JP4747360B2 - 浮体ユニット及び浮体式耐震構造物 - Google Patents

浮体ユニット及び浮体式耐震構造物 Download PDF

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Description

本発明は浮体ユニット及び浮体式耐震構造物に関し、特に振動を効果的に除去する浮体ユニット及び浮体式耐震構造物に関する。
近年、建築物の安全性向上を図った種々の耐震対策が講じられている。建築物に対する耐震技術の一つとして免震構造が提案されている。免震構造は水平方向の振動による振動エネルギーをダンパーによってゆっくりとした揺れに変えて吸収し緩和する技術である。このような耐震技術は、住宅に限ったものではなく、原子力発電所、火力発電所、化学プラント、石油精製プラント等の大型構造物に対しても必要である。これらの大型構造物は、地震等の災害により破損すると、近隣に多大な損害を与える可能性があるため、特に効果的な耐震対策が必要とされている。この大型構造物は敷地面積が広いばかりでなく、その重量も大きくなる。そのため大型構造物の耐震構造には、構造物を支えるとともに、地震の振動を除去するための効果的な基礎工事が必須となっている。
このような大型構造物の耐震対策に対して、海上を利用した浮体構造物の開発が提案されている。浮体構造物は従来の埋立工法と異なり、海洋の表面を利用して複数の浮体構造物を結合して任意形状の人工基盤を建造する構造物である(例えば、特許文献1、特許文献2)。海上に浮上した浮体構造物に大型構造物を設置することにより、基礎基板に対する大型構造物の重量負担を軽減するようにしている。また浮体構造物は海上に浮上してドルフィンと呼ばれるアンカーでつなぎとめられた構造である。このため地震が発生しても直接地面に接していないので振動が伝わることがなく、振動に対する構造物の揺れを防止することができると考えられている。
特開平7−187066号公報 特開平11−152082号公報
しかしながら、従来の浮体構造物は底が密閉された中空の浮体ユニットを水面に多数浮かべて配置し、構造物全体が薄い板と同様な構造になっている。このような巨大な浮体構造物を水に浮かべる場合、図14に示すように、移動の利便性や建設費の関係から岸に近いところに設置される。岸に近いところでは水深が浅く、深く掘り下げるにはコストが掛るため水深の浅い箇所に設置するケースが多い。そうすると例えば、浮体構造物1の一辺wが200メートルで、浮体底面と水底2との距離tが2メートルとすると、その比率は100:1となる。この比率の差が大きくなればなる程、クッション性のある水の層というよりもむしろ水の膜となる。そうすると直下型地震に対し、水そのもののクッション作用がなくなり、水は固体の性質を持つのと同じ作用となる。このため垂直方向の振動を吸収することが困難となる。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を改善するため、振動を効果的に除去することができる浮体ユニット及び浮体式耐震構造物を提供することを目的としている。また、本発明は浮体ユニットの水中のバランスを保つことを目的としている。
本発明に係る浮体ユニットは、中空容器状に形成した本体と、前記本体の底板に設けた開口と、前記本体の上部に設けられて、前記本体の内部と外部とを連通、遮断する弁と、を備え前記底板は、逆漏斗状に傾斜して形成してあり、前記開口は、前記本体の下端より高い位置に形成してあることを特徴としている。
この場合において、前記本体は、内部に前記本体の浮力を検出する浮力検出部が設けてあるとよい。前記開口は、前記本体の底板に形成したオリフィスであるとよい。前記本体は、前記開口に対向させた拡散板を内部に有しているとよい。前記本体は、複数の浮室に区分けしてあるとよい。前記本体は、周縁部に複数のバランス調整部を有しているとよい。前記本体は、複数の前記本体を相互に連結する連結部材に嵌合させる嵌合部を有しているとよい。前記本体には、前記本体よりも小さい断面の突出部を形成してあるとよい。
本発明に係る浮体式耐震構造物は、浮体ユニットの複数を、連結部材を介して相互に連結したことを特徴としている。
