JP4749582B2 - 半導体レーザ装置およびそれを用いた通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ストライプ領域の幅が広いにも拘らず、横モードが安定して、サイドローブが低い遠視野像を有する大出力の半導体レーザ装置、および、それを用いた光無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ストライプ構造の半導体レーザ装置は、光通信技術および光メモリ技術の分野に多く利用されている。この半導体レーザ装置は、発光ストライプ領域の幅を5μm以下にして、単一の横モードでレーザ発振をさせて、発光特性を安定させている。しかし、近年、大容量の音声および画像データを扱うマルチメディア機器の普及に伴って、光通信技術においてはデータの伝送速度の高速化、光メモリ技術においてはデータの読み書き速度の高速化が要求されている。その結果、光通信機器および光メモリ機器に用いられる半導体レーザ装置に対して大出力化の要求が高まっている。そこで、最近、半導体レーザ装置の発光ストライプ領域の幅を50μm以上に広げてレーザ光の幅を広げて、大出力にした半導体レーザ装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記半導体レーザ装置は、発光ストライプ領域の幅が広いので、固有横モードが複数生じる。この複数のモードが混在した状態でレーザ光が発振すると、半導体レーザ装置の発光特性が不均一になる。また、上記複数のモードの閾値利得は極めて近接しているので、この半導体レーザ装置の発振モードは容易に変化して、横モードが不安定になる。その結果、半導体レーザ装置の発光強度が不均一になって、レーザ光の幅方向の強度分布がフィラメント状に細くなるフィラメント発振を引き起こす場合がある。図13は、100μmの幅を有する発光ストライプ領域を備えた半導体レーザ装置の近視野像であり、レーザ光の幅方向における光強度分布図である。図13から分かるように、レーザ光の幅方向において局部的に光の強い領域が複数生じて、フィラメント発振が起きている。このレーザ光の遠視野像は、図14の光強度分布図に示すように、中心軸以外の方向に複数のピークを有する。
【0004】
この半導体レーザ装置は光電界の位相分布が不均一なため、遠視野像は回折限界のパターンが得られず複峰化する。よって、上記半導体レーザ装置を例えば空間光通信機器の発信機の光源に用いると、この光通信機器の受信機は、上記発信機からの複数の光強度ピークを有するレーザ光のうち最大ピークの光しか受信できないため、上記最大ピーク以外の光は全て損失となって、光通信機器の効率と通信精度が悪くなるという問題がある。また、この半導体レーザ装置を光メモリ装置に用いると、レーザ光の光強度分布が不均一で、レーザ光を単一焦点に集光できないので、データの蓄積密度が低くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、発光ストライプ領域の幅が広くて大出力であるにも拘らず、横モードが安定して、かつ、遠視野像の光強度が、主ピークのみが強くてサイドローブが極めて小さい半導体レーザ装置と、それを用いた光無線通信システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の半導体レーザ装置は、発光ストライプ領域を含む活性層およびその両側に位置する層を有する半導体レーザ装置において、上記発光ストライプ領域が生成すべき、あるいは生成した光電界の振幅および位相の分布を補正する補正領域を備え、上記補正領域は、上記発光ストライプ領域の少なくとも一方の共振器端面を形成する曲面であり、上記曲面は、発光ストライプ領域の幅方向両端部に位置する2個の凹面を有することを特徴としている。
【0007】
上記半導体レーザ装置によれば、上記補正領域が光電界の振幅および位相の分布を補正する。したがって、この半導体レーザ装置が出射するレーザ光の振幅および位相の分布は、所望の分布状態にすることができる。
また、上記半導体レーザ装置によれば、上記補正領域としての共振器端面を形成する曲面が、光電界の振幅および位相の分布を補正して所望の分布状態になる。
また、上記半導体レーザ装置によれば、上記曲面は上記発光ストライプ領域の幅方向両端部に位置する2個の凹面、すなわち、共振器内部に向う凸面であるので、光電界の振幅および位相の分布が効果的に補正されて、所望の分布状態になる。
【0008】
1実施形態の半導体レーザ装置では、上記補正領域によって補正された上記光電界の振幅および位相の分布は、予め定めた遠視野像を逆フーリエ変換して求めた振幅および位相の分布に、略一致している。
【0009】
上記半導体レーザ装置によれば、上記補正領域によって補正された上記光電界の振幅および位相の分布が、予め定めた遠視野像を逆フーリエ変換して求めた振幅および位相の分布に略一致しているので、このレーザ光の遠視野像が、上記予め定めた遠視野像と略同じになる。
【0010】
1実施形態の半導体レーザ装置では、上記予め定めた遠視野像は、単峰、もしくはサイドローブが実質的に無い遠視野像である。
【0011】
上記半導体レーザ装置によれば、単峰、もしくはサイドローブが実質的に無い遠視野像を逆フーリエ変換して求めた振幅および位相の分布をなすように、上記補正領域が光電界の振幅および位相の分布を補正する。したがって、この半導体レーザ装置が出射するレーザ光の遠視野像は、単峰、もしくはサイドローブが実質的に無い遠視野像になる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
