JP4760034B2 - 導電性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
(1) 芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、導電性カーボンブラック(B成分)を0.1〜100重量部含有してなる樹脂組成物であって、前記導電性カーボンブラック(B成分)が次の(1)〜(3)の特性を全て満足することを特徴とする導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
(1) 24M4DBP吸収量が130cm3/100g以上
(2) 1500℃、30分間加熱により発生した水素量(脱水素量)が1.2mg/g以下
(3) 結晶子サイズLcが10〜17Åの範囲
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、「A成分」と略記することがある。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、カーボネート前駆体とを反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
本発明は、B成分である導電性カーボンブラック(以下、「B成分」と略記することがある。)の水素含有量を低下させるとともに、結晶サイズを小さくし、且つそのストラクチャーの指標値を大きくすることにより、これを配合した導電性ポリカーボネート樹脂組成物の導電性および流動性が向上し、更には滞留熱安定性を確保しうるという新規な知見に基づいて創案されたものであり、本発明で用いる導電性カーボンブラックは、次の3条件を満足する必要がある。
(1) 24M4DBP吸収量が130cm3/100g以上
(2) 1500℃、30分間加熱により発生した水素量(脱水素量)が1.2mg/g以下
(3) 結晶子サイズLcが10〜17Åの範囲
(5) ストークスモード径(Dmod)と24M4DBP吸収量との比(Dmod/24M4DBP)が0.6〜0.9
(6) 透過型電子顕微鏡による平均粒径が14〜24nm
(7) CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積が120〜220m2/g
(8) DBP吸収量が150〜400cm3/100g
(9) 次式で定義される含酸素官能基密集度が3μmol/m2以下
24M4DBP吸収量およびDBP吸収量は、JIS K6217に準拠する(単位はcm3/100g)。
脱水素量は、カーボンブラックを真空中で1500℃で30分間加熱し、この間に発生したガス中の水素量であり、具体的には次のようにして測定される。
1.カーボンブラックを約0.5g精秤し、アルミナ管に入れ、0.01Torr(1.
3Pa)まで減圧した後、減圧系を閉じ、1500℃の電気炉内に30分間保持して
カーボンブラックに存在する酸素化合物や水素化合物を分解・揮発させる。
2.揮発成分は定量吸引ポンプを通じて、一定容積のガス捕集管に採取する。
3.圧力と温度からガス量を求めるとともに、ガスクロマトグラフにて組成分析する。こ
れから水素(H2)の発生量(mg)を求め、カーボンブラック1g当たりからの水
素量に換算した値を計算する(単位はmg/g)。
カーボンブラックの結晶子サイズLc(Å)は、X線回折装置を用い、次の式より求められる。
Scherrerの式:結晶子サイズLc=K×λ/β×cosθ
ここで、K:形状因子定数0.9
λ:特性X線の波長 CuKα 1.5418(Å)
β:半価幅(ラジアン)
θ:ピーク位置(度)
具体的な測定装置としては、X線回折装置 RINT−1500型(理学電機社製)を用い、測定条件は管球にCu、管電圧40KV、管電流250mAで実施した。カーボンブラック試料は装置付属の試料板に充填し、測定角度(2θ)10〜60°、測定速度0.5°/分で測定し、ピーク位置と半価幅は装置のシフトにより算出した。測定角度の校正は、X線標準用シリコンを用いた。
窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217に準拠して定義される(単位はm2/g)。
ストークスモード径(Dmod)およびストークスモード半値幅(D1/2)は、以下の測定法で求められる。
(測定法)
