<基板処理装置の構成概要>
図1は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置100を模式的に示す図である。基板処理装置100は、洗浄装置101と基板検出装置102とを主として備える。なお、基板処理装置100は、装置全体を統括的に制御するメインホスト103を備えているが、後述するように、その一部の構成要素も基板検出装置102の構成要素として作用する。
洗浄装置101は、薬液槽111を有するチャンバ110を少なくとも1つ備える(図1では1つのチャンバ110を備える場合を例示している)。洗浄装置101は、チャンバ110に備わる薬液槽111に貯留されてなるリン酸や硫酸加水などの所定の薬液SOLに複数の基板(以下、単に「基板」とする)Wを一括して浸漬させることによって基板の洗浄を行う、いわゆるバッチ式の洗浄処理を行う装置である。
また、洗浄装置101は、チャンバ110と外部(例えば他のチャンバ110)との間で基板Wを搬送する搬送手段(搬送チャック)114を備えている。なお、図1においては図示を省略するが、搬送手段114は、複数の保持溝115を有し(図9参照)、それぞれの保持溝115によって基板Wを起立姿勢で保持することで、基板Wを複数枚同時に搬送する。なお、搬送手段114は図1に示す姿勢aのときに基板Wを保持しており、姿勢bのときに基板Wを保持していないものとする。チャンバ110には、基板Wを保持した状態で矢印AR1のようにz軸方向に昇降動作するリフタ112が設けられている。チャンバ110における洗浄処理は、搬送手段114がチャンバ110上部の所定の基板受け渡し位置にまで搬送してきた基板Wを、当該チャンバ110に備わるリフタ112が受け取り、リフタ112が、受けとった基板Wを保持したまま薬液槽111内に下降して、薬液槽111に貯留された薬液SOLに基板Wを所定時間が経過するまでの間浸漬させることによって実現される。所定時間経過後、薬液SOLに浸漬していた基板Wはリフタ112が上昇することによって薬液SOLから引き上げられ、受け渡し位置において搬送手段114に受け渡されて、搬送手段114によって他へと搬送される。なお、搬送手段114による搬送動作およびリフタ112の昇降動作は、メインホスト103に備わる搬送制御部170の制御に基づいて動作する、いずれも図示しない所定の駆動手段によって実現される。また、薬液槽111の外周上部にはオーバーフロー槽113が設けられており、基板Wの浸漬によってあふれた薬液SOLをオーバーフロー槽113で回収し、循環路(図示省略)により薬液槽111へと循環供給される。
なお、本実施の形態に係る基板処理装置100においては、次述する撮像処理を行う必要から、チャンバ110の側面(槽壁)の少なくとも一部が、光透過性を有する材質、例えば透明アクリルによって構成されてなる。
基板検出装置102は、それぞれのチャンバ110において所定の洗浄処理を終えた基板Wの保持状態の検出(基板検出処理)を行う装置である。なお、本実施の形態において、基板Wの保持状態の検出とは、チャンバ110において薬液SOLに浸漬された後、リフタ112により引き上げられた基板Wの保持位置および保持枚数を特定し、浸漬前と同じ枚数だけ存在するか否かを確認する処理のことをいう。換言すれば、薬液SOLへの浸漬に際して、薬液槽111内に基板Wが落下していないことを確認する処理である。具体的には、チャンバ110において洗浄処理がなされた後、リフタ112から搬送手段114に受け渡された時点で(図1において搬送手段114が姿勢aをとって基板を保持している状態で)基板Wのエッジ部分を撮像し、得られた撮像画像に対し所定の画像処理を行い、得られた画像処理結果に基づいて基板の有無が確認される。
基板検出装置102は、係る基板検出のための撮像処理を担う構成要素として、基板Wを撮像するための例えばCCDカメラやCMOSカメラなどからなる撮像手段120と、撮像に際して基板Wに対し照明光を照射するための例えばLEDなどからなる照明手段121とを備える。
図2および図3は、撮像手段120と照明手段121の配置関係を説明するための図である。図2はチャンバ110の上部において搬送手段114に保持されている基板Wをz軸正方向(鉛直上方向)から見た上面図(xy平面図)であり、図3は、図1の基板Wをy軸負方向から(図1の左側方から見た図)見た図(zx平面図)である。ただし、薬液槽111、リフタ112および搬送手段114の図示は省略している。また、図2および図3において一点鎖線で示すのは、搬送手段114によって保持されている基板Wの配列方向Pである。すなわち、図2および図3においては、基板Wの配列方向Pがx軸方向に一致する場合を示している。なお、図1に示す撮像手段120と照明手段121のチャンバ110に対する配置関係は、図示の都合上のものであって、基板処理装置100における実際の配置位置を反映したものではない。
図3に示すように、撮像手段120と照明手段121とは、いずれも、チャンバ110の外側上方に配置される。これは、チャンバ110の内部を高いクリーン度に保つ必要があることや、薬液雰囲気に直接に曝されることによって撮像手段120や照明手段121が悪影響を受けることを避けるためである。係る配置関係のもとでの撮像を良好に行えるよう、チャンバ110は、上述したように側面の少なくとも一部が、光透過性を有する材質、例えば透明アクリルによって構成されてなる。好ましくは、チャンバ110あるいは薬液槽111は、基板Wの搬出入時以外は図示を省略する遮蔽手段で遮蔽される。
加えて、図2および図3に示すように、撮像手段120と照明手段121とは、x軸方向について見た場合にチャンバ110を挟むように配置されている。なお、本実施の形態においては、照明手段121は配列方向Pを含むz−x平面内に配置されてなるのに対して、撮像手段120は、当該平面からずれた場所に配置されている。実際には、撮像手段120の配置位置に合わせて照明手段121の配置位置は適宜に調整すればよい。
図1に戻って、基板検出装置102は、撮像処理の制御と、撮像画像に基づく画像処理とを行う制御部130をさらに備える。制御部130は、撮像手段120、照明手段121、およびメインホスト103と電気的に接続されてなる。
制御部130は、画像入力部140と、画像処理部150と、ホストIF160と、メモリM1とを備えている。
画像入力部140は、撮像手段120による撮像を制御する。具体的には、撮像手段120に撮像命令(撮像制御信号)を与える一方、撮像手段120から画像信号を取得して撮像画像データを生成する。なお、本実施の形態においては、撮像画像データはそれぞれの画素が0から255までのいずれかの階調値(画素値)をとる多値階調データとして生成されるものとする。撮像画像データによって表現される撮像画像においては通常、基板Wのエッジ部分が明るく(白っぽく)、他の部分が暗く(黒っぽく)観察される。
画像処理部150は、画像入力部140で生成された撮像画像データを受け取り、該撮像画像データに基づいて、搬送手段114に保持されている基板Wの保持位置を特定する処理を担う。なお、保持位置を特定することで、搬送手段114に保持されている基板Wの枚数も特定される。画像処理部150における処理の結果、洗浄処理に供された後の時点において実際に搬送手段114に保持されている基板Wの保持位置が特定される(その際、自ずから保持枚数も特定されることになる)ので、画像処理部150における処理が、基板検出装置102における基板検出処理に相当する。また、得られた処理結果を検出基板情報と称する。画像処理部150の構成、および画像処理部150において行われる、検出基板情報の生成に係る種々の処理の詳細については、後述する。
ホストIF160は、メインホスト103との間の通信インターフェースである。メインホスト103から搬送手段114における搬送タイミングに応じて与えられる、撮像手段120による撮像の実行指示は、ホストIF160を介して画像入力部140に与えられる。また、画像処理部150における画像処理の結果は、ホストIF160を通じてメインホスト103へ送信される。
