本発明のトナー粒子の製造方法は、少なくとも着色剤を含有する着色剤組成物を水系媒体中で造粒して得られるトナー粒子の製造方法において、該トナー粒子を造粒する装置が、造粒タンクと撹拌装置を具備し、該造粒タンク内部容積をA(L)、該造粒タンク内部の気層部容積をB(L)とした時、気層部割合B/Aが下式(1)を満たすことを特徴とする。
0.05≧B/A (1)
図1は、本発明に用いるシステムの好適な例であるが、これに限定されるわけではない。本発明は、溶解懸濁法および懸濁重合法で用いられるが、好ましくは、懸濁重合法で用いられる。なお、図1は、懸濁重合法に本発明を適用したトナー粒子の製造方法を示すものである。図1において、1は溶解タンク、2は溶解撹拌装置、3は造粒タンク、4は造粒撹拌装置、5は液封タンク、6は液封タンク撹拌装置、7は重合タンク、8は重合撹拌装置9は圧力計、10は圧力調整バルブ、11は溶解排出バルブである。また、図1において、12は液封排出バルブ、13は造粒排出バルブ、14は造粒タンクバルブ(1)、15は造粒タンクバルブ(2)、16は内筒、17は温水シャワーラインである。
また、図2は、本発明の造粒工程に用いられる好ましい造粒攪拌装置4の概略図である。図2において、21は撹拌翼、22は撹拌室、23は撹拌軸である。
以下、図1を用いて本発明の製造方法の好ましい一態様について説明する。
該造粒タンク3において、液状分散媒を作製後、該溶解タンク1より少なくとも着色剤を含有する着色剤組成物が、該造粒タンク3内に投入される。なお、着色剤組成物は、さらに重合性単量体を含有してもよい。次いで、該造粒タンク3内に該液封タンク5より水系媒体が投入される。この時、造粒タンクバルブ(2)の下部に内筒16を設置し、該内筒の長さを調整することにより、造粒タンク3内部の気層部の割合を任意に調整することが可能となる。また、該液封タンク5内部と該造粒タンク3と該液封タンク5を連通する配管内部も、水系媒体が投入される。この時、該液封タンク5内の体積の5〜50%が、水系媒体であることが好ましい。なお、水系媒体は、重合性単量体を含有してもよい。
その後、所定圧力まで不活性ガスもしくは、空気により、該液封タンク5内気層部を加圧し、該液封タンク5と該造粒タンク3が、同圧力になるまで加圧した後、造粒を開始する。
この時、該造粒タンク3内部容積をA(L)、該造粒タンク3内部の気層部容積をB(L)とした時、気層部割合B/Aが下式(1)を満たす必要がある。
0.05≧B/A (1)
さらには、該気層部割合B/Aが下式(2)を満たすことが好ましい。
0.01≧B/A (2)
このように、該造粒タンク3気層部の割合B/Aを0.05以下に調整することにより、気体の巻き込みがほとんどなくなり、該造粒撹拌装置4の生ずるせん断力が効率良く処理物に付与できる。さらに、タンク内の処理物の流れは、気層部がある場合に比べ均一化するため、粒度分布がシャープになる。なお、造粒タンク内部容積Aは、20(L)以上50,000(L)以下であることが好ましい。また、造粒タンクの内部の気層部容積Bは、造粒タンク内部容積Aの5%以下に調整することが好ましい。更に望ましくは、造粒タンクの内部の気層部容積Bは、造粒タンク内部容積Aの1%以下に調整することが好ましい。
以上のように、粒度分布のシャープ化には、該造粒タンク3内気層部の割合B/Aを0.05以下の状態にすることが、重要である。
また、該造粒タンク3内部を加圧状態にすることにより、高速回転する撹拌翼21周囲の急激な圧力変動を抑制することができるため、キャビテーションに起因する微粒子の発生を防止でき、トナー粒子の粒度分布をさらにシャープにすることができる。
該造粒タンク3内部を加圧状態にするためには、該造粒タンク3上部に連通する該液封タンク5内部の気層部分を加圧することにより、所定圧力まで加圧し、維持することが好ましい。該造粒タンク3内部を直接加圧する場合に比べ、上記のように間接的に該液封タンク5気層部を加圧する場合、以下の点で好ましい。つまり、該液封タンク5の気層部が、該造粒タンク3内部の温度変化や反応物からのガス発生等による、圧力変動に対しバッファーとしての役割を果たすため、加圧状態を維持しやすく、安全面においても好ましい。
該液封タンクの気層部を加圧するときのゲージ圧力C(kPa)は、下式(3)の範囲であることが好ましい。
100(kPa)≦C≦800(kPa) (3)
さらに好ましくは、該液封タンクの気層部を加圧するゲージ圧力C(kPa)は、下式(4)の範囲であることが好ましい。
190(kPa)≦C≦400(kPa) (4)
該ゲージ圧力Cが100kPa未満では、キャビテーションの抑制効果が弱いため、トナー粒子の粒度分布がシャープ化しにくくなる。
ゲージ圧力Cが800kPa超では、該液封タンク5、該造粒タンク3のタンク厚みを増すことが必要になるため、タンク内部の温調制御が困難になること、及び、投資コストが増加することのため、好ましくない。
また、該撹拌翼21の周速は、17乃至40m/sであることが好ましい。さらに好ましくは、25乃至35m/secであることが好ましい。
該撹拌翼21の周速が17m/s未満の場合では、せん断力が不足するために、粒度分布がシャープ化しにくくなる。40m/sを超える場合では、該撹拌モータを肥大化させる必要があるため、投資コスト及びランニングコストが増加することになり、好ましくない。
また、該液封タンク5は、該造粒タンク3上部に連通することが好ましい。該液封タンク5が、該造粒タンク3上部に連通することにより、該造粒タンク3内部の気層部を容易に水系媒体により置換することが可能となり、実質的に気層部が存在しない状態にすることができる。
さらには、該液封タンク上部と該造粒タンク上部とを導通する空気抜きラインを設ける事が好ましい。該空気抜きラインにより、容易に該撹拌タンク気層部を水系媒体により置換することが可能となる。
また、該造粒タンク内の液体の温度をD(℃)、該液封タンク内の液体の温度をE(℃)とした時、下式(5)を満たすことが好ましい。
{D−30(℃)}≦E≦{D+30(℃)} (5)
上記(5)式を満たさない場合、該造粒タンク内の液体の温度D(℃)と該液封タンク内の液体の温度E(℃)の温度差が大きくなるため、両タンク間において処理物と水もしくは水系媒体の対流が生じる。それにより、造粒が不十分である処理物が、該液封タンク内部に流入してしまうことがあるため好ましくない。
また、造粒撹拌装置4としては、以下の装置が挙げられる。例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業社製)、ナショナルクッキングミキサー(松下電器産業社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業社製)等のバッチ撹拌機。特に好ましいものとしては、クレアミックス(エム・テクニック社製)があげられる。
