JP4748044B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の点火時期制御装置に関する。
内燃機関の燃費性能やエミッション性能を良好にしたり、ノッキングを防止したりする上では、点火時期の制御が重要である。そこで、従来では、機関運転状態に応じた最適な点火時期を予め調べて、マップとしてECU(Electronic Control Unit)に記憶しておき、そのマップに従って点火時期をフィードフォワード的に制御することが一般に行われている。
しかしながら、機関特性の経時変化や、運転環境の変化などに応じて、最適な点火時期も変化する。上記のようなマップ制御では、そのような変化に対応することができない。
一方、特開平9−317522号公報には、所定クランク角における目標燃焼割合を運転状態に応じて設定し、所定クランク角における実際の燃焼割合がその目標燃焼割合となるように、点火時期をフィードバック制御する装置が開示されている。
特開平9−317522号公報
上記公報に開示されたような点火時期フィードバック制御によれば、機関特性の経時変化や運転環境の変化などに起因する最適点火時期の変化に対応することが一応は可能である。しかしながら、点火時期フィードバック制御の場合には、目標とする燃焼状態と実際の燃焼状態との間にズレが生じた後でなければ、点火時期が修正されない。つまり、制御の遅れが避けられず、応答性が良くないという問題がある。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、点火時期を制御するに際して、機関特性の経時変化や運転環境の変化などに適切に対応することができるとともに、制御の遅れを抑制することのできる内燃機関の点火時期制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の点火時期制御装置であって、
内燃機関の運転状態に応じた点火時期を点火時期モデルに従って算出する点火時期フィードフォワード制御手段と、
燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
前記内燃機関の燃焼状態を目標とする燃焼状態に近づけるべく、前記点火時期フィードフォワード制御手段によって算出された点火時期を、前記燃焼状態検出手段により検出された燃焼状態に基づいて補正する点火時期フィードバック制御手段と、
前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期を学習することにより、前記点火時期モデルに従って算出される点火時期が、前記目標とする燃焼状態を実現する点火時期に近くなるように、前記点火時期モデルを更新する点火時期モデル学習手段と、
を備え、
前記点火時期モデル学習手段は、カルマンフィルタ理論を応用した計算手法によって前記点火時期モデルを更新することを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記燃焼状態検出手段は、前記内燃機関の所定クランク角度における燃焼割合を検出し、
前記点火時期フィードバック制御手段は、前記検出された燃焼割合が目標の数値に近づくように、点火時期を補正することを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期の、過去所定サイクル数に渡る共分散を算出する点火時期共分散算出手段を更に備え、
前記点火時期モデル学習手段は、前記点火時期共分散算出手段により算出された共分散を、カルマンフィルタ理論において要求される共分散として使用することを特徴とする。
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記点火時期共分散算出手段は、前記共分散を移動計算により算出することを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記内燃機関の運転状態を変数とする関数ベクトルをφk、前記点火時期モデルに相当するベクトルをθ^kとし、各記号の下付きの添え字kを内燃機関10のサイクル数を表すものとしたとき、前記点火時期フィードフォワード制御手段は、点火時期をφk Tθ^kとして算出し、
前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期をSAk、カルマンゲインをKk、共分散行列をPk、Dをベクトル、QおよびRをスカラーとしたとき、前記点火時期モデル学習手段が用いる点火時期モデル更新式は、次式
θ^k+1=θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k)
Kk=Pkφk(R+φk TPkφk)-1
Pk=Pk-1+DQDT−Pk-1φk-1(R+φk-1 TPk-1φk-1)-1φk-1 TPk-1 ・・・(I)
で表され、
上記(I)式中のベクトルDは、点火時期モデルθ^kの各要素のうちの最大値をmax(θ^k)としたとき、次式
D=θ^k/max(θ^k)
で表されることを特徴とする。
第1の発明によれば、点火時期モデルに従って点火時期を算出する点火時期フィードフォワード制御手段と、燃焼状態が目標燃焼状態に近づくように点火時期を補正する点火時期フィードバック制御手段とを備えた点火時期制御装置において、フィードバック補正後の点火時期を学習することにより、点火時期モデルに従って算出される点火時期が、目標燃焼状態を実現する点火時期に近くなるように、点火時期モデルを更新することができる。これにより、学習が進むにつれて、点火時期モデルが改善されていくので、点火時期モデルによって算出される点火時期が、目標燃焼状態を実現する点火時期に近くなっていく。つまり、フィードバック制御によらずとも、理想的な点火時期をフィードフォワード制御手段において算出することができるようになる。このため、第1の発明によれば、機関特性の経時変化や運転環境の変化に適応して、理想的な点火時期を実現することができるだけでなく、フィードバック制御に付き物の制御遅れを抑制することができる。よって、運転状態などが変化した場合であっても、点火時期を理想的な点火時期に迅速に制御することができる。
