JP4745490B2 - シリカ系コーティング剤、シリカ薄膜の製造方法およびシリカ薄膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカ系コーティング剤、それを用いたシリカ薄膜の製造方法、シリカ薄膜およびシリカ薄膜を有する構造体に関する。さらに詳しくは、本発明は、ゾル−ゲル法により調製され、かつ200℃以下の低温熱処理で、クラックの発生がほとんどない上、乾燥・熱処理時の膜厚収縮率が小さい強固なシリカ薄膜を与えるシリカ系コーティング剤、このコーティング剤を用いたシリカ薄膜の製造方法、上記性能を有するゾル−ゲル法により得られたシリカ薄膜、および該シリカ薄膜を有する構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカ系被膜は、耐熱性、耐摩耗性、耐食性などに優れていることから、例えば半導体素子における半導体基板と金属配線層との間または金属配線層間の絶縁膜、半導体基板上に設けられた金属配線層などにより生じた凹凸を平坦化するための被膜、液晶表示セルにおけるガラス基板とITO(インジウムチンオキシド)膜との間、透明電極と配向膜との間などに設けられる絶縁膜などとして広く用いられている。
【0003】
このようなシリカ系被膜を形成させる方法としては、各種の方法が知られているが、一般に純度のよいシリカ膜を作製できるゾル−ゲル法が多用されている。このゾル−ゲル法は、アルコールを主体とする有機溶媒中にアルコキシシランを溶解し、加水分解、縮合させて塗布液を調製したのち、これを塗布し、熱処理してシリカ膜を形成する方法である。このようなゾル−ゲル法においては、ち密なガラス質のシリカ膜を得るためには、少なくとも600℃以上の熱処理が必要となる。
【0004】
一方、表面硬度が良好で、優れた耐擦傷性や耐摩耗性を有するハードコートフィルムは、例えば、車両、建物などの窓ガラスや窓用プラスチックボードなどの表面貼付用として、あるいはCRTディスプレイやフラットパネルディスプレイなどの保護用などとして広く用いられている。
また、プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて、軽量でかつ安全性、加工性、ファッション性などに優れていることから、近年急速に普及してきている。しかしながら、このプラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて傷が付きやすいという欠点を有しており、したがって、その表面をハードコート層で被覆することが行われている。
【0005】
このようなハードコートフィルムやプラスチックレンズに設けられるハードコート層の材料としては、一般に、ゾル−ゲル法によるシリカ系コーティング剤が用いられる。しかしながら、この場合、有機基材に適用されるため、コーティング膜の高温熱処理が不可能であって、通常200℃以下の温度で熱処理が行われる。その結果、ち密で強固なシリカ膜が形成されにくい上、原料であるアルコキシシランのアルコキシル基が膜中に残存していることが多く、経時的にその脱離反応が進行して、クラック発生の原因となることが多い。
【0006】
低温焼成により、シリカ膜を形成させる技術としては、例えば低級アルキルシリケートをメタノールやエタノール中で加水分解して調製したアルコール性シリカゾルをコーティングして、室温〜100℃の低温で加熱処理することにより、強固な膜を形成し得ることが開示されている(特開平6−52796号公報)。しかしながら、この公報に記載されている実施例においては、アルキルシリケートの濃度が低く、かつ反応時間も5時間と短いため、ゾルの成長が不十分であって、成膜後の膜収縮も大きいことが考えられ、成膜時に斑が発生するおそれがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、ゾル−ゲル法により調製され、かつ200℃以下の低温熱処理で、クラックの発生がほとんどない上、乾燥・熱処理時の膜厚収縮率が小さい強固なシリカ薄膜を与えるシリカ系コーティング剤、このコーティング剤を用いたシリカ薄膜の製造方法、上記性能を有するゾル−ゲル法により得られたシリカ薄膜、および該シリカ薄膜を有する構造体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、残存アルコキシル基の経時による脱離に伴い、シリカ膜にクラックなどが発生するのを抑制するため、ゾル−ゲル反応における加水分解、縮合時にアルコキシル基の少ないシリカ前駆体を作製し、その前駆体の分子量をある範囲に調節することによって、200℃以下の温度で熱処理を施すのみで、クラックなどの発生のない強固なシリカ膜が得られること、また、成膜後の膜表面の水接触角をある値以下にすることで、残存アルコキシル基を低減させることになり、該アルコキシル基の経時による脱離に伴うクラックの発生を抑制し得ること、さらに、成膜後、特定の条件で熱処理した際の膜収縮率をある値以下にすることにより、成膜後の経時変化が少なく、ヒートサイクル試験においても膜にクラックが発生しないことを見出した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)
Si(OR)4 …(I)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、4つのORはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表されるテトラアルコキシシラン、この部分加水分解物およびその縮合物であるオリゴマーの中から選ばれる少なくとも1種を加水分解、縮合させてなる、重量平均分子量85,000〜500,000のシリカゾルを含むことを特徴とするシリカ系コーティング剤、
