JP4770200B2 - クメンハイドロパーオキサイドの製造方法 - Google Patents

クメンハイドロパーオキサイドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クメンハイドロパーオキサイドの製造方法に関するものであり、詳しくは、クメンの液相酸化によりクメンハイドロパーオキサイドを製造する際に、酸素濃度の高い酸素含有ガスを反応器に供給して反応液量当たりのクメンハイドロパーオキサイド生産量を大幅に高めたクメンハイドロパーオキサイドの製造方法に関する。
クメンハイドロパーオキサイド(以下「CHP」と略記することがある)は、クメン法によるフェノールの製造方法における前駆体であり、クメンの液相酸化により製造されている。
クメンの液相酸化によるCHPの製造方法には、触媒の不存在下で行う方法(例えば特許文献1参照)と触媒の存在下で行う方法(例えば特許文献2参照)とがあり、何れの場合にも、反応器に供給する酸化剤として酸素含有ガスを使用する。酸素含有ガスとしては、反応器に供給する酸素含有ガスの酸素濃度が高いと爆発などの危険性があるという安全性の面およびコスト的な面から、通常、工業的には空気(酸素濃度21mol%程度)が使用されている。また、酸素を使用する場合であっても、これを希釈して酸素濃度の低い酸素含有ガス(空気と同程度またはそれ以下の酸素濃度)として反応器に供給しているのが現状である。
特許第3107409号公報 特許第3061394号公報
上記のCHPの製造方法において、その反応条件(温度、滞留時間、圧力)の設定(例えば特許文献1参照)や、pH条件の設定(例えば特許文献2参照)等により、CHPの収率を高める技術についての検討がなされているが、より一層の改良が望まれている。特に、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量を高めて反応器の小型化を図ることは工業生産において強く望まれるところである。
反応器中の反応液量当たりのCHP生産量を高める方法としては、反応器に供給する酸化剤として、空気より酸素濃度の高い酸素含有ガスを使用する方法も考えられるが、上述の様に爆発の危険性およびコストの面から、現実的ではないと考えられていた。
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、クメンの液相酸化によりCHPを製造する方法において、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量を高め、必要生産量を得るための反応器の小型化、ないしは既存の反応器における生産量の増大を図る方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、酸素含有ガスの供給手段に工夫を加えることにより、空気よりも酸素濃度が高い酸素含有ガスを供給しても爆発の危険性を十分に回避できること、反応器に空気よりも酸素濃度の高い酸素含有ガスを供給することにより反応器中の反応液量当たりのCHP生産量が大幅に向上すること、空気よりも酸素濃度の高い酸素含有ガスを使用することによるコストアップは、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量の大幅な向上で十分に相殺され、むしろ収率面における効果が勝ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の第1の要旨は、反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器中の反応液量当たりのクメンハイドロパーオキサイド生産量を22kg/m/hr以上とすることを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法に存する。
本発明の第2の要旨は、反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器の排ガス中の酸素濃度を2mol%以上10mol%以下とすることを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法に存する。
本発明の第3の要旨は、反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ孔ピッチが孔径の2倍以上のスパージャーを使用して反応器内への酸素含有ガスの供給を行うことを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法に存する。
本発明の第4の要旨は、クメンハイドロパーオキサイドを酸分解してフェノールを製造する方法において、上記第1〜3の要旨の何れかに記載の製造方法によって得られたクメンハイドロパーオキサイドを使用することを特徴とするフェノールの製造方法に存する。