1実施形態の半導体レーザ装置では、上記補正領域は、発光ストライプ領域の幅方向両端部の光の位相を、発光ストライプ領域の幅方向中央部の光の位相よりも進ませる。
【0031】
上記半導体レーザ装置によれば、上記補正領域が、発光ストライプ領域の幅方向両端部の光の位相を、発光ストライプ領域の幅方向中央部の光の位相よりも進ませて、光電界の振幅および位相の分布を補正する。したがって、上記光電界を所望の分布状態にできる。
【0032】
1実施形態の半導体レーザ装置では、上記補正領域は、上記発光ストライプ領域の少なくとも片側の層に形成されて、光を吸収する材料からなる。
【0033】
上記半導体レーザ装置によれば、上記発光ストライプ領域の少なくとも片側の層に形成された補正領域が、発光ストライプ領域内を共振する光を吸収する。したがって、光電界の振幅および位相の分布が効果的に補正されて、所望の分布状態になる。
【0034】
【0035】
【0036】
1実施形態の半導体レーザ装置では、上記発光ストライプ領域の幅が7μm以上である。
【0037】
上記半導体レーザ装置によれば、7μm以上の幅の発光ストライプ領域を有する場合に、光電界の振幅および位相の分布が特に効果的に補正されて、所望の分布状態になる。すなわち、上記レーザ光の遠視野像が単峰、もしくはサイドローブが実質的に無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光になる。
【0038】
本発明の光無線通信システムは、上記半導体レーザ装置を用いた送信装置を備える。
【0039】
上記構成によれば、高出力かつ単峰の放射パターンのレーザ光が得られる半導体レーザ装置を用いた送信装置を備えるので、通信効率と通信精度が良好な光無線通信システムが得られる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の平面図である。この半導体レーザ装置1は、発光ストライプ領域2を有し、この発光ストライプ領域2の幅bは略100μmである。上記半導体レーザ装置1は、光出射端面3に、上記発光ストライプ領域2の幅方向の略両端に位置する2個の凹面4,4を備える。この凹面4,4は、上記端面3の両端部および中央部に対して、8.2nmの深さLrを有する。この凹面4,4の深さLrおよび位置は、半導体レーザ装置1の光出射端面3から出射された光の光電界が、光の幅方向に図2(a)の強度分布および図2(b)の位相分布を有する近視野像をなすように決められている。ここで、図2(a)は、光の幅方向位置における振幅を示し、図2(b)は、光の幅方向位置における位相を示す。この図2(a)の強度分布および図2(b)の位相分布は、図3に示す予め定めた遠視野像としての光強度分布を、逆フーリエ変換して求めている。ここで、図3は、レーザ光の中央を中心とした放射角における角度方向の振幅を示している。図3の光強度分布は、光の角度方向において強い主ピーク10を1個だけ有し、この主ピーク10の両側のサイドローブ11,11は非常に小さい。
【0042】
この半導体レーザ装置1は、以下のようにして製造する。まず、図示しないn型半導体基板上に、n型クラッド層と、活性層と、p型クラッド層と、p型コンタクト層とを順次結晶成長して積層体を得る。次に、この積層体を劈開して、反射鏡面を有する端面5を形成する。さらに、この端面5に対向する面に、CAIBE(化学的補助イオンビームエッチング)法によるドライエッチングを行って、凹面4,4を有する端面3を形成する。最後に、上記積層体の下面に図示しないn側電極を形成する一方、積層体の上面に図示しないp側電極を形成して半導体レーザ装置1が完成する。
【0043】
上記構成の半導体レーザ装置1に、閾値以上の電流を流すと、発光ストライプ領域2においてレーザ発振が起こって、光出射端面3からレーザ光が出射される。このレーザ光は、上記端面3の発光ストライプ領域2の両端周辺部に設けた2個の凹面4,4によって振幅と位相が変化して、上記端面3から出射した直後の光電界、すなわち近視野像が、光の幅方向において図2(a)の強度分布と図2(b)の位相分布を有する。この近視野像を有するレーザ光は、遠視野像が、図3に示す強度分布と略同じになる。すなわち、この半導体レーザ装置1によれば、光の幅方向においてピークが単一でサイドローブが殆ど無い遠視野像が得られ、したがって、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光を得ることができる。
【0044】
上記実施形態は、光出射端面3に凹面4,4を設けたのみであったが、この端面3に、例えばAl2O3(アルミナ)膜等の反射率を低下させる誘電体膜を、レーザ光の4分の1波長の厚さにして配置すると、半導体レーザ装置がさらに大出力になる。
【0045】
