しかしながら、特許文献1の技術は、ジレンマ領域又はオプション領域と称される領域を危険走行領域として扱っており、それら以外の領域、例えば、車両が交差点を通過することができる交差点通過領域は、安全な走行領域であるとしている。一方で、車両の運転者は、交差点通過領域を認識することができず、また、後続車両又は交差点内で右折待ちをしている対向右折車両などの要因が考慮されていないため、車両が交差点通過領域に存在する場合でも、危険な状況に陥る可能性がある。
例えば、交差点に向かって走行する車両が、従来であれば安全と考えられていた交差点通過領域に存在する場合であっても、車両が停止線を通過した直後に赤信号に切り替わる場合がある。このため、車両の運転者は、交差点の直前又は交差点内で減速し、あるいは、急停止することで後続車両に追突される場合がある。また、交差点に右折待ちをしている対向右折車両が存在するとき、車両が中途半端な減速をしたために、対向右折車両の運転者は、車両が交差点手前で停止するものと思い込んで右折して、車両と接触事故又は衝突事故を起こす場合がある。このため、さらに安全かつ確実に危険な走行領域を回避するための情報提供を行う方法が望まれていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、危険な走行状態を確実に回避して交差点で安全に車両を通過又は停止させるための運転支援情報を提供する情報提供装置、該情報提供装置を備える情報提供システム、前記情報提供装置を搭載した車両及び情報提供方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る情報提供装置は、交差点に設置された信号機の信号情報を受信し、受信した信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供装置であって、車両の速度を取得する速度取得手段と、車両と交差点の停止線との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得手段と、車両の停止線までの距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、赤信号時に車両前方の対向右折車両に関する所定位置から前記停止線までの間の交差点内の地点に車両が存在する特定の状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、車両が交差点で直進するか否かを判定する直進判定手段と、車両前方の対向右折車両が交差点に存在するか否かを判定する右折車両判定手段と、前記状態判定手段で車両が前記特定の状態にあると判定した場合に、前記直進判定手段で車両が直進すると判定し、かつ前記右折車両判定手段で対向右折車両が存在すると判定したとき、車両を前記特定の状態から回避させるための運転支援情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
第2発明に係る情報提供装置は、第1発明において、車両の後続車両の有無を判定する後続車両判定手段を備え、前記出力手段は、前記状態判定手段で車両が前記特定の状態にあると判定した場合に、前記後続車両判定手段で後続車両が存在すると判定し、前記直進判定手段で前記車両が直進すると判定し、かつ前記右折車両判定手段で対向右折車両が存在すると判定したときは、運転支援情報を出力するように構成してあることを特徴とする。
第3発明に係る情報提供装置は、第1発明又は第2発明において、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が交差点の停止線の手前に停止するための停止条件を算出する停止条件算出手段と、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が交差点に進入するための進入条件を算出する進入条件算出手段と、車両前方の対向右折車両に関する所定位置から停止線までの間の交差点内の地点を決定する決定手段と、該決定手段で決定した地点と車両との距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が前記地点に進入するための地点進入条件を算出する地点進入条件算出手段とを備え、前記状態判定手段は、前記停止条件算出手段で算出した停止条件及び前記進入条件算出手段で算出した進入条件により画定され、車両が安全に停止線を通過できる交差点通過領域にある状態を充足し、前記地点進入条件算出手段で算出した地点進入条件を充足しない場合、車両が前記特定の状態にあると判定するように構成してあることを特徴とする。
第4発明に係る情報提供装置は、第3発明において、前記決定手段は、車両の速度の大小に応じて、停止線までの距離が短長になるように交差点内の地点を決定するように構成してあることを特徴とする。
第5発明に係る情報提供装置は、第1発明において、車両前方の対向右折車両に関する所定位置から停止線までの間の交差点内の地点を決定する決定手段と、該決定手段で決定した地点と車両との距離及び車両の速度に基づいて、車両が前記地点に到達するまでの到達時間を算出する到達時間算出手段と、該到達時間算出手段で算出した到達時間が所定の範囲内にある場合、赤信号時に車両が危険な走行状態にあると判定する危険判定手段とを備え、前記出力手段は、前記危険判定手段で車両が前記危険な走行状態にあると判定した場合に、前記直進判定手段で車両が直進すると判定し、かつ前記右折車両判定手段で対向右折車両が存在すると判定したとき、車両を前記危険な走行状態から回避させるための運転支援情報を出力するように構成してあることを特徴とする。
第6発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記出力手段での出力処理は、黄信号開始時点の所定時間前の時点で行うように構成してあることを特徴とする。