界面活性剤(SIGMA CHEMICAL社製「NONDET P−40」)を3滴加えた20容量%エタノール水溶液に、精秤したカーボンブラックを加えて、カーボンブラック濃度が0.01重量%の試料液を調製した。この試料液を超音波洗浄機(LAKOMANUFACTURNG CO.製「ULTRASONIC STIRRING BATH」)を用いて、20分間分散処理することにより、カーボンブラックスラリーとした。一方、遠心沈降式の粒度分布測定装置(BROOK HAVEN INSTRUMENTS社製「BI−DCP PARTICLSIZER」)にスピン液(純水)10ミリリットルを注入し、更にバッファー液(20容量%エタノール水溶液)1ミリリットルを注入した後、前記調製したカーボンブラックスラリー各1ミリリットルを注入し、回転数10000rpmで遠心沈降させ真比重1.78g/cm3でストークス相当径を計算し、図1に示すように、ストークス相当径に対して相対的な発生頻度のヒストグラムを作る。ヒストグラムのピークAから直線BをY軸に平行に引き、ヒストグラムのX軸との交点をCとする。このときのCでのストークス直径が、ストークスモード径(Dmod)となる。また、直線Bの中点をFとして、Fを通りX軸に平行に直線Gを引く。直線Gは、ヒストグラムの分布曲線と2点DおよびEで交わる。このとき、DおよびEでの各ストークス直径の差の絶対値が、ストークスモード半値幅(D1/2)である。
平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用い、具体的には次のようにして求めた。
1.カーボンブラック試料を150kHz、0.4kWの超音波分散機により、10分間
クロロホルムに分散させて分散試料を作成した。
2.次に、上記試料をカーボン補強した支持膜に振り掛けて固定する。これを透過型電子
顕微鏡で撮影し、50000〜200000倍に拡大した画像をEndterの装置
を用いてランダムに1000個以上のカーボンブラックの粒子径を測定し、その平均
値を平均粒子径とした。
CTAB吸着比表面積は、JIS K6217に準拠して定義される(単位はm2/g)。
(1500℃×30分)CO発生量(以下、単に「CO発生量」と言う)および(1500℃×30分)CO2発生量(以下、単に「CO2発生量」と言う)は、各々カーボンブラックを真空中で1500℃で30分間加熱し、この間に発生したガス中のCOおよびCO2量であり、具体的には次のようにして測定される。
(測定法)
カーボンブラックを約0.5g精秤し、アルミナ管に入れ、0.01Toor(1.3Pa)まで減圧した後、減圧系を閉じ、1500℃の電気炉内に30分間保持してカーボンブラック中に存在する酸素化合物や水素化合物を分解・揮発させる。揮発成分は定量吸引ポンプを通じて、一定容積のガス捕集管に採取する。圧力と温度からガス量を求めるとともに、ガスクロマトグラフにて組成分析する。これから一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)の発生量(mg)を求め、カーボンブラック1g当たりからのCOおよびCO2に換算した値を計算する(単位はmg/g)。
更に、得られた各ガスの発生量をμmol/gに換算し、次の式により含酸素官能基密集度を求める。
一般にカーボンブラックは一次粒子が葡萄房状に連なった独特のストラクチャーと称される連鎖体よりなる二次粒子を形成している。この葡萄房状連鎖体の空隙部分等にDBP(ジブチルフタレート)が吸収されるので、24M4DBP吸収量や後述のDBP吸収量はカーボンブラックが有する重要な指標値である。
本発明に係る導電性カーボンブラックは、樹脂組成物の導電性および流動性を向上させるために、24M4DBP吸収量が130cm3/100g以上、好ましくは140cm3/100g以上、より好ましくは145cm3/100g以上である。24M4DBP吸収量が130cm3/100g未満では、導電性ネットワークを形成しにくくなり樹脂組成物とした際に十分な導電性が得られない。ただし、24M4DBP吸収量が高すぎても、樹脂中での分散性が低下する場合があり、また生産時の炉の負荷が大きく、経済的でないので、260cm3/100g以下が好ましく、より好ましくは200cm3/100g以下、更に好ましくは160cm3/100g以下である。
本発明では、導電性カーボンブラックの1500℃で30分間加熱により発生した水素量(以下、「脱水素量」と略す場合がある。)を1.2mg/g以下、好ましくは1.0mg/g以下、より好ましくは0.8mg/g以下にすることにより、樹脂組成物の導電性を高めることができる。脱水素量が1.2mg/gよりも多いと、カーボンブラック表面近傍の結晶発達が不十分で、カーボンブラック造粒、乾燥工程等で酸性官能基が表面に付加しやすくなり、樹脂組成物の導電性が悪くなる。更に、脱水素量が1.2mg/gよりも多いと、樹脂組成物の滞留熱安定性が十分でない場合がある。この滞留熱安定性の低下は、カーボンブラック表面近傍に付加した酸性官能基が樹脂を熱分解するためと推定される。脱水素量は、1.2mg/g以下であれば低い程好ましいが、一般的には工業的な経済性などの理由により、0.1mg/g以上とするのが好ましい。
本発明では、導電性カーボンブラックの結晶子サイズLcを10〜17Åの範囲、好ましくは11〜16Åの範囲とすることで、樹脂組成物の導電性および流動性の双方を高めることができる。結晶子サイズが17Åを超えると、樹脂との混練時に結晶化したグラファイト層でカーボンブラックの切断が起こりやすくなり、ストラクチャーが短くなり、導電性が低下する。また、結晶子サイズが10Åより小さいと十分な導電性が得られない。