更に、第1の発明によれば、カルマンフィルタ理論を応用した計算手法によって点火時期モデルを更新することができる。本発明者らの知見によれば、フィードバック補正後の点火時期には、正規分布に精度良く一致するバラツキが内在する。第1の発明によれば、カルマンフィルタ理論を応用したことにより、フィードバック補正後の点火時期に内在する上記のバラツキを適切にフィルタリングした上で、フィードバック補正後の点火時期を学習することができる。このため、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキに悪影響を受けることなく、点火時期モデルの更新を適切に行うことができる。このため、点火時期モデルを円滑かつ確実に最適化することができる。
第2の発明によれば、内燃機関の所定クランク角度における燃焼割合を検出し、その検出された燃焼割合が目標の数値(例えば、効率が最良となる燃焼状態に対応する数値)に近づくように、点火時期フィードバック制御を行うことができる。このような場合のフィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキは、より高い精度で正規分布に一致する。このため、カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデルの更新処理との適合性がより優れたものとなり、点火時期モデルを特に高い精度で最適化することができる。
第3の発明によれば、点火時期モデルを更新するに際して、フィードバック補正後の点火時期の、過去所定サイクル数に渡る共分散を算出し、その算出された共分散を、カルマンフィルタ理論において要求される共分散として使用することができる。つまり、第3の発明によれば、フィードバック補正後の点火時期に実際に生じた共分散の値を、カルマンフィルタ理論において要求される共分散として使用する。このため、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキが運転条件などに応じて変化することを適切に反映させることができるので、共分散の値を固定値とする場合と比べて、点火時期モデルの学習をより高い精度で行うことができる。
第4の発明によれば、フィードバック補正後の点火時期の、過去所定サイクル数に渡る共分散を算出する処理を、移動計算によって行うことができる。このため、演算装置の負荷を軽減することができる。
第5の発明によれば、点火時期モデルに相当するベクトルをθ^kとし、この点火時期モデルθ^kの各要素のうちの最大値をmax(θ^k)としたとき、カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデル更新式の演算に際して定める必要があるベクトルDとして、次式
D=θ^k/max(θ^k)
が使用される。つまり、ベクトルDを、点火時期モデルθ^kに応じて定めることとする。カルマンフィルタ理論を応用する場合には、本来、点火時期モデルθ^kと同次元のベクトルDの各要素のそれぞれについてバラツキ度合いを適合して設定する必要ある。これに対し、第5の発明によれば、上記(I)式中のスカラーQの値のみを適合して設定すればよくなり、適合作業の簡略化が図れる。
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、火花点火式の内燃機関10を備えている。内燃機関10は、例えば車両の動力源として用いられるものとする。内燃機関10の気筒数や気筒配置は、特に限定されるものではない。
内燃機関10の気筒には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12には、吸入空気量Gaを検出するエアフローメータ16が配置されている。エアフローメータ16の下流には、スロットル弁18が配置されている。スロットル弁18の開度は、スロットルモータ20の作動によって調整される。スロットル弁18の近傍には、スロットル開度を検出するためのスロットルポジションセンサ22が配置されている。また、アクセルペダルの近傍には、アクセル開度を検出するアクセルポジションセンサ24が設けられている。
内燃機関10の気筒には、吸気ポート11内に燃料を噴射するための燃料インジェクタ26が配置されている。なお、内燃機関10は、図示のようなポート噴射式のものに限らず、燃料を筒内に直接噴射する筒内直接噴射式のものであってもよく、また、ポート噴射と筒内噴射を併用するものであってもよい。内燃機関10の気筒には、更に、吸気弁28、点火プラグ30、および排気弁32が設けられている。
内燃機関10のクランク軸36の近傍には、クランク角センサ38が取り付けられている。クランク角センサ38の出力によれば、クランク角や、機関回転数Neを検出することができる。
また、内燃機関10には、気筒内の圧力(燃焼圧)Pcを検出する筒内圧センサ40が設置されている。
本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50には、上述した各種のセンサおよびアクチュエータが接続されている。ECU50は、各センサの出力等に基づいて、点火時期、燃料噴射量、スロットル開度等を制御する。
