JP4762636B2 - Dna中のメチル化状態を判定する方法 - Google Patents

Dna中のメチル化状態を判定する方法 Download PDF

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Description

本発明は、DNA中のメチル化状態を判定する方法に関する。
ゲノムDNAのCpGジヌクレオチドにおけるシトシンのメチル化は、生物の発生過程においてゲノム配列の変化を伴わずに遺伝子の転写活性を抑制する機構の一つとして知られている。近年、癌等の疾病においても遺伝子制御領域のDNAのメチル化が検出されており、DNA修復系遺伝子等の活性低下に深く関わっていることが報告されている(非特許文献1)。また、ゲノムDNAのメチル化又は脱メチル化は、老化や感染、生活習慣に相関することが示唆されている(非特許文献2)。したがって、病態に関与する遺伝子、および遺伝子制御領域のDNAのメチル化状態を把握することは、癌や生活習慣病などの疾病の早期発見に繋がる可能性があると考えられる。
DNAのメチル化は、形質が均一と考えられる培養細胞においても、個々の細胞のDNAのメチル化状態が同一でないことが知られている。したがって、ある遺伝子制御の特定領域と疾病との関連を模索するためには、個々の細胞のDNAのメチル化状態を知るだけでは不十分であり、細胞集団のDNAのメチル化状態を知ることが重要である。
これまで、幾つかDNAのメチル化を測定する方法が報告されてきた。MSP法(Methylation−specific PCR)は、DNAを重亜硫酸塩(bisulfite)で処理することにより、メチル化シトシンに変化を与えずに、非メチル化シトシンをウラシルに変換した後、メチル化検出用プライマーと非メチル化検出用プライマーとを用いてPCR反応を行い、遺伝子増幅の有無によってメチル化を検出するものである(非特許文献3)。この方法は検出感度が高いものの、DNA上の特定の1箇所のメチル化しか検出することができない。
また、ddCTP(ジデオキシシチジン−5’−三リン酸)を用いたPCR(Polymerase Chain Reaction)法によるメチル化の測定方法(非特許文献4)も報告されているが、この方法はメチル化シトシンの量のみしかを測定することができないため、メチル化の位置に関する情報を得ることができない。
さらに、メチル化の位置情報が得られる方法として、bisulfite sequencing法(非特許文献5)が報告されている。この方法は、DNAを重亜硫酸塩で処理した後、大腸菌へクローニングし、それぞれのクローンをシークエンシングにより測定する方法である。この方法は、他の方法に比べて最も詳細なDNAメチル化情報を得られることができるが、クローニングが必要なため多大な労力を要するゆえ、ハイスループットな測定を行うことができない。
Baylin S. B. , Herman J. G.: TrendsGenet., vol.16, pp. 168-174 (2000) Ushijima T, Okochi-Takada E. : Cancer Sci., vol.96, No.4, pp206-211 (2005) Olek A., et al.: Nucleic Acids Research, vol.24,No.24, pp.5064-5066 (1996) E1-Maarri 0., et al.: Nucleic Acids Research,vol.30, No.6,e25 (2002) FrommerM., et al.: Proc. Natl. Acad. Sci., vol.89, pp. 1827-1831 (1992)
したがって、本発明は、上記の従来技術の問題点を解決すべく、細胞集団などから得る異なるメチル化状態を有するDNAのある特定領域におけるメチル化状態を、クローニングすることなく簡便にかつ一度の操作で判定する方法を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、DNA中の特定領域におけるメチル化状態を、化学処理、PCR法による特定領域に相当する2本鎖DNA断片の増幅、2本鎖DNA断片をテンプレートとするPCR法による1本鎖DNA断片の合成、及びキャピラリー電気泳動による1本鎖DNA断片の検出結果によって、判定する方法を見出した。この方法は、クローニングすることなく簡便に一度の操作で細胞集団などから得る異なるメチル化状態を有するDNA中のメチル化を検出することができ、さらにマルチプレックスPCR法及び複数の蛍光標識されたプライマーの使用により、複数の領域のメチル化状態を判定することができることを見出して、本発明を完成することに至った。
