図1から図7を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1に示すように、内視鏡装置1は、撮像手段を内蔵した実施例1の電子内視鏡(内視鏡本体であり、以下、単に内視鏡と略記)2と、この内視鏡2に照明光を供給する光源装置3と、内視鏡2から出力される撮像信号を信号処理する信号処理装置4と、この信号処理装置4から出力される映像信号を画面上に表示するカラーモニタ5と、吸引の動作を行う吸引ポンプ6aを内蔵した吸引装置6と、を有して構成されている。
内視鏡2は、細長の挿入部7と、この挿入部7の後端側に連設され該挿入部7よりも大径の操作部8と、この操作部8の側部から延設されたユニバーサルケーブル9と、を備えている。前記ユニバーサルケーブル9の端部にはコネクタ10が設けられており、このコネクタ10は光源装置3に着脱自在で接続される。
また、このコネクタ10には、ユニバーサルケーブル9内に挿通された後述する吸引側管路(操作部側吸引管路)32の手元側後端となる吸引コネクタ(吸引口金)10aが設けられており、この吸引コネクタ10aは吸引チューブ6bを介して吸引装置6に接続される。
挿入部7は、最先端側に設けられた硬質の先端部11と、この先端部11の後端に形成された湾曲自在の湾曲部12と、この湾曲部12の後端に形成されており、長尺で可撓性を有する軟性部(可撓部)13と、を有して構成されている。また、この軟性部13の後端は、操作部8の前端に連結されている。この軟性部13の後端外周には、テーパ形状に形成された折れ止め部14が設けられている。
挿入部7、操作部8、ユニバーサルケーブル9内には、可撓生を有し、照明光を伝送する機能を有するファイバ束からなるライトガイド15が挿通され、コネクタ10から突出するライトガイドコネクタを光源装置3に接続することにより、光源装置3内の図示しないランプからの照明光がライトガイドコネクタの端面に供給される。
このライトガイド15によって伝送された照明光は、先端部11の照明窓に固定された先端面から前方に出射され、患部等の被写体を照明する。照明された被写体の像は、照明窓に隣接して先端部11に設けられた観察窓に取り付けられている対物レンズ16により、その結像位置に光学像として結像される。この結像位置には、光電変換する機能を備えた撮像素子として電荷結合素子(CCDと略記)17が配置されており、光学像を電気信号に変換するようになっている。
このCCD17は、信号ケーブル18の一端と接続されている。この信号ケーブル18は、挿入部7内等を挿通されて、その後端がコネクタ10の電気コネクタ19に接続されている。この電気コネクタ19は、外部ケーブル20を介して、信号処理装置4に接続される。
この信号処理装置4内にはドライブ回路21が設けられており、このドライブ回路21から出力されるCCDドライブ信号は、CCD17に印加される。CCD17は、CCDドライブ信号が印加されることにより、光電変換された撮像信号を出力し、この撮像信号は、信号処理装置4内の信号処理回路22に入力される。そして、この撮像信号は、信号処理回路22により信号処理されて、標準的な映像信号に変換される。この標準的な映像信号は、カラーモニタ5に入力される。すると、カラーモニタ5は、内視鏡画像表示領域5aに、CCD17により撮像された内視鏡画像をカラー表示する。
先端部11に隣接して設けられた湾曲部12は、リング形状の多数の湾曲駒24を、隣接する湾曲駒24と上下、左右に対応する位置でリベット等で互いに回動自在に連結して構成されている。そして、複数の湾曲駒24の内の最先端の湾曲駒24、または先端部11には、湾曲ワイヤ25が固着されている。この湾曲ワイヤ25の後端は、操作部8内のスプロケット26に連結されている。このスプロケット26は、回動自在となるように構成されており、該スプロケット26には、湾曲操作を行う湾曲操作ノブ27が回動一体に取り付けられている(なお、湾曲操作ノブ27を含む湾曲機構は、上下方向の湾曲を行うためのものと、左右方向の湾曲を行うためのものと、の2つが設けられているが、この図1では簡単化のために、これらの内の一方のみを概略として示している)。
そして、この湾曲操作ノブ27を回動する操作を行うことにより、上下方向或いは左右方向に沿って配置した1対の湾曲ワイヤ25の一方を牽引するとともに他方を弛緩させて、牽引した湾曲ワイヤ25側に湾曲部12を湾曲させるようになっている。
操作部8には、湾曲操作ノブ27が設けられた位置より前方側に把持部28が設けられており、術者が把持部28を把持した片方の手(の把持に使用していない親指等の指)で湾曲操作ノブ27の操作等を行うことができるように構成されている。