図2は、ECU50が点火時期制御装置として機能する場合の機能ブロック図である。本実施形態では、点火時期がMBT(Minimum advance for the Best Torque)になるように制御する場合を例に説明する。MBTとは、トルクが最大になるような点火時期、つまり熱効率が最良となるような点火時期のことである。MBTは、内燃機関10の運転状態に応じて変化するだけでなく、機関特性の経時変化や、運転環境の変化などに応じて変化し得るものである。
図2に示すように、ECU50は、フィードフォワード制御器52、フィードバック制御器54、燃焼割合算出手段56、点火時期モデル学習手段58、および共分散算出手段60として、それぞれ機能することができる。
フィードフォワード制御器52は、内燃機関10の運転状態(機関回転数Neおよび充填効率KL)に基づき、点火時期モデルを用いて点火時期を算出するものである。本実施形態では、フィードフォワード制御器52は、内燃機関10のサイクル毎に、次式に従って点火時期SA0を算出する。
SA0=φTθ^ ・・・(1)
ただし、上記(1)式中、φは機関回転数Neおよび充填効率KLにより定まる関数ベクトル(関数行列)であり、θ^は点火時期モデルに相当する係数ベクトル(係数行列)である。以下、この係数ベクトルθ^を点火時期モデルと称する。また、上記(1)式を含め、本明細書において、上付きの添字Tは転置を意味する。
上記(1)式としては、具体的には例えば次式を用いることができる。この場合、関数ベクトルφおよび点火時期モデルθ^はそれぞれ下記のように表すことができる。
Figure 0004748044
なお、上記(2)式中のa,b,cおよびdは、それぞれ、所定の定数である。また、充填効率KLは、内燃機関10の負荷に相当する指標であり、吸入空気量Gaおよび機関回転数Ne、あるいは、吸気圧センサ(図示せず)で検出される吸気圧などに基づいて算出することができる。
上記(2)式に示す例では、点火時期モデルθ^は、θ0,θ1,θ2およびθ3の4つの要素からなる4次元ベクトルである。後述するように、点火時期モデルθ^は、点火時期モデル学習手段58により、内燃機関10のサイクル毎に更新される。
フィードバック制御器54は、フィードフォワード制御器52によって算出された点火時期SA0に対し、補正を施す。この補正後の点火時期を、以下「フィードバック補正後の点火時期」と称する。本システムでは、このフィードバック補正後の点火時期が、点火プラグ30による実際の点火時期とされる。すなわち、フィードバック補正後の点火時期において、点火プラグ30に電圧が印加される。
本実施形態のフィードバック制御器54は、以下のような方法により、点火時期をMBTに近づけるように補正する。
一般に、内燃機関10では、クランク角度が上死点後8度(以下、「8degATDC」と記す)のときの燃焼割合が50%であるような燃焼状態が、最も効率の良い燃焼状態である。よって、クランク角度が8degATDCのときの燃焼割合(以下「8degATDC燃焼割合」という)を50%とするような点火時期がMBTである、と判断することができる。そこで、内燃機関10の運転中に8degATDC燃焼割合を検出し、その8degATDC燃焼割合が50%に近づくように点火時期を補正すれば、点火時期をMBTに近づけることができる。
上記のようなフィードバック制御を実行するため、燃焼割合算出手段56は、筒内圧センサ40の出力に基づいて、内燃機関10のサイクル毎に、8degATDC燃焼割合を算出する。具体的には、燃焼割合算出手段56は、まず、筒内圧センサ40により検出される筒内圧Pcを所定クランク角度毎(例えば1degCA毎)にサンプリングし、次いで、その筒内圧Pcに基づいて所定クランク角度毎の熱発生率を算出する。続いて、その熱発生率を燃焼終了時まで積算することにより、総発熱量を算出する。また、その熱発生率を8degATDCまで積算することにより、8degATDCまでの発熱量を算出する。そして、その8degATDCまでの発熱量を上記総発熱量で除することにより、8degATDC燃焼割合を算出することができる。
フィードバック制御器54は、上記のようにして検出された8degATDC燃焼割合が50%に近づくように、点火時期を補正する。つまり、フィードバック制御器54は、検出された8degATDC燃焼割合が50%未満である場合には、点火時期を早くする方向に補正し、8degATDC燃焼割合が50%を超えている場合には、点火時期を遅くする方向に補正する。
このようなフィードバック制御器54によれば、フィードフォワード制御器52によって算出された点火時期SA0がMBTからずれている場合であっても、実際の点火時期をMBTに近づけていくことができる。
しかし、フィードバック制御には、当然ながら、遅れが存在する。つまり、ある運転状態から別の運転状態へ変化したことによってMBTが変化した場合には、フィードバック制御器54が点火時期を再びMBTに近づけるまでに時間が掛かる。よって、その間は燃費が悪化する。このことに鑑みれば、MBTとなる点火時期をフィードフォワード制御器52によって運転状態から直接に算出できるようにすることが理想である。
点火時期モデル学習手段58は、上記の理想を実現するべく、フィードバック補正後の点火時期、つまりMBTに近くなるように補正された後の点火時期と、運転状態(機関回転数Neおよび充填効率KL)との関係を学習して、点火時期モデルθ^を更新する処理を行う。