本発明のCHPの製造方法によれば、クメンの液相酸化によりCHPを製造する方法において、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量を高め、必要生産量を得るための反応器の小型化、ないしは既存の反応器における生産量の増大を図ることが出来る。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。本発明の第1〜3の要旨に係わるCHPの製造方法は、反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法である。そして、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とする。すなわち、本発明において、反応器の液相中に供給される全ガス量の酸素濃度は空気の酸素濃度よりも高い。以下に、本発明の第1〜3の要旨において共通の説明を行う。
クメンの液相酸化の反応開始剤は、特に制限されないが、通常CHPが使用される。
液相酸化反応は、直列に配置された複数基の反応器を使用して多段階に行うのが好ましい。本発明において、反応器の数は、特に制限されないが、好ましくは2〜5基である。クメンは好ましくは第1反応器に連続的に供給され、第1反応器の反応液は第2反応器に連続的に供給される。以下同様に、第n反応器の反応液は第(n+1)反応器に連続的に供給される。酸素含有ガスは、好ましくは各反応器に連続的に供給される。反応器は、気泡塔タイプが一般的であるが、撹拌槽や撹拌気泡塔タイプであってもよい。
上記の液相酸化工程において、各反応器の温度は、通常50〜120℃であり、各反応器毎に最適温度を採用することも出来る。各反応器の圧力は、通常0〜1MPaG(ゲージ圧)、反応器の全滞留時間は、通常3〜20時間である。上記の酸化反応により、CHPの他、ジメチルフェニルカルビノール(DMPC)、アセトフェノン(AP)等が副生する。最終反応器から抜出される反応液中のCHP及び未反応クメンの濃度は、通常、それぞれ20〜50重量%及び50〜80重量%である。
上記の液相酸化反応は、触媒の不存在下で行っても触媒の存在下で行ってもよい。触媒を使用して酸化反応を行う場合、その種類は特に制限されず、通常アルカリ性物質が使用され。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属などの炭酸塩、水酸化物などの化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用しても、2種以上併合して使用してもよい。アルカリ性物質の使用形態は、特に制限されず、通常、水溶液の形態である。これら触媒(金属換算)の添加量は、クメン1トン当たり、通常10g当量以下、好ましくは0.1〜6g当量がよい。
本発明の製造方法において、反応器(第1反応器など)に原料のクメンと共に、全ガス量中の酸素濃度が22mol%以上50mol%以下となる様に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスの供給は、スパージャーを使用して行うのが好ましい。スパージャーとは、複数の孔を有する配管であり、酸素含有ガスを反応器中に均一に分散させ供給するために設置する装置である。スパージャーの形状は、特に制限されず、通常、配管の配置をリング状、格子状、放射状またはそれらを組合せた形状が使用される。
本発明において、反応器内に供給される全ガス量中の酸素濃度が22mol%以上50mol%以下となっているのであれば、酸素含有ガスの供給方法について制限が無い。スパージャーは、2種以上を組合せて使用してもよい。すなわち、1種のスパージャーを使用して酸素濃度が22mol%以上50mol%以下の酸素含有ガスを供給する方法以外に、2種以上のスパージャーで異なる酸素濃度の酸素含有ガス又は酸素非含有ガスを供給し、供給された全ガス量中の酸素濃度が22mol%以上50mol%以下となる様に供給する方法も採用できる。また、1種のスパージャーを使用する場合でも、スパージャーに供給するガス管を複数使用し、反応器内で酸素濃度が22mol%以上50mol%以下となる様に一旦ガスを混合した後、スパージャーの孔より噴出させてもよい。
反応器内に供給される全ガス量中の酸素濃度が22mol%未満では、本発明によるCHP生産量の向上効果を得ることが出来ない。一方、反応器内に供給される全ガス量中の酸素濃度が50mol%を超えると、排ガスの流量低下が著しくなる傾向にある。例えば、反応温度のわずかな低下などの反応条件変動時、排ガスの酸素濃度の上昇による爆鳴気形成のリスクが高くなり、また、取扱い上の危険を伴うため好ましくない。安全性およびCHP生産量の観点から、反応器内に供給される全ガス量中の酸素濃度の下限値は、好ましくは24mol%、更に好ましくは26mol%であり、その上限値は、好ましくは45mol%、更に好ましくは40mol%である。