(2)基材表面に、上記シリカ系コーティング剤を塗布したのち、乾燥・熱処理することを特徴とするシリカ薄膜の製造方法、
(3)ゾル−ゲル法により得られたシリカ薄膜であって、膜表面の水接触角が35°以下であることを特徴とするシリカ薄膜、
(4)上記(1)のシリカ系コーティング剤を用いて形成されたシリカ薄膜を有することを特徴とする構造体、および
(5)上記(3)のシリカ薄膜を有することを特徴とする構造体
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のシリカ系コーティング剤においては、原料として、一般式(I)
Si(OR)4 …(I)
で表されるテトラアルコキシシランが用いられる。
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜3のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基である。4つのORはたがいに同一でも異なっていてもよい。Rが炭素数4以上である場合、加水分解性が悪くて、所望の重量平均分子量を有するシリカゾルが得られにくく、また、得られた膜表面の水接触角も35°以下になりにくい。
【0011】
この一般式(I)で表されるテトラアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、イソプロポキシトリメトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、プロポキシトリエトキシシラン、イソプロポキシトリエトキシシラン、メトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシランなどが挙げられるが、これらの中でテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが、加水分解性および入手の容易さなどの点で好ましい。
本発明においては、これらのテトラアルコキシシランを用いてもよいし、その部分加水分解物を用いてもよく、また、その加水分解縮合物であるオリゴマーを用いてもよい。あるいは、これらの混合物を用いることもできる。
【0012】
また、加水分解、縮合反応は、アルコール、ケトン、エーテルなどの適当な極性溶剤中において、塩酸、硫酸、硝酸などの酸、あるいは固体酸としてのカチオン交換樹脂を用い、通常0〜60℃、好ましく20〜40℃の温度において実施され、重量平均分子量85,000〜500,000の範囲のシリカゾルを形成させる。このシリカゾルの重量平均分子量が85,000未満では、得られるシリカ膜は、膜表面の水接触角が35°以下になりにくく、かつ成膜後の膜収縮率も大きく、経時によりクラックなどが発生する。一方、重量平均分子量が500,000を超えると溶剤への溶解性が低下し、均一なシリカゾルが形成されにくく、目的とするコーティング剤が得られない。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0013】
加水分解、縮合反応終了後、固体酸を用いた場合には、それを除去したのち、SiO2換算濃度が、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲になるように、アルコール、ケトン、エーテルなどの適当な極性溶剤で希釈することにより、本発明のシリカ系コーティング剤を調製する。
【0014】
このようにして得られた本発明のシリカ系コーティング剤は、適当な基材表面に塗布し、80℃で、1時間乾燥処理してなる膜表面の水接触角が、通常35°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下である。この水接触角が35°を超える場合、膜中に残存する原料のテトラアルコキシシランに由来するアルコキシル基の量が多く、該アルキル基の経時による脱離に伴い、クラックなどが発生しやすくなる。また、以下に示す方法で求められる膜厚の収縮率も大きくなる。
【0015】
さらに、本発明のシリカ系コーティング剤は、シリコンウェーハ表面に塗布し、80℃で1時間乾燥処理後、500℃で30分間熱処理した際の膜厚の収縮率が、通常15%以下、好ましくは12%以下である。この収縮率が15%を超えると、後述のヒートサイクル試験においてクラックが発生する。すなわち、経時によりクラックが発生しやすくなる。
【0016】
本発明のシリカ薄膜の製造方法においては、基材表面に、前記のシリカ系コーティング剤を塗布したのち、乾燥・熱処理することにより、シリカ薄膜を形成させる。この際、基材としては、無機基材および有機基材のいずれも用いることができるが、本発明においては、200℃以下の温度で、乾燥・熱処理することから、耐熱性の低い有機基材に対して特に有用である。200℃以下の温度で、乾燥・熱処理しても、クラックなどの発生のない強固なシリカ薄膜が得られる。
【0017】
この際、塗布方法としては、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手段を用いることができる。また、形成されるシリカ薄膜の厚さは、通常1μm以下、好ましくは0.01〜0.7μm、より好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。
【0018】
有機基材を用いる場合、シリカ薄膜との密着性を向上させるために、所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれる。
なお、本発明における有機基材は、有機系材料以外の材料、例えば金属系材料、ガラスやセラミックス系材料、その他各種無機系または金属系材料からなる基材の表面に、有機系塗膜を有するものも包含する。