この場合において、前記連結部材は、トラス構造に形成してあるとよい。複数の前記浮体ユニットは、複数行、複数列に配置してあり、前記複数行の所定の行間または前記複数列の所定の列間は、前記浮体ユニットを移動可能な幅を有しているとよい。
上記のごとくなっている本発明は、中空容器状に形成した本体の内部に空気層を形成することができる。このため空気層による圧縮作用により、地震等による垂直方向の振動を吸収して除去することができる。
また、浮体ユニットは、空気供給手段に接続し、本体の内部と外部とを連通、遮断する弁を備えている。このため本体内部の空気層の厚さを変えることにより、浮体ユニットの水面からの露出量を小さくし、または浮体ユニットが中性浮力を有するようにすることにより、メンテナンス、点検時に修理対象となる浮体ユニットのみ水中から取り出して修理することができる。よってこれまで連結部材で固定し、底を密閉された中空の浮体ユニットは、取り外しができないため水中でメンテナンス作業を行っていた。本発明によれば水中作業の必要がなくなり、メンテナンス作業が容易となる。
浮体ユニットの底面にはオリフィスを形成してある。このため本体に流入する水の流量と本体から流出する水の流量を変えることによって、本体の振動に周期のずれを生じさせることができる。したがって空気層の圧縮による共振現象を低減することができる。
本体は、開口に対向させた位置に拡散板を設置してある。本体内部の空気層は開口から急激に流入する水によって攪拌され気泡となる。この気泡は本体から流出する水とともに外部に流れ出てしまい、空気層が少なくなる。そこで拡散板を形成することによって、本体の開口から急激に流入する水が内部の空気層を吹き上げないようにすることができる。また空気層が開口から外部へ流出するのを防止することができる。
浮体ユニットには複数のバランス調整部を形成してある。このため本体の浮上の際にバランスを保ちながらメンテナンス対象となる浮体ユニットを取り外しすることができる。
前記本体は、内部を複数の浮室に区分けしてある。このため複数の浮室の空気量を制御することによって、本体の傾きを除去して浮体ユニットのバランスを保つことができる。
前記本体には、前記本体よりも小さい断面の突出部を形成してある。このため水面付近の波の影響で本体に上下動が生じても、浮力変動幅を小さくできるので水面上下動の影響を低減することが可能となる。
浮体式耐震構造物には浮体ユニットの着脱通路を形成してある。このため複数並べて配置してある浮体ユニットに対して、メンテナンス対象となる浮体ユニットのみを容易に水上に取り出すことが可能となる。
本発明に係る浮体ユニット及び浮体式耐震構造物の実施形態を添付した図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は浮体ユニットの説明図である。同図(1)は断面図を示し、同図(2)は平面図を示す。図示のように、浮体ユニット10は、箱型の本体11の底面を取り除いた中空容器状に形成してある。浮体ユニット10は、本体11の上面側に空気供給手段12の配管14が開閉弁16を介して接続している。開閉弁16は本体11の内部と外部を連通あるいは遮断する。一方、浮体ユニット10の下端には外部の水が本体内部に流入する開口18を形成してある。浮体ユニット10の大きさは、例えば10メートル角の立方体状に形成することができる。また浮体ユニット10の上面には、後述する連結部材の底面と嵌合するための嵌合凸部22を4隅に形成してある。また浮体ユニット10は、材質に鋼板などの金属部材、繊維強化熱硬化性樹脂(Fiber Reinforced Plastics)などのプラスチック樹脂材、または鉄筋コンクリートなどを用いることができる。なお、浮体ユニット10の材質及び大きさは一例であって、これに限定されるものではない。さらに浮体ユニット10の形状は、開口部18を備えていれば、直方体のほかにも多角形、楕円、円筒など任意の形状に設定することができる。
