JP4771576B2 - Gasc1遺伝子 - Google Patents

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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な遺伝子、より詳しくは、ヒト食道の扁平上皮細胞の染色体9p23−24の位置に存在しており、該細胞の癌化によって、その増幅およびその遺伝子産物の過剰発現が認められる新規な遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子の増幅は、腫瘍細胞においてしばしば観察される。この増幅は、腫瘍進展に影響する癌原遺伝子の活性化メカニズムの一つである(Stark,G.R.,et al.,Cell, 57,901-908 (1989))。増幅領域内に存在して増幅の対象となっている遺伝子を同定し、その特徴を明らかにすることは、癌の発生と進展の分子機構を明らかにする上で重要な情報を提供する。
【0003】
食道癌は世界中において癌の死因の第6番目になっている(Pisani, P., et al., Int. J. Cancer, 83, 18-29 (1999))。この組織において生じる腫瘍の2つの主な組織病理学的な型は、扁平上皮癌と腺癌とであり、扁平上皮癌は、他の国と同じく、日本において最もしばしば見られる型である(厚生白書99年版)。
【0004】
MYC、EGFRおよびCCND1の増幅を含む、食道扁平上皮癌の発生、進展および/または転移に関連する遺伝子変化の幾つかが確認されている(Lu,S.,H., et al., Int. J. Cancer, 42, 502-505 (1988); Jiang, W., et al., Cancer Res., 52, 2980-2983 (1992))。
【0005】
近年、CGH(Comparative genomic hybridization)を用いた研究によって、食道扁平上皮癌において少なくとも新しく10の増幅領域が確認されているが(Pack, S.D.,Genes Chromosomes Cancer, 25, 160-168(1999); Shinomiya,T.,et al., Genes Chromosomes Cancer, 24, 337-344 (1999);.DuPlessis, L.,et al.,Cancer Res., 59, 1877-1883 (1999))、食道扁平上皮癌に関連する遺伝子は、これらの検出された染色体上の増幅領域からは未だ同定されていない。
【0006】
本発明者らは、29の食道扁平上皮癌細胞株について、DNAコピー数の異常を探索した結果、幾つかの新規な増幅領域を検出し、それらの中に9p23−24領域の増幅を高頻度に確認した。
【0007】
該9p23−24領域での増幅は、この領域のゲノム変化が、非小細胞肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸部癌、乳癌、骨肉腫並びに縦隔胸腺B細胞リンパ腫を含む種々の悪性疾患に関わっていることが知られている(Knuutila,S.,et al., Am. J. Pathol., 152, 1107-1123 (1998))点より、特に興味がもたれた。このような報告は、該9p23−24領域には、組織の型に拘わらず、増幅により活性化された癌遺伝子として働き得る1またはそれ以上の遺伝子が隠れている可能性を示唆している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、先にCGHにより幾つかの食道扁平上皮癌細胞株において増幅を認めた領域を、分子細胞遺伝子学的に解析することにより、9p23−24領域の増幅を明らかにした。本発明者らは、この9p23−24増幅領域内に存在すると推定される腫瘍関連遺伝子を同定するために、同領域内に存在する遺伝子や未知の転写体をスクリーニングし、その結果、PHDとPXドメイン(Aasland,R., et al., Trends. Biochem. Sci., 20, 56-59(1995); Lock,P., et al., EMBO J., 17, 4346-4357 (1998))を含む蛋白をコードする新規な遺伝子の単離に成功し、これをGASC1(Gene Amplified in Squamous cell Carcinoma 1)と命名した。本発明は、かかる知見を基礎として完成されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以下の要旨の発明が提供される。
(1) 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチドを含む遺伝子:
(a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号:2で示される塩基配列に対して少なくとも95%の相同性を有するポリヌクレオチド、
(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドに対する相補鎖であるポリヌクレオチド。
(2) 配列番号:2で示される塩基配列である上記(1)に記載の遺伝子。
(3) 配列番号:1で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである上記(1)に記載の遺伝子。
(4) 配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する遺伝子発現産物。
(5) 上記(1)または(2)に記載の遺伝子を有する組換え体発現ベクター。
(6) 上記(5)に記載の組換え体発現ベクターを保有する宿主細胞。
(7) 配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも15の塩基配列を有するヌクレオチド配列。
(8) 配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも30の塩基配列を有する上記(7)に記載のヌクレオチド配列。
(9) 配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも15の塩基配列を有するプローブ。
(10)配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも30の塩基配列を有する上記(9)に記載のプローブ。
(11)上記(9)または(10)に記載のプローブを有効成分として含有する癌診断剤。
(12)上記(9)または(10)に記載のプローブを有効成分として含有する癌診断用キット。
(13)上記(1)に記載の遺伝子の発現産物に結合性を有する抗体またはその断片。
(14)検体に上記(13)に記載の抗体またはその断片を反応させて、検体中の該抗体またはその断片の結合物を検出する癌の診断方法。
【0010】
また本発明によれば、下記要旨の発明も提供される。
(15)上記(4)に記載の遺伝子発現産物を発現するクローン化されたcDNA、その断片、それらの誘導体、例えば構造を一部改変したり、他のアミノ酸配列等を付加して得られる改変物、およびそれらの相同物。
(16)配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも15の塩基配列に対するアンチセンス・ヌクレオチド配列。
(17)配列番号:2で示される塩基配列中の連続する少なくとも30の塩基配列に対する上記(16)に記載のアンチセンス・ヌクレオチド配列。
(18)上記(16)または(17)に記載のアンチセンス・ヌクレオチド配列を有効成分として含有する遺伝子治療剤。
(19)下記(a)または(b)の蛋白質:
(a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)上記(a)のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり且つGASC1活性を有する蛋白質。
(20)被検物質を含む培地中で上記(1)に記載の遺伝子またはその発現産物を培養する工程、および上記(1)に記載の遺伝子またはその発現産物の量を測定する工程を含む、上記発現産物と相互作用する物質(アゴニストおよび/またはアンタゴニスト)のスクリーニング方法。
(21)上記(1)に記載の遺伝子の相同物であって、ヒト、イヌ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジおよびネコからなる群から選ばれる哺乳動物の遺伝子相同物。
(22)上記(13)に記載の抗体またはその断片を有効成分とする癌治療剤。
【0011】
本明細書において、アミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸(ヌクレオチド)などの略号による表示は、IUPAC、IUBの規定、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)および当該分野における慣用記号に従うものとする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、9p23−24増幅領域内にその存在が推定される腫瘍関連遺伝子を探究するために、CGH(Comparative genomic hybridization:比較ゲノムハイブリダイゼーション)によって、29の食道扁平上皮癌細胞株を用いて研究した。その結果、これら細胞株の染色体上に存在する新たな関連遺伝子の探索についての研究結果として、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、29の食道扁平上皮癌細胞株の染色体9p23−24の位置に、高頻度に増幅が起こっていることを、CGHによって確認した。この増幅領域は、しばしば癌遺伝子および/または他の腫瘍関連遺伝子を保持している。また、9p23−24の増幅は、種々の他の型の癌においても報告されている。
【0014】
これらのことから、本発明者らは9p23−24アンプリコン(増幅領域)の遺伝子地図を作製するために、YAC(Yeast artificial chromosome)およびPAC(P1 artificial chromosome)をプローブとして用いた蛍光in situハイブリダイゼーションとサザンブロット分析を行った。
【0015】
また、本発明者らはノーザンブロット分析によって、このアンプリコンの範囲内に存在する標的遺伝子あるいは転写体をスクリーニングした。この方法によって、幾つかの食道扁平上皮癌細胞株において増幅および過剰発現されている新規な遺伝子のクローニングに成功し、かくして得られたクローンを「GASC1」と命名した。
【0016】
本発明のGASC1遺伝子は、外科的切除した腫瘍から確立された食道扁平上皮癌細胞株(KYSEシリーズ)のCGHによって、染色体9p23−24の領域において高いレベルの増幅が見られたものである。本発明者らのノーザンブロットの結果によれば、IMAGEクローン131865(GASC1の部分シークエンスを含むcDNAクローン)のみが、9p23−24上で増幅を示した細胞株において、過剰発現を示した。
【0017】
本発明GASC1遺伝子の配列は、胃癌細胞株(HSC39)由来のRNAから2つのcDNAライブラリーを構築し、IMAGEクローン131865をプローブとして該cDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを単離し、その塩基配列を決定することにより決定されたものである。
【0018】
本発明GASC1遺伝子は、配列番号:1で示される1056アミノ酸をコードするオープンリーディングフレームを有する遺伝子として特定される。
【0019】
本発明GASC1遺伝子によりコードされるアミノ酸配列の計算された分子量は120.0kDaである。
【0020】
従来の報告は、9pにおける遺伝的変化が、食道扁平上皮癌を含む広い範囲のヒト癌において見られている。食道扁平上皮癌の既に行われた分子遺伝的研究の結果によれば、特に増殖中の細胞のG1/S移行期を抑制的に調節するサイクリン依存性キナーゼ4/6のインヒビターをコードするMTS1(p16/CDKN2A)を包含している領域である9p21−22が注目されていた(Tanaka,H.,et al.,Int.J.Cancer, 70, 437-442 (1997))。
【0021】
CGH(Kallioniemi., et al., Science, 258, 818-821 (1992))およびFISH(Inazawa, J., et al., Jpn. J. Cancer Res., 83, 1248-1252 (1992))を用いる近年の研究は、9p上に、特に9p23−24の位置で、DNAの増幅が、他の型の腫瘍と同じように、食道扁平上皮癌にもしばしば起きていることを明らかにしている(Sonoda,G.,et al., Genes Chromosomes Cancer,20, 320-328 (1997); Taguchi,T.,et al., Genes Chromosomes Cancer, 20, 208-212 (1997); Giollant,M.,et al.,Hum. Genet.,98, 265-270 (1996); Fischer,U.,et al., Eur.J.Cancer, 30, 1124-1127 (1994); Sevelyeva,L.,et al.,Cancer Res., 58, 863-866 (1998))。
【0022】
上記9p23−24の位置でのDNAの増幅およびそれに関連するであろう各種の報告には、例えば、以下の事項および文献の記載が包含される。
【0023】
ヒト卵巣癌のCGH分析は、9p21−pterがコピー数増加の起こりやすい部位の一つであることを明らかにし、9例のうちの1例が特異的に9p24増幅を示し、そして更に、進行期の腫瘍でより高頻度に生じる傾向が認められた(Sonoda,G.,et al., Genes Chromosomes Cancer, 20, 320-328 (1997))。
【0024】
9p23−24の増幅は、乳癌、肺癌、高度の星状細胞腫および神経膠芽腫でも観察されている(Taguchi,T.,et al.,Genes Chromosomes Cancer, 20, 208-212 (1997); Giollant,M.,et al.,Hum. Genet.,98, 265-270 (1996); Fischer,U.,et al.,Eur.J.Cancer, 30, 1124-1127 (1994); Sevelyeva,L.,et al.,Cancer Res.,58,863-866(1998))。
【0025】
乳癌細胞株のCOLO824は、p16/CDKN2Aのさらに末端側にある9p23−24で、DNAコピー数は約10倍の増加を示している(Sevelyeva,L.,et al.,Cancer Res., 58, 863-866 (1998))。加えて、9p23−24の重複とBRCA2の変異が、乳癌を持つ3人の兄弟で報告されている(Savelyeva, L., et al., Cancer Res., 58, 863-866 (1998))。
【0026】
以上の報告等を総合すると、9p23−24は、複数の腫瘍型に関連しており、少なくとも一つの腫瘍関連遺伝子を保持していることが示唆される。
【0027】
GSAC1は1つのPXドメインを、2つのPHDフィンガーをもっている。該PXドメインは多種の蛋白において存在し、蛋白−蛋白間の相互作用に関係しているかもしれないが、このモチーフの機能は、未だよく特定されていない(Lock,P.,EMBO J., 17, 4346- 4357 (1998))。
【0028】
亜鉛フィンガー様配列の一つであるPHDフィンガーは、ショウジョウバエ(Drosophila)のtrlやpcl遺伝子産物のようなクロマチンによって介在された転写調節に関連した核蛋白において、広く見つけられている(Aasland,R.,et al.,Trends. Biochem.Sci.,20, 56-59 (1995))。転写のコアクチベーターTIF1(Trnscriptional intermediary factor 1)、クロマチン関連アセチラーゼMOZ(monocytic leukemia zinc-fnger protein)および皮膚筋炎特異的自己抗原Mi2を含む幾つかのPHDフィンガーを持つ蛋白が、近年同定されている(Venturini,L.,et al., 18, 1209-1217 (1999); Borrow,J.,et al., Nat. Gene.,14, 33-41 (1996); Zhang,Y.,Cell, 95, 279-289 (1998))。
【0029】