また、挿入部7内に設けられた処置具側管路(処置具挿通路を兼ねた挿入部側吸引管路)30の後端側は、把持部28の前端付近に設けられた処置具挿入部31において、ユニバーサルケーブル9側から操作部8を経て前方側に延出された吸引側管路32の先端側と略平行に配置されており、両開口端が分離(分断)された管路分離部33が形成されている。
そして、この管路分離部33を形成した処置具挿入部31には、例えば鉗子等の種々の処置具の挿入を可能にすると共に、挿入されない場合には閉塞状態に保持する鉗子栓の機能と、被検体の組織を回収するフィルタ機能と、を備えたフィルタユニット34が着脱自在に装着される。
このように本実施例の内視鏡2においては、挿入部7内には、処置具を挿通するための処置具側管路30が形成されており、この処置具側管路30は、挿入部7の後端付近に設けられた処置具挿入部31内部において、斜め後方側に延出され、その後端は、処置具側口金35の(処置具側口金)開口部35a(図2、図5等参照)として開口する。この処置具側管路30は、内視鏡2の内部においては、分岐部を備えておらず、処置具の挿通性や、ブラシの挿通による洗浄性を向上するように構成されている。
この処置具側口金35の開口部35aは、挿入部側吸引管路の操作部側開口となっていて、フィルタユニット34における処置具用栓部(鉗子栓部と略記)41(図4、図5等参照)が装着される。そして、鉗子等の処置具は、この鉗子栓部41の後端側から挿入されるようになっている。
また、管路分離部33には、操作部8側から延びる吸引側管路32の先端側部分が処置具側管路30の後端側と略平行に配置され、処置具側口金35に隣接してその先端の吸引側口金36の(吸引側口金)開口部36a(図3、図5等参照)が開口している。
この吸引側口金36の開口部36aには、フィルタユニット34における組織回収用の回収手段たるフィルタ部42(図4、図5等参照)が装着される。
なお、図1は、管路分離部33及びフィルタユニット34の概略を示すものであり、図1においては、紙面内に処置具側口金35と吸引側口金36とを隣接して示しているが、実際には、図1の紙面に垂直な方向に隣接して形成されている(図4参照)。
また、操作部8における側面には、吸引切替弁37が設けられている。この吸引切替弁37は、この操作部8内に挿通された吸引側管路32の途中部分に配置されており、吸引しない状態(吸引OFFと略記)と吸引状態(吸引ONと略記)とを切り替えることができるように構成されている。
この吸引切替弁37は、操作部8の側面に設けた筒体内に内筒38をスライド自在に配置して形成されている。この筒体における底面の開口には、吸引装置6に接続されるユニバーサルケーブル9側から延出された吸引側管路32の先端が連結され、またこの筒体の側面の開口には処置具挿入部31側から後方に延びる吸引側管路32が連結されている。
また、内筒38は、その内側部分がユニバーサルケーブル9側から延出された吸引側管路32と連通して、吸引切替弁37が操作されないOFF状態の場合には、内筒38の上端側の側部に設けた開口部38aにより外部に連通している。
従って、吸引動作状態に設定されている吸引ポンプ6aは、吸引切替弁37がOFF状態の場合には、開口部38aから空気を取り込むのみで、この吸引切替弁37より先端側の吸引側管路32を通しての吸引動作は行わない。
ユーザが、この吸引切替弁37を、図示しないバネの弾性力に抗して押圧して筒体の底部側に押し込む操作を行うことにより、前記開口部38aは、外部に連通する状態から処置具挿入部31側から延びる吸引側管路32と連通する状態に切り替えられる。
この状態では、吸引状態に設定されている吸引ポンプ6aにより、吸引切替弁37よりも先端側の吸引側管路32を通して吸引動作を行う状態になる。このように吸引切替弁37を操作することにより、吸引のON/OFFを切り替えられるようにしている。
次に、図2から図7を参照して、本実施例における処置具挿入部31の周辺部の構成及びこの処置具挿入部31の開口端に着脱自在に装着されるフィルタユニット34の構成を詳細に説明する。
図2は、処置具挿入部31の処置具側口金35に沿った縦断面による内部構造を示し、図3は処置具挿入部31における吸引側口金36に沿った縦断面による内部構造を示し、図4は図2のA矢視方向から見たフィルタユニット34の周辺部を示し、図5は、図2のB−B断面により処置具側口金35及び吸引側口金36周辺部の断面構造を示し、図6は組み付けた状態のフィルタユニット34を示し、図7は分解した状態のフィルタユニット34を示す。