また、上記実施形態は、凹面4,4を有する光出射側端面3を、CAIBE法によって形成したが、例えばRIBE(反応性イオンビームエッチング)法、RIE(反応性イオンエッチング)法等他の方法によって形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態は、光出射端面3のみに凹面4,4を設けたが、光出射端面3に対向する端面5にも凹面を設けて、両方の端面3,5によって発光ストライプ領域2で共振する光の位相と振幅を変化させて、レーザ光の近視野像に所望の強度分布と位相分布をなすようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態は、凹面4,4の深さLrおよび位置は、上記レーザ光の端面3における近視野像が、幅方向に図2(a)の強度分布および図2(b)の位相分布をなすように定めたが、この近視野像は図2(a),(b)のみに限られず、図4(a),(b)に示す形状と略同じであればよい。ここで、図4(a)は、光の幅方向位置における光強度の分布形状を示し、図4(b)は、光の幅方向位置における位相の分布形状を示す。すなわち、図4(a),(b)に示すように、レーザ光の幅方向の光強度分布15が、幅方向位置の‐wからwまでの発光領域において略一定で、かつ、レーザ光の幅方向の位相分布16が、発光領域の中央部で略一定であると共に、発光領域の両端部付近で発光領域の中央部よりも位相が進むように、端面に備える凹面の深さおよび位置を決めればよい。さらに、位相が進むピークの箇所は、上記発光ストライプ領域2の両端よりも若干内側であるのが好ましい。レーザ光の近視野像が、図4(a),(b)に示す光強度分布形状と位相分布形状を有していれば、このレーザ光の遠視野像は、略図3に示す光強度分布になる。
【0048】
なお、図4(a)の光強度分布15において、発光領域における値は直線をなす必要はなく、多少変動する曲線でもよい。また、図4(b)の位相分布16において、発光領域の中央周辺部における値は直線をなす必要はなく、多少変動する曲線でもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、予め定めた遠視野像は、図3に示すようなピークが単一でサイドローブが殆ど無い単一ローブの遠視野像を用いたが、半導体レーザ装置に要求される性能に応じて、サイドローブが多少含まれる遠視野像を用いてもよい。
【0050】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態の半導体レーザ装置を示す平面図である。この半導体レーザ装置21は、発光ストライプ領域22を有し、レーザ光の出射端面23の外側面に、Al2O3膜からなる第1誘電体24を備え、この第1誘電体24の外側面に、上記発光ストライプ領域22の幅よりも狭い幅を有するSiNx(窒化シリコン)膜からなる第2誘電体25を備える。
【0051】
この半導体レーザ装置21は、以下のように製造する。第1実施形態と同じ積層体を結晶成長によって形成した後、この積層体を劈開して反射鏡面としての端面23,27を形成する。次に、レーザ光の出射側の端面23に、Al2O3膜からなる第1誘電体24を形成して、さらに、この第1誘電体24の外側面に、SiNx膜を形成する。その後、このSiNx膜の幅方向の中央に、発光ストライプ領域22よりも狭い幅を有する図示しない帯状のレジストパターンを形成する。そして、フッ酸溶液によって、レジストパターンを施していない位置のSiNx膜をエッチング除去して、第2誘電体25を形成する。その後、上記レジストパターンを除去する。最後に、積層体の上面と下面とに図示しない電極を設置して、半導体レーザ装置21が完成する。
【0052】
この半導体レーザ装置21に閾値以上の電流を流すと、発光ストライプ領域22においてレーザ発振が起こって、光出射端面23からレーザ光が出射される。この端面23から出射されたレーザ光は、第1誘電体24を通過した後、レーザ光の幅方向において中央部周辺の光は、さらに第2誘電体25を通る一方、レーザ光の幅方向において両端部周辺の光は、空気中に放出される。すなわち、レーザ光の中央部周辺の光と両端部周辺の光との間で、光の経路の屈折率と経路長との積からなる光学的長さが異なる。この光学的長さの違いによって、レーザ光の光強度分布と位相分布が変わる。ここにおいて、上記第1誘電体24と第2誘電体25の寸法と屈折率は、レーザ光の近視野像が図4(a)の光強度分布形状と図4(b)の位相分布形状をなすように決められている。そのため、この半導体レーザ装置21のレーザ光の遠視野像は、図3に示す遠視野像と略同じになる。したがって、この半導体レーザ装置21によれば、遠視野像の光強度分布が、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光を得ることができる。
【0053】
上記実施形態は、第2誘電体25は幅方向に一定の厚さを有するが、例えばシャドウマスクを用いたエッチングなどによって幅方向に異なる膜厚を形成して、近視野像が所望の光強度分布と位相分布になるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態は、第1誘電体24と第2誘電体25とを用いて光学的長さを変えたが、誘電体を1個だけ用いて、その誘電体の膜厚を幅方向に変化させて光学的長さを変えてもよい。
【0055】
(第3実施形態)
図6(a)は、本発明の第3実施形態の半導体レーザ装置を示す断面図である。この半導体レーザ装置31は、AlGaAs/GaAs(アルミニウム・ガリウム・砒素/ガリウム・砒素)系の半導体レーザ装置であり、n型GaAs基板32上に、n型AlGaAsクラッド層33、アンドープAlGaAs活性層34、p型AlGaAsクラッド層36、p型GaAsコンタクト層37とを備える。さらに、上記p型GaAsコンタクト層37の表面からp型クラッド層36に達する深さを有して、上記活性層34に形成される発光ストライプ領域38の幅方向両端部の上方に、不純物の導入領域としての2個の亜鉛拡散部分39,39を備える。この亜鉛拡散部分39,39は、5×1018cm-3の亜鉛濃度を有する。この亜鉛拡散部分39,39は、上記発光ストライプ領域38の幅方向中心部周辺の屈折率を、発光ストライプ領域38の幅方向両端部の屈折率よりも大きくしている。ここにおいて、屈折率の最も低くなる箇所が、上記発光ストライプ領域38の両端よりも若干内側であるのが好ましい。図6(b)は、亜鉛拡散部分39,39によって形成された発光ストライプ領域38の屈折率分布を示す図であり、横軸の原点が発光ストライプ領域38の横方向中央で、横軸の−wからwまでの領域が発光ストライプ領域38である。図6(b)において、発光ストライプ領域38の幅方向両端部の屈折率を、幅方向中心部周辺の屈折率よりも小さくして、屈折率の差を7.5×10-4(図6(b)に示すc)にしている。この屈折率分布によって、上記発光ストライプ領域から出射されたレーザ光の近視野像が、図4(a),(b)に示す光強度分布形状と位相分布形状になる。
