JP2008144743A - 車両用情報報知装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、運転者に経済走行を適切に促すことができ、燃費改善に効果的な車両用情報報知装置を提供することを目的とする。
【解決手段】運転席のインストルメントパネルに、燃焼状態インジケータ80を設ける。内燃機関の燃焼状態がMBT燃焼状態にある場合には、複数の効率表示ランプ86のうち、中央の濃緑色のランプが点灯する。燃焼状態がMBT燃焼状態から乖離するほど、右あるいは左側の薄赤色の効率表示ランプ86が点灯する。運転者が、中央の濃緑色の効率表示ランプ86が点灯する状態をなるべく維持するようにアクセルペダル等を操作することにより、燃費が改善される。
【選択図】図7

Description

本発明は、車両用情報報知装置に関する。
運転者に対し、急激なアクセルワークを控えさせ、燃費の良い経済走行を促すための情報、例えば瞬間燃費などをインストルメントパネルに表示する技術が従来より知られている。しかしながら、瞬間燃費は、車速などの走行条件によって大きく異なる。例えば、郊外など、中速域でほぼ一定速度で走行できる場合には瞬間燃費は良好であるが、ストップ&ゴーの多い市街地を走行していたり、登坂路を走行していたりすると、瞬間燃費は悪化する。よって、郊外を走行している時には、多少ラフなアクセルワークをしても、全般的には良好な瞬間燃費が表示されるのに対し、市街地や登坂路を走行している時には、穏やかなアクセルワークをしても、全般的には悪い瞬間燃費が表示されてしまう。つまり、瞬間燃費の値を見ても、経済走行ができているのかいないのかは分かりにくい。このため、瞬間燃費を表示しても、運転者に経済走行を促す動機付けにはなりにくいという問題がある。
一方、特開2005−289183号公報には、経済走行を行うためのアシスト情報をインストルメントパネルに表示する車両用表示装置が開示されている。この装置では、アシスト情報として、エンジン回転数、アクセル開度、車速、シフトポジションに関して、経済走行の観点からどちら側に外れているか、どの程度外れているか、どのようにすれば経済走行に近づくか、のいずれかの情報を表示するとされている。
特開2005−289183号公報 特開平8−334052号公報 特開2005−351147号公報
しかしながら、運転者が経済走行を心がけようと思っても、上記アシスト情報の指示を必ずしも守ることができるとは限らない。例えば、オートマチックトランスミッション車では、エンジン回転数を運転者が自由に選ぶことは容易ではない。また、アクセル開度や車速についても、走行条件によっては、アクセルをある程度大きく踏んだり、高速で走行したりすることが必要になる場合がある。このため、上記従来の装置では、運転者に経済走行を促して実際に燃費を改善する上で、必ずしも十分な効果が得られるものではなかった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、運転者に経済走行を適切に促すことができ、燃費改善に効果的な車両用情報報知装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両用情報報知装置であって、
内燃機関の燃焼状態が、点火時期がMBT付近にあるMBT燃焼状態になっているか否かを検出するMBT燃焼検出手段と、
前記内燃機関の燃焼状態が前記MBT燃焼状態になっているか否かに関する情報を運転者に報知する燃焼状態報知手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記MBT燃焼検出手段は、所定クランク角位置における燃焼割合を算出する燃焼割合算出手段を含み、前記算出された燃焼割合が目標範囲に入っている場合を前記MBT燃焼状態であるものと判定することを特徴とする。
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記燃焼割合算出手段は、筒内圧をP、筒内容積をV、筒内ガスの比熱比をκとしたとき、前記所定クランク角位置と、燃焼開始前のクランク角位置と、燃焼終了後のクランク角位置との3点におけるPVκの値に基づいて、前記燃焼割合を算出することを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記燃焼状態報知手段は、前記情報を視覚的に報知する表示手段を含むことを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記MBT燃焼検出手段は、前記MBT燃焼状態と現在の燃焼状態との乖離度合いを検出可能であり、
前記燃焼状態報知手段は、前記乖離度合いが大きい場合ほど、非効率である旨を運転者に報知することを特徴とする。
第1の発明によれば、内燃機関の燃焼状態がMBT燃焼状態になっているか否かを検出し、それに関する情報を運転者に報知することができる。これにより、運転者は、現在の燃焼状態が高効率なMBT燃焼状態になっているか否かを知ることができる。つまり、車速などの走行条件によらない、普遍的な経済運転の指標を知ることができる。よって、運転者が容易且つ適切に経済走行を行うことができるようになるので、燃費を効果的に改善することができる。
第2の発明によれば、所定クランク角位置における燃焼割合を算出し、その燃焼割合が目標範囲に入っている場合をMBT燃焼状態であるものと判定することができる。これにより、MBT燃焼状態を精度良く検出することができる。
第3の発明によれば、筒内圧をP、筒内容積をV、筒内ガスの比熱比をκとしたとき、燃焼割合を求めたいクランク角位置と、燃焼開始前のクランク角位置と、燃焼終了後のクランク角位置との3点におけるPVκの値に基づいて、燃焼割合を算出することができる。これにより、ECUの演算負荷を大幅に軽減しつつ、燃焼割合を精度良く求めることができる。
第4の発明によれば、燃焼状態がMBT燃焼状態になっているか否かに関する情報を運転者に対し視覚的に報知することができる。このため、運転者に上記情報をより分かり易く提示することができる。
第5の発明によれば、MBT燃焼状態と現在の燃焼状態との乖離度合いを検出し、その乖離度合いが大きい場合ほど、非効率である旨を運転者に報知することができる。これにより、現在の内燃機関の効率をより正確に運転者に知らせることができる。よって、運転者は、より適切な経済走行を行うことができ、燃費を更に改善することができる。