ところで、周知のように、内燃機関10には、サイクル毎の燃焼変動が存在する。すなわち、内燃機関10の運転状態が変化していなくても、気筒内での混合気の燃焼の様子(火炎伝播)は、サイクル毎に変化する。この主な原因は、筒内の空燃比や、筒内に残留している前サイクルの燃え残りのガス量、筒内の混合気のかき混ざり具合(乱れ)などが、サイクル毎にランダムに変化するためである。
上記のような燃焼変動の存在により、点火時期を含めた運転状態が同じであっても、実際の8degATDC燃焼割合は、サイクル毎に変動する。よって、サイクル毎に検出される8degATDC燃焼割合を50%に近づけるべく、フィードバック制御器54が点火時期を補正すると、その補正後の点火時期は、サイクル毎に変動することとなる。
つまり、点火時期モデル学習手段58にサイクル毎に入力されるフィードバック補正後の点火時期には、バラツキが存在しており、その平均値はMBTに精度良く一致しているが、平均値から外れた入力は、MBTに精度良く一致しているとは言えない。このため、点火時期モデル学習手段58にサイクル毎に入力されるフィードバック補正後の点火時期が何れも等しく正しいものであるとの立場で学習を行い、その結果に従って点火時期モデルθ^を更新してしまうことは、適切ではない。
そこで、本実施形態の点火時期モデル学習手段58では、カルマンフィルタ理論を応用した、点火時期モデルθ^の更新を行うこととしている。
カルマンフィルタ理論とは、一般には、システムの状態推定を行うために用いられるフィルタリング理論である。カルマンフィルタ理論によれば、システムや観測に雑音(白色雑音)が加わる場合に、その雑音を適切にフィルタリングすることができるので、最適な状態推定を行うことができる。
本発明者らの知見によれば、フィードバック補正後の点火時期に生ずるバラツキ(雑音)は、カルマンフィルタ理論によってフィルタリングすることのできる雑音と同種のものである。すなわち、フィードバック補正後の点火時期のバラツキは、前述したように、ランダムな燃焼変動に起因するものであるため、そのバラツキは、ほぼ正規分布に一致する。このため、カルマンフィルタ理論が応用された点火時期モデル学習手段58によれば、フィードバック補正後の点火時期を学習する上で、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキを適切にフィルタリングすることができる。よって、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキに悪影響を受けることなく、点火時期モデルθ^の更新を適切に行うことができる。
カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデルθ^の更新則は、次式で表される。
θ^k+1=θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k) ・・・(3)
上記(3)式を含め、本明細書で使用する記号において、下付きの添え字kは、内燃機関10のkサイクル目の値であることを示す。また、上記(3)式中、Kkはカルマンゲインであり、SAkはフィードバック補正後の点火時期である。
上記(3)式中、(SAk−φk Tθ^k)は、フィードバック補正後の点火時期SAkと、上記(1)式に従ってフィードフォワード制御器52が算出する点火時期φk Tθ^kとの誤差(以下「予測誤差」という)を表している。上記(3)式は、予測誤差にカルマンゲインKkを乗じたものを、現サイクルの点火時期モデルθ^kに足し合わせることにより、次サイクルの点火時期モデルθ^k+1が算出されることを表している。
以下、上記(3)式中のカルマンゲインKkの導出過程について説明する。
点火時期モデルθ^の真値(実際には知り得ない最適な点火時期モデル)をθとすると、この点火時期モデルの真値θは、内燃機関10の特性の経時変化や、運転環境の変化などに応じて、サイクル毎に変化するものと考えることができる。このことを次式で表す。
θk+1=θk+Dwk ・・・(4)
上記(4)式中、Dwkは、上述したような経時変化や環境変化などに起因する、点火時期モデルの真値θのサイクル毎の変化に相当する。このDwkのうち、Dはθ^と同次元のベクトルであり、wkは変数(スカラー)である。
また、点火時期モデルの真値θによって算出されるべき点火時期(実際には知り得ない最適な点火時期)φk Tθkと、フィードバック補正後の点火時期SAkとの間に存在する誤差をnkとすると、次式が定義される。
SAk=φk Tθk+nk ・・・(5)
以上より、点火時期モデルの真値θと、実際の点火時期モデルθ^との誤差(以下「モデル誤差」と称する)θ~は、以下のように表される。
θ~k+1=θk+1−θ^k+1
=θk+Dwk−{θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k)}
=θ~k+Dwk−Kkk Tθk+nk−φk Tθ^k)
=(I−Kkφk T)θ~k+Dwk−Kknk ・・・(6)
なお、上記(6)式中の式変形には、上記(3)、(4)および(5)式を用いた。
本発明者らの知見によれば、点火時期モデルの真値θの変化Dwkは、ランダムウォーク(酔歩)であると考えることができる。また、上記(5)式における誤差nkは、前述したような燃焼変動や、測定雑音などに起因するランダムな外乱であると考えられる。そこで、wk,nkは、平均値0、共分散Q,Rの独立な正規分布を持つものとする。つまり、次式のように定義する。
E[wk Twk]=Q ・・・(7)
E[nk Tnk]=R ・・・(8)
なお、上記(7)および(8)式を含め、本明細書では、E[]は平均値(期待値)を表すものとする。