メモリM1は、基板検出処理に関する種々の情報を記憶する記憶領域である。メモリM1は、基板検出処理に必要な情報を、あらかじめ、もしくは、基板検出処理の実施中に必要に応じて取得し、これを記憶する。メモリM1に記憶された情報は、基板検出処理の実施中に適宜読み出される。
なお、洗浄装置101がチャンバ110を複数備える場合、撮像手段120と照明手段121はそれぞれのチャンバ110に対応して設けられ、制御部130は全ての撮像手段120および照明手段121とを統括的に制御する。
メインホスト103は、基板処理装置100の全体を統括的に制御する制御部である。メインホスト103は、上述のようにリフタ112や搬送手段114の動作を制御する搬送制御部170を備えるほか、通信部180と、基板情報保持部190と、検出処理命令部200と、基板有無判定部210とを備えている。
通信部180は、制御部130その他、基板処理装置100の各部との間で種々の信号の授受を行う際の通信インターフェースである。
基板情報保持部190は、搬送手段114によってチャンバ110に搬送された基板Wの枚数および、搬送手段114の基板保持部が保持可能な最大枚数の基板を保持した状態での各基板位置に関する情報(以下、「処理基板情報」と称する)を保持する。すなわち、処理基板情報は、洗浄処理に供される前の時点における基板Wの保持枚数および保持位置についての情報である。換言すれば、基板情報保持部190が有している洗浄処理に供される前の基板Wの保持位置についての情報は、洗浄処理後の基板Wの保持位置として想定される保持位置(想定保持位置)についての情報である。
検出処理命令部200は、基板検出装置102に対する基板検出処理の実行を命令する。具体的には、洗浄処理終了後、リフタ112から搬送手段114に基板Wが受け渡されたことを示す信号が搬送制御部170から与えられると、検出処理命令部200は、基板検知装置の制御部130に対して、基板検出処理の実行を命令する信号を与える。
基板有無判定部210は、基板情報保持部190に保持されている処理基板情報と、画像処理部150によって生成された検出基板情報とに基づいて、洗浄処理に供された基板Wが全て、該洗浄処理後に搬送手段114に保持されているか否かを判定する。すなわち、何らかの理由で、チャンバ110内に脱落した基板がないかを判定する。基板有無判定部210は、基板検出処理によって特定された基板の保持位置と、基板の保持位置としてあらかじめ基板情報保持部190によって保持されている保持位置とを比較し、両者が合致する場合に基板Wの保持状態が正常であるという検出結果を生成し、両者が合致しない場合には基板Wの保持状態に異常があるという検出結果を生成する。
基板情報保持部190と検出処理命令部200と基板有無判定部210とはいずれも、基板検出に係る処理を担う構成要素であり、本実施の形態においては、基板検出装置102の構成要素として作用する。
<画像処理部の構成>
図4は、画像処理部150のより詳細な構成を示す図である。画像処理部150は、画像入力部140によって生成された撮像画像データを受け取り、該撮像画像データから、搬送手段114に保持された基板Wの保持位置および枚数を特定し(つまりは搬送手段114に保持された基板Wの保持状態を検出し)、その結果を検出基板情報として出力する。基板Wの保持状態の検出は、撮像画像データから、基板Wの位置を特定するための1次元データ(ピークプロファイルデータ)を生成し、該1次元データにおけるピーク位置に基づいて行う。
図5は、撮像手段120によって撮像され画像入力部140によって生成された、基板Wの撮像画像データD1の一例を示す図である。図5においては、基板Wのエッジ部分の像(エッジ部分からの反射光成分を主とする像)が白く観察される。なお、図中の2つの座標軸は、後述する基板検出処理の際に特定され、使用されるものであり、必ずしも撮像画像データD1自体が係る座標軸についての情報を有するものではない。
図6は、画像処理部150において生成される1次元データD2の一例を示す図である。1次元データD2は、後述する方法で特定される基板Wの配列方向における位置座標(配列方向座標)と、各位置座標ごとに同様に後述する方法で特定される基板Wの円周方向に積算した基板Wのエッジ部分を構成する画素値(積算画素値)との関係を示すデータである。図6においては、前者を横軸に取り、後者を縦軸に取っている。なお、図6に示す直交座標空間は、図5に示す2つの座標軸からなる座標空間を変換したものに相当する。図6に示す1次元データD2に現れるピークが、搬送手段114に保持されている1つ1つの基板Wに対応するので、それぞれのピーク位置を特定することで、基板Wの保持位置が特定されることになる。
画像処理部150は、図4に示すように、係る基板検出処理を実現するための構成要素として、検出力判定処理部151と、画像合成部152と、検出処理部153と、補正処理部154とを備えている。
検出力判定処理部151は、画像入力部140で生成された撮像画像データについて、該撮像画像データを検出基板情報の生成に用いてもよいか否かを判定する処理、つまりは、該撮像画像データによって表現される撮像画像が、基板の保持状態の検出に十分な検出力を有する画像であるか否かを判定する処理(検出力判定処理)を担う。例えば、チャンバ110に汚れが付着している状態で得られた撮像画像データなどは、検出処理部153において基板の保持位置を正確に特定できるだけのコントラスト(シャープネス)を有していない場合がある。検出力判定処理部151は、このような品質の悪い撮像画像データを排除し、良好なコントラストを有する撮像画像データのみを基板検出処理に供するために、撮像画像データを峻別する処理を担う。具体的には、検出力判定処理部151は、撮像画像データD1における、像のコントラストの度合いを数値化し、この値が所定の閾値を超える場合に、検出力を有すると判定する。検出力判定処理の詳細については後述する。
画像合成部152は、画像入力部140から得られる複数の撮像画像データを所定の方法で合成して、一の画像データ(合成画像データ)を生成する。
基板処理装置100においては、照明手段121と基板Wとが図2および図3に示した位置関係にあることから、照明手段121から基板Wに光を照射して撮像手段120による撮像を行うと、得られる撮像画像においては照明手段121との距離に応じて基板Wの像に明暗が生じてしまうことになる。すなわち、照明手段121に近い基板Wからは大きな光量の反射光が得られるので撮像画像における基板Wのエッジ部の像は明るいものの、照明手段121から遠い基板Wから得られる反射光の光量は小さいために該基板Wのエッジ部の像は暗くなるので、照明手段121との距離に応じて基板Wの位置の特定精度が異なってしまうという問題が起こりうる。仮に、露光量や露光時間を増やした場合、照明手段121から遠い基板Wの像は明るくなるが、その場合には照明手段から近い基板Wからの反射光量が大きくなりすぎ飽和してしまうという問題が生じる。
図7は、露光時間(つまりはシャッタースピード)を違えることによって露光量を変化させた場合の撮像画像データの変化を模式的に示す図である。撮像画像データは本来2次元データであるが、ここでは、説明の簡単のために1次元データで示している。図7においては、横軸の値が大きいほど、搬送手段114に保持されている基板Wの配列において照明手段121から遠い位置を表すものとする。また、図7において、位置PT1は照明手段121に近い側にある基板Wのエッジ部分の位置(エッジ位置)を指し示し、位置PT3は照明手段121から遠い側にある基板Wのエッジ位置を指し示し、位置PT2は両者の中間にある基板Wのエッジ位置を指し示すものとする。一方、位置BG1は照明手段121に近い側における基板Wのエッジ部分とエッジ部分の間の位置(エッジ間位置)を指し示し、位置BG3は照明手段121から遠い側における基板Wのエッジ間位置を指し示し、位置BG2は両者の中間における基板Wのエッジ間位置を指し示している。