【0056】
この半導体レーザ装置31は、以下のようにして製造する。n型GaAs基板32上に、n型AlGaAsクラッド層33と、アンドープAlGaAs活性層34と、p型AlGaAsクラッド層36と、p型GaAsコンタクト層37とを、順次結晶成長して積層する。その後、上記p型GaAsコンタクト層37の上面から、上記活性層34の発光ストライプ領域38の両端部上方位置において、p型不純物としての亜鉛を拡散する。この亜鉛を、p型クラッド層36に達するが活性層34には届かない深さに、かつ、上記発光ストライプ領域38の両端部上方に拡散して、2個の亜鉛拡散部分39,39を形成する。最後に、n型GaAs基板32の底面と、p型GaAsコンタクト層37の上面とに図示しない電極を配置して、半導体レーザ装置31が完成する。
【0057】
上記構成の半導体レーザ装置31に閾値以上の電流を流すと、発光ストライプ領域38でレーザ発振が起こって、図示しない出射端面からレーザ光が出射される。上記発光ストライプ領域38は、亜鉛拡散部分39,39によって、図6(b)に示す屈折率分布が形成されているので、光電界が図4(a)の光強度分布形状と図4(b)の位相分布形状をなして、レーザ光の遠視野像が図3と略同じになる。したがって、この半導体レーザ装置31のレーザ光は、遠視野像の光強度分布が、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適になる。なお、この半導体レーザ装置31は、発光ストライプ領域38の幅を300μmにした場合も、安定な単一ローブの遠視野像を得ることができる。
【0058】
上記実施形態は、p型コンタクト層37の上面から亜鉛を拡散させたが、上記p型コンタクト層37の亜鉛を拡散する領域を予めエッチング除去した後、このエッチング除去部分から亜鉛を拡散してもよく、そうすると、亜鉛の拡散時間を大幅に短縮できる。
【0059】
上記実施形態は、p型コンタクト層からp型不純物としての亜鉛を拡散させたが、n型基板側から例えばシリコン等のn型不純物を拡散させても同じ効果が得られる。n型不純物を拡散させた場合、p型不純物よりも少ない濃度で、発光ストライプ領域に高い屈折率変化を与えることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、拡散によって半導体レーザ装置に亜鉛を導入したが、イオン打ち込み等他の方法で不純物を導入してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、亜鉛を5×1018cm-3の濃度で拡散したが、この濃度に限られる必要はなく、発光ストライプ領域に所望の屈折率分布が得られる濃度であればよい。
【0062】
また、上記実施形態では、発光ストライプ領域の屈折率分布における屈折率の最大値と最小値との差は7.5×10-4(図6(b)においてc)であるが、この屈折率の差は7.5×10-4に限定する必要はなく、図4(a),(b)に示す強度分布形状と位相分布形状をなす近視野像が得られる屈折率分布であれば、異なる値でもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、亜鉛拡散部分の長さは、半導体レーザ装置31の一端面から他端面までの全共振器長に亘ったが、亜鉛拡散部分の長さは全共振器長に限る必要はなく、半導体レーザ装置の一端面と他端面の間の部分であってもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、半導体レーザ装置31に導入する不純物として亜鉛を用いたが、他のものでもよい。また、半導体レーザ装置31は、AlGaAs/GaAs系半導体レーザ装置であったが、他の材料による半導体レーザ装置でもよい。例えば、活性層にInGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)を用いると、発振波長が900nm帯の半導体レーザ装置を得られる。また、InGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)系の材料を用いてもよい。
【0065】
(第4実施形態)