カルマンフィルタ理論においては、モデル誤差θ~kの共分散行列(以下「モデル誤差共分散行列」という)Pkが最小となるように、カルマンゲインKkを定める。モデル誤差共分散行列Pkは、次式で表される。
Pk=E[θ~kθ~k T] ・・・(9)
上記(6)、(7)および(8)式を用いると、モデル誤差共分散行列Pk+1は、以下のように計算することができる。
Pk+1=E[θ~k+1θ~k+1 T]
=E[{θ~k+Dwk−Kk(nk+φk Tθ~k)}{θ~k+Dwk−Kk(nk+φk Tθ~k)}T]
=E[θ~kθ~k T]+DQDT−E[θ~kθ~k TkKk T−Kkφk TE[θ~kθ~k T]
+E[Kk(nk+φk Tθ~k)(nk+θ~k Tφk)Kk T]
=E[θ~kθ~k T]+DQDT−E[θ~kθ~k TkKk T−Kkφk TE[θ~kθ~k T]
−Kk(E[nknk]+φk TE[θ~kθ~k Tk)Kk T
=Pk+DQDT−PkφkKk T−Kkφk TPk−Kk(R+φk TPkφk)Kk T
=Pk+DQDT−Pkφk(R+φk TPkφk)-1φk TPk
+{Kk−Pkφk(R+φk TPkφk)-1}(R+φk TPkφk){Kk T−(R+φk TPkφk)-1φk TPk}
・・・(10)
上記(10)式より、モデル誤差共分散行列Pk+1を最小とするには、カルマンゲインKkは、次式のように定めればよいことが分かる。
Kk=Pkφk(R+φk TPkφk)-1 ・・・(11)
そして、その場合、モデル誤差共分散行列Pk+1は、次式で表される。
Pk+1=Pk+DQDT−Pkφk(R+φk TPkφk)-1φk TPk ・・・(12)
上記(12)式は、次式のように変形することができる。
Pk=Pk-1+DQDT−Pk-1φk-1(R+φk-1 TPk-1φk-1)-1φk-1 TPk-1 ・・・(13)
上記(13)式を用いて、上記(11)式中のPkを算出することができる。
上記(11)式および(13)式に示されるように、カルマンゲインKkを求めるには、wkの共分散Qと、nkの共分散Rを定める必要がある。
(共分散Q)
wkの共分散Qは、上記(4)式の定義から分かるように、点火時期モデルの真値θのバラツキ度合いと相関する値である。カルマンフィルタ理論を応用した上述の点火時期モデル更新手法において、共分散Qを比較的小さい値に設定することは、点火時期モデルの真値θのバラツキが比較的小さいと想定することに相当する。この場合には、予測誤差が生じたとき、その予測誤差は実際の点火時期モデルθ^が点火時期モデルの真値θから乖離していることが主な原因となって生じたものとみなされる。このため、点火時期モデルθ^を大きく変化させるように更新が行われる。よって、この場合には、経時変化、環境変化等に対する応答性(感度)が高くなり、その一方で、点火時期モデルθ^が振動し易くなる傾向がある。
これに対し、共分散Qを比較的大きい値に設定することは、点火時期モデルの真値θのバラツキが比較的大きいと想定することに相当する。この場合には、予測誤差が生じたとき、その予測誤差は点火時期モデルの真値θに内在するバラツキが主な原因となって生じたものとみなされる。このため、点火時期モデルθ^を少しだけ変化させるように更新が行われる。よって、この場合には、経時変化、環境変化等に対する応答性(感度)はやや低下するが、点火時期モデルθ^が振動しにくくなる。
上述したように、本実施形態では、共分散Qの大きさを調整することにより、学習の感度を調整することができる。共分散Qの具体的な値は、特に限定されないが、例えば0.001〜0.01程度に設定することが好ましい。
(共分散R)
nkの共分散Rは、上記(5)式の定義から分かるように、フィードバック補正後の点火時期SAkのバラツキ度合いを表す値である。この共分散Rの値は、適当な値を予め設定しておいてもよいが、本実施形態では、フィードバック補正後の点火時期SAkに実際に生じている共分散を内燃機関10のサイクル毎に逐次求め、その値を共分散Rとして使用することとした。この処理は、共分散算出手段60によって実行される。以下、共分散算出手段60の具体的処理について説明する。
共分散算出手段60は、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を算出する。ここで、Nは、フィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を十分な精度で算出することのできるようなサイクル数となるように、予め設定されている。
一般に、変数xkの過去N個分についての共分散Vkは、次式により算出することができる。
Figure 0004748044
しかしながら、共分散算出手段60(ECU50)において、上記(14)式と同様の演算を内燃機関10のサイクル毎に行うこととすると、演算負荷が大きくなってしまう。そこで、本実施形態では、演算負荷を軽減するべく、以下に説明するような移動計算の手法によって、フィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を算出することとした。図3は、移動計算の手順を示すルーチンのフローチャートである。図3に示すルーチンは、内燃機関10のサイクル毎に実行される。
ここで、図3に示すルーチンの概要について説明する。まず、図3に示すルーチンでは、次式を用いて共分散Vkを算出する。
Vk={1/(N-1)}{Σx2−(1/N)(Σx)2} ・・・(15)
図3に示すルーチンでは、新しい入力utが加わった場合に、その新しい入力utを含めた過去N個分の変数xkについての共分散Vkを求めるために上記(15)式を再計算するに際して、その新しい入力utおよびその2乗を上記Σx2およびΣxにそれぞれ加えると共に、最も古い変数xおよびその2乗を上記Σx2およびΣxからそれぞれ差し引くようにする。以下、より具体的に説明する。
