JP4770105B2 - n型ダイヤモンド半導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオード、LED、トランジスタ、電子放出素子などの電子デバイスに使用するn型ダイヤモンド半導体に関し、室温から高温に至るまでの広い温度範囲で、キャリア濃度や抵抗率の変化が少ないn型ダイヤモンド半導体に関するものである。より詳細には、通常のドーピングで得られる深い不純物準位を持つn型ダイヤモンド半導体と比較して、室温から高温までの広い温度範囲で、キャリア濃度や抵抗率の変化が少ないn型ダイヤモンド半導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド半導体は高温下、放射線下などの過酷な環境下で安定に動作するデバイスとして、あるいは高速、高出力での動作にも耐え得るデバイスとしてその応用が注目されている。ダイヤモンド半導体が高温下でも動作可能な理由として、バンドギャップが約5.5eVと大きいことが挙げられる。この値は、現在広く使用されているシリコン(約1.1eV)やガリウム砒素(約1.4eV)に比べて非常に大きい。このバンドギャップの広さゆえに、半導体のキャリアが制御されなくなる温度範囲(真性領域)が1400℃以下には存在しない。
【0003】
不純物のないダイヤモンドは絶縁体であるが、結晶中に不純物をドーピングすることにより、p型半導体やn型半導体とすることができる。例えば、ホウ素をドーピングすれば、p型半導体となり、窒素やリンやイオウをドーピングすれば、n型半導体となる。
【0004】
しかし、前記不純物をダイヤモンドにドーピングしても、これら不純物の不純物準位は深く、電子や正孔を伝導帯、価電子帯に励起するには、大きなエネルギーが必要である。このため、励起されたキャリアの濃度は温度によって大きく異なり、また、キャリアの飽和領域は、非常に高い温度領域となる。例えば、リンをドーピングしたn型ダイヤモンド半導体の活性化エネルギーは約0.6eVであり、300K(室温)から800Kの温度範囲で、キャリア濃度の変化は4桁以上あり、飽和領域は800K以上の温度である。つまり、室温から高温までの温度範囲では、周囲の温度によってデバイスの特性が大きく変化するので、ダイヤモンド半導体デバイスが、高温下でも使用可能であるという長所を活かすことができなかった。
【0005】
このようなキャリア濃度の温度依存性を抑制し、室温から高温までの温度範囲でキャリア濃度の変化が少ないダイヤモンド半導体を得るための方法として、不純物を多量にドーピングして不純物準位を縮退させる方法がある。しかし、不純物を多量にドーピングすると、キャリアが増えすぎてしまう。その結果、金属と同様の電気伝導性を示すようになり、半導体特性が失われてしまう。
【0006】
そこで、例えば、特開平4−280622号公報に開示されているように、多量に不純物がドーピングされた数nmの厚みのドープ層と、不純物が実質的にドープされていない数十〜数百nmの厚みのノンドープ層とを交互に積層し、多層構造としたダイヤモンド半導体が提案されている。
【0007】
このように、非常に厚みの薄いドープ層を薄いノンドープ層で挟んだ構造では、不純物濃度の深さ方向プロファイルがδ(デルタ)関数的に変化しているので、ドープ層で発生するキャリアはノンドープ層へ拡散する。その結果、平均キャリア濃度は半導体特性が得られる程度に減少し、且つキャリアの供給源は、キャリア濃度の温度依存性がほとんどないドープ層であるので、全体として平均キャリア濃度の温度依存性がほとんどないダイヤモンド半導体となる。
【0008】
上記構造によって、動作温度領域で半導体特性を示しつつ、キャリア濃度の温度依存性がほとんどないダイヤモンド半導体を得ようとすれば、不純物が高濃度にドープされたドープ層が必要となる。高濃度のドープ層は、p型ダイヤモンド半導体であれば、ホウ素はダイヤモンドの結晶性を保ったまま高濃度にドープすることが可能であるので、比較的簡単に得ることができる。しかし、n型ダイヤモンド半導体の場合は、単独の不純物を、良好な結晶性を保ったまま縮退するまで高濃度に安定してドープすることは容易ではない。