TIF1ファミリー蛋白(α、β、γ)は、細胞の分化、腫瘍形成、シグナル伝達において重要な役割を演ずると思われる(Venturini,L., et al., 18, 1209-1217 (1999))。一方、Mi2は、ヒストン脱アセチル化活性およびヌクレオソーム再構築活性を保有する複合物中に見出されており、クロマチンの再編成に関連している。Mi2におけるPHDフィンガーは、ヒストン脱アセチル化酵素と直接の相互作用のために要求されていると思われる(Zhang,Y., Cell, 95, 279-289 (1998))。
【0030】
PHDモチーフは、幾つかの癌原遺伝子においても保持されている。trxのヒト相同物であるHRX/ALL1/MLL(HRX:human trithorax; ALL: acute lymphoblastic leukemia; MLL: mixed lineage leukemia)は、子供の急性リンパ球性白血病において、しばしば変異がみられる(Tkachuk,D.C., et al., Cell, 71, 691-700 (1992))。
【0031】
さらにtrxの別のヒト相同物であるMLL2の増幅は、種々の固形組織由来の細胞株において観察されている(Huntsman,D.G., et al., Oncogene, 18, 7975-7984 (1999))。
【0032】
PLU−1の発現は、乳癌においては恒常的に認められるが、その発現は正常組織においては高度に限定されている(Lu,P., et al., J. Biol.Chem., 274, 15633-15645 (1999))。
【0033】
AIRE遺伝子のPHDフィンガー内の変異が、APECED(自己免疫性多内分泌症−カンジダ症−外胚葉形成不全)のような自己免疫疾患を有する患者からのDNAにおいて発見されている(The Finnish-German APECED Consortium. Nat. Genet., 17, 399-403 (1997))。
【0034】
MOZ遺伝子は、急性骨髄性白血病の一例のケースにおいてCBP遺伝子[t(8;16)(p11;p14)]と融合していることが見い出され(Borrow, J., et al., Nat. Genet., 14, 33-41 (1996))、そしてRETレセプター・チロシン・キナーゼ遺伝子とTif1の融合が小児の乳頭状甲状腺癌のケースにおいて報告されている(Klugbauer,S.,Rabes,H.M.,Oncogene, 18, 4388-4393 (1999))。
【0035】
本発明GASC1遺伝子がコードするアミノ酸配列は、2つのPHDフィンガー・モチーフを持っており、上記のようにPHDフィンガー・モチーフは、クロマチン介在性の転写領域において関連する核蛋白および多数の癌原遺伝子において見出されることから、過剰発現したGASC1は、食道扁平上皮癌を含む種々の型の癌の発生および/または進展において重要な役割を演ずる可能性がある。
【0036】
上記のとおり、本発明GASC1遺伝子の推定産物の基本構造は、2つのPHDフィンガー・モチーフと一つのPXドメインを含んでいる。
【0037】
前述したとおり、PHDモチーフは、多くの癌原遺伝子において見出されること、食道扁平上皮癌で9p23−24領域の増幅がしばしば起きていること、特に該9p23−24領域の増幅は、進行期の腫瘍に最も一般的な傾向があること、更に9p23−24領域の増幅は、乳癌、肺癌、進行した星状細胞腫および神経膠芽腫でも観察されていることから、本発明GASC1遺伝子は、複数の腫瘍の発生、進展に重要な役割を演じていると考えられる。
【0038】
故に、後述するように、GASC1は、食道癌などの扁平上皮癌に関して、癌遺伝子に属するものであると考えられる。
【0039】
本発明遺伝子の提供によれば、該遺伝子が各細胞での細胞の増殖、分化、腫瘍形成、転写活性化を調節する作用を有することに基づいて、これら作用に関与する疾患、例えば悪性腫瘍などの病態解明や診断、治療などが可能である。
【0040】
本発明GASC1遺伝子の全部または一部は、これらを利用する発現産物に結合する抗体またはその断片の製造、並びにこれらを用いる診断に利用することができる。
【0041】
更に本発明遺伝子の提供によれば、遺伝子配列のアンチセンス断片、これらの発現産物の利用によって、上記疾患の形成を抑制することもできる。
【0042】
本発明GASC1遺伝子の全部または一部は、またプローブとして利用でき、該利用により、癌の診断並びに診断用キットの作成が可能である。さらに腫瘍においてGASC1遺伝子の遺伝子増幅・発現亢進は、癌の診断ばかりでなく、癌の悪性度の判定にも利用可能である。
【0043】
本発明GASC1遺伝子またはその発現産物は、またGASC1蛋白相互作用物のスクリーニングにも利用することができる。
【0044】
尚、本発明によって提供されるGASC1遺伝子の一例は、ヒト癌細胞起源のものであり、その利用によれば、ヒトを含む各種哺乳動物の相同遺伝子も提供できる。また、本発明遺伝子の利用によれば、本発明遺伝子によりコードされるアミノ酸配列のC末端側と結合する遺伝子の同定を行うこともできる。
【0045】
以下、本発明遺伝子(DNA分子)につき詳述する。
【0046】
なお、本発明において遺伝子(DNA)とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する趣旨であり、その長さに何ら制限されるものではない。従って、本発明の遺伝子(DNA)には、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(センス鎖)並びに該センス鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(アンチセンス鎖)およびそれらの断片のいずれもが含まれる。
【0047】
本発明遺伝子の一具体例としては、後述する実施例に示されるクローンの有するDNA配列から演繹されるものを挙げることができる。
【0048】
このクローンが有する遺伝子は、配列番号:1に示される1056アミノ酸残基からなる蛋白質をコードする3168ヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(配列番号:2に示される塩基配列)を有する。陽性クローンからcDNA配列の一方向配列から上記3168ヌクレオチドの単一のオープン・リーディング・フレームを含む4235ヌクレオチドの転写体を確認した。転写の開始(「コザックのルール」)のためのコンセンサス配列がよく保存されていることから、転写のための開始コドンは、ヌクレオチド番号の146−148番目であると確認された。
【0049】
なお、全長cDNAの塩基配列は、配列番号:3に示すとおり4235ヌクレオチドである。
【0050】
推定された遺伝子産物は、C末端側に2つのPHDフィンガー・モチーフ(687-749残基および807-867残基)と、1つのPXドメイン(950-1047残基)を含んでいる。
【0051】
本発明遺伝子には、上記配列番号:1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を有するものが包含され、また当該遺伝子の相同物も包含される。
【0052】
ここで「相同物」とは、本発明遺伝子(またはその遺伝子産物)と配列相同性を有し、上記構造的特徴、遺伝子発現パターンにおける共通性および上記したようなその生物学的機能の類似性により、ひとつの遺伝子ファミリーと認識される一連の関連遺伝子を意味する。これにはGASC1遺伝子のアレル体(対立遺伝子)も当然含まれる。
【0053】
上記相同物の具体例としては、配列番号:1で示される特定のアミノ酸配列において、一定の改変を有する蛋白質であって且つ該特定のアミノ酸配列を有するGASC1蛋白質と同様の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を挙げることができる。
【0054】
上記アミノ酸配列における相同性は、FASTA或いはBLASTプログラムを使用した検索(Clustal,V., Methods Mol.Biol., 25, 307-318 (1994))において、通常、アミノ酸配列の全体で約45%以上、好ましくは約50%以上であることができる。
【0055】
また、上記相同性は、PXドメインおよび/またはPHDフィンガー・モチーフ領域におけるそれが約35%以上、好ましくは約45%以上のいずれか少なくとも一つを満たしていることが望ましい。
【0056】
即ち、本発明遺伝子には、配列番号:1に示されるアミノ酸配列において1または数個乃至複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含むDNA分子もまた包含される。
【0057】
ここで、「アミノ酸の欠失、置換または付加」の程度およびそれらの位置などは、改変された蛋白質が、配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質(GASC1蛋白)と同様の機能を有する同効物であれば特に制限されない。本発明において「GASC1活性」とは配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質が有する活性並びに機能を意味し、具体的には、各細胞での細胞の増殖、分化、腫瘍形成、転写活性化を調節する作用を指す。
【0058】
上記アミノ酸配列の改変(変異)などは、天然において、例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発明のヒトGASC1またはヒトGASC1遺伝子)に基づいて人為的に改変することもできる。本発明は、このような改変・変異の原因および手段などを問わず、上記特性を有する全ての改変アミノ酸配列をコードする遺伝子(改変遺伝子)を包含する。
【0059】
上記の人為的手段としては、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同24, 245 (1983)〕およびそれらの組合せ方法などが例示できる。より具体的には、DNAの合成は、ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による化学合成によることもでき、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニーリングさせるか、または適当なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによって、化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
【0060】
本発明遺伝子の具体的態様としては、配列番号:2に示される塩基配列を有する遺伝子を例示できる。この塩基配列中のコーディング領域は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列の各アミノ酸残基を示すコドンの一つの組合せ例を示している。本発明の遺伝子は、かかる特定の塩基配列を有する遺伝子に限らず、各アミノ酸残基に対して任意のコドンを組合せ、選択した塩基配列を有することも可能である。コドンの選択は、常法に従うことができ、例えば利用する宿主のコドン使用頻度などを考慮することができる〔Ncleic Acids Res., 9, 43 (1981)〕。
【0061】
また、本発明DNA分子は、前記のとおり、配列番号:2に示される塩基配列と一定の相同性を有する塩基配列からなるものも包含する。
【0062】
上記相同性とは、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含んでいるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは配列番号:2に示される塩基配列と少なくとも70%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、更に最も好ましくは少なくとも97%の同一性を有することをいう。
【0063】
かかる相同性遺伝子には、例えば、0.1%SDSを含む0.2×SSC中50℃または0.1%SDSを含む1×SSC中60℃のストリンジェントな条件下で配列番号:2に示される塩基配列中、238−639の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子が包含される。
【0064】
本発明遺伝子は、本発明により開示された本発明遺伝子の具体例についての配列情報に基づいて、一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得することができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)など参照〕。
【0065】
具体的には、本発明遺伝子が発現される適当な起源より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983)など〕。
【0066】
上記において、cDNAの起源としては、本発明の遺伝子を発現する各種の細胞、組織やこれらに由来する培養細胞などが例示される。また、これらからの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニングなどはいずれも常法に従って実施することができる。また、cDNAライブラリーは市販されてもおり、本発明においてはそれらcDNAライブラリー、例えばクローンテック社(Clontech Lab.Inc.)などより市販されている各種cDNAライブラリーなどを用いることもできる。
【0067】
本発明の遺伝子をcDNAライブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通常の方法に従うことができる。
【0068】
具体的には、例えばcDNAによって産生される蛋白質に対して、該蛋白質の特異抗体を使用した免疫的スクリーニングにより対応するcDNAクローンを選択する方法、目的のDNA配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーションなどやこれらの組合せなどを例示できる。
【0069】
ここで用いられるプローブとしては、本発明の遺伝子の塩基配列に関する情報をもとにして化学合成されたDNAなどが一般的に使用できるが、既に取得された本発明遺伝子やその断片も良好に利用できる。また、本発明遺伝子の塩基配列情報に基づき設定したセンス・プライマー、アンチセンス・プライマーをスクリーニング用プローブとして用いることもできる。
【0070】
前記プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、配列番号:2に対応する部分ヌクレオチド配列であって、少なくとも15個の連続した塩基、好ましくは20個の連続した塩基、より好ましくは30個の連続した塩基、最も好ましくは50個の連続した塩基を有するものが含まれる。前記配列番号:2の配列を有する陽性クローンそれ自体もまたかかるプローブとして用いることができる。
【0071】
本発明遺伝子の取得に際しては、PCR法〔Science, 230, 1350 (1985)〕によるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる。殊に、ライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法〔Rapid amplification of cDNA ends;実験医学、12(6), 35 (1994)〕、特に5'-RACE法〔M.A. Frohman, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 8, 8998 (1988)〕などの採用が好適である。
【0072】
かかるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、本発明によって明らかにされた本発明の遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定でき、これは常法に従って合成できる。尚、増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、前記の通り常法に従うことができ、例えばゲル電気泳動法などによればよい。
【0073】
また、上記で得られる本発明遺伝子或いは各種DNA断片は、常法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 74, 5463 (1977)〕やマキサム−ギルバート法〔Methods in Enzymology, 65, 499 (1980)〕などに従って、また簡便には市販のシークエンスキットなどを用いて、その塩基配列を決定することができる。
【0074】
このようにして得られる本発明の遺伝子によれば、例えば該遺伝子の一部または全部の塩基配列を利用することにより、個体もしくは各種組織における本発明遺伝子の発現の有無を特異的に検出することができる。
【0075】