すなわち、本発明は、DNAを化学処理し、非メチル化シトシンをウラシルに変換する第1のステップと、
特定領域を増幅できるプライマー対及びdNTP(デオキシヌクレオシド−5’−三リン酸)を含む反応液を用いたPCR法により特定領域に相当する2本鎖DNA断片を増幅する第2のステップと、
増幅した2本鎖DNA断片をテンプレートとし、1個のプライマー、dNTP及びddCTP(ジデオキシシチジン−5’−三リン酸)を含む反応液を用いたPCR法により1本鎖DNA断片を合成する第3のステップと、
合成した1本鎖DNA断片をキャピラリー電気泳動により分離し、検出する第4のステップと、
検出されたピークの位置に相当するシトシンがメチル化シトシンであると判定する第5のステップと
を備える、DNA中の特定領域におけるメチル化状態を判定する方法を提供する。
第1のステップにおいて、メチル化シトシンに変化を与えずに、非メチル化シトシンを特異的にウラシルに変換する。第2のステップにおいて、検出の目標領域(特定領域)に相当する2本鎖DNA断片を増幅することで、ウラシルをチミンに、そしてメチル化シトシンを非メチル化シトシンに変換する。第3のステップにおいて、第2のステップで増幅された2本鎖DNA断片をテンプレートとし、1本鎖DNAを伸長させるが、反応液中にddCTPが含まれるため、伸長中のDNAはランダムにddCTPを取り込み、そして1本鎖DNAの伸長が停止する。すなわち、第3のステップで、特定領域の全長を伸長した1本鎖DNA断片以外に、テンプレート中の各シトシンの位置まで伸長した、様々な長さの1本鎖DNA断片が合成される。第4のステップにおいて、キャピラリー電気泳動により第3のステップで得た様々な長さの1本鎖DNA断片をそのサイズ(長さ)によって分離し、検出する。キャピラリー電気泳動は微量なサンプルでも1塩基単位で感度よくDNAを分離することができる。そして、第5のステップにおいて、検出された1本鎖DNA断片の長さに相当する位置が元々のDNA中のメチル化シトシンが存在する位置であると判定することができる。したがって、本発明の方法により、クローニングすることなく、一度の操作でDNAの特定領域にわたってメチル化の状態を判定することが可能である。
上記第1のステップの化学処理は、重亜硫酸塩を用いて行われることが好ましい。重亜硫酸塩を用いることにより、簡便に効率よくシトシンをシトシンスルホン酸及びウラシルスルホン酸を経て、ウラシルに変換することができる。また、メチル化シトシンではこの反応が著しく遅いため、メチル化シトシンのまま残ることとなる。
上記第3のステップのプライマーが、蛍光標識したプライマーであることが好ましい。蛍光標識したプライマーを用いてPCRを行うことで、合成された1本鎖DNA断片が5’側に蛍光標識プライマーを含むこととなるため、後のステップで高感度かつ簡便に検出されることが可能である。また、複数の異なる蛍光物質によって標識された複数のプライマーを用いることにより、複数のDNA領域のメチル化状態をも一度の操作で判定することが可能である。
上記第3のステップのddCTPは、蛍光標識したddCTPであることも好ましい。蛍光標識プライマーの代わりに、蛍光標識されたddCTPを用いてPCRを行うことで、合成された1本鎖DNAが3’側に蛍光標識ddCTPを含むこととなるため、後のステップで高感度かつ簡便に検出されることが可能である。
上記第3のステップの反応液中、ddCTPとdCTP(デオキシシチジン−5’−三リン酸)との混合比は、用いるポリメラーゼの種類に依存するが、100〜1/50であることが好ましい。例えば、ジデオキシヌクレオチドの取り込み効率に優れたポリメラーゼであるThermo Sequenase(アマシャム)を用いる場合、混合比は1/5〜1/50であることが好ましい。この場合には、特定領域中のメチル化シトシンの個数にもよるが、約500bpまでのDNA1本鎖を伸長することが可能である。ddCTPとdCTPとの混合比が、1/50よりも小さい場合には、ddCTPが取り込まれる確率が著しく低いため、1本鎖DNA断片中のシトシンの検出感度が低減する傾向があり、逆に1/5よりも大きい場合には、ddCTPが取り込まれる確率が著しく高いため、1本鎖DNA断片が伸長しにくくなり、特定領域の全長にわたって検出できなくなる傾向がある。また、例えばEx Taqポリメラーゼ(タカラ)を用いる場合は、反応液中のddCTPとdCTPとの混合比が1〜500であることが好ましい。この場合には、特定領域中のメチル化シトシンの個数にもよるが、約500乃至1000bpまでのDNA1本鎖を伸長することが可能である。したがって、ddCTPとdCTPとの混合比は、用いるポリメラーゼに応じて最適化する必要がある。