該着色剤組成物及び該水系媒体の少なくともいずれか一方が、重合開始剤を含有し、該重合開始剤の分解物の少なくとも1つが窒素又は二酸化炭素であることが好ましい。
二酸化炭素は、水系媒体への溶解性に優れているために、分解物として発生した際にもほとんどが水系媒体へ溶解するため気体となりにくく、液封タンクの気層部の圧力変化を起こしにくい。そのために、造粒中の圧力を一定に保ち易い。
窒素は、分解物として発生した際にも水系媒体のpHを変化させない。そのために、造粒中に、造粒タンク内部の液体のpHを一定に保ち易い。
本発明のトナー粒子の製造方法は、磁性トナー粒子の製造方法にも好ましく用いることができる。磁性トナー粒子を製造する場合に使用される磁性体について、以下に説明する。
本発明において磁性トナーに使用される磁性体は、その表面が疎水化されていることが好ましい。磁性体を疎水化する際は、水系媒体中で、磁性体粒子を一次粒径となるよう分散しつつカップリング剤を加水分解しながら表面処理する方法を用いることが非常に好ましい。この疎水化処理方法は、気相中で処理するより磁性体粒子同士の合一が生じにくく、また疎水化処理による磁性体粒子間の帯電反発作用が働くため、磁性体はほぼ一次粒子の状態で表面処理される。
カップリング剤を水系媒体中で加水分解しながら磁性体表面を処理する方法は、クロロシラン類やシラザン類のようにガスを発生するようなカップリング剤を使用する必要がない。また、これまで気相中では磁性体粒子同士が合一しやすくて、良好な処理を施すことが困難であった高粘性のカップリング剤も使用できるようになるため、疎水化の効果は絶大である。
本発明に係わる磁性体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、下記一般式
RmSiYn
[式中、Rはアルコオキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1〜3の整数を示す]で示されるものである。
シランカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等。
この中でも、磁性体の分散性を向上させるために2重結合を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、フェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。これは、特に懸濁重合を行う場合、2重結合を有するカップリング剤で処理すると、磁性体と重合性単量体とのなじみが良好になる為であると考えられ、トナー粒子中での磁性体の分散性が良好なものとなる。
しかし、これら2重結合を有するカップリング剤のみの使用では、磁性体に十分な疎水性を持たせることは困難となることがあり、疎水性が十分でない磁性体がトナー表面に露出する等の影響により、トナーの粒度分布も広いものとなってしまう。この理由は定かではないが、カップリング剤自身の疎水性や、磁性体表面の活性基との反応性、及び磁性体表面の被覆性が劣ることによるものであると考えている。このため、十分な疎水性を得る為に以下の式で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を併用することがより好ましい。
CpH2p+1−Si−(OCqH2q+1)3
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す]
上記式において、pが2より小さいと疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、トナー粒子からの磁性粒子の露出を抑制するのが難しくなる。またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、磁性体粒子同士の合一が多くなり、磁性体粒子を十分に分散性させることが困難になり、トナー粒子の粒度分布がブロードになりやすくなる。また、qが3より大きいとシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
より好ましくは、上記式においてpが3〜15の整数であり、qが1又は2であるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用することである。
その処理量は磁性体100質量部に対して、シランカップリング剤が総量で0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部であり、磁性体の表面積、カップリング剤の反応性に応じて処理剤の量を調整することが好ましい。
また、上記疎水化処理時に用いられる水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1〜5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられ、有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
なお、複数種のシランカップリング剤を用いる場合、同時に又は時間差をもって複数種のカップリング剤を投入し、磁性体の処理を行う。
こうして得られる磁性体は粒子の凝集が見られず、個々の粒子表面が均一に疎水化処理されているため、磁性体の重合性単量体中での分散性は良好なものとなる。
本発明のトナーにおいて用いられる磁性体は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。また、磁性体は四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上併用して用いられる。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2〜30m2/g、より好ましくは3〜28m2/gであり、更にモース硬度が5〜7のものが好ましい。
本発明のトナーに用いられる磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部を用いることが好ましい。より好ましくは20〜180質量部を用いることである。10質量部未満ではトナーの着色力が乏しく、カブリの抑制も困難である。一方、200質量部を超えると、得られたトナーのトナー担持体への磁力による保持力が強まり現像性が低下したり、個々のトナー粒子への磁性体の均一な分散が難しくなるだけでなく、定着性が低下してしまう。
