放熱させ、減圧弁で減圧し、車内側熱交換器で気化させた後、前記コンプレッサに戻して循環させる冷凍サイクルを備え、各種検出手段により検出した車内外の諸条件に基づいて前記コンプレッサ、車外用ブロアおよび減圧弁を制御手段で制御する車両用空調装置において、
    前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、
    前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率を設定するとともに、減圧弁の入り口側における目標温度を設定し、かつ、前記目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、
    前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、
    車外の温度を検出する外気温度検出手段を更に設け、
    前記制御手段は、前記外気温度検出手段により検出した温度と、前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した温度とが略同一である場合、車外用ブロアの動作を停止するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  2. コンプレッサから吐出させた超臨界流体からなる冷媒を、車外用ブロアを備えた車外側熱交換器で放熱させ、減圧弁で減圧し、車内側熱交換器で気化させた後、前記コンプレッサに戻して循環させる冷凍サイクルを備え、各種検出手段により検出した車内外の諸条件に基づいて前記コンプレッサ、車外用ブロアおよび減圧弁を制御手段で制御する車両用空調装置において、
    前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、
    前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率を設定するとともに、減圧弁の入り口側における目標温度を設定し、かつ、前記目標エネルギー効率に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、
    前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、
    前記制御手段は、前記車外用ブロアを最大出力とした状態で前記目標温度に至らない場合、前記目標エネルギー効率を減少するように補正、または、前記目標圧力を増加させるように補正するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  3. コンプレッサから吐出させた超臨界流体からなる冷媒を、車外用ブロアを備えた車外側熱交換器で放熱させ、減圧弁で減圧し、車内側熱交換器で気化させた後、前記コンプレッサに戻して循環させる冷凍サイクルを備え、各種検出手段により検出した車内外の諸条件に基づいて前記コンプレッサ、車外用ブロアおよび減圧弁を制御手段で制御する車両用空調装置において、
    前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、
    前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率と、減圧弁の入り口側における目標温度とを設定し、かつ、設定温度と車内温度との温度差に基づいて目標冷房能力を設定するとともに、前記目標エネルギー効率と目標冷房能力に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、
    前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、
    車外の温度を検出する外気温度検出手段を更に設け、
    前記制御手段は、前記外気温度検出手段により検出した温度と、前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した温度とが略同一である場合、車外用ブロアの動作を停止するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  4. コンプレッサから吐出させた超臨界流体からなる冷媒を、車外用ブロアを備えた車外側熱交換器で放熱させ、減圧弁で減圧し、車内側熱交換器で気化させた後、前記コンプレッサに戻して循環させる冷凍サイクルを備え、各種検出手段により検出した車内外の諸条件に基づいて前記コンプレッサ、車外用ブロアおよび減圧弁を制御手段で制御する車両用空調装置において、
    前記コンプレッサから吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段と、前記減圧弁の入り口側における冷媒の温度を検出する減圧弁入り口温度検出手段とを設け、
    前記制御手段は、前記車内外の諸条件から前記冷凍サイクルの目標エネルギー効率と、減圧弁の入り口側における目標温度とを設定し、かつ、設定温度と車内温度との温度差に基づいて目標冷房能力を設定するとともに、前記目標エネルギー効率と目標冷房能力に基づいてコンプレッサから吐出する冷媒の目標圧力を設定し、
    前記目標圧力と前記吐出圧力検出手段により検出した実際の冷媒圧力に応じて前記減圧弁の開度を調整し、かつ、前記目標温度と前記減圧弁入り口温度検出手段により検出した実際の冷媒温度に応じて前記車外用ブロアの風量を調整するようにし、かつ、
    前記制御手段は、前記車外用ブロアを最大出力とした状態で前記目標温度に至らない場合、前記目標エネルギー効率を減少するように補正、または、前記目標圧力を増加させるように補正するようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
  5. 前記制御手段は、前記目標冷房能力に応じてコンプレッサから吐出する冷媒循環量を調整するようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用空調装置。
  6. 前記制御手段は、所定の車両走行速度以下でのみ前記車外用ブロアを動作させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
  7. 前記冷媒はCOであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
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