かかる検出は常法に従って行うことができ、例えばRT−PCR〔Reverse transcribed-Polymerase chain reaction; E.S. Kawasaki, et al., Amplification of RNA. In PCR Protocol, A Guide to methods and applications, Academic Press,Inc.,SanDiego, 21-27 (1991)〕によるRNA増幅やノーザンブロッティング解析〔Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Lab. (1989)〕、in situ RT−PCR〔Nucl. Acids Res., 21, 3159-3166 (1993)〕や in situ ハイブリダイゼーションなどを利用した細胞レベルでの測定、NASBA法〔Nucleic acid sequence-based amplification, Nature, 350, 91-92 (1991)〕およびその他の各種方法を挙げることができる。好適には、RT−PCRによる検出法を挙げることができる。
【0076】
尚、ここでPCR法を採用する場合に用いられるプライマーとしては、本発明遺伝子のみを特異的に増幅できる該遺伝子特有のものである限り、特に制限はなく、本発明遺伝子の配列情報に基いて適宜設定することができる。通常プライマーとして10〜35程度のヌクレオチド、好ましくは15〜30ヌクレオチド程度の長さを有する本発明遺伝子の部分配列を有するものを挙げることができる。
【0077】
このように、本発明の遺伝子には、本発明にかかるGASC1遺伝子を検出するための特異プライマーおよび/または特異プローブとして使用されるDNA断片もまた包含される。
【0078】
当該DNA断片は、配列番号:2に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを特徴とするDNAとして規定することできる。ここで、ストリンジェントな条件としては、プライマーまたはプローブとして用いられる通常の条件を挙げることができ、特に制限はされないが、例えば、前述するような0.1%SDSを含む0.2×SSC中50℃の条件または0.1%SDSを含む1×SSC中60℃の条件を例示することができる。
【0079】
本発明遺伝子の利用によれば、通常の遺伝子工学的手法により、該遺伝子の発現産物(GASC1蛋白)またはこれを含む蛋白質を容易に大量に、安定して製造することができる。
【0080】
従って本発明は、本発明遺伝子によってコードされる蛋白質を始め、該蛋白質の製造のための、例えば本発明遺伝子を含有するベクター、該ベクターによって形質転換された宿主細胞、該宿主細胞を培養して上記本発明蛋白質を製造する方法などをも提供するものである。
【0081】
本発明蛋白質の具体的態様としては、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するGASC1蛋白質を挙げることができる。本発明蛋白質には、該GASC1蛋白質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号:1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個乃至複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有し且つ前記GASC1活性を有する蛋白質を挙げることができる。具体的には、前記GASC1遺伝子の相同物(アレル体を含むGASC1同等遺伝子)の遺伝子産物を挙げることができる。
【0082】
また、本発明GASC1蛋白質の相同物には、配列番号:1に示されるアミノ酸配列のGASC1蛋白質と同一活性を有する、哺乳動物、例えばヒト、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラット、ウサギなどのげっ歯類動物の蛋白質も包含される。
【0083】
本発明蛋白質は、本発明により提供されるGASC1遺伝子の配列情報に基づいて、常法の遺伝子組換え技術〔例えばScience, 224, 1431 (1984) ; Biochem. Biophys. Res. Comm., 130, 692 (1985);Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80, 5990 (1983)など参照〕に従って調製することができる。
【0084】
該蛋白質の製造は、より詳細には、該所望の蛋白をコードする遺伝子が宿主細胞中で発現できる組換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から回収することにより行われる。
【0085】
上記宿主細胞としては、原核生物および真核生物のいずれも用いることができ、例えば原核生物の宿主としては、大腸菌や枯草菌といった一般的に用いられるものが広く挙げられ、好適には大腸菌、とりわけエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12株に含まれるものを例示できる。また、真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、酵母等の細胞が含まれ、前者としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞〔Cell, 23: 175 (1981)〕やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞およびそのジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 77: 4216 (1980)〕などが、後者としては、サッカロミセス属酵母細胞などが好適に用いられる。勿論、これらに限定される訳ではない。
【0086】
原核生物細胞を宿主とする場合は、該宿主細胞中で複製可能なベクターを用いて、このベクター中に本発明遺伝子が発現できるように該遺伝子の上流にプロモーターおよびSD(シャイン・アンド・ダルガーノ)塩基配列、更に蛋白合成開始に必要な開始コドン(例えばATG)を付与した発現プラスミドを好適に利用できる。上記ベクターとしては、一般に大腸菌由来のプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13などがよく用いられるが、これらに限定されず既知の各種のベクターを利用することができる。大腸菌を利用した発現系に利用される上記ベクターの市販品としては、例えばpGEX−4T(Amersham Pharmacia Biotech社)、pMAL−C2,pMAl−P2(New England Biolabs社)、pET21,pET21/lacq(Invitrogen社)、pBAD/His(Invitrogen社)等を例示できる。
【0087】
脊椎動物細胞を宿主とする場合の発現ベクターとしては、通常、発現しようとする本発明遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終了配列を保有するものが挙げられ、これは更に必要により複製起点を有していてもよい。該発現ベクターの例としては、具体的には、例えばSV40の初期プロモーターを保有するpSV2dhfr〔Mol. Cell. Biol., 1: 854 (1981)〕等が例示できる。上記以外にも既知の各種の市販ベクターを用いることができる。動物細胞を利用した発現系に利用されるかかるベクターの市販品としては、例えばpEGFP−N,pEGFP−C(Clontrech社)、pIND(Invitrogen社)、pcDNA3.1/His(Invitrogen社)などの動物細胞用ベクターや、pFastBac HT(GibciBRL社)、pAcGHLT(PharMingen社)、pAc5/V5−His,pMT/V5−His,pMT/Bip/V5−his(以上Invitrogen社)などの昆虫細胞用ベクターなどが挙げられる。
【0088】
また、酵母細胞を宿主とする場合の発現ベクターの具体例としては、例えば酸性ホスフアターゼ遺伝子に対するプロモーターを有するpAM82〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80: 1 (1983)〕などが例示できる。市販の酵母細胞用発現ベクターには、例えばpPICZ(Invitrogen社)、pPICZα(Invitrogen社)なとが包含される。
【0089】
プロモーターとしても特に限定なく、エッシェリヒア属菌を宿主とする場合は、例えばトリプトファン(trp)プロモーター、lppプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、PL/PRプロモーターなどを好ましく利用できる。宿主がバチルス属菌である場合は、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。酵母を宿主とする場合のプロモーターとしては、例えばpH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどを好適に利用できる。また、動物細胞を宿主とする場合の好ましいプロモーターとしては、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどを例示できる。
【0090】
尚、本発明遺伝子の発現ベクターとしては、通常の融合蛋白発現ベクターも好ましく利用できる。該ベクターの具体例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させるためのpGEX(Promega 社)などを例示できる。
【0091】
所望の組換えDNA(発現ベクター)の宿主細胞への導入法およびこれによる形質転換法としては、特に限定されず、一般的な各種方法を採用することができる。
【0092】
また得られる形質転換体は、常法に従い培養でき、該培養により所望のように設計した遺伝子によりコードされる本発明の目的蛋白質が、形質転換体の細胞内、細胞外または細胞膜上に発現、生産(蓄積、分泌)される。
【0093】
該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択利用でき、培養も宿主細胞の生育に適した条件下で実施できる。
【0094】
かくして得られる本発明の組換え蛋白質は、所望により、その物理的性質、化学的性質などを利用した各種の分離操作〔「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987)など参照〕により分離、精製できる。
【0095】
該方法としては、具体的には、通常の再構成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せが例示でき、特に好ましい方法としては、本発明蛋白質に対する特異的な抗体を結合させたカラムを利用したアフィニティクロマトグラフィーなどを例示することができる。
【0096】
尚、本発明蛋白質をコードする所望の遺伝子の設計に際しては、配列番号:2に示されるGASC1遺伝子の塩基配列を良好に利用することができる。該遺伝子は、所望により、各アミノ酸残基を示すコドンを適宜選択変更して利用することも可能である。また、GASC1遺伝子でコードされるアミノ酸配列において、その一部のアミノ酸残基ないしはアミノ酸配列を置換、欠失、付加などにより改変する場合には、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシスなどの前記した各種方法により行うことができる。
【0097】
本発明蛋白質は、また、配列番号:1に示すアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することができる。該方法には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法が包含される。
【0098】
かかるペプチド合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていく所謂ステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含し、本発明蛋白質の合成は、そのいずれによってもよい。
【0099】
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、常法に従うことができ、例えば、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドなど)法、ウッドワード法などを例示できる。
【0100】
これら各方法に利用できる溶媒も、この種ペプチド縮合反応に使用されることのよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルなどおよびこれらの混合溶媒などを挙げることができる。
【0101】
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸乃至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第3級ブチルエステルなどの低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステルなどのアラルキルエステルなどとして保護することができる。
【0102】
また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばチロシン残基の水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第3級ブチル基などで保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に、例えばアルギニン残基のグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、p−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基などの適当な保護基により保護することができる。
【0103】
上記保護基を有するアミノ酸、ペプチドおよび最終的に得られる本発明蛋白質におけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸などを用いる方法などに従って実施することができる。
【0104】
かくして得られる本発明蛋白質は、前記した各種の方法、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、向流分配法などのペプチド化学の分野で汎用される方法に従って、適宜精製を行うことができる。
【0105】
本発明GASC1蛋白質およびそのフラグメントは、これらに対する特異抗体を作成するための免疫抗原としても好適に利用でき、これらの抗原を利用することにより、所望の抗血清(ポリクローナル抗体)およびモノクローナル抗体を取得することができる。
【0106】
該抗体の製造法自体は、当業者によく理解されているところであり、本発明においてもこれら常法に従うことができる〔例えば、続生化学実験講座「免疫生化学研究法」、日本生化学会編(1986)など参照〕。
【0107】
かくして得られる抗体は、例えばGASC1蛋白の精製およびその免疫学的手法による測定ないしは識別などに有利に利用することができる。より具体的には、本発明遺伝子の増幅および発現亢進が癌細胞において確認されていることから、該抗体を用いて癌の診断または、癌の悪性度の判定に利用することができる。更に、GASC1に結合する抗体を有効成分とする癌の治療剤として利用することができる。
【0108】
従って、本発明蛋白質に結合する抗体は、これを有効成分とする医薬品として医薬分野において有用である。従って、本発明は本発明蛋白質を有効成分とする医薬組成物をも提供するものである。
【0109】
該医薬組成物において有効成分とする蛋白質には、その医薬的に許容される塩もまた包含される。かかる塩には、当業界で周知の方法により調製される、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウムなどの無毒性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが包含される。更に上記塩には、本発明蛋白質と適当な有機酸ないし無機酸との反応による無毒性酸付加塩も包含される。代表的無毒性酸付加塩としては、例えば塩酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、硼酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、スルホン酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩およびナプシレートなどが例示される。
【0110】
上記医薬組成物は、本発明蛋白質を活性成分として、その薬学的有効量を、適当な無毒性医薬担体ないし希釈剤と共に含有するものが含まれる。
【0111】