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7で測定する。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱し、100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性体量とする。
本発明に係わる磁性トナーに用いられる磁性体は、例えばマグネタイトの場合、下記方法で製造される。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量または当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上(好ましくはpH8〜14)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6〜14に維持しながら空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌し、カップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水性処理磁性酸化鉄粒子が得られる。或いは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄粒子を、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。いずれにせよ、酸化反応終了後に乾燥工程を経ずに表面処理を行うことが肝要であり、本発明における重要なポイントの一つである。
第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、更に塩化鉄等が可能である。
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法において、硫酸鉄を用いる場合、一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び硫酸鉄の溶解度からその水溶液は鉄濃度0.5〜2mol/lのものが用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、また反応温度が低いほど微粒化しやすい。
このようにして製造された疎水性磁性体粒子を材料とした磁性トナーを使用することにより、安定したトナーの帯電性が得られ、転写効率が高く、高画質及び高安定性が可能となる。
上記のようにして得られた磁性体は、トナー粒子に含有される着色剤としても好適に用いることができる。また、本発明で製造されるトナーに好適に用いることのできる上記磁性体以外の着色剤として、カーボンブラック及び以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、以下のものが挙げられる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、167、168、173、174、176、180、181、183、191及びC.I.バットイエロー1、3、20等、染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等。これらの着色剤が単独で或いは2以上を併用して用いられる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、以下のものが挙げられる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166,169,177,184,185,202,206,207,209,220,221,238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等、染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52,58,63,81,82,83,84,100,109,111,121,122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等。これらの着色剤が単独で或いは2以上が併用して用いられる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、以下のものが挙げられる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等。これらの着色剤が単独で或いは2以上が併用して用いられる。
これらの着色剤は、単独で又は2種以上を混合し、また更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHP透明性及びトナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対して1〜20質量部が用いられる。
本発明で製造されるトナー粒子は離型剤を含有していても良い。本発明においてトナー粒子に使用可能な離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。更には、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、或いはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス。
離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社);サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社);ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等。
本発明に用いられるトナー粒子には、荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できる。更に、直接重合法を用いてトナー粒子を製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、以下のものが挙げられる。ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料或いはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等、ポジ系荷電制御剤としては四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子に外部添加する方法とがある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。なお、荷電制御剤を内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。また、荷電制御剤を外部添加する場合、トナー粒子100質量部に対し好ましくは0.005〜1.0質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。