第7発明に係る情報提供システムは、交差点に設置された信号機の信号情報を送信する送信装置と、第1発明乃至第6発明のいずれか1つに係る情報提供装置とを備え、該情報提供装置は、前記送信装置が送信した信号情報を受信する受信手段を備えることを特徴とする。
第8発明に係る車両は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つに係る情報提供装置を搭載したことを特徴とする。
第9発明に係る情報提供方法は、交差点に設置された信号機の信号情報を情報提供装置で受信して、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供方法であって、前記情報提供装置は、車両の速度を取得し、車両と交差点の停止線との距離に関する距離情報を取得し、車両の停止線までの距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、赤信号時に車両前方の対向右折車両に関する所定位置から前記停止線までの間の交差点内の地点に車両が存在する特定の状態にあるか否かを判定し、車両が前記特定の状態にあると判定した場合に、車両が直進すると判定し、かつ対向右折車両が存在すると判定したとき、車両を前記特定の状態から回避させるための運転支援情報を出力することを特徴とする。
第1発明及び第9発明にあっては、情報提供装置は、車両の速度情報(速度)及び車両と交差点の停止線との距離に関する情報を取得し、例えば、停止線及び車両の位置情報に基づいて、停止線までの距離を算出する。この場合、車両と停止線との距離に関する情報は、車両と停止線との距離でもよく、あるいは、車両及び停止線の位置であってもよい。情報提供装置は、車両の停止線までの距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が停止線通過に関して規定される特定の状態にあるか否かを判定する。特定の状態(以下、特定状態という。)とは、車両の停止線までの距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が停止線の手前に停止するための停止条件及び停止線に進入するための進入条件により画定される交差点通過領域であって危険な走行状況となり得る領域にある状態である。なお、特定状態にあるか否かの判定タイミングは、適宜設定することができ、例えば、停止線から所定の距離(例えば、200m程度)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点などとすることができる。また、特定状態にあるか否かの判定は、例えば、車両の速度及び黄信号開始時点での停止線までの距離で示される状態量により判定することができる。
例えば、車両が交差点通過領域に存在する(赤信号に切り替わるまでに停止線を通過できる)場合であっても、交差点内に対向右折車両が存在するときには、車両が対向右折車両の横を通過する時点では、すでに赤信号に切り替わった後となる場合がある。このような走行状況では、対向右折車両の運転者は、車両(直進車両)が停止線の手前で停止するのではないか、あるいは、車両が停止しようとしているのではないかと誤認し、同時に早く右折して交差点から抜け出したいという感情を有するため、右折して車両と衝突又は接触する危険性がある。特に、車両が停止線を通過した後に赤信号に切り替わるまでの時間が短いほど車両が対向右折車両の横を通過する時点での赤信号経過時間が長くなり危険性が増大する。すなわち、赤信号に切り替わった時点で(赤信号時に)車両が停止線から対向右折車両の停止位置(例えば、交差点中央付近)までの交差点内の地点を通過している場合には、危険な走行状態にあり、この走行状態(特定状態)を示す領域を対向危険走行領域と称する。
情報提供装置は、車両が特定状態にあると判定した場合に、車両が交差点で直進するか否かを判定し、車両が直進すると判定したときに、車両前方の対向右折車両が交差点に存在するか否かを判定し、対向右折車両が存在すると判定したとき、特定状態を回避するための運転支援情報を出力する。運転支援情報を出力するタイミングは、例えば、黄信号開始時刻、あるいは、黄信号開始時刻の直前又は直後に設定することができる。これにより、危険な走行状態を確実に回避して交差点で安全に車両を通過又は停止させるための情報を提供することができる。また、対向右折車両との接触事故又は衝突事故を未然に防止するための情報を提供することができ、対向右折車両が右折待ちをしている状況であっても車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。さらに、車両が交差点を直進する場合に、比較的速い速度で走行するような状況であっても、車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。
第2発明にあっては、情報提供装置は、車両の後続車両の有無を判定し、後続車両が存在すると判定した場合に、車両が直進すると判定し、かつ対向右折車両が存在すると判定したときは、運転支援情報を出力する。これにより、後続車両による追突事故を未然に防止するための情報を提供することができ、車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。
第3発明にあっては、情報提供装置は、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が交差点の停止線の手前に停止するための停止条件を算出するとともに、車両が交差点に進入するための進入条件を算出する。情報提供装置は、車両前方の対向右折車両に関する所定位置(例えば、交差点中央付近の対向右折車両の停止位置)から停止線までの間の交差点内の地点を決定し、車両と決定した地点との距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が前記地点に進入するための地点進入条件を算出する。情報提供装置は、停止条件及び進入条件により画定される進入可能状態(すなわち、交差点通過領域を示す状態)を充足し、算出した地点進入条件を充足しない場合、車両が特定状態にあると判定する。