図7(a)は、シャッタースピードを相対的に遅く(露光時間=1/30秒)することによって、照明手段121から遠い側の基板Wが適正露光量で露光されるようにした場合のピークプロファイルを示す図である。この場合、位置PT1における画素値と位置BG1における画素値との差(ピークボトム差)が「5」であって、位置PT2における画素値と位置BG2における画素値との差「110」、および位置PT3における画素値と位置BG3における画素値との差「100」に比して、著しく小さくなっている。これは、照明手段121から近い基板位置においては過剰露光のために基板Wからの反射光量が飽和しており、十分なピークボトム差が得られないことを意味している。
図7(c)は、シャッタースピードを相対的に速く(露光時間=1/120秒)することによって、照明手段121から近い側の基板Wが適正露光量で露光されるようにした場合のピークプロファイルを示す図である。この場合、照明手段121から遠いエッジ位置である位置PT3における画素値が「50」と小さくなっているため、ピークボトム差が「40」と小さくなっている。
図7(b)は、シャッタースピードを図7(a)の場合と図7(c)の場合との中間程度(露光時間=1/60秒)にすることによって、配列の中央部分にある基板Wが適正露光量で露光されるようにした場合のピークプロファイルを示す図である。この場合、位置によらずピークボトム差はある程度得られるものの、やはり、照明手段121から遠いエッジ位置である位置におけるピークボトム差は「50」と、若干小さくなっている。
本実施の形態に係る基板処理装置100においては、係る不具合を解消すべく、搬送手段114が基板Wを保持している状況を相異なる露光量で複数回撮像し、得られた複数の撮像画像データを画像合成部152において1つの画像データに合成し、これによって生成された合成画像データを検出用画像データとして後段の処理に供することができるようになっている。この合成画像データを基板Wの検出処理に用いることで、搬送手段114に保持されている個々の基板Wについての照明手段121との距離の相違が基板Wの保持位置の特定精度に与える影響が抑制される。合成画像データの生成処理(画像合成処理)の詳細については後述する。
検出処理部153は、画像入力部140にて得られた撮像画像データもしくは画像合成部152において得られた合成画像データを検出用画像データとして、検出用画像データから、図6に示したような1次元データD2を生成し、該1次元データD2が表現するピークプロファイルにおけるピーク位置を特定する処理を担う。検出処理部153によって特定されるピーク位置が、搬送手段114における基板の保持位置に対応することになる。なお、検出用画像データから1次元データを生成する方法についての詳細は後述する。
補正処理部154は、保持している基板Wの枚数の多少によって(すなわち搬送手段114に掛かる負荷の大小によって)搬送手段114における基板Wの保持位置が鉛直方向(重力方向)において変化してしまうことに起因する、1次元データのピーク位置のずれを補正する処理を行う。
図8、図9、図10および図11は、1次元データのピーク位置のずれについて説明する図である。図8は、搬送手段114が基板Wを保持する状態を例示する図である。図8においては、搬送手段114が16個の保持溝115を有する場合を図示しているが、搬送手段114が備える保持溝115の数はこれに限られるものではない。図8(a)には13枚の基板Wが保持されている場合を示しており、図8(b)には3枚の基板Wが保持される場合を示しているが、前者が比較的多数の基板Wを保持している状態(多数基板保持時)を例示し、後者が比較的少数の基板Wを保持している状態(少数基板保持時)を例示するものとする。また、図8においては、それぞれの保持溝115に、識別のための番号(基板スロット番号)を付している。
図9は、図8に示すように基板Wが保持された場合の基板Wの保持枚数と鉛直方向(重力方向)における基板Wの保持位置との対応関係を示す図である。図9(a)が図8(a)の多数基板保持時に対応し、図9(b)が図8(b)の少数基板保持時に対応している。図9に示すように、基板保持枚数が多い前者における基板Wの重心P1よりも、後者における基板Wの重心P2の方が、鉛直方向(重力方向)においてより上側に位置することになる。これは、後者の方が搬送手段114に係る負荷が小さいことによるものである。
図10は、搬送手段114が図8に示す態様で基板Wを保持している場合に得られる1次元データを示す図である。図10においては、実線で示すピークプロファイルが図8(a)に示すように多数の基板Wが保持されている場合の1次元データを表しており、破線で示すピークプロファイルが図8(b)の少数の基板Wが保持されている場合の1次元データを表している。また、図11は、図10のそれぞれの1次元データに基づいて、ピーク位置の補正処理なしに基板の有無を判定した場合の判定結果を示す図である。図11においては、○がその基板スロット番号の保持溝115に基板が存在すると判定された場合を示しており、×がそのスロット番号の保持溝115には基板は存在しないと判定された場合を示している。
図10の実線で表されるピークプロファイルからは、そのピーク位置より、図10の上方に点線を付したように、保持溝115が対応することが想定される。図11に示す判定結果も、これに対応する内容を表している。すなわち、「0」、「2」、「3」、「4」、「5」、「7」、「8」、「10」、「11」、「12」、「13」、「14」、「15」という基板スロット番号が付された保持溝115に、基板Wが保持されていると判定される。これは、図8(a)に示した実際の保持状態と合致する結果である。
一方、図10の破線で表されるピークプロファイルからは、そのピーク位置より、図11に示すように「9」、「10」、「12」という基板スロット番号が付された保持溝115に基板Wが保持されていると判定される。しかしながら、これは、図8(b)に示した実際の保持状態とは合致しない結果である。図8(b)に示す実際の保持状態は、「7」、「8」、「10」という基板スロット番号が付された保持溝115に基板Wを保持するものであるので、例えば「7」という基板スロット番号の保持溝115に保持されている基板Wであれば、「9」という基板スロット番号の保持溝115に保持されていると、判定されていることになる。これは、本来は図10に示す位置x1に存在するはずの、「7」という基板スロット番号の保持溝115に保持されている基板Wに由来するピークが、「9」という基板スロット番号の保持溝115に基板Wが保持されている場合のピーク位置に相当する位置x2に存在することによるものである。
図10および図11に示す結果は、図9に示すように、保持枚数が異なることによって基板Wが保持されていると判定される保持溝115が異なってしまうことを意味している。本実施の形態に係る基板処理装置100においては、係る不具合を避けるべく、補正処理部154によって、検出処理部153において特定されたピーク位置を、所定の枚数の基板Wが保持されている場合を基準として補正する補正処理が行える。補正処理の詳細については後述する。
<基板検出装置における処理の概略>
図12は基板検出装置102において行われる処理の概略的な流れを示す図である。
まず最初に、検出処理の対象である洗浄処理後の基板Wの撮像が行われ、撮像画像データが生成される(ステップS1)。撮像画像データが得られると、続いて、検出力判定処理部151による、検出力判定処理が行われる(ステップS2)。