本発明において製造されるトナー粒子に含有される重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン・o−メチルスチレン・m−メチルスチレン・p−メチルスチレン・p−メトキシスチレン・p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸n−ブチル・アクリル酸イソブチル・アクリル酸n−プロピル・アクリル酸n−オクチル・アクリル酸ドデシル・アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ステアリル・アクリル酸2−クロルエチル・アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル・メタクリル酸n−プロピル・メタクリル酸n−ブチル・メタクリル酸イソブチル・メタクリル酸n−オクチル・メタクリル酸ドデシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ステアリル・メタクリル酸フェニル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル・メタクリロニトリル・アクリルアミド等の単量体。
本発明のトナーの製造方法においては、重合性単量体に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したいときには、これらとスチレン又はエチレン等のビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、或いはグラフト共重合体等の共重合体の形で、或いはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体の形で、或いはポリエーテル、ポリイミン等の重付加重合体の形で使用が可能となる。
本発明において、上記重合性単量体に添加して使用されるポリエステル樹脂を構成するアルコール成分と酸成分を以下に例示する。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、式(I)で示されるビスフェノール誘導体又は該式(I)で表される化合物の水添物;
[式中、Rはエチレン基またはプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。]
または下記式(II)で表されるジオール又は該式(II)で表される化合物の水添物が挙げられる。
2価のカルボン酸としては以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、また更に炭素数6〜18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物。
更に、アルコール成分として以下のものが挙げられる。グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物の如き多価カルボン酸。
前記ポリエステル樹脂は全成分中45〜55モル%がアルコール成分であり、55〜45モル%が酸成分であることが好ましい。また、本発明においては、得られるトナー粒子の物性に悪影響を及ぼさない限り2種以上のポリエステル樹脂を併用したり、例えば、シリコーンやフルオロアルキル基含有化合物により変性したりして物性を調整することも好適に行われる。また、このような極性官能基を含む高分子重合体を使用する場合、その平均分子量は5,000以上が好ましく用いられる。
また、上記以外の樹脂を単量体系中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂など。それらの樹脂は単独で又は混合して使用できる。
これら樹脂の添加量としては、単量体100質量部に対し1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部超添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなるためである。
更に、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合しても良い。
本発明のトナー粒子の製造方法において、重合性単量体の重合反応を開始させるために使用される重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5〜30時間であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対し重合開始剤が0.5〜20質量部の添加量で重合反応を行うと、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体を得られるものが、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることが出来るため好ましい。重合開始剤例としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤。
本発明のトナーを製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量は重合性単量体100質部に対して0.001〜15質量部である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物。これらの架橋剤は単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナー粒子の製造方法は、溶解工程において得られる少なくとも着色剤を含有する着色剤組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中にて、実質的にほぼ気層部が存在しない状態懸濁して造粒する。なお、上記着色剤組成物は、重合性単量体、離型剤、可塑剤、荷電制御剤及び架橋剤等のトナーとして必要な成分、及び、その他の添加剤(例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、高分子重合体、分散剤等)を適宜加えてもよい。
