JP4767869B2 - Cd38スプライスバリアント及びその使用 - Google Patents
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Description
CD38は、細胞接着、シグナルトランスダクション及びカルシウムシグナル伝達で機能する多機能性細胞表面抗原である。CD38は、サイクリックADP-リボース(cADPR)がその基質であるNAD+から生成されるのを触媒する(S. Takasawa et al. 1993, J. Biol. Chem. 268:26052-26054)。cADPRは、細胞内カルシウム遊離を調節する第二のメッセンジャーとして作用する。CD38は、Tリンパ球、Bリンパ球及び好中球を含む造血細胞で発現される。CD38-/-マウスは、組織付随NAD+グリコヒドロラーゼ活性の完全な喪失を示し、T細胞依存性タンパク質抗原に対する抗体応答の顕著な欠失を示した(Cockayne et al. 1998, Blood 92:1324-1333)。CD38は、細菌性化学誘引物質に対する好中球の化学走性を、好中球のサイクリックADP-リボースの産生を介して制御し、炎症及び先天性免疫応答の極めて重要な調節因子として作用する(S. Partida-Sanchez et al. 2002, Nat. Med. 7:1209-16)。CD38のヒトcDNAは、1990年に初めてクローニングされ、300アミノ酸をコードしていた(D.G. Jackson and J.I. Bell, 1990, J. Immun. 144:2811-2815)。CD38遺伝子は単一コピーとして存在し、62kbを超えて伸びていることが報告された。CD38遺伝子は8つのエクソンと、5'コード領域を中断させる長いイントロンを含む7つのイントロンとから成る(E. Ferrero and F. Malavasi, 1997, J. Immun. 159:3858-3865)。CD38タンパク質の構造は明らかではない。
CD38のような細胞表面抗原は、互いに構造的及び機能的に異なっている種々のアイソフォームとして発生することが知られている。例えば、CXCR-3は2つのアイソフォームCXCR3A及びCXCR3-Bを有し、それらは異なる生物活性をもち、別個のシグナルトランスダクション(情報伝達)経路の引き金となることが見出された。CXCR3-BはCXCL4に対してのみ高い親和性を示すが、CXCR3-Aは示さない(L. Lasagni et al. 2003, J. Exp. Med. 197:1537-49)。
122アミノ酸残基のみをコードする1のCD38スプライシングアイソフォームcDNAが、ヒト精巣ライブラリーから単離された(K. Nata et al. 1997, Gene 186:285-292)。
CD38の新規なアイソフォーム及びそれをコードするポリヌクレオチドの発見は、自己免疫疾患及び免疫学的疾患の治療、予防及び診断で使用することができる新規な組成物を提供することによって、本技術分野における必要性を満足させる。
本発明は、配列番号1の81アミノ酸ポリペプチド又はそのフラグメントを含むCD38のスプライスバリアントであって、本明細書ではCD38JLと称される、実質的に精製されたポリペプチドを提供する。配列番号1のアミノ酸残基1から57は、CD38配列に見出されるアミノ酸残基と一致しており、ADP-リボシルシクラーゼ活性が付随している。
本発明はまた、配列番号1のポリペプチド配列のアミノ酸残基58〜81を含む、実質的に精製されたCD38JLポリペプチドのフラグメントを提供する。
本発明はまた、単離及び精製されたポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号1のフラグメントのアミノ酸配列、特に配列番号1のアミノ酸残基51〜81を含むフラグメントのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている。
本発明はまた、配列番号2から選択される10以上の塩基、特に配列番号2の塩基188〜508及び塩基775〜1884から選択される10以上の塩基を含む、単離及び精製されたポリヌクレオチドを提供する。
本発明はまた、配列番号1又はそのフラグメントのアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%のポリヌクレオチド同一性を有する単離及び精製されたポリヌクレオチドバリアント(変種)を提供する。
本発明はさらに、配列番号1又は配列番号1のフラグメントのアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離及び精製されたポリヌクレオチドを、配列番号1又は配列番号1のフラグメントのアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと実質的に相補的な単離及び精製されたポリヌクレオチドと同様に提供する。
本発明はまた、配列番号1のアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの少なくともフラグメントを含む発現ベクターを提供する。別の実施態様では、前記発現ベクターは宿主細胞内に含まれる。
本発明の別の実施態様は、IBD(炎症性腸疾患)を治療する方法を提供し、前記方法は、その必要がある患者に治療的有効量のCD38JLスプライスバリアントポリペプチド阻害物質又はアンタゴニストを投与する工程を含む。
本発明のまた別の実施態様は、IBD(炎症性腸疾患)を治療する方法を提供し、前記方法は、その必要がある患者に治療的有効量のCD38JLスプライスバリアントアゴニストを投与する工程を含む。
本発明はまた、IBD、乾癬、慢性関節リウマチ又は自己免疫疾患を治療又は予防する方法を提供し、前記方法は、その必要がある患者に治療的有効量のCD38JL阻害物質及び/又はアンタゴニストを投与する工程を含む。
本発明のまた別の実施態様はヒトで炎症性疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、そのような治療の必要がある患者に治療的に許容できる量のCD38JL阻害物質を投与する工程を含む。前記のような治療方法は、おそらくIBD、乾癬、慢性関節リウマチ及び自己免疫疾患の治療に有用であろう。
本発明はまた、以下の工程を含む、核酸を含む生物学的サンプル中でCD38JLをコードするポリヌクレオチド配列を検出する方法を提供する:
(a)配列番号1の配列又は配列番号1のフラグメントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの相補鎖を前記生物学的サンプルの核酸の少なくとも1つとハイブリダイズさせ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成する工程;及び
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する工程、ここで前記ハイブリダイゼーション複合体の存在は、前記生物学的サンプルにおけるCD38JLをコードするポリヌクレオチドの存在と相関性を示す。
本発明のその他の特徴、特質及び利点は、現時点で好ましい本発明の実施態様に関する以下の記載から明白となろう。
本発明は、記載されているある特定のプロトコル、ツール及び試薬のいずれにも限定されず、プロトコル、ツール及び試薬は変更可能であることが理解されよう。さらに、本明細書で用いられる専門用語は、ある特定の実施態様を説明する目的のためのみに用いられるものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。