上記特定領域の長さが、50bp〜500bpまでであることが好ましい。用いるポリメラーゼを選択すること、ddCTPとdCTPとの混合比を調節すること及び検出感度の良いキャピラリー電気泳動装置の使用などで、500bpまでの特定領域にわたってメチル化の状態を判定することも可能である。50bpよりも短い場合には、遺伝子制御領域の長さよりも短い場合が多く、制御領域の全域のメチル化状態を判定することができない可能性があり、逆に500bpよりも長い場合には、全長の伸長が著しく難しくなる可能性がある。
本発明の方法によれば、細胞集団などから得る異なるメチル化状態を有するDNAの特定領域、特に50bp〜500bpまでの特定領域におけるメチル化状態を、クローニングすることなく簡便にかつ一度の操作で判定することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。
本発明の方法によってメチル化状態が判定できるDNAは、メチル化が存在する又は存在することが予想されるDNAである。例えば、株化細胞系、初代培養細胞系、若しくは生体組織から採取した細胞集団由来のゲノムDNA、或いは涙などの体液、又は痰、尿若しくは糞便などの排泄物に含まれるDNA断片のいずれでもよい。また、ヒト由来のDNAのメチル化状態の判定は、病態との関連の解析や病気の早期診断などに繋がるため、特に好ましい。
本発明の方法によってメチル化状態が判定できる特定領域は、DNA(遺伝子)の一部であって目的によって適宜に選択することができる。癌又は生活習慣病などの疾病に関連する遺伝子の発現制御領域(プロモータ領域など)を選択する場合には、病態との関連の解析や病気の早期診断などに繋がるため特に好ましい。特定領域の長さは、全長におけるメチル化の状態を判定するために、50bp〜500bpまでの長さが好ましく、100bp〜300bpまでの場合には、最も検出感度がよいためより好ましい。
また、細胞集団由来、又は体液若しくは排泄物に含まれるDNAを判定するために、本発明の方法に適用する前に、細胞集団や排泄物よりDNAを抽出し、精製することが好ましい。抽出・精製方法としては、一般的に行われる方法であればよい。市販されている各種組織、代謝物からDNAを効率的に抽出するためのキット、例えば、QIAamp DNA mini kit(QIAGEN)などの抽出キットを用いることで効率的に抽出できるため特に好ましい。
本発明の方法の第1のステップの化学処理では、化学反応によってメチル化シトシンに変化を与えずに、非メチル化シトシンをウラシルに変換する。重亜硫酸塩を用いる化学処理は、簡便で効率よく非メチル化シトシンをウラシルに変換できるため、特に好ましい。そのうち、重亜硫酸ナトリウムがよく使用される。化学処理方法としては、例えば、重亜硫酸塩の水溶液を用いて、非特許文献3又は5などで開示されている方法に従って行うことが好ましい。
本発明の方法の第2のステップで使用されるプライマー対は、特定領域の全長を増幅できる、特定領域の5’末端側のセンスプライマーと3’末端側のアンチセンスプライマーとの1対のプライマーを含む。プライマーの設計について、特定領域を特異的に増幅できるプライマー対であればよいが、一般的にTm値やCGの含有量を考慮することが好ましく、市販又は公開されているソフトを使用して設計することもできる。また、クローニングをする場合を考慮すれば、制限酵素サイトを含むことができる。プライマーの長さは、15bp〜50bpであることが好ましく、20bp〜30bpであることがより好ましい。
本発明の方法の第2のステップで行われるPCR法は、一般的な2本鎖DNAを増幅するためのPCR法であればよい。反応液には、テンプレートとしてのDNA(ゲノムDNA、DNA断片など)、ポリメラーゼ、プライマー対、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)及び緩衝液などが含まれ、各成分の使用量は一般的なPCR法に準ずる。ポリメラーゼの種類を特にプライマーのTm値などによって適宜に選択することができるが、そのうちTaqポリメラーゼがよく使用される。dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)は、市販されている予め混合されているものを使用すればよく、その使用量はポリメラーゼなどによって適宜に選択することができる。また、温度、時間若しくは反応サイクルなどの反応条件を、プライマー対及びポリメラーゼの種類、特にプライマーのTm値によって適宜に設定すればよいが、条件設定のための予備実験を行うことが好ましい。