このように着色剤組成物の造粒を行うと同時に、又は造粒を行った後、重合開始剤を添加して上記組成物の重合を行う(重合工程)。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体或いは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることも出来る。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊及び沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
本発明のトナー粒子の製造方法において、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機または無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、以下のものが挙げられる。燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜20質量部を単独で使用することが望ましい。また、超微粒子を発生し難くさせると共に、トナー粒子を微粒化させるために、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤としては、例えば以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて前記無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後に酸又はアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことが出来る。
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上であることが好ましく、一般には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90〜150℃にまで上げることは可能である。
重合反応の終了後、得られた重合粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥する。この重合粒子は分級工程において所望の粒径範囲外の粗粉や微粉が除去され、トナー粒子が得られる。なお、分級工程は従来トナーの製造に用いられる公知の方法により行うことができ、特に限定されない。分級工程を経て得られたトナー粒子に無機微粉体等の外添剤を混合して該トナー粒子表面に付着させることによって、トナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも、本発明の望ましい形態の一つである。
本発明において、トナーには上記外添剤のうち流動化剤として個数平均一次粒子径が4〜80nmの無機微粉末が添加されることも好ましい形態である。
本発明で用いられる無機微粒子としては、シリカ,アルミナ,酸化チタンなどが使用できる。例えば、ケイ酸微粉体としてはケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。特に、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3−等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
平均一次粒径が4〜80nmの無機微粒子の添加量は、トナー母粒子に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%超では定着性が悪くなることがある。なお、無機微粉末の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
無機微粒子は、疎水化処理されたものであることが高温高湿環境下での特性から好ましい。疎水化処理の処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは併用して用いても良い。
無機微粒子の処理方法としては、例えば第一段反応としてシリル化反応を行ってシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成する方法が挙げられる。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10〜200,000mm2/sのものが、更には3,000〜80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粒子に安定性が無く、熱および機械的な応力により画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイルの処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理されたシリカとシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、シリカにシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。或いは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解或いは分散させた後、シリカ微粉体を加えて混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粒子の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量はシリカ100質量部に対し1〜40質量部、好ましくは3〜35質量部が良い。
本発明で用いられるシリカは、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20〜350m2/gの範囲内のものが好ましく、25〜300m2/gのものがより好ましい。
比表面積はBET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
また、トナーは、クリーニング性向上等の目的で、更に一次粒径が30nmを超える、より好ましくは一次粒径が50nm以上の無機又は有機の球状に近い微粒子を、外添剤としてトナー粒子に添加して含有することが好ましい。この無機又は有機の微粒子は比表面積が50m2/g未満(より好ましくは比表面積が30m2/g未満)のものを好ましく用いることができる。このような微粒子として、例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の外添剤をトナー粒子に添加して用いることができる。例えば、外添剤としては以下のものが挙げられる。ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末などの滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤など。また、逆極性の有機微粒子又は無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの外添剤も表面を疎水化処理して用いることが可能である。