高い酸素濃度で炭化水素を酸化すると、反応系内が爆発ガス組成となり爆発の危険を伴うおそれがある。この爆発ガス組成は、特に、反応系内に大きな酸素の気泡が存在する場合に形成され易い。従って、酸素含有ガスの供給流量にもよるが、通常、スパージャーの孔径を比較的小さく、また孔ピッチ(スパージャーの孔の中心間距離)を比較的大きくし(孔間隔をあけて)、系内に大きな酸素ガス気泡を形成させない様にすることが好ましい。なお、反応器内に供給された酸素は、反応場に入った瞬間から消費されることから、ある程度の時間を反応場で過ごしたガスには、酸素は少なくなり、安全性は高くなる。
上記のスパージャーは、孔ピッチが孔径の2倍以上、好ましくは4倍以上のスパージャーを使用することが好ましい。この様なスパージャーを使用することにより、酸素濃度の高い酸素含有ガスを反応器に供給する場合において、反応系が爆発範囲のガス組成となることを防止して、安全性を高めることが出来る。孔ピッチの上限は、特に制限されないが、孔径の15倍以下が好ましい。孔径は、通常1.0mm以上、好ましくは2.0mm以上、通常8.0mm以下、好ましくは6.0mm以下である。
反応器に供給される反応液量当たりの全ガス流量は、通常8〜30Nl/hr/lの範囲にある。
本発明において反応器に供給する酸素含有ガス(酸素富化ガス)を製造する方法としては、特に制限されず、例えば、2以上のガスを混合して酸素富化ガスを製造する方法、2以上のガスを別々に反応器に供給して内部で混合する方法、圧力変動吸着(PSA式)、酸素富化膜式などにより酸素含有ガスを化学的・物理的に酸素富化する方法などが挙げられる。なお、上述の様に、2以上のガスの混合方法は、反応器外で予め混合しても、反応器内でスパージャーから放出する前に混合してもよいが、前者の態様が好ましい。
反応器に供給する酸素含有ガスは、2以上のガスを混合して成る混合ガスであることが好ましい。混合するガスとしては、例えば、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水蒸気などの反応に不活性なガス、空気、酸素と等の反応性のガス、これらの混合されたガス等が挙げられる。混合するガスの組合せとしては、好ましくは空気と酸素濃度22mol%を超える酸素含有ガスとの組合せ、更に好ましくは空気と酸素とを混合して成る酸素富化空気が好適に反応に使用される。
反応器内へ供給する酸素含有ガスがコンプレッサーで圧縮した空気と酸素とを混合して成る酸素富化空気である場合、長期間の連続運転の間に、外気温・湿度などの変動によりガス密度などが変化し、反応器にフィードされる酸素富化ガス中の酸素の絶対量が変動し、その結果生成するCHPの量が変動し、安定した生産が維持できなくなる虞がある。そのため、酸素富化ガスの酸素濃度を分析し、その分析値の変動を小さくする様に、酸素富化ガスの製造に使用される空気、酸素などの供給量を制御することが好ましい。空気、酸素などの供給量を制御することにより、酸素富化ガス中の酸素濃度を安定化することが出来、外気温や湿度などの外的要因によるCHPの生成量の変動を小さくすることが出来る。
空気、酸素などの供給量の制御方法としては、特に限定されず、一般的に使用されているガスの流量制御方法を使用することが出来、例えば、コンプレッサーを使用して供給を行っている場合は、その供給電力を変化させることにより供給量を変化させる方法、ガス供給ラインの途中にバルブを設置し、そのバルブを手動もしくは自動的に開閉させる方法などが挙げられる。
バルブを自動的に開閉させる方法としては、特に限定されず、例えば、反応器にフィードされる前の酸素富化ガス中の酸素濃度をガスクロマトグラフィー、酸素センサー等の装置を使用して測定し、得られた濃度値をコンピューター等により解析・制御を行い、混合前の空気、酸素のフィードラインに設置されているバルブを即時的・自動的に遠隔操作で開閉する方法が挙げられる。
次に、本発明の第1の要旨の特徴について説明する。第1の要旨の特徴は、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器中の反応液量当たりのクメンハイドロパーオキサイド生産量を22kg/m/hr以上とする点にある。
液相酸化反応および反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下にする方法は、本発明の第1〜3の要旨における共通の説明で述べた通りである。ピッチが孔径の2倍以上、好ましくは4倍以上の1つ又は複数のスパージャーを使用して液相中にガスを供給することが好ましい。
