JP4748409B2 - 木材からの工業用原料製造方法 - Google Patents
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Description
CαHβOγ+(α−γ)H2O→αCO+(α+β/2−γ)H2 (1)
メタノールの一酸化炭素/水素比は1/2であり、メタノール製造には一酸化炭素過剰または水素不足となる。従来の木材よりメタノールを製造する方法では、(i)過剰分の一酸化炭素と空気由来の酸素との部分酸化反応を経て、メタノール製造を行っている(特許文献47、48、49、50、51、52参照)。この場合供給する空気中の窒素分を除去するために、システムにPSA(Pressure Swing Absorption)装置を組み込でおり、メタノール製造単価および装置コストの増加となる。(ii)不足分の水素を補給するために、太陽光エネルギー、風力エネルギー、潮力エネルギー、水力エネルギー等の自然エネルギー発電手段による水の電気分解で得られた水素を供給し木材、蒸気および水素を原料にして部分酸化または水蒸気改質を経てメタノール製造を行っている(特許文献53参照)が、自然エネルギーを採用することによるメタノール製造単価および装置コストの増加となり、木材の水蒸気改質反応による反応生成ガスの一酸化炭素/水素比1/(1.1〜1.6)に適合した、木材の有効利用が望まれる。
本発明においては、以下の(1)ないし(11)式で示される反応が行われる。なお、これらの式において、Gは気相、Lは液相、Sは固相を示し、反応熱は25℃基準の値で反応熱のプラス(+)は発熱反応、マイナス(−)は吸熱反応を意味する。
木材[CαHβOγ(S)]+(α−γ)H2O(G)→αC(G)O+(α+β/2−γ)H2(G) (1)
但し、α=3.8、β=5.9、γ=2.9の場合の反応熱は−674.28kJ
CO(G)+2H2(G)→CH3OH(L)+128.91kJ (2)
CH3OH(L)+CO(G)→HCOOCH3(L)+34.74kJ (3)
C5H8O4(S)+H2O(L)→C5H10O5(S)−431.94kJ (4)
但し、C5H8O4はヘミセルロースの一例、C5H10O5は五炭糖
C6H10O5(S)+H2O(L)→C6H12O6(S)−516.49kJ (5)
但し、C6H10O5はセルロースの一例、C6H12O6は六炭糖
C5H10O5(S)→(5/3)C2H5OH(L)+(5/3)CO2(G)+68.22kJ (6)
C6H12O6(S)→2C2H5OH(L)+2CO2(G)+67.39kJ (7)
C6H12O6(S)→2CH3CH(OH)COOH(S)+114.68kJ(8)
C6H12O6(S)→(3/2)(CH2)3(OH)2(L)+(3/2)CO2(G)+11.3kJ (9)
リグニン[CδHεOζ(S)]→ζH2O(G)+(ε−2ζ)/4CH4(G)+
(δ−ε/4+ζ/2)C(S) (10)
但し、δ=18、ε=24、ζ=11の場合の反応熱は−172.86kJ
リグニン[CδHεOζ(S)]+(2δ+ε/2−ζ)/2O2(G)→
δCO2(G)+ε/2H2O(G) (11)
但し、δ=18、ε=24、ζ=11の場合の反応熱は+7155.53kJ
本発明の木材とは、木質由来のバイオマスである。すなわち、木質の主要成分であるセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む木質バイオマスであり、上記木質バイオマスは、森林バイオマス、製材残材、建築廃材、ダム・河川の流木、街路樹剪定枝および造園業・果樹園等から発生する剪定枝林、林地残材、間伐材、未利用樹、短周期伐採木材、伐根材等を含む。このうち製材残材、建築廃材とは、素材を加工する過程で発生した廃材である。製材業、木材加工業で発生する木質バイオマスが製材残材であり、チップ、背板、端材、おがくずおよびバーク等などがある。建築業、建設業、家屋解体業等で発生する木質バイオマスが建築廃材であり、建築物の建設時に発生する建設時廃材と、建築物の解体時に発生する解体時廃材とがある。林地残材とは、主伐、間伐、除伐等に伴って発生する素材(丸太)以外の材であり、末木、枝条等を含む。間伐材とは、人工林において林分の混み具合に応じて、目的とする樹種の個体密度を調整する作業(間伐)に伴って発生する材(素材)等である。未利用樹とは、例えば、かつて薪炭林として利用されていたが現在は利用されていない広葉樹林等が含まれる。