【0019】
本発明はまた、ゾル−ゲル法により得られたものであって、表面の水接触角が35°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下であるシリカ薄膜をも提供する。この本発明のシリカ薄膜は、80℃で1時間乾燥処理した膜を、500℃で30分間熱処理した際の膜厚の収縮率が、通常15%以下、好ましくは12%以下である。
上記の性状を有する本発明のシリカ薄膜は、経時による変化が少なく、また、後述のヒートサイクル試験を行ってもクラックの発生が認められない。
【0020】
本発明は、さらに、前述のシリカ系コーティング剤を用いて形成されたシリカ薄膜を有する構造体、および上記のゾル−ゲル法により得られ、表面の水接触角が35°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下であるシリカ薄膜を有する構造体をも提供する。前者の構造体においては、シリカ薄膜の形成に、本発明の方法を適用することができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
テトラメトキシシランをSiO2換算濃度が16重量%、0.1モル/リットル硝酸水溶液をテトラメトキシシランの6倍モルの水となるように2−メトキシエタノールに添加した。これを、30℃で24時間反応を行った。この溶液をジメチルホルムアミド(DMF)で希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量96000であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈した。2重量%の調製液をシリコンウェーハ上に、4重量%溶液をアクリル基板およびガラス基板上に3000rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。
【0023】
〈シリコンウェーハ成膜サンプルの評価〉
水接触角を測定したところ、20°であった。次にこの膜をエリブソメータ(溝尻光学工業所製DVA−36VW)を用いて膜厚を測定したところ、75.9nmであった。これを、500℃、30分加熱した後再び膜厚を測定したところ、70.0nmであり、膜厚収縮率は7.8%であった。
【0024】
〈アクリル基板およびガラス基板成膜サンプルの評価〉
ヒートサイクル試験器を用いて、70℃/2時間、−20℃まで降温/2時間、−20℃/2時間、70℃まで昇温/2時間を1サイクルとして、5サイクル耐久試験を行った。この後、表面状態を確認したところ、いずれの基板においても、シリカ膜にはクラック等の発生は見られなかった。
【0025】
実施例2
MS−51[コルコート(株)製、テトラメトキシシランのオリゴマー]をSiO2換算濃度が16重量%、0.1モル/リットル硝酸水溶液をMS−51の4倍モルの水となるようにメチルエチルケトンに添加した。これを、30℃で24時間反応を行った。この溶液をDMFで希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量154800であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈した。2重量%の調製液をシリコンウェーハ上に、4重量%溶液をアクリル基板およびガラス基板上に3000rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。
【0026】
〈シリコンウェーハ成膜サンプルの評価〉
水接触角を測定したところ、16°であった。次にこの膜をエリブソメータ(溝尻光学工業所製DVA−36VW)を用いて膜厚を測定したところ、73.3nmであった。これを、500℃、30分加熱した後再び膜厚を測定したところ、66.1nmであり、膜厚収縮率は9.8%であった。
【0027】
〈アクリル基板およびガラス基板成膜サンプルの評価〉
ヒートサイクル試験器を用いて、70℃/2時間、−20℃まで降温/2時間、−20℃/2時間、70℃まで昇温/2時間を1サイクルとして、5サイクル耐久試験を行った。この後、表面状態を確認したところ、いずれの基板においても、シリカ膜にはクラック等の発生は見られなかった。
【0028】
実施例3
テトラメトキシシランをSiO2換算濃度が16重量%、1モル/リットル硝酸水溶液をテトラメトキシシランの6倍モルの水となるように2−プロパノールに添加した。これを、30℃で24時間反応を行った。この溶液をDMFで希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量340500であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈した。2重量%の調製液をシリコンウェーハ上に、4重量%溶液をアクリル基板およびガラス基板上に3000rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。
【0029】
〈シリコンウェーハ成膜サンプルの評価〉
水接触角を測定したところ、22°であった。次にこの膜をエリブソメータ(溝尻光学工業所製DVA−36VW)を用いて膜厚を測定したところ、99.6nmであった。これを、500℃、30分加熱した後再び膜厚を測定したところ、89.8nmであり、膜厚収縮率は9.8%であった。
【0030】
〈アクリル基板およびガラス基板成膜サンプルの評価〉
ヒートサイクル試験器を用いて、70℃/2時間、−20℃まで降温/2時間、−20℃/2時間、70℃まで昇温/2時間を1サイクルとして、5サイクル耐久試験を行った。この後、表面状態を確認したところ、いずれの基板においても、シリカ膜にはクラック等の発生は見られなかった。
