JP4748671B2 - 食道扁平上皮癌マーカーおよびそれを利用した食道扁平上皮癌の判定方法 - Google Patents

食道扁平上皮癌マーカーおよびそれを利用した食道扁平上皮癌の判定方法 Download PDF

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本発明は、食道扁平上皮癌マーカーおよびそれを利用した食道扁平上皮癌の判定方法に関する。更に詳細には、本発明は、トランスサイレチンからなる食道扁平上皮癌マーカー、および検体中のトランスサイレチンに基づいて食道扁平上皮癌を判定する方法に関する。
ヒトの食道は、成人で 25〜30 cm 前後の長さがあり、頸部で喉頭の後ろ側ではじまり、胸部では気管支、大動脈弓などの後ろを通り、横隔膜である食道裂孔を突き抜けて腹部に至る。横隔膜の下で胃の噴門とつながる構造となっている。食道の壁は、内側から粘膜、筋層、外膜と分けることができる。粘膜は、口で咀嚼されたとはいえ、まだ形を保ったままの食物が通過することで傷つかないように、力学的に強い重層扁平上皮で構成されている。粘膜のすぐ下層にある多数の食道腺が粘膜の表面に粘液を分泌することで、食物の通りをよくするはたらきがある。筋層は、順に収縮することで食物を胃に送り出すような動きをする。2層構造をしており、内側の筋は輪走筋、外側の筋は縦走筋である。口に近い側の上部食道の筋は横紋筋で、胃に近い側の下部食道の筋は平滑筋で構成されている。これらの筋は、自律神経の働きで意識せずに収縮運動が起こる。「喉元過ぎて熱さを忘れる」の言葉どおり、食道の粘膜の感覚はあまり鋭敏ではない。
食道の粘膜上皮の細胞は、食物によって力学的に刺激を受け続けており、通常から細胞の分裂、入れ替わりが盛んである。そのため上皮細胞の癌化が起こる場合があり、食道癌の 90% 以上が扁平上皮癌である。特に胸部中部食道に好発することが知られている。 扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)とは、上皮性の悪性腫瘍である。扁平上皮癌の発生は、扁平上皮基底細胞から始まる。この基底細胞が悪性化し、異型性、多形成を増し、上皮下結合組織中で増殖する。その結果は食道が狭くなる、食道内に腫瘤ができる、粘膜に扁平な病変斑ができる、食道と気管につながる異常な通路である瘻ができるといった形で現れる。
食道癌が疑われた場合、最も確実な診断方法は、内視鏡を口から入れて食道の様子を観察する内視鏡検査である。検査中に食道の組織を採取して、その細胞を顕微鏡で調べる、ブラシ細胞診もある。食道造影と呼ばれる X 線検査は、X 線に映るバリウム溶液を飲んでから行う検査であり、この検査でも、狭窄や食道外からの圧迫がわかるが、この方法では粘膜の微小病変の検出は困難である。CT 検査や超音波検査、超音波内視鏡と呼ばれる新しい画像診断技術を使い、より詳細に癌の広がりを調べることもある。食道癌は転移するまで発見されないことが多く、死亡率の高い病気である。
現在、食道癌を診断する最も簡単な体外臨床検査法は、子宮頚部扁平上皮癌の肝転移巣より分離・精製された腫瘍関連抗原である SCC (squamous cell carcinoma) 抗原をマーカーとして利用する検査法である(非特許文献1および2)。しかしながら、その陽性率はまだ満足できるものではない。その結果、食道癌患者で 5 年以上生存できる人は 5% 未満であって、多くの人が初期の症状に気づいてから 1 年以内に死亡している。ほとんどのケースの食道癌は致死的あり、痛みと嚥下機能のコントロールを目的に治療をすることが多い。従って、少しでも食道癌を早期に発見し、診断できることは非常に重要である。
他方、新規腫瘍マーカーなどを探索するために、網羅的発現タンパク解析の手法として一般的なのは二次元タンパク電気泳動であるが、低分子量タンパクまたはペプチドの検出に難がある。近年、surface enhanced laser desorption ionization (SELDI)と飛行型質量分析計を組み合わせたプロテインチップテクノロジーが米国 Ciphergen 社により開発され、新規腫瘍マーカーの検出など臨床応用が始まっている(特許文献1および2並びに非特許文献3)。実際に、プロテインチップテクノロジーを利用した前立腺癌マーカーの探索などが既に報告されている(非特許文献4)。
米国特許第6,294,790B1号公報 特表2000−507282号公報 Kato H, Torigoe T. Radioimmunoassay for tumor antigen of human cervical squamous cell carcinoma.Cancer, 40, 1621-1629,1977 Kato H: Squamous cell carcinoma antigen. In Sell S, ed. Serological Cancer Marker. Totowa: Humana Press, 437-451, (1992) Davies,H.A. et al., J. Molecular Medicine, 78:B29 (2000) Wright,G.L.Jr. et al., Prostate Cancer and Prostatic Diseases, 2, 264-276 (2000)