(2)式のメタノール合成反応、(3)式のメタノールのカルボニル化反応、(6)〜(9)式のエタノール、乳酸およびプロパンジオール製造反応および(11)式の燃焼反応は発熱反応であるから熱回収に用いられる。(1)式の木材の水蒸気改質反応、(4)式の五炭糖酵素糖化反応、(5)式の六炭糖酵素糖化反応および(10)式の炭化反応は吸熱反応であるから熱利用に用いられる。
反応圧力は常圧〜7.0MPaであり、実用的には0.5〜3.0MPaの範囲が好ましい。
ガス空間速度は100〜10000(M3−[一酸化炭素+水素]/hr/M3−触媒)の範囲、特に300〜5000(M3−[一酸化炭素+水素]/hr/M3−触媒)が一般的である。
(2)式の触媒としては、気相法では銅−亜鉛−アルミニウム系の混合触媒、希土類酸化物を坦体としたパラジウム系触媒、酸化ジルコニウム坦持の金触媒、酸化セリウム坦持パラジウム触媒およびラネー型貴金属触媒(ルテニウム、パラジウム、ロジウムおよび白金)等各種の触媒を用いることができる。液相法ではニッケル系化合物(またはパラジウム系、コバルト系)とともにアルコキシドを使用した触媒、ニッケル系化合物と金属アルコキシド(リチウム、ナトリウム、カリウム)を用いた触媒等各種の触媒を用いることができる。
一酸化炭素とメタノールの比はメタノールの反応を考慮して理論値よりも一酸化炭素が多い方が好ましく、モル比は1〜100(一酸化炭素/メタノール)であり、実用的には1.2〜50(一酸化炭素/メタノール)の範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(M3−メタノール/hr/M3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(M3−メタノール/hr/M3−触媒)が一般的である。
(3)式の触媒としては、液相系が主体で、アルカリ(土類)金属アルコラートが最も一般的に用いられている触媒であるが、陰イオン交換樹脂、(フッ化カリウム+酸化亜鉛)触媒および炭酸セシウム触媒等各種の触媒を用いることができる。
遊星ボールミルP4型(フレッチュ社製)を用いて1分間粉砕した杉130g(セルロース39wt%、ヘミセルロース15wt%、リグニン21wt%、灰分2wt%、水分23wt%)を使用し、水10gを加え、水熱処理装置にて200℃、1.61MPaで2時間水熱処理し、生成したスラリーを加圧下で固液分離して液体30gを得た。分離した液体の成分濃度はリグニン8.4wt%、ヘミセルロース6.2wt%であった。また分離した固形物は大気圧に開放することにより爆砕処理を行った。セルロース、ヘミセルロース、リグニン、灰分及び水分の分析はASTM(American Society for Testing and Materials) D1104−56(1972)、D1103−60(1968)、D1106−56(1966)、D1102−56(1772)、D2016−74の方法により行った。
参考例1により得られた液体1gを分取用シェファーデックスG−10(アマシャムバイオサイエンス社製)50mlが充填されたガラス製カラム(内径0.9cm、長さ100cm)に供給し、展開液として水を用いて温度60℃、液流速15ml/hrでクロマト分離を行った。溶出開始後2時間までの画分とそれ以降の画分とをそれぞれ分取、分析したところ、前者はおもにリグニン及びヘミセルロースを多く含み、後者はおもにセルロースを多く含む画分であった。
参考例2と同様の操作を数回行うことにより得られたリグニンを多く含む画分10gを500℃、1時間で炭化し、炭素繊維製造の原料3gを得た。オートソーブ全自動ガス吸着量測定装置(Autosorb社製)により、比表面積及び細孔容積を測定したところ、550m2/gおよび0.25ml/gであった。