検出力判定処理の結果、問題がなかった場合、画像合成部152によって、検出用画像データが取得される(ステップS3)。撮像が1回のみ行われた場合には、画像入力部140によって生成された撮像画像データがそのまま検出用画像データとされる。一方、上述したように、1次元データにおけるピーク位置の特定精度を高めるべく、撮像手段120によって異なる露光量で撮像することで得られた複数の撮像画像データから、合成画像データを生成し、該合成画像データを検出用画像データとすることも可能である。
検出用画像データが得られると、検出処理部153が、該検出用画像データに基づいて基板Wの保持位置の特定に用いる1次元データ(検出用1次元データ)を生成し、さらに、検出用1次元データに現れるピークの位置を特定することによって、搬送手段114に保持されている基板Wの保持位置を特定する処理(基板検出処理)を行う(ステップS4)。そして、さらに、補正処理部154において、検出処理部153によって特定された基板Wのピーク位置を補正する補正処理が行われる(ステップS5)。これにより、基板Wの保持位置が正しく特定される。なお、上述したようなピーク位置のずれが問題とならず、基板の保持位置を正しく特定することができるような場合は、補正処理を省略し、検出処理部153によって特定された基板Wのピーク位置から保持位置を特定することも可能である。
このようにして特定された、搬送手段114に保持されている基板Wの保持位置(および枚数)の情報が、検出基板情報として、ホストIF160を介してメインホスト103に送られる。メインホスト103においては、基板有無判定部210が、通信部180から受け取った検出基板情報と基板情報保持部190が保持している処理基板情報とを比較することによって、各保持位置における基板の有無を判定する(ステップS6)。具体的には、基板有無判定部210は、検出基板情報に記述されている基板Wの保持位置が、処理基板情報において基板の保持位置と記述されている位置を基準とする所定のしきい値の範囲内に含まれる場合に、当該位置に基板Wが存在すると判定する。
これにより、洗浄処理に供された基板Wが、処理後において搬送手段114に保持されているか否かが判定されることになる。
<撮像処理>
図13は、図12のステップS1で行われる基板Wの撮像処理の流れを示す図である。
まず、リフタ112に保持されて薬液槽111の薬液SOLに浸漬されることで洗浄処理に供されていた基板Wが、洗浄処理の終了に伴い薬液槽111から引き上げられる(ステップS11)。続いて、基板Wはリフタ112から搬送手段114へと受け渡される(ステップS12)。その際、受け渡しが完了したことを示す信号が搬送制御部170から検出処理命令部200に与えられる。検出処理命令部200はこれに応答して、撮像命令を発する(ステップS13)。撮像命令は、通信部180を通して制御部130内のホストIF160に送信され、ホストIF160は画像入力部140にこれを与える。
撮像命令を受けた画像入力部140は、照明手段121を点灯させる(ステップS14)。照明手段121からは、あらかじめ定められた光量の照明光が、チャンバ110側面の透明部分を透過し、搬送手段114に保持されている基板Wに向けて照射される。このように照明光が照射されると、基板Wの鉛直方向(z軸方向)上側のエッジ部分(端縁部)が照明光を撮像手段120側に反射し、主表面は照明光をチャンバ110の底方向(図1〜図3のz軸負方向)へ反射する。
この状況のもと、画像入力部140は、撮像手段120に対して基板Wの撮像を指示する(ステップS15)。具体的には、あらかじめ設定され、メモリM1に記憶されている撮像回数とそれぞれの撮像の際の露光量(露光時間、シャッタースピード)とを読み込み、読み込んだ条件に基づく撮像の実行を撮像手段120に対して指示する。
撮像手段120は、指定された露光量で所定の回数だけ基板Wを撮像する(ステップS16)。検出用画像データとして合成画像データを用いる場合には、相異なる露光量で複数回の撮像が行われる。撮像手段120が撮像を行うことで得られた画像信号(撮像信号)は、画像入力部140へ送信される。画像入力部140は、受信した画像信号に基づいて撮像画像データを生成する(ステップS17)。上述のように、基板Wのエッジ部分における反射光が撮像手段120の側に向かうので、撮像画像においては、基板Wのエッジ部分が明るく観察される。得られた撮像画像データは、メモリM1に記憶される。
<検出力判定処理>
次に、図12のステップS2において実施される検出力判定処理について、詳しく説明する。検出力判定処理は、上述のように、撮像画像データが、搬送手段114における基板の保持位置を特定するに十分なものであるか否かを判定する処理である。係る検出力判定処理は、検出力判定処理部151において実行される。
図14は、検出力判定処理の流れを示す図である。検出力判定処理を実施する場合、まず、ステップS1で生成された撮像画像データが画像処理部150によって取得される(ステップS21)。なお、このようにして取得され、検出力判定処理の対象とされた撮像画像データを特に、検出力判定対象データと称し、該検出力判定対象データが表現する画像を特に、判定対象画像とも称する。
検出力判定対象データが取得されると、判定対象画像のエッジを強調する処理(エッジ強調処理)が施される(ステップS22)。判定対象画像のエッジとは、該画像において画素値(濃度値)の変化の大きい領域のことをいう。本実施の形態においては、このエッジ強調処理を、検出力判定対象データに対してSobelフィルタなどの一般的なエッジ強調用のフィルタを作用させることによって行う。これは、判定対象画像における基板Wの反射光成分を主とする明るい部分と、基板Wの反射光成分以外を主とする暗い部分との境界を、より明確にする処理であって、以下のステップで行う処理のための前処理に相当する。
次に、このようにエッジ強調処理が施された検出力判定対象データに基づき、濃度ヒストグラムが生成される(ステップS23)。濃度ヒストグラムは、判定対象画像が取りうる全ての画素値(濃度値)を横軸にとり、それぞれの画素値について、判定対象画像が有する画素数(度数)をカウントすることによって得られる。図15は、異なる2つの検出力判定対象データについての濃度ヒストグラムを例示する図である。なお、図15においては、画素値が大きいほど白い(明るい)ものとする。
濃度ヒストグラムが得られると、該濃度ヒストグラムに基づいて、その2値化閾値とクラス分離度とが算出される(ステップS24)。2値化閾値とは、濃度ヒストグラムを与える判定対象画像を2値化する場合の閾値である。またクラス分離度とは、2値化閾値の妥当性の程度を表す指標である。クラス分離度は、値が大きいほど、2値化閾値を境にして2つのクラスがより分離されることを、換言すれば、画素値ヒストグラムの双峰性が高いことを表している。本実施の形態においては、2値化閾値とクラス分離度との算出を、判別分析法に基づいて行うものとする。
具体的には、判定対象画像がL段階の階調値(レベル)で表現されているとし、レベルkを2値化閾値とするときにレベルk以下の画素値(クラス)を取る確率をω1、k+1以上の画素値(クラス)を取る確率をω2、それぞれのクラスについての画素数の平均値をμ1、μ2とするときに、次の(数1)で表される、kの関数である値(クラス間分散)σB 2を最大とするレベルkが、2値化閾値として採用される。
ただし、レベルiの画素数をniとし、全画素数をNとし、レベルiの確率分布をPiとすると、
である。なお、(数2)はレベルkまでの濃度分布の0次のモーメントである。
を用いると、
である。なお、(数4)はレベルkまでの濃度分布の1次のモーメントであり、(数5)は全画素値についての画素数の平均値である。
また、σB 2が最大であるときの、次の(数8)で与えられる値が、クラス分離度になる。なお、(数8)による演算の結果、クラス分離度は、0と1との間の値として求まる。
ただし、σT 2は、全画素値についての画素数の分散であり、次の(数9)で与えられる。
実際には、(数1)において逐次kの値を変えてやることにより、順次σB 2の値を求め、最大値を与えるkを2値化閾値として採用する。そして、このときのkの値を用いて(数8)からクラス分離度ηを求める。換言すれば、クラス分離度ηが最大となるように2値化閾値を決定する。