本発明では、24M4DBP吸収量が130cm3/100g以上、脱水素量が1.2mg/g以下、結晶子サイズLcが10〜17Åの範囲の導電性カーボンブラックを芳香族ポリカーボネート樹脂に配合することで、導電性と流動性のバランスに優れ、更に滞留熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる。上記規定範囲外の導電性カーボンブラックでは、所望の導電性を得るためにはカーボンブラックの配合量が増え、それに伴い流動性が低下し、更に滞留熱安定性も悪化する。また、ケッチェンブラックに代表される24M4DBP吸収量の大きなカーボンブラックでは、所望の導電性を得るためのカーボンブラック配合量は少なくて済むが、脱水素量が大きいためか樹脂組成物の滞留熱安定性は良くなく、更に比表面積を大きくするための賦活化により細孔ができ、リン化合物や酸化防止剤などの各種熱安定剤がカーボンブラックに吸着し易くすくなるために滞留熱安定性が悪化する場合もある。
本発明に係る導電性カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、大きいほど樹脂組成物の導電性を向上させるが、300m2/gを超えると樹脂中への分散性や流動性が低下する場合がある。導電性カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、150〜300m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは200〜290m2/gの範囲とすることで、樹脂組成物の導電性と流動性のバランスが優れたものとなる。
本発明に係る導電性カーボンブラックは、ストークスモード径(Dmod)と24M4DBP吸収量との比(Dmod/24M4DBP)が0.6〜0.9の範囲にあることが樹脂組成物とした際に導電性と流動性のバランスが優れることから好ましい。Dmod/24M4DBPが0.6より小さいと、樹脂組成物中での分散性低下や流動性低下が起こる場合があり、分散性が悪すぎると導電性が低下する場合もある。また、逆に0.9より大きいと、導電性と流動性、機械的強度のバランスが悪化する場合がある。
樹脂組成物の導電性を更に向上させるために、透過型電子顕微鏡によるカーボンブラックの平均粒子径は14〜24nmが好ましく、より好ましくは15〜18nmである。平均粒子径が14nm未満では、カーボンブラックの分散性が低下し、24nmを超えても導電性が低下する。
本発明では、導電性カーボンブラックのCTAB吸着比表面積を好ましくは120〜220m2/gの範囲、より好ましくは150〜200m2/gの範囲にすることにより、樹脂組成物の導電性および流動性を高めることができる。CTAB吸着比表面積が120m2/gより小さいと導電性が低下する場合があり、220m2/gより大き過ぎると樹脂組成物中での分散性や流動性が低下する場合があるのでいずれも好ましくない。
本発明では、DBP吸収量が150〜400cm3/100gの範囲である導電性カーボンブラックが好ましく、より好ましくは150〜230cm3/100gの範囲であり、更に好ましくは155〜210cm3/100gの範囲である。DBP吸収量が150cm3/100gよりも小さいと、樹脂組成物の導電性と流動性のバランスが悪く、逆にDBP吸収量が400cm3/100gよりも大きいと流動性や樹脂組成物中での分散性が低下するのでいずれも好ましくない。
本発明に係る導電性カーボンブラックは、含酸素官能基密集度が3μmol/m2以下であることが好ましい。含酸素官能基密集度とは、カーボンブラック単位表面積当たりの官能基の数を示すものであるため、この数値は低いのが好ましい。この数値が高い場合には、カーボンブラックを含む樹脂組成物の導電性が低下する。なお、この数値は低いほど導電性の観点では好ましいが、あまりに低すぎると分散性が低下して導電性や流動性が却って悪化する恐れがあり、また脱水素量の場合と同様、工業的な経済性などの理由により不利である。従って、含酸素官能基密集度は0.1μmol/m2以上とするのが好ましい。
本発明に係る導電性カーボンブラックは、上記特性条件を満足するなら、その製造方法は任意であり、例えばオイルファーネス法やアセチレン法、賦活法などが挙げられるが、中でもオイルファーネス法は、安価に、且つ歩留まり良く製造できるので好ましい。