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、火花点火式の内燃機関10を備えている。この内燃機関10は、自動車(車両)の動力源として用いられているものである。内燃機関10の気筒数や気筒配置は、特に限定されるものではない。
内燃機関10の気筒には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12には、吸入空気量Gaを検出するエアフローメータ16が配置されている。エアフローメータ16の下流には、スロットル弁18が配置されている。スロットル弁18の開度は、スロットルモータ20の作動によって調整される。スロットル弁18の近傍には、スロットル開度を検出するためのスロットルポジションセンサ22が配置されている。また、アクセルペダルの近傍には、アクセル開度を検出するアクセルポジションセンサ24が設けられている。
内燃機関10の気筒には、吸気ポート11内に燃料を噴射するための燃料インジェクタ26が配置されている。なお、内燃機関10は、図示のようなポート噴射式のものに限らず、燃料を筒内に直接噴射する筒内直接噴射式のものであってもよく、また、ポート噴射と筒内噴射を併用するものであってもよい。内燃機関10の気筒には、更に、吸気弁28、点火プラグ30、および排気弁32が設けられている。
内燃機関10のクランク軸36の近傍には、クランク角センサ38が取り付けられている。クランク角センサ38の出力によれば、クランク角や、機関回転数NEを検出することができる。
また、内燃機関10には、気筒内の圧力(燃焼圧)Pcを検出する筒内圧センサ40が設置されている。
本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50には、上述した各種のセンサおよびアクチュエータが接続されている。ECU50は、各センサの出力等に基づいて、点火時期、燃料噴射量、スロットル開度等を制御する。
図2は、ECU50の機能の一部を示す機能ブロック図である。図2に示すように、ECU50は、内燃機関10の点火時期をサイクル毎にリアルタイムに制御するリアルタイム制御部52と、後述する点火時期モデルパラメータベクトルの、比較的長期的な視点での経時変化を検出する経時変化検出部54としての機能を備えている。
(リアルタイム制御部52)
以下、まず、リアルタイム制御部52について説明する。図2に示すリアルタイム制御部52は、点火時期がMBT(Minimum advance for the Best Torque)になるように制御するものである。MBTとは、機関運転条件のうちで点火時期のみを変化させた場合に、トルクが最大になるような点火時期、つまり熱効率が最良となるような点火時期のことである。MBTは、機関回転数NEや機関負荷に応じて変化するだけでなく、内燃機関10の経時変化や、運転環境の変化などに応じて変化する。
図2に示すように、リアルタイム制御部52には、フィードフォワード制御器56と、フィードバック制御器58と、燃焼割合算出手段60と、点火時期モデル学習手段62と、共分散算出手段64とが含まれている。
フィードフォワード制御器56は、内燃機関10の運転状態(機関回転数NEおよび充填効率KL)に応じて、内燃機関10のサイクル毎に、次式で表される点火時期モデルに従って点火時期SA0を算出する。
SA0=φTθ^ ・・・(1)
ただし、上記(1)式中、φは機関回転数NEおよび充填効率KLにより定まる関数ベクトルであり、θ^は点火時期モデルの特性を左右するパラメータからなるベクトルである。以下、このベクトルθ^を点火時期モデルパラメータベクトルと称する。また、上記(1)式を含め、本明細書において、上付きの添字Tは転置を意味する。
上記(1)式としては、具体的には例えば次式を用いることができる。この場合、関数ベクトルφおよび点火時期モデルパラメータベクトルθ^はそれぞれ下記のように表すことができる。
Figure 2008144743
なお、上記(2)式中のa,b,cおよびdは、それぞれ、所定の定数である。また、充填効率KLは、内燃機関10の負荷に相当する指標であり、エアフローメータ16により検出される吸入空気量Gaと機関回転数NEとに基づいて、あるいは、吸気圧センサ(図示せず)で検出される吸気圧に基づいて、算出することができる。
上記(2)式に示す例では、点火時期モデルパラメータベクトルθ^は、θ0,θ1,θ2およびθ3の4つの要素(パラメータ)からなる4次元ベクトルである。後述するように、この点火時期モデルパラメータベクトルθ^は、点火時期モデル学習手段62により、内燃機関10のサイクル毎に更新される。
フィードバック制御器58は、フィードフォワード制御器56によって算出された点火時期SA0に対し、補正を施す。この補正後の点火時期を、以下「フィードバック補正後の点火時期」と称する。本システムでは、このフィードバック補正後の点火時期が、点火プラグ30による実際の点火時期とされる。すなわち、フィードバック補正後の点火時期において、点火プラグ30に電圧が印加される。
本実施形態のフィードバック制御器58は、以下のような方法により、点火時期をMBTに近づけるように補正する。
内燃機関10では、クランク角度が上死点後8度(以下、「8degATDC」と記す)のときの燃焼割合が50%であるような燃焼状態が、最も効率の良い燃焼状態であることが経験的に知られている。よって、クランク角度が8degATDCのときの燃焼割合(以下「8degATDC燃焼割合」という)を50%とするような点火時期がMBTである、と判断することができる。そこで、内燃機関10の運転中に8degATDC燃焼割合を検出し、その8degATDC燃焼割合が50%に近づくように点火時期を補正すれば、点火時期をMBTに近づけることができる。
上記のようなフィードバック制御を実現するため、燃焼割合算出手段60は、筒内圧センサ40の出力に基づいて、内燃機関10のサイクル毎に、8degATDC燃焼割合を算出する。以下、その算出方法について説明する。
燃焼割合算出手段60は、まず、気筒内の熱発生率を算出する。気筒内の熱発生率は、熱力学的に、次式により算出することができる。
Figure 2008144743