図2に示すように挿入部7側から把持部28内に延出され、処置具側管路30を形成する処置具挿通チューブ44の後端は、接続口金45を介して、屈曲された処置具側パイプ46の先端と水密及び気密的に接続されている。
この処置具側パイプ46の後端側は、操作部8の外装部材47内に設けられたフレーム48の上面に設けた開口部付近において、固定部材49により固定されている。この固定部材49は、その先端部分がねじ50によりフレーム48に固定され、この固定部材49の後端側に形成された筒体部49a内に処置具側パイプ46の後端が嵌入して固定されている。
また、この処置具側パイプ46の後端が固定されたこの筒体部49aには、処置具挿入部31の外装部材31a内に直管状に配置された処置具側口金35の先端がゴム製のパッキン51を介装して水密及び気密的に連結されている。
この処置具側口金35は、挿入部7の軸方向から斜め後方側に向けて配置され、この処置具側口金35の後端外周の凹部には水密および気密用のOリング54が配置され、外装部材31aとの間に配置した固定用の樹脂部材52を介して外装部材31aに固定される。
この樹脂部材52は、外装部材31aの内面に嵌合し、この樹脂部材52の外周の凹部には水密及び気密用のOリング53が配置される。そして、処置具側口金35の後端外周面の雄ねじ部に螺合するナット55により、水密及び気密的に固定される。なお、ナット55の上端面はゴムカバー56で覆われている。
処置具側口金35の後端部は、処置具挿入部31の外装部材31aの斜め後方側に突出する端面から若干突出し、その後端の処置具側口金開口部35aで開口している。
図2に示すこの処置具側口金35における紙面に垂直な上方向には、この処置具側口金35に隣接して図3及び図5に示すように吸引側管路32の先端側が処置具挿入部31内に設けられている。
操作部8側の吸引側管路32を構成する吸引側管路用チューブは、屈曲された吸引側パイプ61の後端に接続口金62を介して水密及び気密的に連結される。
この屈曲された吸引側パイプ61の先端は、固定部材59の後端側に形成された筒体部59a内に嵌入して固定されている。
また、この吸引側パイプ61の先端が固定されたこの筒体部59aには、処置具挿入部31の外装部材31a内に配置された吸引側口金36の後端がゴム製のパッキン64を介装して水密及び気密的に連結されている。
この吸引側口金36の先端側は、上述した樹脂部材52を介して外装部材31aに固定される。この吸引側口金36の先端側部分の外周面に設けた凹部には、水密及び気密用のOリング65が配置されている。なお、樹脂部材52の外周面は、前述したOリング53により水密及び気密が保持される。
この吸引側口金36の先端側の外周面には雄ねじ部が設けられており、この雄ねじ部にナット66が螺合されるようになっている。このナット66の螺合により、該ナット66が樹脂部材52の段差部を押圧して、吸引側口金36を外装部材31aに固定するようになっている。また、このナット66の上端面は、ゴムカバー67で覆われている。
この吸引側口金36における先端側の内周面は、段差状に拡径にされた拡径部が形成されており、この拡径部には、フィルタユニット34におけるフィルタケース68の基端の小径円筒部68aが挿入されて着脱自在に装着される。
この小径円筒部68aの外周面には周溝が設けられており、この周溝には例えば黒色のゴム等で構成されたパッキン69が収納されている。
次にこのフィルタユニット34の構造及びこのフィルタユニット34が装着された場合の処置具挿入部31付近の構成を説明する。
図5に示すように処置具挿入部31の後端面から突出する処置具側口金35の開口部35aにはフィルタユニット34の鉗子栓部41を構成する略筒体形状の鉗子栓部本体71の基端の装着部が着脱自在に装着される。
この鉗子栓部本体71は、後端付近には小さく開口する小径開口部71aが設けられており、その後端には鉗子栓72が着脱自在に装着される。
この鉗子栓72は、半球形状の凹部を設けて処置具を挿入する処置具挿入口72aが形成され、この半球形状の凹部を覆う薄肉部の中央には切り込み72bが設けられている。この切り込み72bが設けられた処置具挿入口72aは、通常は閉塞状態を保持し、外部から処置具が押圧するように挿入されると開口する、逆止弁として機能を果たす弁部となっている。この切り込み72bは、挿入部側吸引管路の操作部側開口を構成するものとなっている。
また、この筒体形状の鉗子栓部本体71における軸方向の中央付近には、この軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔が設けてあり、一方の側方からフィルタケース68における側方に延出した筒体部68bが挿入されて、この筒体部68b部分が、貫通孔内に装着されている。