図15に示す2つの画素値ヒストグラムについてみれば、図15(a)の画素値ヒストグラムでは、低画素値側と高画素値側とに度数(画素数)が極大となる箇所があり、両者の中間の度数が極小となるところに2値化閾値が位置することで、低画素値側と高画素値側とが明瞭に分離されている。係る場合に、高いクラス分離度が得られることになる。画素値ヒストグラムでは高画素値側ほど明るいので、図15(a)の場合、基板のエッジ部分を表現すると見られる画素が高画素値側の極大を形成し、それ以外のバックグラウンド部分が低画素値側の極大を形成しているものとみられる。一方、図15(b)の画素値ヒストグラムにおいては、高画素値側に行くほど度数が単調に減少するのみで、2値化閾値の近傍画素値においても相当の度数がカウントされている。係る場合のクラス分離度は低くなることになる。この場合、撮像画像において、基板Wのエッジ部分とそれ以外の部分とが明瞭には分離されないことになる。
2値化閾値とクラス分離度とが得られると、次に、シャープネス値を算出する(ステップS25)。シャープネス値とは、判定対象画像のコントラストの度合いを表す値である。シャープネス値は、2値化閾値以上の値を有する画素値についての平均値(これをエッジ平均値と称する)に、クラス分離度を乗じることによって算出される。
図15に示す2つの画素値ヒストグラムについてみれば、上述のようにクラス分離度は異なるものの、エッジ平均値はそれぞれ同じ値mである。従って、エッジ平均値mを直接に検出力判定の基準とすると、両者を識別することはできない。しかしながら、このような場合でも、クラス分離度は、それぞれの画素値ヒストグラムの形状を反映して異なる値となっていることから、エッジ平均値にクラス分離度を乗じた値、つまりはシャープネス値を検出力判定の基準とすることで、より的確に検出力を判定することができる。
シャープネス値が得られると、検出力判定が行われる(ステップS26)。具体的には、得られたシャープネス値が、基板検出処理を行う前にあらかじめメモリM1に記憶しておいた基準値とを比較する。係る基準値は、例えば、気化した薬液SOLなどによるチャンバ110の汚れの許容限度とされる状態をあらかじめ想定し、係る状態におけるシャープネス値を算出することによって得ることができる。あるいは、理想的な状態におけるシャープネス値を算出し、この値に所定の係数(許容限度係数)を掛けた値を基準値として用いるなどの態様であっても良い。
シャープネス値が基準値よりも大きい場合(ステップS26でYES)、検出力判定対象データが基板の保持位置を特定するに十分な検出力を有すると判定されることになるので、図12のステップS3に進むことになる。一方、シャープネス値が基準値以下である場合(ステップS26でNO)、検出力判定対象データは検出力を有しないと判定されることになる。この場合、以降の基板検出処理は中止される。例えば、検出力判定処理部151からホストIF160を通してメインホスト103に対し当該結果が通知されると、メインホスト103は、以降の基板検出処理の実行指示を行う代わりに、チャンバ110の洗浄等、所定の処置を促す所定の警告処理(警告音の発生や警告表示の実行など)を行う。
本実施の形態に係る基板処理装置においては、このような検出力判定処理を行うことで、撮像画像の品質が十分ではなく、基板の検出に適していない撮像画像データを、基板の検出処理の対象から除外することができる。これにより、高い精度での基板検出が実現される。また、十分なコントラストを有する撮像画像データが基板検出に供されるので、照明光を消灯した状態での画像データを用いて基板のエッジ部分の像を強調した画像を作成せずとも、基板検出が可能となる。
なお、検出力判定処理を行うに際して、撮像手段120による撮像が複数回行われた場合には、最初に得られた撮像画像データのみを検出力判定処理の対象とする態様であっても、複数のあるいは全ての撮像画像データについて検出力判定処理を行う態様であってもよい。あるいは、S3で実施される合成処理によって得られた1枚の画像データに対して検出力判定を行うことも可能である。
また、例えば、薬液槽111の壁面が常に正常に保たれる場合など、撮像画像データの品質が常に良好に保たれるような場合は、検出力判定処理は不要である。すなわち、検出力判定処理は、基板位置の特定において必須の処理ではなく、場合によっては省略可能である。検出力判定処理の要否についての情報は、例えば、作業者がメインホスト103に対して所定の入力指示を行うことによって与えられ、メモリM1に記憶される。
<画像合成処理>
次に、図12のステップS3における検出用画像データの取得の際に実施される画像合成処理について説明する。画像合成処理は、画像合成部152において実行される。なお、画像合成処理の対象となる複数の撮像画像データを特に、合成対象画像データと称し、それぞれの合成対象画像データによって表現される撮像画像を特に、合成対象画像と称することとする。また、合成画像データによって表現される画像を特に、合成画像と称することとする。
画像合成処理にはいくつかの手法が適用可能であるが、本実施の形態においては、高ダイナミックレンジ手法(HDR手法)と呼ばれる手法を用いる場合を例に説明する。まず、複数の合成対象画像のそれぞれにおいて同一位置にある画素同士の画素値(0から255の値をとるものとする)のなかで、あらかじめ定められた上限値未満の範囲内で最大の画素値を特定する。上限値には、240〜250程度の値が設定される。なお、このように上限値を定めるのは、画素値が飽和した状態にある画素を除外するためである。そして、この特定された画素値を用いて真の明度を算出し、これを例えば0から255の間で規格化した値を、合成対象画像の当該画素位置における画素値として採用する。なお、撮像を行う際の露光時間eおよび、画素値の最大値を特定する際の上限値は、あらかじめメモリM1に記憶されている。
図16は、係る画像合成処理における具体的な処理の流れを示す図である。まず最初に、画像合成処理の対象となる複数の合成対象画像データを取得する(ステップS31)。なお、以下の説明においては、それぞれの合成対象画像データによって表現される合成対象画像はN個の画素から構成されているものとし、そのうちの任意の画素をj番目の画素(1≦j≦N)と称することとする。まず、1番目の画素を処理の対象とすべく、j=1とする(ステップS32)。
以降は、j番目の画素についての処理が行われる場合を説明する。まず、それぞれの合成対象画像のj番目の画素の画素値のなかから、上限値の範囲内での最大値o(j)を特定し、該最大値を与える合成対象画像を撮像した際の露光時間e(j)をメモリM1から読み出す(ステップS33)。
続いて、次の関係式から、j番目の画素の真の明るさi(j)が算出される(ステップS34)。
係る処理が、N個の画素の全てについて行われる(ステップS35)。すなわち、真の明るさiを求めていない画素が存在する場合は、j+1番目の画素について、ステップS33およびステップS34の処理が繰り返される(ステップS38)。
N個の画素の全てについて、真の明るさi(j)が求められた場合(ステップS35でYES)は、全ての画素についてi(j)の値を正規化する処理が行われる(ステップS36)。例えば、i(1)〜i(N)というN個のi(j)のうちの最大値をiM、最小値をimとし、i(j)の正規化後の画素値をI(j)とすると、I(j)は、次の演算式によって定めることができる。
このようにして得られたI(j)の値が、合成画像のj番目の画素における画素値を表現することになる。すなわち、各画素の配置位置とそれぞれの画素についてのI(j)とを対応づけることで、合成画像データが生成されることになる(ステップS37)。