上記(3)式中、qは気筒内の発熱量であり、Pは筒内圧であり、Vは筒内容積であり、ψはクランク角度であり、κは比熱比である。筒内容積Vおよびその変化率dV/dψは、クランク角度ψの関数であり、その関数はボア、クランク半径、コンロッド長などに応じて幾何学的に定まるものである。比熱比κは、燃焼ガスの組成などに基づいて定まる値であるが、例えばκ=1.32と簡単化してもよい。
燃焼割合算出手段60は、筒内圧センサ40により検出される筒内圧Pcを所定クランク角度毎(例えば1degCA毎)にサンプリングする。次いで、そのサンプリングしたデータから求まるPおよびdP/dψを上記(3)式に代入することにより、熱発生率dq/dψをクランク角度毎に算出する。この熱発生率dq/dψを燃焼終了時まで積算することにより、総発熱量が算出される。また、熱発生率dq/dψを8degATDCまで積算することにより、8degATDCまでの発熱量が算出される。そして、その8degATDCまでの発熱量を上記総発熱量で除することにより、8degATDC燃焼割合を算出することができる。
燃焼割合算出手段60では、上記の方法に代えて、特開2005−351147号公報に記載された方法、すなわち次のような方法によって、8degATDC燃焼割合を算出するようにしてもよい。
筒内圧Pと筒内容積Vのκ乗との積PVκと、発熱量qとは、相関することが知られている。このことを利用すると、クランク角度ψにおけるPをP(ψ)、クランク角度ψにおけるVκをVκ(ψ)、燃焼開始前の所定のクランク角度をψ1を、燃焼終了後の所定のクランク角度をψ2としたとき、クランク角度ψ0における燃焼割合(MFB)は、近似的に次式で算出することができる。
Figure 2008144743
上記(4)式においてψ0を8degATDCと置くことにより、8degATDC燃焼割合を算出することができる。つまり、この場合には、ψ1,8degATDC,およびψ2の3点のクランク角度において筒内圧Pcを検出するだけで、8degATDC燃焼割合を算出することができる。よって、ECU50の演算負荷を大幅に軽減することができる。
なお、燃焼割合を気筒毎に算出できる場合、つまり各気筒に筒内圧センサ40が設けられている場合には、燃焼割合算出手段60は、気筒毎に燃焼割合を算出し、それらを平均した値を、内燃機関10を代表する燃焼割合として算出することが好ましい。また、特定の気筒だけに筒内圧センサ40が設けられている場合には、その気筒の燃焼割合を、内燃機関10を代表する燃焼割合とすればよい。
フィードバック制御器58は、上記のようにして検出された8degATDC燃焼割合が50%に近づくように、点火時期を補正する。つまり、フィードバック制御器58は、8degATDC燃焼割合の目標値である50%(0.5)と、燃焼割合算出手段60により算出された実際の8degATDC燃焼割合との偏差に基づいて、フィードバック補正量dSAを算出する。そして、そのフィードバック補正量dSAが、フィードフォワード制御器56によって算出された点火時期SA0に足し合わされることにより、点火時期が補正される。すなわち、検出された8degATDC燃焼割合が50%未満である場合には、点火時期が早くする方向に補正され、検出された8degATDC燃焼割合が50%を超えている場合には、点火時期が遅くなる方向に補正される。
このようなフィードバック制御器58によれば、フィードフォワード制御器56によって算出された点火時期SA0がMBTからずれている場合であっても、実際の点火時期をMBTに近づけていくことができる。
しかし、フィードバック制御には、当然ながら、遅れが存在する。つまり、ある運転状態から別の運転状態へ変化したことによってMBTが変化した場合には、フィードバック制御器58が点火時期を再びMBTに近づけるまでには時間が掛かる。よって、その間は燃費が悪化する。このことに鑑みれば、MBTとなる点火時期をフィードフォワード制御器56(点火時期モデル)によって運転状態から直接に算出できるようにすることが理想である。
点火時期モデル学習手段62は、上記の理想を実現するべく、フィードバック補正後の点火時期、つまりMBTに近くなるように補正された後の点火時期と、運転状態(機関回転数NEおよび充填効率KL)との関係を学習して、点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新する処理を行う。
ところで、周知のように、内燃機関10には、サイクル毎の燃焼変動が存在する。すなわち、内燃機関10の運転状態が変化していなくても、気筒内での混合気の燃焼の様子(火炎伝播)は、サイクル毎に変化する。この主な原因は、筒内の空燃比や、筒内に残留している前サイクルの燃え残りのガス量、筒内の混合気のかき混ざり具合(乱れ)などが、サイクル毎にランダムに変化するためである。
上記のような燃焼変動の存在により、点火時期を含めた運転状態が同じであっても、実際の8degATDC燃焼割合は、サイクル毎に変動する。よって、サイクル毎に検出される8degATDC燃焼割合を50%に近づけるべく、フィードバック制御器58が点火時期を補正すると、その補正後の点火時期は、サイクル毎に変動することとなる。
つまり、点火時期モデル学習手段62にサイクル毎に入力されるフィードバック補正後の点火時期には、バラツキが存在しており、その平均値はMBTに精度良く一致しているが、平均値から外れた入力は、MBTに精度良く一致しているとは言えない。このため、点火時期モデル学習手段62にサイクル毎に入力されるフィードバック補正後の点火時期が何れも等しく正しいものであるとの立場で学習を行い、その結果に従って点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新してしまうことは、適切ではない。
そこで、本実施形態の点火時期モデル学習手段62では、カルマンフィルタ理論を応用した、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新を行うこととしている。
カルマンフィルタ理論とは、一般には、システムの状態推定を行うために用いられるフィルタリング理論である。カルマンフィルタ理論によれば、システムや観測に雑音(白色雑音)が加わる場合に、その雑音を適切にフィルタリングすることができるので、最適な状態推定を行うことができる。