PCR産物をそのまま用いて次のステップを行うこともよいが、予めPCR産物を精製することがより好適である。精製方法としては、一般的なDNAの精製方法であればよい。例えば、市販のPCR産物より過剰のプライマーやdNTPを除去するためのキットや、アガロースゲル電気泳動によって分離した後、市販のゲルからDNAを回収するキットによって精製する方法である。
本発明の方法の第3のステップで使用されるプライマーは、特定領域の5’末端側のセンスプライマー又は3’末端側のアンチセンスプライマーのいずれか1つである。このプライマーは、一般的なPCR反応に使用できるプライマーであればよく、第2のステップで使用されたプライマー対のいずれか一方を援用することもできる。プライマーの設計について、一般的なにTm値やCGの含有量を考慮することが好ましく、市販又は公開されているソフトを使用して設計することもできる。プライマーの長さは、15bp〜50bpであることが好ましく、20bp〜30bpであることがより好ましい。また、合成されたDNA1本鎖が後のステップにおいて検出されやすいように、プライマーを蛍光標識することが好ましい。蛍光標識の方法としては、一般的に用いられる蛍光色素を用いて行えばよいが、例えば、6−FAM(6-carboxyfluoresein)、TET(6-carboxy-2’,4,7,7’-tetrachlorofluorescein)、HEX(6-carboxy-2’,4,4’,5’,7,7’-hexachlorofluorescein)、ROX(6-carboxy-x-rhodamine)、TAMRA(6-carboxytetramethylrhodamine)、VIC(登録商標)、NED、又はPETなどの5’末端蛍光標識オリゴフクレオチドを用いる蛍光標識が可能である。
本発明の方法の第3のステップで使用されるddCTPは、市販されているものであればよい。合成されたDNA1本鎖が後のステップにおいて検出されやすいように、プライマーの代わりにddCTPを蛍光標識することが好ましい。蛍光標識の方法としては、一般的に用いられる蛍光色素を用いて行えばよいが、例えば、Cy3、Cy5、fluorescein、6−FAM、HEX、ROXなどを用いた蛍光標識が可能である。また、ddCTPとdCTPとの混合比が、特定領域の長さやポリメラーゼの種類によって100〜1/50の範囲内で適宜に選択することができ、例えば、特定領域の長さが50bp〜500bpであり、Thermo Sequenase DNA Polymerase(アマシャム・ファルマシア)を用いる場合には、その比が好ましくは1/5〜1/50であり、また、Taqポリメラーゼなどの通常のポリメラーゼを用いる場合には、その比が好ましくは1〜100である。
本発明の方法の第3のステップで行われるPCR法の反応液には、テンプレートとしてのDNA(ゲノムDNA、DNA断片など)、ポリメラーゼ、1個のプライマー、dNTP、ddCTP及び緩衝液などが含まれ、各成分の使用量は一般的なPCR法に準ずる。ポリメラーゼの種類を特にプライマーのTm値などによって適宜に選択することができるが、Thermo Sequenase DNA Polymerase(アマシャム・ファルマシア)やAmpliTaq FS(パーキンエルマー)のようなジデオキシヌクレオチドの取り込み効率に優れたポリメラーゼを用いることが好ましい。dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)は、市販されている予め混合されているものを使用すればよく、その使用量はポリメラーゼなどによって適宜に選択することができる。また、温度、時間又は反応サイクルなどの反応条件をプライマー及びポリメラーゼ、特にプライマーのTm値によって適宜に設定すればよいが、条件設定のための予備実験を行うことが好ましい。
本発明の方法の第4のステップで行われる1本鎖DNAの分離及び検出は、検出器が付いて、データ解析ソフトウェアが搭載されているキャピラリー電気泳動装置を用いて行われることが好ましい。微量なサンプルで感度よく分離できるキャピラリー電気泳動装置であればよいが、DNAの分析に適しているものがより好ましい。