このような環境下にあって、本発明は、食道扁平上皮癌を特異的に診断することを可能とする新たなマーカーを提供することを目的とする。更に、本発明は、新たなマーカーを利用した食道扁平上皮癌の判定方法を提供することを目的とする。
本発明者らはプロテインチップテクノロジーを利用して食道癌マーカーを探索した。具体的には、食道癌で入院した患者血清検体を用い、健常人、手術後と比較することによって、食道扁平上皮癌のマーカーとなり得る新規血清タンパクを同定することに成功し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、トランスサイレチンからなる食道扁平上皮癌マーカーに関する。
更に、本発明は、検体中のトランスサイレチンに基づいて食道扁平上皮癌を判定する方法に関する。
患者からの血清などの検体中のトランスサイレチンのレベルを測定し、そのレベルを健常人のレベルと比較することにより、食道扁平上皮癌の可能性を正確に判定することができる。また、食道扁平上皮癌患者からの検体中のトランスサイレチンのレベルを測定することにより予後の判定も行うことができる。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明により新たな食道扁平上皮癌マーカーとしてトランスサイレチンが同定された。トランスサイレチンは、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、127 個のアミノ酸より成っており、理論分子量は 13,746Da である。血清中では 4 量体を形成し分子量約 55 万の位置に確認される。免疫電気泳動を行なうとアルブミンより陽極側に泳動されるためプレアルブミンと呼ばれることもあり、通常のセルロース・アセテート膜電気泳動ではアルブミン分画に含まれる。トランスサイレチンは肝臓で合成されるトリプトファンを多量に含有する血漿蛋白の1つであり、機能としては、血中に分泌されてから内因性サイロキシンの一部である甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)と結合しその輸送蛋白となること、さらにレチノール結合蛋白(RBP)と複合体を形成して、RBP が腎糸球体から濾過されるのを防ぐことが挙げられる。
本発明により食道扁平上皮癌マーカーとして同定されたトランスサイレチンに基づいて食道扁平上皮癌の可能性や予後の判定をすることができる。すなわち、食道扁平上皮癌が疑われる患者や食道扁平上皮癌の術後患者から採取された検体中のトランスサイレチンのレベルを測定して、食道扁平上皮癌の罹患可能性や予後の診断を行うことができる。例えば、トランスサイレチンのレベルが健常者のレベルに比べて高い場合には、食道扁平上皮癌と判定することができ、また、術後の食道扁平上皮癌患者の検体中においてトランスサイレチンのレベルが低下した場合には、食道扁平上皮癌の予後が良好であると判定することができる。
本発明で用いることのできる検体としては、食道扁平上皮癌が疑われる患者や食道扁平上皮癌の術後患者から採取された血清、血漿、血液、尿などが挙げられる。
トランスサイレチンのレベルを測定するためには現在既知のあらゆる方法を採用することができる。例えば、免疫測定法、電気泳動法、質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)法、ガスクロマトグラフィー(GC)法などが挙げられる。
免疫測定法としては、例えば、免疫比濁測定法、酵素免疫測定法(EIA 法)などが挙げられる。免疫測定法は、従来知られている蛋白質を抗原として測定する免疫測定法において、抗体として抗トランスサイレチン抗体であるポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を用いることにより実施することができる。免疫比濁測定法においては、検体中のトランスサイレチンと、試薬液中の抗トランスサイレチン抗体を反応させて抗原抗体反応させ、その結果、発生する濁りの度合いからトランスサイレチンの濃度を測定するものであれば、とくに限定されないが、そのような方法として、TIA 法、ラテックス免疫比濁法、ネフェメントリー法を例示することができる。TIA 法は、免疫比濁測定法において濁りの度合いを、例えば、340nm から 800nm の吸光度で測定する方法である。また、ラテックス免疫比濁法は、免疫比濁測定法において、抗体として抗トランスサイレチン抗体をラテックス粒子に結合させたものを用いて測定する方法である。さらに、ネフェメトリー法は、免疫比濁測定法において濁りの度合いを、一定角度以上の大きさに散乱した光を集めて散乱光として測定する方法である。