図2は本発明に係る導電性カーボンブラックの製造装置の一例を示す概略構成図である。この装置は、オイルファーネス法によるカーボンブラック製造装置であって、燃料を燃焼して高温燃焼ガス流を発生させる第1反応帯域Aと、その下流に接続し、カーボンブラック原料を導入する導入ノズルを備えた第2反応帯域Bと、更にその下流に接続しカーボンブラック生成反応を停止させる為に炉内に冷却水等を供給するノズルを備えた第3反応帯域Cとを含む。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物において、前記A成分とB成分の配合比率は、A成分(芳香族ポリカーボネート)100重量部に対してB成分(導電性カーボンブラック)が0.1〜100重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜25重量部の範囲である。B成分の配合量が0.5重量部未満であると導電性が十分ではなく、100重量部を超えると流動性、成形品の外観、機械的強度が悪化するので好ましくない。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、工業的観点からは、溶融混練法が好ましい。溶融混練の代表的な方法として、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練機の使用が挙げられる。例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等を用いる方法が挙げられ、溶融混練機で溶融混練した後、粒状化することにより本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
本発明の導電性ポリカーボネート樹脂組成物から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち射出成形法、射出圧縮成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。
PC:ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンS−3000FN」,粘度平均分子量22,500)
実施例用導電性カーボンブラック:
図2に示すカーボンブラック製造装置を用い、表1に示す製造条件、および原料油導入位置距離Dや反応停止位置距離E等の炉内装置条件下、カーボンブラック原料油としてクレオソート油、高温燃焼ガス流の燃料として重油を用い、表1に示す導電性カーボンブラックCB1〜CB3を製造した。なお、図2中の炉内寸法D1〜D3、L1、D2’は以下の通りとし、第2反応帯域Bでの炉内温度は1750℃とした。
D1=1100mmφ
D2=175mmφ
D3=400mmφ
L1=3300mm
D2’=190mmφ
得られた導電性カーボンブラックの物性を表1に示す。
PC/CB3:
二軸押出機(日本製鋼所製「TEX44」L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数300rpmの条件にて、バレル1より上記PCの78重量部を押出機にフィードして溶融混練し、更にバレル7より上記CB3の22重量部を押出機にフィードして溶融混練させてマスターバッチ(以下、「PC/CB3」と略す。)を作成した。
比較例用導電性カーボンブラック:
比較として、表2に示す市販されている導電性カーボンブラックCB4〜CB9を用いた。
熱安定剤:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製「アデカスタブ2112」)
(1)実施例1〜5および比較例1〜6(途中F:途中フィード法)
A成分、および熱安定剤を表3に示す割合にてタンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30XCT」L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数300rpmにてバレル1より押出機にフィードして溶融混練し、更にバレル7よりB成分(CB1〜CB3)或いはB成分以外(CB4〜CB9)を表3に示す割合にて押出機に途中フィードして溶融混練することにより樹脂組成物のペレットを作製した。
A成分、Y成分(PC/CB3:マスターバッチ)および熱安定剤を表3に示す割合にてタンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30XCT」L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数300rpmにてバレル1より押出機にフィードして溶融混練することにより樹脂組成物のペレットを作製した。
上記の方法で得られたペレットを、120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(東芝IS150)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形して、100mmφ円盤状成形品(厚さ3mm)を作製した。通常成形は1サイクル1分で成形を行い、滞留成形は1サイクル5分で成形を行い、それぞれ5ショット目以降の成形品について評価を行った。