共分散算出手段60は、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkを記憶するための記憶領域として、0番から(N-1)番までのバッファXを有している。以下、j番のバッファXをX(j)と表記する。図3に示すルーチンによれば、まず、バッファXの番号を指定するためのjの値がインクリメントされる(ステップ100)。次いで、jが、最も大きいバッファ番号である(N-1)を超えているか否かが判別される(ステップ102)。そして、jが(N-1)以下であると判別された場合には、jの値はそのままとされる。一方、jが(N-1)を超えていると判別された場合には、jを最初のバッファ番号に戻すため、jに0が代入される(ステップ104)。
上記のバッファ番号jで指定されるX(j)は、バッファXに現在記憶されているフィードバック補正後の点火時期SAkのうちで最古のもの、つまりNサイクル前のフィードバック補正後の点火時期SAk-Nに相当する。上記ステップ104の処理に続いて、そのSAk-Nに相当するバッファX(j)が変数xk-Nに代入され、その変数xk-Nの2乗(xk-N)2が変数xk-N 2に代入される(ステップ106)。
次いで、バッファX(j)に、新しい入力ut(ここでは、最新のフィードバック補正後の点火時期SAk)が代入される(ステップ108)。これにより、バッファX(j)は、最新のフィードバック補正後の点火時期SAkで置き換えられたことになる。続いて、そのSAに相当するバッファX(j)が変数xkに代入され、その変数xkの2乗(xk)2が変数xk 2に代入される(ステップ110)。
次いで、上記ステップ106で算出されたxk-Nおよびxk-N 2と、上記ステップ110で算出されたxkおよびxk 2とを用いて、ΣxおよびΣx2がそれぞれ次式によって更新される(ステップ112)。なお、Σxはフィードバック補正後の点火時期SAkの過去Nサイクル分の総和に相当し、Σx2はフィードバック補正後の点火時期SAkの2乗の過去Nサイクル分の総和に相当する。
Σx=Σx−xk-N+xk ・・・(16)
Σx2=Σx2−xk-N 2+xk 2 ・・・(17)
上記(16)式によれば、ΣxからNサイクル前のフィードバック補正後の点火時期SAk-Nを差し引き、最新のフィードバック補正後の点火時期SAkを加えることにより、Σxを更新することができる。また、上記(17)式によれば、Σx2からNサイクル前のフィードバック補正後の点火時期SAk-Nの2乗を差し引き、最新のフィードバック補正後の点火時期SAkの2乗を加えることにより、Σx2を更新することができる。
そして、上記ステップ112で算出されたΣxおよびΣx2を上記(15)式に代入することにより、共分散Vtが算出される(ステップ114)。このVtが、新たに計算された、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散に相当する。
以上説明したような移動計算の手法によれば、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を算出するに際して、前サイクルでの計算に用いた値に対して、新たに算入すべき最新の入力データと、除外すべき最古の入力データとの収支を計算するだけで済む。このため、共分散算出手段60の演算負荷を大幅に低減することができる。
以下、点火時期モデル学習手段58が上記(3)式の更新則に従って点火時期モデルθ^を更新する際の具体的処理について説明する。図4は、本実施形態において点火時期モデル学習手段58としてのECU50が実行するルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、内燃機関10のサイクル毎に実行される。
図4に示すルーチンによれば、まず、機関回転数Neおよび充填効率KLに基づいて、関数ベクトルφkが算出される(ステップ120)。関数ベクトルφの各要素は、上記(2)式中に例示されているように、所定の関数で構成されている。その関数の変数に機関回転数Neおよび充填効率KLの値を代入することにより、関数ベクトルφkが算出される。
続いて、上記(13)式に基づいて、モデル誤差共分散行列Pkが算出される(ステップ122)。このステップ122において、上記(13)式中のφk-1およびPk-1には、それぞれ、前サイクルで算出された値が代入される。また、前述したように、wkの共分散Qには、予め設定されている値が代入される。また、nkの共分散Rには、共分散算出手段60によって算出された、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散の値が代入される。
また、上記ステップ122において、上記(13)式中のベクトルDとしては、次式で定めるベクトルが代入される。
D=θ^k/max(θ^k) ・・・(18)
ただし、上記(18)式中、max(θ^k)は、点火時期モデルとしてのベクトルθ^kの各要素のうちの最大値(スカラー)を表すものとする。例えば、θ^kが、図2に例示するような4次元ベクトルである場合には、θ0,θ1,θ2およびθ3のうちの最大値がmax(θ^k)に相当する。
このように、本実施形態では、ベクトルDを、現サイクルの点火時期モデルθ^kに応じて定まるベクトルとしている。