なお、この筒体部68bの外周には、鉗子栓72に接続されたリング74が遊嵌され、鉗子栓72が、鉗子栓部本体71から取り外された場合にもリング74によりこの筒体部68b周辺に保持できるようにしている。
また、この貫通孔には、他方の側方から管路切替部材たる管路切替ノブ75の基端側の筒体部75aが前記筒体部68bの内側に嵌入された状態で回転自在に装着される。なお、この管路切替ノブ75は、鉗子栓部本体71に嵌入される入り口付近の位置に、リブ75fが形成されている。これにより、管路切替ノブ75が鉗子栓部本体71に嵌入された際に、水密および気密的にシールされるようになっている。
この管路切替ノブ75には、筒体部75aの後端付近の位置において、その軸方向に直交する方向に貫通孔が設けてあり、図5に示す装着状態においては、この貫通孔は、処置具挿入口72aと処置具側口金開口部35aとの間を連通する挿通孔である処置具挿入管路75bの機能を持つ。
なお、この管路切替ノブ75を図5の状態から90度回転した場合には、この管路切替ノブ75の貫通孔による処置具挿入管路75bは、鉗子栓部本体71の内壁面により閉塞される。これにより、処置具側口金開口部35aは、この回転された管路切替ノブ75によって、処置具挿入口72a及び以下に説明するフィルタ側管路75eに対し、遮断される状態となる。
図5に示したように連通した状態においては、処置具挿入口72aから図示しない処置具を挿入することにより、この貫通孔による処置具挿入管路75b、処置具側口金35、処置具側パイプ46を経て処置具挿通チューブ44側に処置具の先端側を挿通することができる。
また、この連通した状態においては、処置具側口金35は、この処置具挿入管路75bを経て筒体部75aの内側により形成される接続管路であるフィルタ側管路75eと連通すると共に、このフィルタ側管路75eに連通するフィルタ部42内を通って吸引側口金36側とも連通する。
フィルタ部42のフィルタケース68には、その後端側開口から、フィルタ77aを備えたフィルタ部材たるフィルタ本体77が回動自在かつ着脱自在に装着される。このフィルタ本体77に一体的に設けられたフィルタ77aは、小さな開口が例えば正方格子状(網目状)に形成された部材であり、液体や気体を通過させ、所定サイズ以上のポリープ片等の組織を回収することができるようになっている。
このフィルタ77aのフィルタ面は、円筒状のフィルタケース68の軸方向と平行に配置され、フィルタ側管路75eの端部のフィルタ側開口部75cに対向するように配置される。また、このフィルタ77aの底部には、略円板形状の底面77bが設けられており、このフィルタケース68内に回収した組織を収納する組織収納室(組織回収室)68cを形成している。なお、フィルタ面は、円筒状のフィルタケース68の中心軸から偏心した位置に設けられており、図5に示す回動位置において、大きなスペースの組織収納室68cが形成される。つまり、図5に示した状態では、フィルタユニット34におけるフィルタ部42は、組織回収を行う回動位置に設定されている。
この状態では、フィルタ側管路75eに対向する組織収納室68cの容積が大きくなるようにしている。
なお、フィルタ部42のフィルタケース68は、外から内部のフィルタ77aや回収(収納)された組織を視認し易いように透明な部材で形成され、かつフィルタ77aも体内組織の通常の色と区別し易い、例えば青系統の色に着色してある。
また、フィルタケース68を洗浄液中等で洗浄する場合、洗浄液中にあることが視認し易いようにその一部に無色以外の着色部を形成したり、着色されている部材が設けてある(例えば小径円筒部68aの外周面に設けたパッキン69を黒色等にしたものでも良い)。
前記フィルタ本体77は、フィルタ77aを設けた位置より後端側の外周面に周溝が設けられており、この周溝にシール用のOリング78が収納されている。また、このフィルタ本体77の後端に設けられたフィルタ位置切替ノブ77cは、フィルタケース68の開口端から突出し、着脱操作や回動操作を行い易くしている。
なお、図5に示すように、連通する状態においては、フィルタ側管路75eの端部のフィルタ側開口部75cの周縁部の一部(図5においては下端)がフィルタケース68の内部に突出するようにして、フィルタケース68からフィルタ本体77が取り外されるのを規制する抜け止め端部75dが形成されている。
この状態から管路切替ノブ75を90度回転することにより、抜け止め端部75dは、フィルタケース68内に突出する状態から筒体部68b内に退避した状態となり、フィルタケース68からフィルタ本体77を取り外すことができるようになる。