本発明において製造し得るトナーは、一成分現像剤として使用できる。例えば、一成分系現像剤として、磁性体をトナー中に含有する重合トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵されたマグネットを利用し、重合トナーを搬送及び帯電する方法がある。しかし、必ずしも上記のような一成分現像剤に限られる必要はなく、二成分現像剤として用いても良い。
二成分系現像剤として用いる場合には、上記トナーと共に磁性キャリアを用いる。磁性キャリアは、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムから選ばれる元素が単独で又は複合フェライト状態で用いられる。磁性キャリアの形状としては、球状、扁平又は不定形がある。更に磁性キャリア粒子表面状態の微細構造(例えば表面凹凸性)をもコントロールすることが好ましい。一般的には、上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、予め磁性キャリアコア粒子を生成した後、このキャリアコア粒子を樹脂でコーティングする方法が用いられている。磁性キャリアのトナーへの負荷を軽減する目的から、以下の方法を使用することが可能である。つまり、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級することにより低密度分散キャリアを得る方法や、無機酸化物とモノマーとの混練物を直接水系媒体中にて懸濁重合させて真球状の磁性キャリアを得る方法も利用することが可能である。
これらのうち、上記キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆してなる被覆キャリアが特に好ましい。キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁して塗布することによりキャリアコアに付着させる方法、又は単に樹脂粉体とキャリアコア粒子とを混合して付着させる方法が適用できる。
キャリア粒子表面への固着物質としてはトナー材料により異なるが、例えば以下のものが挙げられる。ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂など。これらは単独或は複数で用いられる。
キャリアの磁性特性は以下のものが良い。磁気的に飽和させた後の、磁界の強さ79.6kA/mにおける磁化の強さ(σ1000)は3.77〜37.7μWb/cm3であることが好ましい。更に高画質化を達成するために、12.6〜31.4Wb/cm3であることがより好ましい。この磁化の強さが37.7μWb/cm3より大きい場合には、高画質なトナー画像が得られにくくなる。一方、3.77Wb/cm3未満であると、磁気的な拘束力も減少するためにキャリア付着を生じやすい。
本発明で用いられるトナーと磁性キャリアとを混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度が2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%であると通常良好な結果が得られる。
本発明で用いたそれぞれの測定方法について以下に述べる。
(1)トナーの粒度分布の測定及び個数変動係数の算定
トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型又はコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能である。本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続する。電解液として、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。このような電解液としては、例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定は以下の手順で行う。上記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径が2μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。
それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)、及び個数変動係数を求める。個数変動係数は下記式(6)で表される。下記式(6)中、Sはトナー粒子の体積分布における標準偏差を示し、D1はトナー粒子の個数平均径(μm)を示す。即ち、変動係数の値が小さいほどトナー粒子の粒度分布はシャープであり、値が大きいとブロードな粒度分布であることを示す。
個数変動係数(%)=(S/D1)×100 (6)
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
〈実施例1〉
図1中に示すフローに従ってトナー粒子を製造した。
下記のようにして、水系分散媒及び着色剤組成物を調製した。また、以下に示す分散媒及びトナー成分の総量は、造粒タンク内容積の90%になるように、あらかじめ計算してある。
(水系分散媒の調製)
造粒撹拌装置4(クレアミックス)を備えた内容積200Lの造粒タンク3中で、下記の成分を混合し、60℃に加温した後、35m/sで撹拌した。
・水 950質量部
・0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液 450質量部
次に、容器内を窒素置換すると共に、これに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液68質量部を添加して反応させ、リン酸カルシウム塩の微粒子を含む水系分散媒を得た。
(着色剤分散物の調製(分散工程))
・スチレン 145質量部
・着色剤(C.I.ピグメントレッド150) 14質量部
メディア型分散機であるアトライターに直径1mmのメディア(ジルコニア製)を25kg充填(充填量55%)した後、上記成分を投入し、大気圧の状態で5hr分散を行い、着色剤分散物を得た。分散後の着色剤分散物のサンプリングを行い、光学顕微鏡により顔料の分散状態を観察したところ、良好な分散状態が確認された。
(着色剤組成物の調製(溶解工程))
・2−エチルヘキシルアクリレート 35質量部