このような浮体ユニット10は、開口18が形成してある下端を海中に沈め、開閉弁16を開いて本体内部の空気を排出し任意に設定した厚さの空気層20を形成することができる。あるいは、海中の浮体ユニット10に対し、空気供給手段12によって本体内部に空気を供給して空気層20を形成することもできる。そして浮体ユニット10は、本体内部に空気層20を形成して本体11の上面側を水面上に僅かに突出させている。このため空気層20の圧縮によって、垂直軸方向の振動を吸収することができる。一方、水平軸方向の振動は水深が浅いために本体11と水底との間の水の層が薄くなったとしても、水底と本体11の下端は剪断方向の動きとなり、水の層は潤滑油と同様な働きをして水底の水平振動は浮体ユニット10上に形成する構造物に伝達されることがない。
図2は浮体ユニットの第1変形例を示す図である。なお、図1の浮体ユニット10と同一の符号は同一の作用及び機能を有しその説明を省略する。前述の浮体ユニット10は、直方体の底面を取り除いた中空容器状である。この底面を取り去ってしまうと、空気の圧縮性のために共振現象、すなわち地震による下方からの水圧の揺れと空気層20の揺れの周期が一致して揺れの方向が同調すると揺れの力が増幅する現象が生じる。そうすると発生した振動が本体11で増大するおそれがある。
そこで、図示のように、第1変形例の浮体ユニット10Aは、底板23の一部に開口18を形成してある。この開口18は本体11に流出入する水の流量を調整する絞り作用をなすオリフィス24として用いている。オリフィス24は本体11に流入する水の流量と本体11から流出する水の流量を変えることによって、本体11の振動に周期のずれを生じさせて、空気層の圧縮性による共振現象を低減することができる。
なお開口面積は浮体ユニット10Aの容積に伴って任意に設定することができる。また開口形状は円形のほか多角形、楕円など任意の形状に設定することができる。これにより、本体内部の空気層20は、構造物の重量を支えるとともに、本体11にダンパー特性を持たせることによって、空気層が弾性体の働きとなって垂直軸の振動を吸収することができる。また、本体内部に導入された水が空気層20に急速に吹き上げないように開口18に対向した位置に拡散板(邪魔板)26を取り付けてある。拡散板26は、開口18から急激に流入する水を消散させることができる。このため急激に流入する水によって空気層20が気泡となって水中に含まれ、水の流出とともに気泡として外部に流出することを防止できる。
前記開口18は図3に示すように底板23に複数形成することができる。また同図(2)に示すように、浮体ユニット10Aの底板23に複数形成した開口18の一部に蓋25を形成してある。蓋25は本体11の内側に形成してある。この蓋25付きの開口は、外部から水が流入する場合には、蓋25が開いて流入させることができ、内部から水が流出する場合には、蓋25が閉塞して水の流出を阻止させる。このため垂直軸方向に振動が発生した場合、本体11が下方から突き上げられたとき底板23の全ての開口18から水が流入し、内部の空気層20を圧縮することによって振動が低減される。ついで水底が下向きの動きとなったとき、蓋25付きの開口18が閉塞することによって、一部の開口18から水が流出する。このため流入時よりも流出する水の抵抗が大きくなり下向きの動きを低減することができる。
なお開口18を開閉する蓋25は、本体11の外部に形成することもできる。外部に蓋25を形成する際には、閉方向に付勢する付勢手段、例えばトーションばねを用いるとよい。この蓋25は内側に形成した蓋25と逆の作用を成し、外部から水が流入する場合には、蓋25が閉塞し水の流入を阻止して、内部から水が流出する場合には、蓋25が開放して水を流出させることができる。
このように複数の開口18の一部に蓋25を形成することによって、本体11は底面に流量調整弁と逆止弁を並列に設けた構造となり、本体内部に流出入する水の流量を制御することができる。
そして地震による第一波が下から押し上げるか、又は下降から始まるかを予測し、その予測に基づいて、内側の蓋25あるいは外側の蓋25を用いるかを選択する構成とすることができる。また最初の振動に対しては蓋25が開放し、その後動きが反転したときには蓋25が閉塞するように構成することもできる。これにより地震による振動を低減することができる。