また、実施例においては、図5に示す連通状態のフィルタ位置からフィルタ位置切替ノブ77cを略90度程度回転して、図4に示すように、組織を回収しない位置に設定することにより、フィルタ77aを通さないで吸引することができるようにしている。
つまり、図4に示すように、フィルタケース68に設けた三角のマーク68dの位置に、フィルタ本体77に設けた三角のマーク77fの位置を合わせて組織を回収しないOFFの位置に設定すると、図7において略円板形状の底面77bに示した(L字形状の)切り欠き77dが、フィルタ側管路75eに近い位置になるようにしている。
そして、吸引状態にした場合には、この切り欠き77dを経て吸引された体液等をフィルタ77aを通すことなく吸引側口金36側に導くことができるようにしている。
なお、フィルタ本体77には、図6及び図7に示すようにフィルタ77aを回収位置に設定するガイド用のON及びその回転方向を示すラベルが設けてあり、術者は、このフィルタ本体77のフィルタ位置切替ノブ77cを、ONのラベルに沿った方向に回動して回動が規制される位置まで回動することにより、図5に示した組織回収を行うフィルタ位置に設定できるようにしている。
このような構成による本実施例においては、内視鏡2の操作部8の吸引切替弁37よりも先端側の管路の途中に、組織回収用のフィルタユニット34を着脱自在に設けていることが特徴となっている。
また、本実施例では、組織回収用のフィルタユニット34を装着して吸引動作により組織を吸引することができる状態に設定した場合には、管路切替ノブ75の先端の抜け止め端部75dにより、フィルタ本体77が取り外されるのを規制している。
そして、この状態から管路切替ノブ75を90度回転することにより、組織収納室68cよりも先端側の管路、具体的には処置具側口金35の後端の開口部35aを閉塞すると共に、前記取り外しの規制を解除して、フィルタ本体77の取り外しができるようにしていることも特徴となっている。
加えて、着脱管路部材たるフィルタユニット34で分断される吸引管路の、挿入部先端側部分となる処置具側管路(挿入部側吸引管路)30と、手元側部分となる吸引側管路(操作部側吸引管路)32とは、少なくともフィルタユニット34が装着される処置具挿入部31の近傍において、該フィルタユニット34へ向けて、処置具側管路30の軸と吸引側管路32の軸との軸間距離が次第に広がるように構成されていることが特徴となっている。具体的には、図5に示すように、これらはθの角度をもって、手元側へ行くにつれて軸間距離が広がるように構成されている。さらに、図4に示すように、術者から見て右側に相当する位置に鉗子栓部41を設け、左側に相当する位置に組織回収部を設けていることが特徴となっている。これらにより、フィルタ部42側に邪魔されることなく、複雑な操作を要求される処置具を右手で操作することができ、右利きが多いと考えられる術者にとって、より高い操作性で操作することが可能となる。
また、図5に示すように、フィルタ位置切替ノブ77cの上端は、鉗子栓72の上端よりも、高さHだけ、術者の手元側に高くなっていることが特徴となっている。これにより、フィルタ本体77の着脱性を向上することができる。このとき、フィルタ位置切替ノブ77cを略板状に形成しているために、術者の指が鉗子栓部本体71に干渉することなく、フィルタ本体77を着脱することが可能となっている。
そして、図5に示すように、管路切替ノブ75の処置具挿入管路75bは、連通状態において、処置具側口金35内の管路と直線状をなすように構成され、かつ鉗子栓72の切り込み72bと直線状をなすように構成されていることが特徴となっている。これにより、処置具を直線に沿って挿脱することが可能となり、該処置具の損傷等を防止することができる。
加えて、管路切替ノブ75を、処置具側管路30と吸引側管路32との分岐部分に配置していることが特徴となっている。これにより、管路切替ノブ75を回転させるという簡単な操作で、構成を複雑にすることなく、吸引管路の挿通と閉塞とを容易に切り換えることが可能となっている。このとき、より具体的には、フィルタ本体77を取り外す際に吸引側口金36側への管路を閉塞する部材である管路切替ノブ75が、鉗子栓部41とフィルタ部42とを接続する接続管路である筒体部68bに配置されるように構成している。これにより、フィルタ本体77を取り外す際に閉塞性を確保する部材を別途設ける必要がなくなり、組織を回収するフィルタ部42の小型化を図ることが可能となっている。
さらに、図5や図7に示す管路切替ノブ75の処置具挿入管路75bの径Kを、処置具側管路30の径の最小値よりも大きくするようにしている。一例としては、処置具挿入管路75bの径Kが、図5に示す処置具側パイプ46の管路部分の径Mよりも大きくなっている。これにより、管路切替ノブ75が設けられていても、管路切替ノブ75が設けられていない従来の内視鏡と同様の、処置具の挿脱性を確保することが可能となっている。