図7は本発明の第4実施形態の半導体レーザ装置の断面図である。この半導体レーザ装置41は、InGaAsP/GaAs(インジウム・ガリウム・砒素・リン/ガリウム・砒素)系の半導体レーザ装置であり、n型GaAs基板42上に、n型InGaPクラッド層43と、アンドープInGaAsP/InGaAsP活性層44と、p型InGaPクラッド層45と、p型GaAsコンタクト層46とを備える。ここで、上記n型InGaPクラッド層43と、p型InGaPクラッド層45は、In組成比を49%にして、GaAsと格子整合するようにしている。また、活性層44は、厚さ30nmの図示しないIn0.13Ga0.87As0.74P0.26単一量子井戸層を、図示しないIn0.37Ga0.63As0.25P0.75バリア層で挟んで形成している。この活性層44は、発光ストライプ領域48を有し、この発光ストライプ領域48の両端部の上方に、2個のp型AlGaAs屈折率制御層49,49を備える。この屈折率制御層49,49は、所定の幅を有すると共に、上記p型コンタクト層46の上面からp型クラッド層45に達する深さを有する。さらにこの屈折率制御層49,49は、Alの混晶比を0.5にして、上記p型InGaPクラッド層45よりも屈折率が小さくなるようにしている。この屈折率制御層49,49の寸法および屈折率は、上記発光ストライプ領域48に、図6(b)に示すような屈折率分布を形成するように、決められている。ここにおいて、屈折率が最も低くなる箇所は、上記発光ストライプ領域48の両端よりも若干内側であるのが好ましい。
【0066】
この半導体レーザ装置41は、以下のように製造する。まず、n型GaAs基板42上に、n型InGaPクラッド層43と、アンドープInGaAsP/InGaAsP活性層44と、p型InGaPクラッド層45と、p型GaAsコンタクト層46とをMBE(分子線エピタキシー)法によって結晶成長する。次に、上記p型コンタクト層46の表面にSiO2膜を形成してパターニングした後、発光ストライプ領域48の両端部上方に位置して共振器方向に延びる2本のストライプ状の溝をエッチングする。このエッチング溝は、所定の幅を有すると共に、上記p型クラッド層45に達して上記活性層44の上面の上方0.2μmに達する深さを有するようにする。その後、上記SiO2膜をそのまま選択成長マスクとして利用して、MOCVD(有機金属気相成長)法によって、上記エッチング溝のみにp型AlGaAsを埋め込んで、2つの屈折率制御層49,49を形成する。最後に、積層体の両端部のSiO2膜51,51を残すように屈折率制御層49,49の周辺のSiO2膜を除去した後、積層体の上面と下面とに図示しないオーム性電極を配置して、半導体レーザ装置が完成する。
【0067】
上記構成の半導体レーザ装置41に閾値以上の電流を流すと、発光ストライプ領域48でレーザ発振が起こって、図示しない出射端面からレーザ光が出射される。上記発光ストライプ領域48には、上記屈折率制御層49,49によって、図6(b)に示すような屈折率分布が形成されている。したがって、レーザ光の近視野像が図4(a)の光強度分布形状と図4(b)の位相分布形状になって、遠視野像が図3と略同じになる。したがって、この半導体レーザ装置41のレーザ光は、遠視野像の幅方向の光強度分布が、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光になる。なお、この半導体レーザ装置41の発振波長は808nmである。
【0068】
上記実施形態は、屈折率制御層49としてのp型AlGaAsは、混晶比が0.5であったが、屈折率制御層の結晶比は0.5に限らず、発光ストライプ領域48に所望の屈折率分布を形成する他の結晶比でもよい。
【0069】
上記実施形態は、屈折率制御層49の材料にp型AlGaAsを用いたが、発光ストライプ領域48に所望の屈折率分布を形成する他の材料でもよい。
【0070】
上記実施形態の半導体レーザ装置41は、発振波長が808nmであるが、活性層44の材料や、屈折率制御層49の材料や寸法を変更して所定の波長を得るようにしてもよい。
【0071】
上記実施形態の半導体レーザ装置41は、エッチング溝に屈折率制御層49を形成したが、上記エッチング溝の深さを浅くして、この溝に半導体を埋め込まずに溝の表面にSiO2等の誘電体膜を設けて、電流狭窄によって発光ストライプ領域48に屈折率分布を形成しても同様の効果が得られる。さらに、上記エッチング溝を、活性層を通過してn型クラッド層43に達する深さまでエッチングして、このエッチング溝に発光領域よりも低い屈折率を有する半導体を成長して、埋込み型半導体レーザにしてもよい。この場合、発光領域と埋込み層との屈折率の変化が大きくなるので、近視野像が図4(a),(b)の光強度分布形状と位相分布形状をなすように、埋込み層の混晶比を適当に制御する必要がある。
【0072】
(第5実施形態)
図8は、本発明の第5実施形態の半導体レーザ装置を示す断面図である。
【0073】
この半導体レーザ装置55は、AlGaAs/GaAs系の半導体レーザ装置であり、n型GaAs基板56上に、n型AlGaAsクラッド層57と、アンドープGaAs活性層58と、p型AlGaAsクラッド層59と、p型GaAsコンタクト層61とを積層してなる積層体を有する。さらに、この積層体の上方両端の角部に、活性層58の上面から0.2μm上方に達する深さを有するn型GaAs光吸収層62,62を備える。この光吸収層62,62は、活性層58で発振するレーザ光の一部を吸収することによって、半導体レーザ装置55に等価屈折率分布を形成する。上記光吸収層62,62の材料および寸法は、上記等価屈折率分布が図6(b)に示す屈折率分布と略一致するように決められている。
【0074】