特段の規定がないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本発明の分野において当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有することが意図される。
原文中、用語の単数形“a”、“an”及び“the”の使用は、明瞭に他の意味が文脈内で示されないかぎりは複数形を含む。
本発明では、本技術分野で周知である通常の分子生物学的技術、微生物学的技術及び組換えDNA技術を用いることができ、それらは以下の文献に記載されている:J. Sambrook, E.F. Fritsch and T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold. Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)(以下では“Maniatis”);T.J. Silhavy, M.L. Bennam and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1984);F. M. Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1987);“Nucleic Acid Hybridization”
[B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)];“Transcription and Translation” [B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)];“Animal Cell Culture” [R.L. Freshney, ed. (1986)];“Immobilized Cells and Enzymes” [IRL Press, (1986)];B. Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning” (1984)。したがって、以下の用語は、本明細書で用いられる場合、下記で説明される定義を有するであろう。
本明細書で、ヌクレオチド配列は、本技術分野で一般的に用いられ、またIUPAC-IUB生化学命名委員会に推奨されるように(Biochemistry, 1972, 11:1726-1723)、一文字ヌクレオチド記号を用い左から右に5'から3'方向で一本鎖によって提示される。
本明細書で用いられる用語“ポリペプチド”は、アミノ酸残基の配列又はタンパク質と互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。これらの用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化又はタンパク質プロセッシングを含む(ただしこれらに限定されない)反応によって翻訳後に修飾されたタンパク質も含む。修飾及び改変、例えば他のタンパク質との融合、アミノ酸配列の置換、欠失又は挿入はポリペプチドの構造において行われ得るが、分子はその生物学的機能的活性を維持する。例えば、ある種のアミノ酸配列置換は、ポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列で行うことができ、そのような特性を有するタンパク質を得ることができる。
本明細書で用いられる本発明の文脈中の用語“cDNA”は、逆転写、典型的には遺伝子により生成されるmRNA又は他のRNAの第二の鎖の合成によって生成される、デオキシリボ核酸を指す。二本鎖の場合は、cDNA分子はコード鎖すなわちセンス鎖と、非コード鎖すなわちアンチセンス鎖との両方を有する。
本発明の“フラグメント”という用語は、本明細書では、単離/精製、化学的合成、又は組換えDNA技術による産生が可能なタンパク質又は核酸分子を指す。これら全ての方法は本技術分野で周知である。下記で例示的に示されるように、本発明で用いられるヌクレオチド配列及びポリペプチドは、例えばin vitro変異導入によって改変することができる。
本明細書で用いられる用語“アンタゴニスト”は、CD38JLと結合した場合に、CD38JLの生物学的若しくは免疫学的活性の作用の量又は持続時間を低下させる分子を指す。アンタゴニストとしては、CD38JLの作用を低下させるタンパク質、核酸、炭水化物、抗体又はその他いずれかの分子が挙げられる。
本明細書で用いられる用語“コード(する)”は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNA、他のRNA分子)又はアミノ酸のある規定された配列を有する他の分子及び前記配列の結果として生じる生物学的特性を有する他の分子を合成するための鋳型として機能する、核酸中のヌクレオチドの特異的な配列に固有の特性を指す。したがって、ある遺伝子によって生成されるmRNAの転写及び翻訳が細胞又はその他の生物学的な系においてあるタンパク質を生成するならば、前記遺伝子は前記タンパク質をコードする。遺伝子又はcDNAのコード鎖(そのヌクレオチド配列はmRNAと同一であって、通常、配列表に規定される)及び非コード鎖(転写の鋳型として用いられる)の両方が、タンパク質又は前記遺伝子若しくは前記cDNAの他の生成物をコードすると言われ得る。1つのタンパク質をコードする核酸には、遺伝暗号の縮退のため、異なるヌクレオチド配列を有するが前記タンパク質と同じアミノ酸配列をコードするいずれの核酸も含まれる。タンパク質をコードする核酸及びヌクレオチド配列はイントロンを含む場合もある。
“発現ベクター”という用語は、上記に記載したベクター又はベヒクルであるが、挿入された配列の発現を宿主への形質転換に続いて可能にするように設計されたものと定義される。クローニングされる遺伝子(挿入配列)は、通常は、プロモータ配列のような制御エレメント配列の作用下に置かれる。そのような発現制御配列は、ベクターが、原核細胞又は真核細胞宿主又はその両者(シャトルベクター)で機能可能に連結された遺伝子を発現させるように設計されているか否かによって変動し、さらに、エンハンサーエレメントのような転写エレメント、終止配列、組織特異的配列、及び/又は、翻訳の開始部位及び終止部位を付加的に含むことができる。
本明細書で用いられるように、用語“オリゴヌクレオチド”は、デオキシリボヌクレオチドのアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)及び/又はシトシン(C)の2つ以上の分子を指す。“オリゴヌクレオチド”という用語は、直鎖状DNA分子若しくはフラグメント、ウイルス、プラスミド、ベクター、染色体又は合成的に得られたDNAにおいて見出すことができる。本明細書で用いられるように、DNA配列は、5'から3'方向の配列のみを提示する通常の慣行にしたがって記載される。
また、本発明のポリヌクレオチドと低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件にてハイブリダイズする核酸分子も意図される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとシグナル検出とにおける変更は、ホルムアミド濃度(より低いパーセンテージのホルムアミドは、より低いストリンジェンシーをもたらす);塩濃度又は温度の操作によって主に達成される。例えば、低ストシンジェンシー条件としては、6xSSPE(20xSSPE=3MのNaCl;0.2MのNaH2PO4;0.02MのEDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100mg/mLのサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベーションを行い;続いて1xSSPE、0.1%SDSにより50℃で洗浄すること、が挙げられる。さらにまた、一層低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションに続いて行う洗浄を、より高い塩濃度(例えば5xSSC)で実施することができる。