本発明の方法の第5のステップでは、第4のステップにおいて検出される1本鎖DNAの長さに相当する位置には、元々のDNAにおいてメチル化シトシンが存在すると判定する。複数のメチル化シトシンが検出された場合には、それが単一細胞(クローン)に存在するかそれとも個別の細胞に存在するかは判定できないが、ある目的領域のDNA配列上に存在するメチル化状態が判定できる。特に、ヒト細胞集団由来のDNAについてある目的領域の数百bpに渡って存在するメチル化状態判定は、疾病や健康度との関連で意義がある。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1 培養細胞由来DNAのメチル化の測定)
Caco−2培養細胞より、ゲノムDNA抽出キットであるQIAamp DNA mini kit(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出し精製した。得られたゲノムDNAを非特許文献5に開示された方法に従って重亜硫酸ナトリウムで処理した。具体的には、1μgのゲノムDNAを、EZ DNA Mehtylation Kit(Zymo Research)を用い、添付の処理手順にしたがって重亜硫酸処理し、洗浄・精製を行った。この処理により、メチル化シトシンに変化を与えずに、非メチル化シトシンをウラシルに塩基変換させた。
次に、APCプロモータ領域を、プライマー対(5’-GTTATTAATTTTTTTGTTTGTTGGG-3’(配列番号1)、及び5’-ACACCTCCATTCTATCTCCAATAAC-3’(配列番号2))を用いたPCR法によりAPCプロモータ領域のDNA断片(290bp)を増幅した。得られたDNA断片をTAベクターであるpGEM−Teasyベクター(プロメガ)に導入し、さらに大腸菌にトランスフォームし、TAクローニングを行った。得られた単一コロニーよりプラスミドを抽出・精製し、単一DNAクローンとした。
次に、得られた単一DNAクローン(プラスミド)に対して、5’末端が蛍光標識されたプライマー(5’―FAM-GTTATTAATTTTTTTGTTTGTTGGG-3’)(配列番号3)を用いてPCR反応を行った。そのPCRの反応液には、単一DNAクローン100ng、O.4mMずつのdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を、0.04mMのddCTP、1pmolの蛍光標識プライマー、20mMのTris−HCI(pH9.3)、5mMのMgC1、0.03mMの2−メルカプトエタノール、0.015%のTween−20、0.015%のNP−40、及び5unitのThermo Sequenase DNA polymerase(アマシャムバイオサイエンス)が含まれていた。PCR反応は、最初に95℃2分で変性を行い、その後95℃で30秒、55℃で30秒及び72℃で1分の処理を20サイクル繰り返し、最後に4℃で保存した。
得られたPCR産物1μLに、0.5μLのサイズスタンダードGS−500(アプライドバイオシステムズ)、及び10μLのホルムアミドを加えて、95℃で3分間熱処理し、急冷した後、ジェネティックアナライザー310(アプライドバイオシステムズ)でDNA断片を分離し検出した。単一クローンC−9及びC−19の結果を図1及び図2に示す。
図1に示したように、クローンC−9のAPCプロモータ領域には、35、37、51、60、85、93、113、120、125、132、157、166、176、189、192、200、203、221、225、231、及び257bpの計21のピークが存在し、また、図2に示したように、クローンC−19のAPCプロモータ領域には、35及び187bpに2つのピークが存在することが分かった。これらのピークの個数と位置が、塩基配列解析によって決定されたメチル化シトシンの個数及び位置と一致していることが分かった。したがって、本発明の方法により、単一クローンのメチル化状態を判定できることを判明した。
さらに、上記と同様な方法により5つの単一クローンを混合したサンプルを測定し、その結果を図3に示す。また、各単一クローンのAPCプロモータ領域について、シークエンシングによって塩基配列決定を行った。その結果及びAPC遺伝子のプロモータ領域の塩基配列を図4に示す。
図3に示したように、5つのクローンのAPCプロモータ領域には、35、37、51、60、85、93、113、120、125、132、157、166、176、182、187、189、192、200、203、221、225、231、及び257の計23のピークが存在していることが分かった。これらのピークは、図4に示しているそれぞれのクローンのAPCプロモータ領域のメチル化シトシンの合計の位置と一致している。以上の結果より、本発明の方法は複数のクローンのメチル化シトシンの位置、すなわち、細胞集団のメチル化状態をクローニングせずに簡便にかつ一度の操作で検出することができることを判明した。