上記ステップ122の処理に続いて、上記(11)式に基づいて、カルマンゲインKkが算出される(ステップ124)。この場合、上記ステップ120で算出された関数ベクトルφkと、共分散算出手段60によって算出された共分散Rと、上記ステップ122で算出されたモデル誤差共分散行列Pkとが、上記(11)式にそれぞれ代入される。
最後に、上記(3)式の更新則に基づいて、現サイクルの点火時期モデルθ^kが、次のサイクルの点火時期モデルθ^k+1へと更新される(ステップ126)。この場合、現サイクルのフィードバック補正後の点火時期SAkと、現サイクルの点火時期モデルθ^kと、上記ステップ120で算出された関数ベクトルφkと、上記ステップ124で算出されたカルマンゲインKkとが、上記(3)式にそれぞれ代入される。
以上説明したように、本実施形態によれば、フィードバック補正後の点火時期を学習して、点火時期モデルθ^を更新していくことができる。このため、学習が進むにつれて、点火時期モデルθ^が改善されていき、点火時期モデルθ^によって算出される点火時期が以前よりもMBTに近くなっていく。つまり、フィードバック制御器54のフィードバック制御によらずとも、MBTに近い点火時期をフィードフォワード制御器52において算出することができるようになる。このため、フィードバック制御に付き物の制御遅れの問題を解消することができる。よって、機関特性の経時変化や運転環境の変化に伴うMBTの変化に適切に対応できるだけでなく、運転状態の変化に伴うMBTの変化に応じて、点火時期を迅速にMBTに追従させることができる。その結果、優れた燃費性能が得られる。
また、本実施形態によれば、カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデルθ^の更新を行うことができる。前述したように、本発明者らの知見によれば、フィードバック補正後の点火時期には、正規分布に精度良く一致するバラツキが内在する。本実施形態によれば、カルマンフィルタ理論を応用したことにより、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキを適切にフィルタリングした上で、フィードバック補正後の点火時期を学習することができる。このため、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキに悪影響を受けることなく、点火時期モデルθ^の更新を適切に行うことができる。その結果、点火時期モデルθ^をより円滑かつ確実に最適化することができる。
また、本実施形態によれば、点火時期モデル学習手段58による学習を進めるに従い、点火時期モデルθ^を最適な形へと近づけていくことができる。このため、工場出荷時の点火時期モデルθ^には、それほど高い精度が必要とされない。よって、開発段階での適合工数を削減することができ、開発コストや開発期間を縮小することができる。
ところで、フィードバック補正後の点火時期SAkに生ずる共分散(バラツキ度合い)は、運転条件によって変化する。一方、本実施形態では、前述したように、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkに実際に生じた共分散を逐次算出し、その値を、カルマンフィルタ理論に基づく点火時期モデルθ^の更新処理に必要な共分散Rとして使用している。このため、フィードバック補正後の点火時期SAkに生ずる共分散が運転条件によって変化することを点火時期モデルθ^の更新処理に適切に反映することができる。よって、点火時期モデルθ^の学習をより高い精度で行うことができる。
また、本実施形態では、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を算出する処理を、図3のルーチンに示すような移動計算の手法によって算出することとしている。このため、ECU50に大きな演算負荷を掛けることなく、その算出処理を行うことができる。
また、前述したように、本実施形態では、カルマンフィルタ理論に基づく点火時期モデルθ^の更新処理に必要なベクトルDとして、上記(18)式で定めるベクトルθ^k/max(θ^k)を使用することとしている。これに対し、カルマンフィルタ理論を応用する場合においては、本来、学習の感度(精度)を設定するに際して、点火時期モデルθ^kと同数の要素を有するベクトルDの各要素のそれぞれについて、バラツキ度合いを適合して設定する必要がある。これに対し、本実施形態では、共分散Qの値のみを適合して設定すればよい。つまり、適合すべき値が、本来は点火時期モデルθ^の要素数と同数だけ存在するところを、一つだけに簡略化することができる。このため、学習の感度に関する適合作業を極めて容易に行うことができる。
なお、上記ベクトルθ^k/max(θ^k)は、その定義から明らかなように、最大の要素の値が1であって、各要素間の比率が点火時期モデルθ^kと同じベクトルである。このようなベクトルθ^k/max(θ^k)をベクトルDとして用いることは、点火時期モデルの真値θに生ずる変化の各要素間の比率が、点火時期モデルθ^kの各要素間の比率と同じであると仮定することに相当する。本発明者らの知見によれば、このような仮定は現実と精度良く一致していることが認められる。よって、本実施形態では、ベクトルθ^k/max(θ^k)をベクトルDとして用いることにより、学習精度の低下を招くことなく、上記のような簡略化を図ることができる。
なお、通常、カルマンフィルタ理論は、何らかの物理現象に対応する物理モデルを対象として適用される。この場合、物理モデルを表すベクトルの各要素は、それぞれが何らかの物理現象を表しており、要素毎に固有のバラツキ度合いを示すのが普通である。このため、通常は上記のような簡略化を図ることはできない。これに対し、本発明では、物理モデルが対象ではなく、点火時期マップを近似した点火時期モデルθ^を対象としているので、上記のような簡略化を図ることができる。