図17は、図7において模式的に1次元データとして示す異なる3つの撮像画像データに基づいて、合成画像データを生成した場合の結果を示す図である。図17(a)が、高ダイナミックレンジ手法を適用した場合の結果である。なお、図17(b)は、後述する変形例における合成画像データの生成例である。図17においても、横軸の値が大きいほど、搬送手段114に保持されている基板Wの配列において照明手段121から遠い位置を表すものとする。
図17(a)に示す合成画像データにおいては、照明手段121から近い位置においてピークボトム差が「148」あるとともに、照明手段から遠い位置においてもピークボトム差が「85」もあり、図7のいずれの場合よりも、位置によらず比較的良好なピークボトム差が得られていることがわかる。
このように、合成画像データは良好なピークボトム差を有するものとして生成されるので、該合成画像データを検出処理の対象とすることで、より正確な基板検出が実現されることになる。また、ピークボトム差を有する検出用画像データが基板検出に供されることになるので、照明光を消灯した状態での画像データを用いて基板のエッジ部分の像を強調した画像を作成せずとも、基板検出が可能となる。
<基板検出処理>
次に、図12のステップS4において実施される基板検出処理(厳密には、搬送手段114における基板位置の特定処理)について、詳しく説明する。図18は、基板検出処理の流れを示す図である。まず、例えば図5に示す撮像画像データD1のようなデータである検出用画像データが取得される(ステップS41)。なお、上述のように、検出用画像データとしては、撮像処理によって得られた一の撮像画像データを用いる態様であっても良いし、合成画像データを用いる態様であってもよい。なお、検出用画像データによって表現される画像を特に、検出用画像と称することとする。
次に、検出用画像データに基づいて、1次元データ(ピークプロファイルデータ)が生成される(ステップS42)。係る1次元データの生成は、検出用画像において基板Wの像(エッジ部分の像)を構成すると判断される画素(図5の場合であれば白い部分を構成する画素)の画素値を基板Wの円周方向について積算するという操作を、基板Wの配列方向に沿って行い、得られた積算値と配列方向の座標とを対応させることで実現される。例えば、図6に示すような1次元データD2が生成される。
本実施の形態では、この1次元データの生成に用いる円周方向と配列方向とを、あらかじめ基準となる検出用画像(基準検出用画像)を用いて決定しておき、検出処理に際しては、対象となる検出用画像データによらず、このあらかじめ決定された円周方向と配列方向とに基づいて1次元データを生成するものとする。
図19は、基準検出用画像に基づいて配列方向と円周方向とを決定する処理の流れを示す図である。図20および図21は、係る処理において取り扱われる画像を模式的に示す図である。
まず、搬送手段114の保持溝115の全てに基板Wが収納された状態(全収納状態)で、上述の撮像処理と同様に撮像手段120による撮像を行うことで、基準検出用画像を与える撮像画像データ(基準検出用画像データ)を生成する(ステップS421)。図20(a)が、基準検出用画像IM1の模式図である。基準検出用画像IM1は通常、基板Wのエッジ部分が明るく(白っぽく)、他の部分が暗く(黒っぽく)観察される、多値階調画像である。
基準検出用画像データが生成されると、基板Wのエッジ部分が抽出されやすくなるように明度補正(ステップS422)を行った上で、基準検出用画像を2値化する(ステップS423)。図20(b)は、図20(a)に示す基準検出用画像IM1に対して明度補正を施すことによって得られた明度補正後画像IM2の模式図である。さらに、図20(c)は、図20(b)に示す明度補正後画像IM2に対して2値化を行うことによって得られた2値化画像IM3の模式図である。
2値化画像IM3が得られると、高画素値の閉領域(2値化画像IM3において白く見える領域)を一意に識別するためのラベリング処理を行う(ステップS424)。ラベリング処理には、公知の技術を適用可能である。
ラベリングされた領域(ラベリング領域)は、主として基板Wのエッジ部分を表現するものである(これをエッジ部ラベル領域と称する)が、元の基準検出用画像が含んでいたノイズする領域も存在しうる(これをノイズラベル領域と称する)。こうしたノイズラベル領域はエッジ部分の特定に不要であるので、これを除去する(低画素値に置き換える)フィルタリング処理を2値化画像IM3に対して施す(ステップS425)。フィルタリング処理は、各ラベル領域の位置やサイズ、主軸方向などに基づいて行われる。図20(d)は、図20(c)に示す2値化画像IM3に対してフィルタリング処理を施すことによって得られたフィルタリング後画像IM4の模式図である。図20(d)に例示するように、フィルタリング後画像IM4においては、エッジ部ラベル領域のみが高画素値の領域として存在する。
フィルタリング後画像IM4が得られると、各エッジ部ラベル領域の重心位置が特定される(ステップS426)。あるエッジ部ラベル領域Rに属する画素の座標を(x,y)、該エッジ部ラベル領域に属する画素の全画素数をMとし、該エッジ部ラベル領域の重心を(xg,yg)とすると、以下の関係により該エッジ部ラベル領域の重心が求められる。
ただし、Rは重心を求める対象となっているラベル領域を表す。
それぞれのエッジラベル領域の重心が求まると、搬送手段114で保持されている基板Wの配列方向が特定される。具体的には、各エッジ部ラベル領域の重心位置を求め、各重心位置の分布を近似する直線(回帰直線)を、基板Wの配列方向を与える直線として特定する(ステップS427)。回帰直線は、例えば最小二乗法などの公知の手法によって求めることができる。図21(a)は、図20(d)に示すフィルタリング後画像IM4に存在するラベル領域L1〜L7の重心G1〜G7の分布に基づいて得られた、配列方向を示す直線y=ax+bを例示する図である。
配列方向が特定されると、搬送手段114で保持されている基板Wの円周方向(主軸方向)が特定される。具体的には、それぞれのエッジ部ラベル領域についての主軸方向を表す角度(主軸角θ)を求めた上で、全てのエッジ部ラベル領域についての主軸角θを統計的に代表する値を、搬送手段114で保持されている基板Wの円周方向を規定する角度(円周方向角θ0と称する)を定める(ステップS428)。
それぞれのエッジ部ラベル領域についての主軸角θは、次のように求められる。
ただし、
である。全てのエッジ部ラベル領域についての主軸角θが求まると、例えばそれらの平均値や中央値を採用することによって、円周方向角が規定できる。
以上のように得られた、配列方向と円周方向とに関する情報(具体的には、配列方向を特定する直線y=ax+bの傾きaおよび切片bと、円周方向を特定する円周方向角θ0)は、メモリM1に記憶される。
このように特定された配列方向と円周方向とを用い、検出用画像において基板Wのエッジ部分の像を構成すると判断される画素の画素値を円周方向角θ0の方向について積算するという操作を、配列方向を特定して定められている直線y=ax+bに沿って行うことで、図18に示すステップS42における1次元データの生成が実現されることになる。
ただし、検出用画像においてエッジ部分は弓形や三日月形のような曲線的な形状を有するので、これを構成する全ての画素を積算対象とした場合、1次元データが不要なピークを与えてしまうことが起こりうる。本実施の形態においては、これを避けるべく、円周方向における画素の積算をエッジ部分が直線的に近似される所定範囲に限定して行うようにしている。図22は、係る画素の積算範囲を例示する図である。図22においては、円周方向についての画素値の積算を、配列方向を特定する直線y=ax+bを中心とする範囲αの内部に属する領域(斜線部)についてのみ行うようにする場合を示している。なお、係る積算範囲は、少なくとも基板Wのノッチ部分が含まれるように設定されるのが好ましい。