例えば、車両が交差点通過領域にある場合、車両は赤信号開始時点で少なくとも停止線を通過(進入)する。交差点内の地点を対向右折車両の停止位置とした場合、赤信号開始時点で車両が対向右折車両の停止位置を通過できたときに、地点進入条件を充足する。すなわち、赤信号で車両が停止線から対向右折車両の停止位置までの間の位置にある場合、地点進入条件を充足しない。これにより、赤信号に切り替わった時点で車両が停止線から対向右折車両の停止位置までの交差点内の地点にいる場合には、危険な走行状態(対向危険走行領域にある状態)にあると判定することができ、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。
第4発明にあっては、情報提供装置は、車両の速度に応じて、停止線から対向右折車両の停止位置(例えば、交差点中央付近)までの間の交差点内の地点の位置を決定する。例えば、車両の速度が遅い場合には、対向右折車両の運転者は、車両(直進車両)が停止線の手前で停止するのではないかと誤認し、無理に右折しようとして車両と接触事故又は衝突事故を起こす可能性が高くなる。このため、車両の速度が遅いほど、赤信号開始時点で車両が通過できる位置を対向右折車両の停止位置に近づける。また、車両の速度が速い場合、対向右折車両の運転者は、直進車両が通過するのを待って右折する傾向があるため、車両と接触事故又は衝突事故を起こす可能性が低くなる。このため、車両の速度が速いほど、赤信号開始時点で車両が通過できる位置を対向右折車両の停止位置から遠ざけ、停止線の位置に近づける。これにより、車両の速度に関わらず、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。
第5発明にあっては、情報提供装置は、車両前方の対向右折車両に関する所定位置(例えば、交差点中央付近の対向右折車両の停止位置)から停止線までの間の交差点内の地点を決定する。情報提供装置は、車両と決定した地点との距離及び車両の速度に基づいて、車両が交差点内の地点に到達するまでの到達時間(ギャップ時間)を算出し、算出した到達時間が所定の範囲内にある場合、車両が危険な走行状態にあると判定する。交差点内の地点を対向右折車両の停止位置とした場合、到達時間は、対向右折車両の運転者から見れば、車両(直進車両)が到達するまでの時間である。対向右折車両の運転者は、到達時間が短い(例えば、3秒以下)場合には、車両(直進車両)が通過するまで待機して右折を待ち、到達時間が長い(例えば、7.5秒以上)場合には、車両が近づく前に右折することができる。すなわち、到達時間が所定の範囲内(例えば、3秒〜7.5秒)にある場合、危険な走行状態(対向危険走行領域にある状態)にあると判定することができ、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。
第6発明にあっては、情報提供装置は、黄信号開始時点の所定時間前の時点で運転支援情報を出力する。これにより、車両が交差点に進入する直前又は直後の運転を支援するための情報を提供することができ、車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。
第7発明にあっては、送信装置は、交差点に設置された信号機の信号情報を情報提供装置へ送信し、情報提供装置は、送信装置が送信した信号情報を受信する。これにより、情報提供装置は、送信装置が送信した信号情報に基づいて情報提供を行うことができる。
第8発明にあっては、車両は、情報提供装置を搭載してある。これにより、運転者は情報提供装置(例えば、車載機)で提供された運転支援情報に基づいて安全運転を行うことができる。
本発明にあっては、危険な走行状態を確実に回避して交差点で安全に車両を通過又は停止させることができる。
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る情報提供装置を用いた情報提供の概要の一例を示す模式図であり、図2は本発明に係る情報提供装置20の構成を示すブロック図である。図1に示すように、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m〜1000m)を有して通信装置10を設置してある。通信装置10は、例えば、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などで実現でき、車両との交信地点において、所定の情報を車両に搭載した情報提供装置20へ送信する。ここで、所定の情報は、例えば、位置情報(例えば、通信地点の位置情報、停止線の位置情報、例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、交差点情報(例えば、交差点内の対向右折車両の停止位置、交差点の長さ又は交差側道路の道路幅など)、車両情報(交差点の対向右折車両に関する情報、例えば、対向右折車両の有無、右折待ちしている対向右折車両の台数など)、信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点、黄信号時間、赤信号時間など)などである。なお、画像センサ、超音波感知器等の車両感知器を交差点付近に設置しておき、車両感知器で対向右折車両に関する情報を車両へ送信してもよい。