この半導体レーザ装置55は、以下のように製造する。n型GaAs基板56上にn型AlGaAsクラッド層57と、アンドープGaAs活性層58と、p型AlGaAsクラッド層59と、p型GaAsコンタクト層61とを順次結晶成長して積層体を形成する。その後、上記p型コンタクト層61の上面に、10μmの幅を有するストライプ状のSiO2マスクを形成して、このマスクを配置していない領域のp型コンタクト層61とp型クラッド層59とをエッチング除去する。このときのエッチング深さは、アンドープGaAs活性層58の上面から上方に0.2μmの厚さでp型クラッド層59が残る深さにしている。引き続き、上記SiO2マスクを選択成長マスクとして利用して、上記エッチング除去部分にn型GaAsを成長して光吸収層62,62を形成する。最後に、この積層体の上面と下面とに図示しない電極を配置して、半導体レーザ装置55が完成する。
【0075】
この半導体レーザ装置55に閾値以上の電流を流すと、活性層58の発光ストライプ領域64において、レーザ光が発振して、図示しない出射端面からレーザ光が出射される。このとき、上記発光ストライプ領域64において発振する光の1部が上記光吸収層62によって光吸収されて光の位相の遅れが生じて、発光ストライプ領域64に等価屈折率分布が形成される。この等価屈折率分布は、図6(b)に示す屈折率分布と略一致するように形成されているので、この発光ストライプ領域64で発振したレーザ光は図4(a),(b)に示す光強度分布形状と位相分布形状とを有する近視野像になる。したがって、このレーザ光の遠視野像は、図3に示す光強度分布と略同じになる。すなわち、この半導体レーザ装置55のレーザ光は、遠視野像が、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適になる。
【0076】
上記実施形態は、光吸収層としてn型GaAsを用いたが、光吸収層の材料はレーザ光を吸収する材料であれば他の半導体でもよく、また、例えば金などの金属でもよい。
【0077】
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態の半導体レーザ装置を示す断面図である。この半導体レーザ装置66は、InGaAsP/InP(インジウム・ガリウム・砒素・リン/インジウム・リン)系の半導体レーザ装置であり、n型InP基板67上に、n型InPクラッド層68、アンドープInGaAsP/InGaAsP活性層69、p型InPクラッド層71、p型InPコンタクト層72を備える。上記p型コンタクト層72の上面には、上記活性層69の発光ストライプ領域73の両端部上方に位置してInAsPからなる2個の応力印加部74,74を備える。この応力印加部74,74は、p型コンタクト層72のInPよりも格子定数が大きいInAsPからなるので、このp型コンタクト層72に応力を印加する。この応力は、上記p型コンタクト層72のみならず、p型クラッド層71にも伝わって、発光ストライプ領域73周辺部分の屈折率を低下させる。この屈折率の低下によって、図6(b)に示す屈折率分布をなすようにしている。
【0078】
この半導体レーザ装置66は、以下のようにして製造する。まず、減圧MOCVD法によって、n型InP基板67上に、n型InPクラッド層68と、アンドープInGaAsP/InGaAsP活性層69と、p型InPクラッド層71と、p型InPコンタクト層72とを順次結晶成長して積層体を形成する。次に、上記p型コンタクト層72の上面に図示しないInAsP膜を形成した後、このInAsP膜をエッチングして、発光ストライプ領域73の両端部上方に位置するストライプ状の応力印加部74,74を形成する。この応力印加部74,74は所定の幅を有すると共に、半導体レーザ装置66の一端面から他端面までの共振器長に亘る長さを有して形成される。この応力印加部74,74は、積層体の表面のみをエッチングして形成できるので、半導体レーザ装置の製造プロセスが簡単である。最後に、上記p型コンタクト層72の上面と、上記n型基板67の下面とに、図示しない電極を配置して半導体レーザ装置66が完成する。
【0079】
この半導体レーザ装置66に閾値以上の電流を流すと、上記活性層69の発光ストライプ領域73でレーザ発振が生じて、レーザ光が出射される。このとき、上記発光ストライプ領域73には、応力印加部74,74によって図6(b)に示す屈折率分布が形成されているので、この半導体レーザ装置66から出射されるレーザ光の近視野像は、図4(a),(b)に示す光強度分布形状と位相分布形状をなす。したがって、このレーザ光は、遠視野像が略図3に示すような光強度分布になって、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光になる。
【0080】
上記実施形態において、応力印加部74,74はInAsPによる半導体材料を用いたが、応力印加部は、半導体に限らず応力を印加できれば金属等の他の材料でもよい。
【0081】
また、上記実施形態において、応力印加部74,74はp型コンタクト層72の上面に配置したが、例えばp側電極等の、半導体からなる積層体以外の部分に配置してもよく、要は発光ストライプ領域73に図6(b)に示すような屈折率分布を形成するように応力を印加できれば、応力印加部はどこに配置してもよい。また、応力印加部の個数は1個でも2個以上の複数でもよい。
【0082】
(第7実施形態)