上記医薬組成物(医薬製剤)に利用できる医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤或は賦形剤などを例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0112】
特に好ましい本発明医薬製剤は、通常の蛋白製剤などに使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤などを適宜使用して調製される。
【0113】
上記安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体などを例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤などと組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。
【0114】
上記L−アミノ酸としては、特に限定はなく例えばグリシン、システィン、グルタミン酸などのいずれでもよい。
【0115】
上記糖としても特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類などおよびそれらの誘導体などを使用できる。
【0116】
界面活性剤としても特に限定はなく、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用でき、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系などを使用できる。
【0117】
セルロース誘導体としても特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用できる。
【0118】
上記糖類の添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.01〜10mg程度の範囲とするのが適当である。界面活性剤の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.0001〜0.01mg程度の範囲とするのが適当である。ヒト血清アルブミンの添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.001〜0.1mg程度の範囲とするのが適当である。アミノ酸は、有効成分1μg当り約0.001〜10mg程度とするのが適当である。また、セルロース誘導体の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.001〜0.1mg程度の範囲とするのが適当である。
【0119】
本発明医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
【0120】
また本発明医薬製剤中には、各種添加剤、例えば緩衝剤、等張化剤、キレート剤などをも添加することができる。ここで緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)などを例示できる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンなどを例示できる。またキレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸などを例示できる。
【0121】
本発明医薬製剤は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時水、生埋的食塩水などを含む緩衝液などで溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
【0122】
本発明の医薬製剤の投与単位形態としては、各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤などの固体投与形態や、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシルなどの液剤投与形態が含まれ、これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤などに分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製することができる。
【0123】
例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
【0124】
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠とすることができ、また二重錠ないしは多層錠とすることもできる。
【0125】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
【0126】
カプセル剤は、常法に従い通常本発明の有効成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調整される。
【0127】
経口投与用液体投与形態は、慣用される不活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルなどを包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤などの助剤を含ませることができ、これらは常法に従い調製される。
【0128】
非経口投与用の液体投与形態、例えば滅菌水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液などへの調製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびオリーブ油などの植物油などを使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチルなどを配合できる。これらには更に通常の溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤などを添加することもできる。
【0129】
滅菌は、例えばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺菌剤の配合、照射処理および加熱処理などにより実施できる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調製することもできる。
【0130】
坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチンおよび半合成グリセライドなどを使用できる。
【0131】
ペースト、クリーム、ゲルなどの軟膏剤の形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば白色ワセリン、パラフイン、グリセリン、セルロース誘導体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイトおよびオリーブ油などの植物油などを使用できる。
【0132】
経鼻または舌下投与用組成物は、周知の標準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
【0133】
尚、本発明薬剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品などを含有させることもできる。
【0134】
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独でまたはブドウ糖やアミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与され、軟膏剤は経皮的に局所投与される。
【0135】
上記医薬製剤中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。一般的には、該投与量は、通常、1日当り体重1kg当り、約0.01μg〜10mg程度、好ましくは約0.1μg〜1mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1回または数回に分けて投与することができる。
【0136】
また、本発明は、本発明GASC1遺伝子の発現する細胞において、細胞内のmRNAに対して相補的配列を持つRNAを作り出し、翻訳を阻害し、GASC1遺伝子の発現を抑制するためのアンチセンス医薬の提供による癌の遺伝子治療法を提供する。該治療法は、例えばGASC1遺伝子を有する癌細胞本来のmRNAと結合させるか、或いはDNA二重螺旋の間に入り込み三重鎖を形成させることによって、転写或いは翻訳の過程を阻害することによって、標的とする遺伝子の発現を抑制する方法である。この方法は従って遺伝子のmRNAと相補的なアンチセンス・ヌクレオチドを製造し、該アンチセンス・ヌクレオチドを標的細胞に供給する方法としてとらえることができる。
【0137】
かかるGASC1遺伝子の発現機能を抑制する作用を供給すれば、受容細胞/標的細胞における新生物の増殖を抑制することができる。当該アンチセンス・ヌクレオチドを含有するベクターまたはプラスミドを用いて染色体外に維持し、目的の細胞に導入することができる。
【0138】
上記アンチセンス・ヌクレオチドを用いた癌遺伝子治療によれば、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV由来のベクターに該アンチセンス・ヌクレオチドを組み込み、これを癌細胞に感染させてアンチセンス・ヌクレオチドを過剰発現させることにより、所望の抗腫瘍効果を得ることができる。
【0139】
このようにGASC1遺伝子を有する細胞にアンチセンス・ヌクレオチドを導入してGASC1蛋白の発現を抑制させる場合、当該アンチセンス・ヌクレオチドは対応するGASC1遺伝子の全長に対応するものである必要はなく、例えば該GASC1遺伝子の発現機能を抑制する機能と実質的に同質な機能を保持する限りにおいて、前記した改変体であっても、また特定の機能を保持した一部配列からなる遺伝子であってもよい。
【0140】
かかる組換えおよび染色体外維持の双方のための、所望遺伝子を導入すべきベクターは、当該分野において既に知られており、本発明ではかかる既知のベクターのいずれもが使用できる。例えば、発現制御エレメントに連結したGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドのコピーを含み且つ目的の細胞内で当該アンチセンス・ヌクレオチド産物を発現できるウイルスベクターまたはプラスミドベクターを挙げることができる。かかるベクターとしては、通常前述した発現用ベクターを利用することもでき、好適には、例えば起源ベクターとして、米国特許第5252479号明細書およびPCT国際公開WO93/07282号明細書に開示されたベクター(pWP−7A、pWP−19、pWU−1、pWP−8A、pWP−21および/またはpRSVLなど)またはpRC/CMV(Invitrogen社製)などを用いて調製されたベクターを用いることもできる。より好ましいベクターとしては、後述する各種ウイルス・ベクターを挙げることができる。
【0141】
なお、遺伝子導入治療において用いられるベクターに使用されるプロモーターとしては、各種疾患の治療対象となる患部組織に固有のものを好適なものとして例示することができる。
【0142】
その具体例としては、例えば、肝臓に対しては、アルブミン、α−フェトプロティン、α1−アンチトリプシン、トランスフェリン、トランススチレンなどを例示できる。結腸に対しては、カルボン酸アンヒドラーゼI、カルシノエンブロゲンの抗原などを例示できる。子宮および胎盤に対しては、エストロゲン、アロマターゼ、サイトチトクロームP450、コレステロール側鎖切断P450、17アルファーヒドロキシラーゼP450などを例示できる。
【0143】
前立腺に対しては、前立腺抗原、gp91−フォックス遺伝子、前立腺特異的カリクレインなどを例示できる。乳房に対しては、erb−B2、erb−B3、β−カゼイン、β−ラクトグロビン、乳漿蛋白質などを例示できる。肺に対しては、活性剤蛋白質Cウログロブリンなどを例示できる。皮膚に対しては、K−14−ケラチン、ヒトケラチン1または6、ロイクリンなどを例示できる。
【0144】
脳に対しては、神経膠繊維質酸性蛋白質、成熟アストロサイト特異蛋白質、ミエリン塩基性蛋白質、チロシンヒドロキシラーゼ等を例示できる。膵臓に対しては、ヴィリン、グルカゴン、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチドなどを例示できる。甲状腺に対しては、チログロブリン、カルシトニンなどを例示できる。骨に対しては、α1コラーゲン、オステオカルシン、骨シアログリコプロティンなどを例示できる。腎臓に対してはレニン、肝臓/骨/腎臓アルカリ性ホスフォターゼ、エリスロポエチンなどを、膵臓に対しては、アミラーゼ、PAP1などを例示できる。
【0145】
なおアンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクターの製造において、導入されるアンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子配列に対応する相補配列全部または一部)は、本発明のGASC1遺伝子の塩基配列情報に基づいて、前記の如く、一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得することができる。
【0146】
かかるアンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクターの細胞への導入は、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈法、ウイルス形質導入などを始めとする、細胞にDNAを導入する当該分野において既に知られている各種の方法に従って行うことができる。なお、GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドで形質転換された細胞は、それ自体単離状態で癌の抑制ないしは癌転移の抑制のための医薬や、治療研究のためのモデル系として利用することも可能である。
【0147】
遺伝子治療においては、上記のアンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクターは、患者の腫瘍部位に局所的にまたは全身的に注射投与することにより患者の腫瘍細胞内に導入することができる。この際全身的投与によれば、他の部位に転移し得るいずれの腫瘍細胞にも到達させることができる。形質導入された遺伝子が各標的腫瘍細胞の染色体内に恒久的に取り込まれない場合には、該投与を定期的に繰り返すことによって達成できる。
【0148】
本発明の遺伝子治療方法は、前述したアンチセンス・ヌクレオチド導入用の材料(アンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクター)を直接体内に投与するインビボ(in vivo)法と、患者の体内より一旦標的とする細胞を取り出して体外で遺伝子を導入して、その後、該細胞を体内に戻すエクスビボ(ex vivo)法の両者を包含する。
【0149】
またGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを直接細胞内に導入し、RNA鎖を切断する活性分子であるリボザイムによる遺伝子治療も可能である。
【0150】
後述する、本発明GASC1遺伝子に対応する配列のアンチセンス・ヌクレオチド全部もしくはその断片を含有する遺伝子導入用ベクターおよび該ベクターによりGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドが導入された細胞を有効成分とする本発明の遺伝子治療剤は、特に癌をその利用対象とするものであるが、上記の遺伝子治療(処置)は、癌以外にも遺伝性疾患、AIDSのようなウイルス疾患の治療、並びに遺伝子標識をも目的として行うことができる。
【0151】
また、アンチセンス・ヌクレオチドを導入する標的細胞は、遺伝子治療(処置)の対象により適宜選択することができる。例えば、標的細胞として、癌細胞や腫瘍組織以外に、リンパ球、線維芽細胞、肝細胞、造血幹細胞、如き細胞などを挙げることができる。
【0152】
上記遺伝子治療におけるアンチセンス・ヌクレオチド導入方法には、ウイルス的導入方法および非ウイルス的導入方法が含まれる。
【0153】
ウイルス的導入方法としては、例えば、GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドが正常細胞に発現する外来の物質であることに鑑みて、ベクターとしてレトロウイルスベクターを用いる方法を挙げることができる。その他のウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、HIV(human immunodeficiency virus)ベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV,adeno-associated virus)、ヘルペスウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターおよびエプスタイン−バーウイルス(EBV,Epstein-Barr virus)ベクターなどがあげられる。