本発明のポリヌクレオチドは任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを含むことができ、それらは、改変されていないRNA若しくはDNAであってもよく又は改変されたRNA若しくはDNAであってもよい。ポリヌクレオチドはまた、安定性又はその他の理由のために改変されている1以上の改変された塩基又はDNA若しくはRNA骨格を含むこともできる。“改変された”塩基には、例えばトリチル化塩基及び珍しい塩基(例えばイノシン)が含まれる。多様な改変をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、“ポリヌクレオチド”は化学的、酵素的又は代謝的に改変された形態をも包含する。
2つのDNA配列は、少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、もっとも好ましくは少なくとも約90%又は95%)のヌクレオチドが前記DNAの規定した長さにわたってマッチングする場合に、“実質的に相補的”である。実質的に相同な配列は、配列データバンクで入手できる標準的なソフトウエアを用いて配列を比較することによって、又はサザンハイブリダイゼーション実験、例えばその個々の系について規定されるストリンジェントな条件下のサザンハイブリダイゼーション実験によって、同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは当業者の技術範囲内である。例えば以下の上掲書を参照されたい:Maniatis et al.;DNA Cloning, Vols. I & II;Nucleic Acid Hybridization。
本明細書で用いられる“アミノ酸”又は“アミノ酸配列”という用語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、又は前記のいずれかのフラグメント、及び天然に存在するか又は合成された分子を指す。これに関連して、“フラグメント”、“免疫原性フラグメント”又は“抗原性フラグメント”は、CD38JLスプライスバリアントのアレンジメントを指し、好ましくは長さが約5〜約15アミノ酸である。天然に存在するタンパク質分子のアミノ酸配列を参照するために本明細書に“アミノ酸配列”が列挙される場合、“アミノ酸配列”及び類似する用語は、前記タンパク質分子に付随する完全な天然アミノ酸配列に前記アミノ酸配列が限定されることを意図しない。
本明細書で用いられる“抗原決定基”という用語は、個々の抗体と接触する前記分子のフラグメント(すなわちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質フラグメントを宿主動物の免疫に用いるとき、前記タンパク質の多数の領域(前記タンパク質上の所定の領域又は三次元構造)が、抗原決定基と特異的に結合する抗体の産生を誘導することができる。抗原決定基は、無処置の完全な抗原(すなわち、免疫応答を誘引するために用いられた免疫原)と抗体の結合について競合し得る。
本明細書で用いられる、“相同性又は同一性”という用語は相補性の程度を指す。部分的な相同性又は完全な相同性があり得る。同一配列が標的核酸とハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害する部分的に相補的な配列は、“実質的に相同”であると称される。完全に相補的な配列と標的配列とのハイブリダイゼーションの阻害は、ストリンジェンシーを減じた条件下でのハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べてもよい。
“同一性率”又は“%同一性”という語句は、2つ又は3つ以上のアミノ酸又は核酸配列の比較で見出される配列類似性の百分率を指す。同一性率は電子的に、例えばMEGALIGNプログラム(Lasergene software package, DNASTAR. Inc., Madison Wis.)を用いることによって決定することができる。MEGALIGNプログラムは、種々の方法にしたがって(例えばクラスター法(clustal method)(D.G. Higgins and P.M. Sharp, 1988, Gene 73:237-244))、2つ又は3つ以上の配列間でアラインメントを実施することができる。核酸配列間の同一性率はまた、クラスター法によって又は本技術分野で公知の他の方法(例えばジョータンヘイン法(Jotun Hein method)(J. Hein, 1990, Methods in Enzymology 183:626-645))によって計算することができる。配列間の同一性はまた、本技術分野で公知の他の方法によって(例えばハイブリダイゼーション条件を変動させることによって)決定することができる。
本明細書で用いられる、“ハイブリダイゼーション複合体”という用語は、相補塩基間の水素結合の形成によって2つの核酸配列間で形成される複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中で形成されても(例えばCot又はRot分析)、又は溶液中に存在する1つの核酸配列と固相(例えば紙、メンブレン、フィルター、チップ、ピン又はガラススライド、又は細胞若しくはそれらの核酸が固定されてある他の適切な任意の土台)に固定されたもう一方の核酸配列との間で形成されてもよい。
本明細書で用いられる、“マイクロアレイ”という用語は、それぞれ別個のポリヌクレオチドのアレイ、又は土台(例えば紙、ナイロン又は任意の他のタイプのメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド又は任意の他の適切な固相)上に並べたオリゴヌクレオチドを指す。
本明細書で用いられる、“実質的に精製された”という用語は、核酸又はアミノ酸配列であって、それらの天然の環境から取り出され、単離又は分離され、さらに他の細胞成分又はウイルス成分から少なくとも約60%精製、好ましくは約75%精製、もっとも好ましくは約90%精製されているものを指す。したがって、例えば、“精製されたタンパク質”は天然では見出されないレベルに精製されてある。
本明細書で用いられる、CD38JLの“バリアント”は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が変化しているアミノ酸配列を指す。バリアントは“保存的”変化を有することができる。この場合、置換されたアミノ酸は類似の構造的又は化学的特性を有する(例えばイソロイシンによるロイシンの置換)。より稀であるが、バリアントは“非保存的”変化を有することができる(例えばトリプトファンによるグリシンの置換)。類似のマイナーな変形にはまたアミノ酸欠失又は挿入又はその両方が含まれ得る。生物学的又は免疫学的活性を失うことなく、どのアミノ酸残基を置換、挿入又は欠失させることができるかを決定する際のガイダンスは、本技術分野で周知のコンピュータプログラム(例えばDNASTARソフト)を用いて見出すことができる。
図4は正常組織におけるAI989354の発現分布を示す。データは、アフィメトリックス・ジーンチップ(Affymetrix Gene Chip(登録商標))の発現分析テクニカルマニュアルに記載された方法にしたがってアフィメトリクスU95ジーンチップ実験から得た。胸腺を含む種々の組織でAI989354の発現上昇が存在する。
図5は、正常組織に対して種々の炎症組織におけるAI989354の発現分布を示す。前記もまたアフィメトリックス分析により得られた。CD38JLもまた、IBD並びに潰瘍性大腸炎及びクローン病Dの患者由来の組織で誘導される。前記起源の組織における発現強化は、スプライスバリアントはT細胞活性化に役割を果たす可能性があること、したがって自己免疫及び炎症性疾患に対する新規な薬剤ターゲットを提供することができることを示唆している。図6は、アフィメトリックスU95ジーンチップアレイによって測定した、CD4T細胞のAI989354発現を示す。
