JP4745560B2 - 抗潰瘍剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物由来成分を有効成分とする抗潰瘍剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリゴジアールはジアルデヒドを有するセスキテルペンであり、ポリゴジアールアセタール誘導体はポリゴジアールをアルコールによりアセタール化した化合物である。これらの化合物はヤナギタデ、ベニタデ、ムラサキタデ、ヒロハタムラサキタデ等のタデ科植物、タスマニア・ランセオラータ(Tasmannia lanceolata)等のモクレン目に属するシキミドモドキ科植物に含まれ、辛みを有することから、古くより香辛料として使用されている。また、抗白せん菌作用(特開昭63-156718号)、抗腫瘍作用(特開平3-25119号)、防かび作用(特開平7-135942号、特開平7-285820号)等の薬理作用を有し、味噌の保存料(特開平3-259058号)、香料組成物(特開平7-145398号)として、又最近ではムラサキ貝等の水中生物付着制御剤(特開2000-290540号)として用いられるなど、多くの薬理作用を示すことが知られている。しかしながら、抗潰瘍作用を有することは今だ知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、植物由来成分の、抗潰瘍剤としての新規用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはオーストラリアの東南部、主にタスマニア島に自生するシキミモドキ科の植物であるタスマニア・ランセオラータ(Tasmannia lanceolata)に含まれる成分を研究していたところ、当該植物の抽出物およびそれに含まれるポリゴジアール及びポリゴジアールアセタール誘導体が優れた胃粘膜保護作用を有し、抗潰瘍剤として有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、式(1):
【0006】
【化5】
Figure 0004745560
【0007】
で表されるポリゴジアールおよび一般式(2):
【0008】
【化6】
Figure 0004745560
【0009】
(上記式中、R1は水素原子又はメトキシ基を示す。)で表されるポリゴジアールアセタール誘導体から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする抗潰瘍剤である。
本発明はまた、上記式(1)で表されるポリゴジアールおよび上記一般式(2)で表されるポリゴジアールアセタール誘導体から選ばれた少なくとも1種を含有する植物抽出物を有効成分とする抗潰瘍剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリゴジアール及びポリゴジアールアセタール誘導体には以下のものが含まれる。
ポリゴジアール(式(1)の化合物)、
ポリゴジアールジメチルアセタール(式(2)中、R1=メトキシ)、
メチルイソドリメニノール(式(2)中、R1=水素)。
ポリゴジアールおよびポリゴジアールアセタール誘導体から選ばれた少なくとも1種を含有する植物抽出物としては、タスマニア・ランセオラータ抽出物が例示される。
【0011】
これらポリゴジアールおよびポリゴジアールアセタール誘導体は抗白せん菌作用(特開昭63-156718号)、抗腫瘍作用(特開平3-25119号)、防かび作用(特開平7-135942号、特開平7-285820号)等の薬理作用を有し、味噌の保存料(特開平3-259058号)、香料組成物(特開平7-145398号)として用いられることが知られている。しかしながら、抗潰瘍剤として有用であることは今だ知られていない。
【0012】
本発明の有効成分であるポリゴジアールおよびポリゴジアールアセタール誘導体は、R1が水素原子であるメチルイソドリメニノール以外は公知物質であり、容易に入手可能である。ポリゴジアールはThe Merk Index (第12版)に掲載されており、例えばジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistory) 198,(48), 1866-1869、およびテトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters) (22) 1961-1964(1971)に記載の方法で化学的に製造できるが、ヤナギタデ、ベニタデ、ムラサキタデ、ヒロハタムラサキタデ等のタデ科植物、タスマニア・ランセオラータ(Tasmannia lanceolata)等のモクレン目に属するシキミドモドキ科植物から有機溶媒によって抽出する方法がより簡便である。また、メチルイソドリメニノールも当該シキミドモドキ科植物から有機溶媒によって抽出できる。
【0013】
抽出方法としては公知慣用の方法が採用でき、例えば特開2000−290540号に記載されたメタノール抽出物を更にヘキサン抽出し、カラムクロマトグラフィーにて分離精製する方法が利用できる。本発明の抽出方法については後記実施例で詳述する。