図2に示すように、情報提供装置20は、制御部21、通信部22、測位部23、地図データベース24、表示部25、画像処理部26、操作部27、記憶部28、報知部29などを備えている。測位部23は、GPS(Global Positioning System)231、車速センサ232、ジャイロセンサ233、走行距離を計測する距離計234などを備えている。情報提供装置20は、専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して地上でも別の目的などに利用でき、持ち運び可能な汎用性のある装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
情報提供装置20には、車両に搭載されたビデオカメラ30、30を接続してある。ビデオカメラ30は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパ、後部バンパなどに配置され、車両前方及び後方の周辺車両などを撮像できるようにしてある。制御部21は、処理周期などを計時する時計を内蔵してあり、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。
通信部22は、通信装置10との間で路車間通信を行う通信機能を有する。なお、通信部22は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRCなどの狭域通信に限定されるものではなく、例えば、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等で、無線LAN機能などの通信機能を備えるものでもよく、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えるものでもよい。また、通信部22は、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等の路上装置が送信する信号を受信する受信機能を備えることもできる。また、通信部22は、車両の前方又は後方を走行する周辺車両との間で車々間通信を行う通信機能を有する。
測位部23は、複数のGPS衛星からの電波をGPS231で受け取り、車両の位置を測位する。また、測位部23は、GPS衛星からの電波が届かない場所、あるいはGPS231により測位される位置の誤差を小さくするため、車速センサ232、ジャイロセンサ233から出力される信号に基づいて車両の位置を推定し、地図データベース24の道路データと照合することにより車両の位置をさらに精度良く測位する。なお、GPS231に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPSで算出した位置のずれを補正することができ、車両の位置の精度を向上させることができる。
表示部25は、フロントガラスディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ、あるいは、カーナビゲーションシステム又は後方監視モニタなどの液晶表示パネルであって、運転者に所要の情報を表示する。
画像処理部26は、ビデオカメラ30、30で撮像して得られた画像データを画像処理して交差点内で右折待ちをしている対向右折車両及び後続車両などを検出する。
操作部27は、各種操作パネルを備え、運転者と情報提供装置20とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部27は、運転者の操作により情報提供装置20の動作の開始又は停止の操作などを受付ける。
報知部29は、スピーカを備え、制御部21の制御のもと、運転者に情報を提供する場合に、その情報の内容を音声で出力する。例えば、車両が交差点を通過する際に、黄信号開始時点から所定時間経過前後までの時点で情報を出力する。これにより、車両が交差点に進入する直前又は直後の運転を支援するための情報を提供することができ、車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。
記憶部28は、通信部22を通じて受信した所定の情報、予め設定された運転支援情報を構成する文字情報、記号又は画像、画像処理部26で処理した画像データ、測位部23で取得した車両の位置情報、あるいは、走行履歴などを記憶する。
情報提供装置20を搭載した車両が交差点に向かって道路を走行する場合、情報提供装置20は、通信装置10との交信地点で所定の情報を受信する。また、情報提供装置20は、車両と停止線までの距離(例えば、停止線までの距離自身、車両の位置及び停止線の位置、あるいは、通信装置10から停止線までの相対位置など)を取得する。
車両と停止線までの距離は、通信装置10から受信する構成でもよく、GPS231で測位した位置を用いてもよく、位置の精度を向上させるために、車速センサ232、ジャイロセンサ233、距離計234などのデータに基づいた自立航法と併用する構成でもよい。さらに、道路に沿って複数設置した光ビーコンなどの狭域通信装置との通信又は路上装置からの信号により位置を補正することもできる。
情報提供装置20に車両の位置を測位する機能が備わっていない場合であっても、通信装置10との交信により停止線までの距離を受信することができれば、交信地点を通過後の車両の位置は、車両の速度と経過時間に基づいて、概略な停止線までの距離を算出することができる。
その後、情報提供装置20は、停止線(交差点)までの距離、車両の速度、交差点に設置された信号機の信号情報及び所定の標準減速度などに基づいて、車両が黄信号開始時点で交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点で交差点に進入する進入条件を算出する。標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