図7及び配列番号1は、CD38JL-2 cDNAの予想される81アミノ酸のポリペプチド翻訳物を示す。図8は、CD38JL cDNAのcDNA配列に沿って最初のMETで始まる、CD38翻訳物の配列を示す。境界を含むエクソンの位置には標識が付されてあり、CD38と異なる配列には下線が付されている。
遺伝暗号の縮退のために、CD38JLをコードする多数のポリヌクレオチド配列(前記のいくつかは、公知のさらに天然に存在する遺伝子のいずれかのポリヌクレオチド配列と最小限の相同性を有する)が生成され得ることは、当業者には理解されよう。したがって、本発明はまた、代替的なコドン選択を基にして組合せを選択することによって製造することができる変型ポリヌクレオチド配列を包含する。これらの組合せは、天然に存在するCD38JLのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号にしたがって実施される。
CD38JL及びそのバリアントをコードするヌクレオチド配列は、好ましくは天然に存在するCD38と適切に選択したストリンジェンシー条件下にてハイブリダイズすることができるが、実質的に異なるコドン使用頻度をもつCD38JL又はその誘導体をコードするヌクレオチド配列を生成することが有利であり得る。個々のコドンが宿主によって利用される頻度にしたがって、コドンを選択して、ペプチド発現が特定の原核細胞又は真核細胞宿主で生じる速度を増加させることができる。コードされるアミノ酸配列を変更することなくCD38JLをコードするヌクレオチド配列を実質的に変化させるその他の理由には、天然に存在する配列から生成される転写物よりも望ましい特性(例えばより長い半減期)をもつRNA転写物を生成することが含まれる。
本発明に含まれるものはまた、本発明のポリヌクレオチド配列、及び特に配列番号2又は配列番号2のフラグメントと多様なストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列である(例えば以下を参照されたい:G.M. Wahl and S.L. Berger 1987, Methods Enzymol. 152:399-407;A.R. Kimmel, 1987, Methods Enzymol. 152:507-511)。
天然に存在しないコドンをもつ、CD38JLをコードするヌクレオチド配列を用いてもよい。例えば、原核細胞宿主にとって好ましいコドンを用いてタンパク質発現を高めるか、又は所望の特性、例えば天然に存在する配列から生成される転写物の半減期より長い半減期をもつRNA転写物を生成することができる。
CD38JL-コード配列を変化させるために、本技術分野で一般的に知られている方法を用いて、例えばクローニング、プロセッシング、及び/又は遺伝子生成物の発現によって本発明のヌクレオチド配列を変化させることができる。組換えDNA技術及び合成オリゴヌクレオチドを用いて前記ヌクレオチド配列を改変してもよい。
さらにまた、本発明のCD38スプライスバリアントをスクリーニングアッセイ及び超高速大量処理アッセイで用いて、CD38スプライスバリアントポリペプチドの小分子阻害物質を特定することができる。小分子阻害物質は、このCD38バリアントとその細胞表面レセプターとの結合を阻止することができる。CD38は、CD31との相互作用を介してリンパ球と内皮細胞との結合及び前記内皮細胞上でのローリングに必要であることが知られている(U. Dianzani, H. Stockinger and F. Malavasi, 1998, J. Immunol. 160:395-402)。したがって、in vivoでの小さな阻害物質による遮断はリンパ球接着に影響を与えることができよう。
本発明のまた別の実施態様では、CD38JLをコードする天然、改変又は組換え核酸を異種配列に連結して融合タンパク質をコードさせることができる。例えば、ペプチドライブラリーをCD38JL活性の阻害物質についてスクリーニングすることができる。さらに、市販の抗体によって認識することができるCD38JLキメラタンパク質をコードすることもまた有用であろう。融合タンパク質はまた、CD38JLを切断して異種成分から精製することができるように、CD38JLコード配列と前記他の異種タンパク質配列との間に切断部位を含むように製造することができる。
CD38JL又はそのフラグメントをコードするポリペプチド配列を、本技術分野で周知の化学的方法を用いて合成することができる(例えば以下を参照されたい:M.H. Caruthers et al. 1980, Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 215-223;T. Horn et al. 1980, Nucl. Acids Res. Symp. Ser. 225-232)。合成したペプチドを調製用高性能液体クロマトグラフィーによって実質的に精製することができる。(例えば以下を参照されたい:R.M. Chiez and F.Z. Regnuer, 1990, Methods Enzymol. 182:392-421)。合成によって生成されたペプチドの組成はアミノ酸分析又は配列決定によって確認することができる(例えば以下を参照されたい:T. Creighton, 1983, Proteins, Structures and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., New York, N.Y.)。
さらにまた、CD38JLのアミノ酸配列又はその任意の部分を直接合成時に改変し、及び/又は他のタンパク質若しくはその任意の部分由来の配列と一緒にしてバリアントポリペプチドを生成してもよい。さらにまた、固相法を用いるペプチド直接合成によってCD38JLを生成することも意図される(例えば以下を参照されたい:T.E. Creighton, 1984, Proteins:Structures and Molecular Properties, pp.55-60, W.H. Freeman & Co., New York, N.Y.)。タンパク質合成は、手動技術によっても又は自動化によっても実施することができる。自動合成は、例えばアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を用いて実施することができる。CD38JLのフラグメントは別々に合成し、続いて完全長の分子を生成してもよい。
CD38JLのフラグメントは、本技術分野で周知の技術を用いて組換え体を生成することによって製造することができる。CD38JLをコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、CD38JLタンパク質の発現及び細胞培養から前記の分離に適した条件下で培養されるであろう。さらにまた、CD38JLをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、細胞膜からCD38JLの分泌を誘導するシグナル配列を含むように、又はタンパク質の精製を容易にするように、操作することができることは理解されよう。そのような精製ドメインには、固定された金属上での精製を可能にする金属キレートペプチド、固定免疫グロブリン上での精製を可能にするタンパク質Aドメインが含まれる。
CD38JLポリヌクレオチド配列に由来するポリヌクレオチドプローブは、自己免疫及び炎症性症状のプローブ又は診断薬として有用であり得るということも意図される。したがって、本発明は、配列番号1並びに配列番号1の塩基188〜508及び775〜1884から選択される10以上の塩基を含む、単離及び精製したポリヌクレオチドを提供する。