このために、これまで室温から高温までの動作温度領域で半導体特性を示しつつ、キャリア濃度の温度依存性がほとんどないn型ダイヤモンド半導体を得ることは困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−280622号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、室温から高温に至る広い温度範囲で、半導体特性を示しつつ、キャリア濃度の温度依存性がほとんどない、半導体デバイスに利用可能なn型ダイヤモンド半導体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のn型ダイヤモンド半導体は、ダイヤモンド半導体材料から成り、(a)実質的に不純物が添加されていない第1のノンドープ層と、(b)前記第1のノンドープ層の一方の表面に形成されたn型半導体となるように2種類以上の不純物が添加されたドープ層と、(c)前記ドープ層の表面に形成された実質的に不純物が添加されていない第2のノンドープ層とを備え、前記ドープ層に添加する不純物は、リチウム(Li)と窒素(N)であって、リチウム原子濃度(C Li )と窒素原子濃度(C )とが、C Li ≦10C の範囲であり、且つC Li ≧10 19 cm −3 であることを特徴とする。
【0012】
このダイヤモンド半導体は、ノンドープ層とドープ層とが交互に積層されるとともに、両端の層をノンドープ層として構成することが可能である。
【0016】
記リチウム原子が、ドープ層のダイヤモンドを構成する炭素原子の格子間位置に、前記窒素原子が前記炭素原子の置換位置に、それぞれ入っており、かつリチウム原子と窒素原子は互いに隣接している構造であるが望ましく、前記リチウム原子と窒素原子の中心間距離が、0.145nm以上、0.155nm以下であることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のn型ダイヤモンド半導体は、ダイヤモンド半導体材料から成り、n型半導体を形成する不純物を2種類以上含んだ非常に薄いドープ層を、実質的に不純物が添加されていない薄いノンドープダイヤモンド層で挟んだ構造である。あるいは、非常に薄いドープ層と薄いノンドープ層が交互に積層された多層構造で、両端をノンドープ層とした構造である。このような、いわゆるδ(デルタ)ドープ構造とすることによって、全体として半導体特性が得られる程度にキャリア濃度、すなわち電子濃度を調節できる。且つ、全体として、電子濃度の温度依存性がほとんどないn型ダイヤモンド半導体を得ることができる。
【0019】
このとき、ドープ層の厚さをナノメーターオーダーと非常に薄くすると、ドープ層で発生したキャリア(電子)に対するノンドープ層に拡散したキャリアの割合が多くなり、構造全体でより均一なキャリア濃度のn型ダイヤモンド半導体を得ることができる。
【0020】
前記ドープ層をn型の金属的な電気伝導性とするために、n型特性を引き出すための1種類の不純物をドーピングするとともに、それをダイヤモンドの結晶性を保ったまま縮退する程度の濃度まで安定してドーピングするために、さらに別の1種類以上の不純物をドーピングする。
【0021】
ここで、ドープ層の厚さをd、ノンドープ層の厚さをD、ドープ層の電子濃度をnとすると、平均の電子濃度nは、n=n*d/(d+D)となる。
【0022】
ドープ層の形状は、比較的簡単な2次元的な広がりを持つ薄膜とすることが容易であるが、1次元的な線状膜であっても、0次元的な点状膜であっても、ノンドープ(層)で囲まれている構造であれば、得られる効果は変わらない。
【0023】
また、2次元的な広がりを持つ薄膜のドープ層とノンドープ層を交互に積層する場合、ドープ層の厚みは、50nm未満、ノンドープ層の厚みは、500nm未満が好ましい。ドープ層の厚みが50nm以上になると、ドープ層中心付近のキャリアは拡散しにくくなり、半導体特性が得られなくなる。ノンドープ層の厚みが500nm以上になると、キャリアの拡散がノンドープ層の中心付近に届かなくなり、キャリア濃度の深さ方向プロファイルがノンドープ層中心付近で途切れてしまうので、全体として半導体特性が得られなくなる。また、ノンドープ層の不純物濃度は、少ないほどよいが、ドープ層からのキャリアの拡散が起こりやすいように、1017cm−3以下であることが望ましい。