(実施例2 ヒト細胞集団由来DNAのメチル化の測定)
健康人の血液より遠心分離して取得した白血球から、ゲノムDNA抽出キット(QIAGEN)を用いてゲノムDNAを抽出し、精製した。得られたゲノムDNAを、実施例1で示した方法と同様に、重亜硫酸ナトリウムで処理した後、配列番号1及び配列番号2からなるプライマー対を用いたPCR法によりAPCプロモータ領域のDNA断片を増幅した。これらの操作により、ゲノムDNAのAPCプロモータ領域中のメチル化シトシン及び非メチル化シトシンは、それぞれ非メチル化シトシン及びチミンに塩基変換された。
次に、得られたDNA断片に対して、クローニングせず、実施例1に記載の方法と同様に、5’末端が蛍光標識されたプライマー(配列番号3)を用いてPCR反応を行い、ジェネティックアナライザー310(アプライドバイオシステムズ)でDNA断片を分離し検出した。その結果を図5に示す。ポジティブコントロールとして実施例1で得られたクローンC−9を同様に測定し、その結果を図6に示す。
図5に示したように、健康人のAPC遺伝子のプロモータ領域に、290bpに1つだけピークが存在し、それはddCTPを取り込まずに伸長したDNA断片の全長に相当するため、健康人の該当領域にメチル化が存在しないことが分かった。これに対して、図6に示したように、クローンC−9の分析結果には、全長の290bpピーク他に、21のピークが存在した。それぞれの位置に相当するシトシンは、塩基配列決定によって得られたメチル化シトシンの位置と一致していることが分かった。以上の結果から、本発明の方法によりヒト由来の細胞集団のメチル化をクローニングせずに一度の操作で検出することができることを判明した。これにより、DNAのメチル化と疾病との関連を模索する手法として用いられることが可能であると判明した。
(実施例3 複数の領域のDNAのメチル化の測定)
培養細胞HCT−116のDNA修復酵素であるMGMTのプロモータ領域について実施例2と同様な測定を行った。具体的には、MGMTのプロモータ領域にメチル化が存在する培養細胞HCT−116よりゲノムDNAを抽出し、重亜硫酸塩処理した後、当該領域をプライマー対(5’-ATTATTTTTGTGATAGGAAAAGGTA-3’(配列番号4)、及び5’-AAAACCTAAAAAAAACAAAAAAAC-3’(配列番号5))を用いてPCR法により増幅した。PCR反応は、反応酵素としてAccumeTaq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)を用いて、最初に95℃2分で変性を行い、その後95℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で1分間の処理を35サイクル繰り返した。PCR反応終了後PCR精製キット(QIAGEN)で余剰プライマーを除去した。
次に、精製した増幅産物をテンプレートDNAとし、蛍光標識された1個のプライマー(5’-FAM-ATTATTTTTGTGATAGGAAAAGGTA-3’)(配列番号6)を用いてPCRを行い、DNA断片のメチル化を測定した。その結果を図7に示す。さらに、テンプレートとして、MGMTのプロモータ領域の増幅産物の他に、APC及びhMLH1のプロモータ領域の増幅産物も存在したサンプルについて、同様な蛍光標識プライマーを用いて測定し、その結果を図8に示す。
図7に示したように、それぞれのピークの位置が当該領域に存在するメチル化シトシンの位置と一致していることが分かった。また、図8に示したように、複数のDNA領域のテンプレートが混在するサンプルについても、プライマーの特異性のため、単一のDNA領域のテンプレートの場合と同様なピークのパターンが得られた。
以上の結果より、マルチプレックスPCRにより複数の領域を増幅することにより得られるサンプルについても、特定の領域のメチル化位置を検出することが可能であると判明した。この結果は、異なった蛍光色素でラベルされたプライマーを利用することにより、一度の操作で複数DNA領域のメチル化位置を検出できることを示唆した。
(比較例 bisulfite sequencing法)