本発明者の知見によれば、フィードバック補正後の点火時期に生ずるバラツキ(雑音)は、カルマンフィルタ理論によってフィルタリングすることのできる雑音と同種のものである。すなわち、フィードバック補正後の点火時期のバラツキは、前述したように、ランダムな燃焼変動に起因するものであるため、そのバラツキは、ほぼ正規分布に一致する。このため、カルマンフィルタ理論が応用された点火時期モデル学習手段62によれば、フィードバック補正後の点火時期を学習する上で、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキを適切にフィルタリングすることができる。よって、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキに悪影響を受けることなく、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新を適切に行うことができる。
カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新則は、次式で表される。
θ^k+1=θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k) ・・・(5)
上記(5)式を含め、本明細書で使用する記号において、下付きの添え字kは、内燃機関10のkサイクル目の値であることを示す。また、上記(5)式中、Kkはカルマンゲインであり、SAkはフィードバック補正後の点火時期である。
上記(5)式中、(SAk−φk Tθ^k)は、フィードバック補正後の点火時期SAkと、上記(1)式に従ってフィードフォワード制御器56が算出する点火時期φk Tθ^kとの誤差(以下「予測誤差」という)を表している。上記(5)式は、予測誤差にカルマンゲインKkを乗じたものを、現サイクルの点火時期モデルパラメータベクトルθ^kに足し合わせることにより、次サイクルの点火時期モデルパラメータベクトルθ^k+1が算出されることを表している。
以下、上記(5)式中のカルマンゲインKkの導出過程について説明する。
点火時期モデルパラメータベクトルθ^の真値(実際には知り得ない最適な点火時期モデルパラメータベクトル)をθとすると、この点火時期モデルパラメータベクトルの真値θは、内燃機関10の特性の経時変化や、運転環境の変化などに応じて、サイクル毎に変化するものと考えることができる。このことを次式で表す。
θk+1=θk+Dwk ・・・(6)
上記(6)式中、Dwkは、上述したような経時変化や環境変化などに起因する、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θのサイクル毎の変化に相当する。このDwkのうち、Dはθ^と同次元のベクトルであり、wkは変数(スカラー)である。
また、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θを用いた点火時期モデルによって算出されるべき点火時期(実際には知り得ない最適な点火時期)φk Tθkと、フィードバック補正後の点火時期SAkとの間に存在する誤差をnkとすると、次式が定義される。
SAk=φk Tθk+nk ・・・(7)
以上より、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θと、実際の点火時期モデルパラメータベクトルθ^との誤差(以下「モデル誤差」と称する)θ~は、以下のように表される。
θ~k+1=θk+1−θ^k+1
=θk+Dwk−{θ^k+Kk(SAk−φk Tθ^k)}
=θ~k+Dwk−Kkk Tθk+nk−φk Tθ^k)
=(I−Kkφk T)θ~k+Dwk−Kknk ・・・(8)
なお、上記(8)式中の式変形には、上記(5)、(6)および(7)式を用いた。
本発明者の知見によれば、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θの変化Dwkは、ランダムウォーク(酔歩)であると考えることができる。また、上記(7)式における誤差nkは、前述したような燃焼変動や、測定雑音などに起因するランダムな外乱であると考えられる。そこで、wk,nkは、平均値0、共分散Q,Rの独立な正規分布を持つものとする。つまり、次式のように定義する。
E[wk Twk]=Q ・・・(9)
E[nk Tnk]=R ・・・(10)
なお、上記(9)および(10)式を含め、本明細書では、E[]は平均値(期待値)を表すものとする。
カルマンフィルタ理論においては、モデル誤差θ~kの共分散行列(以下「モデル誤差共分散行列」という)Pkが最小となるように、カルマンゲインKkを定める。モデル誤差共分散行列Pkは、次式で表される。
Pk=E[θ~kθ~k T] ・・・(11)
上記(8)、(9)および(10)式を用いると、モデル誤差共分散行列Pk+1は、以下のように計算することができる。
Pk+1=E[θ~k+1θ~k+1 T]
=E[{θ~k+Dwk−Kk(nk+φk Tθ~k)}{θ~k+Dwk−Kk(nk+φk Tθ~k)}T]
=E[θ~kθ~k T]+DQDT−E[θ~kθ~k TkKk T−Kkφk TE[θ~kθ~k T]
+E[Kk(nk+φk Tθ~k)(nk+θ~k Tφk)Kk T]
=E[θ~kθ~k T]+DQDT−E[θ~kθ~k TkKk T−Kkφk TE[θ~kθ~k T]
−Kk(E[nknk]+φk TE[θ~kθ~k Tk)Kk T
=Pk+DQDT−PkφkKk T−Kkφk TPk−Kk(R+φk TPkφk)Kk T
=Pk+DQDT−Pkφk(R+φk TPkφk)-1φk TPk
+{Kk−Pkφk(R+φk TPkφk)-1}(R+φk TPkφk){Kk T−(R+φk TPkφk)-1φk TPk}
・・・(12)
上記(12)式より、モデル誤差共分散行列Pk+1を最小とするには、カルマンゲインKkは、次式のように定めればよいことが分かる。
Kk=Pkφk(R+φk TPkφk)-1 ・・・(13)
そして、その場合、モデル誤差共分散行列Pk+1は、次式で表される。
Pk+1=Pk+DQDT−Pkφk(R+φk TPkφk)-1φk TPk ・・・(14)
上記(14)式は、次式のように変形することができる。
Pk=Pk-1+DQDT−Pk-1φk-1(R+φk-1 TPk-1φk-1)-1φk-1 TPk-1 ・・・(15)
上記(15)式を用いて、上記(13)式中のPkを算出することができる。
(共分散R)