本発明のまた別の実施態様では、CD38JL又はその誘導体を発現することができるベクターを、免疫学的疾患を治療又は予防するために対象者に投与することができる。
また別の実施態様では、CD38JLの活性を調節するアゴニストを、免疫学的疾患を治療又は予防するために対象者に投与することができる。
本発明のまた別の実施態様では、CD38JLの活性を調節するアンタゴニストを、免疫学的疾患を治療又は予防するために対象者に投与することができる。CD38JLアンタゴニストは本技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。アンタゴニストは、CD38JLに付随する酵素機能の有益な調節により効果的であると考えられる。アゴニスト又はアンタゴニストのどちらかがその機能に基づいて作用することができよう。
精製CD38JLを用いて、抗体を製造するか、又は医薬ライブラリーをスクリーニングしてCD38JLと特異的に結合するものを特定することができる。CD38JL抗体はまた、本技術分野で知られている方法を用いて製造してもよい。そのような抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントが含まれるが、ただしこれらに限定されない。中和抗体(すなわちダイマー形成を阻害するもの)が治療的使用に特に好ましい。
好ましくは、CD38JLに対する抗体を誘導するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド又はフラグメントは、少なくとも約5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約10アミノ酸から成るアミノ酸配列を有するべきである。さらにまた、これらのオリゴペプチド、ペプチド又はフラグメントは天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、天然に存在する小さな分子の完全なアミノ酸配列を含むことが好ましい。CD38JLの短い一続きの配列及び他のタンパク質を含まれるキメラ分子が、また意図される。
CD38JLモノクローナル抗体は、持続細胞株培養によって抗体分子を生成するための公知の方法を用いて製造することができる。これらの方法には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、ただしこれらに限定されない(例えば以下を参照されたい:G. Kohler et al. 1975, Nature 256:495-497;D. Kozbor et al. 1985, J. Immunol. Methods 81:31-42;R.J. Cote et al. 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030;S.P. Cole et al. 1984, Mol. Cell. Biol. 62:109-120)。
CD38JL特異的抗体は、本技術分野で公知の多様な免疫アッセイを用いて特定することができる。そのような免疫アッセイは典型的には抗原-抗体複合体形成の測定を必要とする。2つの非干渉性CD38JLエピトープと反応するモノクローナル抗体を用いる、二部位モノクローナル系免疫アッセイ(two-site monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイもまた用いることができる。CD38JLに対する抗体は炎症性症状治療の治療薬として有用であり得る。したがって、本発明のある実施態様では、配列番号1のポリペプチドと特異的に結合する精製抗体が提供される。
また別の実施態様では、CD38JLと特異的に結合する抗体は、CD38又はCD38JLの発現を特徴とする疾患の診断に、又はCD38JLポリペプチドのアゴニスト、アンタゴニスト又はCD38JL阻害物質で処置された患者をモニターするためのアッセイで用いることができる。診断の目的に有用な抗体は本明細書に記載する方法を用いて製造することができる。CD38JLのための診断アッセイには、ヒトの身体に由来するサンプル(組織、細胞、液)でCD38JLを検出するために抗体及び標識を利用する方法が含まれる。そこで、前記抗体は場合によって改変され、及び/又はレポーター分子の共有結合又は非共有結合によって標識される。
タンパク質(例えばCD38JL)の存在を検出するための多様なプロトコルが本技術分野で公知であり、ELISA、RIA及びFACSが含まれる。これらの方法は、異常レベルのCD38JL発現の診断に用いることができる。CD38JL発現の正常又は標準的な値は、健常な哺乳動物の対象(好ましくはヒト)から採取された体液又は細胞抽出物を複合体形成に適した条件下でCD38JLに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法(好ましくは測光的手段)によって測定することができる。対象者の組織サンプルで発現されるCD38JLのレベルを続いて標準的な値と比較する。標準値と対象者の値との間の偏差を計算し、疾患診断のためのパラメータの確立に用いる。
本発明のある実施態様では、CD38JL特異的配列に対して作成したPCRプローブを用いて、CD38JLをコードする核酸配列を特定することができる。プローブの特異性(例えば前記が高度に特異的な領域から作成されるか否か)及びハイブリダイゼーション又は増幅のストリンジェンシー(最大、高度、中等度又は低いストリンジェンシー)が、前記プローブが、CD38JL、その対立遺伝子座又は関連配列をコードする天然に存在する配列のみを特定するか否かを決定するであろう。
核酸プローブはまた関連配列の検出に用いることができ、前記プローブは、CD38JLコード配列のいずれかに由来するヌクレオチドの少なくとも約60%を含む。本発明のハイブリダイゼーションプローブはDNAでもRNAでもよく、さらに配列番号2の配列から誘導することができる。
CD38JLをコードするポリヌクレオチド配列は、CD38JLの発現を伴う疾患の診断に用いることができる。
タンパク質(例えばCD38JL)の発現を前記タンパク質に特異的なポリクローナル又はモノクローナル抗体を用いて検出及び測定する方法は、本技術分野で理解されている(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al. 1990, Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St. Paul, Minn, Section IV;D.E. Maddox et al. 1983, J. Exp. Med. 158:1211-1216)。使用される好ましい技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光活性化細胞分類(FACS)及び放射性免疫アッセイ(RIA)が含まれる。CD38JL上の2つの非干渉性エピトープと反応するモノクローナル抗体を用いる二部位、モノクローナル抗体系免疫アッセイも、競合結合アッセイと同様に用いることができる。