このような構成による本実施例の作用を説明する。
図1に示すように内視鏡2の処置具挿入部31にフィルタユニット34を装着して、術者は、この内視鏡2を患者の体腔内に挿入する。
そして、術者は、挿入部7の先端部11に設けた撮像手段により、患部等の検査対象部位を観察視野内に入れ、撮像された画像をカラーモニタ5により観察できる状態に設定する。
そして、術者は、患部のポリープ等の組織を採取して病理検査しようと思う場合には、フィルタユニット34における処置具挿入口72aから切除用の処置具の先端側を挿入する。そして、ポリープ等の組織を切除する。
切除した組織を回収した後に、内視鏡2による検査等を終了する場合には、処置具で組織を把持したまま、内視鏡2を体内から抜去すれば良い。
これに対して、その後も内視鏡2による検査等を継続して行う場合には、まず、処置具を処置具側管路30から抜去する。そして、フィルタ本体77のフィルタ77aを、図5に示すような組織回収を行う位置に設定し、吸引切替弁37を操作して吸引状態にする。
すると、処置具側管路30の先端開口(これは、挿入部7の先端に位置している)から、切除された組織が処置具側管路30内に吸引される。
吸引された組織は、処置具側管路30内を通って、フィルタ部42の組織収納室68cに収納される。このとき、体液や所定サイズ以下の組織等は、フィルタ77aの小さな孔を通過して、吸引ポンプ6a側に導かれる。そして、吸引装置6に設けられた図示しない吸引トラップ容器等に収納される。
組織収納室68c内に組織が収納されたか否かは、透明なフィルタケース68を介して、術者自身が直ちに確認することができる。こうして組織が組織収納室68c内に収納されたところで、吸引切替弁37を操作して、吸引OFFにする。
そして、図5に示す状態から管路切替ノブ75を90度回動して、処置具側口金35の開口部35aを閉塞した状態にした後に、フィルタ本体77をフィルタケース68から取り出すことにより、組織収納室68cに収納された組織を回収することができる。こうして回収された組織は、上述したように、病理検査等に使用される。
一方、組織の回収を行わないで内視鏡2による検査等を行う場合には、フィルタ本体77のフィルタ位置切替ノブ77cに設けた三角のマーク77fの位置を、組織を回収しないOFFの位置に設定すれば良い。これにより、フィルタ77aを通すことなく、吸引した体液等の吸引物を吸引側管路32および吸引コネクタ10aを介して吸引ポンプ6a側に排出することができる。
なお、上述したフィルタユニット34は、鉗子栓の機能を備えた組織回収用フィルタであると捉えることもできるが、組織回収用フィルタの機能を備えた鉗子栓であると捉えることも可能である。
そして、フィルタユニット34は、内視鏡における吸引管路の一部を着脱自在に構成したもの(着脱管路部材)であり、該フィルタユニット34自体により分断される吸引管路(すなわち、挿入部側吸引管路と操作部側吸引管路)の分岐を備えた部材となっている。従って、フィルタユニット34が着脱可能であるために、着脱管路部材と、フィルタ部と、鉗子栓と、は一体的に着脱可能であるといえる。
このような実施例1によれば、挿入部側吸引管路と操作部側吸引管路との分岐を鉗子栓側に設けたために、内視鏡本体側に吸引管路の分岐がなくなり、該内視鏡本体の洗浄性を向上することができる。
そして、鉗子栓としての機能を備えたフィルタユニット34は、図7に示したように、鉗子栓部本体71と、鉗子栓72と、管路切替ノブ75と、フィルタケース68と、フィルタ本体77と、に分離することができるために、各部品の開口部につながる管路に対して、管路の軸と平行にブラシ挿通することが可能となり、洗浄性が向上する。
また、鉗子栓としての機能と、組織回収用フィルタとしての機能が、フィルタユニットとして一体化されているために、内視鏡本体から一体として着脱を行うことができ、洗浄時の着脱の手間を軽減することができる。
そして、吸引切替弁37よりも先端側となる処置具挿入部31付近にフィルタ部42を配置しているために、吸引した組織が、吸引切替弁37付近における狭窄部や屈曲部の影響を受けるのを解消することができる。つまり、吸引切替弁37付近で組織の通過性が低下して回収に時間を要するのを解消することができると共に、組織が変形したり損傷したりするのも解消することができる。