参考例1により得られた爆砕処理物20gを、遊星ボールミルP4型(フレッチュ社製)により1時間粉砕処理して得られた固形物を糖化槽に入れ、水を180g加えた後、pHを6に調整しセルラーゼGODO−TCL(合同酒精製)を1.0wt%になるように添加し、60℃で72時間酵素糖化を行った。糖化液を固液分離し、液体成分を分析したところ、液体中のグルコース濃度は3.0wt%であった。
参考例4から得られたセルラーゼによる酵素糖化後の残渣10gに水を90g加えた後、pHを6に調整し、ヘミセルラーゼ・エンチロンLQ((洛東化成工業製)を1.0wt%になるように添加し、60℃で72時間酵素糖化を行った。糖化液を固液分離し、液体成分を分析したところ、液体中のキシロース濃度は2.0wt%であった。
参考例4及び参考例5で得られた液体成分を合わせたもの1.0mlを用い、ガラス製カラム(内径14mm、長さ100cm)に充填剤としてシェファーデックスG−15(アマシャムバイオサイエンス社製)を120ml充填し、展開液として水を用いて温度45℃、流速6.0ml/hrでクロマト分離を行った。溶出開始後90分までの画分にはおもにグルコースを多く含む溶液が、それ以降の画分にはおもにキシロースを多く含む溶液がそれぞれ得られた。
内容積500mlの三角フラスコに培地100ml(組成:キシロース50g、NH4NO31.5g、NH4Cl21.5g、KH2PO41.0g、K2HPO41.0g、MgSO4・7H2O0.3g、FeSO4・7H2O0.01g、ZnSO4・7H2O0.01g、MnSO4・7H2O0.001g、酵母エキス0.2g、水1000ml、pH6.8)を入れ、オートクレーブにて120℃、10分間加熱滅菌した。土壌中より分離したクロストリディウム(Clostridium)類縁菌を培地中での濃度が1.0wt%になるように加え、系内に高純度窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。ついで、30℃の恒温槽中で48時間嫌気醗酵を行った後の醗酵液中のエタノール濃度は1.0wt%であった。
内容積500mlの三角フラスコに培地100ml(組成:グルコース200g、KH2PO41.0g、Mg2SO40.5g、ポリペプトン5.0g、酵母エキス2.0g、水1000ml、pH4.0)を入れ、オートクレーブにて120℃、10分間加熱滅菌した。サッカロマイセス セレビシエ(Sacharomyces cerevisiae、オリエンタル酵母工業製)を系内に高純度窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。ついで、30℃の恒温槽中で48時間嫌気醗酵を行った後の醗酵液中のエタノール濃度は3.0wt%であった。
50mlの遠心管に培地30ml(組成:グルコース200g、(NH4)2SO43.0g、KH2PO40.3g、MgSO4・7H2O0.2g、ZnSO4・7H2O0.04g、水1000ml、pH6)を入れ、オートクレーブにて120℃、10分間加熱滅菌した。ラクトバチルス デルブルエキー(Lactobacillus delbreueckii)を培地中での濃度が0.1wt%になるように加え、37℃の恒温槽中で醗酵させた。初期pHを6.0とし、醗酵72時間後に遠心管を遠心し、固形分を沈殿させた後、液相部分を回収し、液相部分の乳酸濃度を酵素法(F−キットD/L乳酸、J.K.インターナショナル)にて測定したところ、2.5wt%であった。