図4は浮体ユニットの第2変形例を示す説明図である。なお、図1の浮体ユニット10と同一の符号は同一の作用及び機能を有しその説明を省略する。第2変形例の浮体ユニット10Bは、図示のように底板23を内部に折り曲げ逆漏斗状に傾斜させている。そして開口18は本体11の下端よりも高い位置に形成してある。浮体ユニット10Bは、地震発生によって水底が瞬間的に上方に突き上げられたとき、底板23全体に水圧エネルギーが加わり、そのエネルギーが減衰することなく底板23から傾斜に沿って上部へ移動する。オリフィス24aはホーン形状になっているため通過する水の圧力が上昇するとともに本体内部の空気層20を圧縮する。
ついで水底が下降に転じたときには浮体内部の空気層20が膨張して水がオリフィス24aを逆流しようとすると流入時よりも絞りの抵抗が増加する。このため水が本体11に流入するときよりも流出時の抵抗が大きくなり、本体11の下降と本体内部から流出する水との間に位相のずれが生じて共振現象を減衰させることができる。
図5は浮体ユニットの第3変形例を示す説明図である。同図(1)は断面図を示し、同図(2)は平面図を示す。なお、図1の浮体ユニット10と同一の符号は同一の作用及び機能を有しその説明を省略する。第3変形例に係る浮体ユニット10Cは、図示のように本体11内部を区分けした浮室36の側部にバランス調整部となる一対のバラストタンク30を備えている。バラストタンク30は、底面を取り除いた直方体状であって、上面に空気の供給管14a及び排気管14bが開閉弁16を介して接続している。一対のバラストタンク30は仕切り板31よってそれぞれ二分割してある。各々のバラストタンク30は空気供給手段12によってタンク内部の空気量を任意に設定することができる。このため浮体ユニット10Cに傾きが生じた場合、本体上面の低い側のバラストタンク30に空気を供給するとともに、本体11の高い側のバラストタンク30の空気を排気することによって本体11の傾きを除去して本体11のバランスを制御することができる。このように本体11のバランスを制御することによって浮体ユニット10Cを安定に浮上または潜行させることができる。
図5(1)に示すようにバラストタンク30の空気の供給管14a及び排気管14bは浮室36と供用して形成することができる。この場合、一対のバラストタンク30及び浮室36の上面側に各々供給口及び排気口を形成し、供給口には空気を注入するための供給管14aを開閉弁16を介して接続している。排気口には空気を排気するための排気管14bを開閉弁16を介して接続している。なお、バラストタンク30は本体11の周縁部に複数、少なくとも4個以上形成することができ、例えば立方体状の浮体ユニット10Cの場合には4箇所の側面に設置するのが望ましい。
浮室36には、水位を計測する水位計32または空気圧を計測する圧力計34を設置してある。浮室36の水位又は圧力を計測することのより、本体11の浮力を知ることができ、本体11に搭載する構造物の許容重量などを算出することができる。
図6は浮体ユニットの第4変形例を示す底面図である。第4変形例の浮体ユニット10Dは、図示のように底面を縦長矩形状に形成してある。浮体ユニット10Dは、内部を隔壁35によって区分けした複数の浮室36を一列に並べて形成し、それぞれの浮室36の底板23にはオリフィス24を形成してある。各浮室36の上面側には図示しない空気供給手段を接続してある。また、浮体ユニット10Dは、長手方向に沿って両側に一対ずつのバラストタンク30a、30bが形成してある。各バラストタンク30は分割しなくてもよい。これにより、縦長の本体11を安定して浮上させることができる。なお、バラストタンク30に挟まれた浮室36は、同図中の点線で示した隔壁35を省略した構成とし、浮力を一箇所で制御するようにしてもよい。
図7は浮体ユニットの第5変形例を示す説明図である。同図(1)は断面図を示し、同図(2)は平面図を示す。なお、図1の浮体ユニット10と同一の符号は同一の作用及び機能を有しその説明を省略する。第5変形例の浮体ユニット10Eは、図示のように内部を隔壁35によって4分割して浮室36a〜36dを形成している。各浮室36a〜36dには空気の供給管14a及び排気管14bが開閉弁16を介して接続してある。また、各浮室36a〜36dの底面にはオリフィス24を形成してある。このため各浮室36a〜36dの空気量を調整することによって本体11に傾きが生じたとき及び浮上するときのバランスを保つことができる。よってバラストタンク30を形成する必要がない。