培養細胞HCT−116より抽出されたゲノムDNAは、実施例3に記載の方法と同様に重亜硫酸ナトリウム溶液で処理した後、MGMTのプロモータ領域をPCR法により増幅した。PCR反応終了後PCR精製キット(QIAGEN)で余剰プライマーを除去した。この段階でのPCR増幅後のサンプル中には、同一のMGMTのプロモータ領域ではあるが、メチル化パターンの異なっているDNA断片が存在している。このDNA断片をpGEM−Teasyベクターにクローニングし、単一クローンを調製した。そのうちの一つのクローンを選択し、プラスミドDNAを抽出後、そのプラスミドに対して塩基配列決定した。その結果を図9に示す。一方、クローニングせずに種々のメチル化パターンを持つDNA断片を一度に直接塩基配列決定した結果を図10に示す。
図9に示したように、クローニングによって単一クローンにした場合には、塩基配列を決定できることが分かった。この場合は、元々のDNA中のメチル化シトシンはシトシンとなり、非メチル化シトシンはチミンとなっている。一方、図10に示したように、クローニングしない複数のクローンの場合、一度の操作で塩基配列を決定することができないことがわかった。これは、同一の位置にメチル化シトシンのクローンと非メチル化シトシンのクローンが混在するため、同一の位置にシトシンとチミンが混在するからである。以上の結果より、bisulfite sequencing法は複数のメチル化パターンが存在するサンプル(例えば、細胞集団由来のゲノムDNA)のメチル化の測定に適さないことを判明した。
DNA(遺伝子)上に存在するメチル化の位置は病態により様々であるだけでなく、個々の細胞によっても異なっている。当然ながら、個々のヒトによっても異なったメチル化状態を示す。したがって、ある特定の遺伝子制御領域(DNA修復遺伝子や癌関連遺伝子等)のメチル化位置を迅速に知ることは、疾病に関する様々な態様を知る上で極めて有効であり、疾病診断や健康状態の把握に貢献し得るものと考えられる。本発明の方法によれば、従来多大な労力を必要とする細胞集団などの複数のメチル化パターンが存在するサンプルの50bp〜500bpにわたるメチル化状態の判定が可能となり、新たな診断マーカーの発見や健康度の診断に貢献することが可能である。
クローンC−9のAPCプロモータ領域の測定結果を示す。 クローンC−19のAPCプロモータ領域の測定結果を示す。 5つのクローン(C−3、C−4、C−9、C−19及びC−22)のAPCプロモータ領域の測定結果を示す。 APC遺伝子のプロモータ領域の塩基配列及び5つのクローンの塩基配列の測定結果を示す。 健康人の白血球由来のDNAサンプルのAPCプロモータ領域の測定結果を示す。 クローンC−9のAPCプロモータ領域の測定結果を示す。 増幅されたMGMTプロモータ領域DNAをテンプレートとしたHCT−116細胞のMGMTプロモータ領域の測定結果を示す。 増幅されたMGMT、APC及びhMLH1プロモータ領域DNAをテンプレートとしたHCT−116細胞のMGMTプロモータ領域の測定結果を示す。 クローニングした場合のシークエンシングの結果を示す。 クローニングしない場合のシークエンシングの結果を示す。

Claims (5)

  1. DNA中の特定領域におけるメチル化状態を判定する方法であって、
    DNAを重亜硫酸塩で処理し、非メチル化シトシンをウラシルに変換する第1のステップと、
    特定領域を増幅できるプライマー対及びdNTP(デオキシヌクレオシド−5’−三リン酸)を含む反応液を用いたPCR法により特定領域に相当する2本鎖DNA断片を増幅する第2のステップと、
    増幅した2本鎖DNA断片をテンプレートとし、1個のプライマー、dNTP及びddCTP(ジデオキシシチジン−5’−三リン酸)を含む反応液を用いたPCR法により1本鎖DNA断片を合成する第3のステップと、
    合成した1本鎖DNA断片をキャピラリー電気泳動により分離し、検出する第4のステップと、
    検出されたピークの位置に相当するシトシンがメチル化シトシンであると判定する第5のステップと
    を備える方法。
  2. 第3のステップのプライマーが蛍光標識したプライマーである、請求項に記載の方法。
  3. 第3のステップのddCTPが蛍光標識したddCTPである、請求項に記載の方法。
  4. 第3のステップの反応液中、ddCTPとdCTP(デオキシシチジン−5’−三リン酸)との混合比が100〜1/50である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 特定領域の長さが50bp〜500bpである、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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