内容積500mlの三角フラスコに培地100ml(組成:グルコース50g、NH4NO31.5g、NH4Cl21.5g、KH2PO41.0g、K2HPO41.0g、MgSO4・7H2O0.3g、FeSO4・7H2O0.01g、ZnSO4・7H2O0.01g、MnSO4・7H2O0.001g、酵母エキス0.2g、水1000ml、pH6.8)を入れ、オートクレーブにて120℃、10分間加熱滅菌した。土壌中より分離したコリネバクテリウム ハイドロカルボクラスタス(Corynebacterrium hydrocarboclastus)類縁菌を培地中での濃度が1.0wt%になるように加え、系内に高純度窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。ついで、30℃の恒温槽中で嫌気醗酵を行った。48時間醗酵させた後、醗酵液の分析を行った結果、醗酵液のプロパンジオール濃度は1.0wt%であった。
参考例1と同様に粉砕した杉130gを使用し、水10gを加え、水熱処理装置にて200℃、1.61MPaで2時間水熱処理し、大気開放したサンプルを、内容積1000mlのオートクレーブに仕込み、無触媒下で800℃,2.02MPaに保持して1時間水蒸気改質を行った。生成ガス中の水素と一酸化炭素のモル組成は一酸化炭素/水素=1.0/1.1であった。
内容積500mlの攪拌機付き槽型ステンレス反応器に溶媒として100mlのメタキシレン、アルカリ水溶液で展開した日興リカ(株)製ラネー銅触媒40.4gおよび28wt%のナトリウムメトキシドメタノール溶液15gを仕込み、反応器を組み立てた。系内に窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。続いて水素/一酸化炭素の比が2である混合ガスを3.00MPa充填した。攪拌速度を1000rpmとし、反応器を温度110℃に加熱した。この温度で1時間維持し反応させた。その後、反応器を冷却した。気相部を徐徐に抜き出し、ガス量を計量するとともに分析した。その結果、一酸化炭素の反応率は78.6%、メタノールの選択率は88.9%であった。
ステンレス製内径9mmの反応管を取り付けた固定床流通式反応装置を用い、共沈法で調製した酸化セリウム担持パラジウム触媒(パラジウム含有量15wt%)1.0gを反応前に10%水素(窒素希釈)で300℃、1時間還元後、反応温度210℃、圧力1.01MPa、ガス流量1800ml/hrでメタノール合成を行った。24時間経過後の反応転化率21.4%、選択率95.3%、反応ガスの水素と一酸化炭素のモル組成は一酸化炭素/水素=1/2であった。
内容積100mlの攪拌機付き槽型ステンレス反応器にイオン交換樹脂(バイエル(株)製)15mlとメタノール50gを充填した。反応条件を触媒層温度60℃、反応圧力5.1MPaとして5時間反応させた。なお、反応圧力が一定圧力になるように一酸化炭素を供給した。その結果、メタノール反応率は82.1%、ギ酸メチル収率は76.9%であった。
内容積100mlのステンレス製オートクレイブに触媒としてフッ化カリウム0.32gと酸化亜鉛0.27gとメタノール10gを充填した。オートクレイブの内部を窒素により充分置換した後、一酸化炭素を4.9MPaまで充填した。これを振盪しながら120℃に加熱した。2時間振盪反応の後、オートクレイブを水中で冷却した。オートクレイブのバルブを開いて内部ガスを徐々にパージし、ガス量を計量するとともに組成を分析した。オートクレイブ圧力が大気圧になってから内容物を取り出し、秤量した後分析した。その結果、メタノール反応率は27.3%、ギ酸メチル収率は22.5%であった。
図1において、原料となる木材は流路10を経て、約8割が流路20より第1粉砕機A10に、約2割が流路30より第2燃焼器D20にそれぞれ供給される。第1粉砕機A10により粉砕された木材(木粉)は流路40を経て、また水熱処理に必要な水は流路50を経て、それぞれ第1熱交換器B10に供給される。第1熱交換器B10において、系内部熱交換により予熱された木粉および水は流路60を経て水熱処理器C10に供給される。水熱処理器C10では参考例1に記載したように、温度200℃、圧力1.61MPaで水熱処理が行われる。水熱処理された固液相は流路70を経て、第1熱交換器B10に入り、系内部熱交換により熱を供給して、流路80を経て、また固液分離のリンスに必要な水は流路90を経て、それぞれ固液分離・爆砕器G10に供給される。