種々の核酸及びアミノ酸アッセイで用いることができる多数の標識及び結合技術が有り、これらは本技術分野で公知である。CD38JLをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するために標識されたハイブリダイゼーションプローブ及びPCRプローブを作成する手段には、末端標識及び標識ヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれるが、ただしこれらに限定されない。また別には、CD38JLをコードする配列及びその誘導体を含むmRNAプローブは、本技術分野で公知の技術を用いて操作することができる。そのようなベクターは本技術分野で公知であり、さらに市販されていて、前記を用いてRNAプローブを適切なRNAポリメラーゼの添加によってin vitroで合成することができる。問題の分子を検出するために用いることができるレポーター分子又は標識には放射性核種、発色性物質、蛍光物質、化学発光物質が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明はまた、患者に本発明の化合物を投与することを含む、CD38JL機能の調節方法を提供する。患者のCD38JL機能を調節する目的が疾患の状態又は症状を治療することである場合、前記投与は、好ましくは治療的又は医薬的に有効な量の医薬的に許容できる本発明の化合物を含む。患者のCD38JL機能を調節する目的が診断又は他の目的(例えば患者の治療に対する適切性又は治療用量未満の種々の用量に対する患者の感受性の決定)のためである場合は、投与は好ましくは有効量(すなわち、所望の調節効果又は調節の度合いを得るために必要な量)の本発明の化合物を含む。
本発明の化合物は典型的には医薬組成物の形で投与することができる。そのような組成物は、製薬分野で周知の方法を用いて製造することができ、本発明の少なくとも1つの化合物を含む。本発明の化合物はまた単独で投与してもよいが、また、本発明の化合物の安定性を強化し、ある種の実施態様では本発明の化合物を含む医薬組成物の投与を促進し、溶解又は分散の増強、阻害活性の強化を提供し、補助治療を提供するアジュバントなどと併用して投与してもよい。本発明の化合物はそのものだけで用いてもよいが、また、本発明の他の活性物質と一緒に、場合によってはまた他の薬理学的に活性な物質と一緒に用いてもよい。一般的には、本発明の化合物は治療的に又は医薬的に有効な量で投与されるが、診断又は他の目的のためにはより少ない量で投与することができる。
非経口投与に適した医薬組成物は本発明の化合物の無菌的水性調製物を含むことができる。前記の調製物は好ましくは静脈内に投与されるが、ただし皮下、筋肉内又は皮内注射によっても投与は有効であり得る。注射可能な医薬製剤は、通常は注射可能な無菌的食塩水、リン酸緩衝食塩水、油性懸濁液又は本技術分野で公知の他の注射可能な担体を基剤とし、通例では滅菌され、さらに血液と等張にされる。したがって、注射可能な医薬製剤は、無菌的な注射可能な溶液又は懸濁液として、毒性のない非経口的に許容できる稀釈剤又は溶媒、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、生理食塩液、固定油(例えば合成モノ-又はジ-グリセリド)、脂肪酸(例えばオレイン酸)などで提供される。そのような注射可能な医薬製剤は、適切な分散剤若しくは硬化剤及び懸濁剤を用い公知の技術にしたがって製剤化される。注射可能な組成物は通例、0.1から5%(w/w)の本発明の化合物を含むであろう。
本発明の化合物の経口投与用液体剤形にはエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれ、前記は場合によって担体(例えば水、食塩水、デキストロース水、グリセロール、エタノールなど)中に医薬アジュバントを含む。前記組成物はまたさらに別のアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤及び香料を含むことができる。
経皮的投与もまた可能である。経皮投与に適した医薬組成物は、長時間にわたって需要者の表皮と密着して維持されるように適合させた別個に分離した絆創膏として提供することができる。経皮的デリバリー系の形で投与されるために、投与は、もちろんのこと投薬スケジュールの全期間にわたって間欠的ではなく持続的であろう。そのような絆創膏は適切には、場合によって緩衝水溶液中に本発明の化合物を含み、前記は接着剤中に溶解及び/又は分散されるか、又はポリマー中に分散されている。活性化合物の適切な濃度は約1%から35%、好ましくは約3%から15%である。
直腸投与はユニットドースの座薬を利用することによって実施することができる。前記ユニットドース座薬では、本発明の化合物が低温溶融水溶性又は不溶性固体(例えば脂肪、カカオ脂、グリセリン化ゼラチン、水素添加植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、又はポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなど)と混合される。活性化合物は通常マイナー成分であって、しばしば0.05重量%から10重量%で、残りは基剤成分である。
一般的には、治療的に有効な1日の用量は、1日に付き体重1kg当たり、約0.001mgから約15mgの本発明の化合物、好ましくは約0.1mgから約10mg/kg体重/日、もっとも好ましくは約0.1mgから約1.5mg/kg体重/日であろう。例えば70kgのヒトへの投与の場合、投薬範囲は約0.07mgから約1050mg/日の本発明の化合物、好ましくは約7.0mgから約700mg/日、もっとも好ましくは約7.0mgから約105mg/日であろう。ある程度の日常的な用量最適化が最適な投与量レベル及びパターンの決定に必要であろう。
医薬的に許容できる担体及び賦形剤は上述の全ての添加物などを包含する。
ドナーから入手した末梢血からヒトCD4+ T細胞を精製し、抗CD3抗体+抗CD28抗体、又は抗CD3抗体+ICAMにより24時間又は72時間刺激した。未刺激細胞をコントロールとして用いる。これら細胞から全RNAを抽出し、アフィメトリックスU95遺伝子チップを用いる分析によって定量した。発現プロフィル分析を実施し、T細胞活性化中(抗CD3抗体+抗CD28抗体、又は抗CD3抗体+ICAMのどちらかによる)にEST(AI989354)が高度に発現されることを特定した(図6)。データは異なる3人のドナー由来のT細胞によって確認された(図1)。
正常組織における遺伝子AI989354の発現プロフィルもまたアフィメトリックスU95遺伝子チップ実験によって得た。多数のドナー由来のRNAサンプルを正常組織の各群について用いた。AI989354は正常な胸腺細胞で発現され(図4)、前記はT細胞及び免疫系で重要な機能であることが示唆される。検査した他の全ての正常組織でのAI989354の発現は比較的低かった(図4)。胸腺における選択的発現は、この遺伝子が重要な機能を有し、さらにこの遺伝子は好ましい標的になる可能性を示唆した。なぜならば、この遺伝子の他の組織での低い発現のために阻害物質、アンタゴニスト又はアゴニストによるその調節には副作用が少ない可能性があるからである。
“ロンゲスト-クローン(Longest-Clone)”(Origene Technologies Inc, Rockville, MD)のヒト末梢血白血球(PBL)cDNAライブラリーアレイパネルからプラスミドクローンLJ-2を単離した。前記ヒトcDNAフラグメントをベクター、pCMV6-XL4(そのサイズはcDNAライブラリーを構築するために4.7kbである)に挿入した。約6百万個のサイズ選別クローン(胎児及び成人脳、心臓、腎臓、肝臓、肺臓、筋肉、末梢血白血球、胎盤、小腸、脾臓及び精巣から成る12のヒト組織のライブラリーパネルに由来する)を96ウェルの“スーパープレート”に並べた。前記スーパープレートの各ウェルは40,000クローンを含む。ライブラリースクリーンのために、3つのPCRプライマーをAI989354配列から設計した。
配列番号3:P1R(リバースプライマー) GAGGTGTTGAGTCTTTCTGGGCA
配列番号4:P2F(フォワードプライマー) ATAGCCTGCTTCCGAATTCTTGG
配列番号5:P3F(フォワードプライマー) CCCATGCTCCCTAATTCCCTTC
配列番号6:VP3F(フォワードプライマーベクター) GACAGAGCTCGTTTAGTGAACC