上記(13)式に示されるように、カルマンゲインKkを求めるには、nkの共分散Rの値を定める必要がある。nkの共分散Rは、上記(7)式の定義から分かるように、フィードバック補正後の点火時期SAkのバラツキ度合いを表す値である。この共分散Rの値は、経験的に得られる適当な値を予め設定しておいてもよく、あるいは、フィードバック補正後の点火時期SAkに実際に生じている共分散を求め、その値を共分散Rとして使用してカルマンゲインKkを求めてもよい。図2に示すシステムでは、共分散算出手段64により、フィードバック補正後の点火時期SAkに実際に生じている共分散を求めることとしている。以下、共分散算出手段64の具体的処理について簡単に説明する。
共分散算出手段64は、内燃機関10の過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を算出する。ここで、Nは、フィードバック補正後の点火時期SAkの共分散を十分な精度で算出することのできるようなサイクル数となるように、予め設定されている。
一般に、変数xkの過去N個分についての共分散Vkは、次式により算出することができる。
Figure 2008144743
共分散算出手段64は、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkを記憶しておき、それらの値を上記(16)式のxkに代入することにより、共分散の値をサイクル毎に算出する。そして、そのようにして共分散算出手段64により算出された共分散の値が点火時期モデル学習手段62に入力され、上記共分散Rとして使用される。
なお、共分散算出手段64では、上記(16)式の演算をそのまま実行するのではなく、演算負荷を軽減するために、移動計算の手法を用いて、共分散を算出するようにしてもよい。
(行列DQDT
また、上記(13)式および(15)式に示されるように、カルマンゲインKkを求めるには、モデル誤差共分散行列Pkを求めることが必要であり、このPkを求めるためには行列DQDTを定める必要がある。この行列DQDTは、次式に示すように、Dwkの共分散行列(自己相関行列)E[Dwk(Dwk)T]に等しい。
E[Dwk(Dwk)T]=E[Dwk TwkDT]
=DE[wk TwkDT]DT
=DQDT ・・・(17)
Dwkの共分散行列E[Dwk(Dwk)T]、すなわち行列DQDTは、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θのバラツキ度合いを表すものである。本実施形態では、後述するように、点火時期モデルパラメータベクトルθ^kに実際に生じている共分散行列を求め、その共分散行列を上記DQDTとして使用して、カルマンゲインKkを求めることとしている。
以下、点火時期モデル学習手段62が上記(5)式の更新則に従って点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新する際の具体的処理について説明する。図3は、本実施形態において点火時期モデル学習手段62としてのECU50が実行するルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、内燃機関10のサイクル毎に実行される。
図3に示すルーチンによれば、まず、機関回転数NEおよび充填効率KLに基づいて、関数ベクトルφkが算出される(ステップ120)。関数ベクトルφの各要素は、上記(2)式中に例示されているように、所定の関数で構成されている。その関数の変数に機関回転数NEおよび充填効率KLの値を代入することにより、関数ベクトルφkが算出される。
続いて、上記(15)式に基づいて、モデル誤差共分散行列Pkが算出される(ステップ122)。このステップ122において、上記(15)式中のφk-1およびPk-1には、それぞれ、前サイクルで算出されたものが代入される。また、nkの共分散Rには、共分散算出手段64によって算出された、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkの共分散の値が代入される。また、上記(15)式中のDQDTの求め方については後述する。
上記ステップ122の処理に続いて、上記(13)式に基づいて、カルマンゲインKkが算出される(ステップ124)。この場合、上記ステップ120で算出された関数ベクトルφkと、共分散算出手段64によって算出された共分散Rと、上記ステップ122で算出されたモデル誤差共分散行列Pkとが、上記(13)式にそれぞれ代入される。
最後に、上記(5)式の更新則に基づいて、現サイクルの点火時期モデルパラメータベクトルθ^kが、次のサイクルの点火時期モデルパラメータベクトルθ^k+1へと更新される(ステップ126)。この場合、現サイクルのフィードバック補正後の点火時期SAkと、現サイクルの点火時期モデルパラメータベクトルθ^kと、上記ステップ120で算出された関数ベクトルφkと、上記ステップ124で算出されたカルマンゲインKkとが、上記(5)式にそれぞれ代入される。
以上説明したように、図3に示すルーチンの処理によれば、フィードバック補正後の点火時期を学習して、点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新していくことができる。このため、学習が進むにつれて、点火時期モデルパラメータベクトルθ^が改善されていき、上記(1)式の点火時期モデルによって算出される点火時期が以前よりもMBTに近くなっていく。よって、フィードバック制御器58のフィードバック制御によらずとも、MBTに近い点火時期をフィードフォワード制御器56において算出することができるようになる。その結果、フィードバック制御に付き物の制御遅れの問題を解消することができる。よって、内燃機関10の経時劣化や運転環境の変化に伴うMBTの変化に適切に対応できるだけでなく、運転状態の変化に伴うMBTの変化に応じて、点火時期を迅速にMBTに追従させることができる。その結果、優れた燃費性能が得られる。