なお、排気管14bは浮室36の内部に先端を突出させて一定の突出長さLに設定してある。浮体ユニット10Eを取り出す場合に、排気管14bの開閉弁16を開放し、本体11内部の空気を排気する。空気の排気とともに本体11内部の水位が上昇して水面が排気管14bの先端部に達すると、本体11内部の空気は排出されずに残留して排気が自動的に停止する。突出長さLは任意に設定することができ、浮体ユニット10Eの着脱時の浮上量を一定に保つことができる。
図8は浮体ユニットの第6変形例を示す底面図である。第6変形例に係る浮体ユニット10Fは、図示のように本体を区分けした浮室36を2列に配置し、底面を縦長矩形状に配置している。各浮室36a1〜36f2には図示しない空気の供給管14a及び排気管14bが開閉弁16を介して接続してある。また、各浮室36a1〜36f2の底面にはオリフィス24を形成してある。
これにより浮体ユニット10Fは4隅の浮室(36a1,36a2,36f1,36f2)の空気層20を容量制御することにより、バラストタンクの代替として機能させることができる。浮体ユニット10Fのその他の浮室(36b1〜36e2)は、浮力のみを制御する機能を有している。このため同図中の点線で示した浮室36間の隔壁35は省略することができる。なお、浮室36の内部には水位計測手段を設置しておくことが望ましい。
ところで図1に示す浮体ユニット10は簡易な構造、かつ軽量であるため浮上させる際にバランスを保つことが困難である。そこで図9に第7変形例の浮体ユニット10Gを示す。図9(1)は平面図を示し、同図(2)は断面図を示す。図示のように浮体ユニット10Gは底面を取り除いた本体11が円筒形状であり、本体内の上部に隔壁35を設けている。この隔壁35によって区分けした浮室36a〜36eを形成し、浮室36eには空気供給手段12の供給管14を開閉弁16を介して接続してある。これにより浮室36eは空気層20の厚さを任意に設定することができる。また浮室36eから空気を全て排気しても、浮室36a〜36dには空気が残留している。したがって本体11のバランスを保持しながら浮上させることができる。
また、同図(3)に示すように、本体11の浮室36eにはハッチを形成し、その他の浮室36a〜36dには空気の供給管14a及び排気管14bを開閉弁16を介してそれぞれ接続してある。これにより本体11が傾いた場合、低い側の浮室36に空気を供給するとともに、高い側の浮室36の空気を排気し本体11の傾きを除去して、浮体ユニット10Gのバランス調整を行うことができる。さらに排気管14bは本体11に長さhだけ突出させてある。これにより本体11内部の空気を排気して、水面が排気管14bの先端部に達すると内部の空気は排出されずに残留し、自動的に排気が停止する構成とすることができる。なお排気管の突出長さhは任意に設定することができる。また、任意の突出長さに調整しておくことにより、開閉弁16を開いた状態でも浮体ユニット10Gを適正な姿勢に保持することができる。
図10の浮体ユニット10Gは本体11が直方体状であり、浮体ユニット10Gと同様に隔壁35により内部に複数の浮室36a〜36eを形成してある。この場合、浮室36eと複数の浮室36e間の隔壁35には空気の通気孔41を形成してあり、浮室36eの排気によって複数の浮室36eを同時に排気することができる。これにより浮室36e、36eから空気を全て排気しても、浮室36a〜36dには空気が残留している。よって本体11のバランスを保持しながら浮上させることができる。なお浮体ユニット10G及び10Gには、いずれも底板の一部に少なくとも一つ以上の開口及び拡散板を形成する構成としてもよい。
これまで説明した浮体ユニット10はいずれも本体11の最上部および最下部が同一断面積の筒状形状であり、本体11上部が水面より僅かに浮き上がった位置に配置している。そうすると本体内部の空気層20の断面積は本体11の断面積と略等しくなる。