また、管路切替ノブ75が吸引状態となっているときには、フィルタ本体77の挿脱を阻止するようになっているために、不用意にフィルタ本体77を取り外すことによる、体液等の漏れを防止することができる。そして、管路切替ノブ75が閉塞状態となっているときにのみ、フィルタ本体77を取り外すことができるために、フィルタ本体77を取り外しても、体腔内の圧力が低下するのを防ぐことができる。
さらに、フィルタケース68を光透過性を有する素材により形成しているために、術者自身が、操作部の手元で、組織を回収することができたか否かを、容易に確認することが可能となる。このとき、フィルタユニット34を装着するのが処置具挿入部31であるために、術者や介助者がフィルタユニット34を容易に視認することが可能である。これにより、組織の回収をユニバーサルケーブル9の途中や吸引装置6の近傍において行う場合よりも、該回収が容易となる。
加えて、操作部側吸引管路である吸引側管路32が、操作部8の内部に設けられていて操作部8の外部には配置されていないために、操作部8を把持する術者に邪魔になることがない。
続いて、図8〜図12を参照して、上述した実施例1の変形例について説明する。
図8は、鉗子栓の第1の構成例を示す、内視鏡の一部断面を含む側面図である。
上述したように、処置具側管路30は、鉗子等の処置具を挿通するための処置具挿通路を兼ねたものであり、一端が挿入部7の先端で開口し、途中で分岐することなく他端が手元操作部8において開口(具体的には、前記処置具側口金35の開口部35aにおいて開口)している。
吸引側管路32は、操作部8の内部を通って配設されており、該吸引側管路32の操作部8内における一端が前記処置具側管路30の操作部側開口の近傍において開口(具体的には、前記吸引側口金36の開口部36aにおいて開口)し、他端の側が吸引切替弁37に連通するように構成されている。この吸引側管路32は、操作部側開口の近傍において、操作部8の軸に対して交差する(例えば、略直交する)ように、例えばL字状に曲折されている。そのために、この変形例においては、吸引側管路32の操作部側開口は、把持部28の先端側の側面に位置している。
鉗子栓部41Aは、前記処置具側管路30の操作部側開口に着脱自在に装着されるものである。この鉗子栓部41Aは、弾性体で構成された本体81を有し、この本体81の内部には、前記処置具側管路30に連通するように構成された管路81aと、この管路81aから分岐して前記吸引側管路32へ接続するように構成された接続管路81bと、が設けられている。前記管路81aの後端には、切り込み72bを備えた処置具挿入口72aが設けられている。この処置具挿入口72aは、上述したように、体腔内の気圧が外気圧よりも高くなっているときに、該体腔内の空気等を外部へ逆流させるのを防ぐための逆流防止弁としての機能を果たすように構成されている。また、接続管路81bは、一部が、本体81内に設けられ、他の一部が本体81から延設された管路部82内に設けられている。
このような構成の鉗子栓部41Aは、処置具挿入部31へ取り付けるだけで、吸引側管路32の操作部側開口(吸引側口金36の開口部36a)への接続と、処置具側管路30の操作部側開口(処置具側口金35の開口部35a)への接続と、を同時に行うことが可能である。
この例に示したような構成によれば、吸引側管路32をU字状に屈曲する必要がなく、屈曲部分の曲率Rを比較的大きくとることが可能となるために、管内を洗浄する際のブラシの挿通性が良いという利点がある。
図9は、鉗子栓の第2の構成例を示す、内視鏡の処置具挿入部近傍の部分拡大斜視図である。
この第2の構成例においては、吸引側管路32が、前記図3に示したものと同様に、操作部側開口(吸引側口金36の開口部36a)の近傍において、手元側にU字状に戻るように曲折されている。そして、該吸引側管路32の操作部側開口は、処置具側管路30の操作部側開口と、操作部8の軸に対して略同一距離にあるように、並べて配置されている。従って、吸引側管路32の操作部側開口(処置具側口金35の開口部35a)と、処置具側管路30の操作部側開口(吸引側口金36の開口部36a)と、は、該図3の例と同様に、操作部8の軸を中心とした円周上にほぼ配列された位置関係となっている。
そして、鉗子栓部41Bは、本体81が処置具側管路30の操作部側開口(処置具側口金35の開口部35a)に取り付けられるとともに、吸引側管路32の操作部側開口(吸引側口金36の開口部36a)に対して接続される略L字状の管路83を本体81の側面から延出して構成されている。また、本体81の上端部には、上述したような、切り込み72bを備えた処置具挿入口72aが設けられていて、処置具側管路30と連通している。