固液分離・爆砕器G10より分離された液相(大部分のヘミセルロースおよびリグニンと一部のセルロース)は流路100を経て、第1クロマト分離器H10に供給される。第1クロマト分離器H10は参考例2に記載したように、充填剤シェファーデックスG−10が充填されており、ヘミセルロースおよびセルロースを含む画分とリグニンを含む画分とに分離する。第1クロマト分離器H10より分離された主にヘミセルロースを含む画分は流路110を経て、第3熱交換器B30に供給され、主にリグニンを含む画分は流路120を経て、第1貯蔵器I10に供給される。第1貯蔵器I10から抜き出された約8割の主にリグニンを含む区分は流路150を経て、また燃焼に必要な空気は流路180より空気圧縮機F10を経て、圧力が1.01MPaにまで昇圧され、流路190より、それぞれ第1燃焼器D10に供給される。第1燃焼器D10は温度1000℃、圧力1.01MPaで燃焼反応が行われ、燃焼反応生成物である1000℃高温ガス(炭酸ガス、蒸気および未反応窒素)は流路200を経て発電機E10に供給される。発電機E10より排出された822℃高温ガス(炭酸ガス、蒸気および未反応窒素)は流路210を経て第2熱交換器B20に供給される。流路800より供給された水は第2熱交換器B20により系内部熱交換され、95℃温水および3KG(0.39MPa)蒸気としてそれぞれ流路810および流路820を経て系外に排出され熱利用される。第2熱交換器B20より排出された30℃低温ガス(炭酸ガス、蒸気および未反応窒素)は流路220を経て、系外に排出される。第1貯蔵器I10から抜き出された約1割の主にリグニンを含む区分は流路140を経て炭化反応器J10に供給される。炭化反応器J10は参考例3に記載したように、無酸素状態の下、温度500℃、圧力0.404MPaで主にリグニンの炭化反応が行われ、炭化反応生成物である炭素材は流路170を経て、また炭化反応副生成物であるメタンおよび水は流路160を経て、それぞれ系外に排出される。第1貯蔵器I10から抜き出された約1割の主にリグニンを含む区分は流路130を経て、第3熱交換器B30に供給される。
固液分離・爆砕器G10に残留した固相(大部分のセルロースと一部のヘミセルロースおよびリグニン)は大気圧への開放により爆砕され流路300を経て、第2粉砕機A20に供給され、常温、常圧で粉砕される。第2粉砕機A20から排出された粉砕混合物は流路310を経て、また酵素糖化反応に必要な水は流路320を経て、それぞれ第1酵素糖化反応器K10に供給される。第1酵素糖化反応器K10は参考例5に記載したように、セルラーゼ(GODO−TCL)により、温度45℃、pH6.0でセルロースの酵素糖化反応を行う。第1酵素糖化反応器K10より排出された六炭糖を含む水溶液は、流路330を経て、第2酵素糖化反応器K20に供給される。第2酵素糖化反応器K20は参考例4に記載したように、ヘミセルラーゼ(エンチロンLQ)により、温度45℃、pH6でヘミセルロースの酵素糖化反応を行う。第2酵素糖化反応器K20に残った主にリグニンを含む未糖化反応固形物は流路340を経て、第3熱交換器B30に供給される。セルロースおよびヘミセルロースの酵素糖化反応により生成した六炭糖および五炭糖を含む糖水溶液は流路350を経て、第2クロマト分離器H20に供給される。第2クロマト分離器H20は参考例6に記載したように、充填剤シェファーデックスG−15が充填されており、温度45℃で六炭糖水溶液と五炭糖水溶液とに分離する。第2クロマト分離器H20により分離されたリグニンおよび未分離の六炭糖と五炭糖は流路360を経て、第3熱交換器B30に供給される。第2クロマト分離器H20より分離された大部分の五炭糖水溶液は流路370を経て、第1醗酵器L10に供給される。第1醗酵器L10は参考例7に記載したように、クロストリディウム類縁菌により、温度30、pH6.8で五炭糖のエタノール醗酵を行い、醗酵により生成したエタノールを含む醗酵液は流路380より、また醗酵により副成した炭酸ガスは流路390より、それぞれ系外に排出される。