【0024】
本発明のn型ダイヤモンド半導体のドープ層へは、窒素(N)、リン(P)、イオウ(S)、砒素(As)、セレン(Se)、塩素(Cl)からなるA群より選ばれる1種類以上の原子と、水素(H)、ホウ素(B)、リチウム(Li)、アルミニウム(Al)からなるB群より選ばれる1種類以上の原子と、をドープすることが好ましい。こうすれば、n型半導体特性を実現する不純物を、不純物準位が縮退する程度の多量の不純物をドーピングすることができる。
【0025】
また、添加する不純物の内、少なくとも1種類の原子の不純物濃度が、1019cm−3以上であることが好ましい。この程度多量にドープすることによって、ドープ層は、キャリア濃度の温度依存性があまりなく、周囲の温度変化に対して安定したキャリアの供給源となりやすい。不純物濃度は、1020cm−3以上であれば、更に好ましい。
【0026】
前記不純物の好適な組合せとして、▲1▼窒素とホウ素、▲2▼イオウとホウ素、▲3▼リチウムと窒素の3種類がある。窒素とホウ素の場合、窒素原子濃度(C)とホウ素原子濃度(C)は、C<C≦100Cの範囲であり、Cが1019cm−3以上であることが好ましい。イオウとホウ素の場合、イオウ原子濃度(C)とホウ素原子濃度(C)は、0.5C<C≦100Cの範囲であり、Cが1019cm−3以上であることが好ましい。リチウムと窒素の場合は、リチウム原子濃度(CLi)と窒素原子濃度(C)は、CLi≦10Cの範囲であり、CLiが1019cm−3以上であることが好ましい。更に好ましくは、前記、C、C、CLiが1020cm−3以上である。
【0027】
このような濃度範囲にすることによって、ドープ層は、キャリア濃度の温度依存性がほとんどなく、より安定したキャリア供給源とすることができる。しかし、窒素とホウ素の場合、C<0.01Cとホウ素の濃度が極端に少なくなると、Cを1019cm−3以上とすることが困難になる。また、イオウとホウ素の場合も、C<0.01Cとホウ素の濃度が極端に少なくなると、Cを1019cm−3以上にすることが困難になる。
【0028】
さらに、リチウムと窒素の場合は、リチウムは、ダイヤモンドを構成する炭素原子の格子間位置に入る。他の原子は、炭素原子の置換位置に入る。そして、リチウム原子と窒素原子はある程度近くに存在して、リチウムを固定する働きをする。しかし、C<0.1CLiと窒素の濃度が低い場合には、窒素原子が少なくなり、リチウム原子を固定する能力が少なくなるので、ドープ層のキャリア濃度が不安定になる。
【0029】
前記リチウム原子の格子間ドーピングと窒素原子の置換ドーピングにおいて、第一原理計算により、形成エネルギーを計算することで、最適構造を予測した。その結果、リチウム原子と窒素原子は近接している方が、形成エネルギーが低くなり、近接した構造が最も安定で、最適構造であることが判った。この場合、リチウム原子と窒素原子の中心距離は、0.1494nmで、活性化エネルギーは0.10eVであると計算された。また、このような計算を複数回繰り返すことで、最適構造を取り得るリチウム原子と窒素原子の中心距離は、0.145nm以上、0.155nm以下であることが判った。
【0030】
以上のような構成としたn型ダイヤモンド半導体の活性化エネルギーは、0.1eV未満とすることができるので、室温から高温までの広い温度範囲で、キャリア濃度の温度依存性が少ない。
【0031】
本発明のn型ダイヤモンド半導体は、天然あるいは人工(高圧合成)のバルク単結晶であっても、気相合成による薄膜多結晶あるいは、薄膜単結晶(エピタキシャル膜)であっても、その効果は変わらない。
【0032】
気相合成ダイヤモンド膜において、形成する方法としては、(1)直流または交流電界により放電を起こし、原料ガスを活性化する方法、(2)熱電子放射材を加熱し、原料ガスを活性化する方法、(3)ダイヤモンドを成長させる表面をイオンで衝撃する方法、(4)レーザーや紫外線などの光で原料ガスを励起する方法、および(5)原料ガスを燃焼させる方法など各種の方法があるが、いずれの方法も本発明に用いることができ、発明の効果は変わらない。
【0033】
以上のように、本発明によれば、室温から高温までの広い温度範囲で、半導体特性を示しつつ、キャリア濃度の温度依存性が少ないn型ダイヤモンド半導体を得ることができる。