本発明の第1の要旨において、酸素含有ガスの供給量は、使用する酸素含有ガスの酸素濃度などにもよるが、反応器の排ガスの酸素濃度に基づいて制御することが好ましい。なお、反応器の排ガスとは、反応器に供給されたガスのうち、反応系で消費されることなく反応系から排出されたガスを意味する。例えば、反応器気相部のガス又は反応器から排出されるガスを指す。
反応器の排ガス中の酸素濃度の下限は、通常2mol%、好ましくは3mol%であり、上限は、通常10mol%、好ましくは8mol%であり、この濃度範囲に維持することにより、安全性および経済性の面で効果がある。反応器の排ガス中の酸素濃度が2mol%未満では反応速度が著しく低下する傾向があり、10mol%を超えると爆鳴気を形成するリスクが高くなる傾向がある。
反応器の排ガス中の酸素濃度の制御方法としては、特に限定されず、反応器へ供給される酸素含有ガスの供給量を調節する方法、反応器の温度を調節して消費酸素量を変化させる方法などが挙げられる。特に、反応器の温度を調節する方法は、反応器の排ガス中の酸素濃度に対する即応性の制御が可能であり、より安全性の高い生産方法を確立できるため好ましい。
なお、本出願人は、反応器内または反応器出口の反応物を中赤外線スペクトルで組成分析し、この結果に基いて運転条件の制御を行う方法(例えば特開2003−340270号公報参照)や、クメンの酸化工程の近赤外分光スペクトルを連続的に測定し、得られた分光スペクトルから物性を解析し、解析された物性に基いて酸化工程の反応条件を制御する方法(例えば特開2000−53641号公報参照)を先に提案している。本発明においても、これらの方法を採用して反応条件や運転条件の制御を行うことが収率の向上または安全性の向上の面で好ましい。この場合、特に生成物のCHP濃度をモニターし、CHP濃度が一定となる様に温度または滞留時間を調節することが好ましい。
本発明の第1の要旨において、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量は22kg/m/hr以上、好ましくは23kg/m/hr以上である。液相反応の反応器は通常気相部と液相部とを有する。反応器中の反応液量当たりのCHP生産量とは、液相部の単位体積当たり、単位時間当たりのCHP生産量を意味する。
次に、本発明の第2の要旨の特徴について説明する。第2の要旨の特徴は、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器の排ガス中の酸素濃度を2mol%以上10mol%以下にする点にある。
液相酸化反応および反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下にする方法は、本発明の第1〜3の要旨における共通の説明で述べた通りである。ピッチが孔径の2倍以上、好ましくは4倍以上の1つ又は複数のスパージャーを使用して液相中にガスを供給することが好ましい。
本発明の第2の要旨において、反応器の排ガス中の酸素濃度の下限は、2mol%、好ましくは3mol%であり、上限は、10mol%、好ましくは8mol%であり、この濃度範囲に維持することにより、安全性および経済性の面で効果がある。反応器の排ガス中の酸素濃度が2mol%未満では反応速度が著しく低下する傾向があり、10mol%を超えると爆鳴気を形成するリスクが高くなる傾向がある。
本発明の第2の要旨において、第1の要旨で説明した様に、運転条件の制御や酸化工程の反応条件を制御を行うことが収率の向上または安全性の向上の面で好ましい。この場合、特に生成物のCHP濃度をモニターし、CHP濃度が一定となる様に温度または滞留時間を調節することが好ましい。
次に、本発明の第3の要旨の特徴について説明する。第3の要旨の特徴は、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ孔ピッチが孔径の2倍以上のスパージャーを使用して反応器内への酸素含有ガスの供給を行う点にある。
液相酸化反応の方法は、本発明の第1〜3の要旨における共通の説明で述べた通りである。第3の要旨の発明においては、ピッチが孔径の2倍以上、好ましくは4倍以上の1つ又は複数のスパージャーを使用し、反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下にする。
本発明の第3の要旨においては、第1の要旨の発明で説明した様に、運転条件の制御や酸化工程の反応条件を制御を行うことが収率の向上または安全性の向上の面で好ましい。この場合、特に生成物のCHP濃度をモニターし、CHP濃度が一定となる様に温度または滞留時間を調節することが好ましい。