【0154】
非ウイルス的な遺伝子導入方法としては、リン酸カルシウム共沈法;DNAを封入したリポソームと予め紫外線で遺伝子を破壊した不活性化センダイウイルスを融合させて膜融合リポソームを作成し、細胞膜と直接融合させてDNAを細胞内に導入する膜融合リポソーム法〔Kato,K.,et al., J. Biol. Chem., 266, 22071-22074 (1991)〕;プラスミドDNAを金でコートして高圧放電によって物理的に細胞内にDNAを導入する方法〔Yang,N.S. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci., 87, 9568-9572 (1990)〕;プラスミドDNAを直接インビボで臓器や腫瘍に注入するネイキッド(naked)DNA法〔Wolff,J.A.,et al., Science, 247, 1465-1467 (1990)〕;多重膜正電荷リポソームに包埋した遺伝子を細胞に導入するカチオニック・リポソーム法〔八木国夫, 医学のあゆみ, Vol.175,No.9,635-637 (1995)〕;特定細胞のみに遺伝子を導入し、他の細胞に入らないようにするために、目的とする細胞に発現するレセプターに結合するリガンドをDNAと結合させてそれを投与するリガンド−DNA複合体法〔Frindeis,et al.,Trends Biotechnol., 11, 202 (1993); Miller,et al.,FASEB J., 9, 190 (1995)〕などを使用することができる。
【0155】
上記リガンド−DNA複合体法には、例えば肝細胞が発現するアシアロ糖蛋白レセプターをターゲットとしてアシアロ糖蛋白をリガンドとして用いる方法〔Wu, et al.,J.Biol.Chem., 266, 14338 (1991); Ferkol,et al.,FASEB J., 7, 1081-1091 (1993)〕や、腫瘍細胞が強く発現しているトランスフェリン・レセプターを標的としてトランスフェリンをリガンドとして用いる方法〔Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 87, 3410 (1990)〕などが含まれる。
【0156】
また本発明で用いられる遺伝子導入法は、上記の如き各種の生物学的および物理学的な遺伝子導入法を適宜組合せたものであってもよい。該組合せによる方法としては、例えばあるサイズのプラスミドDNAをアデノウイルス・ヘキソン蛋白質に特異的なポリリジン抱合抗体と組合わせる方法を例示できる。該方法によれば、得られる複合体がアデノウイルスベクターに結合し、かくして得られる三分子複合体を細胞に感染させることにより本発明アンチセンス・ヌクレオチドの導入を行い得る。この方法では、アデノアイルスベクターにカップリングしたDNAが損傷される前に、効率的な結合、内在化およびエンドソーム分解が可能となる。また、前記リポソーム/DNA複合体は、直接インビボにて遺伝子導入を媒介できる。
【0157】
以下、具体的な本発明のアンチセンス・ヌクレオチド導入用ウイルスベクターの作成法並びに標的細胞または標的組織へのアンチセンス・ヌクレオチド導入法について述べる。
【0158】
レトロウイルスベクター・システムは、ウイルスベクターとヘルパー細胞(パッケージング細胞)からなっている。ここでヘルパー細胞は、レトロウイルスの構造蛋白質gag(ウイルス粒子内の構造蛋白質)、pol(逆転写酵素)、env(外被蛋白質)などの遺伝子を予め発現しているが、ウイルス粒子を生成していない細胞を言う。一方、ウイルスベクターは、パッケージングシグナルやLTR(long terminal repeats)を有しているが、ウイルス複製に必要なgag、pol、envなどの構造遺伝子を持っていない。パッケージングシグナルはウイルス粒子のアセンブリーの際にタグとなる配列で、選択遺伝子(neo,hyg)とクローニングサイトに組込まれた所望の導入アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子に対応する全アンチセンス・ヌクレオチドまたはその断片)がウイルス遺伝子の代りに挿入される。ここで高力価のウイルス粒子を得るにはインサートを可能な限り短くし、パッケージングシグナルをgag遺伝子の一部を含め広くとることと、gag遺伝子のATGを残さぬようにすることが重要である。
【0159】
所望のGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを組み込んだベクターDNAをヘルパー細胞に移入することによって、ヘルパー細胞が作っているウイルス構造蛋白質によりベクターゲノムRNAがパッケージされてウイルス粒子が形成され、分泌される。組換えウイルスとしてのウイルス粒子は、標的細胞に感染した後、ウイルスゲノムRNAから逆転写されたDNAが細胞核に組み込まれ、ベクター内に挿入されたアンチセンス遺伝子が発現する。
【0160】
尚、所望の遺伝子の導入効率を上げる方法として、フイブロネクチンの細胞接着ドメインとヘパリン結合部位と接合セグメントとを含む断片を用いる方法〔Hanenberg,H.,et al.,Exp.Hemat., 23, 747 (1995)〕を採用することもできる。
【0161】
なお、上記レトロウイルスベクター・システムにおいて用いられるベクターとしては、例えばマウスの白血病ウイルスを起源とするレトロウイルス〔McLachlin, J.R., et al., Proc. Natl. Acad. Res. Molec. Biol., 38, 91-135 (1990)〕を例示することができる。
【0162】
アデノウイルスベクターを利用する方法につき詳述すれば、該アデノウイルスベクターの作成は、バークネル〔Berkner,K.L.,Curr.Topics Microbiol.Immunol., 158, 39-66 (1992)〕、瀬戸口康弘ら〔Setoguchi,Y.,et al., Blood, 84, 2946-2953 (1994)〕、鐘カ江裕美ら〔実験医学, 12, 28-34 (1994)〕およびケナーら〔Ketner,G.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA., 91, 6186-6190 (1994)〕の方法に準じて行うことができる。
【0163】
例えば、非増殖性アデノウイルスベクターを作成するには、まずアデノウイルスの初期遺伝子のE1および/またはE3遺伝子領域を除去する。次に、目的とする所望の外来遺伝子発現単位(目的とする導入アンチセンス・ヌクレオチド、即ち本発明GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド、そのアンチセンス・ヌクレオチドを転写するためのプロモーター、転写された遺伝子の安定性を賦与するポリAから構成)およびアデノウイルスゲノムDNAの一部を含むプラスミドベクターと、アデノウイルスゲノムを含むプラスミドとを、例えば293細胞に同時にトランスフェクションする。この2者間で相同性組換えを起こさせて、遺伝子発現単位とE1とを置換することにより、所望のGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを包含する本発明遺伝子治療用ベクターである非増殖性アデノウイルスベクターを作成することができる。また、コスミドベクターにアデノウイルスゲノムDNAを組み込んで、末端蛋白質を付加した3’側アデノウイルスベクターを作成することもできる。更に組換えアデノウイルスベクターの作成には、YACベクターも利用可能である。
【0164】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの製造につき概略すると、AAVはアデノウイルスの培養系に混入してくる小型のウイルスとして発見された。これには、ウイルス複製にヘルパーウイルスを必要とせず宿主細胞内で自律的に増殖するパルボウイルス属と、ヘルパーウイルスを必要とするディペンドウイルス属の存在が確認されている。該AAVは宿主域が広く、種々の細胞に感染するありふれたウイルスであり、ウイルスゲノムは大きさが4680塩基の線状一本鎖DNAからなり、その両端の145塩基がITR(inverted terminal repeat)と呼ばれる特徴的な配列を持って存在している。このITRの部分が複製開始点となり、プライマーの役割をなす。更にウイルス粒子へのパッケージングや宿主細胞の染色体DNAへの組込みにも、該ITRが必須となる。また、ウイルス蛋白質に関しては、ゲノムの左半分が非構造蛋白質、即ち複製や転写をつかさどる調節蛋白質のRepをコードしている。
【0165】
組換えAAVの作成は、AAVが染色体DNAに組み込まれる性質を利用して行うことができ、かくして所望の遺伝子導入用ベクターが作成できる。この方法は、より詳しくは、まず野生型AAVの5'と3'の両端のITRを残し、その間に所望の導入用アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1 アンチセンス・ヌクレオチド)を挿入したプラスミド(AAVベクタープラスミド)を作成する。一方、ウイルス複製やウイルス粒子の形成に必要とされるウイルス蛋白質は、別のヘルパープラスミドにより供給させる。この両者の間には共通の塩基配列が存在しないようにし、遺伝子組換えによる野生型ウイルスが出現しないようにする必要がある。その後、両者のプラスミドを例えば293細胞へのトランスフェクションにより導入し、さらにヘルパーウイルスとしてアデノウイルス(293細胞を用いる場合は非増殖型のものでもよい)を感染させると、非増殖性の所望の組換えAAVが産生される。続いて、この組換えAAVは核内に存在するので、細胞を凍結融解して回収し、混入するアデノウイルスを56℃加熱により失活させる。更に必要に応じて塩化セシウムを用いる超遠心法により組換えAAVを分離濃縮する。上記のようにして所望の遺伝子導入用の組換えAAVを得ることができる。
【0166】
EBVベクターの製造は、例えば清水らの方法に準じて行うことができる〔清水則夫ら、細胞工学, 14(3), 280-287 (1995)〕。
【0167】
本発明のアンチセンス・ヌクレオチド導入用EBVベクターの製造につき概略すると、EBウイルス(Epstein-Barr virus: EBV)は、1964年にエプスタイン(Epstein)らによりバーキット(Burkitt)リンパ腫由来の培養細胞より分離されたヘルペス科に属するウイルスである〔Kieff, E. and Liebowitz, D.: Virology, 2nd ed. Raven Press, New York, 1990, pp.1889-1920〕。該EBVには細胞をトランスフォームする活性があるので、遺伝子導入用ベクターとするためには、このトランスフォーム活性を欠いたウイルスを調製しなければならない。これは次の如くして実施できる。
【0168】
即ち、まず、所望の外来遺伝子を組み込む標的DNA近傍のEBVゲノムをクローニングする。そこに外来遺伝子のDNA断片と薬剤耐性遺伝子を組込み、組換えウイルス作製用ベクターとする。次いで適当な制限酵素により切り出された組換えウイルス作製用ベクターをEBV陽性Akata細胞にトランスフェクトする。相同組換えにより生じた組換えウイルスは抗表面免疫グロブリン処理によるウイルス産生刺激により野生型AkataEBVとともに回収できる。これをEBV陰性Akata細胞に感染し、薬剤存在下で耐性株を選択することにより、野生型EBVが共存しない所望の組換えウイルスのみが感染したAkata細胞を得ることができる。さらに組換えウイルス感染Akata細胞にウイルス活性を誘導することにより、目的とする大量の組換えウイルスベクターを産生することができる。
【0169】
組換えウイルスベクターを用いることなく所望のアンチセンス・ヌクレオチドを標的細胞に導入する、非ウイルスベクターの製造は、例えば膜融合リポソームによる遺伝子導入法により実施することができる。これは膜リポソーム(脂質二重膜からなる小胞)に細胞膜への融合活性をもたせることにより、リポソームの内容物を直接細胞内に導入する方法である。
【0170】
上記膜融合リポソームによるアンチセンス・ヌクレオチドの導入は、例えば中西らの方法によって行うことができる〔Nakanishi,M.,et al.,Exp.Cell Res., 159, 399-499 (1985); Nakanishi,M.,et al.,Gene introduction into animal tissues.In Trends and Future Perspectives in Peptide and Protein Drug Delivery (ed. by Lee, V.H. et al.)., Harwood Academic Publishers Gmbh. Amsterdam, 1995, pp.337-349〕。
【0171】
以下、該膜融合リポソームによるアンチセンス・ヌクレオチドの導入法につき概略する。即ち、紫外線で遺伝子を不活性化したセンダイウイルスと所望のアンチセンス・ヌクレオチドや発現蛋白質などの高分子物質を封入したリポソームを37℃で融合させる。この膜融合リポソームは、内側にリポソーム由来の空洞を、外側にウイルス・エンベロープと同じスパイクがある疑似ウイルスともよばれる構造を有している。更にショ糖密度勾配遠心法で精製後、標的とする培養細胞または組織細胞に対して膜融合リポソームを4℃で吸着させる。次いで37℃にするとリポソームの内容物が細胞に導入され、所望のアンチセンス・ヌクレオチドを標的細胞に導入できる。ここでリポソームとして用いられる脂質としては、50%(モル比)コレステロールとレシチンおよび陰電荷をもつ合成リン脂質で、直径300nmの1枚膜リポソームを作製して使用するのが好ましい。
【0172】
また、別のリポソームを用いてアンチセンス・ヌクレオチドを標的細胞に導入する方法としては、カチオニック・リポソームによるアンチセンス・ヌクレオチド導入法を挙げることができる。該方法は、八木らの方法に準じて実施できる〔Yagi,K.,et al.,B.B.R.C., 196, 1042-1048 (1993)〕。この方法は、プラスミドも細胞も負に荷電していることに着目して、リポソーム膜の内外両面に正の電荷を与え、静電気によりプラスミドの取り込みを増加させ、細胞との相互作用を高めようとするものである。ここで用いられるリポソームは正荷電を有する多重膜の大きなリポソーム(multilamellar large vesicles: MLV)が有用であるが、大きな1枚膜リポソーム(large unilamellar vesicles: LUV)や小さな1枚膜リポソーム(small unilamellar vesicles: SUV)を使用してプラスミドとの複合体を作製し、所望のアンチセンス・ヌクレオチドを導入することも可能である。
【0173】
プラスミド包埋カチオニックMLVの調製法について概略すると、これはまず脂質TMAG(N-(α-trimethylammonioacetyl)-didodecyl-D-glutamate chloride)、DLPC(dilauroyl phosphatidylcholine)およびDOPE(dioleoyl phosphatidylethanolamine)をモル比が1:2:2となる割合で含むクロロホルム溶液(脂質濃度として1mM)を調製する。次いで総量1μmolの脂質をスピッツ型試験管に入れ、ロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧除去して脂質薄膜を調製する。更に減圧下にクロロホルムを完全に除去し、乾燥させる。次いで20μgの遺伝子導入用プラスミドを含む0.5mlのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩液−Mg,Ca含有を添加し、窒素ガス置換後、2分間ボルテックスミキサーにより攪袢して、所望のアンチセンス・ヌクレオチドを含有するプラスミド包埋カチオニックMLV懸濁液を得ることができる。
【0174】
上記で得られたプラスミド包埋カチオニックMLVを遺伝子治療剤として使用する一例としては、例えば発現目的アンチセンス・ヌクレオチドを組み込んだ発現プラスミドを上記カチオニックMLVにDNA量として0.6μg、リポソーム脂質量として30nmolになるように包埋し、これを2μlのリン酸緩衝生理食塩液に懸濁させて患者より抽出した標的細胞または患者組織に対して隔日投与する方法が例示できる。
【0175】