また、本実施形態によれば、上述したように、カルマンフィルタ理論を応用した点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新を行うことができる。上述したように、本発明者の知見によれば、フィードバック補正後の点火時期には、正規分布に精度良く一致するバラツキが内在する。本実施形態では、カルマンフィルタ理論を応用したことにより、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキを適切にフィルタリングした上で、フィードバック補正後の点火時期を学習することができる。このため、フィードバック補正後の点火時期に内在するバラツキに悪影響を受けることなく、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新を適切に行うことができる。その結果、点火時期モデルパラメータベクトルθ^をより円滑かつ確実に最適化することができる。
また、本実施形態によれば、点火時期モデル学習手段62による学習を進めるに従い、点火時期モデルパラメータベクトルθ^を最適な形へと近づけていくことができる。このため、工場出荷時の点火時期モデルパラメータベクトルθ^には、それほど高い精度が必要とされない。よって、開発段階での適合工数を削減することができ、開発コストや開発期間を縮小することができる。
ところで、フィードバック補正後の点火時期SAkに生ずる共分散(バラツキ度合い)は、運転条件によって変化する。一方、本実施形態では、前述したように、過去Nサイクル分のフィードバック補正後の点火時期SAkに実際に生じた共分散を逐次算出し、その値を、カルマンフィルタ理論に基づく点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新処理に必要な共分散Rとして使用している。このため、フィードバック補正後の点火時期SAkに生ずる共分散が運転条件によって変化することを点火時期モデルパラメータベクトルθ^の更新処理に適切に反映させることができる。よって、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の学習をより高い精度で行うことができる。
(経時変化検出部54)
次に、図2に示す経時変化検出部54について説明する。経時変化検出部54は、比較的長期での視点による、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の経時変化を検出するために設けられたものである。その目的を達成するため、経時変化検出部54は、以下のようにして、比較的長期での視点による、点火時期モデルパラメータベクトルθ^の平均値θ^meanを算出する。
経時変化検出部54には、点火時期モデル学習手段62により更新された点火時期モデルパラメータベクトルθ^が、トリップ毎に、間欠的(定期的)に入力される。この場合の「トリップ毎」とは、時間的な所定の間隔(例えば、内燃機関10の運転時間で10時間おき、100時間おき、あるいは暦で1週間おき、など)でも、車両の走行距離についての所定の間隔(例えば、走行100kmおき、200kmおき、など)でもよい。また、内燃機関10の始動から停止までを1トリップとしてもよい。この場合、各回のトリップで最後に得られた点火時期モデルパラメータベクトルθ^が経時変化検出部54に入力されるものとする。
以下、経時変化検出部54にj回目に入力された点火時期モデルパラメータベクトルθ^を、記号θ^(j)で表す。そして、経時変化検出部54では、このθ^(j)の入力があった場合に、前回算出された点火時期モデルパラメータベクトル平均値θ^mean(j-1)と、新たな入力θ^(j)とから、新たな平均値θ^mean(j)が算出される。この場合、本実施形態では、忘却係数αを用いて点火時期モデルパラメータベクトルθ^を平均化する。つまり、前回の平均値θ^mean(j-1)と、新たな入力θ^(j)と、新たな平均値θ^mean(j)との間には、次式の関係が成り立つ。
θ^mean(j)=αθ^mean(j-1)+(1−α)θ^(j) ・・・(18)
上記忘却係数αは、1より小さい所定の正の数である。上記(18)式は、新たな平均値θ^mean(j)を算出するに際して、前回の平均値θ^mean(j-1)をこの忘却係数αという割合で忘却するとともに、新たな入力θ^(j)に残りの重み(1−α)を乗じたものを算入することを意味している。忘却係数αの値は、特に限定されないが、例えば0.95〜0.99程度とすることができる。
経時変化検出部54では、上記(18)式をそのまま用いるのではなく、次のようにして計算が行われる。まず、点火時期モデル学習手段62から新しい点火時期モデルパラメータベクトルθ^(j)の入力があった場合には、図2に示すように、この新たな入力θ^(j)と、遅延演算器66により保持されている前回の平均値θ^mean(j-1)との差分ベクトルdθ(j)が算出される。つまり、差分ベクトルdθ(j)は、次式で表される。
(j)=θ^(j)−θ^mean(j-1) ・・・(19)
上記(19)式を用いると、上記(18)式は次のように変形することができる。
θ^mean(j)=αθ^mean(j-1)+(1−α)θ^(j)
=αθ^mean(j-1)+(1−α)(θ^mean(j-1)+dθ(j))
=θ^mean(j-1)+(1−α)dθ(j) ・・・(20)
経時変化検出部54では、上記(20)式に従って、点火時期モデルパラメータベクトル平均値θ^mean(j)を算出する。すなわち、上記(19)式で算出された差分ベクトルdθ(j)は、図2に示すように、忘却演算器68に入力される。忘却演算器68では、入力されたdθに(1−α)を乗じて、(1−α)dθを算出する。そして、この(1−α)dθと、遅延演算器70により保持されている前回の平均値θ^mean(j-1)とが足し合わせられることにより、上記(20)式で示す新たな平均値θ^mean(j)が算出される。
経時変化検出部54は、更に、上記差分ベクトルdθ(j)の共分散行列E[dθ(j)(j) T]を算出する共分散算出手段72を有している。差分ベクトルdθ(j)の共分散行列E[dθ(j)(j) T]は、点火時期モデルパラメータベクトルθ^のバラツキ度合いを表していると言える。従って、この共分散行列E[dθ(j)(j) T]は、点火時期モデルパラメータベクトルの真値θのバラツキ度合いを表すE[Dwk(Dwk)T]、すなわちDQDTとほぼ同等であると考えることができる。そこで、本実施形態では、点火時期モデル学習手段62は、点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新する際、上記(15)式中のDQDTに、上記共分散算出手段72によって算出された共分散行列E[dθ(j)(j) T]を代入して演算を行うこととしている。