・E−88(オリエント化学工業社製) 2質量部
・テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(酸価10mgKOH/g 、重量平均分子量7500) 10質量部
・ジビニルベンゼン 0.3質量部
・エステルワックス(DSCにおける最大吸熱ピークの温度72℃) 25質量部
溶解タンク1に上記着色剤分散物120部を移送した。溶解撹拌装置2は、撹拌翼としてパドル翼を有するものである。更に、上記着色剤分散物に加えて溶解タンク1に上記成分を投入し、30分かけて60℃まで昇温しながら、1.5rpsで撹拌翼の撹拌を開始した。処理物温度が60℃に達した後も引き続き運転を行い、60分経過した後、着色剤組成物を得た。
(造粒工程及び重合工程)
造粒撹拌装置4(クレアミックス)の周速を、20m/sに変更した後、溶解排出バルブ11、造粒タンクバルブ(1)14を開き、該水系分散媒を収容している造粒タンク3に上記着色剤組成物を添加した。
添加後、溶解排出バルブ11、造粒タンクバルブ(1)14を閉、液封排出バルブ12、造粒タンクバルブ15を開とした。そして、あらかじめ、液封タンク5内において作製しておいた2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部をスチレン20質量部に溶解した開始剤溶解液を投入した。該開始剤溶解液を排出後、温水シャワーライン17を開とし、液封タンク5を通過して、造粒タンク3へ60℃の温水の供給を開始し、液封タンク内容積の10%のレベルまで温水が溜まったところで、温水の供給を停止した。また、あらかじめ、造粒タンクバルブ15の下部から造粒タンク3内部方向へ、造粒タンク気層部割合が、造粒タンク内容積に対し1%(B/A=0.01)になるように、内筒を設置しており、造粒タンク内部には1%の気層部が存在した。その後、液封タンク5の上部に位置する圧力調整バルブ15を開とし、液封タンク内部に窒素を供給し、圧力計9で液封タンクの気層部のゲージ圧力を測定したところ190kPaをであった。液封タンク5内部を加圧した後、再び造粒撹拌装置4の周速を35m/sに変更し、22分間造粒を行った。造粒終了後、造粒排出バルブ4を開とし、パドル撹拌羽根を備えた重合タンク7内に処理物を移送し、内温60℃で重合を継続させた。6時間後、重合温度を80℃に昇温し、加熱撹拌を3時間継続して重合を完了した。重合終了後スラリーの少量サンプリングを行い、粒度分布を測定し、個数変動係数を計算し、下記の評価基準に従い評価した。この個数変動係数は、値が小さいほど粒度分布がシャープであることを示す。
[個数変動係数の評価基準]
A:22.0%未満
B:22.0%以上24.0%未満
C:24.0%以上26.0%未満
D:26.0%以上
得られた体積基準の重量平均粒径D4、並びに個数変動係数評価結果を表1に示す。
重合反応終了後、減圧下で残存モノマーを留去し、冷却後、希塩酸を添加して分散剤を溶解し、固液分離、水洗、ろ過、乾燥、分級することにより重合トナー粒子を得た。
得られたマゼンタトナー粒子100質量部と、BET法による比表面積が100m2/gである疎水性酸化チタン微粉体1.5質量部とを混合し、負摩擦帯電性のマゼンタトナーを得た。
(評価)
このマゼンタトナー5質量部に対し、アクリルコートされたフェライトキャリア95質量部を混合して二成分現像剤を調製した。この二成分現像剤を市販のデジタルフルカラー複写機(CLC500,キヤノン製)を用いて、常温常湿(23℃/50%)の環境で印字率2%の画像を5000枚プリントアウトした後、ベタ画像を出力することでマゼンタトナーの画出しを行った。画出し終了後、画像濃度の測定を行った。画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定を行い、下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[画像濃度の評価基準]
A:1.4以上
B:1.4未満1.2以上
C:1.2未満
〈実施例2〉
実施例1の造粒時の液封タンクの気層部のゲージ圧力を400kPaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例3〉
実施例1の造粒時の造粒攪拌装置4の周速を25m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例4〉
実施例1の造粒時の造粒攪拌装置4の周速を40m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例5〉
実施例1の造粒時の造粒攪拌装置4の周速を17m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例6〉
造粒タンクバルブ15の下部から造粒タンク3内部方向へ、造粒タンク3気層部割合が、造粒タンク3内容積に対し5%(B/A=0.05)になるように、内筒17を設置した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例7〉
実施例1の造粒時の液封タンクの気層部のゲージ圧力を100kPaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例8〉
実施例1の造粒時の液封タンクの気層部のゲージ圧力を800kPaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例9〉
実施例1の造粒時の液封タンクの気層部のゲージ圧力を0kPaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例10〉
実施例1の造粒時の液封タンクの気層部のゲージ圧力を900kPaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例11〉
実施例1の造粒時の造粒撹拌装置4の周速を16m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈実施例12〉
実施例1の造粒時の造粒撹拌装置4の周速を41m/sに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。
〈比較例1〉
造粒タンクバルブ15の下部から造粒タンク3内部方向へ、造粒タンク3気層部割合が、造粒タンク内容積に対し、6%(B/A=0.06)になるように、内筒17を設置した。また、造粒時液封タンクの加圧は行わなかった。上記以外は、実施例1と同様の操作を行ってトナー粒子を得て、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表1に示す。