ところで、上述した実施の形態1では、フィードバック制御器54が、点火時期をMBTに近づけるべくフィードバック制御を行う場合を例に説明したが、本発明では、点火時期フィードバック制御の内容はこれに限定されるものではない。すなわち、フィードバック制御器54が行う点火時期フィードバック制御は、目標とする燃焼状態が得られるように点火時期をフィードバック制御するものであれば、いかなるものであっても良い。例えば、フィードバック制御器54は、内燃機関10に生ずるノッキングを、公知のノックセンサ、あるいは筒内圧センサ、イオンセンサなどによって検出し、ノッキングが生じない範囲で点火時期をなるべく進角させるようにするノッキングフィードバック制御を行うものでもよい。
また、上述した実施の形態1においては、フィードフォワード制御器52が前記第1の発明における「点火時期フィードフォワード制御手段」に、燃焼割合算出手段56が前記第1および第2の発明における「燃焼状態検出手段」に、フィードバック制御器54が前記第1の発明における「点火時期フィードバック制御手段」に、点火時期モデル学習手段58が前記第1および第5の発明における「点火時期モデル学習手段」に、共分散算出手段60が前記第1および第4の発明における「点火時期共分散算出手段」に、それぞれ相当している。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 本発明の実施の形態1においてECUが点火時期制御装置として機能する場合の機能ブロック図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
16 エアフローメータ
18 スロットル弁
26 燃料インジェクタ
30 点火プラグ
40 筒内圧センサ
50 ECU
52 フィードフォワード制御器
54 フィードバック制御器
56 燃焼割合算出手段
58 点火時期モデル学習手段
60 共分散算出手段

Claims (5)

  1. 内燃機関の運転状態に応じた点火時期を点火時期モデルに従って算出する点火時期フィードフォワード制御手段と、
    燃焼状態を検出する燃焼状態検出手段と、
    前記内燃機関の燃焼状態を目標とする燃焼状態に近づけるべく、前記点火時期フィードフォワード制御手段によって算出された点火時期を、前記燃焼状態検出手段により検出された燃焼状態に基づいて補正する点火時期フィードバック制御手段と、
    前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期を学習することにより、前記点火時期モデルに従って算出される点火時期が、前記目標とする燃焼状態を実現する点火時期に近くなるように、前記点火時期モデルを更新する点火時期モデル学習手段と、
    を備え、
    前記点火時期モデル学習手段は、カルマンフィルタ理論を応用した計算手法によって前記点火時期モデルを更新することを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  2. 前記燃焼状態検出手段は、前記内燃機関の所定クランク角度における燃焼割合を検出し、
    前記点火時期フィードバック制御手段は、前記検出された燃焼割合が目標の数値に近づくように、点火時期を補正することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  3. 前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期の、過去所定サイクル数に渡る共分散を算出する点火時期共分散算出手段を更に備え、
    前記点火時期モデル学習手段は、前記点火時期共分散算出手段により算出された共分散を、カルマンフィルタ理論において要求される共分散として使用することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  4. 前記点火時期共分散算出手段は、前記共分散を移動計算により算出することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の点火時期制御装置。
  5. 前記内燃機関の運転状態を変数とする関数ベクトルをφk、前記点火時期モデルに相当するベクトルをθ^kとし、各記号の下付きの添え字kを前記内燃機関のサイクル数を表すものとしたとき、前記点火時期フィードフォワード制御手段は、点火時期をφk Tθ^kとして算出し、
    前記点火時期フィードバック制御手段による補正後の点火時期をSAk、カルマンゲインをKk、共分散行列をPk、Dをベクトル、QおよびRをスカラーとしたとき、前記点火時期モデル学習手段が用いる点火時期モデル更新式は、次式
    θ^k+1=θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k)
    Kk=Pkφk(R+φk TPkφk)-1
    Pk=Pk-1+DQDT−Pk-1φk-1(R+φk-1 TPk-1φk-1)-1φk-1 TPk-1 ・・・(I)
    で表され、
    上記(I)式中のベクトルDは、点火時期モデルθ^kの各要素のうちの最大値をmax(θ^k)としたとき、次式
    D=θ^k/max(θ^k)
    で表されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の点火時期制御装置。
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