配列番号7:VP6R(リバースプライマーベクター) TAGAAGGACACCTAGTCAGAC
前記スーパープレートをP3F/P1Rプライマー対を用いてPCRによってスクリーニングした。続いて陽性ウェルをVP3F/P1Rプライマー対を用いてスクリーニングし、最長クローンをもつウェルを特定した。このウェルは“マスタープレート”に対応し、前記はウェル当たり5,000クローンを含んでいる。さらにまた、前記マスタープレートをVP3F/P1Rプライマーを用いてスクリーニングし、最長クローンを含むウェルを特定した。約96ウェルのサブプレート(マスタープレートの選別ウェルに由来し、ウェル当たり50クローンを含む)をP3F/P1Rプライマーを用いてPCRによりスクリーニングした。続いて、陽性サブプレート由来の細胞を平板培養し、96個の個々のコロニーを釣り上げ、PCRでスクリーニングし、プライマー対P3F/P1R、VP3F/P1R、P2F/VP6R及びP3F/VP6Rを用いて最終クローンを特定した。1つのクローンLJ-2からそれぞれP3F/P1R(〜436bp)、VP3F/P1R(〜1.7kb)、P2F/VP6R(〜590bp)及びP3F/VP6R(〜620bp)によってPCR生成物を増幅した。AI989354配列を含むLJ-2配列を、クローンLJ-2の挿入物を配列決定することによって得た。
多数の炎症組織及び正常コントロール組織における遺伝子AI989354のmRNA発現もまたアフィメトリックスU95ジーンチップ実験によって得られた。AI989354発現は、炎症性大腸疾患の患者由来の炎症結腸組織で誘導される(39の正常結腸に対して6人のクローン病患者及び7人の潰瘍性大腸炎患者由来の結腸組織を比較)(図5)。前記遺伝子はまた、正常コントロールと比較して炎症直腸及び炎症脾臓で誘導される(図5)。これら炎症組織におけるAI989354の誘導発現は、AI989354はこれら組織における炎症応答を仲介する可能性を示唆する。
配列番号1と高度な類似性を有するタンパク質ファミリー、ドメイン又は部位を得るために、INTERPROプログラムを用いてインタープロ(InterPro)データベースの配列番号1の検索を実施した。この検索によって、2つのタンパク質ファミリー、PFO2267ファミリー及びSSF56629ファミリーが明らかにされた。前記PFO2267ファミリーは、ADP-リボシルシクラーゼCD38/157を有するポリペプチドをコードする。PFO2667のためのe-値は5.9e-05であった。前記SSF56629ファミリーもまた、ADP-リボシルシクラーゼ領域を有する。SSF56629のためのE-値は9e-23であった。
配列番号1
1 MKLGTQTVPC NKILLWSRIK DLAHQFTQVQ RDMFTLEDTL LGYLADDLTW
51 CGEFNTSSEA LGPVGLPRDV EGEQSDFCWR P
配列番号2
1 GAATTCGCAC CAGAAGAGCC CAACTCTGTC TTGGCGTCAG TATCCTGGTC
CTTAAGCGTG GTCTTCTCGG GTTGAGACAG AACCGCAGTC ATAGGACCAG
51 CTGATCCTCG TCGTGGTGCT CGCGGTGGTC GTCCCGAGGT GGCGCCAGCA
GACTAGGAGC AGCACCACGA GCGCCACCAG CAGGGCTCCA CCGCGGTCGT
101 GTGGAGCGGT CCGGGCACCA CCAAGCGCTT TCCCGAGACC GTCCTGGCGC
CACCTCGCCA GGCCCGTGGT GGTTCGCGAA AGGGCTCTGG CAGGACCGCG
151 GATGCGTCAA GTACACTGAA ATTCATCCTG AGATGAGAAA CAGCTAAAAG
CTACGCAGTT CATGTGACTT TAAGTAGGAC TCTACTCTTT GTCGATTTTC
201 AAGTGAGTTG GGCCAGGCAC TGTGGCTCAC ACCTGTAATC CCAGCACTTT
TTCACTCAAC CCGGTCCGTG ACACCGAGTG TGGACATTAG GGTCGTGAAA
251 GGGAGGCCCA GGCAGGTGGA TCACTTAAGG TCAGGAGTAC AAGACCTGCC
CCCTCCGGGT CCGTCCACCT AGTGAATTCC AGTCCTCATG TTCTGGACGG
301 TGGCCAACAT GCTGAAACTC CGTCTCTACT AAAAATACAA AATTAGCCGG
ACCGGTTGTA CGACTTTGAG GCAGAGATGA TTTTTATGTT TTAATCGGCC
351 GTGTTGTGGC GCGTGCCTGT AATCCCAGCT ACTCTGGAGA CTGAGGTGGG
CACAACACCG CGCACGGACA TTAGGGTCGA TGAGACCTCT GACTCCACCC
401 AGAATCGCTT GAACCCAGGA GGAGGAGGTA GCACTGAACC AAGATCCAGC
TCTTAGCGAA CTTGGGTCCT CCTCCTCCAT CGTGACTTGG TTCTAGGTCG
451 CTGGCCAAGA GAGTAAGACT CCGTCTCAAA ACCAAACCAA ACCAAACCAA
GACCGGTTCT CTCATTCTGA GGCAGAGTTT TGGTTTGGTT TGGTTTGGTT
501 AAAAAGAAAC ATGTAGACTG CCAAAGTGTA TGGGATGCTT TCAAGGGTGC
TTTTTCTTTG TACATCTGAC GGTTTCACAT ACCCTACGAA AGTTCCCACG
551 ATTTATTTCA AAACATCCTT GCAACATTAC TGAAGAAGAC TATCAGCCAC
TAAATAAAGT TTTGTAGGAA CGTTGTAATG ACTTCTTCTG ATAGTCGGTG
601 TAATGAAGTT GGGAACTCAG ACCGTACCTT GCAACAAGAT TCTTCTTTGG
ATTACTTCAA CCCTTGAGTC TGGCATGGAA CGTTGTTCTA AGAAGAAACC
651 AGCAGAATAA AAGATCTGGC CCATCAGTTC ACACAGGTCC AGCGGGACAT
TCGTCTTATT TTCTAGACCG GGTAGTCAAG TGTGTCCAGG TCGCCCTGTA
701 GTTCACCCTG GAGGACACGC TGCTAGGCTA CCTTGCTGAT GACCTCACAT
CAAGTGGGAC CTCCTGTGCG ACGATCCGAT GGAACGACTA CTGGAGTGTA
751 GGTGTGGTGA ATTCAACACT TCCAGTGAGG CTCTGGGCCC TGTGGGATTG
CCACACCACT TAAGTTGTGA AGGTCACTCC GAGACCCGGG ACACCCTAAC
801 CCCAGGGATG TGGAGGGTGA ACAGAGTGAC TTCTGCTGGA GGCCCTGAAT
GGGTCCCTAC ACCTCCCACT TGTCTCACTG AAGACGACCT CCGGGACTTA
851 GATTAGTGTG GAGGACAGAG CCACAGGCAC CCATCCTGAT GCCATCTATA
CTAATCACAC CTCCTGTCTC GGTGTCCGTG GGTAGGACTA CGGTAGATAT
901 CTTATATTAG TCCATTTGTG TTGCTATTAA GGAATACCTG AGGCTGCGTA
GAATATAATC AGGTAAACAC AACGATAATT CCTTATGGAC TCCGACGCAT
951 ATTTATAAAG AAAAGAGGTT TATTTGACTC ACAGTTACGC AGGCTGTACA