【0014】
本発明化合物を抗潰瘍剤の治療に使用する際の薬学的投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、丸剤、乳剤、懸濁剤等の経口剤、注射剤等の非経口剤のいずれでもよく、それぞれ当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
【0015】
経口用固形製剤を調製する場合には、本発明の有効成分に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等を製造することができる。賦形剤としては、例えば乳糖、マンニトール、蔗糖、澱粉、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム等が使用でき;結合剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アラビアゴム、シェラック、白糖等が使用でき;崩壊剤としては乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が使用でき;滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、タルク等が使用でき;矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が使用できる。その他、着色剤、矯臭剤等は公知のものを用いることができる。なお、錠剤とする場合は周知の方法によりコーティングしてもよい。
【0016】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明の有効成分に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味剤としては上記のものが、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が使用できる。
【0017】
上記の各投与単位形態中に配合されるべきポリゴジアールおよびポリゴジアールアセタール誘導体の量は、これを適用すべき患者の症状によりあるいはその剤型等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり経口剤では約5〜500mgとするのが望ましい。また、上記投与形態を有する薬剤の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別、その他の条件等に応じて適宜選択されるが、通常成人1回あたり経口剤では10〜1000mgの範囲でそれぞれ1日1回から数回投与するのが好ましい。
【0018】
【実施例】
次に製剤例及び試験例を示して本発明を更に説明する。
Figure 0004745560
上記配合割合で、常法に従い錠剤を調製した。
【0019】
Figure 0004745560
上記配合割合で、常法に従いカプセル剤を調製した。
【0020】
Figure 0004745560
上記配合割合で、常法に従い顆粒剤を調製した。
【0021】
Figure 0004745560
上記配合割合で、常法に従い細粒剤を調製した。
【0022】
Figure 0004745560
上記配合割合で、常法に従いシロップ剤を調製した。
【0023】
製造例1:タスマニア・ランセオラータからの製造
タスマニア・ランセオラータ(Tasmannia lanceolata)乾燥葉500gを細断し、約10倍量のメタノール(約5L,ナカライテスク社製,特級)を加え、加熱還流下、3時間抽出した。抽出液をひだ折りろ紙(アドバンテック社製,No. 2ろ紙)にてろ別した後、残査にメタノールを加え、同様の抽出操作を合計3回繰り返した。抽出液を合わせ,ロータリーエバポレーターにて減圧下、溶媒留去し、メタノール抽出エキス166g(生薬からの収率:33.2%)を得た。得られたメタノール抽出エキス110.6gに蒸留水4Lを加え、縣濁させた後、同量の酢酸エチル(ナカライテスク社製,特級)を加え、溶媒分配し、酢酸エチル移行部60.6g(18.2%)および水移行部50.0g(15.0%)を得た。酢酸エチル移行部60.6gを順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[SiO2 BW-200,富士シリシア社製,移動相:n-ヘキサン(ナカライテスク社製,特級)−酢酸エチル(20:1.10:1).メタノール]、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ODSクロマトレックス,富士シリシア社製,移動相:メタノール−水]および高速液体クロマトグラフィー[HPLC,検知器: RID-6A,島津製作所社製;ポンプ: LC-10AS,島津製作所社製;カラム:YMC-Pack ODS-5-A 250×20mm i.d.,YMC社製,移動相メタノール−水,またはアセトニトリル(東京化成社製,HPLC大量分取用)−水]にて分離・精製し、ポリゴジアール、ポリゴジアールジメチルアセタールおよびメチルイソドリニノールをそれぞれ得た。それらは、ポリゴジアール、ポリゴジアールジメチルアセタールの物性値から同定した。なお、ポリゴジアールの生薬からの収率は0.97%であった。メチルイソドリメニノールの物性値を以下に示す。