図10は、本発明の第7実施形態の半導体レーザ装置の平面図である。この半導体レーザ装置77は、図示しないn型クラッド層とp型クラッド層との間にAlGaAs/GaAs活性層を配置したダブルへテロ構造の半導体の積層体を備える。上記p型クラッド層の上にp型コンタクト層78を配置して、このp型コンタクト層78の上面にはp側電極80,81,81,82,82を配置している。このp側電極80,81,81,82,82は、図示しない活性層において300μmの幅を有する発光ストライプ領域の上方に、共振器方向に平行に配置している。このp側電極80,81,81,82,82は、半導体レーザ装置77の幅方向の中央に位置する中央電極80と、この中央電極80の両側に配置された2個の内側電極81,81と、さらにこの内側電極81,81の両外側に配置された2個の外側電極82,82とからなる。一方、図示しないn側電極は、この半導体レーザ装置77の下面に設けている。上記中央電極80と、内側電極81,81と、外側電極82,82は、夫々互いに異なる大きさの電流を流して、上記図示しない発光ストライプ領域に注入するキャリアの量を幅方向において変えるようにしている。そうすることによって、発光ストライプ領域におけるプラズマ効果の量を幅方向に変えて、図6(b)に示す屈折率分布を形成するようにしている。ここにおいて、屈折率が最も低くなる箇所は、発光ストライプ領域の両端よりも若干内側であるのが好ましい。なお、上記p型コンタクト層78は、発光ストライプ領域に注入するキャリアが幅方向に拡散しないように、薄く形成している。
【0083】
上記構成の半導体レーザ装置77の上記p側電極80,81,81,82,82に、内側電極81,81が、上記中央電極80と外側電極82,82よりも小さい所定の電流を流して、レーザ光を生成する。このとき、発光ストライプ領域に注入されるキャリアの量は、発光ストライプ領域の屈折率に反比例するので、発光ストライプ領域の内側電極81,81の下方周辺部が、中央電極80と外側電極82,82の下方周辺部よりも屈折率が大きくなる。そうすると、発光ストライプ領域の幅方向に図6(b)に示すような屈折率分布が形成されて、レーザ光の近視野像が図4(a),(b)に示す光強度分布形状と位相分布形状をなす。その結果、この半導体レーザ装置77は、遠視野像が図3と略同じになって、ピークが単一でサイドローブが殆ど無くて、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光を得ることができる。
【0084】
上記実施形態は、p側電極から共振器の幅方向に異なる量のキャリアを注入して、上記発光ストライプ領域に所望の屈折率分布を形成したが、陽子線または中性子線を半導体レーザ装置の内部に出射する出射部を設け、この出射部から陽子線または中性子線を注入して、ストライプ領域で共振する光を吸収しても、同様の効果が得られる。
【0085】
上記実施形態において、発光ストライプ領域の幅は300μmであったが、固有横モードが複数存在する半導体レーザであれば、ストライプ幅の大きさに拘らず本発明を適用できる。特に、ストライプ幅が7μm以上の半導体レーザ装置に本発明を適用すると、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
また、上記実施形態は、AlGaAs/GaAs系の半導体レーザ装置を用いたが、例えばInGaAlAs/InP(インジウム・ガリウム・アルミニウム・砒素/インジウム・リン)系、InGaN/GaN(インジウム・ガリウム・窒素/ガリウム・窒素)系、ZnCdSSe/GaAs(亜鉛・カドミウム・硫黄・セレン/ガリウム・砒素)系、InGaAlP/GaAs(インジウム・ガリウム・アルミニウム・リン/ガリウム・砒素)系、GaInNAs/GaAs(ガリウム・インジウム・窒素・砒素/ガリウム・砒素)系等他の半導体レーザにおいても同様の効果が得られる。
【0087】
(第8実施形態)
図11は、本発明の半導体レーザ装置83によって出射した光から、複数のレンズ84,84・・・からなるレンズ系を用いて、コリメート光85を得る様子を示した図である。上記半導体レーザ装置83からの出射光は、幅方向の位相分布が略均一であるので、略方向の位相分布が不均一な横多モードの幅広半導体レーザでは得ることが困難な、大出力かつ回折限界角を有する遠視野像のコリメート光85が得られる。
【0088】
図12は、本発明の光無線通信システムを衛星間通信に適用した様子を示す図である。地球86を周回する低軌道衛星87,87と、静止軌道衛星88,89とが、送信装置と受信装置を各々備える。上記送信装置は、図11に示すコリメート光85を出射する半導体レーザ装置83およびレンズ系を備え、この半導体レーザ装置83は、数百mWから数W程度の高出力で単峰の放射パターンのレーザ光が出射できる。また、上記半導体レーザ装置83によるコリメート光85は、長距離に亘って拡散や回折が殆ど無いコリメート光である。したがって、上記送信装置は、上記低軌道衛星87,87間や、上記静止軌道衛星88,89間、および低軌道衛星87と静止軌道衛星88との間に形成する無線通信回線90,91,92において、数Gbps程度の通信速度を実現できる。
【0089】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の半導体レーザ装置は、発光ストライプ領域が生成すべき、あるいは生成した光電界の振幅および位相の分布を補正する補正領域を有するので、レーザ光の近視野像における振幅および位相の分布を所望の分布状態に制御できる。
また、上記半導体レーザ装置は、補正領域として共振器端面を形成する曲面を有し、好ましくは、上記曲面は上記発光ストライプ領域の幅方向両端部に位置する2個の凹面であるので、レーザ光の振幅および位相の分布を所望の分布状態にできる。
【0090】
1実施形態の半導体レーザ装置は、上記補正領域によって、上記光電界の振幅および位相の分布を、予め定めた単峰の遠視野像を逆フーリエ変換して求めた振幅および位相の分布に略一致させるように補正するので、レーザ光の遠視野像を略単峰にすることができ、そのため、光通信機器や光メモリ機器に好適なレーザ光を得ることができる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