TAAATATTTC TTTTCTCCAA ATAAACTGAG TGTCAATGCG TCCGACATGT
1001 AGAAGTAGGG TACCAGCATC CACTTCGGGT GAAGGCCTGA GGCTGTTTCC
TCTTCATCCC ATGGTCGTAG GTGAAGCCCA CTTCCGGACT CCGACAAAGG
1051 ACTCATGGAG AAGGGGAAGG GGAGCTGGCA TTTACAGAGA TCACATGGTG
TGAGTACCTC TTCCCCTTCC CCTCGACCGT AAATGTCTCT AGTGTACCAC
1101 AGGGAGGAAA GCAAGGAGAG GTCAGGGGAG GTGCCAGGCT GTTTGTAATG
TCCCTCCTTT CGTTCCTCTC CAGTCCCCTC CACGGTCCGA CAAACATTAC
1151 ACCAGCTGTC CTGGGAACTA GTAGAGTAAG AACTCATTAC TATAAGGACA
TGGTCGACAG GACCCTTGAT CATCTCATTC TTGAGTAATG ATATTCCTGT
1201 GCACCATGCC ATTCGTGCAG GATCATCCCT ATGACCCAAA CACCTCCTAC
CGTGGTACGG TAAGCACGTC CTAGTAGGGA TACTGGGTTT GTGGAGGATG
1251 TAGTCCCGAG CTCCAACACT GGGGGTCGAA TTTCAACATA AGGTTTGGAG
ATCAGGGCTC GAGGTTGTGA CCCCCAGCTT AAAGTTGTAT TCCAAACCTC
1301 AGTTAAATAT CCAAACTATA GCACTACCCT TAATGGCAAC TCAGGCTGAT
TCAATTTATA GGTTTGATAT CGTGATGGGA ATTACCGTTG AGTCCGACTA
1351 ATAAAGTAGC ATTCCCTGTT TTCTTGAAAA ATTGACTTCA GAGTTGGGGA
TATTTCATCG TAAGGGACAA AAGAACTTTT TAACTGAAGT CTCAACCCCT
1401 TTGCCCATGC TCCCTAATTC CCTTCTTTTG AGTGCTCACA TAGCCTGCTT
AACGGGTACG AGGGATTAAG GGAAGAAAAC TCACGAGTGT ATCGGACGAA
1451 CCGAATTCTT GGTATTTTGC TCTCTGTAAG GTCATCATTC AGGTCCAAAG
GGCTTAAGAA CCATAAAACG AGAGACATTC CAGTAGTAAG TCCAGGTTTC
1501 AAGTCTAGAA CAGGATGAGG TCTCAGTGGG ACCTAGACCA AGGTTCTTGC
TTCAGATCTT GTCCTACTCC AGAGTCACCC TGGATCTGGT TCCAAGAACG
1551 TCTTCAGAAT CATCACAGTA GCCATGGACT GGACTCTTCC ATCTCAGGCA
AGAAGTCTTA GTAGTGTCAT CGGTACCTGA CCTGAGAAGG TAGAGTCCGT
1601 CTGGCTTTGC CATCATTTTT CAGATGTAGC CTTACCCTGC CCAGAAAGAC
GACCGAAACG GTAGTAAAAA GTCTACATCG GAATGGGACG GGTCTTTCTG
1651 TCAACACCTC ACCAGGGGAA GGGATTTCCT ACAACCAAAA CCCTACTGCA
AGTTGTGGAG TGGTCCCCTT CCCTAAAGGA TGTTGGTTTT GGGATGACGT
1701 GTTTTCACTT CTTTTTTTTT TCTTTTTGTT TATATGGTGG ATATTTTTAC
CAAAAGTGAA GAAAAAAAAA AGAAAAACAA ATATACCACC TATAAAAATG
1751 TTTATATAGT TTTATTCTTA TTTTTACTGT TTTTCATTGT TTGTTTTTAA
AAATATATCA AAATAAGAAT AAAAATGACA AAAAGTAACA AACAAAAATT
1801 AAGCTTATCT TATTATAGCT TCTTTGTCCC AGGTTTGCAT TACTTTCAAT
TTCGAATAGA ATAATATCGA AGAAACAGGG TCCAAACGTA ATGAAAGTTA
1851 TACAAAAATA AAGCATGATT ATTTGAAAAA AAAAAAAAAA AAAACTCGAC
ATGTTTTTAT TTCGTACTAA TAAACTTTTT TTTTTTTTTT TTTTGAGCTG
GAGGTGTTGAGTCTTTCTGGGCA
配列番号4
ATAGCCTGCTTCCGAATTCTTGG
配列番号5
CCCATGCTCCCTAATTCCCTTC;
配列番号6
GACAGAGCTCGTTTAGTGAACC
配列番号7
TAGAAGGACACCTAGTCAGAC
Claims (12)
- 配列番号1のポリペプチドを含む精製されたポリペプチド。
- 配列番号1のアミノ酸残基58〜81を含むポリペプチド。
- 配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸58〜81を含むフラグメントを含むポリペプチドをコードする、配列番号2の塩基603〜845又は塩基774〜845を含む単離及び精製されたポリヌクレオチド。
- 請求項3のポリヌクレオチドと相補的な単離及び精製されたポリヌクレオチド。
- 請求項3又は4のポリヌクレオチドを少なくとも含む発現ベクター。
- 請求項5の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 核酸を含む生物学的サンプル中で配列番号1によって定義されるCD38JLをコードするポリヌクレオチド配列を検出する方法であって、
(a)配列番号1の配列又は配列番号1のアミノ酸58〜81を含むフラグメントを含むポリペプチドをコードする、配列番号2の塩基603〜845又は塩基774〜845を含むポリヌクレオチドの相補物を、前記生物学的サンプルの核酸の少なくとも1つとハイブリダイズさせ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成する工程;及び
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する工程、ここで前記ハイブリダイゼーション複合体の存在は、前記生物学的サンプルにおける配列番号1によって定義されるCD38JLをコードするポリヌクレオチドの存在と相関性を示す;
を含む、前記方法。 - 配列番号1のアミノ酸残基58〜81を含むポリペプチドと特異的に結合する精製抗体。
- 配列番号2の塩基774〜845を含むポリヌクレオチドの相補物を含み、ヒトの細胞内でCD38の内因性発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
- 配列番号1のCD38スプライスバリアントポリペプチドの小分子阻害物質を特定するための、スクリーニングアッセイ及び超高速大量処理アッセイにおける前記CD38スプライスバリアントの使用。
- 医薬ライブラリーをスクリーニングして、配列番号1のCD38スプライスバリアントポリペプチドに特異的に結合する医薬を特定するための、前記CD38スプライスバリアントの使用。
- 配列番号1のCD38スプライスバリアントポリペプチドに特異的に結合する抗体を製造するための、前記CD38スプライスバリアントの使用。
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