ところで、遺伝子治療とは「疾病の治療を目的として、遺伝子または遺伝子を導入した細胞をヒトの体内に投与すること」と厚生省ガイドラインに定義されている。しかしながら、本発明における遺伝子治療とは、該ガイドラインの定義に加えて、前記した標的細胞にGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを癌抑制アンチセンスDNAとして導入することによって、癌を始めとする各種疾患の治療のみならず、更に標識となる遺伝子または標識となる遺伝子を導入した細胞をヒト体内に導入することも含むものとする。
【0176】
本発明の遺伝子治療において、所望遺伝子の標的細胞または標的組織への導入方法には、代表的には2種類の方法が含まれる。
【0177】
その第1法は、治療対象とする患者から標的細胞を採取した後、該細胞を体外で例えばインターロイキン−2(IL−2)などの添加の下で培養し、レトロウイルスベクターに含まれる目的とするGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを導入した後、得られる細胞を再移植する手法(ex vivo法)である。該方法はADA欠損症を始め、欠陥遺伝子によって発生する遺伝子病や癌、AIDSなどの治療に好適である。
【0178】
第2法は、目的アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)を直接患者の体内や腫瘍組織などの標的部位に注入する遺伝子直接導入法(直接法)である。
【0179】
上記遺伝子治療の第1法は、より詳しくは、例えば次のようにして実施される。即ち、患者から採取した単核細胞を血液分離装置を用いて単球から分取し、分取細胞をIL−2の存在下にAIM−V培地などの適当な培地で72時間程度培養し、導入すべきアンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)を含有するベクターを加える。アンチセンス・ヌクレオチドの導入効率をあげるために、プロタミン存在下に32℃で1時間、2500回転にて遠心分離した後、37℃で10%炭酸ガス条件下で24時間培養してもよい。この操作を数回繰り返した後、更にIL−2存在下にAIM−V培地などで48時間培養し、細胞を生理食塩水で洗浄し、生細胞数を算定し、アンチセンス・ヌクレオチド導入効率を前記in situ PCRや、例えば所望の対象が酵素活性であればその活性の程度を測定することにより、目的アンチセンス・ヌクレオチド導入効果を確認する。
【0180】
また、培養細胞中の細菌・真菌培養、マイコプラズマの感染の有無、エンドトキシンの検索などの安全度のチェックを行い、安全性を確認した後、予測される効果用量のアンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)が導入された培養細胞を患者に点滴静注により戻す。かかる方法を例えば数週間から数カ月間隔で繰り返することにより遺伝子治療が施される。
【0181】
ここでウイルスベクターの投与量は、導入する標的細胞により適宜選択される。通常、ウイルス価として、例えば標的細胞 1×108細胞に対して1×103cfuから1×108cfuの範囲となる投与量を採用することが好ましい。
【0182】
上記第1法の別法として、目的アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)を含有するレトロウイルスベクターを含有するウイルス産生細胞と例えば患者の細胞とを共培養して、目的とする細胞へアンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)を導入する方法を採用することもできる。
【0183】
遺伝子治療の第2法(直接法)の実施に当たっては、特に体外における予備実験によって、遺伝子導入法によって、実際に目的アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)が導入されるか否かを、予めベクター遺伝子cDNAのPCR法による検索やin situPCR法によって確認するか、或いは目的アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)の導入に基づく所望の治療効果である特異的活性の上昇や標的細胞の増殖増加や増殖抑制などを確認することが望ましい。また、ウイルスベクターを用いる場合は、増殖性レトロウイルスなどの検索をPCR法で行うか、逆転写酵素活性を測定するか、或は膜蛋白(env)遺伝子をPCR法でモニターするなどにより、遺伝子治療に際してアンチセンス・ヌクレオチド導入による安全性を確認することが重要であることはいうまでもない。
【0184】
本発明遺伝子治療法において、特に癌や悪性腫瘍を対象とする場合は、患者から癌細胞を採取後、酵素処理などを施して培養細胞を樹立した後、例えばレトロウイルスにて所望のアンチセンス・ヌクレオチドを標的とする癌細胞に導入し、G418細胞にてスクリーニングした後、IL−12などの発現量を測定(in vivo測定)し、次いで放射線処理を施行し、患者腫瘍内または傍腫瘍に接種する癌治療法を一例として挙げることができる。
【0185】
本発明はまた、本発明のアンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクターまたは目的アンチセンス・ヌクレオチド(GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチド)が導入された細胞を活性成分とし、それを薬学的有効量、適当な無毒性医薬担体ないしは希釈剤と共に含有する医薬組成物または医薬製剤(遺伝子治療剤)を提供する。
【0186】
本発明の医薬組成物(医薬製剤)に利用できる医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤ないし賦形剤などを例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用できる。
【0187】
本発明医薬製剤の投与単位形態としては、前記したGASC1蛋白質抗体製剤の製剤例を同様に挙げることができ、治療目的に応じて各種の形態から適宜選択することができる。
【0188】
例えば、本発明のアンチセンス・ヌクレオチド導入用ベクターを含む医薬製剤は、該ベクターをリポソームに包埋された形態あるいは所望のアンチセンス・ヌクレオチドが包含されるレトロウイルスベクターを含むウイルスによって感染された培養細胞の形態に調製される。
【0189】
これらは、リン酸緩衝生理食塩液(pH7.4)、リンゲル液、細胞内組成液用注射剤中に配合した形態などに調製することもでき、またプロタミンなどの遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるような形態に調製することもできる。
【0190】
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。
【0191】
上記医薬製剤中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。
【0192】
一般には、医薬製剤としての所望アンチセンス・ヌクレオチド含有レトロウイルスベクターの投与量は、1日当り体重1kg当り、例えばレトロウイルスの力価として約1×103pfuから1×1015pfu程度とするのがよい。
【0193】
また所望の導入用アンチセンス・ヌクレオチドが導入された細胞の場合は、1×104細胞/bodyから1×1015細胞/body程度の範囲から選ばれるのが適当である。
【0194】
該製剤は1日に1回または数回に分けて投与することもでき、1から数週間間隔で間欠的に投与することもできる。尚、好ましくは、プロタミンなど遺伝子導入効率を高める物質またはこれを含む製剤と併用投与することができる。
【0195】
本発明に従う遺伝子治療を癌の治療に適用する場合は、前記した種々の遺伝子治療を適宜組合わせて行う(結合遺伝子治療)こともでき、前記した遺伝子治療に、従来の癌化学療法、放射線療法、免疫療法などを組合わせて行うこともできる。さらに本発明遺伝子治療は、その安全性を含めて、NIHのガイドラインを参考にして実施することができる〔Recombinant DNA Advisory Committee, Human Gene Therapy, 4, 365-389 (1993)〕。
【0196】
本発明によれば、細胞の腫瘍形成を促すGASC1遺伝子の存在を検出するために、血液または血清のごとき生物学的試料を調製し、所望により核酸を抽出し、GASC1の感受性遺伝子が存在する否かについて分析することが可能である。また、本発明によれば細胞または組織における新生物、悪性の前駆障害への進行、または予後指標としての存在を検出するためには、障害を有する生物学的な試料を調製し、GASC1の新生物遺伝子が存在するか否かについて分析できる。この方法を用いることにより細胞または組織における新生物、悪性の前駆障害への進行、または予後指標としての存在を検出することが可能となり、これらの診断、例えば癌の診断並びに癌治療効果の判定並びに予後の予測が可能となる。
【0197】
該検出方法は、例えば、予め腫瘍を有する患者サンプルから得られたGASC1遺伝子に関する情報を基に、該DNA断片を作成し、GASC1遺伝子のスクリーニングおよび/またはその増幅に用いられるように設計される。より具体的には、例えばプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション、サザンブロット法、ノーザンブロット法などにおけるプローブとしての性質を有するもの、核酸配列をポリメラーゼで増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、増幅したGASC1の全部または一部のDNA断片を得ることができるためのプローブとしての性質を有するものを作成できる。そのためにはまずGASC1と同じ配列を持つプライマーを作成し、スクリーニング用プローブとして用い、生物学的試料(核酸試料)と反応させることにより、当該GASC1配列を有する遺伝子の存在を確認することができる。該核酸試料は、標的配列の検出を容易にする種々の方法、例えば変性、制限消化、電気泳動またはドットブロッティングで調製してもよい。
【0198】
前記スクリーニング方法としては、特にPCR法を用いるのが感度の点から好ましく、該方法は、GASC1断片をプライマーとして用いる方法であれば特に制限されず、従来公知の方法(Science, 230, 1350-1354(1985))や新たに開発された、或いは将来使用されるPCR変法(榊 佳之、ほか編、羊土社、実験医学、増刊, 8(9)(1990); 蛋白質・核酸・酵素、臨時増刊、共立出版(株), 35(17)(1990))のいずれも利用することが可能である。
【0199】
プライマーとして使用されるDNA断片は、化学合成したオリゴDNAであり、これらオリゴDNAの合成は自動DNA合成装置など、例えばDNA合成装置(PharmaciaLKB Gene Assembler Plus: ファルマシア社製)を使用して合成することができる。合成されるプライマー(センスプライマーまたはアンチセンスプライマー)の長さは約10〜30ヌクレオチド程度が好ましく例示できる。上記スクリーニングに用いられるプローブは、通常は標識したプローブを用いるが、非標識であってもよく、直接的または間接的に標識したリガンドとの特異的結合によって検出してもよい。適当な標識、並びにプローブおよびリガンドを標識する方法は、本発明の技術分野で知られており、ニック・トランスレーション、ランダム・プライミングまたはキナーゼ処理のような、既知の方法によって取り込ませることができる放射性標識、ビオチン、蛍光性基、化学発光基、酵素、抗体などがこれらの技術に包含される。
【0200】
検出のために用いるPCR法としては、例えばRT−PCR法が例示されるが、当該分野で用いられる種々の変法を適応することができる。
【0201】
また、本発明の測定方法は、試料中のGASC1遺伝子の検出のための試薬キットを利用することによって、簡便に実施することができる。
【0202】
故に本発明によれば上記GASC1 DNA断片を含有することを特徴とするGASC1の検出用試薬キットが提供される。
【0203】
該試薬キットは、少なくとも配列番号:2に示される塩基配列もしくはその相補的塩基配列の一部または全てにハイブリダイズするDNA断片を必須構成成分として含んでいれば、他の成分として、標識剤、PCR法に必須な試薬(例えば、TaqDNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸、プライマーなど)が含まれていてもよい。
【0204】
標識剤としては、放射性同位元素または蛍光物質などの化学修飾物質などが挙げられるが、DNA断片自身が予め該標識剤でコンジュゲートされていてもよい。更に当該試薬キットには、測定の実施の便益のために適当な反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤、反応停止液などが含まれていてもよい。
【0205】
更に本発明は、前記測定方法を用いる癌の診断方法および該方法に用いる診断剤並びに診断用キットをも提供するものである。
【0206】
また、前記方法を用いることにより、被検試料中から得られたGASC1配列を直接的若しくは間接的に配列決定することにより、野生型GASC1と相同性の高い相同物である新たなGASC1遺伝子に関連する関連遺伝子を見出すことができる。
【0207】
従って、本発明はかかる測定と被検試料中のGASC1 DNAの配列決定により、被検試料中のヒトGASC1遺伝子に関連する関連遺伝子のスクリーニング方法をも提供するものである。
【0208】
また、本発明の配列番号:1で示されるヒトGASC1遺伝子でコードされる蛋白質または該配列番号:1において、1もしくは数個乃至複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列またはこれらの断片から蛋白質を合成し、もしくは該蛋白質に対する抗体を合成することによって、野生型GASC1および/または変異GASC1の測定が可能となる。
【0209】
従って、本発明は、野生型GASC1および/または変異GASC1の抗体測定法、抗原測定法を提供するものである。該測定法によって新生物状態の障害の程度、或いは悪性腫瘍の悪性度を野生型GASC1ポリペプチドの変化に基づいて検出することも可能である。かかる変化は、この分野における前記慣用技術によるGASC1配列分析によっても決定できるが、更に好ましくは、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル抗体)を用いて、GASC1蛋白質中の相違、またはGASC1蛋白質の有無を検出することができる。本発明の測定法の具体的な例示としては、GASC1抗体は、血液・血清などのヒトより採取した生体材料試料含有溶液からGASC1蛋白質を免疫沈降し、かつポリアクリルアミドゲルのウェスタン・ブロットまたはイムノブロット上でGASC1蛋白質と反応することができる。また、GASC1抗体は免疫組織化学的技術を用いてパラフィンまたは凍結組織切片中のGASC1蛋白質を検出することができる。抗体産生技術および精製する技術は当該分野においてよく知られているので、これらの技術を適宜選択することができる。
【0210】
野生型GASC1またはその突然変異体を検出する方法に関連するより好ましい具体例には、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を含む、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、放射線免疫検定法(RIA)、免疫放射線検定法(IRMA)および免疫酵素法(IEMA)が含まれる。
【0211】
また、本発明は、GASC1蛋白に対するGASC1結合活性を有する細胞膜画分または細胞表面上に存在するGASC1レセプターをも提供することが可能である。該GASC1レセプターの取得は、細胞膜画分を含む生体材料試料中において標識したGASC1蛋白をコンジュゲートさせ、GASC1結合反応物を抽出・単離、精製し、単離物のアミノ酸配列を特定することによって達成され、該GASC1レセプター蛋白の取得並びに配列決定は、この分野の当業者には容易に達成できる。
【0212】
また本発明は、GASC1レセプター蛋白質またはその結合断片を種々の薬剤のいずれかをスクリーニングする技術に用いることによって、化合物(GASC1レセプター反応物:化合物は低分子化合物、高分子化合物、蛋白質、蛋白質部分断片、抗原または抗体など言う)をスクリーニングすることに利用可能である。好ましくは、GASC1レセプターを利用する。かかるスクリーニング試験に用いるGASC1レセプターポリペプチドまたはその断片は、固体支持体に付着するか、または細胞表面に運ばれている溶液中の遊離物であってもよい。
【0213】