情報提供装置20は、車両の停止線までの距離、車両の速度及び信号情報に基づいて、車両が、算出した停止条件及び進入条件で画定される交差点通過領域であって、赤信号時に車両が危険な走行状態となる特定状態(後述の対向危険走行領域にある状態)にあるか否かを判定する。なお、特定状態にあるか否かの判定タイミングは、適宜設定することができ、例えば、停止線から所定の距離(例えば、200m程度)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点などとすることができる。また、特定状態にあるか否かの判定は、例えば、車両の速度及び黄信号開始時点での停止線までの距離で示される状態量により判定することができる。なお、情報提供装置20は、車両がジレンマ領域又はオプション領域で示される走行状態にあるか否かの判定も併せて行うことができる。
情報提供装置20は、車両が危険な走行状態(特定状態)にあると判定した場合、危険な走行状態を回避するために、音声による運転支援情報の出力を行う。運転者は、提供された運転支援情報を参考にすることにより、車両が危険走行状態に入るか否かを判断することができ、最終的に車両の減速又は加速などの運転操作を行いつつ危険走行状態からの回避をすることが可能となる。ここで、情報提供のタイミングは、例えば、黄信号開始時刻、あるいは、黄信号開始時刻の直前又は直後に設定することができる。これにより、車両が交差点に進入する直前又は直後の運転を支援するための情報を提供することができ、車両が交差点を通過する際の危険な走行状態を回避することができる。
図3はジレンマ領域及びオプション領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は位置(例えば、停止線からの距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。ジレンマ領域及びオプション領域は、車両が危険な走行状態であることを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。
図3において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(1)で求められる。式(1)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(2)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(3)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
ジレンマ領域は、式(2)及び式(3)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(2)及び式(3)の両者とも満足する領域である。
図3において、ジレンマ領域及びオプション領域の上側の領域は交差点通過領域と称され、従来、安全に交差点(停止線)に進入(通過)することができると考えられていた領域である。しかしながら、車両の運転者は、車両が交差点通過領域にあるのか否かを認識することができず、車両の周辺状況又は交差点の状況などによっては、車両が交差点通過領域に存在する場合でも、危険な走行状態に陥る可能性がある。以下、そのような危険な走行状態について説明する。
図4は交差点に対向右折車両が存在する場合の走行状況の一例を示す模式図である。図4に示すように、車両が交差点に向かって走行しており、交差点の中央部には、先頭の対向右折車両が停止している。先頭の対向右折車両の停止位置から停止線までの距離をRとし、先頭の対向右折車両の停止位置から停止線までの間の任意の位置を交差点内の地点とする。図4の例では、交差点内の地点が先頭の対応右折車両の停止位置である。また、停止線と交差側道路の手前側の端との距離をR0とする。
図4に示す状況において、車両が交差点通過領域に存在する(赤信号に切り替わるまでに停止線を通過できる)場合でも、交差点内に対向右折車両が存在するときには、車両が先頭の対向右折車両の横を通過する時点では、すでに赤信号に切り替わった後である。このような走行状況では、対向右折車両の運転者は、車両(直進車両)が停止線の手前で停止するのではないか、あるいは、車両が停止しようとしているのではないかと誤認し、同時に早く右折して交差点から抜け出したいという感情を有するため、右折して車両(直進車両)と衝突又は接触する危険性がある。
特に、車両(直進車両)が停止線を通過した後に赤信号に切り替わるまでの時間が短いほど車両が対向右折車両の横を通過する時点での赤信号経過時間が長くなり危険性が増大する。例えば、車両が距離R0で示す範囲内に存在する場合に、赤信号に切り替わったときが最も危険であるといえる。すなわち、赤信号に切り替わった時点で(赤信号時に)車両が停止線から先頭の対向右折車両の停止位置までの交差点内の地点を通過している場合には、危険な走行状態にある。別言すれば、危険な走行状態とは、車両が交差点通過領域にあって、かつ赤信号時の車両の位置により特定される走行状態であり、この走行状態(特定状態)を示す領域を対向危険走行領域と称する。以下、対向危険走行領域について説明する。
図5は対向危険走行領域の一例を示す説明図である。図中、横軸は位置(例えば、停止線位置を基準とした距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。図5に示すように、対向危険走行領域は、停止条件C及び進入条件Lにより画定される交差点通過領域内であり、かつ、地点進入条件L1を充足しない領域である。ここで、地点進入条件L1は、赤信号開始時点で車両が先頭の対向右折車両の停止位置(交差点内の地点)を通過できるか否かを示す条件であり、赤信号開始時点で車両が先頭の対向右折車両の停止位置(交差点内の地点)を通過できたとき、地点進入条件L1を充足し、赤信号開始時点で車両が先頭の対向右折車両の停止位置(交差点内の地点)を通過できないとき、地点進入条件L1を充足しない。