次に、本発明の第4の要旨であるフェノールの製造方法について説明する。本発明の第4の要旨のフェノールの製造方法は、CHPを酸分解してフェノールを製造する方法において、上記第1〜3の要旨の何れかに記載の製造方法によって得られたCHPを使用することを特徴とする。
本発明の第1〜3の要旨に記載の製造方法で得られたCHPは、通常、硫酸などの酸触媒により分解(以下、「酸分解」と称することがある)され、アセトンとフェノールとを与える。アセトンとフェノールとは各々独立に、ビスフェノールAの製造原料とすることが出来る。
CHPを酸分解する方法は、特に限定されず、公知の方法またはその組合せを採用することが出来る。例えば、本発明のCHPの製造方法により得られたCHP混合物に対し、CHP濃度が70〜90質量%となるように濃縮した後、酸分解原料混合物に対して硫酸を100〜2000質量ppm存在させ、CHPを酸分解する方法が挙げられる。酸分解処理の後、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物の水溶液で中和し、油水分離し、蒸留などの操作により精製してフェノールとアセトンとをそれぞれ得る。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:
直径100mm、高さ200mm、容量1Lのオートクレーブ型反応器3基を直列に配置し、CHPの製造を行った。各反応器内には、孔径2mm、孔ピッチ10mm、孔数25個のリング状スパージャーを装備した。
第1反応器に、100ml/hrの供給量で、クメン:99.0重量%、CHP:1.0重量%から成る組成の原料を連続的に供給した。そして、空気4.96Nl/hrと酸素0.64Nl/hrとを混合器で混合して調製した酸素濃度30mol%の酸素含有ガスを使用し、スパージャーより各反応器内に連続的に供給した。
各反応器の反応圧力を0.4MPa(ゲージ圧)、滞留時間を4hr(全滞留時間12hr)に制御した。各反応器の排ガスの酸素濃度が5mol%となる様に制御した結果、反応温度は、第1反応器105.5℃、第2反応器103.0℃、第3反応器102.0℃であった。
反応器出口の生成物組成を中赤外線スペクトルで連続的にモニターしながら、各反応器の反応液量が400ml(全反応液量1200ml)となる様に生成物を90g/hrで連続的に抜出した。
その結果、反応器出口の生成物組成は表1に示す通りであり、表1に示す酸化効率および反応器中の反応液量当たりのCHP生産量でCHPの製造を行うことが出来た。なお、酸化効率は下記式で算出される。また、排ガス流量、排ガスへのクメンのリーク量および排ガスへの酸素のリーク量は表1に示す。上記条件で2週間連続して安定運転を行うことが出来た。
Figure 0004770200
比較例1:
実施例1において、酸素含有ガスとして空気(酸素濃度21mol%)を使用し、総酸素供給量が実施例1と同量となる様に8.0Nl/hrの流量で供給し、各反応器の排ガスの酸素濃度が5mol%となる様に、反応温度を第1反応器104.5℃、第2反応器102.0℃、第3反応器101.5℃に調節し、生成物抜出量を88g/hrとしたこと以外は、実施例1と同様にしてCHPの製造を行った。
この場合の生成物組成、酸化効率、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量、排ガス流量、排ガスへのクメンのリーク量および排ガスへの酸素のリーク量を表1に示す。上記条件で2週間連続して安定運転を行うことが出来たが、実施例1に比べて液滞留時間の減少および排ガスへの酸素のリーク量の増加に伴い、CHPの製造効率は劣るものであった。
比較例2:
実施例1において、酸素含有ガスとして総酸素供給量が実施例1と同量となる様に、空気1.42Nl/hrと酸素1.38Nl/hrとを混合器で混合した酸素濃度60mol%の酸素含有ガスを供給し、各反応器の排ガスの酸素濃度が5mol%となる様に、反応温度を第1反応器106.0℃、第2反応器103.5℃、第3反応器103.0℃に調節し、生成物抜出量を92g/hrとしたこと以外は、実施例1と同様にしてCHPの製造を行った。
生成物組成、酸化効率、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量、排ガス流量、排ガスへのクメンのリーク量および排ガスへの酸素のリーク量を表1に示す。実施例1に比べて液滞留時間の増加および排ガスへの酸素リーク量の減少に伴いCHPの製造効率は向上した。しかしながら、運転開始から2日目に、第1反応器の温度が約1℃低下したことに伴い、排ガス酸素濃度が10%を超えたので運転を停止した。
Figure 0004770200