【0034】
【実施例】
参考例1
図1は、型ダイヤモンド半導体の断面構成図の一例である。図示のように、このn型ダイヤモンド半導体は、人工単結晶ダイヤモンド基板100の{100}面上に、マイクロ波プラズマCVD法によって、次のような条件で、ノンドープ層110〜110n+1(nはサイクル数)と、窒素とホウ素をドープしたドープ層120〜120を交互に成膜した。
【0035】
(1)ノンドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:2000sccm(cm/分)
CH(メタン)ガス流量:1sccm(cm/分)
圧力:100torr(13.3KPa)
マイクロ波パワー:300W
基板温度:850℃
【0036】
(2)窒素とホウ素をドープしたドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:2000sccm
CH(メタン)ガス流量:1sccm
(ジボラン)(水素希釈1000ppm)ガス流量:1sccm
NH(アンモニア)(水素希釈1%)ガス流量:3sccm
圧力:100torr(13.3KPa)
マイクロ波パワー:300W
基板温度:850℃
【0037】
単結晶ダイヤモンドの{100}面上にノンドープ層と窒素とホウ素をドープしたドープ層を交互に積層するのであるが、膜の厚さと積層数(サイクル数n)を異ならせた以下の2種類の試料を作成した。
試料(a):ノンドープ層30nm、ドープ層3nm、サイクル数n=10
試料(b):ノンドープ層300nm、ドープ層3nm、サイクル数n=5
【0038】
いずれの試料も電子線回折測定により、<100>方向にエピタキシャル成長していることを確認した。また、人工単結晶ダイヤモンドの{100}面上に、窒素とホウ素をドープした上記条件(2)と同条件で、100nmの厚さのエピタキシャルダイヤモンド膜を成膜し、その膜を2次イオン質量分析(SIMS)測定することにより、ダイヤモンド膜中の窒素とホウ素の量を測定した。その結果、窒素原子濃度(C)は8x1020cm−3であり、ホウ素原子濃度(C)は1x1019cm−3であった。上記条件(2)では、窒素濃度とホウ素濃度が、C<C≦100Cの範囲内にあり、窒素原子が1019cm−3以上であることが確認された。
【0039】
作成した(a)と(b)の試料について、ホール効果測定によりキャリア濃度の温度依存性測定、および抵抗率の温度依存性測定を行った。なお、測定の前に、各試料の表面の水素終端に伴う表面導電層を除去するために、各試料を大気中で加熱(400℃、40分)し、表面を酸素終端とした。また、電極は、試料表面の電極形成部にイオン注入(イオン種:Ar、エネルギー:30keV、ドーズ量:5x1015cm−2)を行うことにより、黒鉛化層を形成し、その上からTi、Pt、Auの薄膜を順に夫々300nmの厚さで成膜することにより、オーミック電極を形成した。
【0040】
各試料のホール効果測定によるキャリア濃度の温度依存性の測定結果を図2に示す。横軸は、絶対温度の逆数1/T(K−1)であり、縦軸は、キャリア濃度(cm−3)である。この結果より、試料(a)と試料(b)は、ともにn型の伝導型であることが判り、800K〜300K(室温)(横軸0.0013〜0.0033)の範囲で、キャリア濃度が温度によってほとんど変化していないことが判った。また、活性化エネルギーは、試料(a)が0.03eV、試料(b)が0.05eVであった。これより、800Kから室温の範囲で、温度に依存しない飽和領域の存在が確認された。
【0041】
また、試料(a)と試料(b)でキャリア濃度の異なる試料を作成できたことが判った。試料(a)はノンドープ層を30nm、ドープ層を3nmづつ積層したものであり、試料(b)はノンドープ層を300nm、ドープ層を3nmづつ積層したものであるから、平均キャリア濃度は、試料(b)が試料(a)の約1/10になるはずであるが、実際の測定によって、そのようになっていることが確認できた。
【0042】
また、抵抗率の温度依存性の測定結果を図3に示す。横軸は、図2と同様絶対温度の逆数1/T(K−1)であり、縦軸は、抵抗率(Ω・cm)である。この結果から、試料(a)と試料(b)は、800K〜300K(室温)の温度範囲で抵抗率の温度依存性がほとんどないことが確認できた。