1実施形態の半導体レーザ装置は、発光ストライプ領域の幅方向両端部の光の位相を、発光ストライプ領域の幅方向中央部の光の位相よりも進ませるので、光電界の振幅および位相の分布を補正して、所望の分布状態にできる。
【0099】
1実施形態の半導体レーザ装置は、上記発光ストライプ領域の少なくとも片側に、発光ストライプ領域内を共振する光を吸収する材料を配置するので、光電界の振幅および位相の分布を補正して、所望の分布状態にできる。
【0100】
【0101】
1実施形態の半導体レーザ装置は、7μm以上の幅を有する発光ストライプ領域を備える場合に、本発明を有効に適用してレーザ光の振幅および位相の分布を効果的に補正して、所望の分布状態にできる。すなわち、半導体レーザ装置のレーザ光の遠視野像を単峰、もしくはサイドローブを実質的に無くして、光ファイバ通信などの光通信機器、あるいは、レーザ加工装置や医療機器、光メモリ機器などに好適なレーザ光を得ることができる。
【0102】
本発明の光無線通信システムは、高出力かつ単峰の放射パターンを有するレーザ光を出射する半導体レーザ装置を用いた送信装置を備えるので、この光無線通信システムを用いることにより、例えばビル間通信や、衛星間光通信などの空間光通信を高速かつ高効率にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の半導体レーザ装置の平面図である。
【図2】 図2(a)は、本発明の半導体レーザ装置によるレーザ光の近視野像が有するべき光強度分布を示す図であり、図2(b)は、本発明の半導体レーザ装置によるレーザ光の近視野像が有するべき位相分布を示す図である。
【図3】 図2(a),(b)に示した光強度分布と位相分布を求めるために用いた、予め定めた遠視野像である。
【図4】 図4(a)は、本発明の半導体レーザ装置によるレーザ光がなすべき近視野像の横方向の光強度分布形状を示す図であり、図4(b)は、本発明の半導体レーザ装置によるレーザ光がなすべき近視野像の横方向の位相分布形状を示す図である。
【図5】 本発明の第2実施形態の半導体レーザ装置を示す平面図である。
【図6】 図6(a)は、本発明の第3実施形態の半導体レーザ装置を示す幅方向の断面図であり、図6(b)は、図4(a),(b)に示す近視野像の光強度分布形状および位相分布形状を得るための発光ストライプ領域における屈折率分布である。
【図7】 本発明の第4実施形態の半導体レーザ装置を示す幅方向の断面図である。
【図8】 本発明の第5実施形態の半導体レーザ装置を示す幅方向の断面図である。
【図9】 本発明の第6実施形態の半導体レーザ装置を示す幅方向の断面図である。
【図10】 本発明の第7実施形態の半導体レーザ装置を示す幅方向の断面図である。
【図11】 本発明の半導体レーザ装置から出射した光をレンズ系によってコリメートする様子を示す図である。
【図12】 本発明の光無線通信システムを用いた衛星間光通信システムの構成例を示す図である。
【図13】 従来の半導体レーザ装置の近視野像であって、光電界の横方向の光強度分布を示す図である。
【図14】 従来の半導体レーザ装置の遠視野像であって、光電界の横方向の光強度分布を示す図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザ装置
2 発光ストライプ領域
3 光出射端面
4 凹面
5 端面
b 発光ストライプ領域の幅
Lr 凹面の深さ
Claims (7)
- 発光ストライプ領域を含む活性層およびその両側に位置する層を有する半導体レーザ装置において、
上記発光ストライプ領域が生成すべき、あるいは生成した光電界の振幅および位相の分布を補正する補正領域を備え、
上記補正領域は、上記発光ストライプ領域の少なくとも一方の共振器端面を形成する曲面であり、
上記曲面は、上記発光ストライプ領域の幅方向両端部に位置する2個の凹面を有することを特徴とする半導体レーザ装置。 - 請求項1に記載の半導体レーザ装置において、
上記補正領域によって補正された上記光電界の振幅および位相の分布は、予め定めた遠視野像を逆フーリエ変換して求めた振幅および位相の分布に、略一致することを特徴とする半導体レーザ装置。 - 請求項2に記載の半導体レーザ装置において、
上記遠視野像は、単峰、もしくはサイドローブが実質的に無い遠視野像であることを特徴とする半導体レーザ装置。 - 請求項1に記載の半導体レーザ装置において、
上記補正領域は、発光ストライプ領域の幅方向両端部の光の位相を、発光ストライプ領域の幅方向中央部の光の位相よりも進ませることを特徴とする半導体レーザ装置。 - 請求項4に記載の半導体レーザ装置において、
上記補正領域は、上記発光ストライプ領域の少なくとも片側の層に形成されて、光を吸収する材料からなることを特徴とする半導体レーザ装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置において、上記発光ストライプ領域の幅が7μm以上であることを特徴とする半導体レーザ装置。
- 請求項1乃至6のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置を用いた送信装置を備える光無線通信システム。
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