薬剤スクリーニングの一例としては、例えば、GASC1蛋白質またはその断片を発現する組換え蛋白質で安定して形質転換した原核生物または真核生物の宿主細胞を、好ましくは競合的結合アッセイにおいて利用することができる。また遊離のまたは固定した形態のかかる細胞を標準結合アッセイに用いることもできる。より具体的には、GASC1レセプター蛋白質またはその断片と、試験する物質との間の複合体の形成を測定し、GASC1レセプター蛋白質またはその断片とGASC1蛋白質またはその断片との間の複合体の形成が試験する物質によって阻害される程度を検出することによって化合物をスクリーニングすることが可能である。
【0214】
かくして、本発明は、当該分野で既知の方法によって、かかる物質とGASC1レセプター蛋白質またはその断片とを接触させ、次いで、該物質とGASC1レセプター蛋白質またはその断片との間の複合体の存在またはGASC1レセプター蛋白質またはその断片とリガンドとの間の複合体の存在について測定することを特徴とする薬剤のスクリーニング方法を提供することができる。さらに、GASC1レセプター活性を測定して、かかる物質がGASC1レセプターを阻害でき、かくして上記定義されたGASC1の活性、例えば細胞増殖や分化を調節する蛋白質と結合したり、解離したりすることで、結合蛋白の血中並びに組織中の濃度や移行を調節したり、活性そのものを調節できるかどうか判断する。かかる競合結合アッセイにおいて、より具体的には、GASC1レセプター蛋白質またはその断片を標識する。遊離のGASC1レセプター蛋白質またはその断片を、蛋白質:蛋白質複合体で存在するものから分離し、遊離(複合体未形成)標識の量は、各々、試験される因子のGASC1レセプターに対する結合またはGASC1レセプター:GASC1蛋白質結合の阻害の尺度となる。GASC1蛋白質の小さなペプチド(ペプチド疑似体)をこのように分析し、GASC1レセプター阻害活性を有するものを測定できる。
【0215】
本発明において、薬剤スクリーニングのための他の方法は、GASC1レセプター蛋白質に対して適当な結合親和性を有する化合物についてのスクリーニング法であって、該略すると、多数の異なるペプチド試験化合物をプラスチックのピンまたは他の物質の表面のごとき固体支持体上で合成し、次いでペプチド試験化合物をGASC1レセプター蛋白質と反応させ、洗浄する。次いで既知の方法を用いて反応結合GASC1レセプター蛋白質を検出する方法も例示できる(PCT特許公開番号:WO84−03564号)。精製されたGASC1レセプターは、直接、前記の薬剤スクリーニング技術で使用するプレート上に被覆することができる。しかしながら、ポリペプチドに対する非−中和抗体を用いて抗体を補足し、GASC1レセプター蛋白質を固相上に固定することができる。さらに本発明は、競合薬剤スクリーニングアッセイの使用をも目的とし、GASC1レセプター蛋白質またはその断片に対する結合性につき、GASC1レセプター蛋白質に特異的に結合できる中和抗体と試験化合物とを競合させる。抗体による該競合によって、GASC1レセプター蛋白質の1またはそれ以上の抗原決定部位を有するいずれのペプチドの存在をも検出することが可能である。
【0216】
また、薬剤スクリーニングに関し、さらなる方法としては、非機能性GASC1遺伝子を含有する宿主真核細胞系または細胞の使用が挙げられる。宿主細胞系または細胞を薬剤化合物の存在下において一定期間増殖させた後、該宿主細胞の増殖速度を測定して、該化合物が例えば、細胞増殖や分化を調節する蛋白質と結合したり、解離したりすることで、結合蛋白の血中並びに組織中の濃度や移行を調節したり、活性そのものを調節できるかどうかを確認する。増殖速度を測定する1手段として、GASC1レセプターの生物活性を測定することも可能である。
【0217】
また本発明によれば、より活性または安定した形態のGASC1蛋白質誘導体または例えば、イン・ビボ(in vivo)でGASC1蛋白質の機能を高めるかもしくは妨害する薬剤を開発するために、それらが相互作用する目的の生物学的に活性な蛋白質または構造アナログ、例えばGASC1アゴニスト、GASC1アンタゴニスト、GASC1インヒビターなどを作製することが可能である。前記構造アナログは例えばGASC1と他の蛋白質の複合体の三次元構造をX線結晶学、コンピューター・モデリングまたはこれらの組み合わせた方法によって決定することができる。また、構造アナログの構造に関する情報は、相同性蛋白質の構造に基づく蛋白質のモデリングによって得ることも可能である。
【0218】
また上記より活性または安定した形態のGASC1蛋白質誘導体を得る方法としては、例えばアラニン・スキャンによって分析することが可能である。該方法はアミノ酸残基をアラニンで置換し、ペプチドの活性に対するその影響を測定する方法でペプチドの各アミノ酸残基をこのように分析し、当該ペプチドの活性や安定性に重要な領域を決定する方法である。該方法によって、より活性なまたは安定なGASC1誘導体を設計することができる。
【0219】
また機能性アッセイによって選択した標的−特異的抗体を単離し、次いでその結晶構造を解析することも可能である。原則として、このアプローチにより、続く薬剤の設計の基本となるファーマコア(pharmacore)を得る。機能性の薬理学的に活性な抗体に対する抗−イディオタイプ抗体を生成させることによって、化学的または生物学的に生成したペプチドのバンクよりペプチドを同定したり単離したりすることが可能である。故に選択されたペプチドもファーマコアとして作用すると予測される。
【0220】
かくして、改善されたGASC1活性もしくは安定性またはGASC1活性のインヒビター、アゴニスト、アンタゴニストなどとしての作用を有する薬剤を設計・開発することができる。
【0221】
クローン化GASC1配列によって、十分な量のGASC1蛋白質を入手して、X線結晶学のような分析研究をも行うことができる。さらに、本発明の配列番号:1に示されるアミノ酸配列よりなるGASC1蛋白質の提供により、X線結晶学に代えるかまたはこれに加えて、コンピューターモデリング技術に適応可能である。
【0222】
また本発明によれば、GASC1遺伝子含有ノックアウト・マウス(変異マウス)を作成することによってGASC1遺伝子配列のどの部位が生体内で上記したような多様なGASC1活性に影響を与えるかどうか、即ちGASC1遺伝子産物、並びに改変GASC1遺伝子産物が生体内でどのような機能を有するかを確認することができる。
【0223】
該方法は、遺伝子の相同組換えを利用して、生物の遺伝情報を意図的に修飾する技術であり、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を用いた方法を例示できる(Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (1989))。
【0224】
尚、上記変異マウスの作製方法はこの分野の当業者にとって既に通常の技術であり、この改変技術(野田哲生編、実験医学,増刊, 14 (20) (1996)、羊土社)に、本発明のヒト野生型GASC1遺伝子および変異GASC1遺伝子を適応して容易に変異マウスを作製し得る。従って前記技術の適応により、改善されたGASC1活性もしくは安定性またはGASC1活性のインヒビター、アゴニスト、アンタゴニストなどとしての作用を有する薬剤を設計・開発することができる。
【0225】
【発明の効果】
本発明によれば、各細胞での細胞の増殖、分化、腫瘍形成、転写活性化を調節する作用を有する新規なGASC1遺伝子が提供され、該作用に関与する疾患、例えば悪性腫瘍などの病態解明や診断、治療などが可能である。
【0226】
本発明遺伝子がコードするアミノ酸配列のペプチドのC末端側には、公知の癌遺伝子がコードしている2つのPHDフィンガー・モチーフおよび1つのPXドメインが存在しており、また本発明遺伝子が位置している染色体9p23−24の増幅は多くの癌において観察されているため、本発明遺伝子乃至その関連遺伝子の解析によれば、それらの機能と各種疾患との係わりについての研究を実施でき、これら各種疾患の遺伝子診断並びに該遺伝子の発現産物に対する抗体やアンチセンスによる医薬用途への応用研究が可能である。本発明遺伝子の利用によれば、各種組織での該遺伝子の発現状況が調べられ、生体内におけるその機能を解析することが可能となる。
【0227】
また、該遺伝子によれば、該遺伝子がコードする蛋白質を遺伝子工学的に大量に製造することができ、該蛋白質の提供によれば、GASC1蛋白質活性やGASC1蛋白質の結合活性などの機能を調べることもできる。
【0228】
またGASC1蛋白質は、GASC1遺伝子およびその産物が関与する疾患(例えば、細胞の増殖、分化、腫瘍形成、転写活性化を調節する作用に関連する各種疾患など、特に癌)の病態解明や診断、治療などに有用である。
【0229】
本発明によれば、更にGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを含有する遺伝子治療に有用な遺伝子導入用ベクター、該GASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドを導入された細胞および該ベクターまたは細胞を有効成分とする遺伝子治療剤、並びにその利用による遺伝子治療法などが提供される。
【0230】
本発明によれば、更に各種癌細胞の成長抑制作用を有し、該作用による各種癌の疾患および病態の処置などに使用されるGASC1遺伝子のアンチセンス・ヌクレオチドまたはGASC1蛋白質に結合性を有する抗体を有効成分とする医薬も提供できる。
【0231】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。
【0232】
【実施例1】
1.材料および方法
1)食道扁平上皮癌細胞株と分裂中期スライドの作成
試験に用いた29の食道扁平上皮癌細胞株(KYSEシリーズ)は、外科的に切除した腫瘍から確立されたものである(Shimada,Y.,et al., Cancer, 69, 277-284 (1992))。これらの細胞株の全てのコピー数異常は、先に本発明者らによって確認されている。分裂中期のクロモゾーム・スライドは、シノミヤらの方法(Shinomiya,T.,et al., Genes Chromosomes Cancer, 24, 337-344 (1999))に順じて作製し、FISH試験に用いた。
2)プローブとしてYACとPACを使用するFISH試験
YACの所定領域内の位置は、ホワイトヘッド研究所/MITゲノム・センター(Whitehead Institute/MIT Genome Center)(http://www-genome.Wi.Mit.Edu/)およびヒト分子細胞遺伝学財団(Resources for Human Molecular Cytogenetics) (http://bioserver.uniba.it/fish/rocchi/welcom.html)の情報から集めた。
【0233】
ヒト9p23−24領域をカバーする複数のYACクローンを、セントレ・エツデ・ドゥ・ポリモルフィズム・ヒューメイン(the Centre d'Etude du Polymorphisme Humain:CEPH)のYACライブラリーから単離し、そのFISHプローブを前記シノミヤらの方法に順じて、Alu配列を用いたPCRにより調製した。
【0234】
このPCRは次の通り実施した。即ち、YAC DNA1μg(1μl)、配列番号:4に示す塩基配列のプライマー2484(30μM)1μl、配列番号:5に示す塩基配列のプライマーPDJ34(10μM)1μl、10×PCRバッファー(ExTaq buffer,タカラ社製)10μl、2.5mM dNTP(タカラ社製)5μl、ExTaqポリメラーゼ0.5μlおよび水81.5μlの計100μlを混合し、95℃−4分間(最初の変性処理1回)に続いて、95℃−4分、55℃−1分及び72℃−4分を1サイクルとして計30サイクル反応させ、最後に72℃−7分(1回)の処理を行なった。上記全反応は、パーキンエルマー社製GeneAmp PCRシステム9700を用いて実施した。
【0235】
9p24領域にマップされた既知遺伝子、januaキナーゼ2(JAK2, GenBank Accession No.NM-004972)を含む一つのPACクローン(Peter Marynen博士より供与を受けた)をプローブとして使用した。
【0236】
上記プローブを、ビオチン16−dUTPまたはジゴキシン11−dUTP(ベーリンガー・マインハイム社製)を用い、ニックトランスレーションによって、標識した。染色体のハイブリダゼーション・シグナルの蛍光検出は、前記シノミヤらの方法に順じて実施した。
【0237】
洗浄後、スライドは、CCD(cooled charge-coupled device)カメラ(KAF1400;フォトメトリックス:Photometrics社製)を使用し、染色像と蛍光を同時にイメージ化した。
【0238】
DNA配列のコピー数の相対的な変化を、IPラボ・スペクトラム・ソフトウェア(IP Lab Spectrum Software:シグナル・アナリティクス・コーポレーション社製:Signal Analytics Corp.)を用いて分析した。必要な領域のコピー数は分裂中期および静止期の染色体の両者において観察されたハイブリダゼーション・パターンに従い評価した。 蛍光比が1.5を超えたとき、その染色体領域が高いレベルの増幅があると判定した。
【0239】
その結果、本発明者らの先のCGH分析において9p上におけるコピー数の増加が検討した29の食道扁平上皮癌細胞株のうち5つにおいて検出されている(17.2%)。更に、高レベルの増幅が、それらのうちの一つに現れていた。このCGHの結果を基に、本発明者らは、9p23−24のアンプリコンの遺伝子地図を作り出すために、プローブとして8つのYACおよび1つのPACを用いて、KYSE150においてFISH分析を実施した。
3)結果
その結果を図1にAおよびBとして示す。
【0240】
図1中、Aは本発明遺伝子を含む9p23−24領域の遺伝子地図であり、図中、"STSs(Genes/ESTs)"は、配列認識部位(遺伝子/発現配列タグ)を、"Tel"はテロメア側を、"Cen"はセントロメア側を、また"YACs/PAC"はFISHに用いられた各プローブをそれぞれ示す。
【0241】
図1Aにおいて、染色体を示す線上には、既知の遺伝子や括弧内に示した発現配列タグ(EST, Expression Sequence Tag)で表わされる未知の転写体が示されており、これらはサザンブロッティングにおいてプローブとして使用された。
【0242】
またFISHに使用された複数のYACと一つのPACが、水平横線の黒と中抜き横線によってそれぞれ染色体を示す線の下に記述されている。横線内の丸印は、それぞれYACまたはPAC上のマーカーの定着点を指し示している。尚、この図は模式的に示したものであり、YACおよびPACのサイズおよびマーカーの距離は実際のものを反映していない。
【0243】
図1のBは、サザンブロット分析によって特定した5つの食道扁平上皮癌細胞株(図中、KYSE70、KYSE450、KYSE890、KYSE1170およびKYSE150と表示する)の各々における9p23アンプリコンを模式的に示す図である。図中、重複の最も小さい領域(SRO)は、サザンブロット分析の結果と共にFISHによって特定された。
図中の記号は次のものを示す。
【0244】
図2は、上記一つの食道扁平上皮癌細胞KYSE150におけるFISH分析の典型的な結果を示す図面代用写真である。
【0245】
該図は、上からPACPJ2B、YAC799D2およびYAC830E1クローンを用いてFISH法を行なって得られた結果を示しており、各写真中の蛍光の数がDNAコピー数を表わしている。尚、写真に示される略号PJ2B、799D2および830E1は、図1のAに示されるそれと同じものを示す。
【0246】
該図2より、YAC799D2は、2つのマーカー染色体上に均一領域(HSRs: Homogeneouslyh Staining Regions)として強度のシグナルを産生することが明らかであり、これは高度の増幅がYAC799D2の含まれる領域で生じていることを示している。尚、図には示していないが、同様にして行なった807B4の場合も、同じ結果が得られている。
【0247】
上記YAC799D2の両側に存在するYAC953A7、871F1、853F4および933F6(図1のA参照)でのFISHシグナルの数は、4から9に及んでいたが、これらはYAC799D2や807B4と比べるとはるかに少ないものであった。またPAC PJ2BおよびYAC830E1のシグナル数はわずか2から3であった。
【0248】
9p23−24で増幅の最も小さな共通領域を特定するために、先のCGH分析において9p上においてコピー数の上昇が認められた他の4つの細胞株(KYSE70、450、890および1170)でもFISH分析を実施した。
【0249】
その結果、KYSE890および1170では、YAC799D2および807B4のハイブリダゼーションシグナルは、小さなHSRパターンとして検出された。一方、KYSE70および450では、シグナルの数が、6から9程度であった。しかし、これらの細胞株では、KYSE150において検出された増幅領域より広い領域が増幅していたため、KYSE150で決定されたアプリコンの大きさを狭めることはできなかった。