【0043】
これより、窒素とホウ素を含むドープ層を持つδドープ構造によって、全体として半導体特性が得られる程度に平均キャリア濃度、つまり平均電子濃度を調節でき、かつ、キャリアの供給源であるn型ドープ層の電子濃度の温度依存性がほとんどないため、全体として電子濃度および抵抗率の温度依存性がほとんどないn型ダイヤモンド半導体が作成できたことを確認した。
【0044】
比較例1
参考例1のノンドープ層の成膜条件と、ドープ層の成膜条件のうち、ジボラン(水素希釈10ppm)のガス流量を10sccm、アンモニア(水素希釈1000ppm)のガス流量を1sccmとした以外は、参考例1のドープ層の成膜条件で、人工単結晶ダイヤモンド基板の{100}面上に、ノンドープ層とドープ層を交互に成膜した。ただし、膜の厚みとサイクル数は、以下のようにした。
比較試料:ノンドープ層30nm、ドープ層100nm、サイクル数n=5
【0045】
作成した比較試料は、電子線回折測定により、<100>方向にエピタキシャル成長していることを確認した。また、参考例1と同様にSIMS測定により、ドープ層の窒素とホウ素の量を測定したところ、Cは6x1018cm−3、Cは5x1017cm−3であった。
【0046】
参考例1と同様にして、電極を形成し、ホール効果測定により、キャリア濃度の温度依存性を測定したところ、伝導型はn型であったが、キャリア濃度の温度依存性は大きかった。また、キャリア濃度の温度依存性から、比較試料の活性化エネルギーを求めたところ、活性化エネルギーは、1.7eVと大きかった。このように、ドープ層の不純物濃度が低く、且つ厚いためにδドープ構造ではない場合は、活性化エネルギーは、0.1eV以上となることが判った。
【0047】
参考例2
参考例1と同様図1の構成で、人工単結晶ダイヤモンド基板100の{100}面上に、マイクロ波プラズマCVD法によって、次のような条件で、ノンドープ層110〜110n+1(nはサイクル数)と、イオウとホウ素をドープしたドープ層120〜120を交互に成膜した。
【0048】
(1)ノンドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:2000sccm
CH(メタン)ガス流量:1sccm
圧力:100torr(13.3KPa)
マイクロ波パワー:300W
基板温度:850℃
【0049】
(2)イオウとホウ素をドープしたドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:2000sccm
CH(メタン)ガス流量:1sccm
(ジボラン)(水素希釈1000ppm)ガス流量:1sccm
S(硫化水素)(水素希釈1000ppm)ガス流量:5sccm
圧力:100torr(13.3KPa)
マイクロ波パワー:300W
基板温度:850℃
【0050】
単結晶ダイヤモンドの{100}面上にノンドープ層とイオウとホウ素をドープしたドープ層を交互に積層するのであるが、膜の厚さとサイクル数nを異ならせた以下の2種類の試料を作成した。
試料(c):ノンドープ層30nm、ドープ層3nm、サイクル数n=10
試料(d):ノンドープ層300nm、ドープ層3nm、サイクル数n=5
【0051】
いずれの試料も電子線回折測定により、<100>方向にエピタキシャル成長していることを確認した。また、参考例1と同様にイオウとホウ素を添加した100nm厚さの試料を作成し、SIMS測定でイオウ原子濃度(C)とホウ素原子濃度(C)を測定した結果、イオウ原子濃度(C)は7x1020cm−3、ホウ素原子濃度(C)は9x1018cm−3であった。つまり、ドープ層は、0.5C<C≦100Cの範囲内であり、イオウ原子が1019cm−3以上であることが確認できた。
【0052】
作成した(c)と(d)の試料について、参考例1と同様に、キャリア濃度と抵抗率の温度依存性を測定した。なお、測定前の前処理も参考例1と同様の処理を行った。
【0053】