酵素免疫測定法としては、プレートを支持体とした EIA 法を挙げることが出来る。以下に具体的に記述する。はじめにポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ナイロン、ポリメタクリレートなどのそれ自体公知である固相に直接または間接的に物理結合や化学結合、アフィニティーを利用して抗ヒトトランスサイレチン抗体を結合させる。感作抗体量は通常 1ng から 100mg/ml の範囲である。物理結合や化学結合、アフィニティーなどによって固相に結合した一次抗体にトランスサイレチンを測定する検体を加えて反応させる。一定時間反応させた後、固相を洗浄し二次標識抗体を加えて二次反応させる。固相を再度洗浄し、固相に結合した標識部分を測定する。標識物質には西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)アルカリホスファターゼなどの酵素を用いることができる。例えば HRP 標識抗体を利用した場合には基質に既知の DAB、TMB、OPDなどを用いることができる。また、標識物質には、HRP のような酵素だけではなく、金コロイド、ユーロピウムなどの標識金属や FITC、ローダミン、Texas Red、Alexa、GFP などの化学的、生物的各種蛍光物質、32P、51Cr などの放射性物質など標識可能なあらゆる物質が挙げられる。
電気泳動法としては、一般的には SDS-PAGE 法を挙げることができる。SDS-PAGE 法はアクリルアミドと呼ばれる化合物で出来たゲル中に蛋白質を泳動させることで、一定時間での移動度と蛋白質を構成するアミノ酸の数、すなわち、分子量が比例することから、蛋白質を分類する方法である。そのほかにもセルロース・アセテートを支持体としたものなどがある。蛋白質の染色にはクマシー・ブリリアント・ブルー、ポンソー S 染色、 アミドブラック染色、直接酵素活性を利用する方法などがある。例えば一定量の尿サンプル(20μL)と一般的なサンプルバッファーを一定の割合で 1:1 で混合し、加熱処理する。一般的には沸騰水中で 5 分程度処理される。その後サンプルをゲルにアプライする。ポリアクリルアミド電気泳動は低電流で流すことがよい結果につながる。一般的には 5〜100mA 程度である。電気泳動後に上記試薬にて染色を行い酢酸、メタノール、水混合液よりなる脱色液にて処理するとトランスサイレチンのバンドが確認できるが、そのバンドの強弱により、トランスサイレチンのレベルを測定できる。また、ウエスタンブロッティング法による検出も有効である。すなわち、電気泳動をしたゲルをニトロセルロース膜や PVDF 膜等の膜に転写し、次いで、1次抗体である抗ヒトトランスサイレチン抗体、さらに、2 次標識抗体である HRP 標識抗ウサギ IgG を反応させ、次いで、HRP 発色試薬(Wako)で発色させ、ヒトトランスサイレチンに相当するバンドの発色度合いにより、トランスサイレチンを測定することができる。
質量分析法としては、最近開発が急に進んでいる質量分析器を使用した分析方法を挙げることができる。例えば、表面増強レーザー脱離イオン化(Surface Enhanced Laser Desorption/Ionization)飛行時間型質量分析計(SELDI-TOF MS 法)、マトリックス支援レーザーイオン化(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS法)、ESI 法(Electrospray Ionization)を用いる方法を例示できる。SELDI-TOF MS 法は、チップ表面の官能基に目的物質を均一に捕捉したまま不純物を除去し、レーザー光でイオン化するため、再現性のある S/N 比の高いイオンスペクトルが得られるので好ましい。
SELDI-TOF MS 法の場合、通常、検体を前処理した後、チップに吸着させて、SELDI-TOF MS 質量計に付す。検体が血清の場合、アルブミンの吸着剤を用いるか、イオン交換チップでアルブミンが電荷をもたなくなるまでバッファーで洗浄してアルブミンを系から除去することが好ましい。SELDI-TOF MS 法に使用する蛋白質を結合させるチップとしてはトランスサイレチン(分子量13,700)の蛋白質を吸着できるチップであれば特に種類を限定されない。疎水性やイオン交換などの蛋白質に親和性を持つ官能基が修飾されているチップ(ケミカルチップともいう)、トランスサイレチンに対する抗体を固定化したチップ(バイオケミカルチップ)等を例示できる。
MALDI-TOF MS 法は、検体にレーザー光を吸収する化合物を混合し,数ナノ秒という短時間のレーザー光を照射することで検体中の蛋白質をイオン化して、測定するものである。蛋白質を結合させるチップとしては、SELDI-TOF MS 法に使用するチップと同様のものを用いることができる。