第2クロマト分離器H20より分離された大部分の六炭糖水溶液は流路400を経て、第2貯蔵器I20に供給される。第2貯蔵器I20から抜き出された約4割の六炭糖水溶液は流路410を経て、第2醗酵器L20に供給される。第2醗酵器L20は参考例8に記載したように、サッカロマイセス セレビシエにより、温度30℃、pH4.0で六炭糖のエタノール醗酵を行い、醗酵により生成したエタノールを含む醗酵液は流路420より、また醗酵により副成した炭酸ガスは流路430より、それぞれ系外に排出される。第2貯蔵器I20から抜き出された約3割の六炭糖水溶液は流路440を経て、第3醗酵器L30に供給される。第3醗酵器L30は参考例9に記載したように、ラクトバチルス デルブルエキーにより、温度37℃、pH6で乳酸醗酵を行い、醗酵により生成した乳酸を含む醗酵液は流路450より系外に排出される。第2貯蔵器I20から抜き出された約3割の六炭糖水溶液は流路460を経て、第4醗酵器L40に供給される。第4醗酵器L40は参考例10に記載したように、コリネバクテリウム ハイドロカルボクラスタスにより、温度30℃、pH6.8でプロパンジオール醗酵を行い、醗酵により生成したプロパンジオールを含む醗酵液は流路470より、また醗酵により副成した炭酸ガスは流路480より、それぞれ系外に排出される。
流路110、130、340および360を経て熱交換器B30に収集されたセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む成分は水を過剰に含んでいるため水蒸気改質反応には不必要な水は蒸発により流路500を経て3KG蒸気として系外に排出し熱利用される。セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む成分は流路510を経て水蒸気改質反応器M10に供給される。水蒸気改質反応器M10は参考例11に記載したように、温度800℃、圧力2.02MPaで水蒸気改質反応を行う。水蒸気改質反応により生成したガス(一酸化炭素および水素)は流路520を経て、脱塵器N10に供給される。脱塵器N10より分離された灰分は流路530を経て系外に排出され、脱塵器N10により脱塵されたガス(一酸化炭素および水素)は流路540を経てメタノール合成反応器O10に供給される。メタノール合成反応器O10は参考例13に記載したように、酸化セリウム担持パラジウム触媒が充填されており、温度210℃、圧力1.01MPaでメタノール合成反応を行う。メタノール合成反応により生成したメタノールおよび未反応一酸化炭素は流路550を経て、メタノールのカルボニル化反応器P10に供給される。メタノールのカルボニル化反応器P10は参考例14に記載したように、イオン交換樹脂触媒が充填されており、温度60℃、圧力2.02MPaでメタノールのカルボニル化反応を行う。メタノールのカルボニル化反応により生成したギ酸メチルおよび未反応メタノールは流路560を経て系外に排出される。
水熱処理器C10、第3熱交換器B30、水蒸気改質反応器M10および炭化反応器J10に必要な熱を賄うための木材は流路30を経て、また該木材の燃焼に必要な空気は流路230を経てそれぞれ第2燃焼器D20に供給される。第2燃焼器D20は木材の燃焼反応を行い、反応生成物である炭酸ガス、水および未反応窒素は流路240を経て系外に排出される。燃焼反応の結果得られた熱の一部は流路600を経て水熱処理器C10に供給され、流路610を経て再び第2燃焼器D20に返る。燃焼反応の結果得られた熱の一部は流路620を経て第3熱交換器B30に供給され、系内部熱交換により水の蒸発のための熱を供給した後、流路630を経て再び第2燃焼器D20に返る。燃焼反応の結果得られた熱の一部は流路640を経て水蒸気改質反応器M10に供給され、水蒸気改質反応に必要な熱を供給した後、流路650を経て再び第2燃焼器D20に返る。燃焼反応の結果得られた熱の一部は流路660を経て炭化反応器J10に供給され、炭化反応に必要な熱を供給した後、流路670を経て再び第2燃焼器D20に返る。メタノールのカルボニル化反応器P10の反応液は流路680を経てメタノール合成反応器O10に入り、系内部熱交換によりメタノール合成反応熱を回収し、流路690を経て第1酵素糖化反応器K10の吸熱反応に利用し、さらに流路700を経て第2酵素糖化反応器K20の吸熱反応に利用した後、流路710を経て再びメタノールのカルボニル化反応反応器P10に返されメタノールのカルボニル化反応熱を回収する。