【0031】
比較例1
テトラエトキシシランをSiO2換算濃度が16重量%、0.1モル/リットル硝酸水溶液をテトラエトキシシランの4倍モルの水となるように2−プロパノールに添加した。これを、30℃で24時間反応を行った。この溶液をDMFで希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量72200であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈した。2重量%の調製液をシリコンウェーハ上に、4重量%溶液をアクリル基板およびガラス基板上に3000rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。
【0032】
〈シリコンウェーハ成膜サンプルの評価〉
水接触角を測定したところ、38°であった。次にこの膜をエリブソメータ(溝尻光学工業所製DVA−36VW)を用いて膜厚を測定したところ、234.6nmであった。これを、500℃、30分加熱した後再び膜厚を測定したところ、185.2nmであり、膜厚収縮率は21.1%であった。
【0033】
〈アクリル基板およびガラス基板成膜サンプルの評価〉
ヒートサイクル試験器を用いて、70℃/2時間、−20℃まで降温/2時間、−20℃/2時間、70℃まで昇温/2時間を1サイクルとして、5サイクル耐久試験を行った。この後、表面状態を確認したところ、いずれの基板においても、シリカ膜にクラック等の発生が確認された。
【0034】
比較例2
テトラエトキシシランをSiO2換算濃度が16重量%、0.1モル/リットル硝酸水溶液をテトラエトキシシランの4倍モルの水となるようにメチルエチルケトンに添加した。これを、30℃で24時間反応を行った。この溶液をDMFで希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量82900であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈した。2重量%の調製液をシリコンウェーハ上に、4重量%溶液をアクリル基板およびガラス基板上に3000rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。
【0035】
〈シリコンウェーハ成膜サンプルの評価〉
水接触角を測定したところ、37°であった。次にこの膜をエリブソメータ(溝尻光学工業所製DVA−36VW)を用いて膜厚を測定したところ、184.6nmであった。これを、500℃、30分加熱した後再び膜厚を測定したところ、153.6nmであり、膜厚収縮率は16.8%であった。
【0036】
〈アクリル基板およびガラス基板成膜サンプルの評価〉
ヒートサイクル試験器を用いて、70℃/2時間、−20℃まで降温/2時間、−20℃/2時間、70℃まで昇温/2時間を1サイクルとして、5サイクル耐久試験を行った。この後、表面状態を確認したところ、いずれの基板においても、シリカ膜にクラック等の発生が確認された。
【0037】
比較例3
テトラメトキシシランをSiO2換算濃度が16重量%、1モル/リットル硝酸水溶液をテトラメトキシシランの20倍モルの水となるように2−プロパノールに添加した。これを、30℃で48時間反応を行った。この溶液をDMFで希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、キャリアー:DMF、検量線物質:ポリスチレン)で分子量測定を行ったところ、重量平均分子量550,000であった。この溶液をSiO2換算で2重量%及び4重量%になるように2−メトキシエタノールで希釈して塗布液を調製しようとしたが、沈殿物が生じ、均一なシリカゾルからなる塗布液が得られず、成膜が不可能であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明のシリカ系コーティング剤は、ゾル−ゲル法により調製されたものであって、200℃以下の低温熱処理で、クラックの発生がほとんどない上、乾燥・熱処理時の膜厚収縮率が小さい強固なシリカ薄膜を有機および無機基材いずれにも与える。中でも耐熱性の低い有機基材に好適に適用することができる。
【0039】
本発明のシリカ系コーティング剤は、例えばハードコートフィルムやプラスチックレンズに設けられるハードコート層の材料として、さらには半導体素子における絶縁膜や平坦化膜、液晶表示セルにおける絶縁膜などの材料として、好適に用いられる。
Claims (3)
- 一般式(I)
Si(OR)4 …(I)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、4つのORはたがいに同一でも異なっていてもよい。)で表されるテトラアルコキシシラン、この部分加水分解物およびその縮合物であるオリゴマーの中から選ばれる少なくとも1種を加水分解、縮合させてなる、重量平均分子量85,000〜500,000のシリカゾルを含むこと、および
基材表面に塗布し、80℃で1時間乾燥処理した際の膜表面の水接触角が35°以下であり、またはシリコンウェーハ表面に塗布し、80℃で1時間乾燥処理後、500℃で30分間熱処理した際の膜厚の収縮率が15%以下であることを特徴とするシリカ系コーティング剤。 - 基材表面に、請求項1に記載のシリカ系コーティング剤を塗布したのち、乾燥・熱処理することを特徴とするシリカ薄膜の製造方法。
- 請求項1に記載のシリカ系コーティング剤を用いて形成されたシリカ薄膜を有することを特徴とする構造体。
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