ESI 法等の場合は、プロテアーゼ処理等の前処理した検体を、高速液体クロマトグラフィー等の分離手段と直結した質量分析計に付することが好ましい。
液体クロマトグラフィー(LC)法やガスクロマトグラフィー(GC)法は、当業者にとって周知の方法であり、本発明では、これらの周知の方法を採用することができる。
以下に好ましい実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
実施例1
食道扁平上皮癌患者における血清中トランスサイレチンの同定
この実施例1では、食道扁平上皮癌患者と健常人の血清を質量分析計に付し、13.7kDa のトランスサイレチンのピークの大小を測定し、食道扁平上皮癌患者のトランスサイレチンのレベルが、健常人のトランスサイレチンのレベルより、高いことを示し、その結果、トランスサイレチンが食道扁平上皮癌マーカーとして有用であることを示すことを目的とする。
発明者らはインフォームド・コンセントをおこなった食道扁平上皮癌入院患者の血清と健常人ボランティアの血清を比較した。
(1)SAXII プロテインチップアレイを用いるマーカーの同定
インフォームド・コンセントを行なった患者血清を使用し、8 スポットの SAXII プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems ,Inc)を用いて血清中の新規食道癌マーカーを検索した。SAXII チップとは Strong Anion Exchange Chip のことであり、検体中の負電荷物質を結合させるという特徴を持っている。検体として 32 例の食道癌患者血清を、対照として健常人の血清を用いた。以下にプロテインチップアレイ実験操作法を簡単に述べる。
血清サンプルは 7M 尿素(SIGMA)、2M チオウレア、4%CHAPS(SIGMA)、1%DTT、2%アンフォライン溶液で希釈した。10 分間氷上処理を行なった後、50mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(以後、洗浄結合用緩衝液と呼ぶ)にて更に 5 倍希釈してサンプルとして用いた。はじめに SAXII プロテインチップアレイを洗浄結合用緩衝液で洗浄した。これを 2 回行なった後に先の希釈サンプルを添加し、室温で 20 分間振とうしてチップと反応させた。続いて希釈サンプルを除き、洗浄結合用緩衝液を加えて振とう機上で 5 分間洗浄を行なった。この操作を 3 回繰り返した。その後蒸留水で軽く洗浄し、チップが乾いた後、0.5μL の飽和シナピン酸(Ciphergen Biosystems ,Inc)/50%アセトニトリル(Wako)/0.5%TFA(Wako)溶液を 2 回添加した。作製したプロテインチップアレイは、プロテイン・バイオロジー・システムII・マス・スペクトロメーター(Ciphergen Biosystems ,Inc)によって読み取った。
図1に、代表的な食道扁平上皮癌患者血清及び健常者血清の測定データを示す。このデータフォーマットでは、SAXII プロテインチップから脱着されたサンプルのタンパク質の分子量を横軸に、その分子量で検出器に到達した分析物の量を反映するピークを縦軸で表すことができる。よって図1から明らかなように、B:食道扁平上皮癌患者のデータでは、13,700Da の蛋白質(以下13.7kDa蛋白質と表記する)のピークが大きいにもかかわらず、A:健常人のデータでは、ピークが低いことが判明した。
(2)13.7kDa 蛋白質の精製とトランスサイレチンの同定
次に、患者血清から、13.7kDa 蛋白質を精製する実験を行った。精製するため、Q-Shepharose spin column(Ciphergen Biosystems ,Inc)を用いて至適精製条件を決定するため pH と塩化ナトリウム濃度を変化させて実験を行った。フラクションを順相チップ、すなわち、一般的な蛋白質を全て吸着することの出来る特徴を持った NP20(Ciphergen Biosystems ,Inc)を用いて質量分析計に付し、目的蛋白質の含まれるフラクションを確認した。条件検討の結果からはじめに、患者血清を、Q-Shepharose に付し、50mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)200mM NaCl のピークを回収した。そのフラクションを HPLC(CCPM/PX-8010,TOSOH)、Sephasil protein C18 column(Amersham Biosciences)を利用して精製、純品とした。C18 カラム溶出には 10-80%アセトニトリル直線勾配を使用した。得られた精製 13.7kDa 蛋白質はアプロサイエンス社に依頼して N 末端解析を行い、Swiss-Protデータベースを利用して物質同定を行ったところ、13.7kDa 蛋白質はトランスサイレチンであった。(図2参照)