ここで浮体ユニット10が上下動の影響を受けず、水面のみ波の影響で上下動すると仮定する。そうすると本体11は内部の空気量を調整して、高く浮上させても、深く沈めた場合であってもいずれも水面の上下動による浮力の変動幅は同一である。換言すると本体11内部の空気のばね定数は、喫水量に関係なく常に一定の値を示すことになり、上下振動に対して浮体ユニット10の減衰特性を調整することが困難である。
そこで図11に示すような突出部を本体11上部に付設するとよい。図11は浮体ユニットの制振対策の説明図である。図示のように浮体ユニット10Hには突出部45を形成してある。突出部45は断面を本体11よりも小さく形成してあり、本体11上部と連接している。なお突出部45の断面は、少なくとも嵌合凸部22が設置できるスペースがあればよい。ここで本体11を水面2まで浮上させた場合、本体の断面積A2と水面2の上下動の幅H2との積が浮力変動幅B2となる。
一方、本体11の空気を抜いて水面1のレベルまで水没させると、その断面積(突出部45)はA1となる。A2はA1よりも大きいため水面1の上下動幅H1がH2と同じとすると、このときの浮力変動幅B1は次式のように表すことができる。
Figure 0004747360
数式1に示すようにB1はA1の断面積が少ないほど水面上下動の影響が軽減される。すなわち本体11内部に封入された空気のばね定数を減少させたと同じ効果となり、激しい上下動に襲われたときの制振効果を増大させるのに有効である。換言すると本体11下部の空気層20で十分な浮力を確保しながら、本体11の狭い空気層(突出部45)まで沈めることによって水面の上下動の影響を最小限に抑えることができる。なお本体11には、空気供給手段12の配管が接続し、底板23にオリフィス24を形成するとよい。
図12は浮体式耐震構造物の構成概略図である。同図(1)に示すように浮体式耐震構造物100は、コスト及び移動手段の利便性を考慮して岸近くの水深の浅い海岸に設置することができる。また外洋側には津波、大波などを除去するための防波堤50を形成してある。
浮体式耐震構造物100は、浮体ユニット10を複数行、複数列並べて配置してあり、その上部に連結部材52を配置している。浮体ユニット10の嵌合凸部22は、図12(2)に示したように、連結部材52に設けた嵌合凹部53に嵌合させてある。浮体ユニット10と連結部材52とは、嵌合凸部22と嵌合凹部53とが締結手段により締結することによって一体化される。締結手段には、例えば取り外し可能な締結ボルト等を用いることができ、強固に連結させることができればこれに限定されるものではない。
連結部材52は、変形しにくい力学的に安定したトラス構造を採用している。連結部材52は後述する発電設備等の構造物54と浮体ユニット10の中間に位置し、内部に浮体ユニット10の空気供給手段12及び配管14を配設している。また連結部材52はトラス構造であるため、浮体ユニット10や構造物54のメンテナンスや点検の際などに作業空間として利用できる。メンテナンスや点検で浮体ユニット10を連結部材52から取外す場合、本体11内の空気の量を少なくして浮体ユニット10を海面からの露出高さを小さくし、または中性浮力を有する状態にし、連結部材52の下から連結部材52の外側に移動させる。その後、浮体ユニット10をクレーン等で吊上げ、連結部材52の上や陸上に吊り降ろす。したがって浮体ユニット10の修理等を海中で行う必要がない。
なお、浮体ユニット10を連結部材52に取付ける場合、浮体ユニット10をクレーン等で吊上げて海中に降ろして、本体11内の空気量を少なくし浮体ユニット10を連結部材52の下の所定位置に移動させる。その後、本体11内に空気を注入して海面からの露出高さを大きくして嵌合凸部22を嵌合凹部53に嵌合させる。
連結部材52上には構造物54を載置している。浮体式耐震構造物100は、連結部材52に連結する浮体ユニット10の数を任意に設定することによって、長尺な構造物54を搭載することができる。
なお浮体式耐震構造物100の設置箇所は、海上のほか、河川、湖沼、人工池などの広大なスペースが確保できる箇所であればどこでもよい。このためコンクリートパイルを多数打ち込む基礎工事の必要がなくなる。