【0250】
このように、9p23−24のアンプリコンにおける所望の遺伝子は、YAC799D2および807B4によってカバーされた比較的狭い領域内にあると思われた。
2. サザンブロットおよびノーザンブロット分析ゲノム研究データーベースについてホワイトヘッド研究所から選択した9p23−24領域の8つのESTクローン((1)GYG2、(2)GLDC、(3)IMAGEクローン131865(GenBank Accession No.R24542:配列番号10)、(4)SLC1A1、(5)CSNK1G2、(6)JAK2、(7)IMAGEクローン650495(GenBank Accession No.AA219360)及び(8)IMAGEクローン30354(GenBank Accession No.R18567、上記(1)、(2)および(4)−(6)は既知遺伝子の一部であり、(3)、(7)および(8)は転写体の一部である)を、リサーチ・ジェネティクス社(Research Genetics)から購入し、サザンブロットおよびノーザンブロット分析のために、プローブとして使用した。
【0251】
腫瘍のDNAは、標準方法(文献:Sambrook, J., et al., Molecular Cloning, A Laboratory Mannual. 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)によって培養した食道扁平上皮癌細胞株から抽出した。
【0252】
サザンブロット分析のために、各細胞株または正常リンパ球から抽出し、EcoRI消化した10μgのDNAを0.8%アガロースゲルにて電気泳動にかけて、ナイロン膜(BIODYNE B,日本パル社製(Nihon Pall))に転写した。また、ノーザンブロット分析のために、各細胞株から抽出した20μgの全RNAを1.0%アガロース/0.67Mホルムアルデヒド・ゲルにて電気泳動にかけて、ナイロン膜上(Hybond-N+,アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製(Amersham Pharmacia Biotech))に転写した。
【0253】
各転写膜は、適当な条件下に[α32P]dCTP標識した各ESTプローブでハイブリダイズし、洗浄した後、前記シノミヤらの方法に順じてコダックX−OMATフィルムに対して、露光させた。
【0254】
異なったヒト正常組織における発現パターンを比較するために、12の異なる組織から抽出したRNAを用いて作成されたノーザンブロット(MTN-ヒト12レーン:クロンテック社製)を[α32P]dCTP標識したIMAGEクローン131865(GenBank accession number:R24542)でハイブリダイズした。
【0255】
サザンブロット分析は、以下の条件で行なった。
1)プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション緩衝液:変性サケ精子DNA(200mg/ml)およびヒト胎盤DNA(200mg/ml)を含むPEG/SDS溶液(7% PEG8000, 10% SDS)
2)プレハイブリダイゼーション条件:連続攪拌下に65℃で12−16時間
3)ハイブリダイゼーション条件:連続攪拌下に65℃で12−16時間
4)洗浄: 連続攪拌下に洗浄溶液1(2×SSC,0.1%SDS)にて、55℃、15分間、連続攪拌下に洗浄溶液2(0.1×SSC,0.1%SDS)にて、55℃、15分間、2×SSCにてすすぐ。
【0256】
また、ノーザンブロット分析は、以下の条件で行なった。
1)プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション緩衝液:ExpressHyb(クローンテック社)を使用
2)プレハイブリダイゼーション条件:連続攪拌下に68℃で30分間
3)ハイブリダイゼーション条件:連続攪拌下に68℃で1時間
4)洗浄:連続攪拌下に洗浄溶液1(2×SSC,0.1%SDS)にて、55℃、30分間、連続攪拌下に洗浄溶液2(0.1×SSC,0.1%SDS)にて、55℃、15分間を2回、2×SSCにてすすぐ。
【0257】
以上の結果、YAC799D2上に局在しているグリコゲニン2(GYG2: Glycogenin2)、グリシンデヒドロゲナーゼ(GLDC: Glycine dehydrogenease)およびIMAGEクローン131865(GenBank Accession No.R24542)の3つのESTプローブを用いた食道扁平上皮癌細胞株のサザンブロット分析は、CGHおよびFISH試験において9pでコピー数の増加を示した5つの細胞株全てで増幅パターンを示した。
【0258】
対照的に、領域外の遺伝子または未知の転写体に対するプローブである、溶質担体ファミリー(solute-carrier family)の一つであるSLC1A1、JAK2、カゼイン・キナーゼ1γ2(CSNK1G2)、IMAGEクローン650495(GenBank Accession No. AA219360)およびIMAGEクローン350354(GenBank Accession No. R18567)は、KYSE150において、増幅が見られないことが明らかになった(図1のB参照)。
【0259】
食道扁平上皮癌細胞株DNAと正常DNAのハイブリダゼーション・シグナルの比較に基づく、増幅の程度の大まかな評価によると、最初の3つのプローブ(GYG2, GLDC, IMEGEクローン131865)ではKYSE150においては、12倍以上の増幅が明らかとなり、他の4つの細胞株において、およそ3から6倍の増幅が確認された(図3のA参照)。
【0260】
尚、図3のAは、食道扁平上皮癌細胞株におけるGASC1の増幅を示す図である。この図は、前述の方法のようにプローブとしてIMAGEクローン131865を使用するサザンブロットにより求められた。
【0261】
該図より、健常人末梢血リンパ球由来のDNA(N)上のシグナルは、8つの食道扁平上皮癌細胞株のうち、KYSE70,150,450,890および1170より弱く、1250および1260より強く、そして110と同程度であることが判る。このことから、KYSE70,150,450,890および1170においてIMAGEクローン131865が増幅していることを示している。
【0262】
また、図3のBは、図3のAで用いたのと同じ8つの食道扁平上皮癌細胞株からの全RNAを対象にプローブとしてIMAGEクローン131865或いはコントロール・プローブ(GAPDH)でハイブリダイズしたノーザンプロット分析結果を示す図である。
【0263】
該図より、図3のAで増幅があった5つの食道扁平上皮癌細胞株(KYSE-70, KYSE-150, KYSE-450, KYSE-890, KYSE-1170)において、GASC1遺伝子が過剰発現していることが明らかである。
【0264】
更に、図4は、正常ヒト組織における本発明遺伝子の発現を調べた結果を示す図である。
【0265】
この図は、12の異なる組織から抽出されたRNAを用いて作成したノーザンプロットに対して、[α32P]dCTP標識したIMAGEクローン131865をハイブリダイズして作成された結果を示す図である。尚、ハイブリダイズ操作は図3のBと同様とした。
【0266】
3つの未知の転写体(IMAGEクローン131865, 650495, 30354)の発現レベルを分析するために実施したノーザンブロットの結果は、IMAGEクローン131865のみが、9p23−24上で増幅を示した細胞株において過剰発現を示した(図3のB参照)。
【0267】
この結果は、IMAGEクローン131865が、このアンプリコン内に存在する増幅の標的遺伝子の候補の一部であることを示しており、このため、このクローンを用いて全長の遺伝子をクローニングし、その配列を決定することとした。
【0268】
IMAGEクローン131865とハイブリダイズした複数のひと正常組織のRNAを用いたノーザンプロットは、4.5Kbの1つのシグナルの転写体が全ての組織で発現していることを示した(図4参照)。
3.cDNAライブラリーのスクリーニングとDNA配列決定
オリゴキャップ法(Maruyama,K.,et al., Gene, 138, 171-174 (1994))およびZAP−cDNAギガパックIIIゴールドクローニングキット(ZAP-cDNA Gigapack III Gold cloning Kit:ストラタジーン社製)によって、胃癌細胞株(HSC39)のRNAから2つのcDNAライブラリー構築した。
【0269】
各ライブラリーは、プローブとしてIMAGEクローン131865(その配列の一部が既知であり、その配列に対してGenBank accession No.R24542が与えられている)を用いてスクリーニングした。
【0270】
該スクリーニングにより、6つの重複しているcDNAクローンが単離され、それらのDNA配列を377ABI自動シーケンサー(PEバイオシステムズ:PE Biosystems社製)を用いて決定した。この方法によって、4235塩基の転写体を見出した。
【0271】
該転写体は、ノーザンブロット分析によって示されたものとサイズが良く対応していたので、このcDNAは、全長cDNAであると考えられた。
【0272】
核酸配列分析は、転写開始のためのコンセンサス配列(コザックのルール)が良く保存されているので転写が147番目で始まっていると考えられた。2つのAATAAポリアデニーレーション・シグナルがポリ(A)伸長によって続いた3’末端で見つかった。故に、推定された蛋白質のアミノ酸配列は、配列番号:1に示されるように1056のアミノ酸配列を含むものと同定された。
【0273】
また、GASC1のDNA配列(配列番号:2に示す)の10番目から3140番目は、KIAA0780(GenBank Accession No. AB018323)のcDNA配列の部分に対して著しい相同性を示した。
【0274】
更に、単離されたクローンの配列を確認するために、鋳型として過剰発現を示した5つの食道扁平上皮癌細胞株(KYSE-70, KYSE-150, KYSE-450, KYSE-890およびKYSE-1170)由来のRNAと 、クローン131865をスクリーニングすることによって単離したクローンから決定した配列を基に作製した下記2組のプライマーを使用する逆転写PCR(RT-PCR)分析を実施した。
【0275】
これらRT−PCRに用いたプライマーの配列は、配列番号:6から配列番号:9に示される。
【0276】
プライマーW1f: 配列番号:6
プライマーW1r: 配列番号:7
プライマーW2f: 配列番号:8
プライマーW2r: 配列番号:9
RT(逆転写)反応は、1μgのRNAをオリゴ(dT)プライマー0.5μgと混合し(全量10μl)、70℃、10分間変性させた後、5×逆転写バッファー(GIBCO社)4μl、RNaseインヒビター(TOYOBO社)1μlおよび2.5mMdNTP(TAKARA社)4μlを加え(全量19μl)、更にSuperscript II (GIBCO社)1μlを加えて、42℃で45分間インキュベートすることにより実施した。
【0277】
PCR反応は、GeneAmp PCRシステム9700(パーキン−エルマー社製)を利用して行った。該反応は、1μlのRT産物に10×ExTaqバッファー(TAKARA社)2μl、2.5mMdNTP(TAKARA社)1.0μl、10μM各プライマー0.5μlおよびExTaq(TAKARA社)0.5Uを加えて全量を20μlとして実施した。条件としては、94℃で2分間の最初の変性、引続く、94℃で30秒、58℃で30秒および72℃で30秒を1サイクルとする25サイクル、その後、72℃で7分間の伸長反応の追加とした。
【0278】
その結果、配列決定した配列が正しいことを確認できる予測されたサイズの単一のバンド産物が生み出されていた。加えて、プライマーとして上記W2fとW2rとを用いたRT−PCRにより、作成したDNAの配列238番−638番よりなるDNA断片を〔α32P〕dCTPで標識して、IMAGEクローン(R24542)を含んでいるYAC799D2をスポットしたナイロン膜(BIODYNEB, 日本パル社製(Nihon Pall))にハイブリダイズした所、シグナルが検出され、また5つの9p23−24に増幅を示す5つの腫瘍細胞株(KYSE70, KYSE150, KYSE450, KYSE890およびKYSE1170)の全てでサザンブロット上に増幅シグナルを示した。
【0279】
推定されたアミノ酸配列の分析は、遺伝子産物が、2つのPHDフィンガーと1つのPXドメインを含んでいることを示唆した(配列番号:1で示されるアミノ酸配列中、687〜749番目および806〜867番目の配列がPHDフィンガー配列であり、980〜1047番目のアミノ酸配列がPXドメインの配列である)。
【0280】
PSORTIIプログラム(文献:http://psort.nibb.ac.jp/form2.html)を用いるその細胞内局在のコンピュータ予測によって、GASC1蛋白質には、一つの典型的二連の核局在シグナルが、979−996番目のアミノ酸に検出されたことから、核に局在していることが推測された。
【0281】
上記で得られた結果から、「癌遺伝子」の候補であることを示すモチーフのPHDフィンガー・モチーフおよびPXドメインを含んでいるGASC1遺伝子は、様々な腫瘍の発生や進展に重要な役割を演じていると推定され、染色体9p23−24領域でのGASC1転写物の発現増加が、同様に食道扁平上皮癌を含む種々の型の腫瘍の発生および/または進展に関連した腫瘍関連遺伝子(癌遺伝子の候補遺伝子を含む)であることを強く示唆している。
【0282】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の1に示すFISH試験の結果を示す図であり、図中、Aは本発明遺伝子の周囲の9p23−24の遺伝子地図を、Bはサザンブロット分析によって特定した5つの食道扁平上皮癌細胞株の各々における9p23アンプリコンのサイズまたは長さを模式的に示す図である。
【図2】実施例1の1に示す食道扁平上皮癌細胞であるKYSE−150におけるFISH分析の典型的な結果を示す図面代用写真である。
【図3】実施例1の2に示す試験の結果を示す図であり、Aはサザンプロット分析により、食道扁平上皮癌細胞株におけるGASC1の増幅を示す図、Bは種々の食道扁平上皮癌細胞株からのRNAを用いたノーザンブロット分析の結果であって、GASC1の過剰発現を示す図である。
【図4】実施例1の2に示す試験の結果を示す図であり、様々な正常ヒト組織における本発明遺伝子の発現パターンを調べた結果を示す図面代用写真である。

Claims (11)

  1. 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドを含む遺伝子:
    (a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    )上記(a)のポリヌクレオチドに対する相補鎖であるポリヌクレオチド。
  2. 配列番号:2で示される塩基配列である請求項1に記載の遺伝子。
  3. 配列番号:1で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである請求項1に記載の遺伝子。
  4. 配列番号:1で示されるアミノ酸配列を有する遺伝子発現産物。
  5. 請求項1または2に記載の遺伝子を有する組換え体発現ベクター。
  6. 請求項5に記載の組換え体発現ベクターを保有する宿主細胞。
  7. 癌診断剤であって、
    診断する癌が、食道扁平上皮癌であり、
    配列番号10で示される塩基配列、及び配列番号3で示される塩基配列238番から639番よりなる塩基配列からなる群より選択される少なくとも1種以上を有するプローブを有効成分として含有する癌診断剤。
  8. 癌診断用キットであって、
    診断する癌が、食道扁平上皮癌であり、
    配列番号10で示される塩基配列、及び配列番号3で示される塩基配列238番から639番よりなる塩基配列からなる群より選択される少なくとも1種以上を有するプローブを有効成分として含有する癌診断用キット。
  9. 癌診断剤であって、
    診断する癌が、食道扁平上皮癌であり、
    配列番号6で示される塩基配列と配列番号7で示される塩基配列のセット、又は配列番号8で示される塩基配列と配列番号9で示される塩基配列のセットからなるプライマーを含む
    癌診断剤。
  10. 癌診断用キットであって、
    診断する癌が、食道扁平上皮癌であり、
    配列番号6で示される塩基配列と配列番号7で示される塩基配列のセット、又は配列番号8で示される塩基配列と配列番号9で示される塩基配列のセットからなるプライマーを含む
    癌診断用キット。
  11. 請求項1に記載の遺伝子の発現産物に対する抗体。
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