(1)流動性(Q値)
高荷式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgf/cm2の条件下で組成物の単位時間当たりの流出量Q値(単位:cc/s)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
(2)導電性(表面抵抗値)
上記円盤状成形品(通常成形品)について、三菱化学(株)製のハイレスタを用い、表面抵抗値の測定を行った。
(3)成形品外観
上記円盤状成形品(通常成形品)の表面外観を目視にて観察し、凝集物のないものを○、若干凝集物があるものを△、凝集物が激しいものを×、として評価した。
(4)滞留熱安定性
上記円盤状成形品(滞留成形品)の表面外観を目視にて観察し、シルバーストリークによる肌荒れのないものを○、シルバーストリークによる肌荒れのあるものを×、として評価した。
これらの評価結果を表3に示す。
実施例、比較例ともに導電性が同等になるような添加量で各カーボンブラックを配合して比較した結果、以下のことがいえる。
(1) 実施例1〜6の組成物は、B成分が本発明の規定の範囲内であり、流動性、導電性、成形品の外観に優れ、且つ滞留熱安定性にも優れている。
(2) 比較例1〜6の組成物は、B成分が本発明の規定範囲からはずれるため、実施例1〜6の組成物と比較して流動性に劣る、つまり流動性と導電性のバランスに劣る。
(3) 比較例1〜6は、B成分が本発明の規定範囲からはずれるため、実施例1〜6の組成物と比較して成形品の外観、滞留熱安定性にも劣る。
B 第2反応帯域
C 第3反応帯域
D カーボンブラック原料導入位置距離
D’ カーボンブラック原料導入ノズル
E 反応停止位置距離
E’ 冷却水供給ノズル
F 燃料導入ノズル
G 燃料用空気導入ノズル
Claims (11)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、導電性カーボンブラック(B成分)を0.1〜100重量部含有してなる樹脂組成物であって、前記導電性カーボンブラック(B成分)が次の(1)〜(3)の特性を全て満足することを特徴とする導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
(1) 24M4DBP吸収量が130cm3/100g以上
(2) 1500℃、30分間加熱により発生した水素量(脱水素量)が1.2mg/g以下
(3) 結晶子サイズLcが10〜17Åの範囲 - 導電性カーボンブラック(B成分)の窒素吸着比表面積が、150〜300m2/gの範囲であることを特徴とする請求項1記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 導電性カーボンブラック(B成分)のストークスモード径(Dmod)と24M4DBP吸収量との比(Dmod/24M4DBP)が、0.6〜0.9の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 導電性カーボンブラック(B成分)の透過型電子顕微鏡による平均粒子径が、14〜24nmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 導電性カーボンブラック(B成分)のCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積が、120〜220m2/gの範囲であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 導電性カーボンブラック(B成分)のDBP吸収量が、150〜400cm3/100gの範囲であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 導電性カーボンブラック(B成分)が、オイルファーネスカーボンブラックであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、導電性カーボンブラック(B成分)を0.5〜25重量部含有してなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 組成物が、予めA成分を溶融し、その溶融物にB成分を配合し溶融混練して得られたものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 組成物が、A成分の一部とB成分とを予め溶融混練して中間組成物Yを製造し、A成分の残部とともに中間組成物Yを溶融混練して得られたものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の導電性ポリカーボネート樹脂組成物。
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