図13は浮体式耐震構造物の底面図である。同図(1)に示すように浮体式耐震構造物100は、浮体ユニット10Dを幅方向に一列に並べて形成した長方形の浮体ブロック40を2列に並べて形成してある。個々の浮体ブロック40は側面の一部が構造物の周縁に面している。このためメンテナンス対象となる浮体ブロック40を容易に着脱することができる。
また、同図(2)に示すように、単体の浮体ユニット10を複数行、複数列で連結部材52に配置する場合、浮体ユニット10の2列ごとまたは2行ごとに浮体ユニット10間に浮体ユニット10が移動可能な幅を備えた着脱通路60を形成するとよい。これにより、構造物の中央付近に配置してある浮体ユニット10であっても容易に着脱することができる。
浮体ユニットの説明図である。 浮体ユニットの第1変形例の断面図である。 浮体ユニットの第1変形例の説明図である。 浮体ユニットの第2変形例の説明図である。 浮体ユニットの第3変形例の説明図である。 浮体ユニットの第4変形例の説明図である。 浮体ユニットの第5変形例の説明図である。 浮体ユニットの第6変形例の説明図である。 浮体ユニットの第7変形例の概略図である。 浮体ユニットの第7変形例の説明図である。 浮体ユニットの制振対策の説明図である。 浮体式耐震構造物の構成概略図である。 浮体式耐震構造物の底面図である。 従来の浮体式構造物の説明図である。
符号の説明
10………浮体ユニット、11………本体、12………空気供給手段、14………配管、16………開閉弁、18………開口部、20………空気層、22………嵌合凸部、23………底板、24………オリフィス、26………拡散板、30………バラストタンク、32………水位計、34………圧力計、35………隔壁、36………浮室、37………ハッチ、40………浮体ブロック、50………防波堤、52………連結部材、54………構造物、100………浮体式耐震構造物。

Claims (10)

  1. 中空容器状に形成した本体と、
    前記本体の底板に設けた開口と、
    前記本体の上部に設けられて、前記本体の内部と外部とを連通、遮断する弁と、
    を備え
    前記底板は、逆漏斗状に傾斜して形成してあり、前記開口は、前記本体の下端より高い位置に形成してあることを特徴とする浮体ユニット。
  2. 前記本体は、内部に前記本体の浮力を検出する浮力検出部が設けてあることを特徴とする請求項1記載の浮体ユニット。
  3. 前記本体は、前記開口に対向させた拡散板を内部に有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮体ユニット。
  4. 前記本体は、内部を複数の浮室に区分けしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1に記載の浮体ユニット。
  5. 前記本体は、周縁部に複数のバランス調整部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1に記載の浮体ユニット。
  6. 前記本体は、複数の前記本体を相互に連結する連結部材に嵌合させる嵌合部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1に記載の浮体ユニット。
  7. 前記本体には、前記本体よりも小さい断面の突出部を形成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1に記載の浮体ユニット。
  8. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の浮体ユニットの複数を、連結部材を介して相互に連結したことを特徴とする浮体式耐震構造物。
  9. 前記連結部材は、トラス構造に形成してあることを特徴とする請求項記載の浮体式耐震構造物。
  10. 複数の前記浮体ユニットは、複数行、複数列に配置してあり、前記複数行の所定の行間または前記複数列の所定の列間は、前記浮体ユニットを移動可能な幅を有していることを特徴とする請求項または請求項に記載の浮体式耐震構造物。
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