すなわち、車両が赤信号時に停止線から先頭の対向右折車両の停止位置までの間の位置にある場合、地点進入条件L1を充足しない。これにより、制御部21は、赤信号に切り替わった時点で車両が停止線から対向右折車両の停止位置までの交差点内の地点にいる場合には、危険な走行状態(対向危険走行領域にある状態)にあると判定することができ、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。
図6は対向危険走行領域の他の例を示す説明図である。図中、横軸は位置(例えば、停止線位置を基準とした距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。図6の例は、車両の速度に応じて、交差点内の地点を変更する場合である。すなわち、制御部21は、車両の速度に応じて、停止線から先頭の対向右折車両の停止位置までの間の交差点内の地点を決定する。例えば、車両の速度が比較的速い(速度V1)場合、対向右折車両の運転者は、直進車両が通過するのを待って右折する傾向があるため、車両と接触事故又は衝突事故を起こす可能性が低くなる。このため、交差点内の地点を停止線に近づけ、例えば、交差点内の地点と停止線との距離をR1とする。
一方、車両の速度が比較的遅い(速度V3、V3<V1)場合には、対向右折車両の運転者は、車両(直進車両)が停止線の手前で停止するのではないかと誤認し、無理に右折しようとして車両と接触事故又は衝突事故を起こす可能性が高くなる。そこで、車両の速度が遅いほど、赤信号開始時点で車両が通過できる位置を先頭の対向右折車両の停止位置に近づけ、例えば、交差点内の地点と停止線との距離をR3(R3>R1)とする。
また、車両の速度が中程度(速度V2、V3<V2<V1)である場合、交差点内の地点と停止線との距離をR2(R3>R2>R1)とする。地点進入条件L2は、速度V1に対応する点Q1の停止線からの距離がR1、速度V2に対応する点Q2の停止線からの距離がR2、速度V3に対応する点Q3の停止線からの距離がR3、となるような点Q1、Q2、Q3を結んだ直線で表わすことができる。なお、地点進入条件L2で示される直線の横軸との交点は、停止線からの距離がRの位置である。対向危険走行領域は、停止条件C及び進入条件Lにより画定される交差点通過領域内であり、かつ、地点進入条件L2を充足しない領域である。これにより、車両の速度に関わらず、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。なお、車両の速度の上限を予め定めておき、車両の速度が上限値において、停止線からの距離Rを0としてもよい。
図7は対向危険走行領域の他の例を示す説明図である。図中、横軸は位置(例えば、交差点内の地点からの距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。図7の例は、ギャップ時間という考え方を用いたものである。制御部21は、停止線から先頭の対向右折車両の停止位置までの間の交差点内の地点を決定し、車両と決定した地点との距離及び車両の速度に基づいて、車両が交差点内の地点に到達するまでのギャップ時間(到達時間)を算出する。制御部21は、算出したギャップ時間が所定の範囲内にある場合、車両が対向危険走行領域にあると判定する。
交差点内の地点を先頭の対向右折車両の停止位置とした場合、ギャップ時間は、対向右折車両の運転者から見れば、車両(直進車両)が到達するまでの時間である。対向右折車両の運転者は、到達時間が短い(例えば、3秒以下)場合には、車両(直進車両)が通過するまで待機して右折を待ち、到達時間が長い(例えば、7.5秒以上)場合には、車両が近づく前に右折することができる。
図7において、例えば、先頭の対向右折車両の停止位置と停止線との距離が8m、黄信号時間が4秒、平均減速度が0.2g(gは車両の標準減速度)、反応遅れ時間を0.5秒とした場合、右折車両進入ギャップ条件G1は、ギャップ時間が3秒のときを示し、右折車両進入ギャップ条件G2は、ギャップ時間が7.5秒のときを示す。対向危険走行領域は、右折車両進入ギャップ条件G1及び右折車両進入ギャップ条件G2で挟まれる領域である。すなわち、制御部21は、ギャップ時間が所定の範囲内(例えば、3秒〜7.5秒)にある場合、危険な走行状態(対向危険走行領域にある状態)にあると判定することができ、これにより、車両と対向右折車両との接触事故又は衝突事故を防止することができる。なお、ギャップ時間は、車両の位置を速度との関係において換算したものといえるので、この場合も、危険な走行状態は、赤信号時の車両の位置として特定することができる。
次に本発明に係る情報提供装置20の動作について説明する。図8及び図9は情報提供装置20の処理手順を示すフローチャートである。制御部21は、通信装置10と交信の有無を判定し(S11)、交信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続ける。交信があった場合(S11でYES)、制御部21は、通信装置10から位置情報、信号情報、交差点情報、車両情報を受信する(S12)。制御部21は、車両の速度、停止線までの距離を取得する(S13)。
制御部21は、危険走行領域の判定タイミングであるか否かを判定する(S14)。ここで、危険走行領域の判定タイミングは、例えば、停止線から所定の距離(例えば、200m程度)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点などとすることができる。
危険走行領域の判定タイミングでない場合(S14でNO)、制御部21は、ステップS13以降の処理を続ける。危険走行領域の判定タイミングである場合(S14でYES)、制御部21は、危険走行領域を算出し(S15)、車両の黄信号開始時刻での状態量(車両の速度及び停止線までの距離)に基づいて車両が交差点通過領域にあるか否かを判定する(S16)。