以上の結果から、本発明の製造方法によれば、反応器中の反応液量当たりのCHP生産量を高めた上で、安定なCHPの製造を行うことが出来る。特に、酸素濃度22mol%以上50mol%以下という、反応器に供給する全ガス量中の酸素濃度を空気よりも高くすることにより、液滞留時間の増加や排ガスへの酸素リーク量が減少し、酸化剤として空気を使用する場合に比べて9%以上もCHP生産量を高めることが出来る。
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読みとれる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、その様な変更を伴う場合も本発明の技術的範囲であると理解されなければならない。なお、本出願は、2004年3月4日付で出願された日本特許出願(特願2004−60904号)に基づいており、その全体が引用により援用される。

Claims (13)

  1. 反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器中の反応液量当たりのクメンハイドロパーオキサイド生産量を22kg/m/hr以上とすることを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  2. 反応器の液相中に供給されるガスが2以上のガスを混合して成る混合ガスである請求項1に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  3. 反応器の液相中に供給されるガスが空気と酸素とを混合して成る酸素富化空気である請求項1又は2に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  4. 反応器の排ガスの酸素濃度が2mol%以上10mol%以下である請求項1〜3の何れかに記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  5. 孔ピッチが孔径の2倍以上のスパージャーを使用して反応器内への酸素含有ガスの供給を行う請求項1〜4の何れかに記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  6. 反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ上記反応器の排ガス中の酸素濃度を2mol%以上10mol%以下とすることを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  7. 反応器の液相中に供給されるガスが2以上のガスを混合して成る混合ガスである請求項6に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  8. 反応器の液相中に供給されるガスが空気と酸素とを混合して成る酸素富化空気である請求項6又は7に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  9. 孔ピッチが孔径の2倍以上のスパージャーを使用して反応器内への酸素含有ガスの供給を行う請求項6〜8の何れかに記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  10. 反応器内でクメンを酸素含有ガス存在下に液相酸化して連続的にクメンハイドロパーオキサイドを製造する方法において、上記反応器の液相中に供給される全ガス量中の酸素濃度を22mol%以上50mol%以下とし、且つ孔ピッチが孔径の2倍以上のスパージャーを使用して反応器内への酸素含有ガスの供給を行うことを特徴とするクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  11. 反応器の液相中に供給されるガスが2以上のガスを混合して成る混合ガスである請求項10に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  12. 反応器の液相中に供給されるガスが空気と酸素とを混合して成る酸素富化空気である請求項10又は11に記載のクメンハイドロパーオキサイドの製造方法。
  13. クメンハイドロパーオキサイドを酸分解してフェノールを製造する方法において、請求項1、6、10の何れかに記載の製造方法によって得られたクメンハイドロパーオキサイドを使用することを特徴とするフェノールの製造方法。
JP2005058659A 2004-03-04 2005-03-03 クメンハイドロパーオキサイドの製造方法 Active JP4770200B2 (ja)

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