上記のようにして、本実施形態では、点火時期モデルパラメータベクトルθ^に実際に生じているバラツキ度合いを共分散算出手段72によって検出し、その値を、点火時期モデルパラメータベクトルθ^を更新する際の演算に反映させることができる。このため、点火時期モデルパラメータベクトルθ^をより適切に更新することができ、より円滑かつ確実に最適化することができる。また、ベクトルDや共分散Qの値を予め設定する必要がなくなるので、開発段階における適合工数を削減することができる。
図4は、ある運転状態における、内燃機関10のトルクと、点火時期と、8degATDC燃焼割合との関係を示す図である。図4によれば、点火時期が早くなるほど、燃焼が早く始まるため、8degATDC燃焼割合は大きくなり、逆に、点火時期が遅くなるほど、燃焼が遅く始まるため、8degATDC燃焼割合は小さくなることが分かる。また、前述したように、8degATDC燃焼割合が50%のときに、トルクが最大になること、つまり点火時期がMBTとなることが、図4からも読み取れる。そして、8degATDC燃焼割合が50%から遠ざかるほど、トルクが低下すること、つまり効率が低下することが図4から読み取れる。
また、図4に示す例では、8degATDC燃焼割合が50%±7%(43%〜57%)の範囲にあると、点火時期はMBTに対し±2degCAの範囲に入り、トルクは最大トルクの99%以上の範囲に入る。つまり、8degATDC燃焼割合が43%〜57%の範囲にあれば、点火時期がMBTである場合の99%以上に相当する、十分に高い効率が得られる。逆に、8degATDC燃焼割合が43%〜57%の範囲から外れるほど、トルクの低下が大きい、効率の低下が大きい。
前述したように、本実施形態では、フィードバック補正後の点火時期を学習することによって点火時期モデルを改善していくことができる。このため、定常運転状態のみならず、機関回転数NEや機関負荷が移り変わる過渡運転状態においても、MBTに近い点火時期を実現することができる。
しかしながら、加速時、特に急加速時には、ECU50は、次のような理由から、点火時期を遅くする補正を加える場合がある。第1の理由としては、加速時には一時的に高負荷状態となり、ノッキングが生じ易いので、ノッキングを確実に防止するために、点火時期を遅らせる必要が生ずる場合がある。第2の理由としては、加速時には、トルクショックが生じ易いので、トルクショックを確実に防止して快適性を向上するために、点火時期を遅らせる必要が生ずる場合がある。このようにして点火時期を遅くする補正を加えることを、以下「点火時期遅角制御」と称する。
図5は、加速時における車速および8degATDC燃焼割合の変化を示すグラフであり、実線は急加速の場合、破線は中程度の加速の場合である。図5の実線で示すように、急加速すると、上述した点火時期遅角制御が実施されるため、8degATDC燃焼割合が低下し、50%を大きく下回る。つまり、点火時期がMBTから大きく外れ、内燃機関10の効率が大きく低下する。このため、燃費が悪化する。
これに対し、中程度の加速の場合には、図5の破線で示すように、8degATDC燃焼割合の低下は少なく、50%に比較的近い値に維持される。つまり、点火時期はMBTに比較的近い値に維持されるので、内燃機関10の効率は良好に保たれる。このため、燃費の悪化を回避することができる。
このように、点火時期がMBTまたはその近くにある燃焼状態(以下「MBT燃焼状態」と称する)が常に維持されるような自動車の運転を運転者が心がければ、燃費の悪化を回避することができ、良好な燃費が得られる。逆に、燃焼状態がMBT燃焼状態から頻繁に外れるような自動車の運転を行うと、燃費が悪化する。
そこで、本実施形態では、運転者に対し、内燃機関10がMBT燃焼状態になるべく維持されるような運転を促すために、内燃機関10の現在の燃焼状態をリアルタイムに表示する燃焼状態インジケータ80を設けている。図6は、内燃機関10が搭載された自動車の運転席のインストルメントパネルを示す図である。この図に示すように、本実施形態では、燃焼状態インジケータ80は、インストルメントパネルのスピードメータ82およびタコメータ84の下側に設けられているが、この設置箇所は特に限定されるものではない。
図7は、燃焼状態インジケータ80を拡大して示す図である。燃焼状態インジケータ80には、一列に並ぶ複数(図示の構成では16個)の効率表示ランプ86のほか、燃料カット状態のときに点灯する燃料カット表示ランプ88と、アイドリング時に点灯するアイドル表示ランプ90とが設けられている。
この燃焼インジケータ80では、燃焼割合算出手段60により算出される現在の8degATDC燃焼割合の値に基づいて、効率表示ランプ86のうちの一つが点灯する。具体的には、8degATDC燃焼割合がほぼ50%である場合には、中央の効率表示ランプ86が点灯する。そして、8degATDC燃焼割合が45%以上50%未満である場合には、中央の左隣の効率表示ランプ86が点灯し、8degATDC燃焼割合が50%を超え55%以下である場合には、中央の右隣の効率表示ランプ86が点灯する。
これらの中央の3つの効率表示ランプ86の下には、「高効率」との文字が表示されている。また、これら中央の3つの効率表示ランプ86の色は、濃緑色とされている。これらの濃緑色の3つの効率表示ランプ86のいずれかが点灯することは、内燃機関10がMBT燃焼状態にあることを意味する。つまり、本実施形態では、8degATDC燃焼割合が45%〜55%である場合をMBT燃焼状態としている。本発明者の知見によれば、部分負荷状態においては、8degATDC燃焼割合が45%〜55%の範囲にあれば、最大トルクの99%以上のトルクが発揮される、高効率な燃焼状態であるとみなすことができる。このため、本実施形態では、8degATDC燃焼割合が45%〜55%の範囲をMBT燃焼状態としたが、MBT燃焼状態の範囲はこれに限定されるものではない。