車両が交差点通過領域にある場合(S16でYES)、制御部21は、車両が対向危険走行領域にあるか否かを判定し(S17)、対向危険走行領域にある場合(S17でYES)、車両が交差点を直進するか否かを判定する(S18)。ここで、車両が交差点を直進するか否かの判定は、次のような方法で行うことができる。例えば、方向指示器の情報を取得して判定する、車両が走行している前方道路をビデオカメラ30で撮像して走行車線が直進専用車線であるかを判定する、GPS231と地図データベース24とにより走行行車線が直進専用車線であるかを判定する、あるいは、ナビゲーションが提供した目的地までの経路誘導を遵守しているか否かで判定する。
車両が交差点を直進する場合(S18でYES)、制御部21は、交差点に右折待ちの対向右折車両があるか否かを判定する(S19)。ここで、対向右折車両の有無は、次のような方法で判定することができる。例えば、車両が走行している前方をビデオカメラ30で撮像して右折待ちの対向右折車両があるか否かを判定する、路上装置との路車間通信により対向右折車両の有無、位置などを取得して判定する、あるいは、周辺車両との車々間通信により対向右折車両の有無、位置などを取得して判定する。
対向右折車両がある場合(S19でYES)、制御部21は、後続車両の有無を判定する(S20)。ここで、後続車両の有無の判定は、次のような方法で行うことができる。例えば、車両の後方をビデオカメラ30で撮像して後続車両があるか否かを判定する、路上装置との路車間通信により後続車両の有無、位置などを取得して判定する、あるいは、周辺車両との車々間通信により後続車両の有無、位置などを取得して判定する。なお、周辺車両が後続車両であるか否かの判定は、例えば、車両が急ブレーキを踏んだ場合に周辺車両が追突する危険がある場合には、その周辺車両は後続車両であり、周辺車両が速度又は速度の自乗に応じた距離閾値以内にあるか否かで判断することができる。
後続車両がある場合(S20でYES)、制御部21は、赤信号開始時刻の車両の位置、速度を算出し(S21)、提供する情報の内容、情報提供のタイミングを決定する(S22)。以下、情報提供のタイミング、提供する情報の内容について説明する。
情報提供のタイミングは、例えば、黄信号開始時刻、あるいは、黄信号開始時刻の直前又は直後に設定することができる。危険な走行状態を回避するためには、できるだけ早いタイミングでの情報提供が望ましいので、例えば、黄信号開始時刻の3秒前を情報提供のタイミングとすることができる。また、黄信号開始時刻での車両の状態量(すなわち、車両の速度及び停止線からの距離)に基づいて、車両が対向危険走行領域にあると判定した場合、赤信号時の車両の位置に応じて、提供する情報を変えることが望ましい。これは、赤信号時の車両の位置に応じて、危険度合いが異なるからである。
例えば、赤信号時の車両の位置が停止線の位置に近い場合(例えば、停止線通過直後に赤信号に切り替わると予想される場合)には、以下のような内容の情報提供を行う。すなわち、「赤信号で交差点に進入します。右折車両が右折すると危険なので停止して下さい。」、「赤信号で交差点に進入します。後続車両がいるので、交差点に入ったところで速やかに停止して下さい。」、「赤信号で交差点に進入します。右折車両、後続車両に注意して速やかに通過して下さい。」などである。
提供する情報の選定に関して、車両の位置又は速度に応じて変更することができる。例えば、赤信号になる車両の位置から対向右折車両の右折待ち位置を通過するまでの時間が、所定の閾値(例えば、2秒)を越える場合には、上述のように車両を停止させるための情報を提供し、越えない場合には、車両を通過させるための情報を提供することができる。
また、赤信号時の車両の位置が右折待ちの対向右折車両の位置に近い場合(例えば、交差点に進入後に赤信号に切り替わると予想される場合)には、以下のような内容の情報提供を行う。すなわち、車両の速度が比較的速い場合、「交差点進入後、赤信号になります。前方の右折車両にパッシング又はホーンで警告して下さい。」、「交差点進入後、赤信号になります。前方の右折車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」、「交差点進入後、赤信号になります。やや速度を落として、前方の右折車両と後方の車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」などである。
また、赤信号時の車両の位置が右折待ちの対向右折車両の位置に近い場合(例えば、交差点に進入後に赤信号に切り替わると予想される場合)において、車両の速度が比較的遅いときには、「交差点進入後、赤信号になります。速度を落とし過ぎないようにして、前方の右折車両と後方の車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」、「交差点進入後、赤信号になります。急ブレーキをかけないようにして、前方の右折車両と後方の車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」などである。
制御部21は、情報提供のタイミングであるか否かを判定し(S23)、情報提供のタイミングでない場合(S23でNO)、ステップS23の処理を続け、情報提供のタイミングである場合(S23でYES)、情報提供を行い(S24)、処理を終了する。
対向危険走行領域にない場合(S17でNO)、制御部21は、提供する情報の内容、情報提供のタイミングを決定する(S25)。この場合、車両が対向危険走行領域にないため、危険な走行状態にはなく、情報提供のタイミングは、対向危険走行領域にある場合に比べて遅いタイミングでも問題がない。そこで、情報提供のタイミングは、例えば、黄信号開始時刻の1秒前とすることができる。