以上のような処理によって、図6に示すような1次元データが得られると、そのピーク位置を特定することで、搬送手段114における基板Wの保持位置を特定することは可能となる。ただし、1次元データには、基板Wのエッジ部分からの反射光に由来する成分以外に、撮像時における、外部からチャンバ110内に透過する光や散乱光等の外乱などの反射光成分などの存在に起因して、ノイズ成分がバックグランド部分に重畳している。本実施の形態においては、より正確なピーク位置の特定を目的として、得られた1次元データから背景ノイズに相当するバックグラウンド成分を除去する処理を行う(ステップS43)。
図23は、背景ノイズを除去する処理の流れを示す図である。まず、1次元データ上のそれぞれのデータ点について、該データ点を中心とした局所領域(配列方向座標における所定範囲)を設定し、該局所領域の範囲内に属する画素値から、該データ点についての背景ノイズに相当する画素値(背景画素値)を決定する(ステップS431)。また、それぞれの局所領域についての背景画素値を決定する方法としては、該局所領域における各画素値の最小値を用いるのが好適な一例である。
図24は、図6に示した1次元データD2を部分的に拡大したものを用いて、背景画素値の決定を方法を説明する図である。図24においては、局所領域のサイズdは、1次元データに表れるピークのピーク幅と同程度に設定されているものとする。なおサイズdは適宜に調整されてよい。
図24においては3つのデータ点A、B、およびCについての背景画素値abk、bbk、およびcbkを例示している。なお、データ点Aは局所領域にピークを含まないデータ点である。データ点Bは、ピーク位置のデータ点である。データ点Cは、局所領域にピークの一部を含むデータ点である。これらのデータ点における積算画素値には大きな相違があるものの、背景画素値の間の差異は比べて非常に小さくなっている。
背景画素値が得られると、それぞれのデータ点について、その画素値から背景画素値を減算する(ステップS432)。
1次元データの全データ点について得られたこの減算値をプロットすることで、背景ノイズが除去された1次元データ(検出用1次元データ)が生成される(ステップS433)。
図25は、図6に示す1次元データD2を対象に、局所領域のサイズdをピーク幅と同程度にして検出用1次元データを生成した場合を示す図である。図25(a)は、検出用1次元データに基づいて得られた背景画素値と配列方向座標における座標値との関係を示す背景画素値データDbを示す図である。すなわち、図25(a)は、図6に示す1次元データD2における背景ノイズを表していることになる。図25(a)は、背景ノイズがほぼなめらかで変動の少ない曲線として捉えられることを示している。一方、図25(b)は、図6に示す1次元データD2から、それぞれのデータ点における背景画素値を減算することによって得られた1次元データである検出用1次元データD3を示す図である。図6と図25(b)とを対比すると、検出用1次元データD3をプロットした図25(b)においては、背景ノイズが好適に除去されており、全範囲においてピークが明瞭に観察されることがわかる。
図26および図27は、同じく図6に示す1次元データD2を対象に、局所領域のサイズdを違えた場合の結果を示す図である。
図26は、局所領域のサイズdをピーク幅より小さく設定した場合の結果を示す図である。図26(a)が背景ノイズを表す図であるが、図25(a)に示す場合とは異なり、細かい変動が現れている。これは、データ点によっては背景画素値にピークの影響が現れていることを意味する結果である。これに伴って、図26(b)に示す背景画素値の減算結果では、背景ノイズ成分のみならず、ピーク成分までもが減算されてしまい、ピークが小さくなってしまっている。
図27は(a)は、局所領域のサイズdをピーク幅より大きく設定した場合の結果を示す図である。図27(a)に示すように、背景ノイズはなめらかな曲線として捉えられているが、背景画素値自体のレベルが、図25(a)に示す場合よりも小さくなっている。これに伴って、図27(b)に示す背景画素値除去後の1次元データにおいては、まだ背景ノイズの成分が残ってしまっている。すなわち、これは、十分に背景ノイズを除去しきれていないことを示している。
これらの結果は、局所領域のサイズdをピーク幅と同程度にすることが好適であることを示している。
図18に戻って、得られた検出用1次元データD3のピーク位置の検出処理が行われる(ステップS44)。具体的には、得られた検出用1次元データD3によって表現されるピークプロファイルを微分し、極大点を求めることによってピーク位置を特定する。係る処理によって得られたピーク位置が、搬送手段114によって保持されている基板Wの位置と対応することになる。得られたピーク位置の情報は、検出基板情報としてメモリM1に記憶される。
以上、説明したように、本実施の形態においては、あらかじめ基板の配列方向と円周方向とする方向を求めておき、基板のエッジ部分の像を構成すると判断される画素の画素値を該円周方向について積算する操作を、該配列方向に沿って行うことによって検出用1次元データを生成するので、撮像画像データを得るたびに該撮像画像データの内容から基板の配列方向と円周方向とを算出する必要がなく、基板検出処理が簡略化される。これにより、例えば、得られたエッジ部分の像が複雑な形状を有してなり、その配列方向と円周方向とを直接に特定することが煩雑な場合であっても、そのような配列方向と円周方向とを特定せずとも、必要な1次元データを生成することができる。その際、積算範囲を円周方向についてエッジ部分の像が直線的に近似される範囲内ついてのみ行うことで、検出用1次元データに不要なピークが現れることは抑制されてなる。
また、背景ノイズを除去した検出用1次元データを生成することで、基板の保持位置に対応するピーク位置をより正確に特定できるようになっている。しかも、照明光を消灯した状態での画像データを用いて基板のエッジ部分の像を強調した画像を作成せずとも、背景ノイズの除去とされてなる。
<補正処理>
最後に、図12のステップS5における補正処理について説明する。係る補正処理は、上述したように、搬送手段114に保持される基板Wの総重量に依存して図9に示すように基板Wの保持位置がずれが生じることに起因する、搬送手段114の個々の保持溝115に保持されるそれぞれの基板Wに対応する検出用1次元データのピーク位置のずれを補正する処理である。
この補正処理は、それぞれの保持溝115に保持されている個々の基板Wについて想定される保持位置はいずれも、基板Wの総重量にのみ依存して線形的に変動する、という仮定の下に行う処理である。なお、保持される個々の基板Wの重量は一定と考えられるので、結局のところ、この仮定は、個々の基板Wについての保持位置は搬送手段114に保持される基板Wの枚数にのみ依存して変動する、という仮定と等価である。
図28は、この仮定の下における、搬送手段114のある保持溝115に保持される基板W(これを特に、着目基板と称する)について、検出処理部153によって特定されるピーク位置と、搬送手段114が保持している基板Wの枚数との対応関係を示す図である。
図28に示すように、搬送手段114がN1枚、N2枚(N1≠N2)の基板Wを保持している場合の、着目基板についての保持位置(配列方向座標における位置)をそれぞれX1、X2とし、Nk枚の基板Wを保持しているときの保持位置をXkとした場合、Xkの値は次式によって求まる。
例えば、搬送手段114がN個の保持溝115を有している場合に、N1=2(両端の保持溝115にのみ基板Wが保持されている場合に相当)、N2=N(全ての保持溝に基板Wが保持されている場合に相当)とし、それぞれの場合の保持位置X1、X2を1次元データからあらかじめ求めておくと、上式より得られる位置Xkが、任意のNk枚の基板Wが保持されている場合に着目基板についての保持位置を指し示すことになる。
また、この場合において、差分値Xk−X2(実際には数14の右辺第1項から求まる値)は、N枚の基板Wが保持されている場合の着目基板の保持位置と、Nk枚の基板Wが保持されている場合の保持位置とのずれを表すことになる。