そして、燃焼インジケータ80では、8degATDC燃焼割合が55%を超えて、大きくなるほど、より右側の効率表示ランプ86が点灯する。また、8degATDC燃焼割合が45%を下回って、小さくなるほど、より左側の効率表示ランプ86が点灯する。中央3つの濃緑色の効率表示ランプ86の両隣の効率表示ランプ86は、薄緑色とされており、その更に外側の複数の効率表示ランプ86は、薄赤色とされている。これら薄赤色の効率表示ランプ86の下には、「非効率」との文字が表示されている。また、両端の効率表示ランプ86は、濃赤色とされている。そのうち、左端の効率表示ランプ86の下には「失火」との文字が表示され、右端の効率表示ランプ86の下には「異常」との文字が表示されている。
上述したような燃焼インジケータ80によれば、中央付近の濃緑色の効率表示ランプ86が点灯していれば、現在の燃焼状態がMBT燃焼状態にあること、つまり内燃機関10が高効率の状態にあることを運転者が知ることができる。また、効率表示ランプ86の点灯位置が中央よりも右あるいは左に離れているほど、現在の燃焼状態がMBT燃焼状態から乖離していること、つまり内燃機関10が非効率(低効率)の状態にあることを運転者が知ることができる。
運転者は、燃焼インジケータ80を見ながら、効率表示ランプ86の点灯位置がなるべく中央に維持されるようにアクセルペダルなどを操作することにより、内燃機関10がMBT燃焼状態からなるべく外れないようにすることができる。その結果、内燃機関10が高効率な状態になるべく維持されるので、燃費を効果的に改善することができる。
ところで、瞬間燃費は、車速などの走行条件に大きく影響される。このため、従来のように瞬間燃費の値を表示しても、運転者は、経済走行ができているのかいないのかが分かりにくい。その結果、運転者に適切な経済運転を行わせる効果は少ない。
これに対し、上述した燃焼インジケータ80によれば、現在の内燃機関10の効率そのもの、つまり、車速などの走行条件によらない、普遍的な指標を運転者に知らせることができる。よって、運転者は、燃費の良い経済走行を心がける上で、車速などの走行条件にかかわらず、効率表示ランプ86の点灯位置がなるべく中央に維持されるようにアクセルペダルなどを操作するだけでよい。このため、燃焼インジケータ80によれば、運転者に適切な経済運転を行わせることができ、実際の燃費を効果的に改善することができる。
また、本実施形態の燃焼インジケータ80によれば、左端あるいは右端の効率表示ランプ86が点灯した場合には、失火あるいは異常が生じたことを運転者に知らせることができる。
ところで、上述した実施の形態1では、内燃機関10の燃焼割合を、筒内圧センサ40の出力に基づいて検出しているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明では、例えば筒内に生ずるイオンをイオン電流として検出するセンサ(点火プラグ30で代用可)を設け、その出力に基づいて燃焼割合を検出するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1の燃焼インジケータ80では、内燃機関10の燃焼状態を視覚的に運転者に報知しているが、本発明では、内燃機関10の燃焼状態を音声などにより聴覚的に報知してもよい。
また、上述した実施の形態1においては、筒内圧センサ40および燃焼割合算出手段60が前記第1および第2の発明における「MBT燃焼検出手段」に、燃焼状態インジケータが前記第1の発明における「燃焼状態報知手段」および前記第4の発明における「表示手段」に、それぞれ相当している。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 本発明の実施の形態1においてECUが点火時期を制御する場合の機能ブロック図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 内燃機関のトルクと、点火時期と、8degATDC燃焼割合との関係を示す図である。 加速時における車速および8degATDC燃焼割合の変化を示すグラフである。 本発明の実施の形態1における車両のインストルメントパネルを示す図である。 本発明の実施の形態1における燃焼状態インジケータを拡大して示す図である。
符号の説明
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
16 エアフローメータ
18 スロットル弁
26 燃料インジェクタ
30 点火プラグ
40 筒内圧センサ
50 ECU
52 リアルタイム制御部
54 経時変化検出部
56 フィードフォワード制御器
58 フィードバック制御器
60 燃焼割合算出手段
62 点火時期モデル学習手段
64 共分散算出手段
66 遅延演算器
68 忘却演算器
70 遅延演算器
72 共分散算出手段
80 燃焼状態インジケータ
82 スピードメータ
84 タコメータ
86 効率表示ランプ
88 燃料カット表示ランプ
90 アイドル表示ランプ

Claims (5)

  1. 内燃機関の燃焼状態が、点火時期がMBT付近にあるMBT燃焼状態になっているか否かを検出するMBT燃焼検出手段と、
    前記内燃機関の燃焼状態が前記MBT燃焼状態になっているか否かに関する情報を運転者に報知する燃焼状態報知手段と、
    を備えることを特徴とする車両用情報報知装置。
  2. 前記MBT燃焼検出手段は、所定クランク角位置における燃焼割合を算出する燃焼割合算出手段を含み、前記算出された燃焼割合が目標範囲に入っている場合を前記MBT燃焼状態であるものと判定することを特徴とする請求項1記載の車両用情報報知装置。
  3. 前記燃焼割合算出手段は、筒内圧をP、筒内容積をV、筒内ガスの比熱比をκとしたとき、前記所定クランク角位置と、燃焼開始前のクランク角位置と、燃焼終了後のクランク角位置との3点におけるPVκの値に基づいて、前記燃焼割合を算出することを特徴とする請求項2記載の車両用情報報知装置。
  4. 前記燃焼状態報知手段は、前記情報を視覚的に報知する表示手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の車両用情報報知装置。
  5. 前記MBT燃焼検出手段は、前記MBT燃焼状態と現在の燃焼状態との乖離度合いを検出可能であり、
    前記燃焼状態報知手段は、前記乖離度合いが大きい場合ほど、非効率である旨を運転者に報知することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の車両用情報報知装置。
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