この場合、提供する情報の内容は、例えば、「できるだけ速度を維持し、前方の右折車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」、「赤信号までxx秒あります。できるだけ速度を維持し、前方の右折車両と後方の車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」、「赤信号までxx秒あります。後続車両がいるのでできるだけ速度を維持し、前方の右折車両に注意しながら交差点を通過して下さい。」などとすることができる。
制御部21は、情報提供のタイミングであるか否かを判定し(S26)、情報提供のタイミングでない場合(S26でNO)、ステップS26の処理を続け、情報提供のタイミングである場合(S26でYES)、情報提供を行い(S27)、処理を終了する。
車両が直進しない場合(S18でNO)、対向右折車両がない場合(S19でNO)、後続車両がない場合(S20でNO)、あるいは、車両が交差点通過領域にない場合(S16でNO)、制御部21は、処理を終了する。
上述の図8及び図9の例では、車両が直進する場合、対向右折車両がある場合及び後続車両がある場合に情報提供するようになっているが、情報提供を行う条件は、これに限定されるものではなく、車両が直進する場合、対向右折車両がある場合及び後続車両がある場合のいずれか1つ又は2つを満たした場合に情報提供を行ってよい。
図10は本発明に係る情報提供装置を用いた情報提供の概要の他の例を示す模式図である。図1の例との違いは、通信装置10に代えて中域通信機能を有する通信装置40を備える点である。通信装置40は、例えば、無線LANにより交差点の上流300m〜1000m程度の範囲内の車両と通信することができ、図1の例と同様に、所定の情報を情報提供装置20へ送信する。なお、無線LANは、路側に設置された信号制御用、情報収集用、又は情報提供用の装置を含めた種々の通信機能を有する装置間で情報を送受信するものである。また、通信装置40は、中域通信に限らず、FM放送、携帯電話、インターネット通信等の広域通信機能を備えた装置でもよい。なお、画像センサ、超音波感知器などの車両感知器を交差点付に設置して、右折待ちの対向右折車両の情報を取得する構成とすることもできる。なお、図10の例において、車両の位置検出精度が問題となる場合には、上記の狭域の通信装置10と併用することが望ましい。
以上説明したように、本発明にあっては、従来であれば安全であると考えられていた交差点通過領域であっても、対向右折車両が存在する場合、後続車両が存在する場合等の要因により危険な走行状態に突入した場合であっても、危険な走行状態を確実に回避して交差点で安全に車両を通過又は停止させることができる。
上述の実施の形態において、情報提供の内容は一例であって、これらに限定されるものではない。提供する情報は、音声のみならず、危険度合いに応じて、警告音などで報知することもでき、あるいは、表示部25に表示させることもできる。
上述の実施の形態では、情報提供装置20を車両に搭載する例として説明したが、情報提供装置20は必ずしも車載用に限定されるものではなく、路側に設置する構成でもよい。この場合には、車両の運転者から視認できるような情報表示装置を備えればよい。
上述の実施の形態において、車両が交差点通過領域にあるか否かの判定処理及び対向危険走行領域にあるか否かの判定処理の判定タイミングを、停止線から所定の距離(例えば、200m程度)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点としたが、これに限定されるものではなく、車両が交差点通過領域にあるか否かの判定処理を、停止線から所定の距離(例えば、200m程度)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点で行い、車両が交差点通過領域にあると判定した場合には、その後、例えば、黄信号開始時刻の直前(例えば、3〜4秒前)に、車両が対向危険走行領域にあるか否かを判定するとともに、判定結果に応じてほぼ同じタイミング(例えば、黄信号開始時刻の3〜4秒前)に情報提供の開始を行ってもよい。これにより、交差点に進入する直前又は直後の車両の状態量に基づいて、車両が対向危険走行領域に突入するか否かを判定することができ、危険な走行状態を回避させるためのより的確な情報を提供することが可能となる。
上述の実施の形態において、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。例えば、黄信号時間Tyを意図的に小さくすることができる。また、黄信号開始時点又は黄信号の終了時点を見かけ上変更することで、危険走行領域を広く設定することもできる。また、上記の危険走行領域は、対象とする速度の範囲(例えば、30〜80km/h)を予め決めておいてもよく、対向危険走行領域、ジレンマ領域、又はオプション領域のいずれか1つだけを対象としてもよく、これらの領域のうちのいくつかのみを対象とすることもできる。
上述の実施の形態において、例えば、交差点の手前200mの地点で通信装置10との交信により、車両の位置が補正されたとしても、停止線までの距離がまだ200mある。従って、停止線に到達するまでの間は、自立航法方式、あるいは、自立航法方式とGPSによる測位を加味した方法により車両の位置を検出する。また、停止線に到達するまでの間、仮に車両の距離測定装置の誤差が±1%程度あるとすれば、停止線に到着する時点では±2mの距離誤差が生じることになり、必要精度が達成できない可能性がある。従ってこのような場合には、例えば、停止直前に停止線を車載カメラで認識する等して、最終的に停止位置を微調整することが望ましい。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。