よって食道扁平上皮癌患者血清中にはトランスサイレチンが高値で検出されることがわかった。
(3)Gold chip プロテインチップアレイを用いるマーカーの確認
さらに、13.7kDa 蛋白質がトランスサイレチンであることの確認を行うため下記の実験を行った。はじめに、IgG は、測定に使用するプロテイン G と反応するので、サンプルとして血清から IgG を除去したものを作成した。すなわち、10μL の食道癌扁平上皮癌血清を PBS で希釈した(サンプルA)し、これを 100μL の Protein G レジンと 4℃、2 時間反応させ、次いで、遠心を行い、IgG の吸収された血清とIgG を吸収したビーズに分離した。このステップでまず競合する検体中の IgG を除いている。次に、血清中 IgG の除去されたサンプルと5μg の抗ヒトトランスサイレチン抗体(DAKO)を混ぜて 4℃、2 時間反応させた(サンプルB)。また、比較対照としてウサギ IgG 抗体を反応させた(サンプルC)。同様にして精製トランスサイレチン(サンプルD)と 5μg の抗ヒトトランスフェリン抗体(DAKO)を混ぜて 4℃、2 時間反応させた。新しいProtein Gレジンと抗ヒトトランスサイレチン抗体を添加した精製トランスサイレチンを反応させ、遠心操作を行い、上清(サンプルE)と Protein G レジンに分離した。上記のサンプルを先の SELDI-TOF MS 法によって確認した。チップには Gold chip プロテインチップアレイを用いている。このチップを使用するとこれまでの MALDI と同様の作業を行うことが出来るという特徴を持っている。
測定結果を図3に示す。血清中にトランスサイレチンを高値に含む検体では測定時にピークが確認できる(サンプルA)。しかし、抗トランスサイレチン抗体によって吸収された血清ではピークが消失した(サンプルB)。また、精製トランスサイレチンは普通のウサギIgGによって吸収操作を行っても影響を受けず、吸収されないことが確認される(サンプルC)。精製トランスサイレチンは理論通りの分子量ピークが確認できる(サンプルD)。しかし、抗トランスサイレチン抗体を添加するとProtein Gレジン−抗トランスサイレチン抗体−トランスサイレチン複合体として吸収され、ピークはほぼ消失する(サンプルE)。
この結果からも、13.7kDa 蛋白質は食道扁平上皮癌で上昇するマーカー蛋白質、トランスサイレチンであることが確認された。
実施例2
ネフェロメトリーによるトランスサイレチンの測定
発明者は既に市販されているネフェロメトリーを原理とした、デイドベーリング社の BN2 システムとトランスサイレチン測定専用試薬を利用してトランスサイレチン濃度測定を試みた。ネフェロメトリーとは光学的免疫測定法の一種である。原理的にはハロゲンやタングステンランプ光源から出た光がキュベット中のサンプルの濁りによって散乱することを利用するものである。一定角度以上の大きさに散乱した光は再び集められて散乱光として測定され、濁度に比して大きくなることを利用して濃度を表すことになる。この方法ではトランスサイレチンの濃度の結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、食道扁平上皮癌患者(早期)32人の平均血清中濃度は健常人に比べて有意(p<0.05)に高値を示した。
SAXII プロテインチップアレイを用いてプロテイン・バイオロジー・システムII・マス・スペクトロメーターによって測定した、食道扁平上皮癌患者血清及び健常者血清の測定データを示す。 食道扁平上皮癌患者の血清から精製された 13.7kDa 蛋白質について、 Swiss-Protデータベースを利用して N 末端解析を行った結果を示す。 Gold chip プロテインチップアレイを用いて SELDI-TOF MS 法により、食道扁平上皮癌患者血清から精製された13.7kDa 蛋白質がトランスサイレチンであることの確認を行った結果を示す。

Claims (4)

  1. トランスサイレチンからなる、食道扁平上皮癌細胞を血清検体を用いて検出するためのマーカー。
  2. 血清検体中のトランスサイレチンに基づいて食道扁平上皮癌細胞を検出するために、トランスサイレチンを測定する方法
  3. 血清検体中のトランスサイレチンのレベルに基いて食道扁平上皮癌細胞を検出するために、トランスサイレチンを測定する方法
  4. 血清検体中のトランスサイレチンの測定を免疫測定法、電気泳動法、質量分析法、液体クロマトグラフィー(LC)法またはガスクロマトグラフィー(GC)により行う請求項2または3の方法。
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