このような構成によれば、鉗子栓部41Bの吸引側管路32への接続管路83が、把持部28から離れた位置にあるために、把持部28を握る際に該接続管路83が邪魔になることがない。従って、手の大きい術者でも、余裕を持って内視鏡2を把持することが可能となる。
図10は、第3の構成例の鉗子栓と、この鉗子栓が取り付けられる内視鏡の処置具挿入部近傍と、を示す斜視図である。
この第3の構成例に示す鉗子栓部41Cは、処置具側管路30へ連通する処置具側口金35の開口部35aへ接続される管路84aと、この管路84aの途中から分岐しており、吸引側管路32へ連通する吸引側口金36の開口部36aへ接続される管路84bと、が本体84内に一体に構成されたものとなっている。また、管路84aの後端(図10に示す上端)には、上述したような、切り込み72bを備えた処置具挿入口72aが設けられている。
このような構成によれば、1つの部材内に分岐する複数の管路が設けられているために、部品点数を減らすことができる利点がある。
図11は、フィルタ部を備えた鉗子栓としてのフィルタユニットの第1の構成例を示す断面図である。
このフィルタユニット34Aは、鉗子栓部41が、ゴムなどの弾性体により形成されていて、上述したような鉗子栓部本体71および鉗子栓72を有して構成されている。
鉗子栓部41は、処置具側管路30に連通する処置具側口金35の開口部35aに圧入することで、水密および気密的に結合されるようになっている。
鉗子栓部41内の処置具挿通管路71bと直交するように、該鉗子栓部41には側孔71cが形成されており、この側孔71c内に、フィルタケース68の筒体部68bが挿入されている。
そして、フィルタ部42は、フィルタケース68内にフィルタ本体77を着脱自在となるように装着して構成されている。これらの内のフィルタケース68は、透光性を有する例えば透明な樹脂等により略有底円筒形状に形成されていて、上述したような鉗子栓部41と接続するための筒体部68bが側面から延出されているとともに、他の側面から把持部28の外装側へ接続するための管路部68eが延出されている。後者の管路部68eの先端には、取付部68fが形成されていて、この取り付け部68fを把持部28の外装の開口部28aに嵌挿することにより、取り付けるようになっている。このとき、取り付け部68fの外周部に設けられた凹部には、Oリング29が取り付けられ、これにより、フィルタ部42が把持部28に水密および気密的に結合される。こうして、フィルタ部42が、吸引側管路32の操作部側開口32aと連通される。
なお、この例に示す内視鏡2の吸引側管路32は、前記図8に示したようなタイプのもの、つまり、把持部28の側面に操作部側開口32aが設けられているタイプのものとなっている。
前記フィルタ本体77は、前記フィルタケース68の上面を水密及び気密的に閉蓋する例えば略円板状の蓋部77gと、この蓋部77gから前記フィルタケース68の内部へ突出するように形成されたフィルタ77aと、を有して構成されている。
こうして、筒体部68bおよび管路部68eで構成される接続管路の途中に、組織回収用のフィルタ部材たるフィルタ77aを配設することにより、鉗子栓としてのフィルタユニット34Aを、処置具の挿通、および、被検体から吸引したポリープなどの組織の採取、の両方に用いることが可能となる。そして、フィルタケース68が透光性を有する構成となっているために、組織が採取されたか否かを容易に確認することができる。従って、症例時間を短縮することも可能となる。
図12は、フィルタ部を備えた鉗子栓としてのフィルタユニットの第2の構成例を示す断面図である。
フィルタユニット34Bは、鉗子栓部41の本体とフィルタ部42のフィルタケースとを一体に形成した本体85を有して構成されている。この本体85は、透光性を有する例えば透明な樹脂等により形成されている。
そして、本体85の鉗子栓部41側には、ゴム等の弾性部材により形成された鉗子栓72と、ゴム等の弾性部材により前記小径開口部71aを有するように形成された内弁86と、が一体的に取り付けられている。
また、本体85のフィルタ部42側には、フィルタ本体77が例えば側方から着脱可能に取り付けられるようになっている。ここに、フィルタ本体77の構成は、前記図11に示したものと基本的に同様である。
このような鉗子栓部の本体とフィルタ部のフィルタケースとを一体に形成する構成を採用すれば、製造原価を低く抑制することが可能となる。そして、フィルタケースが透明であるために、組織が採取されたか否かを容易に確認することができる。
なお、上述した実施例や各変形例に示すように、鉗子栓部は、少なくとも一部が弾性体により構成されたものとなっている。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。