各試料のホール効果測定によるキャリア濃度の温度依存性の測定結果を図4に示す。本測定により伝導型はn型であることが判った。また、この結果より、試料(c)、試料(d)は、800K〜300K(室温)(横軸0.0013〜0.0033)の範囲で、キャリア濃度が温度によってほとんど変化していないことが判った。また、活性化エネルギーは、どちらの試料も0.01eVであった。これより、800Kから室温の範囲で、温度に依存しない飽和領域の存在が確認された。また、参考例1と同様にキャリア濃度の異なる試料を作成できたことが判った。
【0054】
また、抵抗率の温度依存性の測定結果を図5に示す。横軸は、図4と同様絶対温度の逆数1/T(K−1)であり、縦軸は、抵抗率(Ω・cm)である。この結果から、800K〜300K(室温)の温度範囲で抵抗率の温度依存性がほとんどないことを確認できた。
【0055】
以上より、イオウとホウ素を含むドープ層を持つδドープ構造によって、全体として参考例1と同様の特性を示すn型ダイヤモンド半導体が作成できたことを確認した。
【0056】
実施例
参考例1と同様図1の構成で、人工単結晶ダイヤモンド基板100の{100}面上に、次のような条件で、ノンドープ層110〜110n+1(nはサイクル数)と、リチウムと窒素をドープしたドープ層120〜120を交互に成膜した。成膜は、真空紫外光を用いた光励起気相合成法を用いた。
【0057】
(1)ノンドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:4000sccm
CH(メタン)ガス流量:1sccm
圧力:30torr(4KPa)
基板温度(ヒータ加熱):300℃
光源:シンクロトロン放射光(波長:70nm、蓄積電流:200mA)
【0058】
(2)リチウムと窒素をドープしたドープ層の成膜条件は、以下の通りである。
(水素)ガス流量:4000sccm
CH(メタン)ガス流量:1sccm
NH(アンモニア)(水素希釈1%)ガス流量:10sccm
圧力:30torr(4KPa)
基板温度(ヒータ加熱):300℃
光源:シンクロトロン放射光(波長:70nm、蓄積電流:200mA)
【0059】
なお、リチウムの供給は、LiO(酸化リチウム)をターゲットにして、5J/cmの強度のArFエキシマレーザーによるレーザーアブレーション法で行った。
【0060】
単結晶ダイヤモンドの{100}面上にノンドープ層とリチウムと窒素をドープしたドープ層を交互に積層するのであるが、膜の厚さとサイクル数nを異ならせた以下の2種類の試料を作成した。
試料(e):ノンドープ層30nm、ドープ層3nm、サイクル数n=10
試料(f):ノンドープ層300nm、ドープ層3nm、サイクル数n=5
【0061】
いずれの試料も電子線回折測定により、<100>方向にエピタキシャル成長していることを確認した。また、参考例1と同様にリチウムと窒素を添加した100nmの厚さの試料を作成し、SIMS測定でリチウム原子濃度(CLi)と窒素原子濃度(C)を測定した結果、リチウム原子濃度(CLi)は3x1020cm−3、窒素原子濃度(C)は4x1020cm−3であった。つまり、ドープ層は、CLi≦10Cの範囲内であり、リチウム原子が1019cm−3以上であることが確認できた。
【0062】
さらに、リチウム原子と窒素原子のドープ位置を特定するために、ラザフォード後方散乱分析、粒子線励起X線放射分析、核反応分析、及び電子スピン共鳴分析を組み合せた分析を行った。その結果、リチウム原子は、ほとんどがダイヤモンドを構成する炭素原子の格子間位置にあり、窒素原子は、炭素原子の置換位置にあることが判った。また、大部分の窒素原子に隣接してリチウム原子が存在していることも判った。これらの結果から、リチウム原子と窒素原子の中心距離は、第一原理計算により計算された最適構造の約0.15nmであると推定された。
【0063】
作成した(e)と(f)の試料について、参考例1と同様に、キャリア濃度と抵抗率の温度依存性を測定した。なお、測定前の前処理も参考例1と同様の処理を行った。
【0064】
各試料のホール効果測定によるキャリア濃度の温度依存性の測定結果を図6に示す。本測定により伝導型はn型であることが判った。また、この結果より、試料(e)、試料(f)は、800K〜300K(室温)(横軸0.0013〜0.0033)の範囲で、キャリア濃度が温度によってほとんど変化していないことが判った。また、活性化エネルギーは、試料(e)が0.01eV、試料(f)が0.02eVであった。これより、800Kから室温の範囲で、温度に依存しない飽和領域の存在が確認された。また、参考例1と同様にキャリア濃度の異なる試料を作成できたことが判った。