水熱処理器(C10):11.01MJ
第2燃焼器(D20):409.84MJ
第1熱交換器(B10):49.93MJ
第2熱交換器(B20):温水用(16.62MJ)、蒸気用(59.18MJ)
第3熱交換器(B30):48.64MJ
水蒸気改質反応器(M10):342.50MJ
メタノール合成反応器(O10):146.87MJ
メタノールのカルボニル化反応反応器(P10):53.62MJ
第1酵素糖化反応器(K10)+第2酵素糖化反応器(K20):200.49MJ
第1粉砕機
A10:消費動力 0.72kWh
第2粉砕機
A20:消費動力 2.88kWh
空気圧縮機(断熱効率70%)
F10:消費動力 5.78kWh
発電機(発電効率20%)
E10:発生動力 23.89kWh
発電量(発生動力と消費動力の差)=23.89−(0.72+2.88+5.78)=14.51kWh
B10、B20、B30 熱交換器
C10 水熱処理器
D10、D20 燃焼器
E10 発電機
F10 空気圧縮機
G10 固液分離・爆砕器
H10、H20 クロマト分離器
I10、I20 貯蔵器
J10 炭化反応器
K10、K20 酵素糖化反応器
L10、L20、L30、L40 醗酵器
M10 水蒸気改質反応器
N10 脱塵器
O10 メタノール合成反応器
P10 メタノールのカルボニル化反応器
Claims (4)
- 木材を粉砕し、150〜300℃で、かつ、処理温度の飽和蒸気圧力下で水熱処理を行い、固液分離して、固形分をさらに爆砕・粉砕処理した後に糖化酵素で処理して、その中のヘミセルロース及びセルロースを糖化酵素反応により五炭糖及び六炭糖に変換し、次いでこれらの糖類をエタノール発酵、乳酸発酵又はプロパンジオール発酵させて、それぞれエタノール、乳酸又はプロパンジオールを得るとともに副生物として二酸化炭素を回収し、
前記固液分離における液相分をクロマトグラフィーに供してリグニンを含む画分を分離し、該画分に含まれるリグニンを燃焼、炭化させて炭素材を得るとともに、メタン及び水からなる副生物を回収する木材からの工業用原料製造方法。 - リグニンの燃焼により発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、製造工程において必要な動力源として利用する請求項1記載の木材からの工業用原料製造方法。
- 木材の水蒸気改質工程とメタノール合成反応とメタノールのカルボニル化工程と、
木材を粉砕し、150〜300℃で、かつ、処理温度の飽和蒸気圧力下で水熱処理を行い、固液分離して、固形分をさらに爆砕・粉砕処理した後に糖化酵素で処理して、その中のヘミセルロース及びセルロースを糖化酵素反応により五炭糖及び六炭糖に変換し、次いでこれらの糖類をエタノール発酵、乳酸発酵又はプロパンジオール発酵させて、それぞれエタノール、乳酸又はプロパンジオールを得るとともに副生物として二酸化炭素を回収する工程と、
前記固液分離における液相分をクロマトグラフィーに供してリグニンを含む画分を分離し、該画分に含まれるリグニンを燃焼、炭化させて炭素材を得るとともに、メタン及び水からなる副生物を回収する工程と、
を含む方法において、
熱排気ガスを発生する工程に熱交換手段を設け、熱回収を行い、上記の工程で必要な熱エネルギー源として利用することを特徴とする木材からの工業用原料製造方法。 - 木材に対し水及び空気を供給してメタノール、エタノール、ギ酸メチル、プロパンジオール、乳酸、五炭糖、六炭糖、炭素材及びメタンを含む有用物質をゼロエミッション方式により製造する請求項3記載の木材からの工業用原料製造方法。
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