すなわち、検出処理部153において特定される、Nk枚の基板Wが保持されている場合の1次元データについてのピーク位置は、N枚の基板Wが保持されている場合のピーク位置に対して上述の差分値に相当するずれを含んでいるものとみなすことができるので、特定されたピーク位置を示す座標値から、上述の差分値を差し引くことで、全ての保持溝115に基板Wが保持されている場合に検出されると想定される位置を示す座標値が得られることになる。
この、全ての保持溝115に基板Wが保持されている状態における着目基板の実際の保持位置(つまりは着目基板を保持している保持溝115の位置、もしくは基板スロット番号)は、1次元データから求めた位置X2と必ず一対一に対応するので、任意のNk枚の基板Wが保持されている場合の着目基板の位置Xkから、上述の差分値を差し引けば、位置Xkにおいて検出されたピークが、どの保持位置に基板Wが存在することを示すピークであるのかを、確実に特定することが可能となる。すなわち、係る演算処理が、着目基板についての補正処理に相当することになる。
ただし、それぞれの保持溝115に基板が保持されている場合について、数15の式を立てて補正を行うことは煩雑である。そこで、本実施の形態においては、搬送手段114のある特定の2箇所の保持溝115に保持される基板W(これらを、補正基準基板と称する)についてのピーク位置の補正にのみ上述の関係を用い、他の保持溝115に保持されている基板W(着目基板)については、2つの補正基準基板と着目基板との位置関係と、2つの補正基準基板についての補正後の保持位置とに基づいて、保持位置を補正するようにする。なお、補正基準基板が保持される保持溝115の位置は、特に限定されるものではないが、補正の精度を鑑みると、両端の保持溝115が選択される態様がもっとも好適である。従って、以下の説明においては、N個の保持溝115の両端に補正基準基板が保持される場合を例として説明する。係る場合、着目基板は、2つの補正基準基板の間が保持される保持溝115の間の保持溝115に保持される基板Wということになる。
図29は、係る場合の補正処理の流れを示す図である。また、図30は、搬送手段114によって保持される2つの補正基準基板および着目基板の保持位置と、搬送手段114が保持している基板Wの枚数との対応関係を示す図である。図30においては、N個の保持溝115を有する搬送手段114が両端の保持溝115に計2枚の基板Wを保持している場合(つまりは補正基準基板のみを保持している場合)の、保持溝115の第1端に保持されている補正基準基板についてのピーク位置がそれぞれXa1であり、第2端に保持されている補正基準基板についてのピーク位置がそれぞれXb1であるとする。また、該搬送手段114が全ての保持溝115に基板Wを保持している場合の、保持溝115の第1端に保持されている補正基準基板についてのピーク位置がそれぞれXa2であり、第2端に保持されている補正基準基板についてのピーク位置がそれぞれXb2であるとする。
補正処理においては、まず、実際の処理に先だって、これら2枚の基板が収容されている場合、および、N枚の基板が全て収納される場合について、検出処理部153において基板検出処理を行うことによって、ピーク位置Xa1、Xb1、Xa2、Xb2を事前に求めておき、メモリM1にその結果を記憶しておく(ステップS51、S52)。係るXa1、Xb1、Xa2、Xb2の値は、同一の搬送手段114について搬送される基板Wについて同一の条件で基板検出を行う場合に、繰り返し使用されるものである。
そして、実際に補正処理を実行するに際しては、まず、検出処理部153において特定された、基板検出処理の対象とされている保持状態における基板Wの保持位置に対応するピーク位置の情報を取得する(ステップS53)。なお、その際には、ピーク位置のデータの数(つまりはピークの本数)から、保持枚数Nkについての情報も併せて取得されることになる。
ここで、図30に示すように、Nk枚の基板が保持されているときの任意の保持溝115に保持されている着目基板のピーク位置をXkとし、第1端と第2端とに保持されている補正基準基板のピーク位置をそれぞれXak、Xbkとし、全ての保持溝115に基板Wが保持されているときの着目基板のピーク位置をXk’とする。
第1端に保持されている補正基準基板のピーク位置Xakは、数14においてX1=Xa1、X2=Xa2とすることによって求められる線分La上の点であり、第2端に保持されている補正基準基板のピーク位置Xbkは、数14においてX1=Xb1、X2=Xb2とすることによって求められる線分Lb上の点である。
一方、着目基板についても、そのピーク位置は同様に直線的に変化するものと想定される。Nk枚の基板Wが保持されているときのピーク位置Xkは、位置Xakと位置Xbkとの間に存在する一方、全ての保持溝115に基板Wが保持されているときのピーク位置Xk’は位置Xa2と位置Xb2の間に存在することから、両者を結ぶ線分が、着目基板についてのピーク位置の変化を示すと考えるのが妥当である。これはすなわち、次の比例関係が成り立つことを意味している。
この式より、ピーク位置Xk’は次のように求められる。
右辺は全て既知であるので、それぞれの値を代入することで、搬送手段114がNk枚の基板を保持している場合にピーク位置Xkを与える基板Wが、全ての保持溝115に基板Wが保持されている場合のピーク位置Xk’が特定される(ステップS54)。この特定されたピーク位置Xk’は、全ての保持溝115に基板Wが保持されている状態における実際の保持位置と必ず対応することになる(実際の保持位置を基準としたある閾値範囲に収まる)ので、取得された全てのピークについて上式よりピーク位置Xk’を特定することによって、Nk枚の基板Wが、搬送手段114のどの保持溝に保持されているのかを特定することができる(ステップS55)。
上述したように、図10において破線で示す1次元データに基づいて特定されるピーク位置を、補正することなくそのまま基板Wの保持位置に表しているとした場合には、図11に示すように誤って保持位置が判定されることになるが、特定されたピーク位置について、上述のような補正処理を施すことで、正しい保持位置の特定が可能となる。すなわち、基板の保持位置の特定精度の向上が実現される。
<合成画像処理の変形例>
上述の実施の形態においては、高ダイナミックレンジ手法(HDR手法)を用いて合成画像データを生成しているが、その際に用いている数10の式によれば、各合成対象画像についての画素の最大値o(j)の値が一定の場合、露光時間e(j)が小さいほど、真の明るさi(j)は大きくなる。一般的に、露光時間が小さいほど撮像画像の精度は悪いので、短い露光時間で得られた合成対象画像の画素値がo(j)として多く採用されるような場合、結果的に合成画像の精度が悪くなってしまう。そこで、係る不具合を解消すべく、i(j)に代えて、i(j)の常用対数値log10i(j)を算出し、得られた値を正規化するようにしてもよい。
あるいは、高ダイナミックレンジ手法に代えて、複数の合成対象画像のそれぞれにおいて同一位置にある画素同士の画素値の平均値を、合成画像の対応位置における画素値とするようにしてもよい。図17(b)は、係る場合における合成画像データの生成例である。
あるいは、複数の合成対象画像のそれぞれにおいて同一位置にある画素同士の画素値の中央値を、合成画像の対応位置における画素値とするようにしてもよい。
また、上述の実施の形態においては、異なる露光量で撮像した複数の撮像画像データを用いて合成画像データの生成を行っているが、これに代わり、露光量を一定に保ち、照明手段121からの照明光の光量を調整し、相異なる光量で撮像を行った複数の撮像画像データを用いて合成画像データを生成する態様であってもよい。この場合、上述の実施の形態において画像入力部140における撮像手段120の制御が単純化される。