【0065】
また、抵抗率の温度依存性の測定結果を図7に示す。横軸は、絶対温度の逆数1/T(K−1)であり、縦軸は、抵抗率(Ω・cm)である。この結果から、800K〜300K(室温)の温度範囲で抵抗率の温度依存性がほとんどないことを確認できた。
【0066】
以上より、リチウムと窒素を含むドープ層を持つδドープ構造によって、全体として参考例1と同様の特性を示すn型ダイヤモンド半導体が作成できたことを確認した。
【0067】
【発明の効果】
本発明のn型ダイヤモンド半導体は、室温〜800Kの温度範囲でキャリア濃度、つまり電子濃度や抵抗率の温度依存性がほとんどない。しかも電子濃度を自在に制御することができる。従って、本発明のn型ダイヤモンド半導体は、室温から高温までの広い温度範囲で安定して動作するダイオード、LED、トランジスタ、電子放出素子などのデバイスに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のn型ダイヤモンド半導体の構成図の一例である。
【図2】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(a)と試料(b)についてホール効果測定を行いキャリア濃度の温度依存性を求めたグラフである。
【図3】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(a)と試料(b)について抵抗率の温度依存性を求めたグラフである。
【図4】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(c)と試料(d)についてホール効果測定を行いキャリア濃度の温度依存性を求めたグラフである。
【図5】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(c)と試料(d)について抵抗率の温度依存性を求めたグラフである。
【図6】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(e)と試料(f)についてホール効果測定を行いキャリア濃度の温度依存性を求めたグラフである。
【図7】本発明のn型ダイヤモンド半導体の試料(e)と試料(f)について抵抗率の温度依存性を求めたグラフである。
【符号の説明】
100 基板
110 ノンドープ層
120 ドープ層

Claims (4)

  1. ダイヤモンド半導体材料から成り、(a)実質的に不純物が添加されていない第1のノンドープ層と、(b)前記第1のノンドープ層の一方の表面に形成されたn型半導体となるように2種類以上の不純物が添加されたドープ層と、(c)前記ドープ層の表面に形成された実質的に不純物が添加されていない第2のノンドープ層とを備え、前記ドープ層に添加する不純物は、リチウム(Li)と窒素(N)であって、リチウム原子濃度(C Li )と窒素原子濃度(C )とが、C Li ≦10C の範囲であり、且つC Li ≧10 19 cm −3 であることを特徴とするn型ダイヤモンド半導体。
  2. 前記ノンドープ層と前記ドープ層とが交互に積層されるとともに、両端の層はノンドープ層である、ことを特徴とする請求項1記載のn型ダイヤモンド半導体。
  3. 前記リチウム原子が、ドープ層のダイヤモンドを構成する炭素原子の格子間位置に、前記窒素原子が前記炭素原子の置換位置に、それぞれ混入しており、かつリチウム原子と窒素原子は互いに隣接している構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のn型ダイヤモンド半導体。
  4. 前記リチウム原子と窒素原子の中心間距離が、0.145nm以上、0.155nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のn型ダイヤモンド半導体。
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