無色油状、 [α]D 25 -28.4° (c=1.3, CHCl3), C16H26O2
高分解能 FAB-MS :
C16H26O2Na (M+Na)+の計算値: 273.1830。 実測値 : 273.1820。
IR (フィルム): 2957, 1460, 1018 cm-1
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ:
0.79, 0.87, 0.91 (3H each, all s, 15, 13, 14-H3), 1.23 (1H, m, 3β-H), 1.26 (1H, m, 1α-H), 1.30 (1H, m, 5-H), 1.45 (1H, m, 3α-H), 1.47, 1.56 (1H each, both m, 2-H2), 1.68 (1H, m, 1β-H), 1.91, 2.18 (1H each, both m, 6-H2), 2.23 (1H, d, J=3.7 Hz, 9-H), 3.40 (3H, s, -OCH3), 4.15, 4.35 (ABq, J=10.9 Hz, 12-H2), 4.80 (1H, d, J=3.7 Hz, 11-H), 5.51 (1H, br s, 7-H)。
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δc :
13.9 (15-C), 18.5 (2-C), 21.4 (14-C), 23.7 (6-C), 32.9 (4-C), 33.0 (13-C), 33.3 (10-C), 39.8 (1-C), 42.4 (3-C), 49.8 (5-C), 55.5 (-OCH3), 60.4 (9-C), 69.0 (12-C), 106.1 (11-C), 116.9 (7-C), 136.5 (8-C)。
陽イオンFAB-MS m/z 251 (M+H)+
【0024】
薬理試験例1:タスマニア・ランセオラータ抽出物のエタノール潰瘍に対する効果
マツダらの方法(Matsuda H. et al., Life Sciences, 63, PL 245−250 (1998))に従い、エタノール潰瘍に対する本発明化合物の効果を検討した。
24〜26時間絶食させたスプラグ−ダウレイ(Sprague-Dawley)系雄性ラット (体重約250g)に製造例1で得たメタノール抽出エキス、ポリゴジアール、ポリゴジアールジメチルアセタール、および対照薬としてオメプラゾール(抗潰瘍剤)それぞれを経口投与し、1時間後に99.5%エタノール(1.5ml/匹)を経口投与した。一時間後にエーテル麻酔下、頸椎脱臼により安楽死させ、直ちに胃を摘出した。1.5%ホルマリン10mlを胃内に注入し固定した後、大彎にそって切り開き、損傷の長さ(mm)を測定し、損傷係数とした。阻害率(%)は以下の式にて算定した。
【0025】
阻害率(%)=(対照群の損傷係数−薬剤投与群の損傷係数)/(対照群の損傷係数)×100
【0026】
結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004745560
【0028】
薬理試験例2:ポリゴジアールのエタノール潰瘍に対する効果
薬理試験例1と同様の方法にてポリゴジアールの投与量を0.00125mg/kg〜0.50mg/kg、比較用のオメプラゾールを25mg/kg〜50mg/kgに設定し、両者のエタノール抗潰瘍に対する効果を比較検討した。結果を表2及び表3に示す。
【0029】
【表2】
Figure 0004745560
【0030】
【表3】
Figure 0004745560
オメプラゾールのエタノール潰瘍に対する効果
【0031】
【発明の効果】
本発明のポリゴジアール又はポリゴジアールアセタール誘導体、およびこれを含有する植物抽出物は、エタノール潰瘍に、従来の抗潰瘍剤のオメプラゾールと比較して優れた効果を有し、抗潰瘍剤として有用である。

Claims (3)

  1. 式(1):
    Figure 0004745560
    で表されるポリゴジアールおよび一般式(2):
    Figure 0004745560
    (上記式中、R1は水素原子又はメトキシ基を示す。)で表されるポリゴジアールアセタール誘導体から選ばれた少なくとも1種を有効成分とする抗潰瘍剤。
  2. 式(1):
    Figure 0004745560
    で表されるポリゴジアールおよび一般式(2):
    Figure 0004745560
    (上記式中、R1は水素原子又はメトキシ基を示す。)で表されるポリゴジアールアセタール誘導体から選ばれた少なくとも1種を含有する植物抽出物を有効成分とする抗潰瘍剤。
  3. 植物抽出物がタスマニア・ランセオラータ抽出物である請求項2項記載の抗潰瘍剤。
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